説明

アミノピラゾール化合物

本発明は、慢性骨髄増殖性疾患ならびに様々な癌、例えば、神経膠芽腫、乳癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、および白血病の治療において有用な、アミノピラゾール化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩に関する。
【背景技術】
【0002】
ヤヌスキナーゼ2(JAK2)は、サイトカインの情報伝達に関与するチロシンキナーゼファミリーのメンバーである。JAK2は、エリスロポエチン(EPO)情報伝達経路(赤血球の分化およびStat5の活性化等)における、中心的役割を有する。
【0003】
近年の研究において、慢性骨髄増殖性疾患(真性多血症、本態性血小板増加症、および骨髄化生を伴う骨髄硬化症等)および血栓性疾患(活性化プロテインC抵抗性、内臓静脈血栓症、バッド・キアリ症候群、および門脈血栓症等)を有する患者は、JAK2における後天性の活性化突然変異を頻繁に有することが示された。当該変異(アミノ酸位置617でのバリンからフェニルアラニンへの置換)は、構成的チロシンリン酸化活性を、未知の機構によってもたらす。JAK2変異の構成的活性は、増加したレベルのリン酸化JAK2、pSTAT5、およびSTAT5転写活性をもたらし、これらは骨髄増殖性疾患および白血病(非定型慢性骨髄性白血病等)の病理発生をもたらす。さらに、JAK2は、インターロイキン6依存性オートクリンループ(autocrine loop)、または固形癌および血液腫瘍(例えば、神経膠芽腫、乳癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、原発性および二次性の急性骨髄性白血病、T細胞性(T−lineage)およびB細胞性(B−lineage)の急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群)における他の遺伝子変異によって活性化される。
【0004】
様々なアミノピラゾールチロシンキナーゼ阻害剤が報告されている。例えば、特許文献1および特許文献2を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06087538号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007064797号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、チロシンキナーゼ(JAK2等)を阻害するさらなる化合物に対するニーズが依然として存在する。本発明は、JAK2情報伝達経路が活性化されるか、またはJAK/STAT情報伝達が調節不全にされる、骨髄増殖性疾患の治療のための臨床用途を有すると考えられる新規なアミノピラゾール化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩を提供する。
【0008】
本発明は、哺乳類における、真性多血症、本態性血小板増加症、および骨髄化生を伴う骨髄硬化症からなる群から選択される慢性骨髄増殖性疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする哺乳類に、有効量の3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する工程を含む治療方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、患者における、神経膠芽腫、乳癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、ならびに白血病、例えば非定型慢性骨髄性白血病、原発性および二次性の急性骨髄性白血病、T細胞性およびB細胞性の急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、ならびに骨髄増殖性疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に、有効量の3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩を投与する工程を含む治療方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンもしくはその薬理学的に許容できる塩、および薬理学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンもしくはその薬理学的に許容できる塩、および薬理学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤を、別の治療成分と組み合わせて提供する。
【0012】
本発明はまた、薬物としての使用のための、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩を提供する。さらに、本発明は、慢性骨髄増殖性疾患の治療のための薬物の製造における、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩の使用を提供する。特に、これらの慢性骨髄増殖性疾患は、真性多血症、本態性血小板増加症、および骨髄化生を伴う骨髄硬化症からなる群から選択される。さらに、本発明は、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンまたはその薬理学的に許容できる塩を有効成分として含む、真性多血症、本態性血小板増加症、および骨髄化生を伴う骨髄硬化症からなる群から選択される慢性骨髄増殖性疾患の治療のための医薬組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化合物は、塩を形成できることが当業者によって理解されるだろう。本発明の化合物はアミンであり、従って、いくつかの無機酸および有機酸のいずれかと反応し、薬理学的に許容できる酸付加塩を形成する。このような薬理学的に許容できる酸付加塩、および、これらを調製するための一般的な方法論は、当該技術分野で周知である。例えば、P.Stahlら、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE(VCHA/Wiley−VCH、2002);L.D.Bighley、S.M.Berge、D.C.Monkhouseの、“Encyclopedia of Pharmaceutical Technology”、J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編集、Vol.13、Marcel Dekker社、New York、Basel、Hong Kong 1995、pp.453−499;S.M.Bergeら、“Pharmaceutical Salts”、Journal of Pharmaceutical Sciences、Vol 66、No.1、1977年、1月を参照。
