説明

アラザイムを有効成分とする癌予防及び治療用組成物

本発明は、アラザイムを有効成分とする癌の予防及び治療用薬学的組成物に関する。詳細には、アラニコラプロテオチリクスが生産するアラザイムをヒト肺癌細胞株が移植されたヌードマウスに投与すると、体重の増加、腫瘍細胞の抑制及び浸潤減少現象が現われて、MMP−9、NF−κB及びPCNAの発現様相が減少される。また、ヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)に処理すると、腫瘍細胞の成長、分化、増殖及び転移に係わるp21、PCNA、VEGF、BCl2、p−p38、PKC及びMMP−1の発現が減少され、腫瘍発生を抑制する役割をするカタラーゼの発現が増加される。したがって、アラザイムを癌の予防及び治療用薬学的組成物として有用に使用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラザイム(arazyme)を有効成分とする癌予防及び治療用組成物に関するもので、より詳細には、アラニコラプロテオチリクス(Aranicola proteolyticus)が生産するアラザイムを含む癌予防及び治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は、非正常的で非制御性かつ無秩序な細胞増殖の産物である。このような腫瘍が、破壊的な成長性、浸湿性及び転移性を有する場合は、悪性に分類される。浸湿性というのは、周囲組織を浸潤または破壊する性質で、一般的に組織の境界をなす基底層を破壊して腫瘍が局所的に伝播されることを意味して、たびたび体内の循環系にも流入する。転移というのは、一般的にリンパ管または血管によって、原発位置とは異なる所に腫瘍細胞が広がることを意味する。転移はまた、腸液性体腔または他の空間を通じて直接伸長して腫瘍細胞を移動させることを意味したりする。
【0003】
癌の発病には、遺伝的素因も深く関与するが、環境的要因も大きな影響を及ぼし、先進国であればあるほど癌の発病が増加する傾向を示している。これに関する可能な原因としては、農薬、殺虫剤などの使用量及び食品内の残留量の増加、食品保存剤、防腐剤、着色剤などが添加された加工食品の消費増加、水質、土壌、大気汚染の増加、現代人のストレス増加、活動量の減少、そして豊かな食生活による肥満などが報告されている(Kim HJ,等,Liv Sci of Tj Univ.,1997年,第3巻,99−130頁(非特許文献1);Jacobs MM,Nutr Tod,1993年,第28(3)巻,19−23頁(非特許文献2))。
【0004】
腫瘍が成長と転移をするためには、新生血管形成が必須過程である(Folkman J,J Natl Cancer Inst,1990年,第82巻,4−6頁(非特許文献3))。新生血管形成は、増殖する腫瘍に栄養分と酸素を供給するだけではなく、原発病場所から血管壁を通じた腫瘍細胞の貫通と遠隔臓器への転移を可能にする(Kim KJ,等,Nature,1993年,第362巻,841−844頁(非特許文献4))。
【0005】
現在、癌は主に3種の治療法、すなわち外科的な手術、放射線照射及び化学療法の中で1種またはこれらの組み合わせによって治療されている。手術は、疾病組織を大部分除去することを含む。このような外科的手術は、特定部位、例えば乳房、結腸および皮膚に位置した腫瘍を除去するには効果的であるが、脊椎のような一部区域にある腫瘍を治療したり、白血病のような分散性腫瘍疾患を治療したりするのには、使用することができない。
【0006】
化学療法は、細胞複製または細胞代謝を崩壊させて、乳房、肺及び精巣の癌を治療するのに多く使用されるが、腫瘍疾病を治療するのに使用される全身性化学療法の副作用は、癌治療を受ける患者たちにとって最も問題になる。このような副作用の中で、吐き気と嘔吐は、最も一般的で深刻な副作用である。化学療法による副作用は、患者の生命に大きな影響を及ぼし、治療に対する患者の順応性を急激に変化させ得る。また、化学治療剤と係わる副作用には、一般的にこのような薬物の投与時に注意しなければならない用量制限毒性(DLT)がある。例えば、粘膜炎は、多くの抗癌剤、例えば抗代謝物質細胞毒素体である5−フルオロウラシル、メトトレキセート及び抗腫瘍抗生剤(例、ドキソルビシン)などに対する用量制限毒性である。このような化学療法由来の副作用の中で大部分は、ひどい場合には、入院を要したり痛症を治療するために痛み止めを必要としたりする。このように化学治療剤及び放射線治療による副作用は、癌患者の臨床的処置時の主な問題となっている。また、従来の抗癌剤は、正常細胞まで殺傷する場合が多いため、最近では正常細胞には作用しないで癌細胞にのみ作用することができる新しい機序の抗癌剤に対する研究が進められている。
【0007】
一方、本発明者等は、新しいタンパク質分解酵素を開発しようと努力した結果、韓国産ジョロウグモ(Nephila clavata)から新規微生物であるアラニコラプロテオチリクス(Aranicola proteolyticus)HY−3菌株(受託番号:KCTC0268BP;WO01/57222号(特許文献1))を分離し、本菌株から新規なタンパク質分解酵素であるアラザイムを分離した。アラザイムは、低温と高い塩濃度で安定したタンパク質分解活性を示すのみならず、人の体温である37℃で最も高い活性を示し、広いpH範囲でも安定した活性を示すことを発見して、本タンパク質分解酵素の遺伝子を確認した(WO01/57222号(特許文献1))。
【0008】
本発明者等は、アラニコラプロテオチリクス菌株に由来したアラザイムの効果を調査した結果、アラザイムは、ヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌード(Nude)マウスにおいて、体重の増加と腫瘍細胞抑制作用を起こし、MMP−9、NF−κB及びPCNAの発現様相を減少させ、またヒト乳癌細胞株(MDA−MB−231)で、p21、PCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、BCl2(B−cell CLL/lymphoma 2)、p−p38、PKC(Protein Kinase C)及びMMP−1(Matrix MetalloProteinase−1)の発現は、減少させて、カタラーゼの発現は、増加させることを確認して、癌予防及び治療用組成物として有用に使用できることを明らかにして本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO01/57222号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kim HJ,等,Liv Sci of Tj Univ.,1997年,第3巻,99−130頁
【非特許文献2】Jacobs MM,Nutr Tod,1993年,第28(3)巻,19−23頁
【非特許文献3】Folkman J,J Natl Cancer Inst,1990年,第82巻,4−6頁
【非特許文献4】Kim KJ,等,Nature,1993年,第362巻,841−844頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アラニコラプロテオチリクスが生産するアラザイムを有効成分とする癌予防及び治療用組成物、及びこれを使用した予防及び治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、アラザイムを有効成分として含む癌予防及び治療用薬学的組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを有効成分として含む癌予防及び改善用健康食品を提供する。
【0014】
また、本発明は、薬学的に有効量のアラザイムを癌にかかった個体に投与する工程を含む癌治療方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、薬学的に有効量のアラザイムを癌にかかった個体に投与する工程を含む癌予防方法を提供する。
【0016】
同時に、本発明は、アラザイムを癌予防及び治療剤の製造に使用する用途を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアラニコラプロテオチリクスが生産するアラザイムは、腫瘍細胞の成長、分化、増殖及び転移に係わるMMP−9、NF−κB、p21、PCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、BCl2(B−cell CLL/lymphoma 2)、p−p38、PKC(Protein Kinase C)及びMMP−1(Matrix MetalloProteinase−1)の発現を減少させて、腫瘍発生を抑制する役割をするカタラーゼの発現を増加させることにより、癌予防及び治療用組成物として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、体重の変化を示したグラフである: 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図2】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、腫瘍の大きさを示したグラフである: 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;T3:アラザイム600mg/kg、経口投与;*:p<0.05;及び**:p<0.01。
