説明

アラビノガラクタン分解酵素及びその製造方法並びに当該酵素によるガラクトビオースの製造方法

【課 題】 II型アラビノガラクタンから、ガラクトビオースを生産する菌株及び同菌株の産生するII型アラビノガラクタン分解酵素の提供。
【解決手段】 II型アラビノガラクタンを唯一の炭素源とした培地を用いて、ガラクトビオースを生産する菌株を土壌からスクリーニングし、新規な資化性菌株を見いだし、該菌株の産生するII型アラビノガラクタン分解酵素を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラビノガラクタン、殊にII型アラビノガラクタンを基質として、これを酵素的に分解し、ガラクトビオースを製造することができる新規菌株及び同菌株が産生するアラビノガラクタン分解酵素、これをコードするDNAを提供することに関するものである。更に、本発明は、当該菌株又は酵素によるII型アラビノガラクタンを基質としたガラクトビオースの製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
アラビノガラクタンは、ガラクトースの連鎖した多糖類として、自然界に存在しているものであるが、大豆等に含まれているI型と呼ばれているものとカラ松等に含まれているII型と呼ばれているものとが存在している。
II型アラビノガラクタンは、木質系多糖類と称されているとうり、カラ松属の植物に多く含まれている天然の多糖類で、水溶性であって、高濃度の水溶液が得られること、天然多糖類のなかでは溶液粘度が低いことから、水分保持、テクスチャ改良、被膜形成、氷晶防止、懸濁安定、乳化安定、ニュウトン流体等を目的にして、食品関係、香料関係、工業用途等に広く使用されているものである。
【0003】
このうち、I型アラビノガラクタンについては、これを酵素的に分解し、ガラクトビオースを得る方法が、知られているが(特許文献1,2参照)、II型アラビノガラクタンの酵素的分解については、これを分解してガラクトビオースを生成する酵素は前例が無く、従って、酵素的分解の事例は知られていない。
【0004】
このような状況において、本発明の発明者らは、II型アラビノガラクタンの酵素的分解について鋭意研究を重ねた結果、II型アラビノガラクタンを分解する性能を有する菌株を分離することに成功し、同菌株からガラクトビオースを生成する酵素を取得することに成功したものである。
【特許文献1】特開平9−121853号公報
【特許文献2】特開平10−316697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、II型アラビノガラクタンを分解しガラクトビオースを生産するフザリウム属に属する生産菌と該生産菌が産生するII型アラビノガラクタン分解酵素の提供及び当該生産菌又は酵素を使用してII型アラビノガラクタンを基質とする反応によりガラクトビオースを得るガラクトビオースの製造方法並びに当該酵素のアミノ酸配列の決定とこれをコードするDNAを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、II型アラビノガラクタンを分解しガラクトビオースを生産する菌株の探索を行っている中で、北海道産シュガービートの絞り粕からII型アラビノガラクタンを分解し、ガラクトビオースを生産する菌株が存在することを見いだした。即ち、II型アラビノガラクタンを唯一の炭素源として含有する培地を用いて、スクリーニングを行い、培地中にガラクトビオースの生成を認めることができる菌株を得ることに成功したものである。
ここに得ることができた菌株を、II型アラビノガラクタンを唯一の炭素源として含有する大量の培地を用いて培養し、得られた培養液からII型アラビノガラクタンを分解する分解酵素を採取し精製すること、当該酵素のアミノ酸配列を決定すること及び当該アミノ酸配列をコードするDNAを得ることができたのである。
本発明は、斯かる知見に基づいてなされたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1] 配列番号:3で表される塩基配列を有するDNA叉は該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
[2] [1]記載のDNAによってコードされる配列番号2記載のアミノ酸配列又は配列番号:2記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するII型アラビノガラクタン分解酵素、
[3] 以下に示す物理化学的性質を有するII型アラビノガラクタン分解酵素、
作用
II型アラビノガラクタンに作用しガラクトビオースを生成する
基質特異性
I型アラビノガラクタンには作用せずII型アラビノガラクタンに作用し、分解物としてガラクトビオースを与える
分子量
52000(SDS−PAGE)(エンドグルコシダーゼにより48000となる)
安定pH範囲
4.1〜9.9
至適pH
4.0〜6.9
温度安定性
60℃で一時間まで安定
至適温度
50℃
金属塩の影響
