説明

アミノヒドロキシジホスホン酸の製造方法

本発明の技術は、アミノ部分を含むヒドロキシジホスホン酸の製造方法に関する。方法は具体的には、液体P4O6をアミノカルボン酸と、スルホン酸存在下で反応させることを含む。アミノカルボン酸は3つの構造的に異なる化合物から選択される。アミノヒドロキシジホスホン酸は高い選択性および純度で合成することができ、未反応の出発原料は容易かつ簡便に再循環させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ部分を含むヒドロキシジホスホン酸の製造方法に関する。方法は具体的には、液体P4O6をアミノカルボン酸および選択したスルホン酸と反応させることを企図し、ここで、特定の実行において、液体P4O6をスルホン酸中のアミノカルボン酸の溶液に加えるか、または液体P4O6をスルホン酸に加え、続いてアミノカルボン酸を加える。アミノカルボン酸は厳密に規定された構造上の特徴を示す3つの異なる化合物の群から選択することができる。反応は、反応混合物を40℃〜180℃の範囲の温度で10分〜30時間の間加熱し、続いて生じた反応生成物を適当な様式で回収することにより実施する。
【背景技術】
【0002】
アミノヒドロキシジホスホン酸の製造に関する先行技術は一般に非常に込み合っていて、数十年にわたる懸命な研究開発の努力を表している。アミノヒドロキシジホスホン酸は、金属イオン封鎖剤、キレート剤、水処理、洗浄剤、腐食ならびに骨粗鬆症および他の骨治療状態を含む薬学的適用を含む、様々な確立された適用において用いることができる。
【0003】
ビスリン酸化生成物の通常の製造は、亜リン酸およびハロゲン化リンの組み合わせの使用に基づいている。この技術は多くの一連の文書に記載されており、例としてその最先端技術を簡単にまとめる。US 5908959(特許文献1)はアミノヒドロキシブチリデンビスホスホン酸の生成法に関し、ここで対応するアミノカルボン酸をポリアルキレングリコールの溶液中、亜リン酸および三塩化リンの混合物と反応させる。US 5648491(特許文献2)もアミノヒドロキシブチリデンビスホスホン酸の生成プロセスに関する。詳細に言うと、アミノアルカンカルボン酸をメタンスルホン酸中、亜リン酸および三塩化リンと持続的に混合し、ここで水性塩基を中間体生成物を含むオーバーフロー混合物に持続的に加え、続いてオーバーフロー混合物を加水分解し、生じたビスホスホン酸を回収する。US 2001/0041690(特許文献3)は、高収率で、残留する元素リン副生成物がほとんどない、ビスホスホン酸塩の作成プロセスを公表している。このプロセスは実際には溶融亜リン酸、アミノカルボン酸、三ハロゲン化リンおよび塩基の使用を必要とする。アミノカルボン酸に対する三ハロゲン化リンの量は約2当量である。亜リン酸および塩基は溶媒として作用し、均質な反応混合物または溶液を生じる。US 4407761(特許文献4)は、アミノカルボン酸を亜リン酸および三塩化リン/オキシ塩化リンの混合物からなるホスホン酸化反応物と反応させ、続いて反応混合物を濃塩酸で加水分解し、生じたビスホスホン酸を回収することによる、アミノヒドロキシアルキリデンビスホスホン酸の作成プロセスを記載している。
【0004】
US 5019651(特許文献5)はアミノヒドロキシブチリデンビスホスホン酸の調製法に関し、ここでアミノカルボン酸をメタンスルホン酸存在下、亜リン酸および三塩化リンの混合物と反応させ、続いてそのようにして得た反応混合物を加水分解混合物、おそらくはリン酸緩衝液と接触させ、それによりpHを4〜10の間に維持し、最終生成物を回収する。
【0005】
US 6,573,401(特許文献6)は、モル比2:5〜5:2、好ましくは1:1の亜リン酸/メタンスルホン酸無水物のホスホン酸化混合物を用いての、アミノ1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸、およびその三水和一ナトリウム塩の生成プロセスを開示している。アミノ酪酸およびホスホン酸化酸を、酪酸:亜リン酸2:1〜5:1、好ましくは3:1のモル比で用いる。三水和一ナトリウム塩をろ過した後、ホスホン酸に変換することができる。この技術は、反応混合物が凝固することなく、合成を均質に進行させると言われている。加えて、反応は危険な塩化リン出発生成物の使用を必要としない。
【0006】
DD 235068(特許文献7)は、カルボン酸:H3PO4:P4O6のモル比3:10:1〜1:0.1:1、好ましくは2:2:1のアミノカルボン酸、リン酸およびP4O6から出発するアミノ-ヒドロキシジホスホン酸の製造プロセスに関する。DD 222030(特許文献8)も、不活性溶媒、例えば、ジオキサン中、対応するアミノカルボン酸およびP4O6から出発するアミノ-ヒドロキシジホスホン酸の調製法に関する。
【0007】
様々な先行技術は、単独または組み合わせのいずれでも、確立されたアミノヒドロキシジホスホン酸製造の不足および欠点に対する実行可能な解決法を提供することはない。製造の必要条件は基本的に、環境的制約およびすべての反応相手、特に未反応の原料の容易な再循環を可能にする製造配列の必要性に加え、選択性および/または収率および/または純度および/または効率にかかっている。特に、当技術分野の反応系はほとんどが、著しい困難を生じることが公知であるが、許容されることが多い、ハロゲン化リン存在下で行われる。いくつかの当技術分野の技術は、LOOPS(リンの低酸化物)に関連する橙黄色副生成物の生成を認めており、この副生成物は安全および操作上の危険を意味しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 5908959
【特許文献2】US 5648491
【特許文献3】US 2001/0041690
【特許文献4】US 4407761
【特許文献5】US 5019651
【特許文献6】US 6,573,401
【特許文献7】DD 235068
【特許文献8】DD 222030
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の主な目的は、基本的に化学量論比の基本的出発原料から出発して、実質的に化学量論比のジホスホン酸を合成可能な、アミノヒドロキシジホスホン酸の製造方法を提供することである。本発明の別の目的は、顕著な選択性および高収率の、アミノヒドロキシジホスホン酸の改善された作成法をもたらすことである。本発明の別の重要な目的は、LOOPSの実質的除去下で、非常に高純度のアミノヒドロキシジホスホン酸を生成することを企図する。さらに別の目的は、未反応の反応相手の有益かつ簡便な再循環プロセスを提供することを目指す。さらに別の目的は、それに関して要求の厳しい、薬学的および準薬学的適用を含む適用のために、最小限の/低減された精製処理を必要とする、高純度のジホスホン酸を得ることができる製造技術を提供することを企図する。本発明の一つの特に重要な目的は、高収率および高純度の選択されたアミノヒドロキシジホスホン酸、すなわち以下のジホスホン酸を一段階加工配列で経済的に製造する方法を提供することを目指す:
