アミノ末端修飾ペプチドの分離方法および分離用組成物
【課題】多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態において、N末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができる技術を提供する。
【解決手段】アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離する方法であって、アミノ末端非修飾ペプチドのα-アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させて該アミノ末端非修飾ペプチドを該イソシアネート結合樹脂に結合させることにより、ペプチド混合物から該アミノ末端非修飾ペプチドを除去することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの分離方法等を提供する。
【解決手段】アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離する方法であって、アミノ末端非修飾ペプチドのα-アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させて該アミノ末端非修飾ペプチドを該イソシアネート結合樹脂に結合させることにより、ペプチド混合物から該アミノ末端非修飾ペプチドを除去することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの分離方法等を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ末端修飾ペプチドの分離方法および分離用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ末端(以下、N末端と記すこともある。)が修飾されたペプチド(以下、N末端修飾ペプチドと記すこともある。)を同定する方法としては、例えば、タンパク質の断片化により生成される全てのペプチドをエドマン分解法に供してN末端修飾ペプチドを同定する方法や、タンパク質中のリジン残基のε−アミノ基を保護した後に該タンパク質を断片化して生成されるペプチドをアセチル化処理し、該アセチル化処理前後の試料の逆相クロマトグラフィーにおける溶出位置の比較からタンパク質のN末端修飾ペプチドを同定する方法(特許文献1参照)等が知られている。
【特許文献1】特開平8−27180号公報(平成8(1996)年1月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの方法は、必要工程数が多い、操作が煩雑である等の点から、必ずしも満足できる方法とは言い難い。また、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態(すなわち、粗精製段階)では、タンパク質(ペプチド)の内部配列に由来するペプチドが多数を占めるため、N末端修飾ペプチドの同定が妨害される。よって、上述したような方法は、比較的精製された状態でのペプチドのN末端解析には有効であるが、粗精製段階でのN末端修飾ペプチドの同定には有効でない。このような方法を用いてN末端修飾ペプチドを同定するためには多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態からN末端修飾ペプチドを分離する必要があった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができるN末端修飾ペプチドの分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離する方法であって、アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させて該アミノ末端非修飾ペプチドを該イソシアネート結合樹脂に結合させることにより、ペプチド混合物から該アミノ末端非修飾ペプチドを除去することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
[発明2]
上記ペプチド混合物が生体試料由来のペプチド混合物である発明1に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
[発明3]
アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基との選択的な反応が酸性条件下で行われる発明1又は2に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
[発明4]
発明1〜3のいずれか一項に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法により分離された該アミノ末端修飾ペプチドを質量分析することによって同定するアミノ末端修飾ペプチドの同定方法。
[発明5]
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離するための組成物であって、イソシアネート結合樹脂を含んでいることを特徴とするアミノ末端修飾ペプチド分離用組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
生体内において、タンパク質は、翻訳後に種々のプロセシングや修飾を受け、標的部位に移行し、機能を持ったタンパク質に成熟する。メチオニンアミノペプチダーゼによるN末端翻訳開始メチオニンの切断や、分泌タンパク質でみられるN末端シグナルペプチドの除去などは、N末端プロセシングの代表的な例である。タンパク質のN末端の修飾、例えば、アセチル化、フォルミル化、ピログルタミル化、ミリストイル化などは、タンパク質に一般的に生じる翻訳後修飾である。例えば、哺乳類においては90%以上、酵母においては40%以上の細胞質タンパク質が、N末端アセチル化されているといわれている。細菌のタンパク質では、ribosomal proteinなどの僅かな例を除いて、N末端はアセチル化されていないといわれていたが、最近、古細菌由来タンパク質のN末端網羅的解析が行われ、約20%のタンパク質はN末端がアセチル化されていると報告されている。
【0009】
生体内で実際に機能しているタンパク質を網羅的に解析するプロテオミクスにおいて、タンパク質のN末端領域に着目した網羅的な解析(N−terminome)が着目され、最近、タンパク質のN末端ペプチドの網羅的な解析手法に関する報告が数多くなされている。N末端プロセシングや翻訳後修飾は、主に細胞内でのタンパク質の安定化や局在の制御に関するものであったが、ある種のプロテアーゼによるN末端領域のプロセシングは、タンパク質の活性制御、生体機能の制御に密接に関連しており、こうしたプロセシングの解明は、生理機能のみならず、疾病の解明や新たな治療薬の開発にもつながるものと考えられている。
【0010】
生理活性ペプチドもタンパク質翻訳後プロセシング産物の一種である。生理活性ペプチドのN末端部分の修飾としては、N末端ピログルタミル化やN末端アセチル化が知られている。タンパク質のN末端は様々な修飾や多様な切断を受ける部位であり、その構造は生体内での機能と密接に結びついている。また、ペプチドーム解析においては、ペプチドN末端の修飾は機能と密接に結びついていることから、N末端修飾ペプチドにフォーカスをあてた解析法は、新規な生理活性ペプチドを探索する上で有効な方法になるものと考えられる。
【0011】
タンパク質やペプチドのN末端配列を解析する上で重要な技術として知られているエドマン分解法では、N末端が修飾されたタンパク質やペプチドは解析不可能である。また、解析には高純度の試料が必要なことから、プロテオームやペプチドームなどの網羅的解析には適していない。質量分析法は、N末端が修飾されたタンパク質やペプチドでも解析可能であり、タンパク質の同定や配列決定に有効な手法といえる。しかし、実際には、タンパク質をトリプシンなどの酵素により切断し、生じたペプチド混合物を質量分析するので、質量分析法を用いたタンパク質の解析では、タンパク質を切断してから測定する必要があり、タンパク質の末端情報が失われてしまう。従って、ペプチド混合物中からN末端ペプチドを効率的に同定することは困難であった。また、生体に内在するペプチドの解析においては、非常に複雑な混合物であるために、N末端修飾ペプチドや他の修飾ペプチドは同定結果からしばしば漏れてしまうという問題があった。