【図3】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後の組織学的写真である(13倍率及び33倍率): 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図4】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、MMP−9の免疫組織学的写真である(33倍率及び66倍率): 対照群:アラザイム 0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム 150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム 300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム 600mg/kg、経口投与。
【図5】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、MMP−9の免疫組織化学的発現程度を示したグラフである: 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図6】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、NF−κBの免疫組織学的写真である(33倍率及び66倍率): 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図7】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、NF−κBの免疫組織化学的発現程度を示したグラフである: 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図8】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、PCNAの免疫組織学的写真である(66倍率及び132倍率): 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図9】ヒト肺癌細胞株(A549)が移植されたヌードマウスにアラザイムを投与した後、PCNAの免疫組織化学的発現程度を示したグラフである: 対照群:アラザイム0mg/kg、経口投与;T1:アラザイム150mg/kg、経口投与;T2:アラザイム300mg/kg、経口投与;及びT3:アラザイム600mg/kg、経口投与。
【図10】ヒト乳癌細胞株(MDA−MB−231)でアラザイム(60μg/ml)処理による腫瘍細胞の成長、分化、増殖及び転移に係わるタンパク質の発現変化を観察した免疫ブロッティング(immunoblotting)結果を示した図である。
【図11】ヒト乳癌細胞株(MDA−MB−231)でアラザイム(60μg/ml)処理による腫瘍細胞の成長、分化、増殖及び転移に係わるタンパク質の発現変化程度を相対的割合で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0020】
本発明のアラザイムは、下記の方法で製造することができる:
1)アラニコラプロテオチリクス菌株を培養して培養液を得る工程;
2)前記培養液をろ過して上澄み液を得る工程;及び
3)上澄み液内に含まれた前記アラザイムを樹脂を使用して精製する工程。前記製造方法において、アラザイムを生産する微生物として、アラニコラプロテオチリクス菌株を使用するのが好ましく、韓国生命工学研究院遺伝子銀行に1996年7月29日付けで寄託された受託番号:KCTC0268BP号のアラニコラプロテオチリクスHY−3を使用することがより好ましいが、これに限定されるものではない。アラニコラプロテオチリクスHY−3菌株は、ジョロウグモの腸内から分離した好気性のグラム陰性細菌であり、0.5〜0.8mmの大きさの球形で運動性を有していて、カタラーゼには陽性反応を、オキシダーゼには、陰性反応を示す(WO01/57222号)。
【0021】
本発明では、前記のような方法で得られたアラザイムを使用することが好ましく、下記のような方法で生産されたアラザイムを使用することがさらに好ましい。アラニコラプロテオチリクス菌株の培養のために使用する原料は、純粋精製時に簡便で高純度の結果物が得られ得る医薬品水準の物が好ましく、培養後、アンモニウムスルファート沈澱(またはアセトン沈澱)を遂行する。このようなアンモニウムスルファートまたはアセトン沈澱後、遠心分離及びろ過を通じてアラザイムのみを回収する。これは、微生物で生産される他の大部分のタンパク質は、アラザイムと沈澱濃度が異なることを利用したものである。アラザイムを回収した後、膜ろ過を使用した1次不純物の精製及び限外ろ過器を使用して最後に純粋分離精製する。このようにして得られた溶液状態の高濃度アラザイムを凍結乾燥器でパウダータイプに製造したものを使用する。
【0022】
また、本発明は、下記のような方法でアラザイムを製造することができる:
1)アラザイムのコード領域を含む塩基配列のDNAを発現ベクターにクローニングする工程、
2)前記工程1)でクローニングされた発現ベクターを宿主細胞に導入する工程、
3)前記工程2)で形質転換された宿主細胞を選別する工程、及び
4)前記3)で選別された宿主細胞で発現したアラザイムを得る工程。前記製造方法において、工程1)でアラザイムのコード領域を含む塩基配列は、配列番号:2で表わされるもの、配列番号:2で表わされた塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAであれば好ましい。ストリンジェントな条件は、ハイブリダイゼーション後の洗浄時に決定される。ストリンジェントな条件中の一つは、常温で6×SSC、0.5%SDSで15分洗浄した後、45℃で2×SSC、0.5%SDSで30分間の洗浄して、50℃で0.2×SSC、0.5%SDSで30分間の洗浄を二度繰り返す。より好ましいストリンジェントな条件は、より高い温度を使用することである。前記ストリンジェントな条件の他の部分は、同様に行なう終わりの二度の30分は、60℃で0.2×SSC、0.5%SDSで洗浄する。また他のストリンジェントな条件は、前記ストリンジェントな条件で最後の二度を65℃で0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄することである。当業者なら必要なストリンジェントな条件を得るために、このような条件を明確に設定することができる。また、発現ベクターとしては、当業界に広く知られたグラム陰性細菌またはグラム陽性細菌など、商業的に使用可能なベクターを使用することができ、スクリーニングのための薬剤耐性遺伝子を導入することが好ましい。アラザイム遺伝子にいかなる影響も与えないなら、どのようなベクターであってもかまわない。
【0023】
前記製造方法において、工程2)の宿主細胞としては、細菌である大腸菌(E.coli)及びバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)などがあり、酵母であるサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ(Candia)及びピシア(Phicia)からなる群から選択して使用することができるが、特別にこれに制限されるものではない。
【0024】
前記製造方法において、工程3)の形質転換された宿主細胞の選別は、ベクターで導入した薬剤耐性遺伝子を使用したスクリーニングとサザンブロッティングまたは、PCRを使用したスクリーニングを併用して選別することが好ましい。
【0025】
前記製造方法において、工程4)で得られたアラザイムは、タンパク質のどのような精製方法によって精製されたものであっても、実質的に精製されたタンパク質なら含まれる。このような精製されたタンパク質の例を挙げると、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外ろ過、塩析、溶媒沈澱、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析または再結晶などを適切に選択または組み合わせて実質的に精製されたタンパク質を例に挙げることができるが、このようなものに限定されるものではない。前記のようにDNAからコードされるアラザイムは、当業者に広く知られたタンパク質発現系を使用して得ることができる。また、アラザイムを発現する細胞の培養物から回収・精製することができる。
【0026】
本発明のアラザイムは、
(a)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)配列番号:2で表わされる塩基配列のコード領域を含むDNAによってコードされるタンパク質、