【0014】
下記の調製物および例は、ChemDraw Ultra、Version 10.0を使用して命名した。
【0015】
スキーム1:
調製1
1−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン
方法1:
1Lの丸底フラスコ中で、5−アミノ−3−メチルピラゾール(22.8g、234.8mmol)およびN−メチルピロリドン(200mL)を混合した。フラスコを、0℃まで冷却し、窒素下に置いた。水酸化ナトリウム(9.39g、1.0当量(equiv.))をフラスコに加え、30分間(min)撹拌した。N−メチルピロリドン(100mL)中のα−クロロ−4−メトキシトルエン(31mL、1.0当量)の溶液を、フラスコに滴下した。当該反応物を、室温(RT)まで、ゆっくりと一晩加温した。当該反応物を水で希釈し、酢酸エチル(EA)で抽出した。有機物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。真空中で濃縮した。シリカのプラグ上で精製した(ヘキサン→2:1 ヘキサン:EA →3:2 ヘキサン:EA→1:1 ヘキサン:EA→1:2 ヘキサン:EA→EA)。所望の画分を濃縮し、標記の化合物を得た(10.8g、21%)。LCMS(4分間)=218.0(M+1)。
【0016】
方法2:
A.(E)−tert−ブチル 2−(4−メトキシベンジリデン)ヒドラジンカルボキシラート
4−メトキシベンズアルデヒド(400g、2.94mol)を、トルエン(750mL)中のカルバジン酸tert−ブチル(400g、2.94mol)の溶液に、20分間かけて、50℃で加えた。1時間(h)かけて還流まで加熱し、トルエンとの共沸混合物中の水を収集した。さらなる水が全く収集されなくなった後に、60℃まで冷却した。ヘキサンを、生成物が溶液から沈殿するまで加えた。さらに20℃まで浴を冷却した。固形物を濾過によって収集し、窒素圧を使用して乾燥させ、標記の化合物を得た(750.5g、91%)。HNMR[400MHz,ジメチルスルホキシド−d(DMSO−d)]δ 10.6−10.8(bs,1H)、7.88−8.0(S,1H)、7.5−7.55(d,2H)、6.95−7.0(d,2H)、1.45(s,9H)。ES/MS(m/z):249[M−H]。
【0017】
B.tert−ブチル 2−(4−メトキシベンジル)ヒドラジンカルボキシラート
EA(100mL)中でスラリーにした10% パラジウム炭素(水湿潤品、20g)を、密封した圧力反応器に、真空搬送装置を介して加えた。搬送ラインを最少量のEAでリンスした。テトラヒドロフラン(THF、1000mL)中に溶解された(E)−tert−ブチル 2−(4−メトキシベンジリデン)ヒドラジンカルボキシラート(320g、1.28mol)を、真空搬送装置を介して入れ、ラインを最少量のTHFでリンスした。当該反応器を50PSI(約344kPa)まで、Hで加圧し、当該反応器の中身を20±10℃で混合した。当該反応を続け、さらなる水素の取り込みが認められなくなるまで、水素圧力を50PSI(約344kPa)に維持した。反応溶液を濾過し、触媒を除去し、触媒濾過ケーキをTHF(500mL)で洗浄した。当該洗浄物を反応濾液に加えた。当該溶液を真空中で濃縮し、標記の化合物(337g、86%)を油状物として得た。HNMR(400MHz、DMSO−d)δ 8.1−8.3(s,1H)、7.1−7.3(d,2H)、6.8−6.9(d,2H)、4.4−4.6(bs,1H)、3.7−3.8(s,2H)、3.6−3.7(s,3H)、1.3−1.5(s,9H)。
【0018】
C.(4−メトキシベンジル)ヒドラジン二塩酸塩
ジオキサン(2000mL、8.00mol HCl)中の4N 塩化水素の溶液に、最少量のジオキサン中に溶解された、tert−ブチル 2−(4−メトキシベンジル)ヒドラジンカルボキシラート(324g、1.09mol)を、ゆっくりと1時間かけて加えた。沈殿物が徐々に形成した。溶液を、16時間、20±5℃で撹拌させた。固形物を濾過によって収集した。当該固形物をヘプタン(2000mL)中でスラリーにし、当該固形物を濾過によって単離した。当該固形物を、窒素圧を使用して乾燥し、標記の化合物を得た(242.3g、1.08mol、98%)。HNMR(400MHz,DMSO−d)δ 8.2−9.0(bs,5H)、7.3−7.4(d,2H)、6.8−7.0(d,2H)、4.0(s,2H)、3.7(s,3H)。
【0019】
D.1−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミンおよび1−(4−メトキシベンジル)−3−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン
カリウム tert−ブトキシド(191.89g、1.71mol)およびTHF(2000mL)を、22℃で混合した。均一な溶液が得られるまで混合した。5℃まで冷却した。アセトニトリル(84.25g、2.05mol)および酢酸メチル(126.7g、1.71mol)の予混合した溶液を、カリウム tert−ブトキシド溶液に、45分間かけて、温度を10℃未満に維持しながら加えた。加え終わった後に、反応物を20±5℃まで加温させ、約2時間撹拌した。(4−メトキシベンジル)ヒドラジン二塩酸塩(250g)を、当該反応物に、約5分間かけて数回に分けて加え、次いで、ジオキサン(262.5g、1.00mol)中の4N 塩化水素を、温度を<30℃に維持する速度で加えた。加え終わったときに、25±5℃で約16時間撹拌させた。固形物を濾過によって単離し、THF(500mL)で洗浄した。粗製の固形物を、ジクロロメタン(DCM、4L)および水(2L)中で、pHを5N NaOHで>10に調整してスラリーにした。層を沈降させ、有機層を収集した。水層をDCM(2L)で洗浄した。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、当該溶液を、固形物となるまで真空中で濃縮し、165gの粗製物を得た。当該粗製物を酢酸イソプロピル(660mL)中で還流まで加熱し、できるだけ多くの固形物を溶解した。33℃まで冷却し、ヘキサン(600mL)をゆっくりと1時間かけて加えた。10℃まで冷却し、温度を10℃に10分間維持した。固形物を濾過によって単離し、ヘキサン(200mL)で洗浄し、窒素圧を使用して乾燥し、標記の化合物の混合物を得た(91.5g、0.4mol、47%)。HNMR(400MHz,DMSO−d)δ 7.2−7.3(d,2H)、6.7−6.9(d,2H)、5.1(bs,2H)、5.0(s,1H)、4.9(s,2H)、3.6−3.8(s,3H)、1.9(s,3H)。
【0020】
注意:これらの中間体は、クロマトグラフィーによって分離できる。しかし、この場合、これらは混合物として単離され、ベンジル保護基の除去を伴い、同じ生成物をもたらす下記の最終段階において使用できる。
