説明

アミンの生産方法

本発明は、式(I)で示される化合物の生産方法に関し、その式(I)中、R1はC6−C7アルキル又は基(A1)であり、その基(A1)の式中、R2、R3及びR4は、各々互いに独立に水素又はC1−C4アルキルである。その生産方法において、式(II)で示される化合物(その式(II)中、R1は、その式(I)において定義されたとおりであり、Xは、臭素又は塩素である。)は、塩基と、触媒量の少なくとも一つのパラジウム錯体化合物との存在下で尿素と反応し、そして、そのパラジウム錯体化合物は少なくとも一つのフェロセニル−ビホスフィン配位子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルト-ビシクロプロピル置換又はオルト-C6-C7アルキル置換のハロベンゼンのアミノ化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、2-ビシクロプロピル-2-イル-フェニルアミン及び2-(1,3-ジメチル-ブチル)-フェニルアミンのようなオルト-ビシクロプロピル置換又はオルト-C6-C7アルキル置換の第一アニリンは、例えば、WO 03/74491及びWO 03/10149で述べられているような殺菌剤の生産のための有益な中間体である。一般的には、農薬は大量に生産される。例えば、2005年度においては、殺菌剤のクロロタロニルは、23,000メトリックトン超の生産量であった。
【0003】
一般的には、例えば、オルト-トリル-アミンのような立体要求性のないアニリンは、Journal of American Chemical Society, 128, 10028-10029, 2006で述べられているように、パラジウム触媒のクロスカップリングの手段によって、アンモニアとハロベンゼンを反応させて生産される。しかし、例えば、オルト-ビシクロプロピル又はオルト-C6-C7アルキル置換のハロベンゼンのような更に立体障害のあるハロベンゼンを一工程でアミノ化することについてのパラジウム含有触媒の成功的な使用は述べられていない。
【0004】
パラジウム触媒のクロスカップリングの手段によって、尿素とハロベンゼンを反応させるオルト-トリル-アニリンを生産する試みは、主な生成物が二量体であるため、成功していない(Russian Journal of Organic Chemistry, 42, 1683-1689, 2006を参照)。
【0005】
WO 03/74491によると、オルト-ビシクロプロピル置換の第一アニリンは、二工程反応で対応のオルト-ビシクロプロピル置換のハロベンゼンを反応させることによって生産可能であり、第一にパラジウム触媒反応でベンゾフェノン-イミンと反応させ、その後、ヒドロキシルアミン塩酸塩及び酢酸ナトリウムか、又は塩酸のような酸で反応生成物を反応させる。ところが、そのような反応手順は、第二処理工程の必要性及び比較的高価なベンゾフェノン-イミンのため、オルト-ビシクロプロピル置換の第一アニリンの大量生産に不適切である。その上、その反応手順は、WO 03/74491において、ブロモベンゼン又はヨードベンゼンに対してだけ述べられており、クロロベンゼンに対しては述べられていない。WO 03/74491で述べられている反応手順は、反応性が低いが経済的に安価な2-(2-クロロフェニル)-ビシクロプロパンを高収率でイミノ化することに対しては不充分である。
【0006】
WO 07/25693によると、オルト-ビシクロプロピル置換の第一アニリンは、二工程反応で対応のオルト-ビシクロプロピル置換のハロベンゼンを反応させることによって生産可能であり、第一にパラジウム触媒反応でベンジルアミンと反応させ、その後、Pd/C-触媒の存在下で、例えば水素でその反応生成物を水素化する。そのような反応手順を大量生産に適用することは、第二処理工程を必要とするために高コストにつながる。
【0007】
銅含有触媒を用いて、立体障害のあるオルト-ビシクロプロピル置換のハロベンゼンを成功的に一工程でアミノ化することは、WO 06/61226に述べられている。しかし、そのような反応手順もまた、銅塩廃棄物管理による高コストのため大量生産に対しては魅力的ではない。その上、WO 06/61226で述べられている反応手順は、反応性が低いが経済的に安価な2-(2-クロロフェニル)-ビシクロプロパンを高収率でアミノ化することに対しては不充分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、オルト-ビシクロプロピル置換の第一アニリンを生産するための新規な方法を提供することであり、その方法は、上述した公知方法の不利な点を回避し、経済的に妥当なコストであって、高収率及び高品質な状態で容易に管理可能な態様でこれらの化合物を生産することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、下記の式(I)の化合物を生産するための方法に関する。
【0010】
【化1】