(c)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列で一つまたはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列で構成され、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質、及び
(d)配列番号:2で表わされる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAによってコードされるタンパク質であり、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質からなる群から選択されたいずれかひとつであることが好ましいが、これに限定されない。
【0027】
前記ハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件下で実施すると、相同性が高い塩基配列を有したDNAが選別されて結果的に分離するタンパク質には、アラザイムと機能的に同一なタンパク質が含まれる可能性が高くなる。相同性が高い塩基配列というのは、例えば、配列番号:2で表わされる塩基配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有した配列を意味する。また、アミノ酸配列は、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の高い相同性の配列なら可能である。前記の相同性の割合は、当業界の当業者によって選択された普通のアルゴリズムで決定することができる。前記ハイブリダイゼーションは、当業界でよく知られたストリンジェントな条件(Hames and Higgins,Eds.(1985年)Nucleic Acid Hybridisation,IRL Press,U.K.)下のDNA−DNAハイブリダイゼーションで提供され、ハイブリダイゼーションでのストリンジェントな条件は、前記で言及したようにハイブリダイゼーション後の洗浄時に決定される。
【0028】
本発明は、アラザイムを有効成分として含む癌予防及び治療用薬学的組成物を提供する。
【0029】
前記癌は、肺癌、乳癌、肝癌、胃癌、結腸癌、骨癌、膵臓癌、頭部癌、頚部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、食道癌、小腸癌、肛門付近癌、ファロピウス管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚部癌腫、膣癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫または中枢神経系腫瘍であることを特徴とする。
【0030】
本発明者等は、前記アラザイムの抗癌効能を検定するために、ヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌード(Nude)マウスを対照群(アラザイム0mg/kg投与)、T1(アラザイム150mg/kg投与)、T2(アラザイム300mg/kg投与)及びT3(アラザイム600mg/kg投与)の4つのグループに分けて、アラザイムを反復経口投与した(表1参照)。アラザイムは、滅菌注射用水に溶解させて週6回経口投与用ゾンデ(zonde)を使用して強制投与を実施した。アラザイム投与後、体重測定及び一般症状を観察し、腫瘍の発生程度を週1回ずつ観察して、その大きさを測定し、アラザイム投与12週後に剖検を実施した。肉眼病理所見では、すべての臓器で特別な異常所見が観察されなかったし、顕微鏡観察においてもアラザイム投与による実質臓器の異常所見は、すべての個体で観察されなかった。体重は、アラザイムを300mg/kg(T2)及び600mg/kg(T3)投与したグループで増加した(表2及び図1参照)。ヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌードマウスから採取した腫瘍組織の大きさ測定及びヘマトキシリン・エオシン染色(H&E染色)で免疫組織化学的観察を実施した結果、300mg/kg(T2)及び600mg/kg(T3)のアラザイムを投与したグループで、アラザイムの濃度依存的に腫瘍発生抑制効果及び腫瘍細胞浸潤現象の減少が観察された(図2及び図3参照)。
【0031】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(matrix metalloproteinase;MMP)は、細胞外基質(extracellular matrix;ECM)を分解する蛋白分解酵素であり(Matrisan LM,Trends Genet,1990年,第6巻,121−125頁)、MMPの生成が増加すると炎症とともに多くの種類の癌で浸潤度と転移が増加することが知られている(Stearns MA,等,Cancer Res,1993年,第53巻,878−883頁)。腫瘍の転移過程の中で血管基底膜の最も重要な構造物であるコラーゲンタイプ(collagen type)IVの分解が成り立って初めて体内血流への転移が可能で、このようなコラーゲンタイプIVの分解は、MMPの中で主にMMP−9及びMMP−2によって行われる(Liotta LA,等,Cell,1991年,第64巻,327−336頁)。MMPはまた、新生血管形成において血管内皮細胞の移動と発芽に必要な物質として認識されている(Fisher C,等,Devel Biol,1994年,第162巻,499−510頁)。MMPの活性は、1)MMP遺伝子の転写調節、2)前駆体の活性、3)脂質特異性の差、及び4)αマクログロブリン(α−macroglobulins)と組織マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤(tissue matrix metalloproteinases inhibitor;TIMPs)のようなMMP抑制物質などによって調節される(Birkedal−Hansen.H,J periodontol,1993年,第64巻,474−484頁)。MMP−9の発現を調節する上位信号伝達機序には、ミトゲン活性化プロテインキナーゼ(mitogen−activated protein kinase;MAPK)を含む成長因子、サイトカイン、腫瘍促進因子などが関与する。この中で、p38キナーゼ及び細胞外部の信号によって調節されたタンパク質キナーゼ(extracellular signal−regulated protein kinase;ERK)は、炎症サイトカインやアポトーシス関連信号及び成長因子等によって活性化される。活性化したMAPKは、核に移動してMMP始発体周辺の転写因子結合部と反応して多様な転写因子を活性化させることで、下位標的タンパク質の発現を調節する。大部分の癌は、癌細胞の基質浸湿、原発部位から血管系への移動、血管による二次病巣への移動、二次腫瘍の形成という過程を通じて、原発部位から二次病巣に転移される。癌細胞の基質浸湿には、蛋白分解酵素による細胞外基質の分解が要求されるが、MMPは、細胞外基質を分解する最も核心的な酵素である。多様なMMPの中で、MMP−2及びMMP−9は、それぞれ72及び92kDaのコラゲナーゼとして細胞の基底膜を形成するコラーゲンを分解して癌の浸湿と転移を促進する(Himelstein BP,等,Invasion Metastasis,1994年,第14巻,246−258頁)。
【0032】
本発明者等は、前記のようなヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌードマウスを使用して、アラザイムの投与によってMMP−9の発現が減少されることを確認することができた(図4及び図5参照)。これは、アラザイムの抗癌効能を示す。
【0033】
核転写因子−カッパーB(nuclear transcription factor−κB;NF−κB)は、多様な環境的刺激に対する反応で活性化される誘導転写因子である(Baeuerle,PA and Baichwal,VR,Adv Immunol,1997年,第65巻,111−137頁;Auphan,N,等,Science,1995年,第270巻,286−290頁)。暫定的形態のNF−κBは、細胞質にある抑制タンパク質、I−κBに結合されている。多様なNF−κB活性因子、すなわち腫瘍壊死因子、IL−1、リポポリサッカライド及びUV(ultraviolet)などの刺激は、抑制タンパク質であるI−κBのリン酸化反応及びユビキチンが標識される過程を通じて分解(degradation)を誘導するようになる。このような過程は、I−κBと分離したNF−κBを核に移動させて標的遺伝子のプロモーター部位にあるNF−κB−結合位置(NF−κB−binding site)との結合を可能にして、標的遺伝子の発現を促進させる(Baldwin,AS,Annu Rev Immunol,1996年,第14巻,649−683頁;Huxford T,等,Cell,1998年,第95巻,759−770頁)。NF−κBは、薬物不応性のまた他の影響因子である。これは、サイトカイン合成の重要な調節因子であり、免疫反応や炎症反応に関与する多様な遺伝子の発現を増加させる転写因子で活性化になれば、核内に移動して炎症遺伝子の発現を増加させる。