【0021】
調製2
2−クロロ−1−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)エタノン
1Lの丸底フラスコ中で、4’−クロロ−2’−フルオロアセトフェノン(40g、231.8mmol)、ヘプタン(120mL)、およびメタノール(16mL)を混合した。0℃まで冷却し、窒素下に置いた。塩化スルフリル(21.5mL、1.15当量)をヘプタン(120mL)中で溶解し、滴下漏斗に入れた。当該反応物に60分間かけて滴下した。2.5時間、0℃で撹拌し、この間に白色の沈殿物が形成した。当該滴下漏斗に1M 炭酸水素ナトリウム(400mL)を入れ、次いで、当該反応物に滴下した。全てのガス発生が停止した後に、二相性の懸濁液を濾過し、標記の化合物(38.18g、80%)を白色針状晶として収集した。HNMR(DMSO−d)δ 5.00(d,2H,J=2.5Hz)、7.43(m,1H)、7.63(m,1H)、7.89(t,1H,J=8.4Hz)。
【0022】
調製3
(E)−N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド
2Lの丸底フラスコ中で、3−クロロ−6−ピリダジンアミン(43.2g、333.5mmol)、トルエン(500mL)、およびN,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール(67.8mL、1.25当量)を混合した。還流冷却器を取り付け、次いで、還流まで2時間加熱した。室温まで冷却させた。真空中で濃縮した。粗製物質をヘキサンで粉末にし、濾過し、標記の化合物(60.4g、91%)を淡い黄褐色固体として単離した。MS=199.0(M+1)。
【0023】
調製4
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン
丸底フラスコ中で、(E)−N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド(36.61g、184.3mmol)、2−クロロ−1−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)エタノン(38.15g、1当量)、およびジメチルホルムアミド(150mL)を混合した。窒素下に置き、次いで、120℃で4時間加熱した。室温まで冷却させ、一晩撹拌した。EA(1L)および水(500mL)で希釈した。有機物を水で3回抽出し、次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液で抽出した。有機物を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過し、真空中で濃縮した。シリカプラグによって精製し(ヘキサン→4:1 ヘキサン:EA→3:1 ヘキサン:EA→2:1 ヘキサン:EA→1:1 ヘキサン:EA)、標記の化合物(33.8g、57%)を淡い緑色固形物として単離した。LCMS(4分間=324.0,326.0,M+1)。
【0024】
調製5
2−((6−クロロ−3−(4−クロロ−2−フルオロベンゾイル)−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−8−イル)メチル)イソインドリン−1,3−ジオン
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン(5.6g、17.3mmol)、N−フタロイルグリシン(6.0g、1.7当量)、アセトニトリル(60mL)、水(15mL)、トリフルオロ酢酸(0.26mL、0.2当量)、および硝酸銀(294mg、0.1当量)を丸底フラスコ中で、取り付けた滴下漏斗で混合し、窒素下に置いた。70℃まで加熱し、この温度で15分間維持した。過硫酸アンモニウム(7.1g、1.8当量)を水(15mL)中に溶解し、滴下漏斗に入れた。当該反応フラスコに、およそ20分間かけて滴下した。反応物を70℃で1時間加熱した。この間に沈殿物が形成した。ブフナー漏斗を介して濾過し、標記の化合物の粗製物(7.3g、87%)を、オフホワイトの固体として単離した。LCMS(4分間)=483.0,485.0,M+1。
【0025】
調製6
(8−(アミノメチル)−6−クロロ−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)(4−クロロ−2−フルオロフェニル)メタノン
2−((6−クロロ−3−(4−クロロ−2−フルオロベンゾイル)−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−8−イル)メチル)イソインドリン−1,3−ジオン(7.30g、15.1mmol)、エタノール(200mL)、およびヒドラジン(1.45mL、3当量)を、丸底フラスコ中で混合し、窒素下に置いた。2日間、室温で撹拌した。2時間、50℃で加熱し、次いで、反応物を真空中で濃縮した。EAで希釈した。有機物を、1N HCl(aq)で洗浄し、生成物を水層に入れた。当該水層を、1N NaOH(aq)で塩基性にし、EAで抽出した。EA層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過し、真空中で濃縮し、標記の化合物の粗製物(1.2g、23%)を淡い緑色固形物として得た。MS=355.0,353.0(M+1)。
【0026】
調製7
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチル−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン
(8−(アミノメチル)−6−クロロ−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)(4−クロロ−2−フルオロフェニル)メタノン(1.15g、3.3mmol)、水(12mL)、炭酸カリウム(495mg、1.1当量)、および2−ブロモエチルエーテル(0.47mL、1.1当量)を、20mL マイクロ波反応容器中で混合した。圧着キャップで密封し、次いで、マイクロ波反応器中で、120℃で20分間加熱した。室温まで冷却し、EAおよび水の間に分配した。EA層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で精製し(4:1 ヘキサン:EA→2:1 ヘキサン:EA→1:1 ヘキサン:EA)、標記の化合物(0.43g、31%)を淡い黄色フォームとして得た。LCMS(4分間)=423.0,425.0,M+1。
【0027】
調製8
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチル−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノール
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチル−8−(モルホリノメチル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン(0.43g、1.0mmol)およびメタノール(15mL)を、丸底フラスコ中で混合した。窒素下に置き、0℃まで冷却した。水素化ホウ素ナトリウム(58mg、1.5当量)を一度に加えた。5分間、この温度で撹拌し、次いで、冷却槽を取り除き、室温まで加温させた。15分間後、反応物を水でクエンチし、次いで、EAで抽出した。有機物を、水、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機物を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過し、真空中で濃縮し、標記の化合物(0.4g、93%)を得た。LCMS(4分間)=425.0,427.0,M+1。
【0028】
調製9
4−((6−クロロ−3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−8−イル)メチル)モルホリン
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチル−8−(モルホリノメチル)−イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノール(0.4g、0.94mmol)、1,2−ジクロロエタン(25mL)、トリエチルシラン(0.45mL、3当量)、およびトリフルオロ酢酸(0.57mL、8当量)を、丸底フラスコ中で混合し、窒素下に置いた。70℃で一晩加熱した。反応物を真空中で濃縮した。Varian MegaElut(登録商標)10グラム SCX イオン交換カートリッジ(メタノールで予洗した)上にのせた。メタノールで溶出し、非塩基性の不純物を除去した。メタノール中の2M アンモニアで溶出した。真空中で濃縮し、標記の化合物(0.36g、94%)を得た。LCMS(4分間)=409.0,411.0,M+1。
【0029】
調製10
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−N−(1−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−2−メチル−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン
4−((6−クロロ−3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−8−イル)メチル)モルホリン(0.36g、0.88mmol)、1−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−アミン(0.248g、1.3当量)、炭酸カリウム(0.30g、2.5当量)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(0.076g、0.15当量)、水(2mL)、および1,4−ジオキサン(20mL)を、丸底フラスコ中で混合した。窒素で完全に脱気し、次いでビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0.10g、0.2当量)を加えた。還流冷却器を取り付け、窒素下に置いた。反応物を還流で一晩加熱した。反応物をセライトプラグに通した。EAで当該プラグを洗浄した。分液漏斗に移し、水で洗浄した。有機層を塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で精製し(EA→10% メタノール:EA)、標記の化合物(0.447g、86%)を淡黄色固体として得た。LCMS(4分間)=590.2,591.2,M+1。
【実施例】
【0030】
実施例1
【化1】

3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−N−(1−(4−メトキシベンジル)−5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−2−メチル−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン(0.447g、0.76mmol)およびトリフルオロ酢酸(10mL)を、20mL マイクロ波反応チューブ中で混合した。圧着キャップで密封し、次いで、マイクロ波反応器中で、120℃で20分間加熱した。過剰量のNaOH水溶液で塩基性にしたEAおよび水の間に分配した。有機層をNaOH水溶液で3回洗浄し、次いで、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で精製し(EA→10% メタノール:EA)、標記の化合物(0.246g、0.52mmol)を淡黄色固体として得た。LCMS(8分間)=470.0,M+1。
【0031】
実施例2
【化2】

3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン塩酸塩
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン(0.1g、0.21mmol)および1,4−ジオキサン(10mL)を、ナシフラスコ中で混合し、窒素下に置いた。塩化水素(4M、1,4−ジオキサン中、0.053mL、1.0当量)を加え、室温で、窒素下で、1.5時間撹拌させた。真空中で濃縮し、次いで、真空下で、無水エタノールから、2回エバポレートした。一晩、真空オーブン(60℃)中で乾燥し、標記の化合物(0.11g,102%)を得た。LCMS(8分間)=470.0,M+1。
【0032】
スキーム2:
調製11
(E)−N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド
6−クロロピリダジン−3−アミン(1.500kg、11.58mol)、1,1−ジメトキシ−N,N−ジメチルエタンアミン(2.313kg、17.37mol)およびシクロペンチルメチルエーテル(8.25L)を混合し、次いで、得られたメタノール副産物を蒸留しながら、98℃まで加熱した。4時間後、反応混合物を常温まで冷却し、ヘプタン(11.2L)を当該反応溶液に、生成物を結晶化するために加えた。標記の化合物を濾過によって収集し、乾燥した(1.494kg、64.95%;mp=73℃)。
【0033】
調製12
2−クロロ−1−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)エタノン
