説明

アミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法

【課題】(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールを反応させてアミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する際に、反応により副生するアルキルアルコール中におけるアミン類等の副反応生成物等の含有を抑制しつつ、アルキルアルコールを効率よく回収して、(メタ)アクリレートの製造原料として、不具合なく再利用することができ、アミノ基含有(メタ)アクリレートの連続的な製造を進めることができるアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法を提供する。
【解決手段】アミノ基含有(メタ)アクリレート及び副生アルキルアルコールを含む反応液を加熱して副生アルキルアルコールを蒸留し、次いで、留出物を酸性イオン交換樹脂に接触させて精留アルコールを得る。その後、精留アルコールのpHを監視する。pHの測定は、試料と水とを混合した後、静置し、相分離した下相液に対して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル交換触媒の存在下、(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールを反応原料として、アミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する方法に関し、更に詳しくは、反応により副生したアルキルアルコールを回収して、(メタ)アクリレートの製造用原料として効率よく再利用させるための(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。また、「(メタ)アクリレート」は、その構造中のエステル部が脂肪族炭化水素基である化合物以外に、エステル部が脂環構造を含む炭化水素基である化合物、及び、エステル部が芳香環構造を含む炭化水素基である化合物を含む。そして、副生した「アルキルアルコール」もまた、反応に使用した(メタ)アクリレートの種類により、脂肪族アルコール、脂環族アルコール又は芳香族アルコールとすることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリレートと、アミノアルキルアルコールとを、エステル交換反応させて、アミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する方法が知られている。この方法によれば、通常、反応液に、目的のアミノ基含有(メタ)アクリレートと、未反応の反応原料、副生したアルキルアルコール、副反応生成物であるアミン類等が含まれる。近年、副生したアルキルアルコールの再利用のために、アミノ基含有(メタ)アクリレートを除く、副生アルキルアルコール等を含む混合物からの精製処理が進められている。即ち、この精製処理により副生したアルキルアルコールを回収し、続いて(メタ)アクリレートの製造用原料等として再利用しようというものである。
【0003】
精製処理の手段としては、特許文献1には、蒸留法、及び、イオン交換樹脂による吸着法が開示されている。また、特許文献2には、イオン交換樹脂による吸着法が開示されており、精製されたアルキルアルコール中の全窒素含量が0.002質量%以下であることが好ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−246495号公報
【特許文献2】特開平11−106369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アミノ基含有(メタ)アクリレートの製造に際して、副生したアルキルアルコールを回収して、(メタ)アクリレートの製造用原料として有効利用することは、経済的である。しかしながら、アミノ基含有(メタ)アクリレートの製造と、再利用可能な副生アルキルアルコールの回収及びそれを用いた(メタ)アクリレートの製造とを、連続的に効率よく進めるためには、上記の精製処理を進めるのみでは、十分ではない場合があった。即ち、蒸留法、及び、イオン交換樹脂による吸着法を単純に進めても、精製されたアルキルアルコールに、アミン類が混在する場合があった。そこで、精製中のアルキルアルコールのうち、純度の高いアルキルアルコールを効率よく回収する期間を管理する必要があり、それを判定する手段が求められていた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールを反応させてアミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する際に、反応により副生するアルキルアルコール中におけるアミン類等の副反応生成物等の含有を抑制しつつ、アルキルアルコールを効率よく回収して、(メタ)アクリレートの製造用原料として、不具合なく再利用することができ、アミノ基含有(メタ)アクリレートの連続的な製造を進めることができる、アミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールを反応原料として、アミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する方法において、
エステル交換触媒の存在下、上記(メタ)アクリレート及び上記アミノアルキルアルコールを反応させる反応工程と、
上記反応工程により得られた反応液であって、上記(メタ)アクリレート、上記アミノアルキルアルコール、上記アミノ基含有(メタ)アクリレート、及び、副生したアルキルアルコールを含む反応液を加熱し、副生アルキルアルコールを蒸留する蒸留工程と、
