説明

アミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤

【課題】アミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤を提供する。
【解決手段】レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を有効成分として含有する、アミロイド形成蛋白の凝集抑制剤および/または凝集アミロイド蛋白の分解剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドーシスは特異な蛋白凝集体であるアミロイド(線維状不溶性凝集体)が、全身諸臓器に沈着することによって機能障害を引き起こす一連の疾患群である。具体例としては、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、II型糖尿病、プリオン病などが挙げられる。
【0003】
ADは、血管性認知症とともに認知症の原因となる二大疾患の一つであり、神経変性疾患である。
【0004】
AD脳が示す主要な病理学的変化は老人斑と神経原線維性変化の形成であり、これらに領域選択性のある脳神経細胞死が生じる。このうち、老人斑の構成成分であるアミロイドβタンパク質(Aβ)の脳内沈着は、病理学的に観察される最も早期の変化である。
【0005】
老人斑の出現の後に、微小管結合蛋白質の一種であるタウ蛋白が異常にリン酸化され、不溶性となり、神経細胞外に凝集して蓄積した神経原線維性変化がみられ、最後は神経細胞死による脳の萎縮が観察される。
【0006】
AD成立過程については、Aβ重合、凝集、蓄積ならびにそれに伴う神経細胞傷害が中核をなすという仮説(アミロイド・カスケード仮説)が広く受け入れられている。
【0007】
Aβ等のアミロイドを形成する蛋白は、その凝集過程で可溶性凝集体(オリゴマー)を形成することが知られているが、アミロイドおよびオリゴマーの双方に細胞毒性作用があることが報告されている。このため、Aβ等のアミロイド形成蛋白の凝集を阻害する薬剤は、AD等のアミロイド症に対する治療効果が期待される。
【0008】
PDは、ADに次いで多い神経変性疾患であり、その病理学的特徴として、中脳腹側部にみられるニューロメラニン含有ニューロン(黒質緻密部特異的ニューロン、SNpc)の変性と残存ニューロン内の好酸性封入体(Lewy小体)および神経突起変性(Lewy neurites)が認められる。
【0009】
Lewy小体は、α-シヌクレインを主成分として、その他ユビキチン、シナプトフィジン、タウ蛋白のような細胞骨格タンパク質から構成される凝集体である。
【0010】
アミロイド化したα-シヌクレインの異常蓄積が主要所見である疾患群は、α-シヌクレイン異常疾患(α-シヌクレイノパチー)と呼称され、Lewy小体型痴呆、多系統萎縮症などが含まれる。
【0011】
II型糖尿病の病理学的特徴として、脾臓ランゲルハンス島にアミリンを主成分とするアミロイド凝集体の沈着が認められ、このアミロイド凝集体が糖尿病の発症に関与している可能性が指摘されている。
【0012】
プリオン病は異常プリオン蛋白の増加による中枢神経疾患の総称である。プリオン蛋白は正常な体内にも存在しており、特に神経細胞に多く含まれており、神経細胞の構造を保ったり神経間の情報伝達に携わっていると考えられている。
【0013】
プリオン蛋白が何らかの原因で異常化して病原体になると、プリオン病を引き起こす。
【0014】
プリオン病の病変部では、中枢神経組織の空胞変性、アストログリアの増殖およびプリオン蛋白凝集体の蓄積が見られる。
【0015】
プリオン病としては、ヒツジのスクレイピー、ウシのウシ海綿状脳症(BSE)、ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ (Creutzfeldt-Jakob) 病(CJD)などが知られている。
【0016】
ある種の植物の植物体やその抽出物が、Aβの凝集抑制作用および/または凝集Aβの分解作用を有することが知られている。例えば、牡丹皮、桂皮およびこれらの抽出エキスにAβの凝集抑制作用、凝集Aβの分解作用があることが報告されている(特許文献1)。
【0017】
また、チョウトウコウおよびこれらの抽出エキスにAβの凝集抑制作用、凝集Aβの分解作用があることが報告されている(非特許文献1)。
【0018】
さらに、ウコンに含有されるクルクミンにAβの凝集抑制作用、Aβオリゴマーおよび神経原線維形成抑制作用があることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−206584号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J.Neurosci.Res.84,427-433(2006)
【非特許文献2】J.Biol.Chem.280,5892-5901(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、新規なアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、アミロイド形成蛋白の凝集抑制活性、凝集アミロイド蛋白の分解活性を有する天然物について検討したところ、アミロイド形成蛋白の凝集抑制作用、凝集アミロイド蛋白の分解作用を示す数種類の植物を見出した。
【0023】
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を有効成分として含有するアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤。
〔2〕レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を有効成分として含有する凝集アミロイド蛋白の分解剤。
【発明の効果】
【0024】