ヘプタン(1.5L)、メタノール(0.4L)、および1−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)エタノン(1kg、5.81mol)の混合物を、<5℃まで冷却しながら撹拌した。塩化スルフリル(0.608L、1.02kg、7.55mol)を、ヘプタン(1.5L)溶液として、当該混合物に、添加の間、反応温度を<15℃に維持しながら滴下した。2時間後、当該反応物を、常温で、水酸化ナトリウム(5N、2.0L)でpH6までクエンチした。当該反応混合物を塩化メチレン(2L)で抽出し、抽出物を濃縮し、白色固形物を形成した。濾過し、当該固形物を乾燥した。
【0034】
調製13
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン
2−クロロ−1−(4−クロロ−2−フルオロフェニル)エタノン(1.5kg、5.44mol)、および(E)−N’−(6−クロロピリダジン−3−イル)−N,N−ジメチルアセトイミドアミド(1.19kg、5.72mol)をDMF(10.14L)中で混合し、120℃で5時間加熱した。冷却後、水(30L)を加え、撹拌し、生成物を結晶化させた。生成物を濾過によって収集し、ケーキを水(2×12L)およびヘプタン(2×10L)でリンスし、次いで、真空下で乾燥させ、標記の化合物を得た(1.490kg、84.44%;mp=160℃、M+=324)。
【0035】
調製14
(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチル−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン
エタノール(12L)、(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン(897.70g、2.77mol)およびビス(2,4−ペンタンジオナト)−オキソバナジウム(IV)(146.81g、553.67mmol)を、反応容器に、窒素雰囲気で加えた。4−メチルモルホリン 4−オキシド(3.89kg、33.21mol)のエタノール(6L)溶液を、150分間かけて、反応温度を23〜33℃に維持しながら滴下した。次いで、当該反応物を40℃で48時間加熱した。当該反応物を冷却し、溶剤(13L)の除去によって濃縮した。得られた混合物を濾過し、濾過ケーキをヘキサン(1L)でリンスし、次いで乾燥した。(728g、66.25%;mp 145〜147℃;M+=423)。
【0036】
調製15
4−((6−クロロ−3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−8−イル)メチル)モルホリン塩酸塩
26℃で、トリエチルシラン(110g、946mmol)および(4−クロロ−2−フルオロフェニル)(6−クロロ−2−メチル−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−3−イル)メタノン(50.1g、117.06mmol)を混合し、溶液を生成した。トリフルオロ酢酸(150mL、1.98mol)を、当該反応混合物に加え、次いで、78℃で24時間加熱した。当該反応物を常温まで冷却し、混合物を分離し、最上層を除去した。最下層を酢酸エチル(1L)で溶解し、pHを水酸化ナトリウム(4N、500mL)で11に調整した。有機層を分離し、HCl(4M、エチルエーテル中)を当該有機層に加え、HCl塩を形成した。当該HCl塩を濾過し、乾燥した。(100g(96%);mp=237〜238℃;M+=409)。
【0037】
調製16
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン塩酸塩および遊離塩基
塩化パラジウム(160mg、0.90mmol)および4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン(1.10g、1.84mmol)を、DMF(25mL)中で混合することによって活性触媒を調製し、加温して溶液を生成した。あらかじめ作製した触媒を、DMF(65mL)中の3−メチル−1H−ピラゾール−5−アミン(3.0g、29.65mmol)、4−((6−クロロ−3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチルイミダゾ[1,2−b]ピリダジン−8−イル)メチル)モルホリン塩酸塩(9.0g、20.19mmol)、炭酸水素カリウム(6.0g、59.93mmol)の溶液に加え、150℃まで1時間加熱した。反応物を60℃まで冷却し、メルカプトプロピル官能化シリカ(500mg)を加え、1時間撹拌し、次いで濾過し、シリカを除去した。常温まで冷却し、2−メチルテトラヒドロフラン(125mL)を加え、水で抽出し、DMFを除去した。HClを有機溶液に加え、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン塩酸塩を形成した。HCl塩(1.1g)を、n−ブタノール(10mL)中の水酸化ナトリウム(10mL、1N)に加え、撹拌した。得られた混合物を濾過し、0.22gの遊離塩基、イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン、3−[(4−クロロ−2−フルオロフェニル)メチル]−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(4−モルホリニルメチル)を得た(収率22%、M+1=470)。
【0038】
実施例3
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンの作製
任意に、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンおよび賦形剤を、適切なスクリーンに通した。3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン、アルファ化デンプン、および5% ジメチコンを有するアルファ化デンプンを、適切なタンブルビン(tumble bin)(増圧バー(intensifier bar)を有するもの、または有さないもの)または他の適切な混合設備を使用して混ぜ、混合した。交互に、ジメチコンを、混合の間、液体添加システムを介して加えた。混合した粉末を、カプセルに、適切なカプセル封入設備を使用して充填した。質量の均一性および適切な工程内のパラメータを、充填工程の間モニターした。任意に、最終的なカプセルを異物分離し、または、手作業の工程もしくは自動化された工程のいずれかによって磨いた。
【0039】
JAK2 EPO−TF1/pSTAT5セルベースアッセイ
Cellomics ArrayScan(登録商標)HCS
JAK2 EPO−TF1/pSTAT5セルベースアッセイは、赤血球前駆細胞中のJAK2−STAT5の構成的活性化を模倣し、これは赤血球の過剰産生(真性多血症(PV)のマーカー)を引き起こす。
【0040】
