説明

アミノ基含有アルケンの製造方法

【課題】アミノ基含有アルケンを製造するに際し、水存在下で反応させることにより、反応速度及び収率を高めることができ、アミノ基含有アルケンの工業的な製造に好適に用いることができるアミノ基含有アルケンの製造方法を提供する。
【解決手段】α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを、ルイス塩基化合物の存在下で反応させてアミノ基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、水存在下で反応させる工程を含むアミノ基含有アルケンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有アルケンの製造方法に関する。より詳しくは、α,β−不飽和化合物とイミン化合物からアミノ基含有アルケンを製造する方法、及び、各種化学製品の製造原料として適用できるアミノ基含有アルケンに関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基含有アルケンは、抗ガン剤、抗ウイルス剤等の医農薬中間体や、高屈折率及び耐熱性を備えた重合体を製造するための単量体として適用されることが期待されるものである。このような単量体から得られる重合体は、電子情報材料、塗料、接着剤、洗剤ビルダー等の各種化学製品の製造原料や医農薬原料に適用できる可能性がある。このように、アミノ基含有アルケンは、化学、医薬等の分野において有用な原料となり得る化合物であり、その工業的な製造方法の研究・開発が求められていた。
【0003】
Aza−Morita−Baylis−Hillman反応とは、ルイス塩基化合物存在下、電子吸引基により活性化されたアルケンとイミン化合物とを作用させ、炭素−炭素結合形成反応が進行することにより、アミノ基含有アルケンが得られる反応であり、例えば下記式のように表される。
【0004】
【化1】

【0005】
(式中、R、R’は、水素原子又は有機基を表し、EWG(electron withdrawing group)は、電子吸引性を有する基である限り特に限定されない。)
従来のアミノ基含有アルケンの製造方法としては、反応活性を高めるためのルイス酸触媒と、イミン化合物の分解を抑制するための脱水剤であるモレキュラーシーブス(4Å)を添加して、アルデヒド化合物とアミノ化合物とを用いて反応系中でイミン化合物を合成すると同時にAza−Morita−Baylis−Hillman反応を実施する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。また、メチル基含有ホスフィン化合物を触媒として使用することにより、水の非存在下でのAza−Morita−Baylis−Hillman反応を実施する方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。更に、水の非存在下でのAza−Morita−Baylis−Hillman反応を実施して活性化オレフィンのヒドロキシアルキル化及びアミノアルキル化等を行う方法が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。
しかしながら、これらの方法においては、非常に高価なルイス酸触媒やホスフィン触媒、及びモレキュラーシーブスのような余分な添加剤を必要とし、精製時にその分離が必須となるため、経済的に安価な方法を用いて反応工程における収率及び反応速度を高め、同時に精製工程も簡略化できるように、アミノ基含有アルケンの工業的な製造に好適に用いるための工夫の余地があった。
【非特許文献1】ダニエラ バラン (Daniela Balan)、他1名「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー (Journal of Organic Chemistry)」、(米国)、アメリカンケミカルソサエティ (American Chemical Society)、2001年、第66巻、第19号、p.6498−6501
【非特許文献2】ヨンメイ スゥ (Yong−Mei Xu)、他1名「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー (Journal of Organic Chemistry)」、(米国)、アメリカンケミカルソサエティ(American Chemical Society)、2004年、第69巻、第2号、p.417−425
【非特許文献3】エンゲルベルト シガネク (Engelbert Ciganek)「オーガニック リアクションズ(Organic Reactions)」、(独国)、ジョン ワイリー アンド サンズ インコーポレイテッド(John Wiley & Sons,Inc.)、1997年、第51巻、p.201−350
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、アミノ基含有アルケンを製造するに際し、水存在下で反応させることにより、反応速度及び収率を高めることができ、アミノ基含有アルケンの工業的な製造に好適に用いることができるアミノ基含有アルケンの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、アミノ基含有アルケンの効率的な製造方法について種々検討したところ、α,β−不飽和化合物及びイミン化合物を原料とするアミノ基含有アルケンの製造において、ルイス塩基化合物がα,β−不飽和化合物にマイケル付加した中間体を安定化させることができれば、反応速度及び収率を高めることができ、アミノ基含有アルケンの工業的な製造に有用であることに着目した。本発明のアミノ基含有アルケンの製造方法が水存在下で反応させる工程を含むものとすることにより、上記中間体を安定化することができ、目的物であるアミノ基含有アルケンを優れた反応速度及び収率で製造することができることを見いだし、上記課題をみごと解決することができることに想到した。また、上記α,β−不飽和化合物の基質仕込み量が、上記イミン化合物の基質仕込み量に対して1.1当量以上であるものとすることにより、更に効率的にアミノ基含有アルケンを製造することができることを見いだした。更に、上記イミン化合物が、反応開始前に予め合成したイミン化合物である場合、より優れた本発明の効果を発揮することができることを見いだし、上記反応工程がイミン化合物に対して0.01〜5.0当量の水の存在下で行われるものとすることにより、より反応速度及び収率を高めることができることを見いだした。更に、上記ルイス塩基化合物が第15族元素を含む化合物とする場合、反応速度及び収率を更に優れたものとすることができ、また、上記イミン化合物が、ホルムアルデヒドを原料として得られるものとすることにより、より優れた本発明の効果を発揮することができることを見いだした。更に、特定のアミノ基含有アルケンが効率的に製造することができ、重合体の原料として好適に用いることができることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを、ルイス塩基化合物の存在下で反応させてアミノ基含有アルケンを製造する方法であって、上記製造方法は、水存在下で反応させる工程を含むアミノ基含有アルケンの製造方法である。
本発明はまた、下記一般式(1);
【0009】
【化2】

【0010】
又は下記一般式(2);
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基又は2−ヒドロキシエチル基である。)