本発明の剤を哺乳動物に摂取させることにより、該動物におけるアミロイド形成蛋白の凝集を抑制し、凝集アミロイド蛋白を分解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を有効成分として含有するアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤および/または凝集アミロイド蛋白の分解剤に関する。
【0026】
本発明で、アミロイド形成蛋白とは、電子顕微鏡的に直線性の非分枝性の線維状蛋白凝集体であるアミロイドを形成する蛋白質を意味する。凝集アミロイド蛋白とは、アミロイド形成蛋白が重合しアミロイドを形成し、病的に全身諸臓器に沈着する蛋白凝集体を意味する。具体的なアミロイド形成蛋白としては、Aβ、α-シヌクレイン、アミリン、プリオン蛋白などが挙げられるが、それらに限定されず、種々のアミロイド症に関与する任意のアミロイド形成蛋白が含まれ得る。
【0027】
本発明で、レッドキドニービーンズとは、マメ科インゲン属のPhaseolus vulgarisを、グアバとは、フトモモ科バンジロウ属のPsidium guajava L.を、ゲットウとは、ショウガ科ハナミョウガ属のAlpinia speciosa (Wendl.)K.Schum.を、オレガノとは、シソ科ハナハッカ属のOriganum vulgare L.を、バジルとは、シソ科メボウキ属のOcimum basilicumを、レモンバーベナとは、クマツヅラ科のLippia triphyllaを、ハマナスとは、バラ科バラ属のRosa rugosaを、アオサとは、ヒトエグサ科のMonostroma nitidum wittrock、Monostroma latissimum wittrock、アオサ科のUlva pertusaを、マジョラムとは、シソ科ハナハッカ属のOriganum majorana L.を、ギンネムとは、ネムノキ科ギンゴウカン属のLeucaena leucocephala de witを、コブミカンとは、ミカン科カンキツ属のCitrus hystrix DC.を、ギムネマシルベスタとは、Gymnema sylvestre (Retz.) schultをそれぞれ意味する。
【0028】
本発明の植物体としては、例えば野生の植物体、栽培により得られる植物体または組織培養等の培養により得られる植物体の全部または一部(例えば、葉、花、枝、茎、果実、根、種子、培養された細胞、組織もしくは器官、あるいは脱分化した細胞もしくは細胞集団(例、カルス)等)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
好ましくは、植物体の一部としては、本発明の植物がレッドキドニービーンズの場合は種子等が、グアバの場合は葉、果実、根等が、ゲットウの場合は葉等が、オレガノの場合は葉等が、バジルの場合は葉、種子等が、レモンバーベナの場合は葉等が、ハマナスの場合は果実、花弁等が、アオサの場合は藻体等が、マジョラムの場合は葉、花弁等が、ギンネムの場合は葉等が、コブミカンの場合は葉等が、ギムネマシルベスタの場合は葉等がそれぞれ挙げられる。
【0030】
本発明の植物体の処理物としては、上記植物体を物理学的、化学的または生物学的に処理して得られるものであれば特に制限はない。例えば、物理学的処理方法としては、例えば天日乾燥、風乾、凍結乾燥等の乾燥処理、ブレンダー、ホモジュナイザー、ボールミル等による粉砕処理等が挙げられ、物理学的処理物としては、乾燥処理物、凍結乾燥処理物、粉砕処理物等が挙げられる。化学的処理方法としては、例えば、プロテアーゼ、糖化酵素などの酵素処理等が挙げられ、化学的処理物としては、酵素処理物等が挙げられる。生物学的処理方法としては、例えば、発酵方法等が挙げられ、生物学的処理物としては発酵処理物が挙げられる。
【0031】
好ましい一実施態様においては、本発明の植物体の処理物として、グアバ、ゲットウ、ギンネムの発酵処理物(本願においては「発酵グアバ」、「発酵ゲットウ」、「発酵ギンネム」と称する)を用いることができる。発酵グアバの製造方法については、例えば、特開2004−24004号公報、特開2002−330725号公報に記載の方法等が、発酵ゲットウの製造方法としては、例えば、特開2002−330725号公報に記載の方法等が、発酵ギンネムの製造方法としては、例えば、特開平4−234951号公報に記載の方法等が、それぞれ挙げられるがこれらに限定されず、各種健康食品に利用される発酵グアバ、発酵ゲットウ、発酵ギンネムの製造方法として公知の任意の方法を用いることができる。
【0032】
本発明の植物体もしくはその処理物の抽出物としては、前述の植物体もしくはその処理物から、種々の抽出方法により得られる抽出物が挙げられる。抽出方法としては、例えば各種溶媒抽出、超臨界流体抽出等が挙げられる。
【0033】
抽出および抽出剤の処理に際しては、例えば抗酸化剤や保存剤等を添加することもできる。溶媒抽出に用いる溶剤としては、アミロイド形成蛋白の凝集抑制作用および/または凝集アミロイド蛋白の分解作用を示す物質を抽出できる溶媒なら何を用いてもよく、例えば水、蒸留水、脱イオン水、無機塩水溶液、緩衝液等の水性媒体、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の一価アルコール、プロピレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、石油エーテル、ベンゼン、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2-トリクロロエテン、ジメチルスルフォキシド、アセトン等の有機溶媒等が挙げられる。特に好ましい溶剤は、用いる植物体・植物体処理物の種類により異なるが、当業者は、例えば後記実施例に記載されるアミロイド形成蛋白の凝集抑制活性および/または凝集アミロイド蛋白の分解活性を指標として、容易に好ましい溶剤を選択することができる。
【0034】
緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液等が挙げられる。無機塩水溶液の無機塩としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。アルコールとしては、一価アルコールが好ましく、一価アルコールとしてはメタノールまたはエタノールが好ましい。
【0035】
これらの溶媒は単独で、または複数混合して用いることができる。混合した溶媒としては、含水アルコールが好ましく、含水一価アルコールがより好ましく、含水メタノールまたはエタノールが特に好ましい。含水率としては80%以下が好ましく、60%以下がより好ましい。
【0036】
また、溶媒として、超臨界流体化した二酸化炭素を用いることもできる。
【0037】
抽出は、例えば植物体1重量部に対し溶媒0.1〜10000重量部、好ましくは1〜100重量部用いて行う。抽出温度は特に制限が無いが、0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。抽出時間は、特に制限が無いが、1分間〜1週間が好ましく、30分間〜1日間がより好ましい。特に、前述の植物体もしくはその処理物を水、純水、脱イオン水等の水性媒体で抽出する方法、水性媒体で抽出した後の残渣をアルコールもしくは含水アルコールで抽出する方法、あるいはアセトンやクロロホルム等の有機溶媒で抽出する方法、該抽出液を、水性媒体、含水アルコール、アルコール、有機溶媒等を用いてさらに分画する方法などが好ましい。
【0038】
抽出に使用する機器としては特に制限が無いが、効率よく抽出するために工夫された容器、攪拌機、還流冷却器、ソックスレー抽出機、ホモジナイザー、振とう機、超音波発生装置等などが挙げられる。
【0039】
上記のようにして得られる抽出物は、沈降分離、ケーキ濾過、清澄濾過、遠心濾過、遠心沈降、圧搾分離、フィルタープレス、膜分離などの各種固液分離方法、各種濃縮方法、各種乾燥方法、造粒もしくは粉末化等の製剤化方法、各種精製方法等でさらに処理してもよい。
【0040】
精製方法としては、例えば溶媒分画法、カラムクロマトグラフィー法、再結晶法が挙げられる。特に、ダイヤイオンHP-20、SP207(三菱化学社製)、セファデックスLH-20(ファルマシア社製)等の各種担体を用いたカラムクロマトグラフィー法が好ましい。濃縮および乾燥方法としては、凍結乾燥、自然乾燥、熱風乾燥、通風乾燥、噴霧乾燥、減圧乾燥、天日乾燥、真空乾燥、流動層乾燥、泡沫層乾燥、ドラムドライヤーなどの皮膜乾燥、超音波乾燥、電磁波乾燥等の乾燥方法、凍結乾燥方法が挙げられる。
【0041】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物は、アミロイド形成蛋白の凝集を抑制し、凝集アミロイド蛋白を分解する作用を有するので、凝集アミロイド蛋白が関与する疾患の予防・治療薬として有用である。そのような疾患としては、例えば、Aβが関与する疾患(AD、ダウン症など)α-シヌクレインが関与する疾患(PD、Lewy小体型痴呆、多系統萎縮症など)、アミリンが関与する疾患(II型糖尿病など)、プリオン蛋白が関与する疾患(CJD、BSE、スクレイピーなど)、タウオパチー、ポリグルタミン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、末梢性アミロイド症(ALアミロイドーシス、AAアミロイドーシス、AFアミロイドーシス、AHCAアミロイドーシス、AHアミロイドーシス、AScアミロイドーシス、ASbアミロイドーシス、ADアミロイドーシスなど)などが挙げられる。
【0042】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物は低毒性であり、そのまま、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたはその他の動物、例えば非ヒト哺乳動物(例、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)、鳥類、は虫類、両生類、魚類等に対して投与することができる。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであってもよい。このような医薬組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
【0043】
製剤の投与形態は、アミロイド形成蛋白の凝集抑制作用、凝集アミロイド蛋白の分解作用に対して最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与または、例えば静脈内、腹腔内もしくは皮下投与等の非経口投与を挙げることができるが、経口投与が好ましい。
【0044】
投与する剤形としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤、煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤として好適に用いられる。
【0045】
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して製剤化することができる。
【0046】
また、経口投与に適当な、例えば錠剤、散剤および顆粒剤等は、乳糖、白糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
【0047】
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定化剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0048】
非経口投与においても、経口剤で例示した防腐剤、保存剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される一種またはそれ以上の補助成分を添加することができる。
【0049】
