説明

アミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品およびその製造方法

【課題】アミノ酸系改質ポリアクリル繊維の機能性を阻害せずに広くテキスタイル関連の用途に利用できる繊維製品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と他繊維とを混用した繊維製品の製造方法であって、他繊維を原綿状態で染色した後、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を高架橋ポリアクリル系繊維に付与してなるアミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用し、その後、通常の後仕上げ紡績工程を経て紡績して得られた染色糸を編成、製織して混用繊維製品とすることを特徴とするアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再現性の高い安定した色調と染色堅牢度、霜降り調、杢調等の表現色豊かなファンシー調の色彩、吸湿性、発熱保温性、抗菌性、防臭性、スキンケア性などの機能に優れたアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品と、この混用繊維製品の製造方法とに関するものである。
【0002】
なお、本発明で言うアミノ酸系改質ポリアクリル繊維は、高架橋ポリアクリル系繊維に、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与したものであって、さらに詳しくは、例えば、アクリル繊維を原料にして、ニトリル基を一部加水分解してアミド基及びカルボン酸基を生成させ、更にその一部をヒドラジンなどで架橋させた繊維であり、通常ヒドラジン架橋による窒素含有量の増加が1.0〜10.0重量%であり、1.0〜5.0mmol/ gのカルボン酸基が、残部にはアミド基が導入された高架橋ポリアクリル系繊維に、アルギニン等のアミノ酸の付与量が繊維重量に対して0.05〜10%重量%程度、ピロリドリンカルボン酸の付与量が繊維に対して0.05〜5%重量程度付与されているものである。
【0003】
そしてその多くのものがpH緩衝力を持った性能を有しており、また吸湿性、抗菌性、防臭作用、スキンケア性なども併せて有する。
【背景技術】
【0004】
近年、快適性や肌に優しいことを謳った機能商品が多く開発されてきたが、その一つに、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与した高架橋ポリアクリル系繊維を混用した吸水発熱繊維製品が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与した高架橋ポリアクリル系繊維は、カルボン酸基とアミド基を持つという特異な化学構造を有しており、吸水吸湿時の発熱作用や抗菌性、防臭性機能、スキンケア性などが認められている。
【0006】
しかし、この繊維は、以下のような不都合をかかえている。
1) アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を、高架橋ポリアクリル系繊維を含む複合繊維に付与する際に、繊維に反応させるための充分な反応熱が必要となり、繊維に余分な熱ダメージを与えてしまう。
2) アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を、高架橋ポリアクリル系繊維を含む複合繊維に付与した後に、精練漂白染色加工などの強い後加工を行うと、繊維に反応したアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物の脱落が大きく、安定的な効果、採算性また染色性にも不安定要素を与える。
3) アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物は、繊維に染色されている染料色素の耐光堅牢度低下させる傾向にある。そのため過酷な屋外スポーツ用途での展開には制限がある。
4) 1)2)の不都合を解消するために、複合繊維の染色処理後や蛍光処理後に、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与することが考えられるが、この場合であっても、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を、高架橋ポリアクリル系繊維を含む複合繊維に付与するために長時間の熱処理が必要となるので、染料の熱変色により色相が不安定になる。
5) アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与した高架橋ポリアクリル系繊維と混用される他の繊維がポリエステル繊維などの場合、分散染色した後に、長時間の熱処理を施さなければならないので、分散染料が昇華し、スポーツ用途などの高い堅牢度基準に満たないこととなる。
6) ターコイズなどの一部特殊な鮮明染料に対して、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物は、加工変色を起こす。
【0007】
そこで、従来より、これらの不都合を解決する方法として、以下の方法が取られている。
(1)100℃〜120℃の低温で3分〜5分の低温長時間の熱処理を行なっている。
(2)耐光堅牢度の優れた染料で加工を行なっている。
(3)熱変色の少ない染料で加工を行なっている
(4)長時間の連続熱処理は、熱変色を促進させたり、機械的なモーター制御からも安定したスピードで加工できないので、数回にわけて熱処理工程を施している。