上記蒸留工程により得られた副生アルキルアルコール含有組成物を、イオン交換樹脂に接触させる精製工程と、
上記精製工程により得られたアルキルアルコール精製物のpHを測定する監視工程と、を備え、上記アルキルアルコール精製物を、上記(メタ)アクリレートの製造用原料の少なくとも一部として再利用することを特徴とするアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
2.上記蒸留工程において、上記(メタ)アクリレート及び上記副生アルキルアルコールを共沸させる上記1に記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
3.上記イオン交換樹脂が酸性イオン交換樹脂である上記1又は2に記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
4.上記監視工程において、上記アルキルアルコール精製物と、水とを混合し、その後、静置して、相分離した下相液のpHを測定する上記1乃至3のいずれかに記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
5.上記アルキルアルコール精製物の前処理により得られた上記下相液のpHが、pH7以下にあるときに、このアルキルアルコール精製物を、上記(メタ)アクリレートの製造用原料の少なくとも一部として再利用する上記4に記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
6.上記反応工程、上記蒸留工程、上記精製工程及び上記監視工程を連続的に且つそれぞれを継続して行い、上記アミノ基含有(メタ)アクリレートを連続的に製造する上記1乃至5のいずれかに記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
7.上記副生アルキルアルコール用いて、上記(メタ)アクリレートを製造し、該(メタ)アクリレートを反応工程に供給する請求項1乃至6のいずれかに記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールを反応させてアミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する際に、反応により副生するアルキルアルコール中におけるアミン類等の副反応生成物等の含有を抑制しつつ、アルキルアルコールを効率よく回収して、(メタ)アクリレートの製造用原料として、不具合なく再利用することができ、アミノ基含有(メタ)アクリレートの連続的な製造に好適である。特に、監視工程を備えることで、回収されたアルキルアルコール精製物をより高純度に維持することができ、続いて行う(メタ)アクリレートの製造を効率よく且つ安全に進めることができる。
また、監視工程におけるpH管理を、上記のような特定の方法で進めることにより、回収されたアルキルアルコール精製物が、その後の再利用に好適かどうかを、迅速に決定することができる。そして、上記下相液のpHが、pH7以下にある場合に、アルキルアルコール精製物を、反応原料である(メタ)アクリレートを再生するための製造用原料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法は、エステル交換触媒の存在下、上記(メタ)アクリレート及び上記アミノアルキルアルコールを反応させる反応工程と、上記反応工程により得られた反応液であって、上記(メタ)アクリレート、上記アミノアルキルアルコール、上記アミノ基含有(メタ)アクリレート、及び、副生したアルキルアルコールを含む反応液を加熱し、副生アルキルアルコールを蒸留する蒸留工程と、上記蒸留工程により得られた副生アルキルアルコール含有組成物を、イオン交換樹脂に接触させ、精製された副生アルキルアルコールを得る精製工程と、上記精製工程により得られた副生アルキルアルコールのpHを測定する監視工程と、を備え、上記精製工程により得られた副生アルキルアルコールを、上記(メタ)アクリレートの製造用原料の少なくとも一部として再利用することを特徴とする。
【0009】
上記反応工程(エステル交換反応)は、下記式(1)で示されるように、エステル交換触媒の存在下、(メタ)アクリレート(以下、「原料化合物(A)」又は「化合物(A)」という。)とアミノアルキルアルコール(以下、「原料化合物(B)」又は「化合物(B)」という。)とを反応させて、アミノ基含有(メタ)アクリレート(以下、「化合物(C)」ともいう。)を得るものである。この反応により、R−OHで表されるアルキルアルコール(以下、「化合物(D)」ともいう。)が副生する。
【化1】

【0010】
上記反応式(1)において、原料化合物(A)を構成するRは、水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基、脂環構造を含み且つ炭素原子数3〜8の炭化水素基、又は、芳香環構造を含み且つ炭素原子数6〜8の炭化水素基である。また、原料化合物(B)を構成するRは、1級アミノ基、2級アミノ基又は3級アミノ基を含む炭化水素基である。
【0011】
上記原料化合物(A)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
【0012】
上記原料化合物(B)としては、例えば、下記一般式(2)で表されるアミノアルキルアルコールを用いることができる。
【化2】

(式中、R34及びR35は、互いに同一又は異なって、炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基、脂環構造を含み且つ炭素原子数3〜8の炭化水素基、又は、芳香環構造を含み且つ炭素原子数6〜8の炭化水素基であり、いずれか一方が水素原子であってよく、R36は、炭素原子数2〜4の2価の脂肪族炭化水素基である。)