本発明のアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤中の植物体もしくはその処理物またはその抽出物の濃度は、製剤の種類、当該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、当該植物体もしくはその処理物またはその抽出物として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜70重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。本発明のアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤は、上記の植物体もしくはその処理物またはその抽出物のうちの2種以上を含有することもできるが、この場合、製剤中に含まれる植物体もしくはその処理物またはその抽出物の総量が、上記の範囲内であることが望ましい。
【0050】
本発明のアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤、凝集アミロイド蛋白の分解剤をヒトに投与する場合の投与量および投与回数は、有効成分の種類、投与形態、被投与者の年齢、体重等により異なるが、成人1日当り、当該植物体もしくはその処理物またはその抽出物として、通常は50mg〜30g、好ましくは100mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3gとなるように、1日1回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1ヶ月間〜30年間、好ましくは6ヶ月間〜20年間である。
【0051】
非ヒト動物に投与する場合の投与量は、動物の年齢、種類、症状の性質もしくは重篤度により異なるが、体重1kg1日当たり、当該植物体もしくはその処理物またはその抽出物として、通常は1〜600mg、好ましくは2〜200mg、特に好ましくは4〜60mgとなるように、1日1回ないし数回投与する。投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜3年間、好ましくは2週間〜1年間である。
【0052】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物は、食品もしくは飼料またはその添加物として使用できるので、そのまま、あるいは他の食品もしくは飼料、その原料またはそのための添加物とともに、飲食品もしくは飼料またはそのための添加剤に加工することができる。本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を含有する飲食品もしくは飼料は、それを摂取するヒトまたは他の動物において、アミロイド形成蛋白の凝集抑制作用および/または凝集アミロイド蛋白の分解作用を示すので、凝集アミロイド蛋白が関与する上記疾患の予防および/または進行抑制のための、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品(あるいは家畜・家禽等の非ヒト動物の飼料における前記食品の同等物)として用いることができる。
従って、本発明はまた、レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を含有する、アミロイド形成蛋白の凝集抑制および/または凝集アミロイド蛋白の分解のための飲食品もしくは飼料、またはその製造のための添加剤を提供する。
【0053】
本発明の飲食品または飼料中に含有される本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物の量としては、飲食品または飼料が前記作用を示す量(有効量)であれば特に制限はないが、例えば植物体もしくはその処理物またはその抽出物の乾燥重量として、0.001〜100重量%、好ましくは0.01〜100重量%、より好ましくは0.1〜100重量%である。
【0054】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を添加する具体的な飲食品としては、例えばジュース類、清涼飲料水、スープ類、茶類、乳酸菌飲料、発酵乳、冷菓、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂粉乳等の乳製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の畜肉製品、魚肉錬り製品、だし巻き、卵豆腐等の卵製品、クッキー、ゼリー、スナック菓子、チューインガム等の菓子類、パン類、麺類、漬け物類、燻製品、干物、佃煮、調味料等が挙げられる。
【0055】
飲食品の形態としては、例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等が挙げられる。本発明の飲食品は、健康飲食品、機能性飲食品として、アミロイド形成蛋白の凝集抑制または凝集アミロイド蛋白の分解のために使用される。
【0056】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を含有する、本発明の飲食品を摂取する場合、その摂取量は特に制限がないが、通常、成人1日あたり植物体もしくはその処理物またはその抽出物の乾燥重量として、50mg〜30g、好ましくは100mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3gである。この摂取量を1ヶ月間〜30年間、好ましくは6ヶ月間〜20年間、摂取し続ける。但し、この摂取量はあくまでも目安であり、摂取者の症状の程度や年齢、体重等に応じて適宜好適な範囲に調整することができる。
【0057】
本発明の飼料としては、哺乳動物、鳥類、は虫類、両生類、魚類等の非ヒト動物用の飼料として使用されているいかなるものも包含され得るが、例えば、イヌ、ネコ、ネズミ等のペット用飼料、ウシ、ブタ等の家畜用飼料、ニワトリ、七面鳥等の家禽用飼料、タイ、ハマチ等の養殖魚用飼料等が挙げられる。
【0058】