で表されるアミノ基含有アルケンでもある。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明のアミノ基含有アルケンの製造方法は、極性の高い水存在下で反応させる工程を含むものである。本発明の製造方法をこのようなものとすることにより、反応工程における反応系中の極性が適度に高くなり、第15族元素を含む化合物がα,β−不飽和化合物にマイケル付加した極性の高い中間体を安定化することができる。例えば、図1に示されるような、Aza−Morita−Baylis−Hillman反応における極性の高い中間体が安定化されることになる。その結果、反応速度及び収率を高めることができる。
水存在下で反応させるとは、水の添加により高められた極性場で反応させることである。
【0014】
「反応系中」とは、溶媒の存在下で反応を行う場合、原料と溶媒とが混合した反応液であり、無溶媒で反応を行う場合、原料が混合した反応液であり、反応開始後はそれに生成物が混在することになる。
本明細書中においては、水を溶媒とはみなさないで、添加剤的に使用する。すなわち、反応系中に水が存在していても、反応工程が有機溶媒の非存在下で行われるとき、「無溶媒で反応工程を行う」という。
【0015】
本発明の製造方法は、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを原料として反応させるものに限定されず、α,β−不飽和化合物、アルデヒド化合物、並びに、アミン化合物及び/又はアミド化合物を原料として反応を行うものであってもよい。
上記反応工程は、イミン化合物に対して0.01当量以上の水の存在下で行われることが好ましい。イミン化合物に対して0.01当量以上の水を存在させることにより、反応系中の極性を充分高めることができ、本発明の効果を充分に発揮することができる。下限としては、0.1当量以上がより好ましい。上限としては、5.0当量以下がより好ましく、4.0当量以下が更に好ましい。5.0当量を超えると、イミン化合物が加水分解してアルデヒド化合物とアミン化合物又はアミド化合物となるおそれがある。上記水の存在量は、反応工程の終了時に反応系中に存在する水を測定することにより好適に求めることができる。
水の存在量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、カールフィシャー分析により測定することが好ましい。
すなわち、本発明の好ましい実施形態としては、上記反応工程が、イミン化合物に対して0.01〜5.0当量の水の存在下で行われる形態が挙げられる。
「イミン化合物に対してn当量」とは、イミン化合物の物質量(モル数)に対してn倍の物質量(モル数)を意味する。
【0016】
上記反応工程の間に反応系中に水を存在させる方法は、特に制限されるものではなく、例えば、反応工程前に水を添加することにより行ってもよいし、反応工程中に水を添加することにより行ってもよい。また、アミン化合物又はアミド化合物とアルデヒド化合物との反応の際に生じる水を用いてもよい。
反応工程前に水を添加する方法としては、α,β−不飽和化合物を水溶液として必要量の水を加えてもよく、イミン化合物を水溶液として必要量の水を加えてもよく、イミン化合物の原料であるアミン化合物、アミド化合物、及び/又は、アルデヒド化合物を水溶液として必要量の水を加えてもよく、ルイス塩基化合物を水溶液として必要量の水を加えてもよい。また、水を別途添加してもよい。
【0017】
上記反応工程は、有機溶媒存在下で行ってもよいし、α,β−不飽和化合物もしくはイミン化合物が反応条件下で液体である場合には、無溶媒であってもよい。
【0018】
上記反応工程において、有機溶媒は、基質やルイス塩基化合物、及び、水を相溶化させることができる極性溶媒であることが好ましい。例えば、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルモルホリン、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、イオン性液体等の溶媒を使用することができる。上記有機溶媒は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を適宜混合して用いてもよく、その種類及び使用量は、基質やルイス塩基化合物に応じて適宜設定することができる。
【0019】
本発明のアミノ基含有アルケンの製造方法において、上述した反応工程における反応条件としては、例えば、反応温度は、0℃以上が好ましく、また、200℃以下が好ましい。より好ましくは、10℃以上、180℃以下であり、更に好ましくは、20℃以上、150℃以下である。反応時間は、0.5時間以上が好ましく、また、48時間以下が好ましい。より好ましくは、1時間以上、24時間以下である。また、反応初期の反応釜内の圧力としては、ケージ圧0kPa以上、1961.3kPa以下が好ましい。より好ましくは、49.0kPa以上、980.6kPa以下である。圧力調整や気相部組成の管理が必要な場合には、それに使用する気体としては、反応に悪影響を及ぼさなければ特に限定されないが、窒素、酸素、空気、窒素/酸素標準ガス、ヘリウム、アルゴン等が好ましい。
【0020】
本発明の製造方法における反応機構について、図1に例示した。
図中、Bはルイス塩基化合物を表す。R、R’及びEWGは、上記反応式が有するものと同様である。
【0021】
上記反応工程に用いられるα,β−不飽和化合物は、特に制限されるものではないが、電子吸引性基を有するアルケンが好ましく、下記一般式(3)で表されるものが更に好ましい。
【0022】
【化4】

【0023】
上記一般式(3)で表されるものについて以下に説明する。
式中、EWGは、電子吸引性を有する基である限り特に限定されないが、エステル基、アルデヒド基、ケトン基、アミド基、スルホナート基、スルホキシド基、ホスホナート基、チオエステル基、ニトリル基等が好適である。
【0024】
式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は有機基を表す。
上記R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、メチルフェニル基、ハロゲン化フェニル基、ベンジル基、ナフチル基であることが好ましい。より好ましくは、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、メチルフェニル基、ベンジル基、ナフチル基である。更に好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、フェニル基、ナフチル基である。特に好ましくは、水素原子である。
【0025】
上記電子吸引性基を有するアルケンの中でも、カルボニル基含有化合物が好ましく、α,β−不飽和エステル、α,β−不飽和アルデヒド、α,β−不飽和ケトンが好ましい。
α,β−不飽和エステルとしては、例えば、下記一般式(4)で表されるものが更に好ましい。
【0026】
【化5】

【0027】
上記一般式(4)で表されるものについて以下に説明する。
式中、R及びRは、上記一般式(3)が有するものと同様である。