【0013】
上記一般式(2)で表されるアミノアルキルアルコールとしては、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノプロパノール(3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール)、N,N−ジメチルアミノブタノール(4−ジメチルアミノ−1−ブタノール、2−ジメチルアミノ−イソブチルアルコール等)、N,N−ジメチルアミノペンタノール(5−ジメチルアミノ−1−ペンタノール、4−ジメチルアミノ−2−メチル−1−ブタノール等)、N,N−ジメチルアミノヘキサノール(6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール、5−ジメチルアミノ−3−メチル−1−ペンタノール、4−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル−1−ブタノール等)、N,N−ジメチルアミノヘプタノール(7−ジメチルアミノ−1−ヘプタノール、5−ジメチルアミノ−3,3−ジメチル−1−ペンタノール等)、N,N−ジメチルアミノオクタノール(8−ジメチルアミノ−1−オクタノール、6−ジメチルアミノ−2−エチル−1−ヘキサノール等)、N,N−ジメチルアミノドデカノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、N,N−ジプロピルアミノエタノール(2−ジ−イソプロピルアミノエタノール等)、N,N−ジブチルアミノプロパノール、N,N−ジベンジルアミノエタノール、メチルエチルアミノエタノール、メチルプロピルアミノエタノール、メチルブチルアミノエタノール、メチルヘキシルアミノエタノール、エチルプロピルアミノエタノール、エチルブチルアミノエタノール、エチルペンチルアミノエタノール、エチルオクチルアミノエタノール、プロピルブチルアミノエタノール、ブチルペンチルアミノプロパノール等のジアルキルアルコールアミン;N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−エチルプロパノールアミン等のモノアルキルアルコールアミン等が挙げられる。
【0014】
上記原料化合物(A)及び(B)のエステル交換反応は、従来、公知のエステル交換触媒の存在下に進められる。このエステル交換触媒としては、アルコキシチタン化合物、アルコキシアルミニウム化合物、アルコキシマグネシウム化合物、有機スズ化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、タリウム化合物等が挙げられる。これらのうち、アルコキシチタン化合物及び有機スズ化合物が好ましく、アルコキシチタン化合物が特に好ましい。尚、本発明において、「アルコキシチタン化合物」、「アルコキシアルミニウム化合物」及び「アルコキシマグネシウム化合物」における「アルコキシ基」は、「OR」で表した場合に、Rを、脂肪族炭化水素基だけでなく、脂環構造を含む炭化水素基、又は、芳香環構造を含む炭化水素基とすることができる。
【0015】
上記反応工程において用いるエステル交換触媒として、アルコキシチタン化合物を用いる場合、この化合物は、チタン原子に付加しているアルコキシル基に含まれるアルキル基が、上記反応式(1)において、原料化合物(A)を構成するRと同一であることが好ましい。その理由は、副生する化合物(D)が同一構造のアルキルアルコールとなり、これをそのまま原料化合物(A)の製造に再利用することができ、経済的利点に優れるからである。
【0016】
上記反応工程において用いるエステル交換触媒として、有機スズ化合物を用いる場合、この化合物は、エステル交換能を有するものであれば、特に限定されない。この有機スズ化合物としては、ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチル錫ビスマレート、ジオクチル錫ビスマレイン酸塩ポリマー、ジオクチル錫ジラウレート等のジオクチル錫化合物、ジブチル錫ビスマレート、ジブチル錫ビスマレイン酸塩ポリマー、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫β−メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチル錫アセトアセトナート、ジブチル錫オキサイド等のジブチル錫化合物、ジメチル錫ビス(イソオクチルメルカプトアセテート)等のジメチル錫化合物、その他に、モノオクチル錫トリス(イソオクチルチオグリコレート)、モノブチル錫オキシド、モノブチル錫ハイドロキシシクロライド、モノブチル錫トリオクトエート、シュウ酸錫、オクチル酸錫等が挙げられる。
【0017】
上記反応工程において、上記原料化合物(A)及び(B)の配合比(モル比)は、好ましくは1:2〜2:1、より好ましくは1:1〜1.6:1、更に好ましくは1:1〜1.5:1である。上記配合比がこの範囲にあると、化合物(C)を効率よく製造することができる。
また、上記原料化合物(B)及び上記エステル交換触媒の配合比(モル比)は、好ましくは1:0.0001〜1:0.1、より好ましくは1:0.001〜1:0.05である。上記配合比がこの範囲にあると、エステル交換反応を円滑に進めることができる。上記エステル交換触媒の使用量が少なすぎると、エステル交換反応の反応速度が遅くなり、未反応の原料化合物(A)及び(B)が増加したり、反応時間が長くなって生産性が低下したりする。
【0018】
上記反応工程において用いられる反応装置は、通常、反応器と、その加熱手段と、撹拌手段とを備えるものであり、更に、反応原料供給手段、エステル交換触媒供給手段等を備えることができる。
【0019】