本発明の飼料は、飼料原料に本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を適宜配合して作ることができる。飼料原料としては、穀物類、糟糠類、植物性油かす類、動物性飼料原料、その他の飼料原料、精製品等が挙げられる。穀物としては、例えばマイロ、小麦、大麦、えん麦、らい麦、玄米、そば、あわ、きび、ひえ、とうもろこし、大豆等が挙げられる。
【0059】
糟糠類としては、例えば米ぬか、脱脂米ぬか、ふすま、末粉、小麦胚芽、麦ぬか、ペレット、トウモロコシぬか、トウモロコシ胚芽等が挙げられる。植物性油かす類としては、例えば大豆油かす、きな粉、あまに油かす、綿実油かす、落花生油かす、サフラワー油かす、やし油かす、パーム油かす、ゴマ油かす、ヒマワリ油かす、ナタネ油かす、カポック油かす、からし油かす等が挙げられる。
【0060】
動物性飼料原料としては、例えば魚粉(北洋ミール、輸入ミール、ホールミール、沿岸ミール)、フィッシュソルブル、肉粉、肉骨粉、血粉、分解毛、骨粉、家畜用処理副産物、フェザーミール、蚕よう、脱脂粉乳、カゼイン、乾燥ホエー等が挙げられる。その他の飼料原料としては、植物茎葉類(アルファルファ、ヘイキューブ、アルファルファリーフミール、ニセアカシア粉末等)、トウモロコシ加工工業副産物(コーングルテン、ミール、コーングルテンフィード、コーンステープリカー等)、澱粉加工品(澱粉等)、砂糖、発酵工業産物(酵母、ビールかす、麦芽根、アルコールかす、醤油かす等)、農産製造副産物(柑橘加工かす、豆腐かす、コーヒーかす、ココアかす等)、その他(キャッサバ、そら豆、グアミール、海藻、オキアミ、スピルリナ、クロレラ、鉱物等)等が挙げられる。
【0061】
精製品としては、タンパク質(カゼイン、アルブミン等)、アミノ酸、糖質(スターチ、セルロース、蔗糖、グルコース等)、ミネラル、ビタミン等が挙げられる。
【0062】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を含有する、本発明の飼料を摂取させる場合、その摂取量は特に制限がないが、通常、動物の体重1kgあたり、1日あたり、植物体もしくはその処理物またはその抽出物の乾燥重量として、1〜600mg、好ましくは2〜200mg、特に好ましくは4〜60mgである。この摂取量を通常は1日間〜3年間、好ましくは2週間〜1年間、摂取させ続ける。但し、この摂取量はあくまでも目安であり、摂取動物の種類、年齢、体重等に応じて適宜好適な範囲に調整することができる。
【0063】
本発明の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を含有する、本発明の飲食品用または飼料用添加剤は、該植物体もしくはその処理物またはその抽出物に、必要に応じて一般に飲食品または飼料に用いられる添加剤、例えば食品添加物表示ハンドブック(日本食品添加物協会、平成9年1月6日発行)に記載されている甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物などの添加剤を添加してもよい。また、前述の医薬製剤に例示した担体を添加してもよい。
【0064】
甘味料としてはアスパルテーム、カンゾウ、ステビア、キシロース、ラカンカなどが挙げられる。着色料としては、カロチノイド、ウコン色素、フラボノイド、カラメル色素、シコン色素、スピルリナ色素、葉緑素、ムラサキイモ色素、ムラサキヤマイモ色素、シソ色素、ブルーベリー色素などが挙げられる。
【0065】
保存料としては、亜硫酸ナトリウム、安息香酸類、ウド抽出物、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ソルビン酸類、プロピオン酸類などが挙げられる。増粘安定剤としては、アラビアガムやキサンタンガムなどのガム類、アルギン酸類、キチン、キトサン、キダチアロエ抽出物、グァーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、カゼインナトリウム、コーンスターチ、カルボキシメチルセルロース類、ゼラチン、寒天、デキストリン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、微小繊維状セルロース、微結晶セルロース、海藻セルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリリン酸ナトリウム、カラギーナン、酵母細胞壁、コンニャクイモ抽出物、ナタデココ、マンナンなどが挙げられる。
【0066】
酸化防止剤としては、ビタミンC、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、エリソルビン酸、オリザノール、カテキン、ケルセチン、クローブ抽出物、酵素処理ルチン、リンゴ抽出物、ゴマ油抽出物、ジブチルヒドロキシトルエン、ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、テンペ抽出物、ドクダミ抽出物、トコトリエノール、トコフェロール類、ナタネ油抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子、フェルラ酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブルーベリー葉抽出物、プロポリス抽出物、ヘゴ・イチョウ抽出物、ヘスペレチン、コショウ抽出物、ホウセンカ抽出物、没食子酸、ヤマモモ抽出物、ユーカリ抽出物、ローズマリー抽出物などが挙げられる。
【0067】