下記金属イオン1mM濃度水溶液中、37℃30分経過後の残存活性が、水銀80%、鉄65%、亜鉛60%。銀50%、銅45%、カドミウム40%を示し、本酵素の活性はバリウム、カルシウム、コバルト、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ニッケルまたはEDTAによる影響は受けない、
[4] II型アラビノガラクタンを基質とし、[2]又は[3]記載のアラビノガラクタン分解酵素を作用させ、ガラクトビオースを製造することを特徴とするガラクトビオースの製造方法、
[5] アラビノガラクタン分解酵素がフザリウム属由来の酵素である[2]又は[3]のいずれかに記載の酵素、
[6] フザリウム属由来の酵素である[4]記載の製造方法、
[7] フザリウム属に属する菌株をII型アラビノガラクタンを基質として含む培地で培養し、II型アラビノガラクタンを分解してガラクトビオースを製造する酵素を得ることを特徴とする配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する又は[3]記載の物理化学的性質を有するII型アラビノガラクタン分解酵素の製造方法、
[8] フザリウム属に属し、II型アラビノガラクタンからガラクトビオースを生産する生産菌、および
[9] フザリウム オキシスポラム 12S(寄託番号P−20380)である[8]記載の生産菌、
[10] フザリウム属に属するガラクトビオースを生産する生産菌をII型アラビノガラクタンを含む培地で培養し、培地からガラクトビオースを採取することを特徴とするガラクトビオースの製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、II型アラビノガラクタンを分解してガラクトビオースを生産する菌株を得ることができ、これによって、ガラクトビオースを木質系多糖類であるII型アラビノガラクタンから容易に取得することができ、従前利用されていなかったカラ松等のバイオマス資源からガラクトビオースを取得することができる。得られたガラクトビオースはそれ自体公知の用途、例えば、ビフィズス菌の増殖を助ける等に利用される。又、当該生産菌から、II型アラビノガラクタンを分解してガラクトビオースを生産する酵素を得て酵素製剤を造ることもでき、生化学的研究用途にも利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において使用される、II型アラビノガラクタンを分解してガラクトビオースを生産する酵素を産生する菌株は、フザリウム属に属するものであればいずれの菌株であってもよいが、特に、実施例において使用しているところのフザリウム オキシスポラム 12S(Fusarium oxysporum 12S)(寄託番号P−20380)は、本発明の発明者らがII型アラビノガラクタンの資化性菌探索により、北海道産シュガービート絞り粕から分離することに成功した新規な菌株である。
【0010】
スクリーニングにおいて使用した培地は、炭素源として唯一、II型アラビノガラクタンのみを含む外は、通常使用されている液体培地である。ここにおいて、使用されるII型アラビノガラクタンとしては、カラ松の樹皮、幹、根又は枝葉等それ自体又はこれらから抽出したもの、コーヒー豆(収穫時のものであっても焙煎したものであっても良い)それ自体又はこれから抽出したもの(例えば、インスタントコーヒー粉末)、更には市場から入手できるもの(例えば、ラーチウッドアラビノガラクタン(Sigma-Aldrich社製)などが使用できる。本発明では、原料として、市販されている商品を入手して実験に供してもよい。
【0011】
培地には、炭素源以外の含有物として、特に限定されるものではないが、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸鉄等、リン酸バッファー、酢酸バッファー等及びペプトン又はこれに類する栄養源を適宜選択して添加し使用することができる。培養温度及び培養時間は、10−100℃で12時間−10日、好ましくは20−40℃で2日−6日、液性はpH5.0とし、静置乃至震蕩培養をするのがよい。スクリーニングに際し、具体的に使用した培地は、以下の組成(w%)及び液性のものである。
【0012】
即ち、
NHNO 0.2
HPO 0.1
MgSO・7HO 0.05
KCl 0.05
FeSO4 0.001
Pepton 0.1
の水溶液に、II型アラビノガラクトンとしてSigma−Aldorich社製のLarch wood arabinogalactanを1.0w%の濃度に加えた液性pH 5.0であるもの。
【0013】