上記反応工程において、原料化合物(A)及び(B)と、エステル交換触媒とを、反応器に連続あるいはバッチ供給し、好ましくは100℃〜130℃の範囲の温度で、原料化合物(A)及び(B)を反応させる。このエステル交換反応により、反応液には、化合物(C)、副生アルキルアルコールである化合物(D)、並びに、未反応の原料化合物(A)及び(B)に加えて、トリメチルアミン、1,4−ジメチルピペラジン等のアミン類等が副反応生成物として含まれる。
尚、上記エステル交換反応は平衡反応であるので、化合物(C)を効率よく製造するために、化合物(D)を蒸留により反応系から排除しながら反応を進めることが好ましい。即ち、反応液を加熱し、化合物(D)を蒸留する蒸留工程を、反応工程とともに進めることができる。この蒸留工程において用いられる蒸留装置は、上記反応装置に連結された蒸留塔(多段式蒸留塔、充填式蒸留塔等)、凝縮器、冷却器、還流タンク等とすることができる。
【0020】
上記蒸留工程は、化合物(D)を蒸留する工程であり、上記蒸留装置における蒸留塔の操作条件等は、特に限定されない。圧力は、減圧、常圧及び加圧のいずれの条件で行ってもよいが、減圧下で蒸留を行うことが好ましい。この場合、好ましい圧力は、25〜101kPaである。また、蒸留塔の塔頂温度は、好ましくは40℃〜120℃、より好ましくは60℃〜120℃、還流比は、好ましくは0.5〜30である。
尚、上記化合物(D)が原料化合物(A)と共沸混合物を形成する場合には、両者を共沸させつつ、蒸留を進めてもよい。後者の場合、反応系において原料化合物(A)が不足しないよう、即ち、原料化合物(A)及び(B)のモル比が、上記好ましい割合を維持するよう、原料化合物(A)を供給することが好ましい。
【0021】
本発明において、原料化合物(A)及び(B)と、化合物(C)と、化合物(D)とを含む反応液から、原料化合物(A)及び化合物(D)を共沸させる場合であって、更に、エステル交換触媒がアルコキシチタン化合物であり、且つ、アルコキシチタン化合物におけるアルコキシ基が、原料化合物(A)を構成する、上記反応式(1)におけるRと同一である場合には、この蒸留工程により得られる留出物(副生アルキルアルコール含有組成物)から、原料化合物(A)及び化合物(D)を分離させることなく、これらの混合物を用いて、含まれる化合物(D)を製造用原料とした原料化合物(A)の再生を図ることができ、好ましい態様である。
【0022】
また、上記蒸留工程において、化合物(D)と共沸混合物を形成する有機溶剤を用いることができる。その例としては、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
尚、上記有機溶剤及び化合物(D)を共沸させる場合、これにより得られる留出物(副生アルキルアルコール含有組成物)から、更なる加熱蒸留等により有機溶剤を除去することができる。しかしながら、化合物(D)を用いて原料化合物(A)を製造する際に、上記有機溶剤を、反応溶媒、脱水溶剤等として使用可能である場合には、有機溶剤及び化合物(D)を含む上記副生アルキルアルコール含有組成物から有機溶剤を除去する工程を省略することができる。
【0023】
上記蒸留工程において、原料化合物(A)及び/又は化合物(C)の熱重合反応を抑制するために、フェノチアジン、tert−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合抑制剤を反応器及び/又は蒸留塔に供給してもよい。
この重合抑制剤の使用量は、上記原料化合物(A)及び(B)の合計量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%、より好ましくは0.001〜3質量%である。
【0024】
上記蒸留工程により得られる留出物(副生アルキルアルコール含有組成物)には、通常、化合物(D)以外に、いずれも微量であるが、原料化合物(A)及び(B)並びに上記アミン類が含まれる。この副生アルキルアルコール含有組成物に、原料化合物(B)及びアミン類が含まれる場合、化合物(D)を含む副生アルキルアルコール含有組成物を、続いてアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造に用いる原料化合物(A)の製造用原料としてそのまま用いると、以下の不具合を招く。即ち、原料化合物(A)の製造に用いる触媒が失活し易くなったり、反応中に塩が生成して析出したり、反応工程が不安定になったりすることになる。特に、上記副生アルキルアルコール含有組成物中の原料化合物(B)、及び、上記例示したアミン類(以下、これらを併せて「全アミン」という。)の合計濃度(以下、「全アミン含有量」という。)が、例えば、50質量ppm以上といった高い場合には、上記不具合が顕著となる。上記全アミン含有量は、全窒素分析装置(例えば、三菱化学社製「微量全窒素分析装置TN」等)、ガスクロマトグラフ分析装置等により得ることができる。
【0025】
尚、上記全アミン含有量は、上記例示した分析装置等により、正確に求めることができるが、本発明においては、再利用可能な副生アルコールを用いて、原料化合物(A)を再生し、更に、アミノ基含有(メタ)アクリレートの連続的な製造に好適なものとするために、後述する測定方法(評価方法)によるpHを、簡便に且つ迅速に上記副生アルキルアルコール含有組成物における全アミン含有量の指標とすることができる。
例えば、大気圧下、10℃〜50℃の範囲の温度で、50mlの試料(副生アルキルアルコール含有組成物)と、50mlの水とを混合し、その後、10℃〜40℃の範囲の温度で、5〜30分間静置する。次いで、2相に分離したところの下相液のpHを10℃〜40℃の範囲の温度にて測定する。以下、この方法を「全アミン評価法」という。