3-(ジメチルアミノ)-1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ビスホスホン酸、オルパドロン酸としても公知;
ホスホン酸、(1-ヒドロキシ-2-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イルエチリデン)ビス-、ミノドロン酸としても公知;
1-ヒドロキシ-2-(3-ピリジニル)エチリデンビスホスホン酸、リセドロン酸としても公知;
(3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン)-1,1-ビスホスホン酸、パミドロン酸としても公知;
6-アミノ-1-ヒドロキシヘキサン-1,1-ジホスホン酸、ネリドロン酸としても公知;
[1-ヒドロキシ-3-(メチルペンチルアミノ)プロピリデン]ジホスホン酸、イバンドロン酸としても公知;
4-アミノ-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸、アレンドロン酸としても公知、および2-(イミダゾル-1-イル)-1-ヒドロキシ-1,1'-エチリデンジホスホン酸、ゾレドロン酸としても公知。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願の全体を通して用いられる「パーセント」または「%」なる用語は、異なる定義がなされないかぎり、「重量パーセント」または「重量%」を意味する。「ホスホン酸」および「ホスホン酸塩」なる用語も、当然のことながら、アルカリ性/酸性条件が優性な媒質に依存して、交換可能に用いられる。「LOOPS」なる用語は「リンの低酸化物」を意味する。「アミノヒドロキシジホスホン酸」なる用語は、少なくとも、本出願文書においてさらに定義する1つの窒素原子を含む、1-ヒドロキシ-1,1-ビスホスホン酸を含む。「環式;芳香族;複素環式;およびヘテロ芳香族」なる用語は「多環式;ポリ芳香族;ヘテロ多環式;およびヘテロポリ芳香族」構造を含むことができ、異なる定義がなされないかぎりその意味を有することになる。ヘテロ多環およびヘテロポリ芳香族は、少なくとも1つの環が窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、多環式およびポリ芳香族種を含む。実施例において用いられる「重量%」なる用語は、31P NMRによって検出されるP誘導体を意味する。「液体P4O6」なる用語は、液体状態のニートP4O6、適切な溶媒中のP4O6の溶液、固体P4O6および気体P4O6を含む。
【0011】
前述および他の目的は、液体P4O6およびアミノカルボン酸をスルホン酸存在下、厳密に規定された条件下で反応させる製造方法を用いて達成することができる。より詳細には、対応するアミノカルボン酸、液体P4O6およびスルホン酸から出発するアミノヒドロキシジホスホン酸の製造方法は以下の段階を含む:
a:液体P4O6をスルホン酸中のアミノカルボン酸の溶液に加える段階;または
b:液体P4O6をスルホン酸に加え、続いてアミノカルボン酸を加える段階;
ここでスルホン酸は、均質および不均質な、スルホン酸およびポリスルホン酸から選択され;かつアミノカルボン酸およびP4O6は4:1〜1:1のモル比で用い、スルホン酸はアミノカルボン酸1モルあたり1〜30、好ましくは3〜20、特に6〜18当量のレベルで用い;かつここでアミノカルボン酸は以下の群から選択され:
i:(A)(B)N-X1-COOH
式中、X1はCOOHとNとの間に少なくとも2つの炭素単位があるものであり;X1はCF3、F、Cl、SR、NR'2、SO2RおよびORから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい、2〜20個の炭素原子を有する直鎖、分枝、環式および芳香族種から選択される炭化水素基で表すことができ;AおよびBは独立にH、分枝、直鎖、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択され、これらはOR、SR、CF3、F、Cl、NR'2、SO2Rおよび/またはRで置換されていてもよく、ここでRは直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置の1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、これらはOR''、SR''、CF3、F、Cl、NR'''2および/またはSO2R''で置換されていてもよく、ここでR'はRおよび水素から選択され、かつ独立に選択されてもよく;R''は直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置の1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;R'''はR''および水素から選択され、かつR'''基は独立に選択されてもよく;ここで複素環式およびヘテロ芳香族基は窒素、硫黄および酸素から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含むことができ;ただしこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環における構成原子の数からこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環におけるヘテロ原子の数を引いた差は少なくとも2であり;ただしカルボン酸基の隣の炭素原子は単に水素および少なくともN(A)(B)基を有する1つの炭素原子に連結していることを条件とし;AがHであるとき、BはCOOT基であってもよく、ここでTはC1〜C10アルキル基またはC6〜C10芳香族部分であり;
ii:D-X2-COOH