発色剤としては亜硝酸ナトリウムなど、漂白剤としては亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。防かび剤としてはオルトフェニルフェノールなどが挙げられる。ガムベースとしては、アセチルリシノール酸メチル、ウルシロウ、エステルガム、エレミ樹脂、オウリキュウリロウ、オゾケライト、オポパナックス樹脂、カウリガム、カルナウバロウ、グアヤク樹脂、グッタカチュウ、グッタハンカン、グッタペルカ、グリセリン脂肪酸エスエル、ゲイロウ、コパオババルサム、コーパル樹脂、ゴム、コメヌカロウ、サトウキビロウ、シェラック、ジェルトン、蔗糖脂肪酸エステル、ソルバ、ソルビタン脂肪酸エステル、タルク、炭酸カルシウム、ダンマル樹脂、チクル、チルテ、ツヌー、低分子ゴム、パラフィンワックス、ファーバルサム、プロピレングリコール脂肪酸エステル、粉末パルプ、粉末モミガラ、ホホバロウ、ポリイソブチレン、ポリブテン、マイクロクリスタルワックス、マスチック、マッサランドバチョコレート、ミツロウ、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0068】
苦味料としては、イソアルファー苦味酸、カフェイン、カワラタケ抽出物、キナ抽出物、キハダ抽出物、ゲンチアナ抽出物、香辛料抽出物、酵素処理ナリンジン、ジャマイカカッシア抽出物、テオブロミン、ナリンジン、ニガキ抽出物、ニガヨモギ抽出物、ヒキオコシ抽出物、ヒメマツタケ抽出物、ボラペット、メチルチオアデノシン、レイシ抽出物、オリーブ茶、ダイダイ抽出物、ホップ抽出物、ヨモギ抽出物などが挙げられる。
【0069】
酵素または酵素源としてはアミラーゼ、トリプシン、レンネット、乳酸菌などが挙げられる。光沢剤としてはウルシロウ、モクロウなどが挙げられる。酸味料としてはアジピン酸、イタコン酸、クエン酸類、コハク酸類、酢酸ナトリウム、酒石酸類、二酸化炭素、乳酸、フィチン酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸などが挙げられる。
【0070】
調味料としてはアスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アラニン、イソロイシン、グリシン、セリン、シスチン、チロシン、ロイシン、プロリンなどのアミノ酸、イノシン酸ナトリウム、ウリジル酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム、シチジル酸ナトリウム、リボヌクレオチドカルシウム、リボヌクレオチドナトリウムなどの核酸、クエン酸、コハク酸などの有機酸、塩化カリウム、塩水湖水低塩ナトリウム液、粗製海水塩化カリウム、ホエイソルト、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、クロレラ抽出物などが挙げられる。
【0071】
強化剤としては亜鉛塩類、ビタミンC、各種アミノ酸、5−アデニル酸、塩化鉄、ヘスペリジン、各種焼成カルシウム、各種未焼成カルシウム、ジベンゾイルチアミン、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、チアミン塩酸塩、デュナリエラカロチン、トコフェロール、ニコチン酸、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、パントテン酸カルシウム、ビタミンA、ヒドロキシプロリン、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、フェリチン、ヘム鉄、メナキノン、葉酸、リボフラビンなどが挙げられる。
【0072】
製造用剤としてはアセトンやイオン交換樹脂などの加工助剤、イチジク葉抽出物、イナワラ灰抽出物、カオリン、グリセリン脂肪酸エステル、クワ抽出物、骨灰、シソ抽出物、ショウガ抽出物、各種タンニン、ファフィア色素、ブドウ種子抽出物、エタノールなどが挙げられる。なお、これら各種添加剤は、前述の本発明の飲食品または飼料に添加して用いることもできる。
【実施例】
【0073】
実施例1 植物からの抽出、精製分画物の調製
以下の方法により、レッドキドニービーンズ(種子)、グアバ(葉)、ゲットウ(葉)、オレガノ(葉)、バジル(葉)、レモンバーベナ(葉)、ハマナス(果実)、アオサ(藻体)、マジョラム(葉)、ギンネム(葉)およびコブミカン(葉)から抽出、分画精製操作を行い、植物体精製分画物を調製した。また、これまでAβの凝集抑制作用等に関して報告のあるウコン、チョウトウコウ、牡丹皮についても同様の抽出操作を行った。
(1)抽出準備
乾燥処理した植物体(30g)または新鮮な植物体(140g)を小型ミル、またはフードプロセッサーで粉砕し、70%アセトンに浸漬した(12時間以上)。
(2)抽出
浸漬物に対して、1時間以上超音波を照射後、濾過を行い、濾液(i)を得た。さらに、その残渣を100%アセトンに浸漬し、同様の処理をして、濾液(ii)を得た。濾液(i)と濾液(ii)を混合し、減圧濃縮して脱アセトンを行い、アセトン抽出濃縮液を得た。この抽出濃縮液の一部を濃縮乾固して、アセトン粗抽出物を得た。また、100%アセトン抽出後の残渣をクロロホルムに浸漬し、1時間以上超音波処理後、濾過、濃縮乾固して、クロロホルム粗抽出物を得た。
(3)分画
上記のアセトン抽出濃縮液を、疎水吸着性レジン(ダイヤイオンHP-20、三菱化学製)を充填したカラムにチャージしたのちに、脱イオン水(2RV量)、33%メタノール(2RV量)、66%メタノール(2RV量)、100%メタノール(2RV量)、アセトン(2RV量)により順次溶出させた。得られた溶出液を遠心濃縮器、凍結乾燥器を用いて乾固し、各分画物を得た。なお、ここでRVとは樹脂量(Resin Volume)を表し、樹脂量と同量の溶液を通液した場合の通液量が1RV量である。
【0074】
実施例2 植物からの抽出物の調製
以下の方法により、レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、発酵ギンネムおよびコブミカンから抽出操作を行い、植物体抽出物を調製した。なお、発酵グアバ、発酵ゲットウおよび発酵ギンネムは、それぞれの葉に糖源、乳酸菌をはじめとした数種類の菌を添加、発酵させて調製したものを使用した。
(1)抽出準備
乾燥処理した植物体(5g)または新鮮な植物体(10g)を小型ミル、またはフードプロセッサーで粉砕した。
(2)抽出
