説明

アミノシクリトール化合物、それらを得る方法およびその使用

本発明は、アミノシクリトール化合物および、iNKT細胞における変化に関連する疾患、より詳しくは、自己免疫疾患、ガン、病原性微生物による感染または炎症性疾患の治療用の医薬組成物としてのそれらの使用に関する。さらに、本発明は、それらの化合物を得る方法に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)で表される化合物および、iNKT細胞における変化に関連する疾患、より詳しくは、自己免疫疾患、ガン、病原性微生物による感染または炎症性疾患の治療用の医薬組成物としてのそれらの使用に関する。さらに、本発明は、それらの化合物を得る方法に関連する。かくして、本発明は、化学および/または医薬分野に包含される。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラーT細胞、NKTは、広範囲の免疫反応を調節するリンパ球のクラスである。NKT細胞のサブクラス、インバリアントNKT細胞(iNKT)は、MHC CD1dタンパク質で提示され、サイトカインの分泌を促進することで様々な免疫反応に関与する糖脂質タイプの抗原を認識する。これらの細胞の役割は、自己免疫、腫瘍応答、微生物感染の調節において、ぜんそくのような炎症プロセスの病因において、説明されてきた。
【0003】
合成糖脂質α-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)は、iNKT細胞と表記されるインバリアントT細胞レセプター(TCR)を刺激するCD1dによって提示されることが知られている最初の抗原であった。α-GalCerは、α配置のフィトセラミド第1ヒドロキシルに結合したガラクトースを含有する海綿体から単離された抗腫瘍化合物の最適化構造アナログであり、窒素中、長鎖脂肪酸でアシル化されることが分かった。その発見以来、α-GalCerは、iNKT細胞を刺激するための抗原プロトタイプであったが、CD1タンパク質で提示される抗原として作用する他の糖脂質も同定された。NKT細胞の刺激におけるα-GalCerの並外れた有効性は、Th1-およびTh2-タイプのサイトカインの同時放出から誘発され、反対の細胞効果を奏し、かつ、ホメオスタシスバランスを修復し、免疫モジュレーターとしてのα-GalCerの効能を制限する前のアネルギー期を決定する一連の生体応答を増進する。
【0004】
一方、提示タンパク質CD1dとの糖脂質相互作用の構造決定基が、タンパク質CD1dおよびTCRに結合したα-GalCerの複合体の結晶構造とともに、知られている。これらの構造研究は、セラミドが、脂質鎖が挿入される2つの疎水性ポケット内のCD1dに結合することを示し、水素結合の網が、結合サイトから突出するガラクトースの位置をブロックし、その認識のため、TCRに対して提示され、そこでは、糖脂質におけるヒドロキシル基が重要な役割を演じる。
【0005】
α-GalCerによるNKT細胞の刺激の驚くべき有効性には問題がないわけではなく、実際は、より低い有効性の化合物が得られることを犠牲にしてでも生物学的特性を増進する目的で、同様の化合物の設計および合成が進められ、主に、誘発サイトカインの産生におけるTh1/Th2比の調節に向けられる。
【0006】
いくつかの手法が、α-GalCerのアナログ化合物の設計について、主に、脂質の長さまたは性質の変化(cfr. C. McCarthy, et al., J Exp Med 2007, 204, 1131; M. Trappeniers, et al., ChemMedChem 2008, 3, 1061; K. Fuhshuku, et al., Bioorg Med Chem 2008, 16, 950; T. Tashiro, et al., Bioorg Med Chem 2008, 16, 8896)または他の単−もしくは多糖類によるガラクトースの置換(cfr. T. Kawano et al., Science 1997, 278, 1626)、および種々の他の関連する置換基(cfr. US2007238871A1)に関連して、記載されてきた。直鎖非グリコシド基を持つα-GalCerアナログのいくつかはiNKT細胞を活性化し、免疫反応を誘発し、そのことは、α-GalCerのガラクトース環の構造的修飾の導入後、糖脂質効果を調節することが可能であると実証する(cfr. J. D. Silk et al., J Immunol 2008, 180, 6452; R. W. Franck, Acc Chem Res 2006, 39, 692)。
【0007】
上記に鑑み、新規糖脂質タイプ化合物、またはα-GalCerのような既知の糖脂質アナログのいずれかの発見が、細胞−媒介免疫反応の調節を可能にし、医薬、アジュバント、ワクチンおよび、NKT細胞を刺激するようにデザインされたいかなる免疫治療の開発に有用であることは適切であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、NKT細胞を刺激し活性化することができる糖脂質アナログ化合物、Th2-タイプサイトカインの優先産生とともに提供する。これらの化合物の構造は、セラミドタイプ脂質の第1ヒドロキシルに第2級アミン結合によって結合するポリヒドロキシル化シクロヘキシルアミンの存在下、構成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の局面は、一般式(I):
【0010】
【化1】

(式中:
R1は置換または非置換の(C5-C35)アルキル基、
R2, R3, R4およびR5は、同一または互いに相違して、水素(H)、ヒドロキシル(OH)、置換または非置換の、アルコキシル(ORa)または(C1-C6)アルキルよりなる群から選択され;
R6は、置換または非置換の、(C5-C35)アルキル、アリール、シクロアルキルまたはヘテロ環よりなる群の基から選択され;および
----は、二重結合の存在または非存在を示す。)で表される化合物、またはその異性体、塩および/またはそれらの溶媒和物(以下、「本発明の化合物」という。)に関する。
【0011】
用語「アルキル」は、本発明において、R1および/またはR6の場合、直鎖状または分枝状で、6から35個の炭素原子を有する脂肪族鎖に関する。R2, R3, R4 および/またはR5の場合、用語アルキルは、直鎖状または分枝状で、1から6個の炭素原子を有する脂肪族鎖、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルに関し、好ましくは1から3個の炭素原子を有する。アルキル基は、任意で、ハロゲン、ヒドロキシル、アジド、カルボン酸または、アリール、ヒドロキシル、アミン、アミド、エステル、カルボン酸、エーテル、チオール、アシルアミンもしくはカルボキサミドから選択される置換または非置換の基のようない以上の置換基で置換され得る。アルキル基がアリールで置換されたとき、「アリールアルキル」と記載し、例えば、限定されないが、ベンジル基の場合である。
【0012】
用語「アルコキシル」は、本発明において、式-ORa(Raは、(C1-C8)アルキル、例えば、限定されないが、メトキシル、エトキシルまたはプロポキシルである。)で表される基に関する。好ましくは、アルコキシルはメトキシルである。
【0013】
用語「アリール」は、本発明において、6から18個の炭素原子を有する芳香族炭素環鎖に関し、単一または複数の環であってよく、後者の場合、分離および/または縮合環である。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、ナフチル、インデニルなどの基である。好ましくは、アリール基はフェニルである。
【0014】
「シクロアルキル」は、飽和または部分的に飽和し、炭素および水素原子のみから構成された、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはアダマンチルのような3から10員の安定したモノサイクリックまたはバイサイクリックラジカルに関する。
【0015】
用語「ヘテロサイクリック」は、不飽和、飽和または部分的に飽和し、炭素原子および、窒素、酸素または硫黄からなる群より選択される少なくとも1のヘテロ原子から構成された、3から10員の安定したモノサイクリックまたはバイサイクリックラジカルに関する。好ましくは、ヘテロ原子は、窒素であり、より好ましくは、環は、5−または6−員環である。ヘテロシクロアルキルの例は、限定されないが、ピペリジン、ピペラジン、プリン、ピラゾリンまたはピロリジンである。
【0016】
本発明の化合物の好ましい具体例において、R1は(C7-C25)アルキル基である。
【0017】
本発明の化合物のもうひとつの好ましい具体例において、R2, R3, R4および/またはR5は、ヒドロキシルである。より好ましくは、R4はヒドロキシルおよび/またはR5は水素および/またはR3はヒドロキシルまたはヒドロキシアルキルであり、より好ましくは、ヒドロキシアルキル(R3)はヒドロキシメチルおよび/またはR2は水素、ヒドロキシルまたはアルコキシル基であり、その場合、アルコキシルは、より好ましくは、メトキシルである。
【0018】
本発明の化合物の好ましい具体例において、R6は(C10-C20)アルキル基である。
【0019】
より好ましい具体例において、本発明の化合物は、
(2S,3S,4R)-2-オクタンアミド-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'sr,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-オクタンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S,6'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシ-6-メトキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'S,6'R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,6,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'R,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;
よりなる群から選択され、またはそれらのいずれかの塩、好ましくは塩酸である。
【0020】
本発明のもう一つの局面は、好ましくは、自己免疫疾患、ガン、病原性微生物により引き起こされる炎症、炎症性疾患および、一般に、治療または予防が、iNTK細胞の刺激で、本発明に記載の生成物によって示される生物学的活性から利益がありそうないかなる疾患の治療および/または予防用の医薬または医薬組成物の調製に使用する一般式(I)で表される化合物または、その塩、誘導体もしくは溶媒和物または医薬上許容されるそのプロドラッグのいずれかに関する。
【0021】
一般式(I)で表される化合物も、ワクチンまたはワクチン接種アジュバントの調製、または当業者に知られている免疫系反応を活性化する他の方法に用い得る。
【0022】
病原性微生物によって引き起こされる感染性疾患は、例えば、インフルエンザ、AIDSまたは肝炎のようなウイルス感染;例えば、クラミジア症、結核、連鎖救菌症、または緑膿菌病のような細菌感染;または、例えば、リーシュマニア症、マラリアまたはトリパノソーマ症のような寄生虫感染であってよい。
【0023】
自己免疫および/または炎症性疾患は、限定されないが、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン症候群、リウマチ性関節炎、ぜんそく、慢性閉そく性肺疾患(COPD)、慢性大腸炎またはいくつかのアレルギーよりなる群から選択することができる。
【0024】
この明細書で用いるとき、用語「ガン」または「ガン性」は、組織に浸潤するか、原発腫瘍から離れた場所に転移を発生させることができる腫瘍細胞の変性に関する。ガンの例は、限定されないが:乳ガン、婦人科系ガン、結腸ガン、前立腺ガン、皮膚ガン、肝細胞ガン、肺ガン、食道ガン、胃ガン、膵臓ガン、膀胱ガン、肝臓ガン、尿路ガン、甲状腺ガン、腎臓ガン、メラノーマ、脳ガン、肉腫、リンパ腫または白血病である。
【0025】
式(I)で表される本発明の化合物は、複数結合(例えば、Z, E)の存在に依存して、異性体を含み、キラル中心の存在に依存して光学異性体またはエナンチオマーを含む。個別の異性体、エナンチオマーまたはジアステレオ異性体およびそれらの混合物は、本発明の範囲に入る。すなわち、用語「異性体」は、ジアステレオマー、ラセミなどとしての異性体のいかなる混合物、さらには、その光学的に活性な異性体または、それらの異なる比率の混合物にも関する。個別のエナンチオマーまたはジアステレオマーならびにそれらの混合物は、標準技術で分離できる。
【0026】
ここで用いるとき、用語「誘導体」は、医薬上許容される化合物、すなわち、医薬の調製に用い得る式(I)の化合物の誘導体、および医薬上許容されない誘導体の双方を含む。なぜならば、それらは医薬上許容される誘導体の調製に有用だからである。医薬上許容される誘導体の性質は、それが医薬上許容される限りにおいて重要ではない。
【0027】
同様に、本発明の範囲内で、式(I)で表される化合物のプロドラッグが見いだされる。ここで用いるとき、用語「プロドラッグ」は、式(I)で表される化合物に由来するいかなる化合物―例えば、限定されないが:エステル(カルボン酸エステル、アミノ酸エステル、リン酸エステル、金属塩スルホン酸エステルなど)、カルバメート、アミドなど−個体に投与したとき、その個体において、直接的または間接的に式(I)で表される化合物に転換し得るものを含む。有利には、当該誘導体は、個体に投与されたとき、式(I)で表される化合物の生体利用性を向上するか、または、生体コンパートメント (a biological compartment)における式(I)で表される化合物の放出を促進する化合物である。当該誘導体の性質は、それが個体に投与でき、個体の生体コンパートメントにおいて式(I)で表される化合物を提供する限りにおいて重要ではない。当該プロドラッグの調製は、当業者に知られている標準方法によって実行することができる。
【0028】
本発明の化合物は、遊離化合物としてまたは溶媒和物として結晶構造であり得る。この意味において、ここで用いるとき、用語「溶媒和物」は、医薬上許容される溶媒和物すなわち、医薬の調製に用い得る式(I)で表される化合物の溶媒和物、および医薬上許容される溶媒和物または塩の調製に有用な医薬上許容されない溶媒和物の双方を含む。医薬上許容される溶媒和物の性質は、それが医薬上許容される限りにおいて、重要ではない。特別の具体例において、溶媒和物は水和物である。溶媒和物は、当業者に知られている溶媒和標準方法によって得られる。
【0029】
治療におけるその用途に関して、式(I)で表される化合物、その誘導体、異性体、塩、プロドラッグまたは溶媒和物が、好ましくは、医薬上許容されるまたは実質的に純粋な形態で、すなわち、医薬上許容されるレベルの純度を有し、希釈剤および担体のような通常の医薬添加物を排除し、通常用量レベルにて毒性があると考えられない物質を含まずに、見いだされる。活性成分に対する純度のレベルは、好ましくは50%より高く、より好ましくは70%より高く、さらにより好ましくは90%より高い。好ましい具体例において、それらは、式(I)で表される化合物、その塩、溶媒和物またはプロドラッグの95%より高い。
【0030】
式(I)で表される本発明の化合物は、化学合成経路により入手すなわち製造ができ、または、異なる起源の天然物質から入手できる。
【0031】
本発明のもうひとつの局面は、本発明の式(I)で表される化合物または異性体、その塩および/またはその溶媒和物を得る方法であって、スキーム1に概略される以下のステップ:
A)一般式(II)で表されるアミノシクリトールの調製を、
A1)ヒドロキシル置換基が保護基(PG)、好ましくはベンジルでブロックされているシクロヘキシルまたはシクロヘキシルアジド(一般式(III))を還元することにより、または
A2)ヒドロキシル置換基が保護基(PG)、好ましくはベンジルでブロックされているシクロヘキシルまたはシクロヘキシルハロゲン化物またはスルホネート(一般式(IV))をアンモニアまたは他のアミンでの置換することにより、
行い;
B)フィトスフィンゴシンまたはアナログ分子の活性化を、
B1)ヒドロキシル置換基が保護基(PG)、好ましくはベンジルでブロックされているアルデヒド(VI)を調製することにより、または
B2)ジオールのヒドロキシル置換基が保護基、好ましくはベンジルもしくはイソプロピリデンでブロックされているアジリジン(V)の生成により、
行い;
C)ステップ(A)に準じて得られたアミノシクリトールと、
C1)還元的アミノ化による、ステップ(B1)で得られたアルデヒド、または
C2)求核攻撃による、ステップ(B2)で得られたフィトスフィンゴシン‐誘導化アジリジン;
とのカップリングを行い;ついで、
D)フィトスフィンゴシンに存在するアミンのカルボン酸またはその誘導体でのアシル化とその後の保護基の除去;
【0032】
【化2】


