説明

アミナールの段階を介したMDAの製造方法

【課題】中間体としてアミナールを形成する、採算の合うMDAの製造方法を提供すること。
【解決手段】上記目的は、以下の工程a)〜c):
a)ホルムアルデヒドとアニリンをアミナールへ転化する工程
b)工程a)で得られたアミナールから水を除去し、アミナールに対して0から5質量%の水含量を設定する工程、及び
c)0〜5質量%の水含量を有するアミナールに酸性触媒を添加する工程
を含むメチレンジフェニルジアミン(MDA)を製造する方法であって、工程a)においてホルムアルデヒドを50質量%を超えるCHO含量を有する高濃度のホルムアルデヒドの形態で用い、且つ当該ホルムアルデヒドをメタノールからの酸化的脱水素により製造することを含む方法により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチレンジフェニルジアミン(MDA)を製造する方法であって、ホルムアルデヒドとアニリンが最初にアミナールに転化される方法に関する。MDAを得るために、少なくとも水の部分的な除去の後に酸性触媒がアミナールへと添加される。ホルムアルデヒドは、50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度の形態で使用され、そのホルムアルデヒドはメタノールからの酸化的脱水素により製造される。
【背景技術】
【0002】
MDAはジフェニルメタン系のポリアミンの代表格である。MDAは特に、ホスゲン化されることにより対応するポリイソシアネート(MDI)を合成する中間体として用いられる。MDAを製造するための方法は以前から知られている。EP−A1616890はMDA製造方法の概要を提供する。一般的に、その製造は、酸性触媒の存在下でのアニリンとホルムアルデヒドの転化(酸性縮合)により実施される。触媒添加の時間に依存して、アニリン及びホルムアルデヒドの縮合を異なる反応工程で進行させることができる。
【0003】
酸性触媒の不存在下では、最初に、ホルムアルデヒドはアニリンと縮合してアミナールと水を形成する。アミナールからMDAへの転位は二段階で進行し、最初の工程は、酸触媒作用下でパラ−又はオルト−ベンジルアニリンへの転位を含む。第二の工程では、アミノベンジルアニリンはMDAへと転位する。アニリン及びホルムアルデヒドの酸触媒反応の主な生成物はジアミン4,4’−MDA、その位置異性体である2,4’−MDA及び2,2’−MDA並びにジフェニルメタン系の高度な同族性ポリアミンである。
【0004】
酸性触媒の存在下では、アニリンとホルムアルデヒドは直接的にアミノベンジルアニリンを形成する。アミノベンジルアニリンは続いて反応して二環式MDA異性体及びより高度な多環式MDAの同族体をもたらす。
【0005】
EP−A1616890に記載された酸触媒によるMDAの製造方法では、酸性の反応混合物中で、20質量%未満の水分含量及び15%未満のプロトン化度が設定されるような方法で、アニリン及びホルムアルデヒドが最初に転化される。酸性反応混合物中での4,4’−MDAに対するp−アミノベンジルアニリンの質量割合が1の値を下まわるとき、反応温度が上昇する。一実施の形態では、その方法は中間体化合物としてのアミナールの形成及びその後の酸性触媒の付加と共に実施され、その場合において、アミナールへの転化後に、最初にアミナールから水を少なくとも部分的に除去することができる。
【0006】
EP−B1063221は溶液を少なくとも一種のさらなる化学化合物と反応させるための方法に関する。その溶液はお互いに化学平衡状態にある少なくとも二種の化学化合物の混合物を含み、ホルムアルデヒド水溶液であっても良い。しかしながら、酸性触媒の存在下でのポリオキシメチレングリコール並びに任意に単量体のホルムアルデヒド及び/又はアニリンを有するメチレングリコールを含むホルムアルデヒド溶液の反応は除外される。
【0007】
WO2004/078678は、50質量%以上のCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液の製造方法に関する。使用される反応物質は低いCH2O含量を有するホルムアルデヒド水溶液であり、この溶液の一部が蒸発される(部分蒸発)。これは、水が液相と比較してガス相中で豊富になる蒸発温度へとホルムアルデヒド水溶液を加熱することを含み、形成されたガス相は連続的に又は不連続的に抜き出される。
【0008】
高濃度ホルムアルデヒド溶液を製造するための更なる方法がWO2005/077877に記載されており、それによると、水は5〜50質量%のホルムアルデヒド含量を有する低濃度ホルムアルデヒド溶液から除去される。これは、低濃度ホルムアルデヒド溶液の予熱器への供給とその中での加熱、それから、加熱されたものの圧力保持装置を用いた減圧及び減圧されたもののらせん管蒸発器内での濃縮を含む。
【0009】