粉砕処理した植物体に対して、10倍量(V/W)の脱イオン水または100%エタノールを添加して3時間攪拌、抽出後に濾過を行い、水抽出液、100%エタノール抽出液を得た。脱イオン水での抽出残渣については、さらに10倍量(V/W)の100%エタノールを添加して3時間攪拌、抽出後に濾過を行い、含水エタノール抽出液を得た。各抽出液を濃縮乾固して、水抽出物、100%エタノール抽出物、含水エタノール抽出物(エタノールの割合は水抽出液量から換算)を得た。
【0075】
試験例1 Aβの凝集抑制作用評価(チオフラビンT法評価)
(1)材料、方法
(i)試薬調製
・4×PBS溶液:PBS粉末(日水製薬、Cat.No.05913)9.6gに超純水250mLを加えて、溶解させた。
・100μM チオフラビンT/PBS溶液:チオフラビンT(Sigma、Cat.No.T3516)を100μMの濃度になるようにPBS溶液に溶解させた。
・Aβストック溶液:Aβ1-40(ペプチド研究所、Cat.No.4379-v)粉末を、超純水を用いて1mMの濃度になるように溶解し、-80℃で保存した。使用時に融解し、ソニケーションをかけて完全に溶解していることを確認した。
・検体溶液:上記の粗抽出物(乾固物)および分画物(乾固物)を2% DMSO超純水溶液に溶解して、様々な濃度(0〜10μg/mL)の検体溶液を調製した。
なお、ギムネマシルベスタについては、市販の含水エタノール抽出エキス末を使用した。
(ii)チオフラビンT法による測定手順
(a)96穴プレートに検体溶液を20μL/well加えた。Vehicle wellには検体溶液と同濃度である2% DMSOを含む超純水を、Blank wellには超純水のみをそれぞれ20μL/well加えた。
(b)Aβストック溶液を超純水で希釈し、60μMに調製した。これをBlank well以外に10μL/well加えた。Blank wellには超純水を10μL/well加えた。プレートを十分ミキシングした。
(c)全wellに4×PBS溶液を10μL/well加えた。プレートを十分にミキシングした。プレートシールをして室温で18時間インキュベートした。
(d)検体自体の自家蛍光を測定するために蛍光リーダー(ARVO SX, Wallac社)でex.485nm、em.585nmの条件のもと、蛍光を測定した。
(e)チオフラビンTストック溶液を20μL/wellの容量で全wellに加え、良くミキシングし、室温で1時間放置した。
(f)蛍光リーダーで、ex.485nm、em.585nm条件のもと、蛍光を測定した。
(g)各wellについて(f)の測定値から(d)の測定値を減算した。さらに、Blank wellの平均値を各wellの値から減算した。各wellのAβ凝集量は上記で算定したVehicle wellの測定値の平均に対する相対値(%)として算出した。また、検体濃度と凝集率から、IC50値(Aβ凝集を50%阻害する検体濃度)を算出した。
【0076】
(2)Aβ蛋白の凝集抑制活性結果(IC50値)を下記表1−1および1−2に示す。
【0077】
【表1−1】

【0078】
【表1−2】

【0079】
表1−1および1−2からレッドキドニービーンズ、グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカン、発酵グアバおよびギムネマシルベスタの抽出物または精製物にAβ凝集抑制効果があることが明らかとなった。抽出および分画用溶媒を適宜選択することにより、従来公知のAβ凝集抑制作用を有する植物抽出物と同等もしくはそれ以上の効果が得られた。
【0080】
試験例2 凝集Aβの再溶解作用評価(チオフラビンT法評価)
(1)材料、方法
(i)試薬調製
・PBS溶液:PBS粉末(日水製薬、Cat.No.05913)9.6gに超純水1Lを加えて、溶解させた。
・100μM チオフラビンT/PBS溶液:チオフラビンT(Sigma、Cat.No.T3516)を100μMの濃度になるようにPBS溶液に溶解させた。
・Aβストック溶液:Aβ1-40(ペプチド研究所、Cat.No.4379-v)粉末を、超純水を用いて1mMの濃度になるように溶解し、-80℃で保存した。使用時に融解し、ソニケーションをかけて完全に溶解していることを確認した。
・検体溶液:上記の粗抽出物(乾固物)および分画物(乾固物)を2% DMSO超純水溶液に溶解して様々な濃度(0〜10μg/mL)の検体溶液を調製した。
なお、ギムネマシルベスタについては、市販の含水エタノール抽出エキス末を使用した。
・Aβアミロイド懸濁液:PBS溶液にAβストック溶液を最終濃度が40mMになるように添加し、室温で24時間インキュベートした。使用時に5000rpm、10分間の遠心によってAβアミロイドを沈殿させ、上清を除去後に除去したPBS溶液と等量の新鮮PBS溶液を加えて再懸濁させた。
(ii)チオフラビンT法による測定手順
(a)96穴プレートに検体溶液を20μL/well加えた。Vehicle wellには検体溶液に含まれるのと同量のDMSOを加えたPBS溶液を、Blank wellにはPBS溶液のみをそれぞれ20μL/well加えた。
(b)Aβアミロイド懸濁溶液をBlank well以外に10μL/well加えた。Blank wellにはPBS溶液を10μL/well加えた。プレートを十分ミキシングした。
(c)全wellにPBS溶液を10μL/well加えた。プレートを十分にミキシングした。プレートシールをして室温で2日間インキュベートした。
(d)検体自体の自家蛍光を測定するために蛍光リーダー(ARVO SX, Wallac社)でex.485nm、em.585nmの条件で、蛍光を測定した。
(e)チオフラビンTストック溶液を20μL/wellの容量で全wellに加え、良くミキシングし、室温で1時間放置した。
(f)蛍光リーダーで、ex.485nm、em.585nmの条件のもと、蛍光を測定した。
(g)各wellについて(f)の測定値から(d)の測定値を減算した。さらに、Blank wellの平均値を各wellの値から減算した。各wellのAβ凝集量は上記で算定したVehicle wellの測定値の平均に対する相対値(%)として算出した。また、検体濃度と凝集率から、ED50値(凝集Aβアミロイド蛋白の50%を再溶解する検体濃度)を算出した。
