説明

アミン化合物、ポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造法

【課題】 ゲル化時間の短縮が可能で揮発成分となる3級アミン成分の少なく操作性が向上したウレタンフォームを得るために、少ない使用量で有効である高い触媒活性を有するポリオール組成物を提供する。
【解決手段】 ポリウレタンフォーム製造の際に、下記一般式(1)で表されるアミン化合物からなるポリウレタンフォーム製造用の触媒活性を有するポリオール組成物を用い、ポリイソシアネート成分と発泡剤、触媒及び整泡剤の存在下で発泡させてポリウレタンフォームを製造する。
【化1】


(式中、RとRは同一又は相異なって、水素又は炭素数1〜3の飽和炭化水素を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に第3級アミノ基を2個有し、ジヒドロキシプロピル基を有するアミン化合物、それを含有するポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物、及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、ポリオールとポリイソシアネートとを触媒、発泡剤、及び必要に応じて、界面活性剤、難燃剤、架橋剤等の他の助剤の存在下に反応させることにより製造される。ポリウレタンフォームは、自動車用シートクッション、マットレス、家具等に用いられる軟質ポリウレタンフォームや、自動車インストルメントパネル、ヘッドレスト、アームレスト等に用いられる半硬質ポリウレタンフォーム、電気冷蔵庫、建材等に用いられる硬質ポリウレタンフォームとして広く使用されている。
【0003】
これらポリウレタンフォーム製造用の触媒としては、従来、数多くの金属系化合物や第3級アミン化合物が広く用いられている。また、これら触媒は単独又は併用することにより工業に多用されている。
【0004】
これら触媒のうち、とりわけ第3級アミン化合物は、ポリウレタンフォームの製造に際し、生産性、成形性に優れる触媒として知られている。その代表例としては、従来公知のトリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
ところで、前記の触媒を用いてポリウレタンフォームの成形速度を促進させるためには、これらの触媒を多量に用いる必要がある。例えば、第3級アミン触媒は、一般に揮発性であり悪臭が強いため、多量に使用すると、ポリウレタンフォーム製造時の作業環境が著しく悪化する。また、得られた製品も悪臭等の問題を有することになる。
【0006】
これら揮発性の第3級アミン化合物に代わる触媒として、分子内にポリイソシアネートと反応しうる水酸基を有するアミン触媒を使用する方法が提案されている。また、揮発性の第3級アミン化合物を低減するため、触媒活性を有するポリオール組成物を使用する方法が提案されている。
【0007】
例えば、触媒として、低臭気性で非移行性のN,N−ジメチルアミノプロピルアミンのエチレンオキサイド付加物を用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
一方、触媒活性を有するポリオール組成物として、アルカノールアミンのアルキレンオキシド付加物を用いる硬質ウレタンフォームの製造法が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
また、ヒドロキシル数が約767mgKOH/gのエチレンジアミンのプロピレンオキシド付加物(商品名:クアドロール)を架橋剤として用いる射出成形用硬質ウレタンフォームが提案されている(特許文献3参照)。
【0010】
また、ジフェニルメタン系のポリイソシアネートとの反応のためのポリオール成分として、テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン[クアドロールL(商標名:QuadrolL)]が提案されている(特許文献4参照)。
【0011】
さらには、ポリオールを第3級アミンにより末端キャッピングすることにより得られるポリオール[例えば、3,3−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミンにより開始され、15%のエチレンオキサイドを含有するプロポキシル化クアドロール(Quadrol)]を用いたポリウレタン製品の製造法が提案されている(特許文献5参照)。
【0012】
【特許文献1】特開昭63−265909号公報
【特許文献2】米国特許第4,555,531号公報
【特許文献3】特許第2828450号公報
【特許文献4】特開平5−155966号公報
【特許文献5】特表2007−516340号公報
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社P.118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記したようなアルキレンオキサイドのアミン付加物は分子量が大きく、それ自体の触媒活性が低いために、揮発性の第3級アミン触媒を使用する量が多くなる傾向がある。そのため、ウレタンフォーム自体の物性への影響が懸念されるという問題が生じていた。
【0014】
本発明は、前記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリウレタンフォームの製造において高い触媒活性を有し、成形速度が促進される化合物、及びそれを用いることにより、揮発性の第3級アミン触媒の使用量が低減でき、操作性が向上したポリウレタンフォームの製造法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリウレタンフォーム製造の際に、分子内に第3級アミノ基を2個有し、ジヒドロキシプロピル基を有する特定のアミン化合物を用いると、揮発性の第3級アミン触媒の使用量を低減でき、しかも得られるポリウレタンフォームの機械的強度を損なわずに、速い成形速度でウレタンフォームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの、アミン化合物、ポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造法である。
【0017】
[1]下記一般式(1)で表されるアミン化合物。
【0018】
【化1】

(式中、RとRは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3の飽和炭化水素基を示す。但し、RとRは共に水素原子である場合はない。)
[2]前記[1]に記載のアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)を含有するポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物。
【0019】