【特許文献1】特開2004−011051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の(1)(4)の方法の場合は、処理に時間がかかるので、加工数量が限られてしまうこととなり、実際に工業的な生産を行なうには、十分といえる加工スピードが得られない。
【0009】
また、上記従来の(2)の方法の場合は、優れた染料で加工を行なっても、屋外スポーツ用途に期待される品質スペックを充分に満たせることは難しく、また色相の再現性、発色性、染料コスト的にも不都合が生じることとなる。
【0010】
さらに、上記従来の(3)の方法の場合も、淡色やより白度の要求される蛍光晒などについては十分に補えるものではない。
【0011】
本発明者らは、上述したようなアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を高架橋ポリアクリル系繊維に付与されたものを含む混用繊維製品の染色及び製品の製造が困難であることに鑑み、機能性を阻害せずに且つ感性に富んだ繊維製品の製造について鋭意研究した結果、本発明に達した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明のアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品の製造方法は、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と他繊維とを混用した繊維製品の製造方法であって、他繊維を原綿状態で染色した後、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を高架橋ポリアクリル系繊維に付与してなるアミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用し、その後、通常の後仕上げ紡績工程を経て紡績して得られた染色糸を編成、製織して混用繊維製品とするものである。
【0013】
上記製造方法において、高架橋ポリアクリル系繊維の原綿に、吸尽法によってアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与加工してアミノ酸系改質ポリアクリル繊維とするものである。
【0014】
また、上記課題を解決するための本発明のアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品は、上記製造方法によって製造されるものである。
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で言う繊維製品とは、原綿状態で染色した他繊維と、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を高架橋ポリアクリル系繊維に付与してなるアミノ酸系改質ポリアクリル繊維と他繊維とを混用した紡績糸を用いて作られた織物、編物、布帛地が含まれる。
【0017】
これらの繊維製品は、肌着、靴下、手袋、マフラーなどのほか、スポーツウエア、紳士用衣服、寝装関連品(パジャマ、布団の側地、ベッドの側地、タオル、シーツ、枕の側地、等)カーシートの側地、カーテン、椅子の側地、座布団の側地、建装関連品、靴の中敷、靴の内張りなどに使用される。
【0018】
本発明で言うアミノ酸系改質ポリアクリル繊維は、高架橋ポリアクリル系繊維に、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物の付与量が高架橋ポリアクリル系繊維重量に対して0.05〜10%重量%程度、ピロリドリンカルボン酸の付与量が高架橋ポリアクリル系繊維に対して0.05〜5%重量程度付与されているものである。このアミノ酸系改質ポリアクリル繊維はpH緩衝力を持った性能を有しており、また吸湿性、抗菌性、防臭作用、スキンケア性なども併せて有する。
【0019】
アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物が付与される高架橋ポリアクリル系繊維は、アクリル繊維を原料にして、ニトリル基を一部加水分解してアミド基及びカルボン酸基を生成させ、更にその一部をヒドラジンなどで架橋させた繊維であり、通常ヒドラジン架橋による窒素含有量の増加が1.0〜10.0重量%であり、1.0〜5.0mmol/ gのカルボン酸基が、残部にはアミド基が導入されたものが用いられる。
【0020】
アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物としては、各種のアミノ酸を用いることができる。このアミノ酸は、タンパク質の構成単位で、タンパク質を加水分解して得ることができる。具体的なものとしては、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシンなどを挙げることができる。このアミノ酸は、合成されたものであってもよいし、天然成分由来のものであってもよい。また、1種のみを用いるものであってもよいし、複数種類を用いるものであってもよい。この有機化合物は、高架橋ポリアクリル系繊維の原綿段階で、この高架橋ポリアクリル系繊維に対して吸尽法で付与加工される。
【0021】
高架橋ポリアクリル系繊維に対して原綿段階で吸尽処理する利点としては、
1) 他の繊維に比べてこの高架橋ポリアクリル繊維は、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物に対する親和性が強く、吸尽率が高く、効率よく繊維に付与加工する事が可能である。
【0022】