WO2004/078691は、固体物の析出に対して70質量%未満のホルムアルデヒド含量を有する高濃度ホルムアルデヒド溶液を熱的に安定化させる方法に関する。これは、高濃度ホルムアルデヒド溶液をその溶液そのものの製造の直後に80〜200℃の温度へと特定の加熱速度で加熱し、その後に加熱したものをこの温度範囲で保持することを含む。
【0010】
WO2004/078690は、水に対するホルムアルデヒドのモル比が0.6以上であるガス形態の高濃度ホルムアルデヒドを供給する方法に関する。この方法では、ホルムアルデヒド水溶液を蒸発温度へ加熱し、形成されたガス相を抜き出すことにより、ホルムアルデヒドの水溶液の少なくとも一部が最初に蒸発する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP−A1616890
【特許文献2】EP−B1063221
【特許文献3】WO2004/078678
【特許文献4】WO2005/077877
【特許文献5】WO2004/078691
【特許文献6】WO2004/078690
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、中間体としてアミナールを形成する、採算の合うMDAの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その目的は、以下の工程a)〜c):
a)ホルムアルデヒドとアニリンをアミナールへ転化する工程、
b)工程a)で得られたアミナールから水を除去し、アミナールに対して0〜5質量%の水含量を設定する工程、及び
c)0〜5質量%の水含量を有するアミナールに酸性触媒を添加する工程
を含むメチレンジフェニルジアミン(MDA)を製造する方法であって、
工程a)においてホルムアルデヒドを50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒドの形態で用い、且つ当該ホルムアルデヒドをメタノールからの酸化的脱水素により製造することを特徴とする方法により達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による方法は、高濃度のホルムアルデヒドの使用が、その系、特に、工程a)において低い水含量の存在を結果としてもたらすという利点を有する。市販のホルムアルデヒドは通常、約20〜30質量%のホルムアルデヒドの合計濃度(CH2O含量)を有するホルムアルデヒド水溶液の形態である。そのような市販のホルムアルデヒドホルムアルデヒド水溶液の残りの質量割合はもっぱら水に由来する。そうして、そのような市販のホルムアルデヒド水溶液を使用する場合、大量の水がホルムアルデヒドと共にMDA合成に導入される。しかしながら、この水は通常、その合成に必要では無い;それどころか、ホルムアルデヒドとアニリンの転化は水を放出し、基本的に大量の水の添加はMDA形成に逆効果である。
【0015】
第二に、比較的高濃度のホルムアルデヒド水溶液は比較的不安定であり、室温での貯蔵中の沈殿のためにそれらは比較的急速に混濁する。それゆえ、産業上のこれらの安定性の問題のために、比較的低いCH2O濃度の市販のホルムアルデヒド水溶液がMDA合成の際にしばしば用いられ、それゆえ、大量の水が必然的にその系に導入される。しかしながら、また、この高い水の負荷量が、反応器の大きさ、その周辺の物及びその生成物の後工程を決定する。加えて、過剰の水は廃水として処理され、且つ廃棄されなければならない。よって、本発明による方法では、工程a)において、高濃度のホルムアルデヒドを用いるためにその系に少ない水が導入されることは大きな利点である。したがって、工程b)では、比較的少量の水のみが除去されることを必要とし、そのことが、工業規模において、反応器の大きさ及びその関連するコストにプラスの効果をもたらす。
【0016】
本発明による方法のさらなる利点は、酸化的脱水素により、特に、メタノールからの豊富な酸化的脱水素により製造されたホルムアルデヒドの使用が、結果としてその方法中に導入される少ない蟻酸(副産物)をもたらすことである。したがって、また、本発明によるその方法により製造されたMDAは高い純度を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による方法の工程a)〜c)を、以下に詳細に説明する。
【0018】
工程a)では、ホルムアルデヒドとアニリンはアミナールへと転化される。アミナールは、MDAの製造における中間体である。工程a)は、好ましくは、完全に又は実質的に完全に酸性触媒の不存在下で実施される。ホルムアルデヒドに対するアニリンのモル比は、通常、1.5:1〜6:1であり、好ましくは、1.8:1〜5:1である。
【0019】
その温度は、通常、20〜100℃であり、好ましくは、30〜95℃であり、より好ましくは、40〜90℃である。工程a)では、20質量%未満の水含量及び/又は15%未満のプロトン化度が設定されることが好ましい。
【0020】
