説明

アミノ基を有するケイ素化合物の製法

本発明は、(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを、相応する(トリオルガニルシリルオルガニル)ハロゲン化物とN−オルガニルアミンまたはN,N−ジオルガニルアミンとから製造する方法、およびこの方法により得られるN−オルガニル−もしくはN,N−ジオルガニルアミン並びに(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシランおよび[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]トリオルガニルシランに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを、相応する(トリオルガニルシリルオルガニル)ハロゲン化物とN−オルガニルアミンまたはN,N−ジオルガニルアミンとから製造する方法、およびこの方法により得られる(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシランおよび[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]トリオルガニルシランに関する。
【0002】
(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランは、現在3つの異なる方法により製造することができる。
【0003】
窒素原子とケイ素原子との間に少なくとも3つの炭素原子を有するアルキレン橋を有するアミノアルキル置換ケイ素化合物は、相応する不飽和アミン化合物をケイ素原子に結合する水素原子を有する有機ケイ素化合物でヒドロシリル化することにより得られる。場合によりアミン含有オレフィン成分に遊離NH−基を有する場合、不所望な副反応を回避するために、ヒドロシリル化反応の前にこれを保護基により遮蔽しなければならない。
【0004】
更に、(アミノオルガニル)シランを、オルガニルハロゲン化物を用いて求核置換反応により、置換した(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランに変化させることができる。
この方法の欠点はオルガニルハロゲン化物の制御されていない多重アルキル化の傾向にある。
【0005】
(ハロゲンオルガニル)シランと相応するアミンとを反応させることにより(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを製造する方法は、前記の両方の方法に対して経済的に有利な方法である。アルキルシランの光塩素化によりまたは相応するハロゲン置換したオレフィンのSi−H−含有化合物でのヒドロシリル化により得られ、かつ例えば多数の有機官能化シランの合成のための中間体として使用される、(クロロアルキル)シランの有利な提供可能性を示すことが特に有利である。更に、この方法において、(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランの合成のために、多数の類似の容易に利用可能な第1級および第2級アミンを使用することが可能であり、このことはこの方法の非常に広い適用範囲を可能にし、かつこれにより存在する工業的生産プラントに対する安価な代替製造法を可能にする。
【0006】
英国特許明細書GB686068Aは(アミノ)−、(N−オルガニルアミノ)−および(N,N−ジオルガニルアミノメチル)−または(N,N−ジオルガニルアミノエチル)トリオルガニルシランを請求している。更に、GB686068Aは前記(アミノオルガニル)−、(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを製造するために、相応する(クロロメチル)−または(ブロモメチル)トリオルガノシランとアンモニア、第1級または第2級アミンとの少なくとも50℃の温度での反応法を記載している。その際、一般に(クロロメチル)−または(ブロモメチル)トリオルガノシランをフラスコまたはオートクレーブ中に、使用したアミン化合物の沸点に依存して、装入し、100℃を越える温度、有利に110〜130℃に加熱した。沸点の高いアミン(例えば、シクロヘキシルアミン)の場合、混合順序を逆にし、(クロロメチル)−または(ブロモメチル)トリオルガノシランを加熱したアミンに添加した。反応時間は反応すべきアミン化合物に依存して2〜8時間であった。
【0007】
(アミノメチル)シラン誘導体はドイツ特許公開公報DE1812564A1に記載されている方法により、(クロロメチル)−または(ブロモメチル)シラン誘導体とアンモニアまたは第1級アミンとを反応させることにより製造される。この反応は、3もしくは2時間の間、80〜100℃の温度で行われ、その際アミンは反応の開始時にすでに1:3.2〜6のモル過剰で存在した。
【0008】
GB686068AおよびDE1812564A1は数時間にわたる非常に長い反応時間を示す。得られる収量は低い。この生成物は必要とされる純度では得られず、これを更に使用する前に費用のかかる精製をする必要がある。例えば、記載した方法により得られる生成物は多量のイオノゲンクロリドまたはブロミドを含有する。このことはこれを精製することなしに技術的使用、例えば金属表面上に担持されるシーリングコンパウンドへの使用を、特に腐食形成の促進により、強く制限する。