式中、X2はCOOHとNとの間の少なくとも1つの炭素原子であり;X2は、CF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2Rおよび/またはORで置換されていてもよい、基中に1〜20個の炭素原子を有する、直鎖、分枝、環式または芳香族配置の炭化水素基であり;ただしCOOHとNとの間に炭素原子が1個だけあるとき、Dはヘテロ単環芳香族基を表すことを条件とし、ヘテロ単環芳香族およびヘテロ単環式基は少なくとも1つの窒素原子を含むと理解され、すべての他の場合にはDはX2に直接連結されている少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロ単環式またはヘテロ単環芳香族基を表し、該ヘテロ単環式環またはヘテロ単環芳香環は4〜8員環で表され、かつ窒素、酸素および硫黄から選択される1〜3個の追加のヘテロ原子を含み、この環はCF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2RおよびORから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく、このヘテロ単環またはヘテロ単環芳香環は1つまたは複数のC1〜C10直鎖、分枝環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族部分でさらに置換されていてもよく、これはCF3、F、Cl、NR'''2、SR''、SO2R''およびOR''から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく、ここでR、R'、R''およびR'''は前述の意味を有し;窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、この環式、複素環式、芳香族またはヘテロ芳香族部分は、D基と縮合または一重結合によりD基に連結されていてもよく、ここでD基と縮合している環式構造において、4つ以下の個々の環が存在し;ここでD基と縮合または一重結合により連結されている複素環式およびヘテロ芳香族部分、ならびにD基自体は、これらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環における構成原子の数からこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環におけるヘテロ原子の数を引いた差は少なくとも2であるものであり;ここでD基は環式無水物との反応により生じた、X2部分に連結されているNH2基から誘導されるイミドで表すこともでき;ただしiiのカルボン酸基の隣の炭素原子は単に水素および少なくともD基を有する1つの炭素原子に連結しており、かつiiにおいて、X2が単にCOOHとDにおけるNとの間の1つの炭素単位であるとき、その炭素原子は単に水素および炭素原子で置換されうることを条件とし、および
iii:E-X3-COOH
式中、X3は直接連結またはCF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2Rおよび/またはORで置換されていてもよい、C1〜C20直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素基であり;ただしX3が直接連結であるか、またはX3が1つの炭素原子単位であるとき、COOH基とEの窒素原子との間に少なくとも2つの炭素原子があることを条件とし;ここでEはX3に炭素原子を介して直接連結されて、かつ窒素原子を含む複素環式またはヘテロ芳香族の4〜14員環で表され、この複素環式またはヘテロ芳香族基はCF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2RおよびORから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;そのような複素環および/またはヘテロ芳香環は酸素、窒素および硫黄から選択される1〜3個の追加のヘテロ原子を含むことができ;そのような複素環式および/またはヘテロ芳香族基はC1〜C10直鎖、分枝環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族炭化水素基から選択される1つまたは複数の基でさらに置換されていてもよく、これらの基はCF3、F、Cl、NR'''2、SR''、SO2R''および/またはOR''で置換されていてもよく、ここでR、R'、R''およびR'''は前述の意味を有し;ただしこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環における構成原子の数からこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環におけるヘテロ原子の数を引いた差は少なくとも2であり;ただしX3が直接連結でないとき、カルボン酸基の隣の炭素原子は単に水素原子および少なくともE基を有する1つの炭素原子に連結しており、かつiiiにおいて、X3がCOOHとE基との間の唯一の1つの炭素単位であるとき、その炭素原子は単に水素および炭素原子で置換されうることを条件とし;ならびに反応混合物を40℃〜180℃の範囲の温度で、10分〜30時間の間加熱する段階。
【0012】
P4O6は、少なくとも85%、好ましくは90%よりも多く;より好ましくは少なくとも95%、および一つの特定の実行において少なくとも97%のP4O6を含む実質的に純粋な化合物でありうる。本発明の状況において用いるのに適した、六酸化四リンは任意の公知の技術で製造することができるが、好ましい実行において、六酸化物は「Process for the manufacture of P4O6 with improved yield」なる表題のWO 2009/068636および/またはEP 08 168 898.8に開示されるプロセスに従って調製することができる。詳細には、酸素、または酸素および不活性ガスの混合物、ならびに気体または液体リンを基本的に化学量論量で、1600K〜2000Kの範囲の温度の反応装置中、0.5〜60秒の好ましい滞留時間を維持しながら、リンおよび酸素の発熱反応によって生じた熱を除去することにより反応させ、続いて反応生成物を700K未満の温度で急冷し、粗製反応生成物を蒸留により精製する。そのように調製した六酸化物は、通常は少なくとも97%の酸化物を含む純粋な生成物である。そのように生成したP4O6は一般に、特に低レベルの元素リン、P4を、100%のP4O6に対して表すと、好ましくは1000ppm未満で含む、高純度の液体材料である。好ましい滞留時間は5〜30秒、より好ましくは8〜30秒である。反応生成物は、一つの好ましい実行において、350K未満の温度に急冷することができる。詳細に記載する「液体P4O6」なる用語は、任意の状態のP4O6を含む。しかし、固体種は、学術的に言えば、反応媒質の調製において用いうるが、45℃〜180℃の温度で反応に関与するP4O6は必然的に液体または気体であると推定される。
【0013】
スルホン酸化合物は、均質および不均質な、スルホン酸およびポリスルホン酸から選択される。スルホン酸化合物は、P4O6から出発する選択した高純度ホスホン酸化合物の高収率での反応および一段階生成を有益に緩和することが判明したが、スルホン酸が干渉するメカニズムはこの時点では十分に理解されておらず;いかなる基準によっても非常に有益な結果を生じるためには、基本的なクレームパラメーターが必要であると言うことができる。
【0014】
適切な均質スルホン酸は以下の式を有する:
(R-(SO3H)x)
式中、Rは、xが1〜4である場合、Fおよび/もしくはCF3基で置換されていてもよい、直鎖、分枝、環式もしくは多環式配置のC1-24炭化水素基、またはxが、単環芳香族系では1〜3であり、かつ二環芳香族およびより高次の系では1〜4である場合、C6-14芳香族もしくはアルキル基がC6-20でありうるアルキル芳香族基から選択することができる。Rは、xが1〜2である、ジフェニルエーテルもしくはジフェニルメタンまたはC6-20アルキルジフェニルメタンもしくはC6-20アルキルジフェニルエーテルでもありうる。