(式中:R1, R2, R3, R4, R5およびR6は、上記と同じであり;Xはハロゲン化物またはスルホネート;およびPGは保護基である。)
を含む方法に関する。
【0033】
本発明のもう一つのさらなる局面は、iNKT細胞の刺激による疾患の治療および/または予防に有用な医薬組成物(以下、「本発明の医薬組成物」という。)であって、患者に投与するため、式(I)で表される化合物または化合物の混合物、または医薬上許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、誘導体またはその立体異性体を治療上有効量で、医薬上許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとともに含む医薬組成物に関する。
【0034】
当該組成物に用い得る医薬上許容されるアジュバントおよびビヒクルは、当業者に知られ、治療用組成物の調製に通常用いられているアジュバントおよびビヒクルである。
【0035】
本明細書で用いる意味において、表現「治療上有効量」は、治療作用を発揮することができる剤または化合物の量に関し、薬理学特性によって決定され、意図する効果を生じることについて算出され、および、一般に、それは、年齢、患者の体調、障害または疾患の重篤度、ならびに投与の経路および頻度を含む他の理由のなかでも、化合物自体の特徴によって決定される。
【0036】
本発明に記載される化合物、その誘導体、塩、プロドラッグおよび/または溶媒和物ならびに、それらを含む医薬組成物を、複合治療を提供する他の付随的な薬物または活性成分とともに用い得る。それらの付随的な薬物は同一医薬組成物の部分であり得、または、その代わりに、式(I)で表される化合物、またはプロドラッグ、溶媒和物、誘導体またはその塩を含む医薬組成物のそれに同時またはそれと異なる投与用の個別組成物の形態で提供され得る。
【0037】
もう一つの特別の具体例において、当該治療用組成物は、固体または、医薬上許容される希釈剤中の水性懸濁物の形態で調製される。本発明により提供される治療用組成物は、いかなる適当な投与経路で投与し得、そのため、当該組成物は選択された投与経路に適した医薬剤型に調剤される。特別の具体例において、本発明により提供される治療用組成物の投与は、経口、局所、経直腸または非経口(皮下、腹腔内、皮内、経粘膜、静脈内などを含む)で達成される。
【0038】
本発明の化合物の使用は、式(I)で表される化合物またはそれらの混合物が、それ自体または、他の治療もしくはいずれかの医療手順と組み合わせて用いられるプロトコルでのその使用と矛盾しない。
【0039】
本明細書および特許請求の範囲にわたって、語句「含む」およびその変形は、他の技術的特徴、添加物、成分またはステップを排除する意図はない。当業者にとって、他の目的、利点および特徴は、ある程度、本明細書から、ある程度、本発明の実施から明らかになる。以下の実施例および図面は例示のために提供され、本発明を制限する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】異なる化合物とともに5.5日間インキュベートしたマウス脾臓細胞のフローサイトメトリーによる分析を示す。化合物を1%のメタノール(MeOH)入りの完全培地中で最終濃度1 μg/mLにてアッセイし、αGalCer(αGC)を0.2 μg/mLにて用いた。細胞培養を抗-NK1-PEおよび抗-TCR-FITC特異的抗体で標識した。NKT細胞(二重陽性細胞)のパーセンテージは電子的に選択されたT細胞の個体数内で算出された。
【図2】アミノシクリトールタイプの化合物がNKT細胞を刺激するためにサイトカインを誘発する能力を示す。3 B6マウスに由来する脾臓細胞を合わせ、1 μg/mLのアミノシクリトールまたは0.1 μg/mLのα-GalCer(αGC)で4倍に培養し、4日目の培養の上清に存在するIFNγ(図2A)およびIL-4(図2B)サイトカインをELISA(2測定)で決定した。データは、代表的実験の平均±SDを示す。*は、アッセイする化合物なしの対象培養に対する統計的に有意な結果を示す。
【図3】化合物4bがいかにしてNKT細胞によって産生されるTh1-およびTh2-タイプのサイトカインを誘発するかを示す。用量−応答アッセイにおける、iNKT細胞の脂質アゴニストを含有するマウス脾臓細胞の培養のin vitro刺激後のIFNγ(図3A)およびIL-4(図3B)の産生の定量。データは、2匹のマウスの代表的実験の平均+SD、表示された濃度のアゴニストにて各マウスの2重培養および各培養上清について3 ELISAの決定を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0041】
以下、本発明の化合物の選択方法を開発した本発明者らによって実行されたいくつかのアッセイにより、本発明を例証する。
【0042】
フィトスフィンゴシン−誘導化アミドの調製
実施例1:
N-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-ヒドロキシオクタデカン-2-イル)オクタンアミド
THF(テトラヒドロフラン) (10 mL)中の249 mg (0.5 mmol)の3,4-ジ-O-ベンジルフィトスフィンゴシン (C. Xia et al. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 2006, 16, 2195-2199)の溶液に、オクタン酸(143 mg, 1.1 mmol)およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸(EDC, 1.1 mmol)を添加し、ついで、反応混合物を還流にて3時間撹拌する。混合物を室温にまで冷却し、ついで、NH4Cl飽和溶液を添加する。それをEt2O(エチルエーテル)で抽出し、無水Na2SO4で乾燥する。固体をろ過し、溶媒を蒸発させて粗生成物を得、それを混合物(酢酸エチル/ヘキサン 1:10から1:5 v:v)を用いるシリカゲルクロマトグラフィーで精製する。生成物(249 mg)を油状物質の形態で、81%収率で得る。
【0043】
[α]D = -32.3 (CDCl3, c, 1.0); IR (ニート, cm-1): 3305, 2929, 1654, 1540, 1070; 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.35 (m, 10H); 6.06 (d, J = 8.5, 1H); 4.73 (d, J = 12, 1H); 4.67 (d, J = 12, 1H); 4.62 (d, J = 12, 1H); 4.46 (d, J = 12, 1H); 4.15 (m, 1H); 4.00 (dd, J = 11.5, 3, 1H); 3.70 (m, 2H); 3.62 (dd, J = 11.5, 4.5 1H); 3.05 (br, 1H); 2.00 (m, 2H),1.77-1.41 (m, 6H); 1.26 (m, 30 H); 0.88 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.8, 138.1, 137.7, 128.6-127.7 (10 C), 82.1, 79.0, 73.0, 72.8, 62.9, 50.5, 36.6, 31.8, 31.6, 30.7, 29.6-29.0 (11 C), 25.9, 25.6, 22.6 (2C), 14.0 (2C). HRMS (高分解能質量分析). C40H65NO4 (M+H+)の理論値:624.4992. 分析値: 624.5015.
【0044】
実施例2:
N-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-ヒドロキシオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミド
実施例1に記載されたものと同様の方法において、アミドを、302 mgのヘキサコサン酸、251 mgの3,4-ジ-O-ベンジルフィトスフィンゴシンおよび215 mgのEDCから無色固体で得る(83%)。
【0045】
Pf: 102-103; [α]D = -27.2 (CDCl3, c, 1.0); IR (ニート, cm-1): 3310, 2945, 1659, 1533, 1063; 1H-NMR (CDCl3, 100 MHz); δ 7.34 (m, 10 H); 6.03 (d, J = 8, 1H); 4.72 (d, J = 11.5, 1H); 4.66 (d, J = 11.5, 1H); 4.61 (d, J = 11.5, 1H); 4.45 (d, J = 11.5, 1H); 4.13 (m, 1H); 3.99 (dd, J =11.5, 3 1H); 3.70 (m, 2H); 3.61 (dd, J = 11.5, 4.4, 1H); 3.05 (br, 1H); 2.00 (m, 2H),1.76-1.40 (m, 6H); 1.27 (m, 66H); 0.87 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.8, 138.1, 137.8, 128.7-127.8 (10C), 82.3, 79.0, 73.0, 72.9, 63.0, 50.5, 36.7, 31.9 (2C), 30.8, 29.7-29.3 (29C), 26.0, 25.6, 22.7 (2C), 14.1 (2C). HRMS. C58H101NO4 (M+H+)の理論値: 876.7609. 分析値:876.7828.
【0046】
アルデヒドの調製
実施例3:
N-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-オキソオクタデカン-2-イル)オクタンアミド
[M. Ocejo, et al Synlett 2005, 13, 2110-2112]に記載の方法に準じて、23 mg(0.2 mmol)の実施例1で調製されたN-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-ヒドロキシオクタデカン-2-イル)オクタンアミドを酢酸エチル(AcOEt) (40 mL)に溶解し、224 mg(0.8 mmol)にo-ヨードキシ安息香酸(IBX)を室温にて添加する。それを3時間還流まで加熱し、次いで、混合物を室温にし、ヘキサン(40 mL)で希釈し、固体をろ過する。ろ液を蒸発させて120 mgのアルデヒドをほぼ100%の高い純度で得る。この物質を即座に次の反応に用いる。
【0047】
IR (フィルム, cm-1): 3383, 2903, 1708, 1497, 1041, 738. 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ: 9.67 (s, 1H), 7.30-7.28 (m, 10H); 6.06 (d, J = 7.5, 1H); 4.96 (dd, 7.5, J = 2.5, 1H); 4.61 (m, 2H); 4.54 (m, 2H); 3.94 (m, 1H); 3.62 (q, J = 5.5, 1H); 2.04 (m, 2H); 1.71 (m, 2H); 1.53 (m, 2H); 1.28 (m, 32H); 0.90 (t, J = 7, 6H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 198.0, 172.1, 137.3, 137.1, 128.5-127.8 (10C), 81.3, 76.6, 72.0, 71.5, 58.6, 36.8, 31.9, 30.3, 29.6-28.9 (13C), 25.5, 24.6, 22.8, 14.1(2C).
【0048】
実施例4:
N-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-オキソオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミド.
実施例3の手順に準じて、実施例2により得られたN-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-ヒドロキシオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドのIBXでの酸化によってアルデヒドを得る。
【0049】
IR (フィルム, cm-1): 3381, 2900, 1711, 1502, 1045, 740. 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ: 9.68 (s, 1H), 7.39-7.28 (m, 10H); 6.06 (d, J = 8, 1H); 4.96 (dd, J = 7.5, 2.5, 1H); 4.62 (d, J =11, 1H) 4.61 (d, J = 11, 1H); 4.54 (d, J = 11, 1H) 4.53 (d, J = 11, 1H); 3.94 (dd, J = 5.5, 2.5, 1H); 3.63 (q, J = 5.5, 1H); 2.04 (m, 2H), 1.72 (m, 2H); 1.53 (m, 2H); 1.28 (m, 68H); 0.90 (t, J = 7, 6H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 198.1, 173.5, 137.5, 137.4, 128.6-127.8 (10C), 81.5, 76.9, 72.1, 71.7, 58.7, 36.4, 31.9, 30.1, 29.7-29.2 (31C), 25.5, 24.7, 22.7, 14.1(2C).
【0050】
還元的アミノ化
実施例5:
(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)オクタンアミド
アルゴン雰囲気下で、メタノール/CH2Cl2 (1:3, v/v) (4 mL)中の158 mg(0.25 mmol)の(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2,3,4,5,6-ペンタキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサンアミン[Serrano et al. J Org Chem 2005, 70, 7829]の溶液を、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(3当量)、酢酸(20 μL)および、実施例3の手順に準じて得られたN-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-オキソオクタデカン-2-イル)オクタンアミドで、続けて、この順序で、処理する。これを18時間室温にて撹拌し、混合物を水(3 mL)で処理し、酢酸エチル(3 X 20 mL)で抽出する。有機抽出物を合わせ、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。固体をろ過し、揮発物質を蒸発させて、粗生成物を得、それをヘキサン/酢酸エチル(3:1から1:1, v/v)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、89 mg, 0.07 mmol (29%)の生成物を透明油状物質の形態で得る。
【0051】
[α]D = -6.0 (CDCl3, c, 1.0); IR (ニート, cm-1): 3336, 2915, 2847, 1642,1451, 1048; 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.35-7.20 (m, 35 H); 6.39 (d, J = 8.5, 1H); 4.96-4.83 (m, 7 H); 4.78 (d, J = 11.5, 1H); 4.74 (d, J = 11.5, 1H); 4.65 (d, J =, 11.5, 1H); 4.58 (d, J = 11.5, 1H); 4.54 (d, J = 11.5, 1H); 4.50 (d, J = 11.5, 1H); 4.40 (d, J = 11.5, 1H); 4.08 (m, 1H); 3.71 (dd, J = 5, 4, 1H); 3.57 (m, 3H); 3.45 (m, 1H); 3.24 (m, 3H); 2.95 (dd, J = 13, 4.5, 1H); 2.58 (t, J = 10, 1H); 1.75 (m, 2H), 1.58 (m, 2H); 1.40 (m, 4H); 1.28 (m, 30H); 0.90 (t, J = 7, 3H); 0.88 (t, J = 7, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.6, 138.6, 138.5, 138.3, 138.2 (2C), 138.1 (2C), 128.4-127.1 (35C), 84.1, 83.9, 83.0, 82.4, 82.1, 80.1, 75.7 (2C), 75.6, 75.4, 74.5, 73.4, 71.3, 62.4, 49.9, 48.7, 36.3, 31.8, 30.0; 29.8-29.3 (12C), 25.7, 25.6, 22.6 (2C), 14.1, 14.0. HRMS. C81H106N2O8 (M+H+)の理論値:1235.8027. 分析値:1235.8049.
【0052】
実施例6:
(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミド
実施例5に記載されたものと同様の手順により、アミドを、(1s,2R,3S,4r,5R,6S)-2,3,4,5,6-ペンタキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサンアミン(cfr. Serrano et al. J Org Chem 2005, 70, 7829)およびN-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-オキソオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドから還元的アミノ化によって、28%収率で得る。
【0053】
油状物質, [α]D = -6.3 (CDCl3, c, 1.0); IR (フィルム, cm-1): 3513, 2933, 2855, 1719, 1450, 1074; 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.39-7.22 (m, 35 H); 6.42 (d, J = 8.8, 1H); 4.95-4.82 (m, 7H); 4.79 (d, J =11.5, 1H); 4.73 (d, J =, 11.5, 1H); 4.63 (d, J =, 11.5, 1H); 4.59 (d, J =, 11.5, 1H); 4.53 (d, J =, 11.5, 1H); 4.49 (d, J =, 11.5, 1H); 4.40 (d, J = 11.5, 1H); 4.08 (m, 1H); 3.71 (dd, J = 5, 4, 1H); 3.57 (m, 3H); 3.46 (m, 1H); 3.25 (m, 3H); 2.96 (dd, J = 13, 4.5, 1H); 2.58 (t, J = 10, 1H); 1.74 (m, 2H), 1.58 (m, 2H); 1.40 (m, 4H); 1.28 (m, 66H); 0.90 (t, J = 7, 6H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.8, 138.5 (2C), 138.3, 138.2 (4C), 128.4-127.1 (35C), 84.1, 83.9, 83.0, 82.3, 82.0, 80.0, 75.8 (2C), 75.6, 75.4, 74.5, 73.4, 71.3, 62.3, 49.4, 48.7, 48.5, 36.3, 31.9, 31.7; 29.9-29.0 (30C), 25.7, 25.6, 22.6, 22.5, 14.1, 14.0. HRMS. C99H142N2O8 (M+H+)の理論値:1488.0844. 分析値:1488.0773.
【0054】
実施例7:
(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミド
ラセミ系列(Serrano et al. J Org Chem 2005, 70, 7829)に記載の手順に準じて、(+)-テトラ-O-ベンジルコンズリトールBエポキシド(cfr. Gonzalez-Bulnes et al., Carbohydr Res 2007, 342, 1947-52)から、化合物(1R,2S,3R,4S,5S,6S)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミンを調製し、それを、実施例5に記載の還元的アミノ化法に準じて、中間体アルデヒドN-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-オキソオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドと反応させて、所望の化合物を40%収率で得る。
【0055】
油状物質, [α]D = +1.6 (CDCl3, c, 1.0); IR (フィルム, cm-1): 3431, 2916, 2847, 1653, 14940, 1061; 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.38-7.28 (m, 30 H); 6.16 (d, J = 8, 1H); 4.89-4.56 (m, 11 H); 4.44 (d, J = 12, 1H); 4.24 (m, 1H); 4.01 (m, 1H); 3.98 (dd, J = 9, 4, 1H); 3.81 (m, 3H); 3.73 (t, J = 4, 1H); 3.56 (dd, J = 11, 5, 1H); 3.16 (t, J = 4, 1H); 2.94 (dd, J = 11, 4, 1H); 2.61 (dd, J = 11, 5, 1H); 2.00 (m, 2H), 1.64 (m, 2H); 1.57 (m, 2H); 1.28 (m, 68H); 0.91 (t, J = 7, 3H); 0.90 (t, J = 7, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.3, 138.8, 138.7, 138.3(2C), 138.2, 137.9, 128.4-127.3 (30C), 82.4, 81.9, 81.5, 80.4, 79.1, 79.0, 75.9, 75.6, 73.8, 73.1, 72.3, 71.4, 67.3, 58.2, 48.5, 48.4, 36.7, 31.8, 30.2, 29.7-29.3 (31C), 25.6, 25.4, 22.6, 14.0 (2C). HRMS. C92H136N2O8 (M+H+)の理論値: 1398.0375. 分析値: 1398.0386.
【0056】
実施例8:
(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-2-イル)オクタンアミド
それを、実施例7に準じる還元的アミノ化によって、(1R,2S,3R,4S,5S,6S)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミンおよび中間体アルデヒドN-((2S,3S,4R)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-1-オキソオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドから、38%収率で調製する。
【0057】
油状物質. [α]D = +2.0 (CDCl3, c, 1.0); IR (フィルム, cm-1): 3414, 2918, 2854, 1649, 1451, 1096; 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.36-7.25 (m, 30H); 6.16 (d, J = 8, 1H); 4.86-4.56 ( m, 11H); 4.43 (d, J = 12, 1H); 4.23 (m, 1H); 4.01 (m, 1H); 3.98 (dd, J = 9, 4, 1H); 3.82 (m, 3H); 3.73 (t, J = 4, 1H); 3.57 (dd, J = 11, 5, 1H); 3.17 (t, J = 4, 1H); 2.95 (dd, J = 11, 4, 1H); 2.62 (dd, J =11, 5, 1H); 1.98 (m, 2H), 1.66 (m, 2H); 1.54 (m, 2H); 1.28 (m, 32H); 0.91 (t, J = 7, 3H); 0.85 (t, J = 7, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.3, 138.8, 138.7, 138.3(2C), 138.2, 137.9, 128.4-127.4 (30C), 82.4, 81.8, 81.5, 80.4, 79.1, 79.0, 75.9, 75.6, 73.8, 73.1, 72.4, 71.4, 67.3, 58.2, 48.6, 48.5, 36.7, 31.8, 30.2, 29.7-29.3 (13C), 25.6, 25.4, 22.6, 14.1, 14.0. HRMS. C74H100N2O8 (M+H+)の理論値:1145.7558. 分析値:1145.7560.
【0058】
還元的アミノ化に由来する生成物の脱ベンジル化反応
実施例9:
(2S,3S,4R)-2-オクタンアミド-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール(化合物1a).
【0059】
【化3】