[3]前記[1]に記載のアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)1〜100重量%と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及び難燃性ポリオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(b)99〜0重量%とからなり、ポリオール(a)とポリオール(b)との合計が100重量%であるポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物。
【0020】
[4]ポリオール(a)が、N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミンであることを特徴とする前記[2]又は[3]に記載のポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物。
【0021】
[5]ポリオールとポリイソシアネートとを触媒、及び発泡剤の存在下で反応させるポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールとして前記[2]乃至[4]のいずれかに記載のポリオール組成物を用いることを特徴とするポリウレタンフォームの製造法。
【0022】
[6]前記[1]に記載のアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)を、ポリイソシアネート100重量部に対して1〜50重量部用いることを特徴とする前記[5]に記載のポリウレタンフォームの製造法。
【0023】
なお、本発明において、軟質ポリウレタンフォームとは、一般的にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう。軟質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度(ILD25%)が200〜8000kPa、伸び率が80〜500%の範囲である。
【0024】
また、半硬質ポリウレタンフォームとは、フォーム密度及び圧縮強度は軟質ポリウレタンフォームよりも高いものの、軟質ポリウレタンフォームと同様にオープンセル構造を有し、高い通気性を示す可逆変形可能なフォームをいう。使用するポリオール、イソシアネート原料が軟質ポリウレタンフォームと同様であるため、本発明においては、軟質ポリウレタンフォームに包含する場合がある。半硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が40〜800kg/m、圧縮強度(ILD25%)が10〜200kPa、伸び率が40〜200%の範囲である。
【0025】
さらに、硬質ポリウレタンフォームとは、高度に架橋されたクローズドセル構造を有し、可逆変形不可能なフォームをいう。硬質ウレタンフォームの物性は、特に限定するものではないが、一般的には、密度が10〜100kg/m、圧縮強度が50〜1000kPaの範囲である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のアミン化合物は、ウレタン形成において高活性な自己触媒的性質を有するため、ポリウレタンフォーム製造用のポリオールとして有用である。。
【0027】
本発明のポリウレタンフォームの製造法によれば、揮発性の第3級アミン触媒の使用量を低減することができるため、操作性及び作業性が向上したポリウレタンフォームを得ることができる。
【0028】
また、得られるポリウレタンフォームは、吐出成型に適する高い機械的強度を有し、成形速度も速いため、本発明のポリウレタンフォームの製造法はスプレー式ポリウレタンフォームの製造において、特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明のアミン化合物は、前記一般式(1)で表される化合物であって、分子内に第3級アミノ基を2個有し、ジヒドロキシプロピル基を有する。
【0030】
本発明のアミン化合物の製造法としては、特に限定するものではないが、例えば、米国特許第5,312,617号明細書に記載の方法により得られるN,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−エチレンジアミンを還元アルキル化する方法(例えば、W.S.Emerson,Orgnic Reactions vol.IV、P.194参照)、3−ハロゲノ−1,2−ジヒドロキシプロパンとN,N’−ジアルキルエチレンジアミンとの反応、グリシドールとN,N’−ジアルキルエチレンジアミンとの反応等が挙げられる。
【0031】
本発明のポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物は、前記一般式(1)で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)を含む組成物である。好ましくは、前記ポリオール(a)1〜100重量%と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及び難燃性ポリオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(b)99〜0重量%とからなり、ポリオール(a)とポリオール(b)との合計が100重量%の組成物である。
【0032】
本発明においては、前記一般式(1)で表されるアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)2〜98重量%と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及び難燃性ポリオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(b)98〜2重量%とからなり、(a)と(b)との合計が100重量%の組成物がより好ましい。
【0033】
本発明のポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物において、ポリオール(a)としては、N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミンが、ポリウレタンフォームの成形速度をより速くするため特に好ましい。
【0034】
一方、本発明のポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物において、ポリオール(b)として使用されるポリエーテルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等の、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これにエチレンオキシドに代表されるアルキレンオキサイドを付加反応させることにより製造されたポリエーテルポリオールが挙げられる[具体的には、GuterOertel,“Polyurethane Handbook”(1985年版)Hanser Publisher社(ドイツ)42〜53頁参照]。