この評価法において、試料と、水との混合比(体積比)は、好ましくは1:2〜2:1、より好ましくは1.2:1〜1:1.2である。また、混合、分離及びpH測定に用いる装置等は、特に限定されず、静止型混合器、静置型分離器、及び、基準水溶液を入れた標準電極と、測定対象との電位差を使ったpH測定器を、それぞれ、用いることができる。
尚、上相液及び下相液には、原料化合物(A)の一部、及び、化合物(D)の一部が含まれているので、必要に応じて、それらの化合物の回収等を行い、適切に廃棄処理される。
【0026】
上記全アミン評価法により得られるpHがアルカリ性を示す場合には、上記全アミン含有量が高く、その副生アルキルアルコール含有組成物を、原料化合物(A)の製造に用いる原料成分として用いることはできない。蒸留工程の分離のための理論段数によるが、通常の蒸留塔を用いた場合は、上記蒸留工程により得られた副生アルキルアルコール含有組成物を、全アミン評価法に供すると、通常、pH>8が得られる。
従って、本発明は、上記副生アルキルアルコール含有組成物における全アミン含有量を、より低減させるために、蒸留工程により得られた副生アルキルアルコール含有組成物を、イオン交換樹脂に接触させる精製工程を備える。
【0027】
上記精製工程において用いるイオン交換樹脂は、好ましくは酸性イオン交換樹脂であり、例えば、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂又は(メタ)アクリル酸系樹脂をベース樹脂とし、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基及びカルボキシル基から選ばれる少なくとも1種をイオン交換基として備えるものが挙げられる。また、この酸性イオン交換樹脂の形態としては、ゲル型、ポーラス型、マクロポーラス型等が挙げられる。
【0028】
上記酸性イオン交換樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、「デュオライトC20SC」、「デュオライトC20LF」、「デュオライトC255LFH」、「デュオライトC26A」、「デュオライトC26TRH」、「デュオライトC433LF」、「デュオライトC476」、「アンバーライトIR120B」、「アンバーライトIR124」、「アンバーライト200CT」、「アンバーライト252」、「アンバーライトIRC76」、「アンバーライトFPC3500」、「アンバーリスト15」、「アンバーリスト16」及び「アンバーリスト31」(以上、ローム&ハース社製)、「ダイヤイオンSK104」、「ダイヤイオンSK1B」、「ダイヤイオンPK216」、「ダイヤイオンWK10」、「ダイヤイオンWK11」、「ダイヤイオンWK40」及び「ダイヤイオンWK100」(以上、三菱化学社製)、「ダウエックスHCR−W2」、「HGR−W2」及び「MSC−1C」(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
【0029】
上記精製工程においては、上記副生アルキルアルコール含有組成物を、例えば、イオン交換樹脂塔内に充填したイオン交換樹脂と接触させる。このときの接触条件は、特に限定されないが、通常、上記副生アルキルアルコール含有組成物を、大気圧下、10℃〜50℃の温度に調節されたイオン交換樹脂に接触させつつ、通液させる。
【0030】
上記精製工程において得られるアルキルアルコール精製物は、上記アミン類等の含有が抑制された、即ち、全アミン含有量が好ましくは20質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは6質量ppm以下(但し、下限は、通常、1質量ppm以下である。)である、高純度の化合物(D)(アルキルアルコール)、又は、実質的に、化合物(D)及び原料化合物(A)からなる混合物である。しかしながら、同じイオン交換樹脂の使用を継続すると、その性能が低下し、得られるアルキルアルコール精製物における、上記全アミン含有量が増大する。そのため、本発明においては、精製工程により得られるアルキルアルコール精製物のpHを測定する監視工程を備え、上記副生アルキルアルコール含有組成物に対して行った全アミン評価法を、定期的に、好ましくは連続的に、このアルキルアルコール精製物に適用し、好ましくはpH7以下、より好ましくはpH<7、更に好ましくはpH<6.5、特に好ましくはpH<6を維持させつつ精製工程を進めて、アルキルアルコール精製物を回収する。
【0031】
上記アルキルアルコール精製物に対する全アミン評価法において、pH>7となったところで、精製工程を中断し、機能の低下したイオン交換樹脂の交換又は再生を行った後、上記精製工程が継続される。
イオン交換樹脂を再生する方法としては、劣化したイオン交換樹脂に、硫酸、塩酸等の強酸の水溶液を接触させる工程を備える方法が挙げられる。接触条件は、特に限定されないが、通常、大気圧下、常温にて、両者を接触させて、イオン交換樹脂に吸着したアミン類の脱離が行われる。その後、イオン交換樹脂を水洗することにより、酸分を十分に除去する。最後に、水を含まないアルコールを用いて脱水することで、再利用可能なイオン交換樹脂が得られる。
【0032】
上記アルキルアルコール精製物に対して、全窒素分析装置、ガスクロマトグラフ分析装置等により、全アミン含有量を測定してもよいが、本発明に係る全アミン評価法を適用することにより、より簡便に且つ迅速に精製工程を進めることができる。
【0033】
上記監視工程において回収した、pH<7を満たすアルキルアルコール精製物は、化合物(A)の有無によらず、化合物(D)を含有するため、化合物(A)の製造に好適に用いることができる。上記アルキルアルコール精製物が化合物(A)を含有する場合、その上限値は、アルキルアルコール精製物の全量に対して、通常、0.001質量%である。
【0034】