【0060】
ジクロロメタン(2 mL)中の53 mg(0.05 mmol)の(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-2-イル)オクタンアミドの溶液を外部浴によって-78 ℃に冷却し、アルゴン下で維持する。ヘプタン(各OBn基につき2当量)中のBCl3(1M)の溶液を添加する。反応混合物を室温に到達させて、16時間撹拌する。この時間の後、再び-78 ℃に冷却し、2 mLのメタノールを滴下で添加する。浴を外し、室温に到達させ、その後、減圧濃縮する。次いで、AcOEt(3 mL)を得られた残渣に添加し超音波浴に5〜7分間入れる。得られた固体をろ過により収集する。それをAcOEt(3x1 mL)で洗浄し、減圧乾燥して、27 mg(0.042 mmol, 85%)の化合物を塩酸の形態で得る。
【0061】
Pf = 241-243. [α]D = +9.6 (MeOH, c, 0.8); IR (フィルム): 3358, 2931, 2852, 1657, 1458, 1111. 1H-NMR (CD3OD, 500 MHz); δ 4.37(q, J = 5.5, 1H); 3.68 (t, J = 5.5, 1H); 3.63 (dd, J = 12, 5.5, 1H); 3.55 (m, 3H); 3.39 (dd, J = 13, 6, 1H); 3.33-3.2 (m, 4H); 3.05 (t, J = 11, 1H), 2.29 (t, J = 7, 2H); 1.64 (m, 2H), 1.29 (m, 34H); 0.90 (t, J = 7, 6H); 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz): δ 177.6, 77.9, 77.4 (2C), 76.0, 74.1, 71.2, 71.1, 64.5, 49.6, 49.4, 37.9, 33.9, 33.6; 31.7-31.3 (10 C), 31.3, 31.2, 31.0, 27.8, 27.6, 24.6, 15.3 (2C). HRMS. C32H64N2O8 (M+H+)の理論値:605.4741. 分析値:605.4739.
【0062】
実施例10:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'sr,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール(化合物1b).
【0063】
【化4】