【0015】
好ましい不均質スルホン酸は、以下の任意の選択されたサブクラスの種でありうる:
(1)SO3H基を芳香族基上にグラフトするために官能基化したスチレン、エチルビニルベンゼンおよびジビニルベンゼンのコポリマーを含む樹脂上にグラフトしたスルホン酸を用いることができる。これらの酸性樹脂は、ゲル型、大網状配置またはシリカもしくはカーボンもしくはカーボンナノチューブなどの担体材料上に支持されたものなどの、異なる物理的配置で用いることができる。そのような樹脂の公知の例は、Rohm and HaasのAMBERLYST 15である。他の型の樹脂には、スルホン酸基を有する過フッ化樹脂が含まれる。フッ化樹脂はそのまま用いることもでき、または金属酸化物および/もしくはシリカの高度に分散された網目に捕捉されたシリカもしくはカーボンもしくはカーボンナノチューブのような不活性材料上に支持することもできる。NAFIONはそのようなフッ化樹脂の一例である。NAFIONはDu Pont Companyの商標である。AMBERLYST 15はRohm and Haas Companyの商標である。
(2)シリカ、シリカ-アルミナ組み合わせ、アルミナ、ゼオライト、シリカ、活性炭、砂および/またはシリカゲルのような、孤立電子対を有する固体上に付着させたスルホン酸を、メタンスルホン酸またはパラトルエンスルホン酸のようなスルホン酸の支持体として用いることができる。ゼオライト、シリカ、またはメソ多孔性シリカ、例えばMCM-41もしくは-48、または例えばポリシロキサンのようなポリマーのような固体を化学的グラフティングによって官能基化し、したがってスルホン酸基またはその前駆体を得ることができる。官能基化は、例えばシリカのSiOH基のクロロスルホン酸との反応による固体上への直接グラフティングにより、様々な様式で導入することができ;または例えば、過フルオロアルキルシラン誘導体でありうる有機スペーサーにより固体に連結することができる。スルホン酸官能基化シリカはゾル-ゲル法により調製することもでき、例えばSi(OR)4および例えば3-メルカプトプロピル-トリ-メトキシシランの中性またはイオン性鋳型反応法のいずれかを用いての共縮合によりチオール官能基化シリカを生じ、続いて例えばH2O2によりチオールを酸化して対応するスルホン酸とする。官能基化固体はそのまま、すなわち、粉末の形状で、ゼオライトの膜の形で、または膜中で他のポリマーと混合して、もしくは固体押し出し物の形で、もしくは例えば構造的無機支持体のコーティング、例えば、コージエライトのモノリスでといった多くの他の様式で用いることができる。
【0016】
均質スルホン酸を、反応条件下で反応媒質内に単一の液相を形成するよう適合させる。周囲条件、例えば20℃で反応媒質に不溶性で、したがって非均質なスルホン酸は、例えば反応温度で可溶性となり、したがって「均質」と認定されうることが理解される。スルホン酸は反応媒質から、例えば不溶性酸のろ過などの公知の技術により、またはイオン交換、ナノろ過もしくは電気透析などの日常的に利用可能な他の技術により回収してもよい。スルホン酸の均質性は、例えば沈澱の目視検査または相分離特性により、日常的に確認することができる。
【0017】
不均質なる用語は、スルホン酸が反応条件で反応媒質に実質的に不溶性であることを意味する。酸の不溶性は、例えば目視観察に基づいて日常的に確認することができる。
【0018】
スルホン酸は、一つの実行において、水とのモル比P4O6:水=1:≦3、特に1:2〜1:0.1の組み合わせで用いることができる。反応は水非存在下で行いうることが理解される。不均質スルホン酸のスルホン酸当量数は酸度測定に基づく。
【0019】
適切な均質スルホン酸は周囲温度で固体であってもよく、好ましくは基本的な反応相手に関して不活性な有機溶媒との組み合わせで用いることになる。適切な溶媒を以下に挙げる。
【0020】
スルホン酸は、特許請求する技術の状況において、反応物ではなく、反応物と等しく扱うことはできない。事実、スルホン酸は結局は特許請求する方法の結果として化学的に変更されることはないが、おそらくスルホン酸は反応中間体の生成に干渉すると考えられる。スルホン酸はスルホン酸塩の生成においてアミノカルボン酸に干渉しうることも注目すべきである。したがって、低レベル、例えばアミノカルボン酸1モルあたり1〜2当量のスルホン酸を用いる場合、以下に記載するアミノカルボン酸を用いることが望ましいこともある。
【0021】
スルホン酸は、有機溶媒と共に用いることもできる。一般には、試薬に対して不活性な有機溶媒を用いることができる。当業者であれば、これは反応に関与する試薬といかなる実質的な程度にも反応しない溶媒として理解される。適切な溶媒の典型例は以下のとおりである:アニソール;フルオロベンゼン;クロロベンゼン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素化炭化水素;スルホラン、ジグリム、グリム、酸化ジフェニル、Rが低級アルキルもしくはアシル基であるORなどのキャップされたOH基を有するポリアルキレングリコール誘導体のような極性溶媒;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、およびジペンチルエーテルのような非環式エーテル;テトラヒドロフランおよびジオキサンのような環式エーテル;トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;酢酸エチルなどの有機アセテート;アセトニトリルのような有機ニトリル;ポリメチルフェニルシロキサンのようなシリコン液またはその混合物。加えて、例えばリン酸のような共希釈剤を、アミノカルボン酸:リン酸=1:0.01〜1:1のモル比で任意に加えることができる。不均質スルホン酸を用いる場合、試薬および少なくとも部分的には生じた生成物を可溶化することができる極性溶媒を用いることが好ましい。適切な有機溶媒を、アミノカルボン酸:有機溶媒=1:1〜1:10、好ましくは1:2〜1:6のモル比で用いることになる。これらの有機溶媒は、反応において用いるP4O6溶液およびアミノカルボン酸溶液を調製するためにも用いることができる。当然のことながら、これらの溶媒に加えて、例えば前述の溶媒に溶解した液体スルホン酸または固体スルホン酸を、他の反応物と共にクレームにおいて列挙する順で用いることもできる。
【0022】