その式(I)中、R1はC6−C7アルキル又は下記の式で示される基A1である。
【0011】
【化2】

その式中、R2、R3及びR4は、各々互いに独立に水素又はC1−C4アルキルである。
【0012】
下記の式(II)で示される化合物であり、
【化3】

その式(II)中、R1は、その式(I)において定義されたとおりであり、Xは、臭素又は塩素である。その式(II)で示される化合物は、塩基と、少なくとも一つのパラジウム錯体化合物の触媒量との存在下で尿素と反応する。そしてそのパラジウム錯体化合物は、少なくとも一つのフェロセニル−ビホスフィン配位子を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
式(I)の化合物は、様々な立体異性体を生じる。本発明による方法は、個々の立体異性体の生産方法を含み、さらに、任意の割合で混合された立体異性体の生産方法を含む。
【0014】
本発明による方法は、式(I)中のR1がA1であり、R2が水素又はC1−C4アルキルであり、R3及びR4が水素である化合物の生産に好ましく適し、式(I)中のR2が水素又はメチルであり、R3及びR4が水素である化合物の生産に好ましく適する。本発明による方法は、下記の式(IA)の化合物の生産に特に適する。
【0015】
【化4】

【0016】
本発明による方法は、式(I)中のR1が1,3-ジメチル-ブチル又は1,3,3-トリメチル-ブチルである化合物の生産に好ましく適し、式(I)中のR1が1,3-ジメチル-ブチルである化合物の生産により好ましく適する。
【0017】
式(II)中のXが塩素である化合物が、本発明による方法において好ましく用いられる。式(II)中のXが臭素である化合物が本発明による方法において好ましく用いられる。
【0018】
本発明による方法において、式(II)の化合物は、好ましくは、0.01M〜5Mの濃度で用いられ得る。より好ましくは、式(II)の化合物は、0.1M〜5Mの濃度で用いられる。更に好ましくは、式(II)の化合物は、0.1M〜2Mの濃度で用いられる。溶媒がない高濃度出発物質が必要とされるように、高濃度の式(II)の化合物を使用できることは、本発明による方法の重要な利点であり、そのことによって、本発明による方法は大量生産に特に適することとなる。
【0019】
本発明による方法において使用されるパラジウム錯体化合物は、パラジウム前駆体と少なくとも一つのフェロセニル-ビホスフィン配位子とから形成される。本発明による方法において、パラジウム錯体化合物は、パラジウム-配位子錯体として溶解された形態で存在することが好ましい。
【0020】
パラジウム錯体化合物は、本発明による方法において、すでに形成されたパラジウム錯体化合物として用いられてもよいし、本発明による方法において、現場で形成されてもよい。
【0021】
パラジウム錯体化合物を形成するために、パラジウム前駆体は、少なくとも一つのフェロセニル-ビホスフィン配位子と反応する。不完全な反応の場合には、少量のパラジウム 前駆体又は配位子が反応混合物中に溶解しない場合がある。
【0022】
適切なパラジウム前駆体は、酢酸パラジウム、二塩化パラジウム、二塩化パラジウム溶液、パラジウム2(ジベンジリデン−アセトン)3若しくはパラジウム(ジベンジリデン−アセトン)2、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、パラジウム-オン-カーボン、パラジウムジクロロビス(ベンゾニトリル)、パラジウム(トリス-tert-ブチルホスフィン)2 又はパラジウム2 (ジベンジリデン-アセトン)3及びパラジウム(トリス-tert-ブチルホスフィン)2の混合物である。
【0023】
フェロセニル-ビホスフィン配位子は、パラジウム-触媒反応で通常用いられる第三級ホスフィン二座配位子である。そのような二座配位子は、二つの配位部位を占め、それ故に、パラジウム種をキレートすることができる。
【0024】
適切なフェロセニル-ビホスフィン配位子は、
(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン、
【化5】