原綿ではなくニットでの吸尽率の場合、混用される他繊維の親和性が低く、また親和性の高い中間架橋繊維の加工浴比(高架橋ポリアクリル繊維/加工浴)の比率も小さくなり、吸尽率も低くなる。
【0023】
またパディング法では、処理溶液に吸尽する時間が機械的に短く(最大5秒程度)、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物に対する、高架橋ポリアクリル系繊維の親和性を利用する事が難しい。
2) 高架橋ポリアクリル系繊維に対して原綿段階で吸尽処理するということは、混用される他繊維には、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物が付与されないこととなる。したがって、混用される他繊維は、染色時にアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物に邪魔されることがないので、屋外スポーツ用途にも十分耐えうる耐光堅牢度の確保、また処理による色相変化、色相の限定などの制約が発生しない。
【0024】
また、高架橋ポリアクリル系繊維は、染着座席が無く、染色されないために上記のような弊害を受ける事はない。
【0025】
ニットでの吸尽法、パディング法では、混用される他繊維(繊維全体)に、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与する事になり、他繊維に固着している染料が、これらの弊害を受ける事になる。
3) 高架橋ポリアクリル系繊維に対して原綿段階で吸尽処理するということは、混用される他繊維には、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物が付与されないこととなる。したがって、混用される他繊維は、固着に必要な熱処理が不要になり、繊維のダメージを軽減でき、また染料への熱ダメージによる変色も退色を防止する事が可能である。
【0026】
ニットでの吸尽法、パディング法では、加工剤を固着するために、強い熱処理が必要になり、混用する他繊維(繊維全体)に処理する事になる。熱処理に弱い生地は強度低下などの弊害を受ける事になる。
【0027】
また分散染料などは、長時間の熱処理によって昇華という悪い現象があり、摩擦堅牢度 洗濯堅牢度不良などの不都合も発生する。
【0028】
本発明で言う他繊維は、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用される繊維であって、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維 ポリウレタン繊維などの合成繊維およびポリ乳酸繊維、綿、麻、湿式セルローズ繊維(レーヨン、キュプラ、ポリノジック繊維等)、乾式セルローズ繊維(テンセル、リヨセル等)などの再生セルローズ繊維が挙げられる。特に、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維のpH緩衝によって、染色が困難になり易いポリウレタンを使った糸や、アミノ酸、タンパク質系の処理をした糸や、ポリ乳酸繊維を使った糸などの繊維製品の場合は、本発明の製造方法によって、商品レベルの品質に染色された繊維製品にすることができる。
【0029】
他繊維の原綿を染色する方法としては、それぞれの他繊維について通常行われている染色方法などによって行われる。この場合、他繊維の原綿は、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維のpH緩衝性の影響を受ける事なく染色できるために色相については安定し、またアミノ酸系改質ポリアクリル繊維も後に混用されるために、染色による熱水処理による赤変、染色加工剤の影響による効果の不安定、繊維へのダメージによるケバ吹き出し感による品位低下、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維の処理中の脱落が無いため、機能の低下が防げる。具体的には、パッケージ型機械を利用して染色することができる。この場合、パッケージ型機械としては、チーズ染色機、オーバマイヤー染色機械があげられる。
【0030】
染色する色については、特に限定されるものではなく、各種の色に染色することができる。このようにして染色処理を行なった他繊維の原綿を、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用した後、紡績工程で混紡して霜降り効果や杢効果の得られるファンシー調の糸が得られる。この際、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維は染色せず、このアミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用される他繊維を原綿状態のまま染色するので、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維のpH緩衝によって、特に染色が困難であったイエロー、サックス、オレンジなどのブライト系の色や、熱でアミノ酸系改質ポリアクリル繊維が赤変してピュアな色を出すことが困難であった白色であっても、所望の色目に染色された繊維製品として容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたように、本発明のアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品の製造方法によると、表色限界を生じることなく、安定した色相と品位を持つことができるとともに、混用繊維の混用具合によって霜降り状や杢状のファンシー調の製品が得られ、且つ、欠点とされていたアミノ酸系改質ポリアクリル繊維の毛羽の吹き出しも防止することができる。