【0012】
本発明を用いれば、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができる。また、後述する実施例において示すように、本発明を用いて得られたN末端修飾ペプチドの画分にはN末端非修飾ペプチドがほとんど含まれていない。このように、N末端非修飾ペプチドがサンプル中に多数含まれている場合であってもマススペクトルで検出し得ない程度までN末端非修飾ペプチドを除去し得るということは、容易に予測し得る程度をはるかに超える結果であり、イソシアネート結合樹脂の未知の属性といえる。すなわち、本発明は、イソシアネート結合樹脂の未知の属性により、N末端修飾ペプチドの分離という新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明である。
【0013】
本発明が適用されるタンパク質(ペプチド)サンプルは生体由来であっても、人為的に作製されたものであってもよい。例えば、N末端修飾ペプチドは、N末端が修飾されたタンパク質(以下、N末端修飾タンパク質と記すこともある。)を断片化することによって調製されてもよい。この断片化の方法は特に限定されず、例えば新生化学実験講座1タンパク質II一次構造(東京化学同人)等に記載の化学的断片化、消化酵素を用いた断片化等が挙げられる。より具体的には例えば、化学的断片化としてはBrCNによる断片化方法が挙げられ、消化酵素による断片化としてはトリプシン、キモトリプシン等を用いた消化が挙げられる。後述する実施例において示すように、尿または脳組織由来のタンパク質(ペプチド)サンプルを用いた場合であっても、本発明により簡便かつ迅速にN末端修飾ペプチドを分離することができる。
【0014】
イソシアネート結合樹脂とは、イソシアネート基が結合した樹脂であり、例えばアミノプロピル基を有する樹脂に二価反応性のNCOを有するMDI(メチレンジフェニル4,4’−ジイソシアネート)を作用させたResin−NCO等が挙げられる。Resin−NCOの調製法としては、アミノプロピル基を有する樹脂Poros20NH(50mg)をアセトニトリルで洗浄した後、400μLのアセトニトリル中に懸濁する。次に、この懸濁液に400μLの0.5M MDI/MeCNを添加し、攪拌しながら室温で60分間反応させ、反応完了後、樹脂をアセトニトリルで洗浄し、Speed Vacにて乾燥させ、乾燥後、樹脂をAr置換して−20℃で保存する方法が挙げられる。なお、イソシアネート結合樹脂は、イソシアネート基を結合させた樹脂であればよい。また、利用可能な樹脂は特に限定されず、当業者は、イソシアネート基の樹脂への結合方法を、利用する樹脂に応じて適宜選択し得る。
【0015】
アミノ末端修飾ペプチド分離用組成物は、上述したようなイソシアネート結合樹脂を含んでいればよい。本明細書中で使用される場合、「組成物」は各種成分が一物質中に含有されている形態であることが意図される。例えば、後述するように、イソシアネート結合樹脂をアセトニトリルに懸濁した態様であってもよい。また、アミノ末端修飾ペプチド分離用組成物は、アミノ末端修飾ペプチド分離用キットであり得る。本明細書中で使用される場合、「キット」は各種成分の少なくとも1つが別物質中に含有されている形態であることが意図される。本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは各材料を使用するための指示書を備えている。「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。アミノ末端修飾ペプチド分離用キットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備えていてもよい。さらに、アミノ末端修飾ペプチド分離用キットは、アミノ末端修飾ペプチドの分離/同定に必要な器具をあわせて備えていてもよい。
【0016】
本発明に好ましい「アミノ末端修飾」としては、アシル化が挙げられる。実施例において示すように、アミノ末端がアセチル化されているペプチド(N末端アセチル化ペプチド)が非常に効率よく検出されているが、本発明に好ましい「アミノ末端修飾」はアセチル化に限定されず、フォルミル化、ピログルタミル化、ミリストイル化などであってもよい。
【0017】
アミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させる条件としては、ペプチドのリジン残基のε−アミノ基には作用せず、且つアミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基と反応する条件であればよい。例えば、pHが約6の溶媒中にて室温でアミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基にイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基を反応させる方法を挙げることができる。この方法において、反応系に用いる溶媒は、後処理の簡便さを考慮すると揮発性のものが好ましく、例えばピリジン−酢酸等が挙げられる。
【0018】
より具体的なアミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させる方法としては、使用前にアセトニトリルで洗浄したResin−NCO(1.8mg)を45μLのアセトニトリルに懸濁し、このResin−NCO懸濁液に、0.05M リン酸−TEA(pH3.5)にペプチドを溶解させたペプチド溶解液5〜8μLを添加し、室温で20分間反応させる方法が挙げられる。
【0019】
この場合、アミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基がResin−NCOとResin−NH−CO−NH−ペプチドを形成することにより、アミノ末端非修飾ペプチドはResin−NCOにトラップ(結合)される。一方、N末端修飾ペプチド(Lys含有ペプチドを含む)は、Resin−NCOと反応せずに、溶液中にインタクトな状態として存在するため、遠心分離した後、上清から回収することが可能である。このような方法を用いることによって、アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端非修飾ペプチドを除去し、該混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離することができる。
【0020】
回収されたN末端修飾ペプチドは、質量分析法に供されることによって、同定が可能となる。このとき、例えば反応液に揮発性の溶媒を用いた場合は、溶媒を減圧下に溜去すればよく、不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合は脱塩処理を行った後、溶媒を減圧溜去すればよい。
【0021】
質量分析法によるN末端修飾ペプチドの同定方法については、質量分析できる方法であればよく、質量分析装置の種類やイオン化法は特に限定されない。例えば、Micromass M@LDI time−of−flight mass spectrometerや4700 Proteomics Analyzer (Applied Biosystems)等を挙げることができる。具体的な質量分析方法としては、マトリックスとしてCHCAを0.1% TFA−水/アセトニトリル(50/50)に溶解させた飽和溶液を使用し、このマトリックス溶液0.5μLとペプチド試料溶液0.5μLとを混合し、MALDI−TOFMS測定を行う方法が挙げられる。