ここに得たII型アラビノガラクタン分解能を有する菌株は、下記に示すとおりの菌学的性質を有し、分類学上の位置をフザリウム(Fusarium)属に属する菌株と判定される。更に、その余の性質をフザリウム属の公知種と比べ、本発明の菌株はフザリウム属オキシスポラム(oxysporum)の種に属するものと判定される。しかしながら、フザリウム属に属する菌株がII型アラビノガラクタンを分解してガラクトビオースを生産することは未だ知られていないことから、本発明により見いだされた菌株は、この点に置いて区別され、新菌株と判定される。したがって、本発明の出願人は本発明で使用する菌株を、フザリウム オキシスポラム 12S(Fusarium oxysporum 12S)菌株として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−20380としている。当該菌株の諸性質は次に記述するとおりである。本発明における%は、特に断りのない限りw/w%である。
a 培養的・形態的性質
培地名 GYP培地
培地組成 2%グルコース、0.5%酵母エキス、0.5%ペプトン
胞子形成 有り
胞子形成に要する日数 3−5日
胞子の色、形状 最初は白色、後にサーモンピンク、菌糸は羊毛状又はフェルト状
b 生理学的性質
1 最適生育条件
pH 5.0
温度 30℃
2 生育の範囲
好気的性質 陽性
pH 3−7
温度 20−40℃
【0014】
かくて得られたフザリウム オキシスポラム 12Sを、例えば、前記した培地で、培養して、培養液から菌体、その他の不溶物を、例えば濾過、遠心分離等で除き、粗酵素液を得る。得られる粗酵素液を、例えば、陰イオン交換カラムクロマトグラフィ、硫安分画、疎水カラムクロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、膜濃縮、ゲル濾過カラムクロマトグラフィ等の精製手段を用いて精製する。精製方法としては、例えば、粗酵素液を、20mMリン酸緩衝液(pH6.0)にて平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィ、例えば、DEAE-Toyopearl 650M(東ソー社製)に掛けて、その未吸着画分を回収する。得られる未吸着画分に硫酸アンモニウムを最終濃度が50%飽和になるように少量ずつ加え、2〜6℃好ましくは3〜5℃更に好ましくは4℃で、6から20時間好ましくは10〜15時間更に好ましくは12時間攪拌又は静置する。その後、例えば、遠心分離行い、上澄を回収し、疎水性カラムクロマトグラフィ、例えば、Butyl−Toyopearl(東ソー社製)に掛け、タンパク質の吸着を行い、硫安濃度50%飽和〜0%のリニアーグラジエントにて吸着したタンパク質の溶出を行う。活性画分を回収し、十分量の20mM酢酸緩衝液(pH4.0)で透析する。次いで、陽イオン交換カラムクロマトグラフィ、例えば、MonoS(amersham bioscience社製)(FPLCシステム使用、ファルマシア社製)に掛ける。吸着したタンパク質の溶出はNaClの0〜0.5Mのリニアーグラジエントにて行い、活性画分を回収し、膜濃縮、例えば、Urtrafree−MC(遠心ろ過、日本ミリポア社製)に掛ける。活性画分を採り、これをSuperdex75(amersham bioscience社製)(FPLCシステム使用、ファルマシア社製)に掛けて、精製酵素を得ることができる。
【0015】
かくて得られたII型アラビノガラクタンを分解し、ガラクトビオースを生産する酵素は、以下の諸性質を備えている。即ち、
(1)作用
II型アラビノガラクタンに作用しガラクトビオースを生成する
(2)基質特異性
I型アラビノガラクタンには作用せずII型アラビノガラクタンに作用し、分解物としてガラクトビオースを与える
(3)分子量
52000(SDS−PAGE)(エンドペプチダーゼの作用により48000となる)
(4)安定pH範囲
4.1〜9.9
(5)至適pH
4.0〜6.9
(6)温度安定性
60℃で一時間まで安定
(7)至適温度
50℃
金属塩の影響
下記金属イオン1mM濃度水溶液中、37℃30分経過後の残存活性が、水銀80%、鉄65%、亜鉛60%。銀50%、銅45%、カドミウム40%を示し、本酵素の活性はバリウム、カルシウム、コバルト、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ニッケルまたはEDTAによる影響は受けない。
である。
【0016】
かくて得られるII型アラビノガラクタンを分解する酵素(タンパク質)によって、II型アラビノガラクタンからガラクトビオースを造る方法が確立される。即ち、本発明により得られるII型アラビノガラクタンを分解する酵素を、II型アラビノガラクタンを基質として含む溶液と接触、反応させることにより、ガラクトビオースを容易且つ効率よく造ることができ、従前、ガラクトビオース製造の原料として利用されていないII型アラビノガラクタンをバイオマス資源として利用する手法が確立される。
【0017】
本発明においては、下記実施例で詳記するように、上記菌株培養液から、本発明の酵素に係るRNAを取得し、cDNAの一本鎖を取得し、II型アラビノガラクタン分解酵素をコードするDNAの塩基配列(配列番号:3)を決定することに成功し、更にII型アラビノガラクタン分解酵素のアミノ酸配列(配列番号:2)を決定することにも成功した。