工程a)では、ホルムアルデヒドは、50質量%を超えるCH2O含量、好ましくは、70質量%以上の、特に、80質量%以上のCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒドの形態で用いられる。50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒドを製造する方法は、当業者にとって公知である。本発明によると、メタノールからの酸化的脱水素により製造されたホルムアルデヒドが用いられる。豊富な酸化的脱水素により製造されたホルムアルデヒドを用いることが好ましい。この文脈で、“豊富な”は、ホルムアルデヒド合成への給送中の酸素に対するメタノールのモル比が、2:1の値に一致するか、又は上回ることを意味する。メタノールの酸化的脱水素により進行するホルムアルデヒド合成は、当業者にとって公知である。そのホルムアルデヒドは、高濃度のホルムアルデヒドとして直接得ることができる;しかしながら、通常、ホルムアルデヒドは最初に低いCH2O含量で製造される。上述するように、50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒドが低いCH2O含量を有するものから当業者によって公知の方法により得られるからである。
【0021】
高濃度のホルムアルデヒドは、水溶液又はガスの形態で用いることができる。
【0022】
本発明の一実施の形態では、工程a)で使用される50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液が低いCH2O含量を有するホルムアルデヒド水溶液から、水が液相と比較してガス相中に豊富になる蒸発温度へのこのホルムアルデヒド水溶液の加熱によってこの水溶液の一部を蒸発させることにより製造され、形成されたガス相は連続的又は不連続的に抜き取られる。
【0023】
ホルムアルデヒド水溶液の蒸発温度Tへの加熱は、数式
T[℃]<Tmax[℃]
[式中、Tmax(c)=A+B×(c/100)+C×(c/100)2+D×(c/100)3であり、
A=+68.759、B=+124.77、C=−12.851、D=−10.095であり、
cは、蒸発の間のホルムアルデヒド水溶液中に存在するCH2O含量(質量%)であって、20〜99質量%である。]で提供されることが好ましい。
【0024】
この実施の形態のホルムアルデヒド水溶液を、攪拌槽、らせん管、薄膜蒸発器又は他の熱交換器の特性を有する装置中で蒸発させることが好ましい。その蒸発の間の圧力は、好ましくは、0.1〜50バールである。
【0025】
本発明のさらなる実施の形態では、工程a)で使用されるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液が、低いCH2O含量を有するホルムアルデヒド水溶液を予熱器へと供給し、供給されたものをその予熱器中で加熱し、加熱されたものを圧力保持装置を用いて減圧し、そして蒸気流を得ると共に底部流として50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液を得るためのらせん管蒸発器中で減圧されたものを濃縮することにより、低いCH2O含量を有するホルムアルデヒド水溶液から製造される。
【0026】
この実施の形態において、低いCH2O含量を有するホルムアルデヒド水溶液は圧力保持装置中で減圧され、その後らせん管蒸発器へと供給される二相混合物を提供することが好ましい。加えて、二相混合物がらせん管蒸発器へと供給される前に、ストリッピングガス及び/又は安定剤をその二相混合物へと添加することができる。ストリッピングガスは好ましくは窒素であり;安定剤は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、尿素又はメラミンである。
【0027】
好ましくは、らせん管蒸発器中では、その形状及びその操作条件、特に、らせん管蒸発器を通って流れる二相混合物中の合計の流速及びガス含量の適切な選択が波状膜流を設定する。加えて、らせん管蒸発器内の二相混合物の集中的な混合のための装置、特に、バルブ、絞り弁、リブ又はワイヤーニット(wire knits)を用いることが有利である。加えて、凝縮器、好ましくは表面凝縮器、特に急冷凝縮器(quench condenser)中でらせん管蒸発器からの蒸気流を部分的に又は完全に凝縮することが有利である。任意に、らせん管蒸発器からの蒸気流の凝縮部分及び/又は底部流を、全体的に又は部分的に予熱器中に再生利用させることができる。
【0028】
本発明の更なる実施の形態では、工程a)中の50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液は、その高濃度のホルムアルデヒド溶液そのものを製造後直ちに80℃以上200℃以下の温度へと少なくとも5℃/分の加熱速度で加熱し、且つそれをこの温度範囲で保持することにより、固形物の析出に対して安定である。