【0034】
本発明者等は、前記のようなヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌードマウスを使用して、アラザイムの投与によってNF−κBの発現が減少されたことを確認することができた(図6及び図7参照)。これは、アラザイムによる腫瘍細胞の減少を意味する。
【0035】
PCNAは、細胞周期中G0期(G0 phase)には存在しないで、G1期(G1 phase)の間に増加し始めて、S期(S phase)で最も多く合成されて、G2期(G2 phase)で減少する、36kDaの細胞内DNAポリメラーゼデルタ(DNA polymerase delta)の補助的なタンパク質で、細胞のDNA合成と細胞の増殖に必須であることが知られている(Miyagawa S,等,J Invest Dematol,1989年,第93巻,678−681頁)。一般的に、PCNAの組織免疫蛍光法は、腫瘍組織で成長に関与する部分がどの程度なのかを知る尺度として作用する。PCNA発現は、角質細胞の増殖状態、神経膠症、着色された皮膚病変、肺の非小細胞性癌の組織病理学的等級と関連あるといわれてきた(Underhill C,J Cell Sci,1992年,第103巻,293−298頁)。
【0036】
本発明者等は、前記のようなヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌードマウスを使用して、アラザイムの投与によってPCNAの発現が減少することを確認することができ(図8及び図9参照)、これは腫瘍組織の成長が減少したことを意味する。
【0037】
本発明者等は、前記アラザイムの抗癌効能を検定するために、ヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)にアラザイム(60μg/ml)を処理した後、腫瘍細胞の成長、分化、増殖及び転移に係わるタンパク質の発現変化を観察した。前記のヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)は、ヒトの乳腺腫瘍細胞の中でエストロゲン受容体を有していない悪性乳癌細胞株である(Liu Y,等,Biochem Biophys Res Commun,2006年,第344巻,1263−1270頁;Wyatt CA,等,Cancer Res.2005年,第65巻,11101−11108頁)。p21は、CDK(Cyclin Dependent Kinase)の阻害剤としてサイクリンA、D、Eなどの発現を調節することで腫瘍細胞の成長、分化に関与するタンパク質として知られている(Westhof G,等,Tumour Biol.2006年,第27巻,252−60頁;Rayala SK,等,Cancer Res.2006年,第66巻,5985−5988頁)。
【0038】
本発明者等は、ヒト乳癌細胞に処理されたアラザイムによって、p21の発現が抑制されることを確認することができた。
【0039】
MAPK(Mitogen−Activated Protein Kinase)細胞内信号伝達経路(intracellular signaling pathway)に属するp38は、ストレス関連メカニズムによって発現されるタンパク質で、乳癌細胞で細胞成長を促進させることが知られている(Lowe LC,等,Biochem Biophys Res Commun.2005年,第329巻,772−779頁;Pettersson F,等,Oncogene.2004年,第23巻,7053−7066頁)。
【0040】
本発明者等は、ヒト乳癌細胞に処理されたアラザイムによって、p38の発現が抑制されることを確認することができた。
【0041】
プロテインキナーゼは、細胞成長/分化/遺伝子発現に関与して、PKC(Protein Kinase C)は、悪性腫瘍で上向き調節される(Pettersson F,等,Oncogene.2004年,第23巻,7053−7066頁;Ribeiro−Silva A,等,Histol Histopathol.2006年,第21巻,373−382頁;Tan M,等,Oncogene.2006年,第25巻,3286−3295頁)。
【0042】
本発明者等は、ヒト乳癌細胞に処理されたアラザイムによって、PKCが下向き調節されることを確認することで、腫瘍細胞の増殖抑制に影響を与えることが分かる。
【0043】
本発明者等は、ヒト乳癌細胞に処理されたアラザイムによって、腫瘍細胞の増殖の標識マーカータンパク質であるPCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)(Kumaraguruparan R,等,Res Vet Sci.2006年,第81巻,218−224頁;Lyzogubov V,等,Exp Oncol.2005年,第27巻,141−144頁)、腫瘍の血管新生のマーカーとして知られたVEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)(Kou B,等,Oncol Res.2005年,第15巻,239−247頁)、腫瘍の浸湿と転移に関与するMMP−1(Matrix MetalloProteinase−1)(Zhang C,等,Mol Ther.2006年,第13巻,947−955;Wyatt CA,等,Cancer Res.2005年,第65巻,11101−11108頁)及びBCl2(B−cell CLL/lymphoma2)(Kumaraguruparan R,等,Res Vet Sci.2006年,第81巻,218−224頁;Emi M,等,Breast Cancer Res.2005年,第7巻,R940−R952頁;Sirvent JJ,等,Histol Histopathol.2004年,第19巻,759−770頁)のタンパク質発現が、アラザイムを処理しない対照群に比べて有意に抑制されることを確認した。
【0044】
腫瘍の発生において腫瘍細胞が産生するROS(Reactive Oxygen Species)は、腫瘍細胞の増殖に重要であることが知られている(Tas F,等,Med Oncol.2005年,第22巻,11−15頁)。カタラーゼは、過酸化水素のようなROSを除去することで、腫瘍発生を抑制する役割をする(Tas F,等,Med Oncol.2005年,第22巻,11−15頁;Ozkan A,等,Exp Oncol.2006年,第28巻,86−88頁)。
【0045】
本発明者等は、カタラーゼの発現がヒト乳癌細胞でアラザイムの処理によって上向き調節されることが観察されることで、アラザイムの作用は、腫瘍細胞の成長と増殖そして分化を抑制するだけでなく、悪性腫瘍において腫瘍の転移に関与するMMP及びPKCを抑制することで、腫瘍細胞の転移抑制効能を示す。
【0046】
本発明者等は、アラザイムをメスのウィスター(Wistar)ラットに経口投与して毒性実験を遂行した結果、0、1250、2500及び5000mg/kg濃度で一般症状と肉眼病理所見において何らの異常所見が現われなかった。以上のように経口投与毒性試験による50%致死量(LD50)は、少なくとも 5,000mg/kg以上の安全な物質であると判断される。ゆえに、本発明のアラザイムは、乳癌予防及び治療用組成物に有用に使用することができる。
【0047】
本発明のアラザイムに、追加で同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。投与のためには、追加で薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで製造することができる。薬剤学的で許容可能な担体には、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エチルアルコール及びこれら成分の中で1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤を付加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、散剤、錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒または注射液剤に製剤化できる。さらに当分野の適正な方法で、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company,Easton PA,18th,1990年)に開示されている方法を使用して、各疾患によってまたは成分によって好ましく製剤化することができる。
【0048】
本発明の癌予防及び治療用薬学的組成物は、目的とする方法によって、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)したり経口投与したりすることができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度等によってその範囲が多様である。本発明によるアラザイムの一日投与量は、0.01〜5000mg/kgであり、好ましくは0.01〜10mg/kgであり、一日一回ないし数回に分けて投与することがより好ましい。