【0035】
ポリエステルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、二塩基酸(主にアジピン酸)とグリコールとトリオールとの脱水縮合反応から得られるものや、ナイロン製造時の廃物、TMP、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステル等が挙げられる[具体的には、岩田敬治著「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)日刊工業新聞社P.117参照]。
【0036】
ポリマーポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、前記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えばブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0037】
難燃性ポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られる含リンポリオール、エピクロロヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られる含ハロゲンポリオール、フェノールポリオール等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリオール組成物において、ポリオール(b)に該当する前記ポリオールの平均水酸基価としては、20〜1000mgKOH/gの範囲が好ましい。軟質ポリウレタンフォームの製造法においては、平均水酸基価が20〜100mgKOH/gの範囲のポリオールが好ましく、さらに20〜80mgKOH/gの範囲のポリオールが、特に好適に使用される。一方、硬質ポリウレタンフォームの製造法においては、平均水酸基価が100〜800mgKOH/gの範囲のポリオールが好ましく、さらに200〜700mgKOH/gの範囲のポリオールが、特に好適に使用される。
【0039】
本発明のポリウレタンフォームの製造法は、ポリオールとポリイソシアネートとを触媒、及び発泡剤の存在下で反応させるポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールとして前記した本発明のポリオール組成物を用いることをその特徴とする。
【0040】
本発明のポリウレタンフォームの製造法に使用されるポリイソシアネートとしては、特に限定するものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す場合がある。)、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと略す場合がある。)、ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略す場合がある。)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す場合がある)等の脂肪族イソシアネート類等が挙げられる。これらのうち好ましくはTDIとその誘導体、又はMDIとその誘導体であり、これらは混合して使用しても差し支えない。
【0041】
TDIとその誘導体としては、2,4−TDIと2,6−TDIの混合物又はTDIの末端イソシアネートプレポリマー誘導体を挙げることができる。MDIとその誘導体としては、MDIとその重合体のポリフェニルポリメチレンジイソシアネートの混合体、及び/又は末端イソシアネート基をもつジフェニルメタンジイソシアネート誘導体を挙げることができる。
【0042】
これらポリイソシアネートとポリオールの混合割合としては、特に限定するものではないが、イソシアネートインデックス(イソシアネート基/イソシアネート基と反応しうる活性水素基)で表すと、一般に60〜400の範囲である。
【0043】
本発明のポリウレタンフォームの製造法において、前記一般式(1)で表されるアミン化合物の使用量は、ポリイソシアネート100重量部に対して、通常1〜50重量部の範囲であるが、好ましくは2〜25重量部の範囲である。
【0044】
本発明のポリウレタンフォームの製造法においては、本発明を逸脱しない範囲で、触媒を用いることができる。触媒としては、ポリウレタンフォームの製造に一般に使用される触媒であれば、特に限定するものではないが、例えば、有機金属触媒や、カルボン酸金属塩触媒、第3級アミン触媒、第4級アンモニウム塩触媒等を挙げることができる。
【0045】
有機金属触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、オクタン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、オクタン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、オクタン酸ニケッル、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。鉛、錫、水銀等の重金属は毒性問題や環境問題を引き起こすおそれがあるため、使用量は少ない方が望ましい。
【0046】
カルボン酸金属塩触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、カルボン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられる。カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、2−エチルへキサン酸、アジピン酸等の脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、安息香酸、フタル酸等の芳香族モノカルボン酸及びジカルボン酸等が挙げられる。また、カルボン酸塩を形成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属が好適な例として挙げられる。
【0047】
第3級アミン触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチル−(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,3,5−トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール,1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ジメチルアミノプロピルイミダゾール等の第3級アミン化合物類が挙げられる。
【0048】