本発明は、また、かかるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAをも提供する。さらに本発明は、上記アミノ酸配列のみならず、上記アミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するII型アラビノガラクタン分解酵素をも提供する。
【0018】
本発明において、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、上記DNAをプローブとして、コロニー・ハイブリダイジェーション法、プラーク・ハイブリダイジェーション法、或いはサザンブロット・ハイブリダイジェーション法等を用いることにより得られるDNAを意味する。具体的には、DNAを固定化したフィルターを用いて、約0.7−1.0M程度の塩化ナトリウム存在下、約65℃程度でハイブリダイジェーションを行った後、約0.1−2倍程度の濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、約65℃程度の条件下で、フィルターを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。ハイブリダイジェーションは、モレキュラー・クローニング第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA Cloning 1:Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University(1995)等に記載されている方法に準じて行うことができる。上記配列番号:3で表される塩基配列とハイブリダイズするDNAとして具体的には、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAの塩基配列と少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは約80%以上、最も好ましくは90%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
【0019】
又、配列番号:2記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するとは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、更に好ましくは約80%以上、最も好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むことを意味する。従って、配列番号:2で表されるアミノ酸配列から、1乃至数個のアミノ酸残基を挿入又は欠失させたアミノ酸配列、1乃至数個のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基と置換させたアミノ酸配列、1乃至数個のアミノ酸残基が修飾されたアミノ酸配列等は本発明に含まれるものである。挿入されるアミノ酸又は置換されるアミノ酸は、遺伝子によりコードされるものであれば、20数種の天然に存するアミノ酸は勿論、それ以外の非天然アミノ酸であっても良い。これらによって生ずるペプチドは、単独であっても、混合(菌体から得たものとの混合も含む)された状態であっても、支障なく、ガラクトビオースの製造に利用される。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例を示して、本発明により得られるII型アラビノガラクタンを分解する酵素の製造、精製、そのアミノ酸配列及びこれをコードするDNAの塩基配列について、具体的に記述するが、これによって、本発明が制限されるものではない。
【0021】
実施例1
粗酵素液の製造:
2000mLの三角フラスコ3個を用意し、その各々に、
NHNO 0.2
HPO 0.1
MgSO・7HO 0.05
KCl 0.05
FeSO4 0.001
Pepton 0.1
(いずれもw/w%を示す)
を含む水溶液を加え、II型アラビノガラクトンとしてSigma−Aldorich社製のLarch wood arabinogalactanを1.0%の濃度に加えた液性pH 5.0の水溶液を500mLずつ加え、それぞれにフザリウム オキシスポラム 12S(受託番号 FERM P−20380)を接種して、30℃で5日間震湯培養した。培養液から、菌体、その他の不溶性物を濾布を用いて除き、約1400mLの粗酵素液を得た。
【0022】
酵素の精製:
上に得た粗酵素液を陰イオン交換クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム(硫安)分画、疎水カラムクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、膜濃縮、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーの順に、処理を行って精製した。具体的には、粗酵素液を、20mMリン酸緩衝液(pH6.0)にて平衡にしたDEAE−Toyopearl 650M(東ソー社製)に供し、未吸着画分を回収した。回収した未吸着画分に硫酸アンモニウムを最終濃度が50%飽和になるように加え、4℃で12時間攪拌した。その後、遠心分離し、上澄を回収し、Butyl−Toyopearl(東ソー社製)に供し、タンパク質の硫安溶液による溶出を硫安濃度50〜0%飽和のリニアーグラジエントにて行った。