【0022】
また、タンデム質量分析法に供することにより、N末端修飾ペプチドのN末端における修飾基の同定及びアミノ酸配列決定が可能であり、或いは新生化学実験化学講座1タンパク質II一次構造(東京化学同人)等の記載に準じてN末端修飾ペプチドのN末端修飾基を除去しエドマン分解法によりアミノ酸配列を解析することも可能である。
【0023】
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物は生体試料由来のペプチド混合物であってもよい。この生体試料由来のペプチド混合物としては、特に限定されないが、例えば、動物の尿中のタンパク質及びペプチドや、脳抽出物由来のタンパク質及びペプチド等が挙げられる。
【0024】
尿タンパク質消化物からのN末端修飾ペプチドの分離方法について、以下に述べる。
【0025】
尿試料10mLを限外ろ過フィルター(Amicon ultra−15 (10,000Da Cut off)に供し、タンパク質画分を収集する。尿タンパク質画分を乾燥した後、50mM 炭酸水素アンモニウム水溶液に溶解し、DTT(1.5mg)、ヨード酢酸(2mg)を添加し、50℃で60分間反応させることにより還元アルキル化処理する。反応後に、限外ろ過フィルターを用いて反応試薬を除去し、トリプシン(1.53μg)を添加し、37℃で12時間反応させることにより尿タンパク質トリプシン消化物を得る。ゲルろ過カラムTSK−GEL G2000SW(7.5×300mm)を、0.1%TFA−H2O/アセトニトリル=90/10の移動相を用いて平衡化し、尿タンパク質トリプシン消化物をカラムに供し、ペプチド画分として保持時間17分〜25分の画分を収集する。
【0026】
得られた試料(Transferrinトリプシン消化物換算:約7nmol)を35μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)に溶解し、200pmol/μL試料とする。本試料溶液1μL(200pmol)に0.1M リン酸−TEA(pH3.5)を5μL添加し、合成ペプチドR86−1及びR86−2(各5pmol)をスパイクし、アセトニトリル45μLを加える。試料溶液の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMS測定試料として取り出す(反応前試料)。試料溶液に3.6mgのResin−NCOを添加し、室温にて20分間攪拌し、反応後試料の上清を一部(0.5μL)取り出し、MALDI−TOFMS測定試料とする(反応後試料)。反応後上清試料は、乾燥させた後に、質量分析解析試料として使用する。
【0027】
なお、R86−1はAc−Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu−Ser−Tyr−Pro−Leu−Lys−OHからなるN末端アミノ基がアセチル基によって修飾されている合成ペプチドであり、R86−2はNH2−Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu−Ser−Tyr−Pro−Leu−Lys−OHからなるN末端アミノ基が修飾されていない合成ペプチドである。
【0028】
尿ペプチドからのN末端修飾ペプチドの分離方法について、以下に述べる。尿(10mL分)粗精製タンパク質のゲルろ過ペプチド画分試料乾燥品(Transferrinトリプシン消化物換算:約5nmol)を25μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)に溶解し、200pmol/μL溶液とする。本試料溶液5μL(尿換算2mL)に0.1M リン酸−TEA(pH3.5)を5μL添加し、アセトニトリル90μLをさらに添加する。試料溶液の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMS測定試料として取り出す(反応前試料)。試料溶液に9mgのResin−NCOを添加し、室温にて20分間攪拌し、反応後試料の上清を一部(0.5μL)取り出し、MALDI−TOFMS測定試料とする(反応後試料)。反応後上清試料は、乾燥させた後に、質量分析解析試料として使用する。
【0029】
脳ペプチドからのN末端修飾ペプチドの分離方法について、以下に述べる。
【0030】
ラット脳組織(約1g)を沸騰した熱水(5ml)に入れ、10分間煮沸する。これを冷却した後、最終濃度1Mとなるように酢酸を添加する。組織をホモジナイズした後に遠心分離し、回収した上清を4℃に冷却してアセトン沈殿(アセトン濃度66%)を行う。上清を乾燥した後に、0.1%TFA水に溶解してC18カラムに供する。0.1% TFA水および10%アセトニトリル含有0.1% TFA水でカラムを洗浄した後、65%アセトニトリル含有0.1% TFA水で溶出した溶出液をペプチド画分とする。
【0031】
ペプチド画分の乾燥品1mg(ラット脳1/20量)を、1M酢酸水溶液500μLに溶解し、この溶液をMicrocon−10限外ろ過フィルターに入れた後に、遠心分離する。低分子量画分(LMW画分)を回収かつ乾燥したものを、Resin−NCO処理試料とする。Microcon−10 LMW画分乾燥試料に5μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルを添加して、試料を溶解する。溶液0.5μLを取り出し、MALDI−TOFMS試料とする(Resin−NCO処理前試料)。試料溶液に、合成ペプチドR86−1を2pmolスパイクし、3.6mgのResin−NCO樹脂を添加して、室温で20分間反応させる。反応後試料の上清一部(0.5μL)取り出し、MALDI−TOFMS試料とする(Resin−NCO処理後試料)。反応後上清試料は、乾燥させた後に、質量分析解析試料として使用する。
【0032】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0033】
次に、試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
〔試験例1:N末端修飾タンパク質Calmodulin(CaM)の分離〕
N末端修飾タンパク質CaMを用いて、本発明の方法によるN末端ペプチド分離について評価した。図1A〜図1Bは、CaMのトリプシン消化物(30pmol)を7μLの0.05M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルに溶解した溶液(0.5μL)のMALDIマススペクトルであり、図1AがCaMトリプシン消化物のMALDIマススペクトル、図1BがResin−NCO処理後のMALDIマススペクトルである。CaMのN末端はアセチル化されていることが報告されており、m/z1563がN末端由来ペプチドAc−ADQLTEEQIAEFK(配列番号1)である。他の印をつけたピークは内部由来のペプチドである。1.8mgのResin−NCOとのインキュベーション後、溶液の一部(0.5μL)を取り出し、MALDIマススペクトルを取得した。CaM内部配列由来のペプチドピークは全て消失し、N末端由来のピーク(m/z 1563)のみが検出された。本N末端由来ペプチド断片は、Lys含有ペプチドであるが、Resin−NCOと反応することなく、溶媒中から回収された。本試験例に示すように、タンパク質中のLysを保護処理することなく、トリプシン消化混合物から、N末端由来のペプチドが分離できた。
【0035】
〔試験例2:N末端修飾タンパク質チトクロムcの分離〕