【0049】
また、本発明は、薬学的に有効な量のアラザイムを癌にかかった個体に投与する工程を含む癌治療方法を提供する。
【0050】
また、本発明は、薬学的に有効な量のアラザイムを癌にかかった個体に投与する工程を含む癌予防方法を提供する。
【0051】
また、本発明は、アラザイムを癌予防及び治療剤の製造に使用する用途を提供する。
【0052】
本発明のアラザイムは、上述したように、ヒト肺癌細胞株(A549)を移植したヌードマウス及び乳癌細胞で実験した結果、腫瘍細胞成長、増殖または分化に係わるMMP−1、MMP−9、NF−κB、p21、PCNA、VEGF、BCl2、p−p38及びPKCの発現を阻害して、腫瘍発生を抑制するカタラーゼの発現を促進するので、癌にかかった個体に投与する工程を含む癌治療方法または予防方法、または、癌予防及び治療剤の製造に使用することができる。
【0053】
同時に、本発明は、アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを有効成分として含む癌予防用健康食品を提供する。
【0054】
本発明のアラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを食品添加物に使用する場合、アラニコラプロテオチリクスの培養液または前記のアラザイムをそのまま添加したり他の食品または食品成分とともに使用したりすることができ、通常的な方法によって適切に使用することができる。アラザイムは、前記のような同一方法で得て使用する。有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって相応しく決定することができる。一般的に、食品または飲料の製造時には、本発明のアラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムは、原料に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜1重量部の量で添加される。しかし、健康及び衛生を目的にしたりまたは健康調節を目的にしたりする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲の以下であり得るが、安全性の面で何らの問題がないので、有効成分は前記範囲以上の量でも使用することができる。
【0055】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加することができる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンデー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常的な意味での健康食品を全て含む。
【0056】
本発明の健康飲料組成物は、通常の飲料と同様に様々な香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含むことができる。上述した天然炭水化物はブドウ糖、果糖のようなモノサッカライド、マルトース、スクロースのようなジサッカライド、及びデキストリン、サイクロデキストリンのようなポリサッカライド、キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。甘味料としては、タウマチン、ステビア抽出物のような天然甘味料や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味料などを使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明の飲料組成物100ml当り一般的に約0.01〜0.04g、好ましくは約0.02〜0.03gである。
【0057】
前記の外にアラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムは、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などに添加することができる。その他に天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉にも、アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを添加することができる。このような成分は、独立的にまたは組み合わせて使用することができる。このような添加剤の割合は、それほど重要ではないが、本発明のアラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム100重量部当り0.01〜0.1重量部の範囲で選択することが一般的である。
【0058】
以下、本発明を実施例、実験例及び製剤例によって詳細に説明する。但し、下記の実施例、実験例及び製剤例は、本発明を例示するだけのものであって、本発明の内容が、下記の実施例、実験例及び製剤例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>アラザイム(arazyme)の製造
本発明の有効成分であるアラザイムを製造するために、アラニコラプロテオチリクスHY−3菌株(KCTC0268BP)を培養培地(バクトトリップトン0.5%、酵母抽出物0.5%、塩化ナトリウム0.1%、塩化カリウム0.05%、塩化カルシウム0.02%、硫酸マグネシウム0.02%)で、22℃で18時間培養した。培養液を2μm膜ろ過(2μmフィルター,Satorius,米国)を使用して菌体と上澄み液を分離した後、分離した上澄み液を10kDaの膜ろ過(10kDa膜フィルター,Pall sept,PALL Corporation,米国)を使用して濃縮した。本発明のアラザイムは、基本的に陰イオンの特性を有するので、濃縮液を50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)で前処理したDEAEセルローズ(DEAE−cellulose,Sigma,米国)を使用したイオン交換樹脂(ion exchange resin,Sigma,米国)と20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.6)で前処理したセファデックスG−75(Sephadex G−75,Sigma,米国)を使用したゲルろ過交換樹脂を使用して精製した。精製された酵素液は、10%SDS−PAGE(Sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel)で電気泳動をしてバンド傾向を確認したが、その結果、本発明のアラザイムは、小単位を持たないモノマーであり、約51.5kDaの分子量を有するバンドを示すことを確認した。ただ、アラザイム生産のためのアラニコラプロテオチリクスHY−3菌株(KCTC0268BP)は、多様な産業用培地で生産が可能で、生産された培養液も多様な方法で分離及び精製して使用することができる。本発明のアラザイムは、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有し、配列番号:2で表わされる塩基配列を有する。
【0060】
<実施例2>マウス試験群の構成及び投与
本発明では、CAnN.Cg−Foxn1nu/CrljBgi系統の5週齢特定病原体不在(SPF)ヌード(Nude)マウス(オリエント、韓国)平均体重15gの個体を使用した。マウスは、入手後、動物室で約7日間検疫及び順化させ、順化期間中に一般症状を観察して健康な動物のみを選抜して試験に使用した。本発明で使用されたマウスの場合、温度22±3℃、相対湿度50±10%、照明時間12時間(08:00点灯〜20:00消灯)に設定された自動温湿度調節装置を設置した動物室で順化及び飼育した。環境条件は、定期的(3ヶ月に1回)に測定した。環境測定の結果、試験に影響を及ぼすと思われる変動は認められなかった。全試験期間ポリカーボネート製飼育箱[240W×390L×175H(mm)]に5匹以下ずつ収容した。個別識別は、油性マジックペンを使用した皮膚標識法と飼育箱別個体識別カード表示法を使用した。飼料は、実験動物用固形飼料(PMI Nutrition International,505 North 4th Street Richmond,in 47374,米国)を放射線照射(13.2kGy)滅菌して自由摂取させた。水はカーボンフィルターを通じて浄化した上水道水を水差しを使用して自由摂取させた。
【0061】
一週間の順化期間が経過した後、ヒト肺癌細胞であるA549細胞株を1×10細胞でマウスの左側わき皮下に移植して癌を誘発させ、同時に4つのグループ(対照群、T1、T2、T3及び表1)に分離した後、12週間アラザイムを0mg/kg(対照群)、150mg/kg(T1)、300mg/kg(T2)及び600mg/kg(T3)の濃度で週6回、ゾンデを使用して経口投与した。全実験期間中に体重測定及び一般症状観察を実施して12週後に剖検を実施した。
【0062】