【0009】
この際、クロリド−およびブロミド含有不純物としては特に、合成の際に使用したアミンの塩酸塩または臭化水素酸塩または目的生成物の塩酸塩または臭化水素酸塩も生じる。この関連において、(アミノメチル)シランと前記の塩酸塩または臭化水素酸塩との混合物が高温、例えば製造の間および目的化合物の蒸留による精製のために必要な温度で、Si−C−結合の切断および相応するN−メチル化アミンの形成下に、部分的に目的化合物の著しい発熱分解に導くことがあることが、意外にも見出された。そのように形成されたN−メチルアミンは不所望な方法で方法の進行に影響を与える。この効果はアミン化合物の塩基度と相関するように思われる:(アミノメチル)シランの塩基性が低いほど、この分解反応は容易に生じる。この理由から、安全の観点からもここに記載されている(アミノメチル)シランの低いハロゲニド含量は必要である。アルコキシシラン中のハロゲニド含量の一連の減少法は公知であり、これは例えば溶かしたハロゲニドのアルカリ金属−、アルカリ土類金属−アルコラート−塩の添加による沈降に基づく(例えば、EP0702017A1、DE69306288T2、DE19513976A1)、しかしながらこの際、ハロゲニド含量の簡単で効果的な減少のためには、塩の化学量論量を上回る量が必要である、それというのも化学量論量の塩では所望の完全なハロゲニド除去を達成することはできない。しかしながら、不利なことに、全ての従来の実験した(アミノメチル)シランはこの条件下に、例えば遊離アルコールおよび強塩基の同時の存在下に、分解反応、例えばすでに記載したようなSi−C−結合の切断の傾向にある。アルコキシシラン中のクロリド含量の減少をアンモニアを導入することにより可能にするという選択的方法は、ドイツ特許公開公報DE19941283A1に記載されているが、ここでは(アミノアルキル)アルコキシシランはその使用分野から明らかに排除されている。
【0010】
更に、DE1812564A1中に記載されているシランとアミンとの完全に前混合した溶液の加熱は、両方の成分の発熱反応のために、装置の安全性という観点から問題がある。
【0011】
更に前記の(アミノメチル)シランの分解は、塩酸塩またはアルコールおよび塩基の存在において生じるだけではなく、特にアルコール単独の存在においても、相応するN−メチルアミンの形成を惹起するために、すでに十分であることが見出されたことは、非常に驚くべきことであった。このように形成されたN−メチル化アミン誘導体はなお存在するメチル化されていないアミンとの反応の際に、(ハロゲンメチル)シランとの反応に関して競合し、最終的に(N−メチルアミノメチル)シランの形成に導き、これは蒸留によってももはや目的化合物から分離することはできない。従って、この不所望な副反応を回避するために、反応混合物中のアルコールの不存在に注意しなければならない。ケイ素原子上のオルガニル基の少なくとも1つがアルコキシ基である場合、含水量の低いアミンをこの方法に使用しなければならない。そうでなければ、シランとアミン中に存在する水との先行反応によりアルコールが遊離するためである。
【0012】
従って、本発明の課題は、(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを従来技術水準により製造する方法に存在する欠点を取り除き、かつ(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを高い収量および高い純度で、短い反応時間で獲得することのできる、簡単な方法を提供することである。
【0013】
この課題は、驚くべきことに、出発シランを予め装入し、加熱し、かつ相当するアミンを連続的に添加する方法を開発することにより、解決することができた。更に、目的化合物中のハロゲニド含量を、非極性溶剤を粗製混合物に添加し、かつ沈殿した塩を分離することにより減少させることができた。含水量の低いアミンを使用することにより、合成の間のアルコールの遊離およびこうして前記副生成物の形成が阻止された。意外にも、製法の際に形成されたアミン−もしくは(アミノメチル)シランハロゲン化水素酸塩を、所望の場合にはアンモニアとの塩交換により混合物から除去することができ、このことはN−メチル化副生成物の形成を阻止した。公開公報DE19941283A1中に記載されている教示からこれを明らかに排除しているにもかかわらず、アンモニアを粗製最終生成物または単離した最終生成物中に導入することにより、有利にクロリド不含の(アミノメチル)シランを得ることができた。
【0014】
従って、本発明の対象は
含水量が0〜20000ppmである、一般式(2)
H−NR (2)
の含水量の低い、環式または非環式アミンと一般式(3)
3−nSi−R−X (3)
の(ハロゲンオルガニル)シランとを反応させることにより、一般式(1)
3−nSi−R−NR (1)
[式中、
Rは、置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基またはアルコキシ基を表し、