TF−1(ヒト赤白血病(erythroid leukemia))細胞は、10% ウシ胎児血清(FBS)、0.075% 炭酸水素ナトリウム、1mM ピルビン酸ナトリウム、1×抗生物質/抗真菌剤(インビトロジェン、カリフォルニア州、カールズバッド)および0.45% グルコースを含む、RPMI 1640(RPMI−1640は、Mooreらによって、Roswell Park Memorial Instituteで開発された。その処方は、炭酸水素塩緩衝系ならびにアミノ酸およびビタミンの量の変更を利用した培地のRPMI−1630シリーズに基づく)中で維持した。当該培地に、GM−CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)を、最終濃度2ng/mLで補充した。細胞を、37℃で、5% COで維持した。細胞を無血清培地中で飢我させ、内在性の増殖因子を除去した。TF−1細胞を計測し、細胞を収集し、96ウェルプレートあたり2×10細胞を、ウェルあたり2×10細胞の密度で播種した。細胞を2回、無補充のRPMI 1640(0.075% 炭酸水素ナトリウム、1mM ピルビン酸ナトリウム、1×抗生物質/抗真菌剤、および0.45% グルコースを含むRPMI 1640)でリンスし、その後、細胞を、最終濃度5×10細胞/mLで、0.6% FBSを含むRPMI中で懸濁した。希釈された細胞を組織培養フラスコに戻し入れ、一晩、37℃でインキュベーションした。試験化合物を100% DMSO中で、10mMの濃度で調製した。化合物を、10時点の200×濃度反応域(4mM〜200nM)で、100% DMSOで、1:3で連続希釈した。別々の96ディープウェルプレート中で、2.5μLの200×化合物溶液を、4×濃度の化合物のプレートにおける10% FBSを含む125μLの完全RPMI 1640培地に加えた。
【0041】
アッセイを行うために、血清飢餓細胞を収集し、無補充のRPMI 1640培地で1回洗浄した。細胞を、10% FBS完全RPMI培地中で、最終濃度8×10細胞/mLで懸濁した。250μLの希釈された細胞(2×10細胞)の分割量を、4×濃度の化合物のプレート中の各ウェルに加えた。細胞をボルテックスによって混合し、当該プレートを37℃の水浴中で10分間インキュベーションした。6.4ユニット/mLのエリスロポエチン(EPO)の未使用の4×希釈標準溶液を、あらかじめ加温した10% FBS完全RPMI 1640培地を使用して調製した。細胞を化合物で10分間処理した後に、125μLのEPO培地を、各ウェルに加え、プレートをボルテックスした。細胞を37℃の水浴中で20分間インキュベーションし、インキュベーション時間の間、5分ごとに混合した。最終的な10時点の濃度反応域は、DMSOは0.5%、およびEPOは1.6U/mLの最終濃度で、20μM〜1nMだった。細胞の処理後、500μLの1% ホルムアルデヒド溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS)で新たに作製し、37℃で加温を維持した)を、各ウェルに加えた。プレートを密封し、8〜10回反転させて混合した。プレートを37℃の水浴中に10分間置いた。インキュベーション後、セルプレートを1200rpmで5分間、室温で(RT)で遠心した。上清を吸引し、100μLの細胞(2×10細胞)を残した。細胞をボルテックスし、遠心工程を繰り返すことによって800μLのPBSで2回洗浄し、最終的な洗浄後、約2×10細胞を含む100μLを残した。800μLの冷やした90% メタノールの分割量を細胞に加え、−20℃で一晩置いた。プレートを遠心し、メタノールを除去した。細胞をFACS バッファー(5% FBSおよび0.02% アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄した。200μLの、蛍光標示式細胞分取(FACS)バッファー中の1〜10の希釈度のマウス抗pSTAT5(pY694)Alexa Fluor 647(登録商標)の分割量を細胞に加えた。細胞をよく混合し、室温で、暗所で2時間インキュベーションした。細胞を1回PBSで洗浄し、100μLの細胞を残した。2μg/mL Hoechst(Acros Organics、ニュージャージー州、モリスプレーンズ)の希釈標準溶液をPBSで調製した。200μLの分割量を各ウェルに加え、細胞を、室温で、暗所で10分間インキュベーションした。細胞をPBSで洗浄し、50μLのCytofix(BD Biosciences、カリフォルニア州、サンノゼ)を細胞に加えた。細胞を96ウェル黒色組織培養プレートに移し、密封した。プレートをスピンダウンした。平均蛍光強度のデータを収集し、Cellomics Arrayscan(登録商標)VTiを使用して分析した。化合物処理を媒体と比較し、阻害率のデータを特定した。異なるIC50を有する2つの試験化合物間の最小有意比(minimum significant ratio、MSR)は、2.2であると特定した。相対IC50を、ActivityBase 4.0での、4パラメータのロジスティック曲線のフィッティング解析(fitting analysis)を使用して算出した。3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンについて、IC50=0.033μM、n=4である。このアッセイの結果は、3−(4−クロロ−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンが強力なJAK2阻害剤であることを示す。
【0042】
JAK3 IL−2−NK−92/pSTAT5セルベースアッセイ
Cellomics ArrayScan(登録商標)HCS
IL−2は、ナチュラルキラー(NK)細胞中のJAK3経路を活性化し、NKおよびCD8リンパ球増殖を引き起こす。従って、IL−2に刺激されたNK92/pSTAT5セルベースアッセイは、in vitro でのJAK2化合物のJAK3細胞活性の評価を可能にする。
【0043】
NK−92(ナチュラルキラー)細胞(ATCC、バージニア州、マナサス)を、15% ウシ胎児血清、15% ウマ血清および1×抗生物質/抗真菌剤(インビトロジェン、カリフォルニア州、カールズバッド)を含む最小必須培地(MEM)α中で維持した。当該培地に、IL−2(R&D systems、ミネソタ州、ミネアポリス)を、最終濃度4ng/mLで補充した。細胞を37℃で5% COで維持した。細胞を無血清培地中で飢我させ、内在性の増殖因子を除去した。NK−92細胞を計測し、収集し、96ウェルプレートあたり2×10細胞を、ウェルあたり密度2×10細胞で播種した。細胞を無補充のMEM α(MEM α)で2回リンスした後に、細胞を、0.6% 血清(0.3% FBS、0.3% ウマ血清)を含むMEM α中で、最終濃度8×10細胞/mLで懸濁した。希釈された細胞を組織培養フラスコに入れ戻し、一晩、37℃でインキュベーションした。試験化合物を100% DMSO中で、濃度10mMで調製した。化合物を、100% DMSOで、10時点の200×濃度反応域(4mM〜200nM)で、1:3で連続希釈した。別々の96ディープウェルプレート中に、2.5μLの200×化合物溶液を、4×濃度の化合物のプレートにおける125μLの10% FBS完全RPMI 1640培地に加えた。