N末端修飾タンパク質であるチトクロムcをキモトリプシンにより切断した。溶媒0.05M リン酸−TEA(pH3.5)に溶解したチトクロムc−キモトリプシン消化物(40pmol/7μL)に、アセトニトリル45μLを添加し、溶液の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMSで分析した(図2A〜図2B)。帰属できたチトクロムc−キモトリプシン消化物に印をつけた(図2A)。1.8mgのResin−NCOを添加して反応させた後のMALDIマススペクトルが図2Bである。図に示すように、N末端由来ペプチドであるm/z 1162が検出された。MS/MSを行い、チトクロムcのN末端由来ペプチドAc−GDVEKGKKIF(配列番号2)であることが確認できた。このペプチドは、Lys3個を含むが、樹脂にトラップされることなく、溶液中から回収することができた。このように、本発明の方法は、断片化に通常用いられるトリプシン以外でも利用でき、N末端ペプチドの分離、同定法として汎用性が高く、有効である。
【0036】
〔試験例3:尿タンパク質トリプシン消化物からのN末端修飾ペプチドの分離〕
図3Aは、尿タンパク質トリプシン消化物200pmol(Transferrinトリプシン消化物換算量)に、合成ペプチドR86−1及びR86−2(各5pmol、R86−1、R86−2はそれぞれ、Ac−YGGFLSYPLK及びNH2−YGGFLSYPLK配列を有する合成ペプチド(配列番号6))を添加した試料に対して、5μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルで溶解した試料の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMSで分析したスペクトルである。非常に多数の尿タンパク質トリプシン消化物由来のピークが検出された。試料中の添加したペプチドの濃度は100fmol/μLであり、図3A中のMALDIマススペクトル中にも強度は弱いながら、添加したペプチドが検出されていた。図3Bは、尿タンパク質消化物試料に3.5mgのResin−NCOを添加して反応させた後のMALDIマススペクトルである。添加したペプチドのうち、N末端未修飾ペプチドであるR86−2のピークは、反応後に消失した。一方、N末端修飾ペプチドであるR86−1のピークは、m/z 1186にはっきりと検出された。本結果は、多数のペプチドが混在する複雑な生体試料においても、Resin−NCOはN末端未修飾ペプチドと効率よく反応、結合し、機能することを示している。実際に新たに出現したピークがN末端修飾ペプチドであるかどうかを調べるため、MS/MSスペクトルを取得し、各ピークの同定を行った。各ピークのMALDI−TOF/TOFマススペクトルを取得し、Mascotによってペプチドの同定を行った。表1に同定結果をまとめた。矢印で示した主要なピークは全てN末端修飾ペプチドであることが判明し、それらの構造は既に報告されているものであった。
【0037】
【表1】
【0038】
〔試験例4:尿ペプチド画分(〜10kDa)のN末端修飾ペプチドの分離〕
図4A〜図4Dは、尿ペプチド画分試料1nmol(Transferrinトリプシン消化物換算量)を、10μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、90μLのアセトニトリルで溶解した試料の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMSで分析したスペクトルである。尿ペプチド画分にはUromodulin由来のペプチドが多量に含まれており(14,15)、図4Aにおいても、Uromodulinの断片ペプチドが主ピークとして検出されている(m/z 1911,1680)。図4Aの一部拡大図を図4Cに示す。図4Bは、試料溶液に9mgのResin−NCOを添加して反応させた後の上清のMALDIマススペクトルである。図4Bの一部拡大図を図4Dに示す。Resin−NCOを使用することにより、溶液中に多量に存在したUromodulin由来ペプチドのピークは消失した。反応後のスペクトルをみると、N末端修飾ペプチドと考えられる新たなピークが検出された。尿ペプチド画分試料については、Resin−NCOを使用することにより、主要成分であるUromodulin由来ペプチドが除去され、N末端修飾ペプチドと予想されるマイナー成分の検出が可能であることが示された。
【0039】
〔試験例5:脳ペプチド中のN末端修飾ペプチドの分離〕
図5Aは、ラット脳ペプチド画分(ラット脳1/20)に、5μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルを添加し、一部(0.5μL)をMALDI−TOFMS分析した結果である。図5Aの一部拡大図を図5Cに示す。多数のペプチドピークが検出されている。図5Bは、3.6mgのResin−NCOを添加して反応させた後のMALDIマススペクトルである。図5Bの一部拡大図を図5Dに示す。反応前に検出されていたピークのほとんどは消失し、N末端修飾ペプチドと考えられる新たなピークが検出された。NanoLC−MS/MSを用いて、Resin−NCO処理後の試料ペプチド(修飾ペプチド)の分離、同定をさらに行い、表2に示す7種類のN末端修飾ペプチドの同定結果を得た(Mascot score 30以上)。
【0040】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端由来のペプチドをより簡便に分離することができるN末端修飾ペプチド分離用組成物、およびN末端修飾ペプチドの分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】試験例1の結果を示した図である。
【図1B】試験例1の結果を示した図である。
【図2A】試験例2の結果を示した図である。
【図2B】試験例2の結果を示した図である。
【図3A】試験例3の結果を示した図である。
【図3B】試験例3の結果を示した図である。
【図4A】試験例4の結果を示した図である。
【図4B】試験例4の結果を示した図である。
【図4C】試験例4の結果を示した図である。
【図4D】試験例4の結果を示した図である。
【図5A】試験例5の結果を示した図である。
【図5B】試験例5の結果を示した図である。
【図5C】試験例5の結果を示した図である。
【図5D】試験例5の結果を示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ末端修飾ペプチドの分離方法および分離用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ末端(以下、N末端と記すこともある。)が修飾されたペプチド(以下、N末端修飾ペプチドと記すこともある。)を同定する方法としては、例えば、タンパク質の断片化により生成される全てのペプチドをエドマン分解法に供してN末端修飾ペプチドを同定する方法や、タンパク質中のリジン残基のε−アミノ基を保護した後に該タンパク質を断片化して生成されるペプチドをアセチル化処理し、該アセチル化処理前後の試料の逆相クロマトグラフィーにおける溶出位置の比較からタンパク質のN末端修飾ペプチドを同定する方法(特許文献1参照)等が知られている。
【特許文献1】特開平8−27180号公報(平成8(1996)年1月30日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの方法は、必要工程数が多い、操作が煩雑である等の点から、必ずしも満足できる方法とは言い難い。また、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態(すなわち、粗精製段階)では、タンパク質(ペプチド)の内部配列に由来するペプチドが多数を占めるため、N末端修飾ペプチドの同定が妨害される。よって、上述したような方法は、比較的精製された状態でのペプチドのN末端解析には有効であるが、粗精製段階でのN末端修飾ペプチドの同定には有効でない。このような方法を用いてN末端修飾ペプチドを同定するためには多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態からN末端修飾ペプチドを分離する必要があった。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができるN末端修飾ペプチドの分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の発明を含む。