本発明において用いるためのアミノカルボン酸の好ましい種は以下のとおりに定義することができる。「環式」なる用語は-アルキレン-シクロアルキルおよび-シクロアルキル-アルキル、例えばメチレンシクロペンチルまたはメチルシクロペンチルまたはメチルメチレンシクロペンチルまたはその組み合わせを含む。「環式」または「芳香族」なる用語は、最低3炭素原子の環式構造、および少なくとも6炭素原子の芳香族構造を意味する。「多環式」、「ポリ芳香族」、「ヘテロ多環式」および「ヘテロポリ芳香族」なる用語は、縮合環誘導体および一重結合により互いに連結された環ならびにその組み合わせを含む。さらに、「多環式」および「ヘテロ多環式」なる用語は、架橋およびスピロ誘導体も含む。iに関して、X1は環式および多環式基についてはC3-20、および芳香族またはポリ芳香族基についてはC6-20を表しうる。芳香族/ポリ芳香族基はアルキル芳香族(アリール)、アルキレン芳香族およびアルキルアルキレン芳香族によって表されうる。好ましいX1種はC2-10環式、直鎖または分枝アルキルおよび芳香族基を含む。A、Bは好ましくはHおよび直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置のC1-10を有する炭化水素基から選択され;X2は好ましくはいかなる置換基も持たない、直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置のC1-6炭化水素基から選択される。好ましい複素環Dは5〜6員を有し、窒素原子に加えて1〜2個のヘテロ原子を含む。iiにおけるDはC4-6アルキルイミドまたはC8-12芳香族イミドによっても表されうる。iiiにおけるX3は好ましくは直接連結または直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式もしくはヘテロ芳香族配置のC1-10炭化水素基、特にC1-6アルキル基から選択される。適切なイミド前駆体の例は、無水コハク酸、無水グルタミン酸および無水フタル酸である。好ましいE(iii)は、窒素原子に加えて1〜3個のヘテロ原子を含む、5〜10員環を有する構造である。
【0023】
本明細書における適切かつ好ましいアミノカルボン酸には以下が含まれる:
4-ピペリジンカルボン酸(iii)、イソニペコチン酸としても公知;
N,N-ジメチル-γ-アミノ酪酸(i);
N-メチル-γ-アミノ酪酸(i);
m-アミノ安息香酸(i);および
4-フタルイミド-酪酸(ii)。
【0024】
本明細書における特に好ましい実行において、非常に望ましい反応生成物を合成するのに適したアミノカルボン酸は以下のとおりである。

【0025】
アミノカルボン酸は通常は周囲条件で固体である。アミノカルボン酸をP4O6を含むスルホン酸に加える場合、これを固体として、スルホン酸もしくは適当な溶媒中の溶液として、またはスルホン酸および溶媒との混合物で反応媒質に加えることができる。
【0026】
対イオンがP4O6に適合性であるとの条件で、アミノカルボン酸はそのまま、または塩として、反応媒質に加えるために用いることができる。適切なイオンの例には、メタンスルホン酸イオン;リン酸イオン;ヨウ化物イオン;臭化物イオンおよび塩化物イオンが含まれる。
【0027】
本明細書における本発明の方法は塩化物およびLOOPS除去下で操作し、高い選択性および純度の生成物を生じるため、母液を非常に容易に再循環させて、反応物の定量的使用および変換を最適化することができる。本明細書における本発明の方法は、当該技術に比べて、必要性に応じ、生成物単離段階において用いた水およびおそらくは溶媒の除去後の母液の容易かつ効率的な再循環を可能にするため、特に有益である。
【0028】
生じた反応生成物は、当業者には公知の標準的方法により、適当な様式で回収することができる。反応生成物は、例えば、公知の技術を用いて単離することができる。一つのアプローチを例示するために、反応媒質に水を加えて、生じた反応生成物を、典型的には80〜140℃の範囲の温度で加熱することにより加水分解し、反応生成物を遊離の単量体アミノヒドロキシジホスホン酸に変換することにより出発することができ、これを続いて、例えば、適切な共溶媒/希釈剤の添加による結晶化または沈澱により加水分解した反応混合物から分離することができる。結晶化した材料または沈澱を、例えば、ろ過または遠心沈降により単離し、さらに結晶化して、例えば薬学的条件を満たすことができる。別のアプローチにおいて、最終生成物を完全または部分的に中和した酸性塩として回収することもできる。適切な塩種は優先的にアルカリおよびアルカリ土類イオンを含む。最終塩生成物は、例えば、再結晶により日常的に単離および精製して、精製塩を、おそらくは薬局方の条件を満たす水和物として得ることができる。または、塩およびそれらの水和物は単離した酸等価物から調製することもできる。生じた反応生成物の単離および精製は、硫黄含有化合物の残留する痕跡を除去するための活性炭処理などの、当業者には周知の日常的手段の使用を必要とすることもある。
【0029】
本発明の反応は、当技術分野において日常的に公知の様式で行う。実験の説明において例示するとおり、方法は基本的な反応相手を混合し、反応混合物を通常は40℃〜180℃、より好ましくは60°〜160℃、特に80〜140℃の範囲内の温度に加熱することにより実施することができる。選択した温度での反応の時間は10分〜30時間、好ましくは30分〜20時間、特に1時間〜18時間である。上の方の温度は、反応物、溶媒またはこれらの反応中に生じた中間体の任意の実質的な過度の分解を防止することを目的とする。反応相手または溶媒の分解温度は、圧ならびに反応混合物中の成分の定性的および定量的パラメーターなどの、物理的パラメーターに依存して変動しうることが理解され、周知である。反応は周囲圧で行うことができる。反応の時間は実質的に即時、例えば10分〜長時間、例えば30時間まで変動しうる。この時間は反応物の逐次的な添加を含みうる。一つの方法の設定において、P4O6をアミノカルボン酸およびスルホン酸の混合物に加え、生じた混合物を40℃〜180℃の範囲の温度まで加熱する。別の操作配列において、反応を密閉容器内で行うこともできる。
【0030】
不均質触媒を用いるさらに別の配列において、反応混合物を含む反応容器を、不均質触媒存在下、選択した反応温度で維持する。
【0031】
前述のプロセス変量は、反応を様々な実質的に相補的な配列によって行いうることを示す。反応は、初期反応物、通常はP4O6、アミノカルボン酸およびスルホン酸を密閉容器内で、おそらくは高まった自生圧力下、例えば60℃〜160℃の範囲の温度に加熱することにより、バッチプロセスとして実施することができる。特に好ましい態様において、反応を密閉容器内、80℃〜140℃の範囲の温度で、30分〜20時間、特に1時間〜18時間実施する。さらに別のアプローチにおいて、反応を、おそらくは高まった自生圧力下、持続的プロセスとして行い、ここで反応物、通常は混合物を反応域に40℃〜180℃の範囲の温度で持続的に注入する。合成反応を持続的に行うこともでき、ここで反応生成物の加水分解および最終ジホスホン酸生成物の単離/精製はバッチにより行う。
【0032】
本発明の技術を以下の実施例によって例示する。
【実施例】
【0033】