上記Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、アリール基、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基、−(CHNR基、−(CH・M基、又は、−(CO)基を表す。上記R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜12の直鎖状又は枝分かれ鎖状のアルキル基を表す。mは、2〜5の整数である。Mで示される陰イオンは、Cl、Br、CHCOO、HCOO、SO2−又はPO3−を表す。Rは、炭素数1〜18の直鎖状又は枝分かれ鎖状のアルキル基であることが好ましい。nは、1〜80の整数である。上記Rとして、より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基、フェニル基、ニトロフェニル基、メチルフェニル基、ハロゲン化フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、2−ヒドロキシエチル基である。更に好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、2−ヒドロキシエチル基である。
上記α,β−不飽和エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ナフチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、桂皮酸メチル、桂皮酸エチルが更に好ましい。なかでも、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。
α,β−不飽和アルデヒドとしては、アクロレイン、桂皮アルデヒドが好ましい。
α,β−不飽和ケトンとしては、例えば、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、イソプロピルビニルケトン、ブチルビニルケトン、シクロへキシルビニルケトン、フェニルビニルケトン、シクロペンテノン、シクロへキセノン、シクロへプテノンが好ましい。
【0028】
上記イミン化合物としては、目的物であるアミノ基含有アルケンに導入する構造に応じて適宜用いることができ、上記反応工程を妨げない限り、特に限定されるものではないが、下記一般式(5)で表されるイミン化合物のうち、R及びR10が水素原子若しくは炭素数1〜12の有機基であるものが、本発明の製造方法によって好適に製造することができる代表例として挙げられる。R及びR10は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜12の有機基を表す。
【0029】
【化6】

【0030】
上記イミン化合物としては、N−メチルーメタンイミン、N−メチル−エタン−1−イミン、N−メチル−プロパン−1−イミン、N−メチル−ブタン−1−イミン、N−エチル−メタンイミン、N−エチル−エタン−1−イミン、N−エチル−プロパン−1−イミン、N−エチル−ブタン−1−イミン、N−プロピル−メタンイミン、N−プロピル−エタン−1−イミン、N−プロピル−プロパン−1−イミン、N−プロピル−ブタン−1−イミン、N−ブチル−メタンイミン、N−ブチル−エタン−1−イミン、N−ブチル−プロパン−1−イミン、N−ブチル−ブタン−1−イミン、N−ヘキシル−メタンイミン、N−ヘキシル−エタン−l−イミン、N−へキシル−プロパン−1−イミン、N−へキシル−ブタン−1−イミン、N−ヒドロキシエチル−メタンイミン、N−ヒドロキシエチル−エタン−1−イミン、N−ヒドロキシエチル−プロパン−1−イミン、N−ヒドロキシエチル−ブタン−1−イミン、N−アリル−メタンイミン、N−アリル−エタン−1−イミン、N−アリル−プロパン−1−イミン、N−アリル−ブタン−1−イミン、N−メチリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−ベンジリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−メチリデン−メタンスルホンアミド、N−ベンジリデン−メタンスルホンアミド、N−メチリデン−トリフルオロメタンスルホンアミド、N−ベンジリデン−トリフルオロメタンスルホンアミド等が挙げられる。なかでも、N−メチル−メタンイミン、N−メチル−エタン−1−イミン、N−エチル−メタンイミン、N−エチル−エタン−1一イミン、N−プロピル−メタンイミン、N−プロピル−エタン−1−イミン、N−ブチル−メタンイミン、N−ブチル−エタン−1−イミン、N−ヒドロキシエチル−メタンイミン、N−ヒドロキシエチル−エタン−1−イミン、N−アリル−メタンイミン、N−アリル−エタン−1−イミン、N−メチリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−ベンジリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−メチリデン−メタンスルホンアミド、N−メチリデン−トリフルオロメタンスルホンアミドが特に好ましい。
【0031】
上記イミン化合物は、反応開始前に予め合成したイミン化合物であることが好ましい。上記反応開始前に予め合成したイミン化合物とは、単離したイミン化合物であってもよく、反応開始前にアルデヒド化合物とアミン化合物やアミド化合物とから反応系中で合成したイミン化合物であってもよい。反応系中で合成したイオン化合物を使用する場合は、反応開始前に原料であるアルデヒド化合物とアミン化合物やアミド化合物が全てイミン化合物に変換されていてもよいし、一部のみが変換され、原料が残った状態で反応を開始してもよい。
反応開始前とは、α,β−不飽和化合物、イミン化合物、ルイス塩基化合物の3つの化合物が系中で揃わない状態、もしくは、上記3つの化合物が全て揃っている状態であっても、どれか1つの化合物量が非常に少ない等の理由により、実質上反応が進行しない状態をいう。
イミン化合物をこのようなものとすることにより、α,β−不飽和化合物、アルデヒド化合物、並びに、アミン化合物及び/又はアミド化合物から反応系中でアミノ基含有アルケンを製造する場合と比べて、副反応を充分に抑制することができる。
【0032】
上記反応開始前に予め合成したイミン化合物は、アルデヒド化合物と、アンモニア、アルキルアミン、芳香族アミン、アルキルアミド、芳香族アミド、スルホンアミド等の炭素数0〜12のアミン化合物やアミド化合物との反応より得ることができる。
【0033】
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デカニルアルデヒド、ウンデカニルアルデヒド、ドデカニルアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、フッ化ベンズアルデヒド、塩化ベンズアルデヒド、臭化ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、フェニルプロパナール、ナフチルアルデヒド、フルフラール等が好適である。
【0034】
上記アルデヒド化合物としては、特に、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。より好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドである。ここでいうパラホルムアルデヒドとはホルムアルデヒドの重合体(8〜100量体)であり、常温において粒状又は粉体などの性状を有する固体である。工業的に入手可能なパラホルムアルデヒドは通常水分を含有しており、水分が20質量%以下含有していてもよい。
本発明のアミノ基含有アルケンの製造方法における上記イミン化合物は、ホルムアルデヒドを原料として得られるものであることが好ましい。