は、置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基を表し、
は、置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基を表し、
、Rは、水素または置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基を表すが、但し、R、Rは同一または異なっていてよく、かつ場合により相互に結合していてよく、その際生じた環はヘテロ原子を有していてよく、
Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表し、
nは1、2または3を表す]の(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを製造する方法において、
この方法が
a)予め反応室に装入し、かつ反応温度に加熱した、3〜6倍過剰量の一般式(2)のアミンに、一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランを80〜200℃の温度で1時間〜最高3時間かけて連続的に添加し、
b)場合により、生じたハロゲン化水素酸塩を、(ハロゲンオルガニル)シランの添加の間または添加後にアンモニアを導入することにより塩交換し、
c)場合により、添加終了後に、生じたアンモニウム塩を分離し、
d)添加終了後に、過剰のアミンを除去し、
e)場合により、なお溶解しているアンモニウム化合物の沈殿のために非極性溶剤を添加し、引き続き生じたアンモニウム塩を除去し、
f)場合により、なお溶解しているハロゲン化水素酸塩を沈殿させるためにアンモニアを添加し、引き続き生じたアンモニウム塩を除去し、かつ
g)場合により、生成物を蒸留する
工程を包含し、かつ連続的にまたは非連続的に作業することができることを特徴とする、一般式(1)の(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランの製法である。
【0015】
基R、RおよびRは相互に独立して、アルキル基、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソ−プロピル−、1−n−ブチル−、2−n−ブチル、イソ−ブチル−、t−ブチル−、n−ペンチル−、イソ−ペンチル−、ネオ−ペンチル−、t−ペンチル基;ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基;ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基;オクチル基、例えばn−オクチル基およびイソ−オクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基;ノニル基、例えばn−ノニル基;デシル基、例えばn−デシル基;ドデシル基、例えばn−ドデシル基;オクタデシル基、例えばn−オクタデシル基;シクロアルキル基、例えばシクロペンチル−、シクロヘキシル−、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基;アルケニル基、例えばビニル−、1−プロペニル−および2−プロペニル基;アリール基、例えばフェニル−、ナフチル−、アントリル−およびフェナントリル基;アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基;キシリル基およびエチルフェニル基;およびアラルキル基、例えばベンジル基、α−およびβ−フェニルエチル基;並びにヘテロ原子、例えばN、O、S、Pにより結合したこれらの組合せである。基RまたはRの最高で1つが水素原子であるのが有利である。更に、基RおよびRは直接またはヘテロ原子を介して結合していてよく、こうしてN−原子を構造的に包含して環式構造−NRを生じる。このための例は、モルホリノ−、ピペリジノ−またはピロリジノ基であり、これらは有利である。更に、基NRは有利にN,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)−基である。
【0016】
がメチル−、エチル−、イソ−およびn−プロピル−、イソ−およびn−ブチル−、ペンチル−、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−、フェニル−、ベンジル−、またはアリル−基であるのが有利である。基RおよびRは有利にRと同じであり、更にシクロヘキシル−またはフェニル−基である。特に有利な実施形においては、基Rはフェニル−またはシクロヘキシル基であり、基Rは水素原子である。
【0017】
基RはRまたはORの意味を有する。Rがメトキシ−、エトキシ−、イソ−およびn−プロポキシ−、ブトキシ−、フェノキシ−、ベンジルオキシ−またはアリルオキシ−基であるのが有利である。
【0018】
基Rは有利にメチレン−、エチレン−およびプロピレン−基であり、特にメチレン基であるのが有利である。
【0019】
基Xは塩素、臭素またはヨウ素を表し、塩素または臭素が有利であり、塩素が特に有利である。