一般手順:撹拌機、還流冷却器および添加漏斗を備えた三頚丸底フラスコ中、アミノ酸、任意に水およびスルホン酸と任意に溶媒を、窒素雰囲気下で混合する。P4O6をこの混合物に室温で15分以内に加える。または、P4O6をスルホン酸に加えた後、アミノ酸を加える。P4O6/水およびアミノ酸/P4O6のモル比ならびにスルホン酸の型や、P4O6のモル数で割ったスルホン酸当量の比および反応条件を表1および2に示す。次いで、反応混合物を加熱して特定の温度で所与の時間維持した後、水を加えて30重量%の水を含む溶液を得、これを115℃で2時間加熱する。粗生成物の31P NMR分析を実施し、アミノヒドロキシジホスホン酸の重量%を31Pシグナルから計算する。結果を表1および2に示す。
【0034】
本発明の反応を様々な条件でガンマアミノ酪酸またはそのフタルイミド等価物により実施した。結果を表1に示す。
【0035】
(表1) 4-アミノ-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸合成

* GABA=ガンマ-アミノ酪酸
** PhtGABAは4-フタルイミド酪酸を表す
*** MSAはメタンスルホン酸を表す
+ ESAはエタンスルホン酸を表す
++ p-TSAはパラ-トルエンスルホン酸を表す
+++ Amberlyst 15はRohm and Haas Companyからのスルホン酸であって、当量数はスルホン酸基の数に基づき、スルホン酸当量/P4O6のモル数の比はそれから計算する
# A-HADPはアミノアルキルヒドロキシジホスホン酸を表す
【0036】
一般手順に記載の反応を、他のアミノカルボン酸によりいくつかの条件で繰り返した。結果および操作条件を表2に示す。
【0037】
(表2) 他のアミノ-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸合成

* 実験16において、P4O6をMSAに加えた後、MSAに溶解したβ-アラニンを加えた
** β-Alaはβ-アラニンを表す
*** 4-PipCAは4-ピペリジンカルボン酸を表す
+ 6-AHexは6-アミノヘキサン酸を表す
++ DmGABAはN,N-ジメチルガンマ-アミノ酪酸を表す
+++ MmGABA MeSO3Hはメシラート塩としてのN-モノメチルガンマ-アミノ酪酸を表す。MmGABA(実験22)はN-モノメチルガンマ-アミノ酪酸を表す
# m-ABzはメタ-アミノ安息香酸を表す
## A-HDPはアミノヒドロキシジホスホン酸を表す
### 3-PyrAcは3-ピリジル酢酸を表す
【0038】
アレンドロン酸(4-アミノ-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸)を実験6の粗製反応混合物から、80℃で2-プロパノールを加え、続いて2時間で室温まで冷却することにより単離した。結晶性固体をろ過により分離し、2-プロパノールで洗浄し、減圧下で乾燥した。得られた生成物(単離収率83%)は化学的に純粋で、痕跡量の2-プロパノールおよびメタンスルホン酸を伴うにすぎなかった。溶媒および水の蒸発後、母液はメタンスルホン酸、未変換のガンマ-アミノ酪酸、残留4-アミノ-1-ヒドロキシブタン-1,1-ジホスホン酸、いくらかの亜リン酸および低レベルのリン酸を含んでいた。これを反応物、特に新鮮ガンマ-アミノ酪酸およびP4O6の添加後、アレンドロン酸合成のために再使用することができる。
【0039】
同じ反応を、以下に示す手順に従い、トリフルオロメタンスルホン酸中、アミノ基が芳香環の一部であるか、または芳香環の置換基であるアミノカルボン酸で実施した。
【0040】
手順:撹拌機、還流冷却器および添加漏斗を備えた三頚丸底フラスコ中、アミノカルボン酸、トリフルオロメタンスルホン酸(トリフル酸)と任意に溶媒を、窒素雰囲気下で混合する。P4O6をこの混合物に室温で10分以内に加える。アミノカルボン酸/P4O6およびトリフル酸/P4O6のモル比、ならびに操作条件を表3に示す。P4O6の添加完了後、反応混合物を撹拌しながら加熱し、その温度で所与の時間維持した後、水を加えて約30重量%のH2Oを含む溶液を得る。この溶液を撹拌しながら2〜5時間さらに加熱する。得られた粗製反応混合物の31P NMR分析を実施し、アミノヒドロキシジホスホン酸の重量%をそれから計算する。結果を表3に示す。
【0041】
(表3) アミノ-芳香族カルボン酸からのアミノ-1-ヒドロキシ-1,1-ホスホン酸合成

# A-HDPはアミノヒドロキシジホスホン酸を表す
* IAAはイミダゾリル酢酸を表す
** NAはニコチン酸を表す
*** m-ABzはメタ-アミノ安息香酸を表す
+ TfOHはトリフル酸(トリフルオロメタンスルホン酸)を表す
【0042】
比較実施例:特許DD 222030 A1に従っての(3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン)-1,1-ビスホスホン酸誘導体の合成
撹拌機、還流冷却器および添加漏斗を備えた三頚丸底フラスコ中、10.94gのβ-アラニンを2mol/lのHClを含む1,4-ジオキサン32mlに分散した。30分間撹拌した後、7.0mlのP4O6を室温で15分かけて加えた。不均質な混合物はP4O6を加えると粘度が増大した。明らかに二層であり、一方は液体で他方は粘度が高く、非常に粘稠性の固体であった。次いで、反応媒質を強く撹拌しながら加熱還流した。72℃で、固体および液体の色が黄色になった後、LOOPs生成が始まった。温度の上昇と共に色は徐々に濃くなった。還流温度に達した時点で、粘性固体は濃赤色となり、フラスコ内の固体の蓄積により撹拌が困難になった。還流を20分間維持し、次いで混合物を45℃に冷却した。水30mlを加えた後、H2O2の30%水溶液15mlを反応混合物にゆっくり加えた。過酸化水素水溶液の添加により赤色固体は速やかに消失した。この手順はLOOPsを反応させ、リン酸に変換することが公知である。残留亜リン酸もこれらの条件下でリン酸に変換される。温度はこの処理中に45〜60℃に上昇した。冷却後、粗生成物を31P NMRで分析した。結果から、(3-アミノ-1-ヒドロキシプロピリデン)-1,1-ビスホスホン酸が42.9重量%で生成し、リン酸が45.9重量%で存在することが判明した。
【0043】
生じたアミノヒドロキシジホスホン酸は一般に、構想される適用に適したいかなる形式でも回収し、さらに精製することができる。例として、反応生成物は通常、酸の形で回収し、必要に応じてさらに精製する。反応生成物は、特に、様々な水和物の形で結晶化することができる。反応生成物は中和し、さらに精製して、ホスホン酸塩を得ることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するアミノカルボン酸、液体P4O6およびスルホン酸から出発するアミノヒドロキシジホスホン酸の製造方法であって、以下の段階を含む方法:
a:液体P4O6をスルホン酸中のアミノカルボン酸の溶液に加える段階;または
b:液体P4O6をスルホン酸に加え、続いてアミノカルボン酸を加える段階;
ここでスルホン酸は、均質および不均質な、スルホン酸およびポリスルホン酸から選択され;かつアミノカルボン酸およびP4O6は4:1〜1:1のモル比で用い、スルホン酸はアミノカルボン酸1モルあたり1〜30当量のレベルで用い;かつここでアミノカルボン酸は以下の群から選択され:
i:(A)(B)N-X1-COOH
式中、X1はCOOHとNとの間に少なくとも2つの炭素単位があるものであり;X1はCF3、F、Cl、SR、NR'2、SO2RおよびORから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい、2〜20個の炭素原子を有する直鎖、分枝、環式および芳香族種から選択される炭化水素基で表すことができ;AおよびBは独立にH、分枝、直鎖、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基から選択され、これらはOR、SR、CF3、F、Cl、NR'2、SO2Rおよび/またはRで置換されていてもよく、ここでRは直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置の1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、これらはOR''、SR''、CF3、F、Cl、NR'''2および/またはSO2R''で置換されていてもよく、ここでR'はRおよび水素から選択され、かつ独立に選択されてもよく;R''は直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置の1〜12個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;R'''はR''および水素から選択され、かつR'''基は独立に選択されてもよく;ここで複素環式およびヘテロ芳香族基は窒素、硫黄および酸素から独立に選択される1〜4個のヘテロ原子を含むことができ;ただしこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環における構成原子の数からこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環におけるヘテロ原子の数を引いた差は少なくとも2であり;ただしカルボン酸基の隣の炭素原子は単に水素および少なくともN(A)(B)基を有する1つの炭素原子に連結していることを条件とし;AがHであるとき、BはCOOT基であってもよく、ここでTはC1〜C10アルキル基またはC6〜C10芳香族部分であり;
ii:D-X2-COOH
式中、X2はCOOHとNとの間の少なくとも1つの炭素原子であり;X2は、CF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2Rおよび/またはORで置換されていてもよい、基中に1〜20個の炭素原子を有する、直鎖、分枝、環式または芳香族配置の炭化水素基であり;ただしCOOHとNとの間に炭素原子が1個だけあるとき、Dはヘテロ単環芳香族基を表すことを条件とし、すべての他の場合にはDはX2に直接連結されている少なくとも1つの窒素原子を含むヘテロ単環式またはヘテロ単環芳香族基を表し、該ヘテロ単環またはヘテロ単環芳香環は4〜8員環で表され、かつ窒素、酸素および硫黄から選択される1〜3個の追加のヘテロ原子を含み、この環はCF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2RおよびORから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく、このヘテロ単環またはヘテロ単環芳香環は1つまたは複数のC1〜C10直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族部分でさらに置換されていてもよく、これはCF3、F、Cl、NR'''2、SR''、SO2R''およびOR''から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく、ここでR、R'、R''およびR'''は前述の意味を有し;窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、この環式、複素環式、芳香族またはヘテロ芳香族部分は、D基と縮合または一重結合によりD基に連結されていてもよく、ここでD基と縮合している環式構造において、4つ以下の個々の環が存在し;ここでD基と縮合または一重結合により連結されている複素環式およびヘテロ芳香族部分、ならびにD基自体は、これらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環における構成原子の数からこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環におけるヘテロ原子の数を引いた差は少なくとも2であるものであり;ここでD基は環式無水物との反応により生じた、X2部分に連結されているNH2基から誘導されるイミドで表すこともでき;ただしiiのカルボン酸基の隣の炭素原子は単に水素および少なくともD基を有する1つの炭素原子に連結しており、かつiiにおいて、X2が単にCOOHとDにおけるNとの間の1つの炭素単位であるとき、その炭素原子は単に水素および炭素原子で置換されうることを条件とし、および
iii:E-X3-COOH
式中、X3は直接連結またはCF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2Rおよび/またはORで置換されていてもよい、C1〜C20直鎖、分枝、環式または芳香族炭化水素基であり;ただしX3が直接連結であるか、またはX3が1つの炭素原子単位であるとき、COOH基とEの窒素原子との間に少なくとも2つの炭素原子があることを条件とし;ここでEはX3に炭素原子を介して直接連結され、かつ窒素原子を含む複素環式またはヘテロ芳香族の4〜14員環で表され、この複素環式またはヘテロ芳香族基はCF3、F、Cl、NR'2、SR、SO2RおよびORから選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよく;そのような複素環および/またはヘテロ芳香環は酸素、窒素および硫黄から選択される1〜3個の追加のヘテロ原子を含むことができ;そのような複素環式および/またはヘテロ芳香族基はC1〜C10直鎖、分枝環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族炭化水素基から選択される1つまたは複数の基でさらに置換されていてもよく、これらの基はCF3、F、Cl、NR'''2、SR''、SO2R''および/またはOR''で置換されていてもよく、ここでR、R'、R''およびR'''は前述の意味を有し;ただしこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環における構成原子の数からこれらの複素環またはヘテロ芳香環の個々の環におけるヘテロ原子の数を引いた差は少なくとも2であり;ただしX3が直接連結でないとき、カルボン酸基の隣の炭素原子は単に水素原子および少なくともE基を有する1つの炭素原子に連結しており、かつiiiにおいて、X3がCOOHとE基との間の唯一の1つの炭素単位であるとき、その炭素原子は単に水素および炭素原子で置換されうることを条件とし;