[発明1]
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離する方法であって、アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させて該アミノ末端非修飾ペプチドを該イソシアネート結合樹脂に結合させることにより、ペプチド混合物から該アミノ末端非修飾ペプチドを除去することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
[発明2]
上記ペプチド混合物が生体試料由来のペプチド混合物である発明1に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
[発明3]
アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基との選択的な反応が酸性条件下で行われる発明1又は2に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
[発明4]
発明1〜3のいずれか一項に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法により分離された該アミノ末端修飾ペプチドを質量分析することによって同定するアミノ末端修飾ペプチドの同定方法。
[発明5]
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離するための組成物であって、イソシアネート結合樹脂を含んでいることを特徴とするアミノ末端修飾ペプチド分離用組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
生体内において、タンパク質は、翻訳後に種々のプロセシングや修飾を受け、標的部位に移行し、機能を持ったタンパク質に成熟する。メチオニンアミノペプチダーゼによるN末端翻訳開始メチオニンの切断や、分泌タンパク質でみられるN末端シグナルペプチドの除去などは、N末端プロセシングの代表的な例である。タンパク質のN末端の修飾、例えば、アセチル化、フォルミル化、ピログルタミル化、ミリストイル化などは、タンパク質に一般的に生じる翻訳後修飾である。例えば、哺乳類においては90%以上、酵母においては40%以上の細胞質タンパク質が、N末端アセチル化されているといわれている。細菌のタンパク質では、ribosomal proteinなどの僅かな例を除いて、N末端はアセチル化されていないといわれていたが、最近、古細菌由来タンパク質のN末端網羅的解析が行われ、約20%のタンパク質はN末端がアセチル化されていると報告されている。
【0009】
生体内で実際に機能しているタンパク質を網羅的に解析するプロテオミクスにおいて、タンパク質のN末端領域に着目した網羅的な解析(N−terminome)が着目され、最近、タンパク質のN末端ペプチドの網羅的な解析手法に関する報告が数多くなされている。N末端プロセシングや翻訳後修飾は、主に細胞内でのタンパク質の安定化や局在の制御に関するものであったが、ある種のプロテアーゼによるN末端領域のプロセシングは、タンパク質の活性制御、生体機能の制御に密接に関連しており、こうしたプロセシングの解明は、生理機能のみならず、疾病の解明や新たな治療薬の開発にもつながるものと考えられている。
【0010】
生理活性ペプチドもタンパク質翻訳後プロセシング産物の一種である。生理活性ペプチドのN末端部分の修飾としては、N末端ピログルタミル化やN末端アセチル化が知られている。タンパク質のN末端は様々な修飾や多様な切断を受ける部位であり、その構造は生体内での機能と密接に結びついている。また、ペプチドーム解析においては、ペプチドN末端の修飾は機能と密接に結びついていることから、N末端修飾ペプチドにフォーカスをあてた解析法は、新規な生理活性ペプチドを探索する上で有効な方法になるものと考えられる。
【0011】
タンパク質やペプチドのN末端配列を解析する上で重要な技術として知られているエドマン分解法では、N末端が修飾されたタンパク質やペプチドは解析不可能である。また、解析には高純度の試料が必要なことから、プロテオームやペプチドームなどの網羅的解析には適していない。質量分析法は、N末端が修飾されたタンパク質やペプチドでも解析可能であり、タンパク質の同定や配列決定に有効な手法といえる。しかし、実際には、タンパク質をトリプシンなどの酵素により切断し、生じたペプチド混合物を質量分析するので、質量分析法を用いたタンパク質の解析では、タンパク質を切断してから測定する必要があり、タンパク質の末端情報が失われてしまう。従って、ペプチド混合物中からN末端ペプチドを効率的に同定することは困難であった。また、生体に内在するペプチドの解析においては、非常に複雑な混合物であるために、N末端修飾ペプチドや他の修飾ペプチドは同定結果からしばしば漏れてしまうという問題があった。
【0012】
本発明を用いれば、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端修飾ペプチドをより簡便に分離することができる。また、後述する実施例において示すように、本発明を用いて得られたN末端修飾ペプチドの画分にはN末端非修飾ペプチドがほとんど含まれていない。このように、N末端非修飾ペプチドがサンプル中に多数含まれている場合であってもマススペクトルで検出し得ない程度までN末端非修飾ペプチドを除去し得るということは、容易に予測し得る程度をはるかに超える結果であり、イソシアネート結合樹脂の未知の属性といえる。すなわち、本発明は、イソシアネート結合樹脂の未知の属性により、N末端修飾ペプチドの分離という新たな用途への使用に適することを見いだしたことに基づく発明である。
【0013】
本発明が適用されるタンパク質(ペプチド)サンプルは生体由来であっても、人為的に作製されたものであってもよい。例えば、N末端修飾ペプチドは、N末端が修飾されたタンパク質(以下、N末端修飾タンパク質と記すこともある。)を断片化することによって調製されてもよい。この断片化の方法は特に限定されず、例えば新生化学実験講座1タンパク質II一次構造(東京化学同人)等に記載の化学的断片化、消化酵素を用いた断片化等が挙げられる。より具体的には例えば、化学的断片化としてはBrCNによる断片化方法が挙げられ、消化酵素による断片化としてはトリプシン、キモトリプシン等を用いた消化が挙げられる。後述する実施例において示すように、尿または脳組織由来のタンパク質(ペプチド)サンプルを用いた場合であっても、本発明により簡便かつ迅速にN末端修飾ペプチドを分離することができる。
【0014】
イソシアネート結合樹脂とは、イソシアネート基が結合した樹脂であり、例えばアミノプロピル基を有する樹脂に二価反応性のNCOを有するMDI(メチレンジフェニル4,4’−ジイソシアネート)を作用させたResin−NCO等が挙げられる。Resin−NCOの調製法としては、アミノプロピル基を有する樹脂Poros20NH(50mg)をアセトニトリルで洗浄した後、400μLのアセトニトリル中に懸濁する。次に、この懸濁液に400μLの0.5M MDI/MeCNを添加し、攪拌しながら室温で60分間反応させ、反応完了後、樹脂をアセトニトリルで洗浄し、Speed Vacにて乾燥させ、乾燥後、樹脂をAr置換して−20℃で保存する方法が挙げられる。なお、イソシアネート結合樹脂は、イソシアネート基を結合させた樹脂であればよい。また、利用可能な樹脂は特に限定されず、当業者は、イソシアネート基の樹脂への結合方法を、利用する樹脂に応じて適宜選択し得る。
【0015】