【0044】
アッセイを行うために、血清飢餓細胞を収集し、無補充のRPMI 1640培地で1回洗浄した。細胞を10% FBS完全RPMI 1640培地中で最終濃度8×10細胞/mLで懸濁した。250μLの希釈された細胞(2×10細胞)の分割量を、4×濃度の化合物のプレート中の各ウェルに加えた。細胞をボルテックスによって混合し、当該プレートを37℃の水浴中で10分間インキュベーションした。2ng/mLのIL−2の未使用の4×希釈標準溶液を、あらかじめ加温した10% FBS完全RPMI培地を使用して調製した。細胞を化合物で10分間処理した後に、125μLのIL−2培地を各ウェルに加えた。細胞をボルテックスによって混合した。細胞を37℃の水浴中で20分間インキュベーションし、インキュベーション時間の間、5分ごとに混合した。最終的な10時点の濃度反応域は、DMSOは0.5%、およびIL−2は0.5ng/mLの最終濃度で20μM〜1nMだった。細胞の処理後、500μLの1% ホルムアルデヒド溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS)で新たに作製し、37℃で加温を維持した)を、各ウェルに加えた。プレートを密封し、8〜10回反転させて混合した。プレートを37℃の水浴中に10分間置いた。インキュベーション後、セルプレートを1200rpmで5分間、室温で遠心した。上清を吸引し、100μLの細胞(2×10細胞)を残した。細胞をボルテックスし、遠心工程を繰り返すことによって、800μLのPBSで2回洗浄し、最終的な洗浄後、約2×10細胞を含む100μLを残した。800μLの冷やした90% メタノールの分割量を細胞に加え、−20℃で一晩置いた。プレートを遠心し、メタノールを除去した。細胞をFACS バッファー(5% FBSおよび0.02% アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄した。200μLの、蛍光標示式細胞分取(FACS)バッファー中の1〜10の希釈度のマウス抗pSTAT5(pY694)Alexa Fluor 647(登録商標)の分割量を、細胞に加えた。細胞をよく混合し、室温で、暗所で2時間インキュベーションした。細胞をPBSで1回洗浄し、100μLの細胞を残した。2μg/mL Hoechst(Acros Organics、ニュージャージー州、モリスプレーンズ)の希釈標準溶液をPBSで調製した。200μLの分割量を各ウェルに加え、細胞を、室温で、暗所で10分間インキュベーションした。細胞をPBSで洗浄し、50μLのCytofix(登録商標)(BD Biosciences、カリフォルニア州、サンノゼ)を細胞に加えた。細胞を96ウェル黒色組織培養プレートに移し、密封した。プレートをスピンダウンした。平均蛍光強度のデータを収集し、Cellomics Arrayscan(登録商標)VTiを使用して分析した。化合物処理を媒体と比較し、阻害率のデータを特定した。MSRは、2.06であると特定した。相対IC50を、ActivityBase 4.0での、4パラメータのロジスティック曲線のフィッティング解析を使用して算出した。3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンについて、IC50=0.94μM、n=4である。JAK3 IL2−NK92−pSTAT5セルベースアッセイの結果は、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ−[1,2−b]ピリダジン−6−アミンが、作用の弱いJAK3阻害剤であることを示す(IC50=0.033μMである、JAK2 EPO−TF1/pSTAT5セルベースアッセイの結果と比較した場合)。これらの結果から、JAK3/JAK2の比は、IC50について、28.5倍であることを特定した。これは、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンがJAK3に対して選択的なJAK2阻害剤であることを示す。
【0045】
Ba/F3JAK2V617Fセルベースアッセイ
Cellomics ArrayScan(登録商標)HCS
JAK2標的阻害を、JAK2V617F発現Ba/F3中で、ウエスタンブロットによって、Wernigら(Wernig Gら、Efficacy of TG101348,a selective JAK2 inhibitor,in treatment of a murine model of JAK2V617F−induced polycythemia vera,Cancer Cell,Apr;13(4):311−20)が報告したように評価した。培地スループット(medium throughput)Cellomicsアッセイを、JAK2V617Fを発現しているBa/F3細胞中のJAK2標的阻害を評価するために確立した。このアッセイは、JAK2V617F変異に関連する疾患を治療するための効果的な治療薬の発見を可能にする。
【0046】
JAK2V617Fを発現しているBa/F3(マウスのプロB)細胞を、10% FBS、0.07% 炭酸水素ナトリウム、1mM ピルビン酸ナトリウム、1×抗生物質/抗真菌剤(インビトロジェン、カリフォルニア州、カールズバッド)および0.45% グルコース(シグマ、ミズーリ州、セントルイス)を含むRPMI 1640中で維持した。細胞を、37℃で5% COで維持した。試験化合物を、100% DMSO中で、濃度10mMで調製した。化合物を10時点の200×濃度反応域(4mM〜200nM)で、100% DMSOで、1:3で連続希釈した。別々の96ディープウェルプレート中で、2.5μLの200×化合物溶液を、4×濃度の化合物のプレートにおける、10% FBSを含む125μLの完全RPMI 1640培地に加えた。
【0047】
アッセイを行うために、細胞を収集し、無補充のRPMI 1640で2回洗浄した。次いで、細胞を、10% FBS完全RPMI培地中で、最終濃度4×10/mLで懸濁した。次に、500μLの細胞(2×10細胞)を、96ディープウェルプレートに移した。最後に、2.5μL(1:200希釈)の化合物ストック溶液を細胞に加え、細胞とともに37℃の水浴中で60分間インキュベーションした。
【0048】