ホルムアルデヒドを原料として得られるものとすることにより、経済的に安価な方法で、α位にメチレン基が結合したアミノ基含有アルケンを高収率で得ることができる。
【0035】
上記アルキルアミンとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロ
ピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、アリルアミン、2−ヒドロキシルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等が好ましい。
上記芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、エチルアニリン、ニトロアニリン、ハロゲン化アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン等が好ましい。
上記アルキルアミドとしては、例えば、アセトアミド、エチルアミド、プロピルアミド、ブチルアミド等が好ましい。
上記芳香族アミドとしては、例えば、ベンズアミド、ハロゲン化ベンズアミド、ニトロベンズアミド、ベンジルアミド、ナフチルアミド等が好ましい。
上記スルホンアミドとしては、例えば、p−トルエンスルホンアミド、メタンスルホンアミド、トリフルオロメタンスルホンアミド等が好ましい。
上記アルデヒド化合物、アミン化合物、アミド化合物は1種類のみを用いてもよく、2種類以上適宜混合して用いてもよい。
【0036】
本発明の製造方法において、上記反応工程に用いるα,β−不飽和化合物の物質量(モル数)は、イミン化合物の物質量(モル数)の0.2〜100倍であることが好ましい。
0.2倍未満であっても、100倍を超えても、充分な収率を得ることができなくなるおそれがある。
上記下限は、0.5倍がより好ましく、1倍が更に好ましく、1.1倍が更により好ましい。上記上限は、50倍がより好ましく、20倍が更に好ましい。
【0037】
本発明の製造方法において、上記反応工程に用いるα,β−不飽和化合物の物質量(モル数)は、イミン化合物の原料であるアミン化合物及び/若しくはアミド化合物の物質量(モル数)の0.2〜100倍であることが好ましい。
0.2倍未満であっても、100倍を超えても、充分な収率を得ることができなくなるおそれがある。
上記下限は、0.5倍がより好ましく、1倍が更に好ましく、1.1倍が更により好ましい。上記上限は、50倍がより好ましく、20倍が更に好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態としては、上記反応工程に用いるα,β−不飽和化合物の物質量(モル数)が、イミン化合物の物質量(モル数)の1.1倍以上である形態、すなわち、上記α,β−不飽和化合物の基質仕込み量が、上記イミン化合物の量に対して1.1当量以上である形態が挙げられる。
例えば、α,β−不飽和化合物の基質仕込み量が上記イミン化合物の量に対して1程度であり、この条件で一括仕込みで反応を行うと、アミン化合物及び/又はアミド化合物がアルデヒド化合物と反応してイミン化合物に変換される前に、α,β−不飽和化合物にマイケル付加してしまい、その結果(1)α,β−不飽和化合物が副反応に使われ減少する(2)アミン化合物及び/又はアミド化合物も副反応に使われ減少する(3)アミン化合物及び/又はアミド化合物が減少する分、アルデヒド化合物もイミン化合物の合成に使用されないため、α,β−不飽和化合物とアルデヒド化合物との副反応も併発するといった収率が低下するおそれがある。
上記イミン化合物の量とは、原料としてイミン化合物を仕込む場合はイミン化合物の物質量(モル数)を意味し、原料としてアミン化合物及び/又はアミド化合物を仕込む場合はアミン化合物及び/又はアミド化合物の物質量(モル数)を意味する。
また、本発明の好ましい実施形態としては、上記反応工程に用いるα,β−不飽和化合物の物質量(モル数)が、アミン化合物及び/若しくはアミド化合物の物質量(モル数)の1.1倍以上である形態が挙げられる。
上記基質仕込み量とは、アミノ基含有アルケンを製造するための基質の反応系中への仕込み量、すなわち原料の仕込み量を意味する。
【0039】
本発明におけるルイス塩基化合物は、共有電子対を持つ化合物であり、第15族元素を含む化合物であることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態としては、上記ルイス化合物が、第15族元素を含む化合物である形態が挙げられる。
第15族元素を含む化合物としては、窒素元素を含む化合物、リン化合物が好適である。これらの中でも、窒素元素を含む化合物がより好適である。窒素元素を含む化合物は、比較的低価格で入手容易な上、反応中に酸化されて失活する可能性が低い。なかでも、第三級アミン化合物が特に好ましい。
上記第15族元素を含む化合物は、α,β−不飽和化合物又はイミン化合物に対して1当量以上用いてもよい。
上記第三級アミン化合物は、特に制限されるものではなく、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とからアミノ基含有アルケンの製造に一般に用いられる第三級アミンを用いることができる。
【0040】
上記第三級アミン化合物は、第三級モノアミン化合物、第三級ジアミン化合物、及び、第三級トリアミン化合物からなる群より選択される少なくとも一種のアミン化合物であることが好ましい。その中でも、本発明に用いるものとしては、第三級モノアミン化合物、又は、第三級ジアミン化合物がより好ましい。
【0041】
上記第三級モノアミン化合物は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、キヌクリジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、キナアルカロイド類や、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチル−n−ブチルアミン、N,N−ジメチル−t−ブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノピリジン等のジメチルアミン類、N−メチルジエチルアミン、N−メチルジ−n−プロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−メチルジ−n−ブチルアミン、N−メチルジ−t−ブチルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−エタノール等のメチルジアルキルアミン類の1種又は2種類以上が好適である。
【0042】
上記第三級ジアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等が好適である。
【0043】
上記第三級トリアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジプロピレントリアミン等が好適である。
【0044】