第4級アンモニウム塩触媒としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム蟻酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム蟻酸塩、2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2−エチルへキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0049】
本発明のポリウレタンフォームの製造法に用いられる発泡剤としては、水、フロン系化合物、低沸点炭化水素、炭酸ガス等が挙げられ、これらのうち、水が特に好ましい。また、フロン系化合物、低沸点炭化水素、炭酸ガス等と水と併用してもよい。
【0050】
フロン系化合物としては、従来公知のものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、ジクロロモノフルオロエタン(HCFC−141b)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)等が挙げられる。これらのうち、オゾン層破壊の問題から、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)が好ましい。
【0051】
低沸点炭化水素としては、通常、沸点が0〜70℃の範囲の炭化水素が使用され、具体的にはプロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びこれらの混合物が例示される。
【0052】
本発明のポリウレタンフォームの製造法において、必要であれば、整泡剤として界面活性剤を用いることができる。使用される界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン−グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が例示される。それらの使用量は、ポリオール100重量部に対して通常0.1〜10重量部の範囲である。
【0053】
本発明のポリウレタンフォームの製造法において、必要であれば、架橋剤又は鎖延長剤を用いることができる。架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、従来公知のエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロロアニリン等のポリアミン類を挙げることができる。
【0054】
本発明のポリウレタンフォームの製造法において、必要であれば、難燃剤を用いることができる。使用される難燃剤としては、例えば、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオールに代表される反応型難燃剤、トリクレジルホスフェート等の第3級リン酸エステル類、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等のハロゲン含有第3級リン酸エステル類、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン含有有機化合物、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物等が挙げられる。それらの使用量は、要求される難燃性に応じて異なるため、特に限定するものではないが、通常ポリオール100重量部に対して4〜20重量部の範囲である。
【0055】
本発明のポリウレタンフォームの製造法においては、必要に応じて、着色剤や、老化防止剤、その他従来公知の添加剤等も使用できる。これらの添加剤の種類、添加量は、使用される添加剤の通常の使用範囲でよい。
【0056】
本発明のポリウレタンフォームの製造法は、本発明の方法は、前記原料を混合した混合液を急激に混合、攪拌した後、適当な容器又はモールドに注入して発泡成型することにより行われる。混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施すれば良い。ポリウレタン発泡機としては高圧、低圧及びスプレー式の機器が使用できる。
【0057】
本発明の製造法により得られるポリウレタンフォーム製品としては、スプレー式のフォームにて製造される断熱建材が好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の詳細について実施例を用いて説明するが、それらは本発明を限定するものではない。
【0059】
なお、本発明で使用されるポリオール組成物の構造は、GC−MS、元素分析、H−NMRにより確認した。また、本反応による生成物の純度は、ガスクロマトグラフィーにて確認した。
【0060】
GC−MS:日本電子(株)製 GC−MSJMS−K9を用い、カラムは100%ジメチルポリシロキサン、昇温条件で行った。
【0061】
H−NMR:バリアン テクノロジーズ ジャパン リミテッド社製 gemini200を用い、CDCl溶媒中で行った。
【0062】
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製 GC−17Aを用い、キャピラリーカラム(GL Science社製 NB−5)、検出器(FID)、50℃で5分保持後に300℃まで10℃/分で昇温して行った。
【0063】
実施例1 N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミンの合成.
還流コンデンサーを備え付けた500mlの四つ口フラスコにN,N’−ジメチルエチレンジアミン40.0g(0.45mol)とメタノール198.7gを仕込み、窒素雰囲気下、攪拌状態で60℃まで昇温した。続けて、フラスコ内にグリシドール79.0g(1.07mol)を含むメタノール溶液158.0gを内温が62℃以下となるように約50分かけて滴下し、更に1時間熟成反応を行った。反応終了後、反応液についてガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、原料のN,N’−ジメチルエチレンジアミンは全て消失したことを確認した。
【0064】
次いで、反応液を減圧条件下で濃縮し、淡黄色粘調物119.0gを得た。得られた粘調物についてキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、特徴的なメインピークが97.2GC面積%で観察されたが、トリメチルシリル化剤(和光純薬製TMS−HT)を用いて処理後のGC−MS測定で分子量が524であることが確認され、この化合物はN,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミンであることが確認された。また、得られた淡黄色粘調物のH−NMRを測定したチャートを図1に示した。以下、この得られたアミン化合物をポリオールAと称する。
【0065】
実施例2〜実施例3及び比較例1〜比較例3 硬質ポリウレタンフォームの調製.