【0032】
また、本発明の方法で得られた繊維製品は、スキンケア性、肌あたりの良さ、吸湿発熱保温性、吸湿性、抗菌防臭性、消臭性にも有用性が認められているので、これらの性能に染色安定性やアミノ酸系改質ポリアクリル繊維の毛羽の吹き出し防止などの効果も加わって、広くテキスタイル関連の用途に利用できるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
実施例中の%は、質量%を表す。
【0034】
[実施例1]
染色レサイプ 60℃×50min
黄味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.7%owf
赤味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.7%owf
青味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.7%owf
粉ボウショウ 100.0g/l
ソーダ灰(粉体) 15.0g/l
ソーピング条件 95℃×20min
リポトールRK−90G(日華化学株式会社) 1.0g/l
アミノ酸系改質ポリアクリル繊維30%と綿70%とからなる各種試験生地を上記の条件で染色した。染色後の各被染色生地は、破裂強度、耐光堅牢度、熱変色の各項目を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
綿の原綿を、中空状にまいてトップポールを形成し、このトップポールをトップキャリヤーに装てんしてパッケージ染色機で染色を行う。
【0036】
染色は、1:5の浴比で行い、60℃へは30分かけて昇温し、60℃の温度で50分染色を行った後、水洗、中和、湯洗い、ソーピング、湯洗い、水洗2回を行なった。
【0037】
その後、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用し、紡績して30番単糸の混紡糸を作り、22G×30inの編み機で220g/m2 の目付の編生地を編みたてする。
【0038】
このようにして得られた編生地は、液流染色機において1:12の浴比で、2.0g/lのアニオン系精練剤(ピッチランL100 日華化学株式会社製)の水溶液を60℃の温度で20分間維持することで編みたて油などの余分に生地に付着しているものを脱落させた後、水洗を2回行った。
【0039】
なお、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維は、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物、すなわちL−アルギニンを3重量%と、樹脂加工剤としてアクリル・ウレタン系複合樹脂、すなわち大日本インキ株式会社製造の「 ボンコートR3020(樹脂20重量%含有)」 を1重量%と、繊維架橋剤としてブロック化イソシアネート架橋剤、すなわち明性化学工業(株)の「 メイカネートMF」 を0.5重量%とを含有する水を溶媒とする加工液の処方を用いて、高架橋ポリアクリル繊維を、吸尽法で30℃で20分浸漬し、遠心脱水後(脱水率80%)、130℃で180秒間乾燥処理する。
【0040】
このようにしてアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を高架橋ポリアクリル系繊維に含む、原綿段階のアミノ酸系改質ポリアクリル繊維構造物を得た。
【0041】
[比較例1、比較例2]
高架橋ポリアクリル系繊維30%と綿70%とからなる30番単糸の混紡糸を、22G×30inの編み機で220g/m2 の目付の編生地に編みたてする。
【0042】
このようにして得られた編生地は、液流染色機において1:12の浴比で、2.0g/lのアニオン系精練剤(ピッチランL100 日華化学株式会社製)の水溶液を60℃の温度で20分間維持することで編みたて油などの余分に生地に付着しているものを脱落させた後、水洗を2回行った。
【0043】
ついで、この編生地について、液流染色機で染色を行う。
【0044】
染色は、1:12の浴比で行い、60℃へは30分かけて昇温し、60℃の温度で50分染色を行った後、水洗、中和、湯洗い、ソーピング、湯洗い、水洗2回を行った。
【0045】
その後、乾燥し、吸尽法(比較例1)とパディング法(比較例2)とによって、それぞれこの編生地にアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与させた。
【0046】
なお、吸尽法による編生地の処理は、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物、すなわちL−アルギニンを3重量%と、樹脂加工剤としてアクリル・ウレタン系複合樹脂、すなわち大日本インキ株式会社製造の「 ボンコートR3020(樹脂20重量%含有)」 を1重量%と、繊維架橋剤としてブロック化イソシアネート架橋剤、すなわち明性化学工業(株)の「 メイカネートMF」 を0.5重量%とを含有する水を溶媒とする加工液の処方を用いて、編生地を、吸尽法で30℃で20分浸漬し、遠心脱水後(脱水率80%)、130℃で180秒間乾燥処理する。
【0047】
このようにしてアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を含む、吸尽法による編生地を得た。
【0048】