【0064】
それを、実施例9に準じてBCl3で生成物(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドを脱ベンジル化して、83%収率で調製する。
【0065】
Pf = 242-244. [α]D = +8.1 (MeOH, c, 0.8). IR (フィルム): 3363 (br), 2922, 2845, 1649, 1455, 1069. 1H-NMR (CD3OD, 400 MHz); δ 4.36 (m, 1H); 3.65 (dd, J = 6, 4.8, 1H); 3.56 (m, 2H); 3.48 (m, 2H); 3.36-3.13 (m, 5H); 3.01 (t, J = 10, 1H), 2.26 (t, J = 7, 2H); 1.61 (m, 2H), 1.29 (m, 70H); 0.90 (t, J = 7, 6H); 13C-NMR (DMSO, 60 ℃, 100 MHz): δ 173.9, 76.1, 75.6 (2C), 74.5, 71.6, 69.7, 69.6, 63.3, 48.3, 48.1, 36.2, 32.7, 31.9; 29.7-29.3 (31 C), 26.0, 25.7, 22.7 14.4 (2C). HRMS. C50H100N2O8 (M+H+)の理論値: 857.7558. 分析値:857.7563.
【0066】
実施例11:
(2S,3S,4R)-オクタンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール(化合物3b)

【0067】
それを、実施例9に準じてBCl3で生成物(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-2-イル)オクタンアミドを脱ベンジル化して、84%収率で調製する。
【0068】
Pf = 214-216. [α]D = -6.8 (MeOH, c, 0.75); IR (フィルム): 3417, 2931, 2850, 1650, 1443, 1034. 1H-NMR (CD3OD, 400 MHz); δ 4.36 (q, J = 5.2, 1H); 4.15 (m, 2H), 3.90 (m, 2H); 3.86 (m, 1H); 3.65 (t, J = 5, 1H); 3.57 (m, 2H), 3.40 (dd, J = 12.5, 6, 1H); 3.20 (dd, J = 12.5, 6, 1H), 2.23 (t, J = 7, 2H); 1.60 (m, 2H), 1.29 (m, 34H); 0.88 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz): δ 176.7, 77.0, 74.7, 73.6, 72.9. 72.8, 69.9, 66.3, 59.9, 48.4, 47.8, 36.9, 33.5, 33.0, 32.8, 30.7 (8C), 30.4, 30.3, 30.1, 26.9, 26.7, 23.7 (2C), 14.4 (2C). HRMS. C32H64N2O8 (M+H+)の理論値: 605.4741. 分析値:605.4738.
【0069】
実施例12:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール(化合物3a).
【0070】
【化5】