1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1,1'-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-フェロセン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ビス(4-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチル-ジ-tert-ブチルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジ(3,5-ビス-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチル-ジシクロヘキシルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジ(3,5-ビス-トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)-フェロセニル]エチルジ(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2- (ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)-(+)-1-[(R)-2- (ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)-(+)-1-[(R)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ビス(3,5-ジメチル4-メトキシフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)-(+)-1-[(R)-2-(ジ-フリルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-3,5-キシリルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン、(S)-(+)-1-[(R)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(R)-(+)-1-[(R)-2-(ジフェニル- ホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)-(+)-1-[(R)-2-(ジフェニルホスフィノ)-フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジ-tert-ブチル-ホスフィノ)フェロセニル]エチル-ジ-o-トリルホスフィン、
【化6】

(R)-(-)-1-[(S)-2-(ビス(3,5-ジメチル-4-メトキシフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]-エチル-ジ-tert-ブチルホスフィン、
【化7】

(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジエチルホスフィノ)フェロセニル]-エチル-ジ-tert-ブチルホスフィン、
【化8】

(R)-(-)-1-[(S)-2-(P-メチル-P-イソプロピル-ホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、
【化9】

(R)-(-)-1-[(S)-2-(P-メチル-P-フェニル-ホスフィノ)フェロセニル]エチル-ジ-tert-ブチルホスフィン、
【化10】

及びそれらのラセミ混合物であり、特には、1-[2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチル-ジ-o-トリルホスフィン、1-[2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン及び1-[2-(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィンのラセミ混合物である。
【0025】
一つのパラジウム錯体化合物又はパラジウム錯体化合物の混合物が本発明による方法において用いられてよい。
【0026】
パラジウム錯体化合物の形成に対して、パラジウム前駆体として、酢酸パラジウム、パラジウム2(ジベンジリデン-アセトン)3、パラジウム(ジベンジリデン-アセトン)2、二塩化パラジウム溶液、二塩化パラジウム、パラジウム2(ジベンジリデン-アセトン)3又はパラジウム(トリス-tert-ブチルホスフィン)2の混合物の使用が好ましい。酢酸パラジウム又は二塩化パラジウムの使用がより好ましい。
【0027】
適切なものとしては、酢酸パラジウムは三量体の酢酸パラジウムである。
【0028】
少なくとも一つの配位子はパラジウム錯体化合物の形成のために用いられる。(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン及びラセミの1-[2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィンから選ばれる少なくとも一つの配位子を含むパラジウム錯体化合物の使用が好ましい。
【0029】
ラセミの1-[2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィンを含むパラジウム錯体化合物の使用が好ましい。
【0030】
パラジウム錯体化合物、パラジウム前駆体及び/又は配位子は、本発明による方法において触媒量で用いられる。
【0031】
パラジウム錯体化合物は式(II)の化合物に対して、好ましくは、1:10〜1:10000の比で用いられ、特には、1:50〜1:100の比で用いられる。
【0032】
パラジウム前駆体は式(II)の化合物に対して、好ましくは、1:10〜1:10000の比で用いられ、特には、1:50〜1:500の比で用いられる。
【0033】
配位子は式(II)の化合物に対して、好ましくは、1:10〜1:10000の比で用いられ、特には、1:50〜1:100の比で用いられる。
【0034】
例えば、適切な塩基は、ナトリウムtert-ブタノラート(ナトリウムtert−ブトキドとしてまた知られている)、カリウムtert-ブタノラート(カリウムtert−ブトキシドとしてまた知られている)、ナトリウムメタノラート(ナトリウムメトキシドとしてまた知られている)若しくはナトリウムエタノラート(ナトリウムエトキシドとしてまた知られている)が例として挙げられるアルコラートであり、又はK2CO3、Na2CO3若しくはCs2CO3のような炭酸塩、NaOH若しくはKOHのような水酸化物、K3PO4のようなリン酸塩が例として挙げられる無機塩基であり、一つの実施形態として、アルコラートが好ましく、ナトリウムtert-ブタノラートがより好ましい。
【0035】
NaOH又はKOHが塩基として用いられる場合に、例えば、セチルトリメチル臭化アンモニウム又はクラウンエーテルのような相間移動触媒が用いられてよい。
【0036】
この反応に対する塩基の適切な量は、例えば、1〜6当量であり、特には1〜2当量である。
【0037】
本発明による反応は、適宜、水で希釈された不活性溶媒中で実行されてよい。本発明の一つの実施形態として、本発明による反応は不活性溶媒で実行される。適切な溶媒は、例えば、下記式(V)の化合物である。
【化11】