尚、精製後の副生アルコ-ルのみならず、精製工程に供給する副生アルコールに含まれるアミン類をも測定すれば、イオン交換樹脂塔に供給するアルコール中のアミン量が監視できる。そのアミン量によって、前工程である蒸留工程において、アミンをより除去するような条件を選ぶことにより、イオン交換樹脂の破過(イオン交換樹脂がアミン除去できなくなる)に至るまで時間を伸ばすこともできるので、かかる方法も好ましい。
【0035】
上記アルキルアルコール精製物を用いて、化合物(A)を製造する場合、このアルキルアルコール精製物に含まれる化合物(D)の含有量を調べた上で、下記式(3)に示す、化合物(D)とのエステル化反応に供される(メタ)アクリル酸の使用量が選択される。
【化3】

【0036】
上記式(3)において、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基、脂環構造を含み且つ炭素原子数3〜8の炭化水素基、又は、芳香環構造を含み且つ炭素原子数6〜8の炭化水素基である。
【0037】
上記式(3)に示すエステル化反応は、従来、公知の方法である、酸触媒の存在下に進められる方法によるものである。本発明において、アミン類の含有が抑制されたアルキルアルコール精製物を用いることで、副反応生成物の混在が抑制された化合物(A)、即ち、(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0038】
上記反応工程により得られた、化合物(C)を含む反応液に対しては、未反応の原料化合物(A)及び(B)、化合物(D)、並びに、エステル交換触媒の除去を行うことにより、化合物(C)が単離される。
【0039】
本発明において、好ましい態様は、以下に示される。
[1]反応工程において、原料化合物(A)としてアクリル酸メチルを、原料化合物(B)としてジメチルアミノエチルアルコールを、エステル交換触媒としてテトラメチルチタネートを、それぞれ、用い、そして、反応工程、蒸留工程、精製工程及び監視工程を連続的に且つそれぞれを継続して行って、アクリル酸ジメチルアミノエチルを連続的に製造する方法であって、
上記監視工程におけるアルキルアルコール精製物(メタノール精製物)の前処理により得られた下相液のpHが、pH7以下にあるときに、アミン類の含有割合の低いアルキルアルコール精製物(精製メタノール)を回収し、アクリル酸メチルの製造用原料の少なくとも一部として再利用する方法。
[2]反応工程において、原料化合物(A)としてアクリル酸ブチルを、原料化合物(B)としてジメチルアミノエチルアルコールを、エステル交換触媒としてテトラブチルチタネートを、それぞれ、用い、そして、反応工程、蒸留工程、精製工程及び監視工程を連続的に且つそれぞれを継続して行って、アクリル酸ジメチルアミノエチルを連続的に製造する方法であって、
上記監視工程におけるアルキルアルコール精製物(ブタノール精製物)の前処理により得られた下相液のpHが、pH7以下にあるときに、アミン類の含有割合の低いアルキルアルコール精製物(精製ブタノール)を回収し、アクリル酸ブチルの製造用原料の少なくとも一部として再利用する方法。
【0040】
本発明においては、反応工程、蒸留工程、精製工程及び監視工程に加えて、アルキルアルコール精製物と、(メタ)アクリル酸とを用いて、(メタ)アクリレートを製造する、(メタ)アクリレート製造工程と、この製造工程により得られた(メタ)アクリレートを反応工程に供給する、(メタ)アクリレート供給工程とを、更に備えることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
以下の例において、(1)加熱手段、攪拌手段及び温度計を備えた反応器を含む反応装置と、反応器に連結された蒸留塔、凝縮器及び冷却器を備えた蒸留装置とを有するアクリル酸ジメチルアミノエチル製造装置、並びに、(2)蒸留装置から回収されたアルキルアルコール精製物を、(メタ)アクリレート用製造用原料の一部として用いるための供給手段を備える(メタ)アクリレート製造装置を用いた。
また、ガスクロマトグラフィー(GC)の測定条件は以下の通りである。
カラム : 島津ジーエルシー社製「ZB−1」(溶融シリカキャピラリーカラ
ム、膜厚1.0μm、内径0.32mm、長さ60m)
カラム温度 : 60℃→170℃(昇温速度5℃/分),170℃→250℃
(昇温速度20℃/分),250℃で保持
GC注入口温度 : 350℃
検出器 : FID
検出器温度 : 350℃
キャリアガス : 窒素(流速4.3ml/分、スプリット比1/12)
【0042】
実施例1
反応器に、1時間あたり、1100g(12.3mol)のジメチルアミノエチルアルコールと、1470g(17.1mol)のアクリル酸メチルと、48g(0.3mol)のテトラメチルチタネートとを供給しながら、また、凝縮器の上部から、1時間あたり、1質量%フェノチアジンのメタノール溶液40g(1.3mol)を供給しながら、大気圧下、エステル交換反応を行った。この反応は、反応器内の反応原料を撹拌しながら行った。そして、蒸留塔の塔頂部の温度を62℃〜65℃に維持し、反応器内の反応液の温度を110℃に維持し、且つ、副生するメタノールと、反応液中のアクリル酸メチルとを、蒸留塔の塔頂部から還流比9で留出させながら(留出量:500g/時間)、エステル交換反応を行った。
塔頂部からの留出液を分析したところ、メタノールが約48質量%、アクリル酸メチルが約52質量%であった。また、メタノール以外の成分を、ガスクロマトグラフィー(GC)により調べたところ、ジメチルアミノエチルアルコール、トリメチルアミン及び1,4−ジメチルピペラジンが同定され、これらの含有量の合計は、全アミン含有量として750質量ppmであった。次いで、この留出液から50gを採取し、等体積の水を加えて、ノリタケカンパニーリミテド社製スタティックミキサーにより混合した。これを5分間静置して、2相に分離させた。得られた下相液のpHを、横河電機社製薬液洗浄形pH測定システム「PH8」(型式名)にて連続測定したところ、pH9.6(25℃)であった。