【0071】
それを、実施例9に準じてBCl3で生成物(2S,3S,4R)-(3,4-ジベンジルオキシ-1-1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドを脱ベンジル化して、89%収率で調製する。
【0072】
Pf = 235-237; [α]D = -9.3 (MeOH, c, 0.75). IR (フィルム): 3368, 2923, 2847, 1645, 1461, 1042. 1H-NMR (CD3OD, 45 ℃, 400 MHz); δ 4.37(q, J = 5, 1H); 4.16 (m, 2H), 3.98 (m, 2H); 3.88 (m, 1H); 3.67 (t, J = 5, 1H); 3.57 (m, 2H), 3.40 (dd, J = 10, 5.2, 1H); 3.21 (dd, J = 10, 5.2, 1H), 2.23 (t, J = 7, 2H); 1.60 (m, 2H), 1.29 (m, 70H); 0.88 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (CD3OD, 45 ℃, 100 MHz): δ 176.7, 77.0, 74.7, 73.6, 72.9. 72.8, 69.9, 66.3, 59.9, 48.4, 47.8, 36.9, 33.5, 33.0, 30.7-30.4 (31C), 26.9, 26.8, 23.7, 14.4 (2C). HRMS. C50H101N2O8 (M+H+)の理論値:857.7558. 分析値: 857.7580.
【0073】
テトラヒドロキシシクロヘキシルアミンの調製
実施例13:
(1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサノール
THF(50 mL)中のO-テトラベンジルコンズリトールB [Gonzalez-Bulnes et al Carbohydr Res 2007, 342, 1947-52] (1 g, 1.97 mmol)の溶液を0 ℃にて撹拌し、BH3・THF (1 MTHF中1 M, 6 mL, 6 mmol)を約5分間滴下で添加する。反応混合物を室温にし、撹拌を16時間継続する。NaOH(1 M水溶液, 8 mL)および過酸化水素(30% w/v 水溶液, 4 mL)を添加し、室温にて1時間激しく撹拌する。エーテルで抽出し、合わせた有機相を水およびNaClの飽和溶液で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧濃縮して、固体を得、それをフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt, 7:3)で精製して、白色固体(723 mg, 70%)を得る。
【0074】
[α]D = +8 (CHCl3, C, 1); 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.34 (m, 20H); 5.03-4.95 (m, 3H); 4.87 (t, J = 10, 2H); 4.89 (m, 3H); 3.61 (t, J = 9, 1H); 3.53 (m, 3H); 3.36 (t, J = 9, 1H); 2.37 (dt, J = 13, 4, 1H); 2.33 (br, 1H); 1.48 (q, J = 13, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 138.6, 138.4 (2C), 138.2, 128.6-127.6 (20C), 85.8 (2C), 83.3, 77.4, 75.8 (2C), 75.4, 72.3, 68.3, 33.9. HRMS. C34H36O5 (M+H+)の理論値:525.2641. 分析値: 525.2644.
【0075】
実施例14:
(1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサノール
THF(15 mL)中の実施例9に準じて調製した(1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサノール(540 mg, 1.02 mmol)およびトリエチルアミン(0.44 mL, 3 mmol)の溶液を、MsCl(塩化メタンスルホニル) (232 mg, 2.04 mmol)で処理する。室温にて3時間撹拌し、H2O(20 mL)で希釈し、AcOEt(3x15 mL)で抽出する。抽出物をNa2SO4で乾燥し、ろ過し、蒸発させて、中間体メシレートを得、それをDMF(ジメチルホルムアミド)/H2O(98/2) (10 mL)に溶解し、密閉管内で140℃にて96時間撹拌する。溶媒を低圧で除去し、得られた残渣をEt2O(10 mL)で処理し、H2O(3X10 mL)で洗浄し、乾燥し、蒸発させて、油状物質を得、それをフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt 7:3)で精製して、アルコール(60 mg, 30%)を得る。
【0076】
Pf = 65-67; [α]D = -4 (CHCl3, C, 1); IR (ニート, cm-1): 3361, 2943, 1427, 1118, 986. 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz); δ 7.33 (m, 20H); 4.95-4.65 (m, 8H); 4.12 (m, 1H); 3.95 (m, 1H); 3.84 (t, J = 9.2, 1H); 3.49 (m, 2H); 2.84 (dt, J = 14, 4, 1H); 1.40 (ddd, J = 14, 12, 2.4, 1H), 13C-NMR (CDCl3, 75 MHz): δ 138.8, 138.7, 138.6, 137.9, 128.5-127.4 (20 C), 85.7, 82.8, 81.5, 77.0, 76.0, 75.7, 72.9, 72.8, 65.9, 32.4. HRMS. C34H36O5 (M+H+)の理論値: 525.2641. 分析値:525.2644.
【0077】
実施例15:
(1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサンアミン
ジクロロメタン(10 mL)中の実施例9に準じて調製した(1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサノール(mg, 0.28 mmol)およびトリエチルアミン(0.12 mL, 0.84 mmol)の溶液をMsCl(43 μL, 0.56 mmol)で0 ℃にて処理する。混合物を撹拌し、2時間室温にする。ジクロロメタン(10 mL)を添加し、NaOH 1N(10 mL)で3回洗浄する。有機相を水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、油状物質を得、それをDMF(5 mL)に溶解する。NaN3(182 mg, 2.8 mmol)を添加し、混合物を90 ℃にて12時間加熱する。混合物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(20 mL)を添加し、NaCl飽和水溶液(3x20 mL)で抽出する。有機相をNa2SO4上で乾燥し、ろ過し、減圧濃縮して、中間体アジドを得、それをシリカゲル(ヘキサン/AcOEt 9:1) (109 mg, 71%)のフラッシュクロマトグラフィーで精製して、白色固体を得る:Pf = 87-89, [α]D = -8.5 (CHCl3, C, 1)。
【0078】
アジドをLiAlH4(13 mg, 0.36 mmol)によりアミンに還元し、それをTHF(10 mL)中0 ℃のその溶液の一部に添加し、この温度で1時間撹拌し、ついで、室温にて1時間撹拌する。0 ℃に冷却した後、反応混合物、0.3 mLのNa2SO4飽和水溶液を滴下で添加する。塩をCelite(登録商標)上でろ過し、それをEt2Oで洗浄し、ろ液を減圧蒸発させて、純粋なアミンを白色固体の形態で得る(96 mg, 93%)。
【0079】
Pf = 74.76. [α]D = +2 (CHCl3, C, 1); IR (フィルム , cm-1): 3351, 2957, 2362, 1433, 1112. 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz); δ 7.30 (m, 20H); 4.87 (m, 4H); 4.69 (m, 4H); 3.96 (m, 2H); 3.46 (m, 3H); 2.80 (dt, J = 14, 3.2, 1H); 1.43 (m, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz); δ: 139.0, 138.9, 138.7, 138.5, 128.4-127.4 (20C), 86.2, 83.1, 81.4, 77.1, 75.9, 75.6, 72.8, 72.4, 46.8, 33.5. HRMS. C34H37NO4 (M+H+)の理論値:524.2801. 分析値: 524.2821.
【0080】
実施例16:
(1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサンアミン
それを、実施例11に記載の手順に準じ、(1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサノールから調製して、白色固体を得る(45 mg, 55%)。
【0081】
Pf = 102-103. [α]D = -11.5 (CDCl3, C, 1.0). IR (ニート, cm-1): 3355, 2923, 2366, 1454, 1069. 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz); δ 7.31 (m, 20H); 4.98 (m, 3H); 4.84 (m, 2H); 4.67 (m, 3H), 3.54 (m, 3H); 3.18 (t, J = 9.2, 1H); 2.71 (m, 1H); 2.20 (dt, J = 13.2, 4, 1H); 1.57 (br, 2H, NH2), 1.31 (m, 1H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 138.6, 138.4 (2C), 138.3, 128.5-127.5 (20C), 86.8, 86.0, 84.4, 78.4, 75.7 (2C), 75.5, 72.3, 49.8, 35.1. HRMS. C34H37NO4 (M+H+)の理論値: 524.2801. 分析値 524.2819.
【0082】
フィトスフィンゴシン‐誘導化アジリジンの置換反応
実施例17:
N-((1S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-2-((1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシルアミノ)エチル)-2-ニトロベンゼンスルホンアミドの調製
乾燥MeCN(5 mL)中の70 mg (0.13 mmol)の(1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサンアミンの溶液に、68 mg (0.13 mmol)の(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン(cfr. Y. Harrak et al. Eur J Org Chem 2008, 4647-4654)を添加する。混合物を還流にて3時間撹拌し、室温に冷却し、減圧濃縮する。残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/AcOEt 4:1)で精製して、無色油状物質を得る(118 mg, 87%)。
【0083】
[α]D = +5.1 (CDCl3, C, 1.0). IR (フィルム, cm-1): 3316, 2924, 2853, 1541, 1306, 1070, 697. 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 8.12 (d, J = 7.5, 1H); 7.65 (t, J = 7, 1H); 7.56 (m, 2H); 7.31 (m, 20H); 4.84 (m, 4H); 4.60 (m, 4H); 4.13 (m, 2H); 3.85 (m, 3H); 3.53 (dd, J = 9.5, 4, 1H); 3.49 (t, J = 9, 1H); 3.01 (d, J = 2.5, 1H); 2.87 (dd, J = 12, 4, 1H); 2.72 (dd, J = 12, 3.5, 1H); 2.17 (dt, J = 14, 3.5, 1H); 1.51 (m, 3H); 1.40 (s, 3H); 1.27 (m, 27 H); 0.91 (t, J = 7, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 147.7, 139.1, 139.0, 138.9, 138.5, 135.3, 133.3, 132.7, 129.7, 128.3-127.3 (20C), 125.3, 107.9, 85.7, 82.6, 81.6, 78.2, 77.5, 77.4, 75.8, 75.4, 72.7, 72.5, 54.1, 53.4, 49.1, 31.9, 29.8-29.3 (11C), 27.4, 26.7, 25.2, 22.7, 14.1. HRMS. C61H81N3O10S (M+H+)の理論値:1048.5721. 分析値:1048.5742.
【0084】
実施例18:
N-((1S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-2-((1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシルアミノ)エチル)-2-ニトロベンゼンスルホンアミド
実施例17の手順に準じ、(1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキサンアミンおよび(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン(cfr. Y. Harrak et al., Eur J Org. Chem 2008, 4647-4654)を反応させて、無色油状物質を得る(71 mg, 87%)。
【0085】
[α]D = +30 (CDCl3, C, 1.0); IR (フィルム): 3340, 2924, 2853, 1593, 1365, 1072. 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz); δ 8.03 (d, J = 7.6, 1H); 7.61 (t, J = 7.6, 1H); 7.52 (t, J = 7.6, 1H); 7.44 (d, J = 8, 1H), 7.28 (m, 21H); 4.96-4.54 (m, 8H); 4.08 (m, 2H); 3.66 (m, 1H), 3.44 (m, 3H); 3.16 (t, J = 9.2, 1H); 2.80 (d, J = 10, 1H); 2.55 (d, J = 10, 1H); 2.42 (t, J = 10, 1H); 2.23 (m, 1H); 1.51 (m, 3H); 1.33 (s, 3H); 130 (s, 3H), 1.27 (m, 24H); 0.87 (t, J = 7, 3H); 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 147.7, 138.6, 138.4 (2C), 138.3, 135.3, 133.3, 132.6, 130.0, 128.4-127.4 (20 C), 125.1, 107.8, 85.8, 84.8, 82.9, 78.3, 77.5, 76.6, 75.7 (2C), 74.8, 72.3, 55.4, 54.3, 45.7, 32.0, 31.8, 29.6-29.2 (10 C), 27.8, 26.3, 25.5, 22.6, 14.1. HRMS. C61H81N3O10S (M+H+)の理論値:1048.5721. 分析値:1048.5739.
【0086】
2−ニトロベンゼンスルホンアミドの脱保護
実施例19:
(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミン
乾燥CH3CN(2 mL)中のN-((1S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-2-((1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシルアミノ)エチル)-2-ニトロベンゼンスルホンアミド(105 mg, 0.1 mmol)の溶液に、チオフェノール(44 mg, 0.4 mmol)および Cs2CO3(98 mg, 0.3 mmol)を添加する。室温にて24時間撹拌し、NaHCO3飽和水溶液(20 mL)を添加し、水相をCH2Cl2で抽出する。合わせた有機抽出物をMgSO4上で乾燥し、ろ過し、低圧で濃縮して、油状物質を得、それをカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2/MeOH 99:1)で精製して、透明液状物質を得る(73 mg, 85 %)。
【0087】
[α]D = +10.0 (CDCl3, C, 1.0); IR (フィルム): 3350, 2920, 2832, 1449, 1367, 1081. 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.31 (m, 20H); 4.87 (m, 4H); 4.67 (m, 4H); 4.12 (m, 1H); 3.91 (m, 1H); 3.75 (dd, J = 9.5, 5.5, 1H); 3.55 (dd, J = 9.5, 4, 1H); 3.48 (m, 2H); 3.11 (m, 1H); 2.88 (m, 1H); 2.69 (dd, J = 12, 3, 1H), 2.56 (dd, J = 12, 6.5, 1H); 2.23 (dt, J = 13.5, 4.5, 1H); 1.54 (m, 3H); 1.42 (s, 3H); 1.30 (s, 3H); 1.27 (m, 24H); 0.90 (t, J = 7, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 138.9 (2C), 138.7, 138.4, 128.3-127.4 (20C), 107.7, 86.2, 83.1, 82.1, 80.0, 77.9, 76.7, 75.9, 75.7, 72.7, 72.2, 53.6, 51.8, 50.2, 31.9, 30.2-29.3 (11C), 28.3, 26.2, 25.9, 22.6, 14.1. HRMS. C55H78N2O6 (M+H+)の理論値: 863.5938. 分析値: 863.5942.
【0088】
実施例20:
(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミン
実施例19に記載の手順に準じ、(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミンをチオフェノールおよび炭酸セシウムと反応させて、生成物を油状物質の形態で82%で得る。
【0089】
[α]D = -7 (CDCl3, C, 1.0); R (フィルム): 3402, 2924, 2853, 1454, 1367, 1069. 1H-NMR (CDCl3, 400 MHz); δ 7.33 (m, 20H); 5.02-4.68 (m, 8H); 4.13 (m, 1H); 3.77 (dd, J = 8.4, 5.6, 1H); 3.56 (m, 3H); 3.38 (t, J = 8.8, 1H); 2.84 (dd, J = 11.2, 3.2, 1H); 2.77 (dt, J = 8.4, 2.8, 1H), 2.52 (m, 1H); 2.35 (dt, J = 12.8, 4, 1H); 1.50 (m, 3H); 1.39 (s, 3H); 1.31 (s, 3H); 1.28 (m, 24H); 0.90 (t, J = 7.2, 3H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 138.7, 138.5, 138.4, 138.3, 128.4-127.5 (20C), 107.8, 85.8, 84.7, 84.2, 80.6, 78.5, 77.8, 75.8, 75.7, 75.4, 72.4, 55.6, 50.8, 50.1, 32.4, 31.9, 30.2-29.3 (10C), 28.3, 26.0, 25.9, 22.6, 14.1. HRMS. C55H78N2O6 (M+H+)の理論値:863.5938. 分析値:863.5943.
【0090】
アミンアシル化反応
実施例21:
(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'S,2'S,3'R,4'S,5'S)-2',3',4',5'-テトラベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミド
乾燥THF(10 mL)中の(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1S,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミン(70 mg, 0.08 mmol)およびセロチン酸(32 mg, 0.08 mmol)の溶液に、EDC(23 mg, 0.12 mmol)を添加する。反応物を還流まで12時間加熱し、室温に冷却し、水(10 mL)を添加する。AcOEtで週出し、水、飽和NaClで洗浄し、有機相をMgSO4で乾燥する。それをろ過し、減圧濃縮して、油状物質を得、シリカゲル(ヘキサン/AcOEt 7/3)のカラムクロマトグラフィーで精製して、白色固体を得る(67 mg, 68%)。
【0091】
Pf = 72-74. [α]D = +16.2 (CDCl3, C, 1.0); IR (フィルム, cm-1): 3325, 2918, 2850, 1650, 1470, 1095. 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.32 (m, 20H); 5.98 (d, J = 9.5, 1H); 4.93 (d, J = 11, 1H); 4.87 (m, 2H); 4.83 (d, J = 11, 1H); 4.65 (m, 3H); 4.58 (d, J = 11, 1H); 4.19 (m, 1H); 4.13 (m, 1H); 4.00 (t, J = 6.5, 1H); 3.93 (t, J = 9.5, 1H); 3.87 (m, 1H); 3.09 (d, J = 3, 1H); 2.80 (dd, J = 12, 3.5, 1H); 2.20 (dt, J = 15.5, 4, 1H); 2.10 (m, 2H); 1.56 (m, 3H), 1.40 (s, 3H); 1.27 (m, 73H); 0.89 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.3, 138.8 (2C), 138.4, 138.3, 128.4-127.5 20C), 107.7, 85.8, 82.8, 82.0, 77.9, 77.8, 77.7, 75.9, 75.8, 72.9, 72.4, 53.2, 48.5, 47.7, 37.0, 31.9, 29.7-29.3 (33C), 27.7, 26.6, 25.8, 25.3, 22.7, 14.1(2C). HRMS. C81H128N2O7 (M+H+)の理論値: 1241.9800. 分析値:1241.9766.
【0092】
実施例22:
(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S)-2',3',4',5'-テトラベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミド
実施例21の手順に準じ、(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1R,2S,3R,4R,5S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミンとセロチン酸およびEDCとの反応により、白色固体を63%収率で得る。
【0093】
Pf = 85-87 ℃. [α]D = -8 (CHCl3, C, 1.0); IR (ニート, cm-1): 3331, 2925, 2849, 1664, 1444, 1111. 1H-NMR (CDCl3, 500 MHz); δ 7.34 (m, 20H); 5.97 (br, 1 H); 5.04-4.68 (m, 8H); 4.02 (m, 2H); 3.95 (m, 1H); 3.52 (m, 3H); 3.31 (m, 1H); 3.02 (d, J = 12.5, 1H); 2.64 (d, J = 13, 1H); 2.46 (m, 1H); 2.29 (m, 1H); 1.96 (m, 2H), 1.62 (br, 1H), 1.55 (m, 3H), 1.40 (s, 3H); 1.32 (s, 3H), 1.26 (m, 70H); 0.89 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (CDCl3, 100 MHz): δ 172.5, 138.6, 138.4 (2C), 138.3, 128.5-127.6 (20C), 107.7, 85.8, 84.7, 84.6, 78.5, 77.7, 77.0, 75.9, 75.8, 75.7, 72.6, 57.1, 48.3, 46.9, 36.7, 33.4, 31.9, 29.7-29.3 (31 C), 29.0, 27.9, 26.5, 25.7, 25.3, 22.7, 14.1 (2C). HRMS. C81H128N2O7 (M+H+)の理論値: 1241.9800. 分析値: 1241.9773.
【0094】
アジリジン開環に由来する生成物の脱ベンジル化反応
実施例23:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール(化合物4b).
【0095】
【化6】