実験群の構成は、下記の表1のとおりである。
【0063】
(表1)実験群の構成

【0064】
<実施例3>細胞培養
本発明では、エストロゲン受容体に陰性であるヒト乳癌細胞株MDA−MB−231(HTB−26)を使用し、ATCC(American Type Culture Collection,米国)から分譲を受けて使用した。
【0065】
<3−1>細胞培養条件
本試験に使用されたヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)は、10%FBSと1%アンピシリンを含有したDMEM培地を使用して37℃、5%CO培養器で2〜3日ごとに継代しながら培養した。また、細胞培養用ディッシュは、全て滅菌された製品を使用した。
【0066】
<3−2>アラザイムの処理
ヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)は、6ウェルにそれぞれ6×10細胞/ウェルの細胞を接種した後、37℃の培養器で一晩培養し、試験物質処理前4時間の間1%FBSが含まれた栄養欠乏(starvation)培地に交替して培養することで、細胞周期停止(cell cycle arrest)を誘導した。アラザイムを注射用滅菌注射用水に希釈した後、60μg/mlの濃度に調剤して適用した後、再び24時間37℃の培養器で培養した。
【0067】
<実験例1>アラザイム投与が体重変化に及ぼす影響の調査
前記<実施例2>と同様にヒト肺癌細胞株(A549)をヌードマウスに移植した後、1週間に一回ずつ体重を測定することで、体重変化を観察して動物の一般症状を観察した。
【0068】
全実験期間(12週)を経てアラザイム投与群は、体重が増加する様相を示したが、この中で特に300mg/kg投与群(T2)及び600mg/kg投与群(T3)で体重の増加が顕著だった(表2及び図1)。
【0069】
(表2)マウスの体重

対照群:アラザイム0mg/kg経口投与、
T1:アラザイム150mg/kg経口投与、
T2:アラザイム300mg/kg経口投与、
T3:アラザイム600mg/kg経口投与。
【0070】
<実験例2>アラザイム投与が腫瘍成長に及ぼす影響の調査
ヒト肺癌細胞株(A549)をヌードマウスに移植した後、5週目から肉眼的に腫瘍大きさを確認することができ、以後8週間、一週間に一度ずつカリパー(caliper)を使用してそれぞれのマウスの腫瘍の大きさを測定した。腫瘍の体積は、腫瘍の長径と短径を測定して下記の式1で計算した。
<式1>
腫瘍の体積(mm)=(長径×短径)/2
【0071】
測定した結果の全実験期間アラザイムを300mg/kg(T2)及び600mg/kg(T3)投与した群で、対照群に比べて腫瘍の大きさが減少し、統計学的有意性が観察された(図2)。
【0072】
<実験例3>アラザイム投与が肺癌組織に及ぼす影響の調査
ヌードマウスにヒト肺癌細胞株を移植した12週後にエチルエーテルで麻酔して屠殺して、腫瘍及び実質臓器を採取した。採取した腫瘍組織の重さを測定し、心臓、肝臓、肺、膵臓、腎臓、脾臓などの臓器を採取した。採取した腫瘍と臓器は、10%中性ホルマリンに24時間固定させた後、自動組織処理装置で組織処理を遂行した。組織処理過程を経た腫瘍と臓器は、パラフィン包埋後4μmの厚さに薄切りしてヘマトキシリン・エオシン染色(H&E染色)を実施して光学顕微鏡で観察した。
【0073】
その結果、アラザイム投与群は、対照群に比べて腫瘍細胞浸潤が弱く進行されていた(図3)。
【0074】
<実験例4>アラザイム投与がMMP−9の発現に及ぼす影響の調査
MMP−9の免疫組織化学的観察のために、ホルマリンに固定した後、製作されたパラフィン包埋組織を4μmの厚さに薄切りして脱パラフィンした後、内因性過酸化酵素の活性を抑制させるために、3%Hに30分間処理して、0.01Mリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した後、組織の抗原発現を増加させるために0.01Mのクエン酸塩緩衝液で処理して、マイクロ波で高熱処理した。非特異的反応を抑制するために、20g/mlプロテイナーゼKで37℃で10分間処理した後、リン酸緩衝食塩水で洗浄後、1時間ブロッキングさせた。その後、抗ウサギ1次抗体であるMMP−9(1:100,Santa Cruz Bio,米国)を4℃で一晩の間処理した後、PBS緩衝液で5分間3回洗浄してビオチンと結合させた。ビオチンと結合された1次抗体を緩衝液で洗浄した後、ストレプトアビジンに接合されたHRP(Horse−Rradish Peroxidase)を付着させて、Histostantin−plus bulk kit(Zymed Laboratories Inc,米国)で37℃で30分間反応させて充分に洗浄した後、3,3−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(3,3−diaminobenzidine tetrahydrochloried;DAB、Zymed Laboratories Inc,米国)溶液で発色させて蒸留水で洗浄した後、Meyer’s hematoxylin(Research genetics,米国)で対照染色を実施して光学顕微鏡で観察した。
【0075】
その結果、アラザイム投与群は、対照群に比べてMMP−9の発現様相が減少した(図4及び図5)。
【0076】
MMP(matrix metalloprotease)生成の増加時、炎症とともに多くの種類の癌において浸潤度と転移が増加することが知られている。また、これは多くのMMPのうち、主にMMP−9及びMMP−2によってなされる。特に、MMP−9の発現を調節する上位信号伝達機序には、MAPKを含む成長因子、サイトカイン、腫瘍促進因子などが関与する。MMP−9の発現様相の減少は、癌の浸潤と転移が抑制されていることを意味する。
【0077】
<実験例5>アラザイム投与がNF−κBの発現に及ぼす影響の調査
NF−κBの免疫組織化学的観察のために、前記実験例4と同じ過程を遂行して、1次抗体は、MMP−9の代りに抗ウサギ1次抗体であるNF−κB(1:200,Cell Signaling Technology Inc,米国)を使用した。
【0078】
その結果、アラザイム投与群は、対照群に比べてNF−κBの発現様相が減少した(図6及び図7)。
【0079】
NF−κBは、多様な環境的因子に対する反応で活性化する誘導転写因子である。また、薬物不応性のまた他の影響因子でもある。これは、サイトカイン合成の重要な因子であり、免疫反応や炎症反応に関与する多様な遺伝子の発現を増加させる転写因子で、活性化すると核内に移動して炎症遺伝子の発現を増加させる。NF−κBの発現減少は、癌が抑制されていることを意味する。
【0080】
<実験例6>アラザイム投与がPCNAの発現に及ぼす影響の調査
PCNAの免疫組織化学的観察のために、前記実験例4と同じ過程を遂行し、1次抗体は、MMP−9の代りに抗マウス1次抗体であるPCNA(1:800,Santa Cruz Bio,米国)を使用した。
【0081】
その結果、アラザイム投与群は、対照群に比べてPCNAの発現様相が減少した(図8及び図9)。
【0082】
PCNAは、DNAポリメラーゼデルタの補助的なタンパク質で、PCNAの発現は、角質細胞の増殖状態、神経膠症、着色された皮膚病変、肺の非小細胞性癌の組織病理学的等級と関連があることが知られているので、PCNAの組織免疫蛍光法は、腫瘍組織での成長に関与する部分がどの程度なのかを知る尺度として作用する。PCNAの発現の減少は、腫瘍組織の成長が抑制されていることを意味する。
【0083】
<実験例7>アラザイム投与がヒト乳癌細胞のタンパク質発現に及ぼす影響の調査
前記<実施例3>と同様にアラザイムを処理したヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)において、腫瘍発生と関連あるタンパク質の発現様相を観察するために免疫ブロッティングを実施した。0.1mMオルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)と蛋白質分解酵素抑制剤カクテルタブレット(protease inhibitor coctail tablet,Roche,ドイツ)を溶解させたRIPA緩衝液にアラザイム(60μg/ml)を処理したMDA−MB−231細胞を融解させた後、14,000rpm、4℃で20分間遠心分離して上澄み液を取得した。取得された細胞質タンパク質試料をブラッドフォード方法(Bradford MM.Anal.Biochem.1977年,第72巻,248−254頁)にしたがってタンパク質濃度を測定した後、それぞれのタンパク質試料を80g/ウェルで8〜12%SDS−ポリアクリルアミドゲルを使用して電気泳動を遂行した。電気泳動されたゲル内のタンパク質をPVDF膜(PVDF membrane;Schleicher & Chuell,Dassel,ドイツ)に電気移動(electro−transfer)を遂行した。同じ量のタンパク質がローディングされたものをクマシブルー染色を通じて確認した。