その式中、Rは、C1-C6アルキルであり、好ましくはメチルである。適切な溶媒は、例えば、ジメトキシエタン、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジエチルエーテル若しくはアニソールのようなエーテル溶媒、例えばスルホランのようなスルホン溶媒、例えば、N-メチルピロリドン若しくはジメチルアセトアミドのようなアミド溶媒、又は例えば、トルエン、キシレン、若しくはメシチレンのようなトリメチルベンゼンのような芳香族炭化水素溶媒、及びそれらの溶媒の混合溶媒である。好ましい溶媒は、エーテル溶媒及びアミド溶媒である。一つの実施形態において、溶媒はアミド溶媒であり、より好ましくはN-メチルピロリドンである。他の実施形態において、溶媒はエーテルであり、より好ましくは、ジエチレングリコールジエチルエーテルである。
【0038】
一つの実施形態において、不活性溶媒は無水物であり、脱気されていることが好ましい。
【0039】
本発明による反応は、室温又は高温で実行され、好ましくは、500℃〜1800℃の温度範囲で実行され、特には50℃〜140℃の温度範囲で実行される。
【0040】
本発明による反応は、標準圧で実行されてよいが、制限されることはない。
【0041】
本発明による反応の反応時間は、一般的には、0.5〜48時間であり、好ましくは1〜30時間であり、特には1〜18時間である。
【0042】
本発明による反応は、不活性ガス雰囲気で実行されてよい。例えば、窒素又はアルゴンが不活性ガスとして使用される。
【0043】
本発明による反応において、尿素は、典型的には、式(II)の化合物に対して等モル量又は過剰量で用いられ、好ましくは10倍の過剰量まで用いられ、特には5倍の過剰量まで用いられ、更に特には1.3倍〜2倍の過剰量で用いられる。
【0044】
式(Il)の化合物は一般的には公知であり、WO 03/74491、WO 03/10149及びWO 07/2569において記載されている方法にしたがって生産され得る。
【0045】
本発明による方法において用いられるパラジウム錯体化合物、パラジウム前駆体及び配位子は一般的には公知であり、大部分のものが市販されている。
【0046】
本発明は、次の実施例を用いて更に詳細に説明される。
【実施例】
【0047】
実施例P1:2-ビス-シクロプロピルアニリン(化合物A1)の生産
アルゴン雰囲気下で、4mlの脱気されたN-メチルピロリドン中の811mgの2-(2-クロロフェニル)ビシクロプロピル、18mgの酢酸パラジウム(三量体)、43mgの(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン、365mgの尿素及び2.4gのナトリウムtert-ブタノラートを、1340Cに昇温して5hの間攪拌をした。反応混合物中の2-ビスシクロプロピルアニリン(化合物A1)の含有量/純度を、ガスクロマトグラフィーによって決定した。79.9%(GC面積)の2-ビスシクロプロピルアニリンを検出し、同時に1.3%(GC面積)の出発物質、6.7%(GC面積)の二量体の副生成物及び2.9%(GC面積)の脱ハロゲン化された副生成物を検出した。反応物を水で急冷し、N-メチルピロリドンで希釈し、トルエンで3回抽出した。有機溶媒を真空内で除去した。粗生成物を、シリカゲル(1%(v/v)トリエチルアミンを添加したヘキサン: 酢酸エチルが10/1である。)を用いて、クロマトグラフィーによって精製した。僅かにオレンジの液体の形態で、496mg(理論的に68%)の2-ビスシクロプロピルアニリンを得た。そして、その生成物をNMRで解析した。
【0048】
実施例P2:2-ビス-シクロプロピルアニリン (化合物A1)の生産
アルゴン雰囲気下で、8mlの脱気されたジエチレングリコールジエチルエーテル中の865mgの2-(2-クロロフェニル)ビシクロプロピル、18mgの酢酸パラジウム(三量体)、46mgの(R)-(-)-1-[(S)-2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィン、363mgの尿素及び2.4gのナトリウムtert-ブタノラートを、1440Cに昇温して5hの間攪拌をした。反応混合物中の2-ビスシクロプロピルアニリン(化合物A1)の含有量/純度を、ガスクロマトグラフィーによって決定した。70.7%(GC面積)の2-ビスシクロプロピルアニリンを検出し、同時に19%(GC面積)の二量体の副生成物及び9%(GC面積)の脱ハロゲン化された副生成物を検出した。
【0049】
上述の実施例を用いて、式(I)の次の化合物を生産することができた。
【化12】