上記第三級アミン化合物の中でも、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、3−ヒドロキシキヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、キナアルカロイド類や、N,N−ジメチルエチルアミン、N,N−ジメチル−n−プロピルアミン、N,N−ジメチルイソプロピルアミン、N,N−ジメチル−n−ブチルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルジエチルアミン、N−メチルジ−n−プロピルアミン、N−メチルジイソプロピルアミン、N−メチルジ−n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−メタノール、N−メチルピロリジン−2−エタノール等の1種又は2種類以上がより好適である。また、アミノ基を有する高分子化合物、イオン交換樹脂、マイクロカプセル、粘土化合物、ヘテロポリ酸、ゼオライト、オキシナイトライド等の固体化合物も使用できる。
【0045】
上記リン化合物としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、テトラフルオロホウ酸で安定化されたトリ−n−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、2’−ジフェニルホスファニル−[1,1’]ビナフタレニル−2−オール、N(CHCHNMe)P、N(CHCHN(i−Pr))P、N(CHCHN(i−Bu))P、N(CHCHNMe)PS、N(CHCHN(i−Pr))PS、N(CHCHN(i−Bu))PS等が好ましい。なかでも、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィンが特に好ましい。場合によっては、上記化合物の一部が得られる生成物に残存する場合があるが、適切な処理によりアルケンへと導くことが可能である。
【0046】
上記反応工程において、イミン化合物に対するルイス塩基化合物が有する反応活性点のモル比を0.01〜5.0として行われることも、本発明の好ましい実施形態の1つである。上記モル比が0.01〜5.0であると、副生成物の生成をより低減することが可能となり、アミノ基含有アルケンの工業的製造方法としてより好適なものとなる。上記モル比が0.01以下であると、ルイス塩基化合物の触媒活性が充分ではなく、目的物の収率が低下するおそれがある。上記モル比が5.0以上であると、ルイス塩基化合物を多量に使用するため、経済的に不利であり、また、上記反応工程において生じる副生成物を充分に低減できないおそれがある。上記モル比として、より好ましくは0.02〜2.5である。更に好ましくは、0.05〜2.3であり、最も好ましくは0.05〜2.0である。
【0047】
上記反応活性点とは、例えば第三級アミン化合物の構造中において、有機基が3つ結合した窒素原子の構造であって、上記反応工程において、第三級アミン化合物として反応活性点を有する構造を意味するものである。上記反応工程において、N個の反応活性点を有する化合物を用いる場合は、1個の反応活性点を有する化合物を用いる場合と比較して、N倍の反応活性点を有することとなる。したがって、第三級アミン化合物の構造中に含まれている反応活性点がN個の場合、イミン化合物に対する第三級アミン化合物の必要量は、反応活性点を1個のみ有する第三級アミン化合物を用いる場合に比較して、1/Nモルとなる。そのため、本発明においては、上述したように、反応活性点のモル数に応じて、イミン化合物に対する第三級アミン化合物の使用量を規定する。
【0048】
上記反応工程におけるルイス塩基化合物の使用形態は、特に制限されるものではなく、固体状、液体状、ガス状等の種々の状態での使用が可能である。上記使用形態のうちでも、液体状、ガス状が好ましく、該ルイス塩基化合物が水溶性の場合には、5〜80質量%水溶液として使用することも可能である。
【0049】
上記ルイス塩基化合物の揮発度が高い場合には、密閉系で上記反応工程を行うことにより、更に目的物の収率を高めることができる。上記密閉系としては、オートクレーブ装置等が好適である。
【0050】
上記製造方法によって製造することができるアミノ基含有アルケンは、特に制限されるものではないが、下記一般式(6)で表される電子吸引基を有する化合物が、上記製造方法によって好適に製造されるアミノ基含有アルケンとして好ましい。
【0051】
【化7】

【0052】
式中、R、R及びEWGは、上記一般式(3)が有するものと同様であり、R及びR10は、上記一般式(5)が有するものと同様である。
【0053】
上記アミノ基含有アルケンの中でも、下記一般式(7)で表されるものがより好ましい。
【0054】
【化8】

【0055】
上記一般式(7)で表されるものについて以下に説明する。
式中、R及びRは、上記一般式(3)が有するものと同様であり、Rは、上記一般式(4)が有するものと同様であり、R及びR10は、上記一般式(5)が有するものと同様である。
上記一般式(7)で表されるアミノ基含有アルケンの中でも、2−(ヒドロキシエチルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシエチルアミノメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシエチルアミノメチル)アクリル酸ブチル、2−(ヒドロキシエチルアミノメチル)アクリル酸エチルヘキシル、2−(ヒドロキシエチルアミノメチル)アクリル酸フェニル、2−(ヒドロキシエチルアミノメチル)アクリル酸ナフチル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸メチル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸エチル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸ブチル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸シクロヘキシル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸エチルヘキシル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸フェニル、2−(アリルアミノメチル)アクリル酸ナフチル等が、上記製造方法によって、より好適に製造される代表例として挙げられる。
【0056】
本発明の製造方法は、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とをルイス塩基化合物の存在下で反応させる反応工程を含むものである限り、その他の工程を含んでもよい。また、上記α,β−不飽和化合物、イミン化合物、ルイス塩基化合物は、それぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0057】