また、パディング法による処理は、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物、すなわちL−アルギニンを3重量%と、樹脂加工剤としてアクリル・ウレタン系複合樹脂、すなわち大日本インキ株式会社製造の「 ボンコートR3020(樹脂20重量%含有)」 を1重量%と、繊維架橋剤としてブロック化イソシアネート架橋剤、すなわち明性化学工業(株)の「 メイカネートMF」 を0.5重量%とを含有する水を溶媒とする加工液の処方を用いて、編生地に、テンターを用いたパット/ドライ加工を行った。絞り率は80%、乾燥条件は130℃で180秒であった。
【0049】
このようにしてアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を含む、パディング法による編生地を得た。
【0050】
[実施例3]
染色レサイプ 130℃×30min
黄味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.5%owf
赤味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 2.0%owf
青味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.5%owf
酢酸量 0.016mol/l
還元洗浄条件 70℃×20min
ハイドロサルファイト 4.0g/l
NaOH(フレーク) 2.0g/l
アミノ酸系改質ポリアクリル繊維30%とポリエステル繊維70%とからなる各種試験生地を上記の条件で染色した。染色後の各被染色生地は、破裂強度、耐光堅牢度、乾摩擦堅牢度、熱変色の各項目を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
ポリエステル繊維の原綿を、中空状にまいてトップポールを形成し、このトップポールをトップキャリヤーに装てんしてパッケージ染色機で染色を行う。
【0052】
染色は、1:5の浴比で行い、130℃へは50分かけて昇温し、130℃の温度で30分染色を行った後、染色溶液を80℃まで除冷して、水洗を2回行い、還元洗浄を行い、湯洗い、水洗2回を行なった。
【0053】
その後、実施例1と同様に、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用し、紡績して30番単糸の混紡糸を作り、22G×30inの編み機で220g/m2 の目付の編生地を編みたてする。
【0054】
このようにして得られた編生地は、液流染色機において1:12の浴比で、2.0g/lのアニオン系精練剤(ピッチランL100 日華化学株式会社製)の水溶液を60℃の温度で20分間維持することで編みたて油などの余分に生地に付着しているものを脱落させた後、水洗を2回行った。
【0055】
[比較例3、比較例4]
高架橋ポリアクリル系繊維30%とポリエステル繊維70%とからなる30番単糸の混紡糸を、22G×30inの編み機で220g/m2 の目付の編生地に編みたてする。
【0056】
このようにして得られた編生地は、液流染色機において1:12の浴比で、2.0g/lのアニオン系精練剤(ピッチランL100 日華化学株式会社製)の水溶液を60℃の温度で20分間維持することで編みたて油などの余分に生地に付着しているものを脱落させた後、水洗を2回行った。
【0057】
ついで、この編生地について、液流染色機で染色を行う。
【0058】
染色は、1:12の浴比で行い、130℃へは50分かけて昇温し、130℃の温度で30分染色を行った後、染色溶液を80℃まで除冷して、水洗を2回行い、還元洗浄を行い、湯洗い、水洗2回を行なった。
【0059】
その後、乾燥し、比較例1および2と同様に、吸尽法(比較例3)とパディング法(比較例4)とによって、それぞれこの編生地にアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与させた。
【0060】
[実施例5]
染色レサイプ 130℃×30min
黄味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.5%owf
赤味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 2.0%owf
青味分散染料(住化ケムテックス株式会社) 0.5%owf
酢酸量 0.016mol/l
還元洗浄条件 70℃×20min
ハイドロサルファイト 4.0g/l
ソーダ灰(粉体) 4.0g/l
アミノ酸系改質ポリアクリル繊維30%とポリ乳酸繊維70%とからなる各種試験生地を上記の条件で染色した。染色後の各被染色生地は、破裂強度、耐光堅牢度、熱変色の各項目を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例6]
ポリ乳酸繊維の糸を、チーズに装填し染色を行う。
【0062】
染色は、1:5の浴比で行い、110℃へは50分かけて昇温し、110℃の温度で30分染色を行った後、染色溶液を60℃まで除冷して、水洗を2回行い、還元洗浄を行い、湯洗い、水洗2回を行なった。
【0063】
その後、実施例1と同様に、アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用し、紡績して30番単糸の混紡糸を作り、22G×30inの編み機で220g/m2 の目付の編生地を編みたてする。
【0064】
このようにして得られた編生地は、液流染色機において1:12の浴比で、2.0g/lのアニオン系精練剤(ピッチランL100 日華化学株式会社製)の水溶液を60℃の温度で20分間維持することで編みたて油などの余分に生地に付着しているものを脱落させた後、水洗を2回行った。
【0065】
[比較例5、比較例6]