【0020】
nは値0、1、2または3であり、1、2または3であるのが有利である。
【0021】
一般式(2)の使用すべきアミンの含水量は0〜20000ppm、有利に0〜5000ppm、特に有利に0〜1000ppmである。
【0022】
本発明による方法を用いて、簡単に(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランを相応する(トリオルガニルシリルオルガニル)−ハロゲニドおよびn−オルガニル−もしくはN,N−ジオルガニルアミンから定量的な収量で得ることができた。
【0023】
(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)トリオルガニルシランの純度は、少なくとも85%である。この純度を、簡単な蒸留により95%を越えて上昇させることができる。
【0024】
本発明による方法は、公知技術水準に比べて、反応パラメーター、工程温度の好適な選択により、完全な反応変換において反応時間を最高1〜2時間に短縮することができたという利点を特に提供する。同時に、一般式(2)によるアミンの最適な過剰の使用により、並びに場合により生じたアミン−もしくは(アミノメチル)シラン−ハロゲン化水素酸塩のアンモニアによるハロゲン化アンモニウムへの塩交換による、合成の際の(アミノメチル)シラン−ハロゲン化水素酸塩の含量の減少のための処置により、および含水量の低いアミンの使用により、混合物中での副生成物の形成を明らかに減少させる。
【0025】
反応の際に生じたアンモニウム塩の濾別の前に、非極性で、容易にリサイクル可能な有機溶剤を添加することは、意外にもイオノゲンであるクロリド、ブロミドまたはヨージドの生成物中の含量を低下〜完全に排除するために非常に好適であることが判明する。
【0026】
更にこの有利な実施態様は、場合により引き続き行われる生成物の蒸留において、精製された生成物の高い収量に導く。更に、蒸留プラント中への昇華性のアンモニウム塩の随伴を回避する。前記の処置が生成物中のクロリド、ブロミドまたはヨージドの完全な除去を達成しない場合には、この目的はアンモニアの添加および引き続く場合により沈降した沈殿の除去により達成される。
【0027】
本発明の更なる対象は(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシランである。(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン(実験式C1023NOSi、分子量233.38g/モル)は(クロロメチル)トリメトキシシランとシクロへキリルアミンとを反応させることにより、本発明によりアルコール臭を有する無色液体として得られる。
【0028】
本発明の更なる対象は、一般式(4)
[(CHN−CH−CH−CHN−CH−Si(OR(CH3−n
(4)
[式中、
nは、整数1、2または3を表し、かつ
は、基−CH−CHまたは−CH]の[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]トリオルガニルシランである。
【0029】
こうして、[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]トリエトキシシラン、[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]ジエトキシ(メチル)シラン、[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]エトキジメチルシシラン、[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]トリメトキシシラン、[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]ジメトキシ(メチル)シランおよび[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]メトキシジメチルシランは本発明の対象であり、これは本発明方法により、第1表に記載したシランとN,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミンとを反応させることにより、アルコール臭を有する無色液体として得られた。
【0030】
【表1】

【0031】
前記式中の全ての前記記号は、その意味をそれぞれ相互に独立して有する。
【0032】
次の実施例において、他に記載のない限り、全ての量およびパーセントの記載は質量に関するものであり、全ての圧力は0.10MPa(絶対)である。
【0033】
例1(本発明によらず)
還流冷却器、KPG−撹拌機および温度計を備える500ml−三頚フラスコ中で市販のシクロヘキシルアミン(含水量≦2%)176gを100℃に加熱し、30分以内に(クロロメチル)エトキシジメチルシラン122gを撹拌下に添加した。添加の終了後、この混合物を還流下に2時間攪拌し、30℃に冷却し、生じた白色沈殿物を過圧ヌッチェを介して濾過し、シクロヘキシルアミンで後洗浄した。濾液および洗浄溶液を合して、減圧下に過剰のシクロヘキシルアミンを除去した。引き続き、分留によりクロリド含量600ppmを有する(N−シクロヘキシルアミノメチル)エトキシジメチルシラン105g(収率61%)が得られた。