上記反応工程においては、反応の更なる促進を目的として、添加剤を反応液に添加することができる。添加剤としては、反応に悪影響を及ぼさない限り特に限定されないが、例えばブレンステッド酸や、アルカリ金属及び/又はアリカリ土類金属を含む化合物、有機ハロゲン化物塩、水酸基含有化合物、エーテル化合物等が好ましい。より好ましくは、ブレンステッド酸としては、鉱酸類、カルボン酸類、アミノ酸類、フェノール、ナフトール、ビナフトール等の芳香環に結合した水酸基含有化合物、尿素やチオ尿素及びその誘導体、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカアルミナ等の無機固体類等であり、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む化合物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、フェノール類アルカリ金属塩、フェノール類アルカリ土類金属塩、ナフトール類アルカリ金属塩、ナフトール類アルカリ土類金属塩、ビナフトール類アルカリ金属塩、ドデシル硫酸ナトリウム、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、モレキュラーシーブス、ゼオライト、複合酸化物、粘土鉱物、ハイドロタルサイト等アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む無機固体類であり、有機ハロゲン化物塩としては、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラプロピルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ピリジニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラプロピルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ピリジニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウテトラヘキシルアンモニウム、ヨウ化テトラオクチルアンモニウム、ヨウ化セチルトリメチルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム等であり、水酸基含有化合物としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノールであり、エーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、トリエタノールアミン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クラウンエーテル、ポリエチレングリコールエーテル等である。場合によっては、第三級アミン化合物の化合物骨格に、上記ブレンステッド酸部位やアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含む部位、有機ハロゲン化物塩部位、水酸基部位、エーテル部位が含まれていてもよい。
【0058】
上記反応工程において、α,β−不飽和化合物、及び、目的物であるアミノ基含有アルケンは、共に重合し易い性質を有している場合があることから、反応時の重合を抑制するために、反応系に重合防止剤(又は重合禁止剤)や分子状酸素を添加することが好ましい。
【0059】
上記重合防止剤としては、重合防止剤としての作用を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,4−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,4−ジメチルヒドロキノン等のキノン類;フェノチアジン等のアミン化合物;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、p−メトキシフェノール等のフェノール類;p−tert−ブチルカテコール等の置換カテコール類;置換レゾルシン類;テトラメチルピペリジン−N−オキシド、4−ヒドロキシ−テトラメチルピペリジン−N−オキシド等の安定遊離基含有化合物;ジチオカルバミン酸銅等の金属含有化合物等の1種又は2種類以上を好適に用いることができる。
【0060】
反応終了後は、必要に応じて、蒸留、ろ過、抽出、遠心分離、再結晶、乾燥等の工程を経て分離・精製することにより、目的のアミノ基含有アルケンを得ることができる。このような分離・精製工程としては、反応溶液が有機相と水相とを含む場合、分液等の所定の操作を行い、反応溶液を有機相と水相とに分離し、有機相を常圧蒸留(精留)又は減圧蒸留(精留)等することにより、生成物であるアミノ基含有アルケンを単離・精製することができ、同時に、未反応のα,β−不飽和化合物又は溶媒を分離・回収することができる。未反応のα,β−不飽和化合物及び溶媒は、高純度で回収されるので、反応に再度使用することができる。
【0061】
本発明はまた、上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表されるアミノ基含有アルケンが好ましい。
本発明の上記一般式(1)又は(2)で表されるアミノ基含有アルケンは、効率的に製造することができ、医農薬中間体や(環化)重合体の原料として好適に用いることができる。また、上記一般式(1)で表されるアミノ基含有アルケンは分子内エステル化により、環状不飽和化合物を形成させることもでき、この化合物も重合体の原料となり得る。
本発明の上記一般式(1)又は(2)で表されるアミノ基含有アルケンは、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを、ルイス塩基化合物の存在下で反応させて製造されるものであって、上記イミン化合物は、ホルムアルデヒドとアミン化合物とから合成されるものであることが好ましい。上記アミノ基含有アルケンは、更に本発明の効果を発揮することになる。
なかでも、本発明の上記一般式(1)又は(2)で表されるアミノ基含有アルケンは、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを、ルイス塩基化合物の存在下で反応させて製造されるアミノ基含有アルケンであって、上記α,β−不飽和化合物は、アクリル酸メチルであり、上記イミン化合物は、ホルムアルデヒドとアミノエタノールもしくはアリルアミンとから合成されるものであることがより好ましい。
本発明の上記一般式(1)又は(2)で表されるアミノ基含有アルケンは、上述した本発明のアミノ基含有アルケンの製造方法の好ましい形態を用いて製造されることが好ましい。
【発明の効果】
【0062】
本発明のアミノ基含有アルケンの製造方法は、上述の構成よりなり、反応速度及び収率を高めることができ、アミノ基含有アルケンを効率的に製造することができるため、工業的製造に利用することができる有用な製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0064】
実施例1
試験管にアクリル酸メチル(20mmol)、単離イミン化合物としてN−ヒドロキシエチル−メタンイミン(5mmol)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(1mmol)を秤量し、イオン交換水(4.5mmol)を添加し、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、イオン交換水の水分量であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。化合物の同定は、質量分析(EI法)により行い、m/z(M)159(100%)、144(2.5)、130(1.6)、98(1.9)、86(17)、85(37)、73(7.7)、70(2.5)、55(33)、42(4.6)である。なお括弧内の数値(%)は、ピークの相対感度を表す。
【0065】
実施例2
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)と2−アミノエタノール(5mmol)を秤量し、70℃で5分間攪拌した。この時パラホルムアルデヒドは全て溶解し、2−アミノエタノールもガスクロマトグラフィー分析から検出されないことを確認した。ここに、アクリル酸メチル(20mmol)、及び、DABCO(1mmol)を加え、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量との、それぞれの和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0066】