アミノ末端修飾ペプチド分離用組成物は、上述したようなイソシアネート結合樹脂を含んでいればよい。本明細書中で使用される場合、「組成物」は各種成分が一物質中に含有されている形態であることが意図される。例えば、後述するように、イソシアネート結合樹脂をアセトニトリルに懸濁した態様であってもよい。また、アミノ末端修飾ペプチド分離用組成物は、アミノ末端修飾ペプチド分離用キットであり得る。本明細書中で使用される場合、「キット」は各種成分の少なくとも1つが別物質中に含有されている形態であることが意図される。本明細書中において使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは各材料を使用するための指示書を備えている。「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピューター読み取り可能ディスクまたはテープ、CD−ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。アミノ末端修飾ペプチド分離用キットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備えていてもよい。さらに、アミノ末端修飾ペプチド分離用キットは、アミノ末端修飾ペプチドの分離/同定に必要な器具をあわせて備えていてもよい。
【0016】
本発明に好ましい「アミノ末端修飾」としては、アシル化が挙げられる。実施例において示すように、アミノ末端がアセチル化されているペプチド(N末端アセチル化ペプチド)が非常に効率よく検出されているが、本発明に好ましい「アミノ末端修飾」はアセチル化に限定されず、フォルミル化、ピログルタミル化、ミリストイル化などであってもよい。
【0017】
アミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させる条件としては、ペプチドのリジン残基のε−アミノ基には作用せず、且つアミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基と反応する条件であればよい。例えば、pHが約6の溶媒中にて室温でアミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基にイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基を反応させる方法を挙げることができる。この方法において、反応系に用いる溶媒は、後処理の簡便さを考慮すると揮発性のものが好ましく、例えばピリジン−酢酸等が挙げられる。
【0018】
より具体的なアミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させる方法としては、使用前にアセトニトリルで洗浄したResin−NCO(1.8mg)を45μLのアセトニトリルに懸濁し、このResin−NCO懸濁液に、0.05M リン酸−TEA(pH3.5)にペプチドを溶解させたペプチド溶解液5〜8μLを添加し、室温で20分間反応させる方法が挙げられる。
【0019】
この場合、アミノ末端非修飾ペプチドのN末端α−アミノ基がResin−NCOとResin−NH−CO−NH−ペプチドを形成することにより、アミノ末端非修飾ペプチドはResin−NCOにトラップ(結合)される。一方、N末端修飾ペプチド(Lys含有ペプチドを含む)は、Resin−NCOと反応せずに、溶液中にインタクトな状態として存在するため、遠心分離した後、上清から回収することが可能である。このような方法を用いることによって、アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端非修飾ペプチドを除去し、該混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離することができる。
【0020】
回収されたN末端修飾ペプチドは、質量分析法に供されることによって、同定が可能となる。このとき、例えば反応液に揮発性の溶媒を用いた場合は、溶媒を減圧下に溜去すればよく、不揮発性の塩を含む溶媒を用いた場合は脱塩処理を行った後、溶媒を減圧溜去すればよい。
【0021】
質量分析法によるN末端修飾ペプチドの同定方法については、質量分析できる方法であればよく、質量分析装置の種類やイオン化法は特に限定されない。例えば、Micromass M@LDI time−of−flight mass spectrometerや4700 Proteomics Analyzer (Applied Biosystems)等を挙げることができる。具体的な質量分析方法としては、マトリックスとしてCHCAを0.1% TFA−水/アセトニトリル(50/50)に溶解させた飽和溶液を使用し、このマトリックス溶液0.5μLとペプチド試料溶液0.5μLとを混合し、MALDI−TOFMS測定を行う方法が挙げられる。
【0022】
また、タンデム質量分析法に供することにより、N末端修飾ペプチドのN末端における修飾基の同定及びアミノ酸配列決定が可能であり、或いは新生化学実験化学講座1タンパク質II一次構造(東京化学同人)等の記載に準じてN末端修飾ペプチドのN末端修飾基を除去しエドマン分解法によりアミノ酸配列を解析することも可能である。
【0023】
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物は生体試料由来のペプチド混合物であってもよい。この生体試料由来のペプチド混合物としては、特に限定されないが、例えば、動物の尿中のタンパク質及びペプチドや、脳抽出物由来のタンパク質及びペプチド等が挙げられる。
【0024】
尿タンパク質消化物からのN末端修飾ペプチドの分離方法について、以下に述べる。
【0025】
尿試料10mLを限外ろ過フィルター(Amicon ultra−15 (10,000Da Cut off)に供し、タンパク質画分を収集する。尿タンパク質画分を乾燥した後、50mM 炭酸水素アンモニウム水溶液に溶解し、DTT(1.5mg)、ヨード酢酸(2mg)を添加し、50℃で60分間反応させることにより還元アルキル化処理する。反応後に、限外ろ過フィルターを用いて反応試薬を除去し、トリプシン(1.53μg)を添加し、37℃で12時間反応させることにより尿タンパク質トリプシン消化物を得る。ゲルろ過カラムTSK−GEL G2000SW(7.5×300mm)を、0.1%TFA−H2O/アセトニトリル=90/10の移動相を用いて平衡化し、尿タンパク質トリプシン消化物をカラムに供し、ペプチド画分として保持時間17分〜25分の画分を収集する。
【0026】
得られた試料(Transferrinトリプシン消化物換算:約7nmol)を35μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)に溶解し、200pmol/μL試料とする。本試料溶液1μL(200pmol)に0.1M リン酸−TEA(pH3.5)を5μL添加し、合成ペプチドR86−1及びR86−2(各5pmol)をスパイクし、アセトニトリル45μLを加える。試料溶液の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMS測定試料として取り出す(反応前試料)。試料溶液に3.6mgのResin−NCOを添加し、室温にて20分間攪拌し、反応後試料の上清を一部(0.5μL)取り出し、MALDI−TOFMS測定試料とする(反応後試料)。反応後上清試料は、乾燥させた後に、質量分析解析試料として使用する。
【0027】
なお、R86−1はAc−Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu−Ser−Tyr−Pro−Leu−Lys−OHからなるN末端アミノ基がアセチル基によって修飾されている合成ペプチドであり、R86−2はNH2−Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu−Ser−Tyr−Pro−Leu−Lys−OHからなるN末端アミノ基が修飾されていない合成ペプチドである。
【0028】