その後、反応液及び蒸留塔の塔頂部の温度を、いずれも、上記と同様として、蒸留塔における還流比を9から10に変更したところ、得られた留出液(以下、この条件による留出液を「副生アルキルアルコール含有組成物」という。)に含まれる全アミン含有量は450質量ppmとなった。一方、反応器からは、メタノールが約1質量%、アクリル酸メチルが約28質量%、ジメチルアミノエチルアルコールが約21質量%、アクリル酸ジメチルアミノエチルが約48質量%の反応液を回収した(回収量:2160g/時間)。この反応液から、触媒成分や未反応の反応原料を蒸留にて除去し、高純度のアクリル酸ジメチルアミノエチル(製品)を連続的に回収した。
【0043】
次に、上記で得られた、副生アルキルアルコール含有組成物を、イオン交換樹脂塔に充填したイオン交換樹脂(商品名「アンバーリスト16WET」、オルガノ社(ローム&ハース社)製)100mlに、連続的に接触させて、全アミン含有量が5質量ppm以下であり、実質的に、メタノール及びアクリル酸メチルからなるアルキルアルコール精製物を得た。このアルキルアルコール精製物について、含まれるメタノールを利用したアクリル酸メチルの製造に再利用可能と判断したので、アクリル酸メチル製造装置に供給した。
一方、回収されたアルキルアルコール精製物に対して、以下の試験に供した。即ち、アルキルアルコール精製物を、50g採取し、これに等体積の水を加えた。その後、スタティックミキサーにより混合し、静置して、2相に分離させた。次いで、下相液を回収して、そのpHを、横河電機社製薬液洗浄形pH測定システム「PH8」(型式名)にて連続測定した。これにより、pH6(25℃)を得た。
その後、引き続いて、イオン交換樹脂塔から、アルキルアルコール精製物を連続的に回収して、1時間あたり50g採取し続けて、同様の試験を行った。イオン交換樹脂への通液を開始してから115時間経過したところで、上記試験により得られた下相液のpHを測定したところ、pH>7となった。ここで、アルキルアルコール精製物を(メタ)アクリル酸アルキルエステル製造装置に供給するのを中止した。このとき、回収されたアルキルアルコール精製物における全アミン含有量を測定したところ、150質量ppmであった。ここで、イオン交換樹脂が破過したと判断されたので、イオン交換樹脂の硫酸水溶液による再生を行った。そして、再度、副生アルキルアルコール含有組成物を、上記イオン交換樹脂に接触させて、アルキルアルコール精製物を回収した。このアルキルアルコール精製物に対しても、上記と同様の試験を行い、pH6(25℃)を得た。また、全アミン含有量は5質量ppm以下であった。このように、1時間毎に、アルキルアルコール精製物の一部を、採取し続けて、上記試験によるpH管理を行い、pH<6を維持するようにアルキルアルコール精製物を回収して、順次、アクリル酸メチル製造装置に供給し、メタノールとアクリル酸とを反応させて、アクリル酸メチルの効率的な製造を行うことができた。
【0044】
実施例2
反応器に、1時間あたり、800g(8.9mol)のジメチルアミノエチルアルコールと、1220g(9.5mol)のアクリル酸ブチルと、85g(0.3mol)のテトラブチルチタネートとを供給しながら、また、凝縮器の上部から、1時間あたり、1質量%フェノチアジンのメタノール溶液60g(0.8mol)を供給しながら、30kPaの真空下、エステル交換反応を行った。この反応は、反応器内の反応原料を撹拌しながら行った。そして、蒸留塔の塔頂部の温度を78℃〜79℃に維持し、反応器内の反応液の温度を115℃に維持し、且つ、副生するブタノールと、反応液中のアクリル酸ブチルとを、蒸留塔の塔頂部から還流比5で留出させながら(留出量:570g/時間)、エステル交換反応を行った。
塔頂部からの留出液を分析したところ、ブタノールが約89質量%、アクリル酸ブチルが約11質量%であった。また、ブタノール以外の成分を、ガスクロマトグラフィー(GC)により調べたところ、ジメチルアミノエチルアルコール、トリメチルアミン及び1,4−ジメチルピペラジンが同定され、これらの含有量の合計は、全アミン含有量として640質量ppmであった。次いで、この留出液から50gを採取し、等体積の水を加えて、ノリタケカンパニーリミテド社製スタティックミキサーにより、横河電機社製薬液洗浄形pH測定システム「PH8」(型式名)にて連続測定したところ、pH9.5(30℃)であった。
その後、反応液及び蒸留塔の塔頂部の温度を、いずれも、上記と同様として、蒸留塔における還流比を9から10に変更したところ、得られた留出液(以下、この条件による留出液を「副生アルキルアルコール含有組成物」という。)に含まれる全アミン含有量は500質量ppmとなった。一方、反応器からは、ブタノールが約1質量%、アクリル酸ブチルが約22質量%、ジメチルアミノエチルアルコールが約15質量%、アクリル酸ジメチルアミノエチルが約57質量%の反応液を回収した(回収量:1590g/時間)。この反応液から、触媒成分や未反応の反応原料を蒸留にて除去し、高純度のアクリル酸ジメチルアミノエチル(製品)を連続的に回収した。
【0045】
次に、上記で得られた、副生アルキルアルコール含有組成物を、イオン交換樹脂塔に充填したイオン交換樹脂(商品名「アンバーリスト16WET」、オルガノ社(ローム&ハース社)製)100mlに、連続的に接触させて、全アミン含有量が3質量ppm以下であり、実質的に、メタノール及びアクリル酸メチルからなるアルキルアルコール精製物を得た。このアルキルアルコール精製物について、含まれるブタノールを利用したアクリル酸ブチルの製造に再利用可能と判断したので、アクリル酸ブチル製造装置に供給した。