【0096】
実施例9に記載の手順に準じ、30 mg (0,024 mmol)の(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S)-2',3',4',5'-テトラベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドをBCl3(ヘプタン中1M, 0.24 mL, 0.24 mmol)で処理して、15 mg (0.015 mmol, 73%)の(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール塩酸を白色固体の形態で得る。
【0097】
Pf = 213-215. [α]D = -25 (MeOH, C, 0.2) ; IR (ニート, cm-1): 3351 (br), 2942, 2833, 1642, 1433, 1021; 1H-NMR (MeOH, 500 MHz, 50 ℃); δ 4.33 (c, J = 5, 1H); 3.90 (dd, J = 7, 4, 1H); 3.84 (m, 1H); 3.65 (m, 4H); 3.53 (m, 2H); 3.13 (dd, J = 13, 6.5, 1H); 2.27 (m, 2H); 1.78 (m, 1H); 1.64 (m, 3H); 1.32 (m, 70H); 0.92 (t, J = 7, 6H). 13C-NMR (DMSO, 100 MHz): δ 174.0, 75.9, 75.5, 72.8, 71.8, 70.5, 68.2, 56.6, 48.2, 46.5, 36.1, 33.1, 31.9, 29.7-29.3 (31C), 28.8, 25.9, 25.8, 22.7, 14.5 (2C). HRMS. C50H127N2O7 (M+H+)の理論値: 841.7609. 分析値:841.7628.
【0098】
実施例24:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール(化合物2b).
【0099】
【化7】