実施例3
DABCO(1mmol)の代わりに30%トリメチルアミン水溶液(1mmol)を使用する以外は、実施例2と同様にして反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量と、30%トリメチルアミン水溶液の水分量との、それぞれの和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0067】
実施例4
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)と2−アミノエタノール(5mmol)を秤量し、70℃で5分間攪拌した。この時パラホルムアルデヒドは全て溶解し、2−アミノエタノールもガスクロマトグラフィー分析から検出されないことを確認した。ここに、アクリル酸メチル(20mmol)、DABCO(1mmol)と、有機溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)(1mL)、及び、イオン交換水(5.6mmol)を加え、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量と、イオン交換水の水分量との、それぞれの和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0068】
実施例5
ジメチルスルホキシド(DMSO)(1mL)の代わりに有機溶媒としてアセトニトリル(MeCN)(1mL)を加える以外は、実施例4と同様にして反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量と、イオン交換水の水分量の、それぞれの和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0069】
実施例6
ジメチルスルホキシド(DMSO)(1mL)の代わりに有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(1mL)を加える以外は、実施例4と同様にして反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量と、イオン交換水の水分量の、それぞれの和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0070】
実施例7
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)、2−アミノエタノール(5mmol)、DABCO(1mmol)、2−プロパノール(1mL)を秤量し、70℃で5分間攪拌した。この時パラホルムアルデヒドは全て溶解し、2−アミノエタノールもガスクロマトグラフィー分析から検出されないことを確認した。ここに、アクリル酸メチル(20mmol)を加え、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量の和(理論量)であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0071】
実施例8
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)、2−アミノエタノール(5mmol)、2−プロパノール(1mL)を秤量し、70℃で5分間攪拌した。この時パラホルムアルデヒドは全て溶解し、2−アミノエタノールもガスクロマトグラフィー分析から検出されないことを確認した。ここに、アクリル酸メチル(20mmol)、DABCO(1mmol)を加え、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量の和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0072】
実施例9
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)、2−アミノエタノール(5mmol)、アクリル酸メチル(20mmol)を秤量し、70℃で5分間攪拌した。この時パラホルムアルデヒドは全て溶解し、2−アミノエタノールもガスクロマトグラフィー分析から検出されないことを確認した。ここに、2−プロパノール(1mL)、DABCO(1mmol)を加え、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量の和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0073】
実施例10
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)、アクリル酸メチル(20mmol)、2−プロパノール(1mL)を秤量し、70℃に加熱した。ここに、別に予め70℃に加熱した2−アミノエタノール(5mmol)を加え、30秒間攪拌した。
ここに、DABCO(1mmol)を加え、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水分量と、パラホルムアルデヒドと2−アミノエタノールからN−ヒドロキシエチル−メタンイミンが一部生成する際に発生する水分量の和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0074】
実施例11
試験管にメチルビニルケトン(1mmol)、単離イミン化合物としてN−ベンジリデン−p−トルエンスルホンアミド(0.5mmol)、トリフェニルホスフィン(0.05mmol)を秤量し、ここにテトラヒドロフラン(THF)(1mL)を加え、イオン交換水(0.8mmol)を添加し、25℃で24時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、イオン交換水の水分量であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、カラムクロマトグラフィーにより生成物を単離することにより、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0075】
実施例12
試験管にアクリル酸ブチル(10mmol)、単離イミン化合物としてN−ヒドロキシエチル−メタンイミン(5mmol)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(1mmol)を秤量し、ここにジメチルスルホキシド(DMSO)(1mL)を加え、イオン交換水(11.2mmol)を添加し、70℃で24時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、イオン交換水の水分量であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0076】
実施例13
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)、2一アミノエタノール(5mmol)、アクリル酸メチル(20mmol)、DABCO(1mmol)、イオン交換水(5.6mmol)を秤量し、70℃で6時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、イオン交換水の水分量であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0077】