尿ペプチドからのN末端修飾ペプチドの分離方法について、以下に述べる。尿(10mL分)粗精製タンパク質のゲルろ過ペプチド画分試料乾燥品(Transferrinトリプシン消化物換算:約5nmol)を25μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)に溶解し、200pmol/μL溶液とする。本試料溶液5μL(尿換算2mL)に0.1M リン酸−TEA(pH3.5)を5μL添加し、アセトニトリル90μLをさらに添加する。試料溶液の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMS測定試料として取り出す(反応前試料)。試料溶液に9mgのResin−NCOを添加し、室温にて20分間攪拌し、反応後試料の上清を一部(0.5μL)取り出し、MALDI−TOFMS測定試料とする(反応後試料)。反応後上清試料は、乾燥させた後に、質量分析解析試料として使用する。
【0029】
脳ペプチドからのN末端修飾ペプチドの分離方法について、以下に述べる。
【0030】
ラット脳組織(約1g)を沸騰した熱水(5ml)に入れ、10分間煮沸する。これを冷却した後、最終濃度1Mとなるように酢酸を添加する。組織をホモジナイズした後に遠心分離し、回収した上清を4℃に冷却してアセトン沈殿(アセトン濃度66%)を行う。上清を乾燥した後に、0.1%TFA水に溶解してC18カラムに供する。0.1% TFA水および10%アセトニトリル含有0.1% TFA水でカラムを洗浄した後、65%アセトニトリル含有0.1% TFA水で溶出した溶出液をペプチド画分とする。
【0031】
ペプチド画分の乾燥品1mg(ラット脳1/20量)を、1M酢酸水溶液500μLに溶解し、この溶液をMicrocon−10限外ろ過フィルターに入れた後に、遠心分離する。低分子量画分(LMW画分)を回収かつ乾燥したものを、Resin−NCO処理試料とする。Microcon−10 LMW画分乾燥試料に5μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルを添加して、試料を溶解する。溶液0.5μLを取り出し、MALDI−TOFMS試料とする(Resin−NCO処理前試料)。試料溶液に、合成ペプチドR86−1を2pmolスパイクし、3.6mgのResin−NCO樹脂を添加して、室温で20分間反応させる。反応後試料の上清一部(0.5μL)取り出し、MALDI−TOFMS試料とする(Resin−NCO処理後試料)。反応後上清試料は、乾燥させた後に、質量分析解析試料として使用する。
【0032】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0033】
次に、試験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
〔試験例1:N末端修飾タンパク質Calmodulin(CaM)の分離〕
N末端修飾タンパク質CaMを用いて、本発明の方法によるN末端ペプチド分離について評価した。図1A〜図1Bは、CaMのトリプシン消化物(30pmol)を7μLの0.05M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルに溶解した溶液(0.5μL)のMALDIマススペクトルであり、図1AがCaMトリプシン消化物のMALDIマススペクトル、図1BがResin−NCO処理後のMALDIマススペクトルである。CaMのN末端はアセチル化されていることが報告されており、m/z1563がN末端由来ペプチドAc−ADQLTEEQIAEFK(配列番号1)である。他の印をつけたピークは内部由来のペプチドである。1.8mgのResin−NCOとのインキュベーション後、溶液の一部(0.5μL)を取り出し、MALDIマススペクトルを取得した。CaM内部配列由来のペプチドピークは全て消失し、N末端由来のピーク(m/z 1563)のみが検出された。本N末端由来ペプチド断片は、Lys含有ペプチドであるが、Resin−NCOと反応することなく、溶媒中から回収された。本試験例に示すように、タンパク質中のLysを保護処理することなく、トリプシン消化混合物から、N末端由来のペプチドが分離できた。
【0035】
〔試験例2:N末端修飾タンパク質チトクロムcの分離〕
N末端修飾タンパク質であるチトクロムcをキモトリプシンにより切断した。溶媒0.05M リン酸−TEA(pH3.5)に溶解したチトクロムc−キモトリプシン消化物(40pmol/7μL)に、アセトニトリル45μLを添加し、溶液の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMSで分析した(図2A〜図2B)。帰属できたチトクロムc−キモトリプシン消化物に印をつけた(図2A)。1.8mgのResin−NCOを添加して反応させた後のMALDIマススペクトルが図2Bである。図に示すように、N末端由来ペプチドであるm/z 1162が検出された。MS/MSを行い、チトクロムcのN末端由来ペプチドAc−GDVEKGKKIF(配列番号2)であることが確認できた。このペプチドは、Lys3個を含むが、樹脂にトラップされることなく、溶液中から回収することができた。このように、本発明の方法は、断片化に通常用いられるトリプシン以外でも利用でき、N末端ペプチドの分離、同定法として汎用性が高く、有効である。
【0036】
〔試験例3:尿タンパク質トリプシン消化物からのN末端修飾ペプチドの分離〕
図3Aは、尿タンパク質トリプシン消化物200pmol(Transferrinトリプシン消化物換算量)に、合成ペプチドR86−1及びR86−2(各5pmol、R86−1、R86−2はそれぞれ、Ac−YGGFLSYPLK及びNH2−YGGFLSYPLK配列を有する合成ペプチド(配列番号6))を添加した試料に対して、5μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルで溶解した試料の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMSで分析したスペクトルである。非常に多数の尿タンパク質トリプシン消化物由来のピークが検出された。試料中の添加したペプチドの濃度は100fmol/μLであり、図3A中のMALDIマススペクトル中にも強度は弱いながら、添加したペプチドが検出されていた。図3Bは、尿タンパク質消化物試料に3.5mgのResin−NCOを添加して反応させた後のMALDIマススペクトルである。添加したペプチドのうち、N末端未修飾ペプチドであるR86−2のピークは、反応後に消失した。一方、N末端修飾ペプチドであるR86−1のピークは、m/z 1186にはっきりと検出された。本結果は、多数のペプチドが混在する複雑な生体試料においても、Resin−NCOはN末端未修飾ペプチドと効率よく反応、結合し、機能することを示している。実際に新たに出現したピークがN末端修飾ペプチドであるかどうかを調べるため、MS/MSスペクトルを取得し、各ピークの同定を行った。各ピークのMALDI−TOF/TOFマススペクトルを取得し、Mascotによってペプチドの同定を行った。表1に同定結果をまとめた。矢印で示した主要なピークは全てN末端修飾ペプチドであることが判明し、それらの構造は既に報告されているものであった。
【0037】
【表1】
【0038】
〔試験例4:尿ペプチド画分(〜10kDa)のN末端修飾ペプチドの分離〕
図4A〜図4Dは、尿ペプチド画分試料1nmol(Transferrinトリプシン消化物換算量)を、10μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、90μLのアセトニトリルで溶解した試料の一部(0.5μL)をMALDI−TOFMSで分析したスペクトルである。尿ペプチド画分にはUromodulin由来のペプチドが多量に含まれており(14,15)、図4Aにおいても、Uromodulinの断片ペプチドが主ピークとして検出されている(m/z 1911,1680)。図4Aの一部拡大図を図4Cに示す。図4Bは、試料溶液に9mgのResin−NCOを添加して反応させた後の上清のMALDIマススペクトルである。図4Bの一部拡大図を図4Dに示す。Resin−NCOを使用することにより、溶液中に多量に存在したUromodulin由来ペプチドのピークは消失した。反応後のスペクトルをみると、N末端修飾ペプチドと考えられる新たなピークが検出された。尿ペプチド画分試料については、Resin−NCOを使用することにより、主要成分であるUromodulin由来ペプチドが除去され、N末端修飾ペプチドと予想されるマイナー成分の検出が可能であることが示された。