【0100】
実施例9に記載の手順に準じ、30 mg(0.024 mmol)の(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S)-2',3',4',5'-テトラベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドをBCl3(ヘプタン中1M, 0.24 mL, 0.24 mmol)で処理する。10 mg(0.011 mmol, 46%)の(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール塩酸を白色固体の形態で得る。
【0101】
Pf = 227-229. [α]D = +12 (MeOH, C, 0.2); IR (ニート, cm-1): 3343 (br), 29512, 2812, 1668, 1427, 1007; 1H-NMR (DMSO, 500 MHz, 60 ℃); 4.22 (m, 1H); 3.81 (m, 1H); 3.48-2.98 (m, 8H); 2.13 (m, 3H); 1.46 (m, 5H); 1.26 (m, 68H); 0.87 (m, 6H). HRMS. C50H127N2O7 (M+H+)の理論値:841.7609. 分析値:841.7628.
【0102】
他のアミノシクリトールからの式(I)で表される化合物の調製
実施例25:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S,6'S)-2,3,4,5-テトラヒドロキシ-6-メトキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール
この化合物は、以下の4つのステップで調製した:1)実施例17に記載の方法に従い、(1S,2S,3R,4R,5S,6S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)-6-メトキシシクロヘキサンアミンと(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン[Y. Harrak et al. Eur J Org. Chem 2008, 4647-4654]との反応により、対応アミンを得(79%収率);2)実施例19に記載の手順に準じ、ニトロベンゼンスルホニル基の脱保護により化合物(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1'S,2'S,3'R,4'R,5'S,6'S)-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)-6-メトキシシクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミンを得(78%収率);3)実施例21に記載の手順に従い、第1級アミンのセロチン酸でのアシル化によりアミドを76%収率で得;次いで、4)実施例9に記載された手順に従い、BCl3との反応によりヒドロキシル化置換基を脱保護して、91%の収率で、(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S,6'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシ-6-メトキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオールを濃厚油状物質の形態で得る。
【0103】
[α]D = -9 (MeOH, 0.5); IR (フィルム, cm-1): 3364 (br), 2948, 2828, 1671, 1436, 1063. 1H-NMR (CD3OD, 500 MHz, 50 ℃); δ 4.34 (m, 1H); 4.26 (m, 1H), 4.20 (m, 1H); 4.04 (m, 1H); 3.91 (m, 1H); 3.86 (m, 1H); 3.70 (m, 2H); 3.47 (s, 3H); 3.25 (m, 1H); 2.25 (m, 2H); 1.60 (m, 4H); 1.28 (m, 68H); 0.90 (m, 6H). 13C-NMR (CD3OD, 100 MHz, 55 ℃): δ 177.5, 77.8, 76.8, 74.6, 73.8, 73.6, 71.0, 59.5, 58.0, 50.1, 49.6, 48.8, 37.9, 34.5, 33.8 (2C), 31.6-31.2 (29C), 27.8, 27.6, 24.5 (2C), 14.2(2C). HRMS. C51H103N2O8 (M+H+)の理論値:871.7714. 分析値:871.7755.
【0104】
実施例26:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール
この化合物は、以下の4つのステップで調製した:
1)実施例17に記載の方法に従い、(1S,4S,5S,6S)-4,5-イソプロピリデンジオキシ-3-ヒドロキシシクロヘキシルアミンと(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン[Y. Harrak et al. Eur J Org. Chem 2008, 4647-4654]との反応により対応アミンを得(97 %収率);
2)実施例19に記載の手順に準じ、2-ニトロベンゼンスルホニル基の脱保護により化合物(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5'-イソプロピリデンジオキシ-3'-ヒドロキシシクロヘキシル)エタン-1,2-ジアミンを得(78%収率);
3)実施例21に記載の手順に従い、第1級アミンのセロチン酸でのアシル化により(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ)-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5'-イソプロピリデンジオキシ-3'-ヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドを75%収率で得;次いで
4)次の手順に従い、メタノールおよび塩酸との反応によるヒドロキシル化置換基を脱保護する。
【0105】
10 mLのCH3OH中のステップ3で得られたアミド(18 mg, 0.02 mmol)の溶液に、HCl(水中36%)の一滴を添加し、24時間撹拌する。溶媒を蒸発させて、油状物質を得、それをゆっくりと固体化する(30 mg, 92 %)。
【0106】
[α]D = +4 (MeOH, C, 0.5); IR (フィルム, cm-1): 3427 (br), 2973, 1659, 994. 1H-NMR (DMSO, 500 MHz, 70℃, 回転異性体および配座異性体の混合物); δ, 5.80 (d, J = 10.5, 1H), 5.70 (d, J = 10.5, 1H); 4.85 (m, 1H); 4.23 (m, 2H), 3.95 (m, 2H); 3.82 (m, 2H), 3.40 (m 2H); 2.37 (m, 2H); 1.55 (m, 4H), 1.24 (m, 68H); 0.85 (m, 6H). 13C-NMR (DMSO, 100 MHz, 60 ℃, 回転異性体および配座異性体の混合物): δ 172.0, 134.6, 119.4, 74.9, 70.5, 69.9, 65.8, 64.2, 55.3, 47.4, 43.3, 35.3, 33.7, 30.9, 28.6 (30 C), 24.7, 24.0, 21.7 (2C), 13.3 (2C). HRMS. C50H99N2O6 (M+H+)の理論値:823.7503. 分析値: 823.7546.
【0107】
実施例27:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール.
それを、5% Pd/C(5 mg)での接触水素化により調製し、それを5 mLのメタノール中の5 mgの(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオールの溶液に添加する。混合物を1気圧の水素下、24時間室温にて撹拌する。触媒をろ別し、濃縮して、化合物を定量的収率で得る。
【0108】
[α]D = -5 (MeOH, C, 0.5); IR (フィルム, cm-1): 3429 (br), 2859, 1670, 978. 1H-NMR (DMSO, 500 MHz, 60 ℃, 回転異性体および配座異性体の混合物); δ 8.90 (br, 3H), 8.17 (br, 1H), 4.20-3.08 (m, 8H), 2.32 (m, 2H); 214 (m, 1H), 1.80-1.22 (m, 75H); 0.84 (m, 6H). 13C-NMR (DMSO, 100 MHz, 60 ℃, 回転異性体および配座異性体の混合物): δ 173.0, 75.8, 72.5, 71.6, 68.3, 66.8, 57.2, 50.5, 44.5, 36.2, 34.7, 32.9, 32.0, 30.9, 29.7 (30C), 26.6, 25.0, 22.7 (2C), 14.3 (2C). HRMS. C50H100N2O6 (M+H+)の理論値: 825.7660. 分析値:823.7624.
【0109】
実施例28:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'S,6'R)-5'-ヒドロキシメチル-2',3',4',6'-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;
この化合物は、以下の4つのステップで調製した:
1)実施例17に記載の方法に従い、アミンを(1S,2S,3S,4S,5S,6R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,5-テトラキス(ベンジルオキシ)シクロヘキシルアミンと(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン[Y. Harrak et al. Eur J Org. Chem 2008, 4647-4654]との反応により形成して、対応するアミンを得(83%収率);
2)実施例19に記載の手順に準じ、ニトロベンゼンスルホニル基を脱保護して、化合物(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'S,6'R)-5'-ヒドロキシメチル-2',3',4',6'-テトラキス(ベンジルオキシ))エタン-1,2-ジアミンを得(79%収率);
3)実施例21に記載のものと同様の手順に従い、当該ジアミン中の第1級アミンをセロチン酸でアシル化して、対応する(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'S,2'S,3'S,4'S,5'S,6'R)-5'-ヒドロキシメチル-2,3,4,6-テトラベンジルオキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドを79%収率で得;次いで
4)次の手順に従い、当該アミドのヒドロキシル化置換基を接触水素化により当該アミドを脱保護する:2滴の濃HClを含有する10 mLのCH3OH中の(0.02 mmol)の溶液をH2(2気圧)下、10 mgの5% Pd-Cの存在下48時間撹拌する:反応混合物をろ過し、低圧にて濃縮して、(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'S,6'R)-5-ヒドロキシメチル-2,'3',4',6'-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミン)オクタデカン-3,4-ジオール塩酸を、薄茶色固体の形態で、85%収率で得る。
【0110】
Pf = 277-279, [α]D = +3 (MeOH, C, 0.5); IR (フィルム): 34000-3200 (br), 2861, 1672, 985. 1H-NMR (CD3OD, 500 MHz); δ 4.36 (m, 1H); 4.26 (m, 1H), 4.14 (m, 3H); 4.00 (m, 2H); 3.92-3.57 m (m, 3H); 3.44 (dd, J = 12.5, 6.5, 1H); 3.26 (dd, J = 12.5, 6, 1H); 2.45 (m, 1H); 2.40 (br, 1H); 2.26 (m, 2H); 1.63 (m, 4H); 1.23 (m, 68H); 0.90 (m, 6H). 13C-NMR (DMSO, 100 MHz, 60 ℃): δ 173.3, 75.6, 71.7, 71.4, 67.1, 66.3 (2C), 59.5, 57.1, 46.5, 45.6, 41.8, 35.7, 31.4(2C), 29.7-28.8 (29C), 25.5, 25.3, 22.1 (2C), 13.5, 13.4. HRMS. C51H102N2O8 (M+H+)の理論値:871.7714. 分析値: 871.7713.
【0111】
実施例29:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;
この化合物は以下の4つのステップで調製した:
1)実施例17に記載の方法に従い、(1S,2S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4-トリス(ベンジルオキシ)シクロヘキシルアミンと(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン[Y. Harrak et al. Eur J Org. Chem 2008, 4647-4654]との反応により、対応アミンを得(88%収率);
2)実施例19に記載の手順に準じ、ニトロベンゼンスルホニル基を脱保護して、化合物(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'R)-5'-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリス(ベンジルオキシ))エタン-1,2-ジアミンを得(69%収率);
3)実施例21に記載の手順に従い、第1級アミンをセロチン酸でアシル化して、(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'S,2'S,3'S,4'S,5'R)-5'-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリベンジル、オキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドを74%収率で得;次いで
4)次の手順に従い、メタノールおよび塩酸との反応によりヒドロキシル化置換基を脱保護する:2滴の濃HClを含有する10 mLのCH3OH中の(0.02 mmol)の溶液をH2(2気圧)下、10 mgの5%Pd-Cの存在下48時間撹拌する:反応混合物をろ過し、減圧濃縮して、(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール塩酸を薄茶色固体として、88%収率で得る。
【0112】
IR (フィルム, cm-1): 3300-3400 (br), 2966, 2851, 1659, 1440, 1024. 1H-NMR (DMSO, 400 MHz); δ 4.8 (br, 1H); 4.22 (br, 1H); 3.85-3.15 (m, 10H); 2.44 (m, 2H); 2.15 (m, 1H); 2.0 (m, 1H); 1.7 (m, 1H); 1.5 (m, 2H); 1.23 (m, 70H); 0.84 (m, 6H). 13C-NMR (DMSO, 100 MHz, 60 ℃): δ 174.9, 76.3, 73.4, 71.8, 68.9, 68.8, 61.4, 58.2, 48.4, 38.7, 36.5, 33.3, 31.8(2C), 29.7-29.0 (30 C), 25.8, 25.1, 22.7 (2C), 14.2 (2C). HRMS. C51H102N2O7 (M+H+)の理論値:871.7765. 分析値:871.7742.
【0113】
実施例30:
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'R,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール.
この化合物は、以下の4つのステップで調製した:
1)実施例17に記載した方法に従い、(1R,2S,3S,4S,5R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4-トリス(ベンジルオキシ)シクロヘキシルアミンと(S)-2-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-1-(2-ニトロフェニルスルホニル)アジリジン(cfr. Y. Harrak et al., Eur J Org. Chem 2008, 4647-4654)との反応により、対応アミンを得(88%収率);
2)実施例19に記載の方法に準じ、ニトロベンゼンスルホニル基を脱保護して、化合物(S)-1-((4S,5R)-2,2-ジメチル-5-テトラデシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)-N2-((1'R,2'S,3'S,4'S,5'R)-5'-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリス(ベンジルオキシ))エタン-1,2-ジアミンを得(69%収率);
3)実施例21に記載の手順に従い、第1級アミンをセロチン酸でアシル化して、(2S,3S,4R)-(3,4-イソプロピリデンジオキシ-1-(1'R,2'S,3'S,4'S,5'R)-5'-ヒドロキシメチル-2,3,4-トリベンジル、オキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-2-イル)ヘキサコサンアミドを74%収率で得;次いで
4)次の手順に従い、メタノールおよび塩酸との反応によるヒドロキシル化置換基を脱保護する:2滴の濃HClを含有する10 mLのCH3OH中の22.5 mg(0.018 mmol)のアミドの溶液をH2(2気圧)下、10 mgの5%Pd-Cの存在下、48時間撹拌する。反応混合物をろ過し、減圧濃縮して、14 mg(0.015 mmol)の(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'R,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2',3',4'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール塩酸を、薄茶色固体の形態で、81%収率で得る。
【0114】
IR (ニート, cm-1): 3381 (br), 2963, 2841, 1655, 1439, 1024. 1H-NMR (DMSO, 400 MHz); δ 4.83 (br, 1H); 4.23 (br, 1H); 3.85-3.17 (m, 10H); 2.42 (m, 2H); 2.13 (m, 1H); 2.00 (m, 1H); 1.71 (m, 1H); 1.51 (m, 2H); 1.23 (m, 70H); 0.84 (m, 6H). 13C-NMR (DMSO, 100 MHz, 60 ℃): δ 173.9, 76.1, 73.4, 71.7, 68.9, 68.7, 61.6, 58.0, 48.3, 38.6, 36.1, 33.1, 31.9(2C), 29.7-29.3 (30C), 25.9, 25.1, 22.6 (2C), 14.4 (2C). HRMS. C51H102N2O7 (M+H+)の理論値:871.7765. 分析値:871.7742
【0115】
式(I)で表される化合物の生物学的アッセイ
実施例31:
アミノシクリトールタイプ化合物によるin vitro誘発されたマウスiNKT細胞増殖の決定
本発明の化合物によるiNKT細胞の活性化を誘発する能力の決定を、当業者に知られている方法に準じて行った。
【0116】
まず、マウスiNKTの特異的増殖を誘発する能力を、in vitro培養実験で決定した。そのため、10から20週齢のメスB57Bl/6マウスに由来する脾臓細胞を単離し、赤血球を低張溶解によって除去した。脾臓細胞はウェルあたり100,000から500,000個の細胞で96Uウェルプレートに分配し、RPMI-1640成長培地、10%胎児血清、100 mMグルタミン、1%メタノール中、最終濃度1 μg/mLにて化合物1a, 1b, 2b, 3a, 3bおよび4bの各々の存在下、インキュベートする。2日目の培養組み換えヒトインターロイキン2を、NK細胞の非特異的増殖を誘発しない条件である最終濃度25ユニット/mLにて添加した。培養を5日目または6日目に、TCRおよびNK1.1特異的抗体を用いるフローサイトメトリーによって分析した。対照αGalCerの存在下:
【0117】
【化8】