細胞の処理後、500μLの1% ホルムアルデヒド溶液(リン酸緩衝食塩水(PBS)で新たに作製し、37℃で加温を維持した)を、各ウェルに加えた。プレートを密封し、8〜10回反転させて混合した。プレートを37℃の水浴中に10分間置いた。インキュベーション後、セルプレートを1200rpmで5分間、室温で遠心した。上清を吸引し、100μLの細胞(2×10細胞)を残した。細胞をボルテックスし、遠心工程を繰り返すことによって800μLのPBSで2回洗浄し、最終的な洗浄後、約2×10細胞を含む100μLを残した。800μLの冷やした90% メタノールの分割量を細胞に加え、−20℃で一晩置いた。プレートを遠心し、メタノールを除去した。細胞をFACS バッファー(5% FBSおよび0.0% アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄した。200μLの、蛍光標示式細胞分取(FACS)バッファー中の1〜10の希釈度のマウス抗pSTAT5(pY694)Alexa Fluor 647(登録商標)の分割量を細胞に加えた。細胞をよく混合し、室温で、暗所で2時間インキュベーションした。細胞をPBSで1回洗浄し、100μLの細胞を残した。2μg/mL Hoechst(Acros Organics、ニュージャージー州、モリスプレーンズ)の希釈標準溶液を、PBSで調製した。200μLの分割量を各ウェルに加え、細胞を、室温で、暗所で10分間インキュベーションした。細胞をPBSで洗浄し、50μLのCytofix(登録商標)(BD Biosciences、カリフォルニア州、サンノゼ)を細胞に加えた。細胞を96ウェル黒色組織培養プレートに移し、密封した。当該プレートをスピンダウンした。平均蛍光強度のデータを収集し、Cellomics Arrayscan(登録商標)VTiを使用して分析した。化合物処理を媒体と比較し、阻害率のデータを特定した。相対IC50を、ActivityBase 4.0での、4パラメータのロジスティック曲線のフィッティング解析を使用して算出した。3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンについて、IC50=0.03μMである。このアッセイの結果は、3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンが、JAK2V617F遺伝子を発現しているBa/F3細胞中のJAK2V617F標的を効果的に阻害することを示す。
【0049】
本発明の化合物は、好ましくは、様々な経路によって投与される医薬組成物として処方される。最も好ましくは、このような組成物は、経口投与のためのものである。このような医薬組成物およびその調製方法は、当該技術分野で周知である。例えば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(A.Gennaroら編集、第19版、Mack Publishing Co.、1995)を参照。
【0050】
本発明の化合物は、広い投与量の範囲にわたって、全体的に有効である。例えば、1日あたりの投与量は、通常、1日あたりの総量が約1mg〜約1000mg、好ましくは、1日あたりの総量が500mg〜1000mg、より好ましくは1日あたりの総量が600mg〜1000mgの範囲内である。いくつかの場合では、上記の範囲の下限を下回る投与量のレベルが十分以上である可能性があり、一方、他の場合では、さらに多くの用量が使用される可能性がある。上記の投与量の範囲は、多少なりとも本発明の範囲を制限することを意図したものではない。実際に投与される化合物の量は、医師によって、関連する状況(治療される症状、選択された投与経路、実際の化合物または投与される化合物、年齢、体重、および個々の患者の反応、および患者の症候の重症度等)の観点から決定されることが理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン、またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項2】
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミンである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン塩酸塩である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
哺乳類における、真性多血症、本態性血小板増加症、および骨髄化生を伴う骨髄硬化症からなる群から選択される慢性骨髄増殖性疾患の治療方法であって、このような治療を必要とする哺乳類に、有効量の3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン、またはその薬理学的に許容できる塩を投与する工程を含む治療方法。
【請求項5】
患者における、神経膠芽腫、乳癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、ならびに白血病(非定型慢性骨髄性白血病、原発性および二次性の急性骨髄性白血病、T細胞性およびB細胞性の急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、および骨髄増殖性疾患等)の治療方法であって、このような治療を必要とする患者に、有効量の3−(4−クロロ−2−フルオロベンジル)−2−メチル−N−(5−メチル−1H−ピラゾール−3−イル)−8−(モルホリノメチル)イミダゾ[1,2−b]ピリダジン−6−アミン、またはその薬理学的に許容できる塩を投与する工程を含む治療方法。
【請求項6】
請求項1、2もしくは3いずれか1項記載の化合物、またはその薬理学的に許容できる塩、および薬理学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項7】
薬物としての使用のための、請求項1、2もしくは3いずれか1項記載の化合物、またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項8】
神経膠芽腫、乳癌、多発性骨髄腫、前立腺癌、ならびに白血病、T細胞性およびB細胞性の急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、ならびに骨髄増殖性疾患の治療における使用のための、請求項1、2もしくは3いずれか1項記載の化合物、またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項9】
慢性骨髄増殖性疾患の治療における使用のための請求項8記載の化合物、またはその薬理学的に許容できる塩。
【請求項10】
治療を必要とする患者におけるJAK2変異の活性に関連する症状の治療方法であって、前記患者に請求項1、2もしくは3いずれか1項記載の化合物を投与する工程を含む治療方法。

【公表番号】特表2012−512158(P2012−512158A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540809(P2011−540809)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/067056
【国際公開番号】WO2010/074947
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】