ならびに
c:反応混合物を40℃〜180℃の範囲の温度で、10分〜30時間の間加熱する段階。
【請求項2】
X1が、C2-10環式、直鎖または分枝アルキルおよび芳香族基から選択され、かつAおよびBが独立にHおよび直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置のC1-10炭化水素基から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
X2が、いかなる置換基も持たない、直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置のC1-6炭化水素基から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
X3が、直接連結および直鎖、分枝、環式、芳香族、複素環式またはヘテロ芳香族配置のC1-10炭化水素基から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
スルホン酸をアミノカルボン酸1モルあたり3〜20当量のレベルで用いる、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
スルホン酸が均質であり、かつ以下の式:
(R-(SO3H)x)
を有し、式中、Rが以下から選択される、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法:
xが1〜4である場合、Fおよび/またはCF3基で置換されていてもよい、直鎖、分枝、環式または多環式配置のC1-24炭化水素基;
xが、単環芳香族系では1〜3であり、かつ二環芳香族およびより高次の系では1〜4である場合、C6-14芳香族またはアルキル基がC6-20でありうるアルキル芳香族基;
ジフェニルエーテルまたはジフェニルメタン;
C6-20アルキルジフェニルメタン;および
xが1または2である場合、C6-20アルキルジフェニルエーテル。
【請求項7】
スルホン酸が不均質であり、かつ以下から選択される、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法:
SO3基を芳香族基上にグラフトするために官能基化したスチレン、エチルビニルベンゼンおよびジビニルベンゼンのコポリマーを含む樹脂上にグラフトしたスルホン酸;
スルホン酸基を有する過フッ化樹脂;
孤立電子対を有する固体上に付着させたスルホン酸;ならびに
スルホン酸を生じることができる化学的グラフティングによって官能基化したポリマーおよび無機固体。
【請求項8】
酸素およびリンを基本的に化学量論量で、1600K〜2000Kの範囲の温度の反応装置中、0.5〜30秒の反応滞留時間で反応させ、続いて反応生成物を700K未満の温度で急冷し、反応生成物を蒸留により精製することによって、P4O6を製造する、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
P4O6中の元素リンのレベルが、P4O6(100%)に対して表すと1000ppm未満である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
反応物が、アミノヒドロキシジホスホン酸(100%)に対して表すと400ppm未満の塩素を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
P4O6:水=1:2〜1:0.1のモル比で、スルホン酸を水と組み合わせて用いる、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
スルホン酸を、アニソール;フルオロベンゼン;塩素化炭化水素;スルホラン;ジグリム;グリム;酸化ジフェニル;ポリアルキレングリコール;脂肪族炭化水素;ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、およびジペンチルエーテルを含む非環式エーテル;環式エーテル;芳香族炭化水素;有機アセテート;有機ニトリル;ならびにシリコン液から選択される有機溶媒と共に用い;かつ有機溶媒を、アミノカルボン酸:有機溶媒=1:1〜1:10のモル比で用いる、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
リン酸共希釈剤が、アミノカルボン酸:リン酸=1:0.01〜1:1のモル比で存在する、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
不均質スルホン酸を、アニソール、フルオロベンゼン、塩素化炭化水素、有機アセテート、有機ニトリル、シリコン液、スルホラン、ジグリム、グリム、酸化ジフェニルおよびRが1〜8個の炭素原子を有するアルキルまたはアシル基であるOR基でキャップされたポリアルキレングリコールから選択される極性溶媒との組み合わせで用いる、請求項12記載の方法。
【請求項15】
アミノカルボン酸が以下から選択される、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法:
4-ピペリジンカルボン酸(iii);
N,N-ジメチル-γ-アミノ酪酸(i);
N-メチル-γ-アミノ酪酸(i);
m-アミノ安息香酸(i);
4-フタルイミド-酪酸(ii);
N,N-ジメチルβ-アラニン(i);
イミダゾ[1,2-a]ピリジン-酢酸(iii);
3-ピリジン酢酸(iii);
β-アラニン(i);
ヘキサン酸、6-アミノ-(i);
β-アラニン、N-メチル、N-ペンチル(i);および
ブタン酸、4-アミノ(i);および
イミダゾイル酢酸(iii)。

【公表番号】特表2013−506641(P2013−506641A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531454(P2012−531454)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064755
【国際公開番号】WO2011/039378
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(510011787)ストレイトマーク・ホールディング・アーゲー (10)
【Fターム(参考)】