一方、回収されたアルキルアルコール精製物に対して、以下の試験に供した。即ち、アルキルアルコール精製物を、50g採取し、これに等体積の水を加えた。その後、スタティックミキサーにより混合し、静置して、2相に分離させた。次いで、下相液を回収して、そのpHを、横河電機社製薬液洗浄形pH測定システム「PH8」(型式名)にて連続測定した。これにより、pH6(30℃)を得た。
その後、引き続いて、イオン交換樹脂塔から、アルキルアルコール精製物を連続的に回収して、1時間あたり50g採取し続けて、同様の試験を行った。イオン交換樹脂への通液を開始してから110時間経過したところで、上記試験により得られた下相液のpHを測定したところ、pH>8となった。ここで、アルキルアルコール精製物を(メタ)アクリル酸アルキルエステル製造装置に供給するのを中止した。このとき、回収されたアルキルアルコール精製物における全アミン含有量を測定したところ、200質量ppmであった。ここで、イオン交換樹脂が破過したと判断されたので、イオン交換樹脂の硫酸水溶液による再生を行った。そして、再度、副生アルキルアルコール含有組成物を、上記イオン交換樹脂に接触させて、アルキルアルコール精製物を回収した。このアルキルアルコール精製物に対しても、上記と同様の試験を行い、pH6(30℃)を得た。また、全アミン含有量は3質量ppm以下であった。このように、1時間毎に、アルキルアルコール精製物の一部を、採取し続けて、上記試験によるpH管理を行い、pH<6を維持するようにアルキルアルコール精製物を回収して、順次、アクリル酸ブチル製造装置に供給し、ブタノールとアクリル酸とを反応させて、アクリル酸ブチルの効率的な製造を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールの反応により得られた、アミノ基含有(メタ)アクリレート以外の成分から、副生したアルキルアルコールを含むアルキルアルコール精製物であって、且つ、アミン類の含有が抑制されたアルキルアルコール精製物を回収することができる。そして、このアルキルアルコール精製物を用いて、安定に且つ無駄なく、(メタ)アクリレートの製造(エステル化反応)に有効活用することができる。また、監視工程の作業性が高く、簡便に且つ迅速に進めることができるため、高い経済効率を有する、アミノ基含有(メタ)アクリレートの連続製造に好適である。
また、本発明の方法により得られるアルキルアルコール精製物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの製造用原料としてだけでなく、系内の洗浄等においても好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート及びアミノアルキルアルコールを反応原料として、アミノ基含有(メタ)アクリレートを製造する方法において、
エステル交換触媒の存在下、上記(メタ)アクリレート及び上記アミノアルキルアルコールを反応させる反応工程と、
上記反応工程により得られた反応液であって、上記(メタ)アクリレート、上記アミノアルキルアルコール、上記アミノ基含有(メタ)アクリレート、及び、副生したアルキルアルコールを含む反応液を加熱し、該副生アルキルアルコールを蒸留する蒸留工程と、
上記蒸留工程により得られた副生アルキルアルコール含有組成物を、イオン交換樹脂に接触させる精製工程と、
上記精製工程により得られたアルキルアルコール精製物のpHを測定する監視工程と、を備え、
上記アルキルアルコール精製物を、上記(メタ)アクリレートの製造原料の少なくとも一部として再利用することを特徴とするアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項2】
上記蒸留工程において、上記(メタ)アクリレート及び上記副生アルキルアルコールを共沸させる請求項1に記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項3】
上記イオン交換樹脂が酸性イオン交換樹脂である請求項1又は2に記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項4】
上記監視工程において、上記アルキルアルコール精製物と、水とを混合し、その後、静置して、相分離した下相液のpHを測定する請求項1乃至3のいずれかに記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項5】
上記アルキルアルコール精製物の前処理により得られた上記下相液のpHが、pH7以下にあるときに、該アルキルアルコール精製物を、上記(メタ)アクリレートの製造原料の少なくとも一部として再利用する請求項4に記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項6】
上記反応工程、上記蒸留工程、上記精製工程及び上記監視工程を連続的に且つそれぞれを継続して行い、上記アミノ基含有(メタ)アクリレートを連続的に製造する請求項1乃至5のいずれかに記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。
【請求項7】
上記副生アルキルアルコール用いて、上記(メタ)アクリレートを製造し、該(メタ)アクリレートを反応工程に供給する請求項1乃至6のいずれかに記載のアミノ基含有(メタ)アクリレートの製造方法。

【公開番号】特開2011−157291(P2011−157291A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19408(P2010−19408)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】