【0081】
(2)凝集Aβの再溶解活性結果(ED50値)を下記表2−1および2−2に示す。
【0082】
【表2−1】

【0083】
【表2−2】

【0084】
表2−1および2−2から、レッドキドニービーンズ、グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカン、発酵グアバおよびギムネマシルベスタの抽出物、精製物に凝集Aβの再溶解効果があることが明らかとなった。抽出および分画用溶媒を適宜選択することにより、従来公知の凝集Aβ再溶解作用を有する植物抽出物と同等もしくはそれ以上の効果が得られた。
【0085】
試験例3 アミリンの凝集抑制作用評価(チオフラビンT法評価)
(1)材料、方法
(i)試薬調製
・4×PBS溶液:PBS粉末(日水製薬、Cat.No.05913)9.6gに超純水250mLを加えて、溶解させた。
・100μM チオフラビンT/PBS溶液:チオフラビンT(Sigma、Cat.No.T3516)を100μMの濃度になるようにPBS溶液に溶解させた。
・アミリンストック溶液:ヒトアミリン(ペプチド研究所、Cat.No.4219-v)粉末を、超純水を用いて1mMの濃度になるように溶解し、-80℃で保存した。使用時に融解し、ソニケーションをかけて完全に溶解していることを確認した。
・検体溶液:上記の粗抽出物(乾固物)および分画物(乾固物)を2% DMSO超純水溶液に溶解して様々な濃度(0〜10ug/mL)の検体溶液を調製した。
(ii)チオフラビンT法による測定手順
(a)96穴プレートに検体溶液を20μL/well加えた。Vehicle wellには検体溶液に含まれるのと同量のDMSOを加えた超純水を、Blank wellには超純水のみをそれぞれ20μL/well加えた。
(b)アミリンストック溶液を超純水で希釈し、40μMに調製した。これをBlank well以外に10μL/well加えた。Blank wellには超純水を10μL/well加えた。プレートを十分ミキシングした。
(c)全wellに4×PBS溶液を10μL/well加えた。プレートを十分にミキシングした。プレートシールをして室温で18時間インキュベートした。
(d)検体自体の自家蛍光を測定するために蛍光リーダー(ARVO SX, Wallac社)でex.485nm、em.585nmの条件のもと、蛍光を測定した。
(e)チオフラビンTストック溶液を20μL/wellの容量で全wellに加え、良くミキシングし、室温で1時間放置した。
(f)蛍光リーダーで、ex.485nm、em.585nmの条件のもと、蛍光を測定した。
(g)各wellについて(f)の測定値から(d)の測定値を減算した。さらに、Blank wellの平均値を各wellの値から減算した。各wellのアミリン凝集量は上記で算定したVehicle wellの測定値の平均に対する相対値(%)として算出した。また、検体濃度と凝集率から、IC50値(アミリン凝集を50%阻害する検体濃度)を算出した。
【0086】
(2)アミリンの凝集抑制活性結果(IC50値)を下記3−1および3−2に示す。
【0087】
【表3−1】

【0088】
【表3−2】

【0089】
表3−1および3−2から、レッドキドニービーンズ、グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカン、発酵グアバおよびギムネマシルベスタの抽出物、精製物にアミリン凝集抑制効果があることが明らかとなった。抽出および分画用溶媒を適宜選択することにより、従来公知のアミロイド凝集抑制作用を有する植物抽出物と同等もしくはそれ以上の効果が得られた。
【0090】
実施例3 植物体抽出物を含有する医薬および飼料の製造
(1)実施例2で調製したグアバ葉の水抽出物を用いて、常法に従って下記の組成の錠剤を製造した。
組成 配合量(重量%)
グアバ(葉)水抽出物(乾燥重量として) 24
乳糖 63
コーンスターチ 12
グァーガム 1
【0091】
(2)実施例2で調製したグアバ葉の74%エタノール抽出物を用いて、常法に従って下記の組成の飼料を製造した。
組成 配合量(重量%)
グアバ(葉)EtOH抽出物(乾燥重量として) 3
スクロース(キシダ化学社製) 20
コーンオイル(ナカライテスク社製) 5
重酒石酸コリン(東京化成工業社製) 0.4
コーンスターチ(日澱化学社製) 37.1
AIN−76ビタミン(オリエンタル酵母社製) 1
AIN−76ミネラル(オリエンタル酵母社製) 3.5
セルロース(オリエンタル酵母社製) 5
カゼイン(和光純薬工業社製) 25
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤および/または凝集アミロイド蛋白の分解剤は、凝集アミロイド蛋白が関与する各種疾患の予防および/または治療に有用である。また、本発明の飲食品もしくは飼料またはそのための添加剤は、食生活の面から上記疾患の予防および/または進行抑制を図ることができる点で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を有効成分として含有するアミロイド形成蛋白の凝集抑制剤。
【請求項2】
レッドキドニービーンズ、グアバ、発酵グアバ、ゲットウ、発酵ゲットウ、オレガノ、バジル、レモンバーベナ、ハマナス、アオサ、マジョラム、ギンネム、発酵ギンネム、コブミカンおよびギムネマシルベスタからなる群から選ばれる1以上の植物の植物体もしくはその処理物またはその抽出物を有効成分として含有する凝集アミロイド蛋白の分解剤。


【公開番号】特開2010−202606(P2010−202606A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51401(P2009−51401)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】