【0029】
加熱速度は、好ましくは、少なくとも10℃/分であり、及び/又は、加熱は100℃以上150℃以下の温度で実施される。高濃度ホルムアルデヒド溶液は、好ましくは、薄膜蒸発器中の低濃度のホルムアルデヒド溶液から得られる。
【0030】
本発明のさらなる実施の形態では、50質量%を超えるCH2O含量を有し、且つ0.6以上のH2Oに対するCH2Oのモル比を有するガス状の高濃度のホルムアルデヒドが工程a)で用いられ、そのガス状の高濃度のホルムアルデヒドはホルムアルデヒド水溶液の少なくとも一部を蒸発させることにより製造される。
【0031】
好ましくは、この実施の形態では、そのホルムアルデヒド水溶液は蒸発温度Tへと加熱され、形成されたガス相は抜き出される。ここで、蒸発温度Tは、数式
T[℃]≧T’min[℃]
[式中、T’min(c)=A+B×(c/100)+C×(c/100)2+D×(c/100)3であり、
A=+68.759、=+124.77、C=−12.851、D=−10.095であり、
cは、蒸発の間のホルムアルデヒド水溶液に存在するCH2O含量(質量%)であり、20〜99質量%である。]で表わされる。
【0032】
蒸発の最中の圧力は、好ましくは、0.1〜50バールである。H2Oに対するCH2Oのモル比は、1.4以上である。加えて、攪拌槽、らせん管、薄膜蒸発器又は他の熱交換器の特性を備える装置中で蒸発が実施されることが好ましい。
【0033】
本発明による方法の工程b)では、工程a)で得られたアミナールから水が除去される。これは、アミナールに対して0〜5質量%の水含量を確立する。最初に、水は工程a)におけるアミナール合成の第二の主な生成物として得られ、次に、工程a)において使用された反応物(50質量%を超えるCH2O含量を有する高濃度のホルムアルデヒド)中に痕跡量存在する。
【0034】
工程b)では、アミナールに対して、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜4質量%の水含量が確立される。その水含量は、“Jander,Jahr,Maβanalyse[Quantitative Analysis],第15版、de Gruyter,Berlin(1989年)、289〜292頁”等に記載されるカール−フィッシャー法等により決定される。
【0035】
本発明による方法の工程c)では、酸性触媒が0〜5質量%の水含量を有するアミナールに添加される。
【0036】
使用される酸性触媒は強い有機酸又は強い無機酸で良い。好適な酸は、塩酸(HCl)、硫酸、リン酸及びメタンスルホン酸等である。本発明による方法では、塩酸水溶液を用いることが好ましい。塩酸水溶液は、一般的に、25〜36質量%の濃度で存在する。本発明の一実施の形態では、ガス状のHClを用いることが好ましい。
【0037】
触媒量の酸性触媒を添加することが好ましい。これは、アミナールに対して著しく少ない量の触媒が用いられることを意味する。それゆえ、酸性触媒が水溶液の形態で用いられるとき、工程c)では工程a)に対してはるかに小さい量の水がその反応系に導入される。酸性触媒の添加の結果として、アミノベンジルアニリン中間体を介したアミナールのMDAへの上述の転位を進行させることができる。HClの大部分はアニリン及びMDAに結合するので、用いられるHClの特定の量が、特定されたプロトン化度から計算される。本発明による方法を用いることにより、4,4’−MDAが主産物として製造され、副産物として2,4’−MDA及び2,2’−MDAが製造され、且つあるいはさらに高い同族体が製造される。本発明による方法は、4,4’−MDA異性体に対する2,4’−MDA異性体の質量割合が0.05と0.15の間であるMDAを得ることができるという効果が達成される。
【0038】
酸性触媒は、工程c)中で0〜5質量%の水含量を有するアミナールに混合することにより、特に、20〜60℃の温度で添加される。0〜5質量%の水含量を有するアミナールは酸性触媒と、10kW/m3を超える特定の電源入力の混合空間、より好ましくは20kW/m3を超える特定の電源入力の混合空間で混合される。好ましくは、工程c)での酸性触媒の添加の後に、そのアミナールは20〜100℃の温度で及び/又は0〜20質量%の水含量でMDAへと転位(転化)される。工程c)では、酸性触媒の量は15%未満、好ましくは5〜14%、より好ましくは6〜13%のプロトン化度が設定されるように選択される。
【0039】
本発明のさらなる実施の形態では、酸性反応混合物中の4,4’−MDAに対するp−アミノベンジルアニリンの質量割合の比が1.00の値を下まわるときは、任意に、反応(転位)温度を110〜250℃の値へと上昇させることができる。反応混合物の温度は段階的に又は連続的に上昇させることができ、且つ任意に上昇した圧力下で上昇させることができる。その温度は好ましくは110〜180℃であり、特に110〜160℃である。その質量割合を超えるべきではない前述の値は、好ましくは0.50、より好ましくは0.25、特に0.2である。