【0039】
〔試験例5:脳ペプチド中のN末端修飾ペプチドの分離〕
図5Aは、ラット脳ペプチド画分(ラット脳1/20)に、5μLの0.1M リン酸−TEA(pH3.5)、45μLのアセトニトリルを添加し、一部(0.5μL)をMALDI−TOFMS分析した結果である。図5Aの一部拡大図を図5Cに示す。多数のペプチドピークが検出されている。図5Bは、3.6mgのResin−NCOを添加して反応させた後のMALDIマススペクトルである。図5Bの一部拡大図を図5Dに示す。反応前に検出されていたピークのほとんどは消失し、N末端修飾ペプチドと考えられる新たなピークが検出された。NanoLC−MS/MSを用いて、Resin−NCO処理後の試料ペプチド(修飾ペプチド)の分離、同定をさらに行い、表2に示す7種類のN末端修飾ペプチドの同定結果を得た(Mascot score 30以上)。
【0040】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、多数のタンパク質(ペプチド)が混合している状態においてもN末端由来のペプチドをより簡便に分離することができるN末端修飾ペプチド分離用組成物、およびN末端修飾ペプチドの分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】試験例1の結果を示した図である。
【図1B】試験例1の結果を示した図である。
【図2A】試験例2の結果を示した図である。
【図2B】試験例2の結果を示した図である。
【図3A】試験例3の結果を示した図である。
【図3B】試験例3の結果を示した図である。
【図4A】試験例4の結果を示した図である。
【図4B】試験例4の結果を示した図である。
【図4C】試験例4の結果を示した図である。
【図4D】試験例4の結果を示した図である。
【図5A】試験例5の結果を示した図である。
【図5B】試験例5の結果を示した図である。
【図5C】試験例5の結果を示した図である。
【図5D】試験例5の結果を示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離する方法であって、
アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させて該アミノ末端非修飾ペプチドを該イソシアネート結合樹脂に結合させることにより、ペプチド混合物から該アミノ末端非修飾ペプチドを除去することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
【請求項2】
前記ペプチド混合物が生体試料由来のペプチド混合物であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
【請求項3】
アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基との選択的な反応が酸性条件下で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法により分離された該アミノ末端修飾ペプチドを質量分析することによって同定することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの同定方法。
【請求項5】
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離するための組成物であって、イソシアネート結合樹脂を含んでいることを特徴とするアミノ末端修飾ペプチド分離用組成物。
【請求項1】
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離する方法であって、
アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基とを選択的に反応させて該アミノ末端非修飾ペプチドを該イソシアネート結合樹脂に結合させることにより、ペプチド混合物から該アミノ末端非修飾ペプチドを除去することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
【請求項2】
前記ペプチド混合物が生体試料由来のペプチド混合物であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
【請求項3】
アミノ末端非修飾ペプチドのα−アミノ基とイソシアネート結合樹脂のイソシアネート基との選択的な反応が酸性条件下で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアミノ末端修飾ペプチドの分離方法により分離された該アミノ末端修飾ペプチドを質量分析することによって同定することを特徴とするアミノ末端修飾ペプチドの同定方法。
【請求項5】
アミノ末端修飾ペプチドとアミノ末端非修飾ペプチドとを含むペプチド混合物からアミノ末端修飾ペプチドを分離するための組成物であって、イソシアネート結合樹脂を含んでいることを特徴とするアミノ末端修飾ペプチド分離用組成物。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【公開番号】特開2009−184983(P2009−184983A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28091(P2008−28091)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年8月10日 大阪大学主催の「大阪大学博士論文公開発表審査会」に文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月14日 インターネットアドレス「http://pubs.acs.org/journals/ancham/index.html」「http://pubs3.acs.org/acs/journals/toc.page?incoden=ancham&indecade=0&involume=79&inissue=20」「http://pubs.acs.org/cgi−bin/abstract.cgi/ancham/2007/79/i20/abs/ac071294a.html」に発表
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(508040740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年8月10日 大阪大学主催の「大阪大学博士論文公開発表審査会」に文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月14日 インターネットアドレス「http://pubs.acs.org/journals/ancham/index.html」「http://pubs3.acs.org/acs/journals/toc.page?incoden=ancham&indecade=0&involume=79&inissue=20」「http://pubs.acs.org/cgi−bin/abstract.cgi/ancham/2007/79/i20/abs/ac071294a.html」に発表
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【出願人】(508040740)
【Fターム(参考)】
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