ポリオールとして、ポリオールAとシュークロース系ポリエーテルポリオール(以下、ポリオールBと称する。)とからなるポリオール組成物を用いた例を実施例とし、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン(合成品。以下、ポリオールCと称する。)とポリオールBとからなるポリオール組成物を用いた例、ポリオールBのみを用いた例を比較例として、以下に示す。
【0066】
表1に示した原料配合比にてプレミックスAを調合した。
【0067】
【表1】

表1で示す配合の各プレミックスA55gを300mlポリエチレンカップに取り、25℃に温度調整した。別容器で25℃に温度調整したイソシアネート液を、イソシアネートインデックス[=イソシアネート基/OH基(モル比)×100]が110となる量、プレミックスAのカップの中に入れ、素早く撹拌機にて7000rpmで4秒間撹拌した。混合撹拌した混合液を25℃に温度調節した2リットルのポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を測定した。
【0068】
混合液を入れた時点から5分後にフォームを脱型し、7cm×7cm×20cmのコアフォームを図2に示したように切り出し、コア密度の測定を行った。更に、一辺が4.5cmの立方体のフォームを2個切り出し、水平方向と垂直方向の圧縮強度を測定し比較した。結果を表2に合わせて示す。各測定項目の測定方法は以下のとおりである。
【0069】
【表2】

(1)測定項目
クリームタイム:フォームが上昇開始する時間を目視にて測定した。
【0070】
ゲルタイム:反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を測定した。ゲルタイムが短いほど成形速度が速いと言える。
【0071】
ライズタイム:フォームの上昇が停止する時間を目視にて測定した。
【0072】
コア密度:モールド成型フォームの中心部を7×7×20(cm)の寸法にカットし、この寸法、重量を正確に測定してコア密度を算出した。
【0073】
圧縮強度:フォームコア密度を測定したフォームから寸法4.5×4.5×4.5(cm)のフォームを切り出し試験片とし、以下のとおり、硬さ試験を実施した。すなわち、JIS K 7220に準じ、試験片を試験機の台上に平らに置き、半径10cmの円形加圧板を試験片の上面に載せて、荷重を0.5kgf(4.9N)にした時の厚さを測定し、これを初めの厚さとした。次に円形加圧板を初めの厚さの25%押し込んだ時の圧縮応力を読み取った。フォーム硬度は以下の式を用いて算出し、圧縮強度とした。
【0074】
フォーム硬度(N/mm)=円形加圧板を用いて得られた圧縮応力(N)÷円形加圧板に接地したフォーム部分の面積(mm
表2から明らかなように、実施例2〜実施例3と、比較例1〜比較例2の反応性を比較すると、実施例2〜実施例3の方がゲルタイムが短く、成形速度が速い。すなわち、ポリオールAはポリオールCより少ない量で同等の成形速度が得られることが示された。
【0075】
また表2から明らかなように、実施例2〜実施例3と、比較例1〜比較例3のフォーム物性を比較すると、ポリオールAとポリオールBを併用した場合は、ポリオールBの単独使用の場合よりも、コア密度、圧縮強度(垂直)及び圧縮強度(平行)はともに高くなること、ポリオールAとポリオールCとを併用した場合と同等のフォーム物性になることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施例1で得られたN,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミンのH−NMRを測定したチャートである。
【図2】コア密度と圧縮強度の測定用コアフォームの切り出し位置を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアミン化合物。
【化1】

(式中、RとRは各々独立して、水素原子又は炭素数1〜3の飽和炭化水素基を示す。但し、RとRは共に水素原子である場合はない。)
【請求項2】
請求項1に記載のアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)を含有するポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)1〜100重量%と、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、及び難燃性ポリオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(b)99〜0重量%とからなり、ポリオール(a)とポリオール(b)との合計が100重量%であるポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物。
【請求項4】
ポリオール(a)が、N,N’−ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミンであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のポリウレタンフォーム製造用のポリオール組成物。
【請求項5】
ポリオールとポリイソシアネートとを触媒、及び発泡剤の存在下で反応させるポリウレタンフォームの製造法であって、ポリオールとして請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のポリオール組成物を用いることを特徴とするポリウレタンフォームの製造法。
【請求項6】
請求項1に記載のアミン化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のポリオール(a)を、ポリイソシアネート100重量部に対して1〜50重量部用いることを特徴とする請求項5に記載のポリウレタンフォームの製造法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−286947(P2009−286947A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142585(P2008−142585)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】