【0040】
任意に、塩、(弱い)有機酸又は無機酸等のさらなる物質が本発明による方法中に存在してもよい。任意に、本発明による方法中に得られる反応生成物(MDA)はさらに、塩と混合する等の後工程を行うことができる。そのような後工程は、当業者にとって公知である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程a)〜c):
a)ホルムアルデヒドとアニリンをアミナールへ転化する工程
b)工程a)で得られたアミナールから水を除去し、アミナールに対して0〜5質量%の水含量を設定する工程、及び
c)0〜5質量%の水含量を有するアミナールに酸性触媒を添加する工程
を含むメチレンジフェニルジアミン(MDA)を製造する方法であって、
工程a)においてホルムアルデヒドを50質量%を超えるCHO含量を有する高濃度のホルムアルデヒドの形態で用い、且つ当該ホルムアルデヒドをメタノールからの酸化的脱水素により製造すること
を含む方法。
【請求項2】
70質量%以上のCHO含量を有する高濃度のホルムアルデヒドを工程a)において使用する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高濃度のホルムアルデヒドを水溶液又はガス形態として用いる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)で使用する酸性触媒が、強い有機酸又は強い無機酸、特に、HClである請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程c)における酸性触媒の添加後に、20〜100℃の温度及び/又は0〜20質量%の水含量でアミナールがMDAに転位する請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)でアニリンとホルムアルデヒドが、1.5:1〜6:1のモル比で、且つ20〜100℃の温度で転化する請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)において使用する50質量%を超えるCHO含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液を低いCHO含量を有するホルムアルデヒド水溶液から、水が液相と比較してガス相中に豊富になる蒸発温度へと当該ホルムアルデヒド水溶液を加熱してこの水溶液の一部を蒸発させることにより製造し、且つ
形成された前記ガス相を連続的に又は非連続的に抜き出す請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)で使用する50質量%を超えるCHO含量を有する高濃度のホルムアルデヒド溶液を、
低いCHO含量を有するホルムアルデヒド水溶液を予熱器に供給し、当該水溶液を予熱器中で加熱し、加熱したものを圧力保持装置を用いて減圧し、そして減圧したものをらせん管蒸発器中で濃縮させて蒸気流及び底部流としての50質量%を超えるCHO含量を有する高濃度ホルムアルデヒド溶液を得ることにより、低いCHO含量を有するホルムアルデヒド水溶液から製造する請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)で使用する50質量%を超えるCHO含量を有する高濃度ホルムアルデヒド溶液を、
当該高濃度ホルムアルデヒド溶液そのものの製造後直ちに当該高濃度ホルムアルデヒド溶液を80℃以上200℃以下の温度へと少なくとも5℃/分の加熱速度で加熱し、加熱したものをこの範囲の温度で維持することにより、固形物の析出に対して安定化させる請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
50質量%を超えるCHO含量及び0.6以上のHOに対するCHOのモル比を有するガス形態の高濃度ホルムアルデヒドを工程a)で使用し、
前記ガス形態の高濃度ホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒド水溶液の少なくとも一部の蒸発により製造する請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−524046(P2012−524046A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505185(P2012−505185)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055126
【国際公開番号】WO2010/121990
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】