実施例14
試験管に92%(8%水分)パラホルムアルデヒド(5mmol)、アリルアミン(5mmol)、DABCO(1mmol)、2−プロパノール(1mL)、アクリル酸メチル(20mmol)を秤量し、60℃で24時間攪拌し反応を行った。反応終了後の水量は、パラホルムアルデヒドが持つ水量と、パラホルムアルデヒドとアリルアミンからN−アリル−メタンイミンが生成する際に発生する水分量の和であり、カールフィシャー分析によりほぼその理論水分量であることを確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。化合物の同定は、質量分析(EI法)により行い、m/z(M)155(100%)、140(49)、130(5.5)、114(34)、110(8.5)、96(3.5)、86(14)、85(42)、68(8.1)、42(12)、41(8.7)であった。なお括弧内の数値(%)は、ピークの相対感度を表す。
【0078】
比較例1
試験管にアクリル酸メチル(20mmol)、単離イミン化合物としてN−ヒドロキシエチル−メタンイミン(5mmol)、DABCO(1mmol)を秤量し、70℃で6時間攪拌し反応を行った。
反応終了後の水はほとんど存在しないことをカールフィシャー分析により確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
【0079】
比較例2
DABCO(1mmol)の代わりに第15族元素含有化合物としてトリフェニルホスフィン(1mmol)を加える以外は、比較例1と同様にして反応を行った。
反応終了後の水はほとんど存在しないことをカールフィシャー分析により確認した。反応後、ガスクロマトグラフィー分析により、アミノ基含有アルケンの収率を求めた。
実施例1−14、比較例1−2のアミノ基含有アルケンの収率は、表1に示す通りである。
【0080】
【表1】

【0081】
表1について、以下に説明する。
収率とは、本発明の製造方法による目的物であるアミノ基含有アルケンの、イミン化合物に対する収率を表す。水は、反応工程の終了時に反応系中に存在する水の総モル数をカールフィシャー分析により求めた値を表す。
【0082】
上述した実施例及び比較例から、次のようにいえることがわかった。すなわち、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを、ルイス塩基化合物の存在下で反応させてアミノ基含有アルケンを製造する方法であって、該製造方法は、水存在下で反応させる工程を含むものとすることにより、反応速度及び収率が高められるという有利な効果を発揮し、それが顕著であることがわかった。具体的には、水存在下で反応させる工程を含まない比較例1、2は、本発明の製造方法の目的物であるアミノ基含有アルケンの収率は3〜4モル%であるが、水存在下で反応させる工程を含む実施例1〜14は、該収率が40〜80モル%となり、本発明の効果が顕著に現れることになる。また、実施例1〜12では、上記イミン化合物は、反応終了後に予め合成したイミン化合物とすることにより、収率は50〜80モル%となり、反応工程における原料を一括で仕込む実施例13、14(収率40〜45モル%)に比べて、更に本発明の効果が顕著に現れることになる。
【0083】
なお、上述した実施例及び比較例では、α,β−不飽和化合物としてアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メチルビニルケトン等のカルボニル化合物を用い、イミン化合物としてN−ヒドロキシエチル−メタンイミン、N−ベンジリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−アリル−メタンイミンを用い、ルイス塩基化合物としてDABCO、トリメチルアミン、トリフェニルホスフィン等の第15族元素を含む化合物を用いているが、α,β−不飽和化合物、イミン化合物、ルイス塩基化合物であれば、α,β−不飽和化合物とイミン化合物とをルイス塩基化合物の存在下で反応させてアミノ基含有アルケンを製造する方法において、水存在下で反応させることにより中間体を安定化させる機構は同様である。したがって、上述した製造方法とすることにより、本発明の有利な効果を発現することは確実であるといえる。少なくとも、α,β−不飽和化合物としてカルボニル化合物を用い、イミン化合物としてN−ヒドロキシエチル−メタンイミン、N−ベンジリデン−p−トルエンスルホンアミド、N−アリル−メタンイミンを用い、ルイス塩基化合物として第15族元素を含む化合物を用いて、本発明の製造方法によりアミノ基含有アルケンを製造する場合においては、上述した実施例及び比較例で充分に本発明の有利な効果が立証され、本発明の技術的意義が裏付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の製造方法における反応機構の一例を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,β−不飽和化合物とイミン化合物とを、ルイス塩基化合物の存在下で反応させてアミノ基含有アルケンを製造する方法であって、
該製造方法は、水存在下で反応させる工程を含む
ことを特徴とするアミノ基含有アルケンの製造方法。
【請求項2】
前記α,β−不飽和化合物の基質仕込み量は、前記イミン化合物の量に対して1.1当量以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のアミノ基含有アルケンの製造方法。
【請求項3】
前記イミン化合物は、反応開始前に予め合成したイミン化合物である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアミノ基含有アルケンの製造方法。
【請求項4】
前記反応工程は、イミン化合物に対して0.01〜5.0当量の水の存在下で行われる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアミノ基含有アルケンの製造方法。
【請求項5】
前記ルイス塩基化合物は、第15族元素を含む化合物である
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアミノ基含有アルケンの製造方法。
【請求項6】
前記イミン化合物は、ホルムアルデヒドを原料として得られるものである
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のアミノ基含有アルケンの製造方法。
【請求項7】
下記一般式(1);
【化1】

又は下記一般式(2);
【化2】

(式中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基又は2−ヒドロキシエチル基である。)
で表される
ことを特徴とするアミノ基含有アルケン。

【図1】
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【公開番号】特開2008−37830(P2008−37830A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217127(P2006−217127)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】