3%牛血清アルブミンをリン酸緩衝食塩水に溶解させたブロッキング溶液に1時間ブロッキング後、1次抗体であるp−21(Santa Cruz Biotechnology Inc,米国)、β−アクチン(1:500 Santa Cruz Biotechnology Inc,米国)に反応させた。0.5%ツイーン200が溶解されたTBS緩衝液で充分に洗浄して、1次抗体に対応する2次抗体である抗ヤギHRP抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc,米国)を1:1,000〜1:2,000の割合に希釈して室温で1時間反応させた。また、TBS緩衝液で充分に洗浄後、特異的な反応を観察するために化学発光基質(Super signal West Dura Extended Duration Substrate,PIERCE,米国)と反応させて医学用X線フィルム(Kodak,日本)に露出させた。p−21以外の1次抗体では、p−p38、PCNA(proliferating cell nuclear antigen)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、BCl2、MMP−1(matrix metalloproteinase 1)及びカタラーゼを使用し、前記抗体の製造社は、Santa Cruz Biotechnology Inc,米国である。前記の1次抗体に該当する各々の2次抗体を使用して、前記のような方法で遂行した。p−p38に対応する2次抗体は、抗ウサギHRP抗体、PCNAに対応する2次抗体は、抗ヤギHRP抗体、VEGFに対応する2次抗体は、抗ヤギHRP抗体、BCl2に対応する2次抗体は、抗ウサギHRP抗体、MMP−1に対応する2次抗体は、抗マウスHRP抗体、カタラーゼに対応する2次抗体は、抗ヤギHRP抗体にし、前記2次抗体の製造社は、Santa Cruz Biotechnology Inc,米国である。
【0084】
その結果、ヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)にアラザイム(60μg/ml)の適用は、p21、PCNA、VEGF及びBCl2の顕著な抑制効能を示した。また、アラザイムを処理しない対照群に比べて、p−p38、PKC及びMMP−1の発現が減少したことが観察された。カタラーゼにおいては、アラザイム処理群で発現量が増加したことを観察することができた(図1)。
【0085】
また、前記の結果を基にして、ヒト乳癌細胞(MDA−MB−231)にアラザイム(60μg/ml)を処理した後、腫瘍細胞の成長、分化、増殖及び転移に係わるタンパク質の発現変化程度を相対的割合で示し(図2)、結果は図1のとおりである。
【0086】
<実験例8>アラザイムの急性毒性実験
本発明のアラザイムに対する急性毒性を調べるために、下記のような実験を遂行した。
【0087】
ウィスター(Wistar)系統の9週齢特定病原体不在(SPF)メスのラット(オリエント、韓国)に対して、それぞれ4匹ずつ4群に分けて、温度22±3℃、湿度55±10%、照明12L/12D条件の動物室内で飼育した。ラット入手後、動物室で1週間検疫及び順化過程を経た。全試験期間の間、ポリカーボネート製飼育箱[240W×390L×175H(mm)]で5匹以下ずつ収容した。個体識別は、油性マジックペンを使用した皮膚標識法と飼育箱別個体識別カード表示法を使用した。実験動物用固形飼料(PMI Nutrition International,米国)は滅菌し、水は上水道水を水差しを使用して自由に摂取させた。
【0088】
前記実施例のアラザイムを0、1250、2500及び5000mg/kgの濃度で注射用滅菌注射用水に溶解して、10ml/kgの用量に調剤してラットに経口投与用ゾンデを使用して単回経口投与した。一週間の順化期間を経て、4つのグループに分離した後、10週齢のラットにアラザイムを濃度別に投与した後、一般症状観察を実施した後、アラザイムの実質臓器に対する実質毒性を評価するために24時間後に剖検を実施した。
【0089】
メスのラットにアラザイムを経口投与した後、試験物質投与による一般症状を正確に観察して毒性を評価するために、動物の行動、外観、機能に対する観察を実施した。
【0090】
実験の結果、アラザイム投与後の動物の活動性、歩行、気質、ひきつけなどにいては何らの異常症状が観察されず、被毛状態、眼球周辺、耳、生殖器、四肢状態、尾状態などの動物の外観観察及び呼吸状態、唾液分泌、糞便、嘔吐などの機能観察でも何らの異常症状が観察されなかった。アラザイム投与後24時間に、剖検を実施した。肉眼剖検所見でも、全臓器でアラザイム投与による何らの異常も観察されなかった。アラザイム致死量(LD50)は、5000mg/kg以上の高濃度であると判断される。顕微鏡学的観察において、肝、心臓、肺、すい臓などの実質臓器では、何らの病理学的異常所見が観察されなかった。
【0091】
下記に本発明の組成物のための製剤例を例示する。
【0092】
<製剤例1>薬学的製剤の製造
<1−1>散剤の製造
アラザイム 2g
乳糖 1g
前記の成分を混合した後、気密包に充填して散剤を製造した。
【0093】
<1−2>錠剤の製造
アラザイム 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法にしたがって打錠して錠剤を製造した。
【0094】
<1−3>カプセル剤の製造
アラザイム 100mg
とうもろこし澱粉 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記の成分を混合した後、通常のカプセル剤の製造方法にしたがってゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0095】
<1−4>丸薬の製造
アラザイム 1g
乳糖 1.5g
グリセリン 1g
キシリトール 0.5g
前記の成分を混合した後、通常の方法によって1丸薬当り4gになるように製造した。
【0096】
<1−5>顆粒の製造
アラザイム 150mg
大豆抽出物 50mg
ブドウ糖 200mg
澱粉 600mg
前記の成分を混合した後、30%エチルアルコール100mgを添加して、摂氏60℃で乾燥して顆粒を形成した後、包に充填した。
【0097】
<1−6>注射液剤の製造
アラザイム 10μg/ml
薄い塩酸BP pH7.6になるまで
注射用塩化ナトリウムBP 最大1ml
適当な容積の注射用塩化ナトリウムBPの中にアラザイムを溶解させて、生成された溶液のpHを薄い塩酸BPを使用してpH7.6に調節して、注射用塩化ナトリウムBPを使用して容積を調節して充分に混合した。溶液を透明ガラスの5mlタイプIアンプル中に充填させて、ガラスを溶解させることで入口を封入して、120℃で15分以上オートクレーブさせて殺菌して注射液剤を製造した。
【0098】
<製剤例2>食品の製造
前記製剤例1の散剤、錠剤、カプセル剤、丸薬及び顆粒を食品に応用しても良く、前記のアラニコラプロテオチリクスの培養液、またはそれから分離したアラザイムを含む食品を下記のように製造した。
【0099】
<2−1>小麦粉食品の製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム0.1〜10.0重量部を小麦粉に添加して、この混合物を使用して通常の方法でパン、ケーキ、クッキー、クラッカー及び麺類を製造して、健康増進用食品を製造した。
【0100】
<2−2>スープ及び肉汁(gravies)の製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム0.1〜1.0重量部をスープ及び肉汁に添加して、通常の方法で健康増進用肉加工製品、麺類のスープ及び肉汁を製造した。
【0101】
<2−3>グランドビーフの製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム10重量部をグラウンドビーフに添加して、通常の方法で健康増進用グラウンドビーフを製造した。
【0102】
<2−4>乳製品の製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム0.1〜1.0重量部を牛乳に添加して、前記牛乳を使用して通常の方法で、バター及びアイスクリームのような多様な乳製品を製造した。
【0103】
<2−5>禅食(Sun−Sik)の製造
玄米、麦、もち米、鳩麦を公知の方法でアルファ化させて乾燥させたものを焙煎した後粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。
【0104】
黒豆、黒ごま、えごまも公知の方法で蒸して乾燥させたものを焙煎した後、粉砕機で粒度60メッシュの粉末に製造した。
【0105】
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを真空濃縮機で減圧、濃縮して、噴霧、熱風乾燥器で乾燥して得た乾燥物を粉砕機で粒度60メッシュに粉砕して乾燥粉末を得た。
【0106】
前記で製造した穀物類、種実類及びアラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムの乾燥粉末を、次の割合で配合して通常の方法で製造した。