高架橋ポリアクリル系繊維30%とポリ乳酸繊維70%とからなる30番単糸の混紡糸を、22G×30inの編み機で220g/m2 の目付の編生地に編みたてする。
【0066】
このようにして得られた編生地は、液流染色機において1:12の浴比で、2.0g/lのアニオン系精練剤(ピッチランL100 日華化学株式会社製)の水溶液を60℃の温度で20分間維持することで編みたて油などの余分に生地に付着しているものを脱落させた後、水洗を2回行った。
【0067】
ついで、この編生地について、液流染色機で染色を行う。
【0068】
染色は、1:12の浴比で行い、110℃へは50分かけて昇温し、110℃の温度で30分染色を行った後、染色溶液を60℃まで除冷して、水洗を2回行い、還元洗浄を行い、湯洗い、水洗2回を行なった。
【0069】
その後、乾燥し、比較例1および2と同様に、吸尽法(比較例5)とパディング法(比較例6)とによって、それぞれこの編生地にアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与させた。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜3の熱変色については、編み立て上がり生地の色相をオリジナルとして、洗い加工後との色差をコンピューターカラーマッチング(エスクコム株式会社製)で測色した。
【0072】
比較例1〜6の熱変色については、染色加工の色相をオリジナルとして、L−アルギニン加工処理、洗い加工後との色差をコンピューターカラーマッチング(エスクコム株式会社製)で測色した。
【0073】
[実施例7]
上記実施例1〜3、比較例1〜6で用いたL−アルギニンを、L−アスパラギンとした以外は、全く同様にして各種試験生地を形成し、各試験生地について、破裂強度、耐光堅牢度、乾摩擦堅牢度、熱変色の各項目を測定した。結果を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表1および表2から明らかなように、本発明の製造方法によって得られた編生地は、比較例の編生地と比べると、破裂強度、耐光堅牢度、乾摩擦堅牢度、熱変色の各項目で優れていることがわかる。
【0076】
[実施例8]
アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物20重量%と、樹脂加工剤としてアクリル・ウレタン系複合樹脂、すなわち大日本インキ株式会社製造の「 ボンコートR3020(樹脂20重量%含有)」 を1重量%と、繊維架橋剤としてブロック化イソシアネート架橋剤、すなわち明性化学工業(株)の「 メイカネートMF」 を0.5重量%とを含有する水を溶媒とする加工液の処方を用いて、原綿100.00gを、吸尽法で30℃で20分浸漬し、遠心脱水後(脱水率80%)、130℃で180秒間乾燥処理した。 このようにして得られた各種の繊維構造物について、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物の吸尽量を重量換算率で計測した(20℃ 65%RH)。有機化合物としては、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アラニン、L−イソロイシン、L−バリンをそれぞれ用いた。原綿としては、高架橋ポリアクリル系繊維、アクリル繊維、綿繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維をそれぞれ用いた。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
表3の結果から、L−アルギニン、L−アスパラギン、L−アラニン、L−イソロイシン、L−バリンの何れについても、高架橋ポリアクリル系繊維に対しては、他の繊維の約1.8〜9倍近い吸尽量が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
アミノ酸系改質ポリアクリル繊維が混用された混用繊維を染色加工して得られる繊維製品に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸系改質ポリアクリル繊維と他繊維とを混用した繊維製品の製造方法であって、
他繊維を原綿状態で染色した後、アミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を高架橋ポリアクリル系繊維に付与してなるアミノ酸系改質ポリアクリル繊維と混用し、その後、通常の後仕上げ紡績工程を経て紡績して得られた染色糸を編成、製織して混用繊維製品とすることを特徴とするアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品の製造方法。
【請求項2】
高架橋ポリアクリル系繊維の原綿に、吸尽法によってアミノ基とカルボキシル基とをもつ有機化合物を付与加工してアミノ酸系改質ポリアクリル繊維とする請求項1 記載のアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1 または2記載の製造方法によって製造されるアミノ酸系改質ポリアクリル繊維を含む混用繊維製品。

【公開番号】特開2007−113149(P2007−113149A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307133(P2005−307133)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【出願人】(503267537)有限会社日本テクノボーン (3)
【出願人】(503267548)飯田繊工株式会社 (5)
【Fターム(参考)】