【0034】
例2
還流冷却器、KPG−撹拌機および温度計を備える500ml−三頚フラスコ中で乾燥したシクロヘキシルアミン317gを130℃に加熱し、撹拌下に45分以内に(クロロメチル)エトキシジメチルシラン122gを添加した。添加の終了後、更に130℃で30分間攪拌し、過剰のシクロヘキシルアミンを減圧下に留去した。次いで、この混合物30℃に冷却し、イソ−ヘキサン150mlを添加した。引き続き、この懸濁液を過圧濾過ヌッチェを介して濾過し、この沈殿をイソ−ヘキサン80mlで2回後洗浄した。濾液および洗浄溶液を合して、減圧下に溶剤を除去した。引き続き、分留によりクロリド含量<20ppmを有する(N−シクロヘキシルアミノメチル)エトキシジメチルシラン163g(収率95%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0035】
例3
例2を繰り返したが、(クロロメチル)エトキシジメチルシラン122gの代わりに、(クロロメチル)トリメトキシシラン137gを使用した。分留の過程でクロリド含量<20ppmを有する(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン176g(収率94%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0036】
例4
還流冷却器、KPG−撹拌機、温度計およびガス導入管を備える500ml−四頚フラスコ中で乾燥したアニリン298gを130℃に加熱し、撹拌下に60分以内に(クロロメチル)メチルジメトキシシラン124gを添加した。添加の終了後、同じに維持される温度で撹拌下にアンモニアを、更なる反応がもはや観察されなくなるまで(約60分間)混合物を介して導通する。更に、過剰のアニリンを減圧下に除去し、懸濁液を30℃に冷却し、次いでイソ−ヘキサン150mlを添加した。引き続き、生じた白色沈殿を過圧ヌッチェを介して濾過し、イソ−ヘキサン80mlで2回後洗浄した。濾液および洗浄溶液を合して、減圧下に溶剤を除去した。引き続き、分留によりクロリド含量<20ppmを有する(N−フェニルアミノメチル)ジメトキシ(メチル)シラン160g(収率95%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0037】
例5
例4を繰り返したが、(クロロメチル)メチルジメトキシシラン124gの代わりに、(クロロメチル)トリメトキシシラン137gを使用した。蒸留による後処理の後に、(N−フェニルアミノメチル)トリメトキシシランが収率94%およびクロリド含量<20ppmで得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0038】
例6
例4を繰り返したが、アンモニアおよびシランを同時にアニリンに供給し、かつこの混合物を更に30分間記載された温度でアンモニア雰囲気中で撹拌した。後処理は例4と同様に実施し、クロリド含量<20ppmを有する(N−フェニルアミノメチル)ジメトキシ(メチル)シラン162g(収率96%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別した場合、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0039】
例7
例2を繰り返したが、(クロロメチル)エトキシジメチルシラン122gの代わりに、(クロロメチル)トリエトキシシラン170gを使用した。分留の過程でクロリド含量<20ppmを有する(N−シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン207g(収率94%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0040】
例8
例2を繰り返したが、(クロロメチル)エトキシジメチルシラン122gの代わりに、(クロロメチル)ジエトキシ(メチル)シラン146gを使用した。分留の過程でクロリド含量<20ppmを有する(N−シクロヘキシルアミノメチル)ジエトキシ(メチル)シラン186g(収率95%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0041】
例9
例7を繰り返したが、乾燥シクロヘキシルアミン317gの代わりに、乾燥モルホリン279gを使用した。分留の過程でクロリド含量<20ppmを有する(N−モルホリノメチル)トリエトキシシラン204g(収率97%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。
【0042】
例10