穀物類(玄米30重量部、鳩麦15重量部、麦20重量部)、
種実類(えごま7重量部、黒豆8重量部、黒ごま7重量部)、
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムの乾燥粉末(1重量部)、
霊芝(0.5重量部)、
地黄(0.5重量部)。
【0107】
<製剤例3>飲料の製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを含む飲料を次のように製造した。
【0108】
<3−1>健康飲料の製造
液状果糖(0.5%)、オリゴ糖(2%)、砂糖(2%)、食塩(0.5%)、水(75%)のような副材料とアラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを均質に配合して瞬間殺菌をした後、これをガラス瓶、ペット瓶など小包装容器に包装して健康飲料を製造した。
【0109】
<3−2>野菜ジュースの製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム0.5gをトマトまたはにんじんなどの野菜のジュース1,000mlに加えて、通常の方法で健康増進用野菜ジュースを製造した。
【0110】
<3−3>果物ジュースの製造
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイム0.1gをリンゴまたはブドウなどの果物のジュース1,000mlに加えて、通常の方法で健康増進用果物ジュースを製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラザイム(arazyme)を有効成分として含む癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記アラザイムが、
(a)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)配列番号:2で表わされる塩基配列のコード領域を含むDNAによってコードされるタンパク質、
(c)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列において一つまたはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列で構成され、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質、及び
(d)配列番号:2で表わされる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAによってコードされるタンパク質であり、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質
の中のいずれかひとつであることを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記アラザイムが、アラニコラプロテオチリクス(Aranicola proteolyticus)培養液から分離したことを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記アラニコラプロテオチリクスが、アラニコラプロテオチリクスHY−3(受託番号:KCTC0268BP)であることを特徴とする、請求項3記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記の癌が、肺癌、乳癌、肝癌、胃癌、結腸癌、骨癌、膵臓癌、頭部癌、頚部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、食道癌、小腸癌、肛門付近癌、ファロピウス管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚部癌腫、膣癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫または中枢神経系腫瘍であることを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記アラザイムが、MMP−9(Matrix MetalloProteinase−9)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記アラザイムが、NF−κB(Nuclear Factor κB)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記アラザイムが、PCNA(Proliferating Cell Nuclear Antigen)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項9】
前記アラザイムが、p21の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項10】
前記アラザイムが、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記アラザイムが、BCl2(B−cell CLL/lymphoma 2)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項12】
前記アラザイムが、p−p38の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項13】
前記アラザイムが、PKC(Protein Kinase C)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項14】
前記アラザイムが、MMP−1(Matrix MetalloProteinase−1)の発現を抑制することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記アラザイムが、カタラーゼの発現を促進することを特徴とする、請求項1記載の癌の予防及び治療用薬学的組成物。
【請求項16】
薬学的に有効量のアラザイムを癌にかかった個体に投与する工程を含む癌治療方法。
【請求項17】
薬学的に有効量のアラザイムを個体に投与する工程を含む癌の予防方法。
【請求項18】
癌の予防及び治療剤の製造のためのアラザイムの使用。
【請求項19】
アラニコラプロテオチリクスの培養液またはそれから分離したアラザイムを有効成分として含む癌の予防及び改善用健康食品。
【請求項20】
前記アラニコラプロテオチリクスが、アラニコラプロテオチリクスHY−3(受託番号:KCTC0268BP)であることを特徴とする、請求項19記載の癌の予防及び改善用健康食品。
【請求項21】
前記アラザイムが、
(a)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)配列番号:2で表わされる塩基配列のコード領域を含むDNAによってコードされるタンパク質、
(c)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列において一つまたはそれ以上のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列で構成され、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質、及び
(d)配列番号:2で表わされる塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズされるDNAによってコードされるタンパク質であり、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と機能的に同一なタンパク質
の中のいずれかひとつであることを特徴とする、請求項19記載の癌の予防及び改善用健康食品。
【請求項22】
前記癌が、肺癌、乳癌、肝癌、胃癌、結腸癌、骨癌、膵臓癌、頭部癌、頚部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、食道癌、小腸癌、肛門付近癌、ファロピウス管癌腫、子宮内膜癌腫、子宮頚部癌腫、膣癌腫、陰門癌腫、ホジキン病、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、輸尿管癌、腎臓細胞癌腫、腎臓骨盤癌腫または中枢神経系腫瘍であることを特徴とする、請求項19記載の癌の予防及び改善用健康食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−514759(P2010−514759A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543953(P2009−543953)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006938
【国際公開番号】WO2008/082182
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(509183637)インセクト バイオテック カンパニー, リミティッド (2)
【Fターム(参考)】