NKT細胞の個体数はベースライン条件の5倍以上に増殖し、科学文献で確立された結果と一致した。同一条件において、化合物4bは、iNKTの強増殖を誘発し、αGalCerのものと同様であり、T細胞の1.2から6.2%の増大を表す(図1)。同様に、化合物3aおよび3bは、iNKTの週間増殖(およそ2倍)を誘発したが、結果は、明らかに免疫刺激能力があるとするには小さすぎる。溶媒としてメタノールの代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)を使用するか、または、より高い濃度の化合物を使用するかのみが、iNKTに対する刺激トレンドを確認できるが、実験は、化合物の低い溶解性のため、決定的な結論に至るには非常に高い変動性を示す。
【0118】
化合物4bのiNKT細胞刺激能の定量
CD1d糖脂質リガンドは、CD1dにより提示される能力およびTCRによって認識される構造的特徴に依存して、Th1またはTh2に対するiNKT細胞によるサイトカインの産生における偏差を誘発する。化合物4bの免疫刺激能力をより正確に定量し、それがiNKT反応における偏差を誘発するかどうかを決定するために、IFNγおよびIL-4の産生を誘発する能力を異なる濃度を用いる細胞培養中で滴定し、それを、それぞれTh1およびTh2反応のインデューサーとして記載されている2つのプロトタイプリガンド、αGalCerおよびOCH(MeOHに溶解した)と比較した。
【0119】
化合物4bは、333 ng/mLの濃度にてIFNγの産生を誘発し、1 μg/mLにて最大反応プラトーに達するが、これは、α-GalCerによって生じる反応の場合よりも低い強度であり、より高い化合物の濃度である(図3a)。α-GalCerは、図2および3では、aGCと表記されている。化合物4bは、aGalCer(化合物4bの場合の2のIFNγ/IL-4比対α-GalCerの場合の10の比によって誘発されるものと比較して、IL-4対IFNγのより高い相対産生を誘発する。IL-4のこの誘発の能力は、100 ng/mLの濃度にて、高い効率で維持され、33 ng/mLにて依然として顕著である(図3b)。Th2反応プロトタイプ、OCHと比較して、化合物4bはより低い反応を誘発するが、同様のプロファイルを保持し、双方の化合物は、α-GalCerの高いTh1プロファイルと対照的に、より低い用量にて、IFNγに対して一層高いIL-4誘発の能力を維持する。かくして、化合物4bは、好ましくは、iNKTによって認識された後、Th2-タイプ反応を誘発する。
【0120】
細胞培養
マウスC57BL/6脾臓細胞を、バルセロナ自治大学の動物および人間研究倫理委員会 (the Animal and Human Research Ethics Committee of the Autonomous University of Barcelona)に認証されたプロトコルに準じて、8から12週齢のメスマウスの脾臓から単離によって得る。脾臓を、層流フードの中で、60 mLプレート内でシリンジのピストン棒で解離させ、溶解バッファー(Sigma-Aldrich)で赤血球を除去する。5x105細胞を96 U-ウェルプレートのウェルに入れ、10%ウシ胎児血清(FCS) (Labclinics)で補給したRPMI-1640培地中の100 ng/mLのα-GalCer、OCH、または1 μg/mLの化合物1a, 1b, 2b, 3a, 3b,および4b、50 μM 2-メルカプトエタノール、2mM L-グルタミンおよび1%メタノール(細胞に対して非毒性濃度)と共にインキュベートし、次いで、37℃にて、5%CO2加湿雰囲気中で増殖させる。25 U/mLの組換えヒトインターロイキン2を培養の2日目に添加する。
【0121】
IL-4およびIFNγの決定について、培養上清を4日目または7日目に取り出し、−70℃にて保存するか、または、即座に、サイトカインの定量のため、製造業者の指示書に従い、ELISAアッセイ(eBioscience)に用いる。標準曲線を、キットに含まれる組換えサイトカインで作成する。結果の統計学的有意性を、t−スチューデントテストを用い、p<0.01を有意差として解析する。化合物1a, 1b, 2b, 3a, 3b,および4bを1 mg/mLの濃度にて、100%メタノールまたは100%ジメチルスルホキシドに再懸濁し、PBS中1/10使用希釈物を調製し、最終濃度を100 μg/mLとする。化合物を56 ℃に10〜30分間加熱し、超音波照射し、その後、完全成長培地中で希釈して、最終濃度を細胞アッセイにおいて1%ビヒクルとする。
【0122】
フローサイトメトリーによる分析
表記した条件で増殖した脾臓細胞培養を、FACS Calibur (Beckton Dickinson Bioscience)のフローサイトメトリーによって分析して、化合物1a, 1b, 2b, 3a, 3b,および4bとともにインキュベーションした後、iNKTの増殖のレベルを定量する。刺激した脾臓培養を洗浄し、抗-CD16(クローン2.4G2)入りの50μLの染色培地(2% FCS入りのPBS)とともに氷中20分間プレインキュベートする。引き続き、細胞を洗浄し、インフルエンザにコンジュゲートしたマウス抗-TCR抗体、フルオレッセインイソチオシアナート(FITC) (クローンH57-597, BD-Pharmingen)およびアビジンにコンジュゲートした抗-NK1.1(クローンPK-136, BD-Pharmingen)入りの染色培地に氷中30分間再懸濁する。細胞を洗浄し、ストレプトアビジン-フィコエリスリン(Southern Biotechonology)入りの染色培地に氷中30分間再懸濁する。細胞を2回洗浄し、染色培地に再懸濁する。サンプルをフローサイトメータ(FACSCalibur)で分析し、プログラムCellQuest (BD Bioscience)を用いて加工する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中:
R1は、置換または非置換の(C5-C35)アルキル基、
R2, R3, R4およびR5は、同一または互いに相違して、水素、ヒドロキシル、置換または非置換のアルコキシルまたは(C1-C6)アルキルよりなる群から選択され;
R6は、(C5-C35)アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロ環よりなる群から選択され;および
----は、二重結合の存在または非存在を示す。)で表される化合物、またはその異性体、塩および/またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
R1が(C7-C25)アルキル基である、請求項1の化合物
【請求項3】
R2, R3, R4および/またはR5がヒドロキシルである、請求項1または2のいずれかの化合物。
【請求項4】
R4がヒドロキシルおよび/またはR5が水素である、請求項1〜3いずれかの化合物。
【請求項5】
R2が水素またはアルコキシルである、請求項1〜4いずれかの化合物。
【請求項6】
R2がメトキシルである、請求項5の化合物。
【請求項7】
R3がヒドロキシルまたは(C1-C3)ヒドロキシアルキルである、請求項1〜6いずれかの化合物。
【請求項8】
R3がヒドロキシメチルである、請求項7の化合物。
【請求項9】
R6が(C10-C20)アルキル基である、請求項1〜8いずれかの化合物。
【請求項10】
式:
(2S,3S,4R)-2-オクタンアミド-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'SR,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'rs,2'RS,3'SR,4'sr,5'RS,6'SR)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-オクタンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2',3',4',5',6'-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'S,5'S,6'S)-2,3,4,5,6-ペンタヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'R,2'S,3'R,4'R,5'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,2'S,3'R,4'R,5'S,6'S)-2,3,4,5,-テトラヒドロキシ-6-メトキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-(1'S,4'S,5'S,6'S)-4',5',6'-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノオクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'S,6'R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,6,-テトラヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'S,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール;または
(2S,3S,4R)-2-ヘキサコサンアミド-1-((1'R,2'S,3'S,4'S,5'R)-5-ヒドロキシメチル-2,3,4,-トリヒドロキシシクロヘキシルアミノ)オクタデカン-3,4-ジオール
である、請求項1の化合物。
【請求項11】
化合物が塩酸塩である、請求項1〜10いずれかの化合物。
【請求項12】
一般式(I)で表される化合物を得る方法であって、
-一般式(II):
【化2】

で表されるアミノシクリトールと、
一般式(V):
【化3】

で表されるアジリジンと求核攻撃によるか、または
一般式(VI):
【化4】

で表されるアルデヒドと還元的アミノ化により、
カップリングして、
中間体化合物(VII):
【化5】

を得、ついで、
-引き続き、保護基PGを除去し、アシル化すること
を含み、ここに、R1, R2, R3, R4, R5およびR6が請求項1に記載されたものであって、PGが保護基である、方法。
【請求項13】
一般式(II)で表されるアミノシクリトールを、
-一般式(III):
【化6】

で表される化合物を還元することによって;または
-一般式(IV):
【化7】

で表される化合物を置換することによって得、
ここに、R1, R2, R3, R4およびR5が請求項1に記載されたものであり、Xがハロゲン化物またはスルホネートであって、PGが保護基である、請求項12の方法。
【請求項14】
医薬組成物の調製のための一般式(I)で表される化合物の使用。
【請求項15】
iNKT細胞の刺激による疾患の治療および/または予防用の医薬組成物の調製のための一般式(I)で表される化合物の使用。
【請求項16】
iNKT細胞の刺激により治療可能または予防可能な疾患が自己免疫疾患、ガン、微生物感染または炎症性疾患よりなる群から選択される、請求項15の使用。
【請求項17】
自己免疫疾患が、ぜんそく、COPD、慢性大腸炎、いくつかのアレルギー、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、多発性硬化症、シェーグレン症候群またはリウマチ性関節炎である、請求項16の使用。
【請求項18】
病原性微生物により引き起こされる炎症が、インフルエンザ、AIDS、肝炎、クラミジア症、リーシュマニア症、マラリア、結核、トリパノソーマ症、連鎖救菌症、または緑膿菌病よりなる群から選択される、請求項16の使用。
【請求項19】
少なくとも一般式(I)で表される化合物および医薬上許容されるビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項20】
さらに別の活性成分を含む、請求項19の医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公表番号】特表2012−520857(P2012−520857A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500282(P2012−500282)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070164
【国際公開番号】WO2010/106215
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(593005895)コンセホ・スペリオール・デ・インベスティガシオネス・シエンティフィカス (67)
【氏名又は名称原語表記】CONSEJO SUPERIOR DE INVESTIGACIONES CIENTIFICAS
【出願人】(511058855)ウニベルシダッド・アウトノマ・デ・バルセロナ (2)
【出願人】(510335487)ウニベルシタット・デ・バルセロナ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAT DE BARCELONA
【Fターム(参考)】