【表1】

【0050】
本発明の提供による結果として、オルト-ビシクロプロピル又はオルト-C6-C7アルキル置換のハロベンゼンを、高収率、かつ、僅かな経費でアミノ化をすることが可能である。
【0051】
容易に入手可能で、かつ、簡単にハンドリングが可能なことは、本発明の方法の出発化合物を差別化し、さらに、それらの化合物は経済的な価格である。
【0052】
本発明による方法の好ましい実施形態として、本発明で用いられるパラジウム及び/又はパラジウム錯体化合物は再生利用される。この実施形態は本発明による方法の改良形態を構成し、そしてその改良形態は経済的な観点から特に関心を引くことになる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態として、Xが塩素である式(II)の化合物が用いられる。特に容易に入手可能で、かつ、簡単にハンドリングが可能なことは、本発明の方法によるこの好ましい実施形態の出発化合物を差別化する。ところが、パラジウム触媒のクロスカップリングの条件で、この部類の出発化合物であって、立体障害的であり、不活性であり、そして、少なくともオルト置換であるクロロベンゼン基材は、ブロモベンゼンと比較して、反応性が極端に低い塩素離脱基のためアミノ化することに対して特に困難である。本発明のこの実施態様によって、それらの出発化合物は、パラジウム触媒クロスカップリングが容易に可能となるので、結果的に、この実施形態は本発明による方法の改良形態を構成し、そしてその改良形態は、経済的な観点から特に関心を引くことになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示される化合物の生産方法であって、
【化1】

(該式(I)、R1はC6−C7アルキル又は下記の式で示される基A1であり、
【化2】

該式中、R2、R3及びR4は、各々互いに独立に水素又はC1−C4アルキルである。)
下記の式(II)で示される化合物
【化3】

(該式(II)中、R1は、該式(I)において定義されたとおりであり、Xは、臭素又は塩素である。)が、塩基と、触媒量の少なくとも一つのパラジウム錯体化合物との存在下で尿素と反応し、該パラジウム錯体化合物が少なくとも一つのフェロセニル−ビホスフィン配位子を含む、生産方法。
【請求項2】
前記パラジウム錯体化合物が、ジ-tert-ブチル-[1-[2-(ジシクロヘキシルホスフィニル)フェロセニル]エチル]ホスフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラジウム錯体化合物が、ラセミのジ-tert-ブチル-[1-[2-(ジシクロヘキシルホスフィニル)フェロセニル]エチル]ホスフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パラジウム錯体化合物が、式(II)の化合物に対して1:10000から1:10の比で用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応が不活性溶媒中で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記式(II)中のXが塩素である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−532773(P2010−532773A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515381(P2010−515381)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005338
【国際公開番号】WO2009/007033
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】