例8を繰り返したが、乾燥したシクロヘキシルアミン317gの代わりに、乾燥したN,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミン599gを使用した。分留の過程でクロリド含量<50ppmを有する[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]ジエトキシ(メチル)シラン237g(収率89%)が得られた。生成物の蒸留の前にアンモニア1%を添加し、場合により沈降した沈殿を濾別し、こうしてクロリド含量<10ppmの生成物が同じ収量で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水量0〜20000ppmである、一般式(2)
H−NR (2)
の環式または非環式アミンと一般式(3)
3−nSi−R−X (3)
のハロゲンオルガニルシランとを反応させることにより、一般式(1)
3−nSi−R−NR (1)
[式中、
Rは、置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基またはアルコキシ基を表し、
は、置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基を表し、
は、置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基を表し、
、Rは、水素または置換または非置換で、飽和または不飽和で、分枝または非分枝であってよい、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基を表すが、但し、R、Rは同一または異なっていてよく、かつ場合により相互に結合していてよく、その際生じた環はヘテロ原子を有していてよく、
Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表し、
nは1、2または3の数を表す]の(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)−トリオルガニルシランを製造する方法において、
この方法が
a)予め反応室に装入し、かつ反応温度に加熱した、3〜6倍過剰量の一般式(2)のアミンに、一般式(3)の(ハロゲンオルガニル)シランを80〜200℃の温度で1時間〜最高3時間かけて連続的に添加し、
d)添加終了後に、過剰のアミンを除去する
工程を包含することを特徴とする、(N−オルガニルアミノオルガニル)−および(N,N−ジオルガニルアミノオルガニル)−トリオルガニルシランの製法。
【請求項2】
この方法が、工程d)に続いて、付加的に
e)なお溶解しているアンモニウム化合物の沈殿のための非極性溶剤を添加し、引き続き生じたアンモニウム塩を除去する
工程を包含する、請求項1記載の製法。
【請求項3】
この方法が、工程a)およびd)の間に、付加的に
b)生じたハロゲン化水素酸塩を(ハロゲンオルガニル)シランの添加の間または添加後にアンモニアを導入することにより塩交換し、かつ
c)添加終了後に、生じたアンモニウム塩を分離する
工程を包含する、請求項1または2記載の製法。
【請求項4】
この方法が、更なる工程として
f)なお溶解しているハロゲン化水素酸塩を沈殿させるためにアンモニアを添加し、引き続き生じたアンモニウム塩を除去する
工程を包含する、請求項1から3までのいずれか1項記載の製法。
【請求項5】
この方法が、更なる工程として
g)生成物を蒸留する
工程を包含する、請求項1から4までのいずれか1項記載の製法。
【請求項6】
使用すべき一般式(2)のアミンの含水量が0〜20000ppmである、請求項1から5までのいずれか1項記載の製法。
【請求項7】
使用すべき一般式(2)のアミンの含水量が1000ppmを越えない、請求項1から6までのいずれか1項記載の製法。
【請求項8】
工程d)において、非極性で、容易にリサイクル可能な有機溶剤を使用する、請求項2から7までのいずれか1項記載の製法。
【請求項9】
基RおよびRが相互に独立して、シクロヘキシル、フェニルおよび水素を含有する群から選択されるか、または直接またはヘテロ原子を介して結合しており、こうしてN−原子を構造的に包含して環式構造−NRを生じる、請求項1から8までのいずれか1項記載の製法。
【請求項10】
環式構造−NRが、モルホリノ−、ピペリジノ−またはピロリジノ基を表す、請求項9記載の製法。
【請求項11】
(N−シクロヘキシルアミノメチル)−トリメトキシシラン。
【請求項12】
一般式(4)
[(CHN−CH−CH−CHN−CH−Si(OR(CH3−n
(4)
[式中、
nは、整数1、2または3を表し、かつ
は、基−CH−CHまたは−CHを表す]の[N,N−ビス−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)アミノメチル]トリオルガニルシラン。

【公表番号】特表2007−533654(P2007−533654A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538799(P2006−538799)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012805
【国際公開番号】WO2005/047298
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】