【0023】
後記した酵素活性の測定手法で確認しながら活性画分を回収し、十分な20mM酢酸緩衝液(pH4.0)にて透析した。次いで、得られた活性画分を20mM酢酸緩衝液(pH4.0)で平衡化したMonoS(amersham bioscience社製)(FPLCシステム使用 ファルマシア社製)に掛け、タンパク質の食塩水溶液による溶出を食塩濃度0〜0.5M濃度のリニアーグラジエントにて行い、前記手法で確認しながら活性画分を回収した。得られた活性画分をUrtafree−MC(日本ミリポア社製 膜濾過)に供し、上澄を活性画分として回収し、Superdex75(amersham bioscience社製)(FPLCシステム使用 ファルマシア社製)に供し、精製酵素を得た。これにより、粗酵素液1400mLに含まれるトータル活性に対し、1.4%の収率で粗酵素液に対する比活性度が88倍のアラビノガラクタン分解精製酵素を得た。得量290μg。
【0024】
酵素活性の測定:
酵素活性の測定は以下の方法により行った。
(イ)HPLCによる方法
0.1w%のLarch Wood arabinogarakutan(II型)(Sigma−Aldrich社製)20mM酢酸ナトリウム緩衝液溶液(pH5.0)200μLに酵素5μLを加え、37℃で60分インキュベートした。熱(100℃ 5分)により、酵素を失活させ反応を止めた。分解産物(ガラクトビオース)を、0.1N NaOH水溶液中、酢酸ナトリウム0〜0.3Mのリニアーグラジエントで、流速1.0mL/minの条件で、HPLC(Dionex Dxc-500(Dimex社製))を使い、ガラクトビオースの得量を計測した。カラムはCarbopac−PA−1(Dionex社製)を使用して行った。
【0025】
(ロ)還元糖量を測定する方法
0.1%のLarch Wood arabinogarakutan(II型)(Sigma-Aldrich社製)20mM酢酸ナトリウム緩衝液溶液(pH5.0)200μLに酵素5μLを加え、37℃で60分インキュベートした。その後、ソモギー溶液(ナカライテクス社)を200μL入れ、100℃で10分間インキュベートし、氷上で5分間冷やした。その後ネルソン液(ナカライテクス社)を200μL入れ、室温で20分放置し、蒸留水を1.8mL入れ、吸光度計により、OD660nmに対する吸光度を測定した。
【0026】
本酵素の活性単位1Uは、1分間に1μmolの、ガラクトースの還元末端に相当する還元糖量を遊離する酵素量とした。
至適温度:
0.1%larch woodアラビノガラクタン(20mM酢酸緩衝液 pH5.0)200μlに本発明酵素を15μl(0.3mU)を入れ、20℃〜70℃の各温度にて、30分間反応した。その後、100℃で5分間熱し、反応をストップさせた。各温度の相対活性を図1に示す。
【0027】
至適pH:
0.1%larch woodアラビノガラクタン水溶液200μlに100mMの各緩衝溶液(pH2.5−3.5:酢酸ナトリウム−塩酸緩衝液、pH4.0−5.0:酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0−7.5リン酸ナトリウム緩衝液又はpH9.5−10.5炭酸ナトリウム溶液)50μlを入れ、本発明酵素15μl(0.3mU)を入れ、37℃で30分間反応させた。反応は100℃5分間インキュベートすることによって、ストップさせた。相対活性を図1に示す。
【0028】
温度安定性:
20mM酢酸緩衝液に終濃度10μg/mlになるようにウシ血清アルブミンを入れ、その溶液500μlに本発明酵素を100μl入れ、各温度(30℃〜70℃)にて1時間インキュベートすることによって酵素液を処理した。その後、0.1%larch woodアラビノガラクタン(20mM酢酸緩衝液 pH5.0)溶液200μlに上記処理した酵素液15μl(0.3mU)を加え、37℃で30分間反応させた。各温度の相対活性を図1に示す。
【0029】
pH安定性:
100mMの各緩衝溶液(pH2.5−3.5:酢酸ナトリウム−塩酸緩衝液、pH4.0−5.0:酢酸ナトリウム緩衝液、pH6.0−7.5:リン酸ナトリウム緩衝液又はpH9.5−10.5炭酸ナトリウム溶液)100μlに本発明酵素100μlを入れ、30℃で16時間インキュベートさせることにより処理した。その後、0.1%larch woodアラビノガラクタン(100mM酢酸緩衝液 pH5.0)溶液200μlに上記処理酵素を15μl(0.3mU)を加え、37℃で30分間反応させた。各pHの相対活性を図1に示す。
【0030】
金属塩の影響:
0.1%larch wood アラビノガラクタン溶液(20mM 酢酸緩衝液 pH5.0)200μlに、下記金属イオン又はEDTAの終濃度が1mM濃度水溶液になるように添加し、本発明酵素を15μl(0.3mU)加え、37℃30分間酵素反応を行った。各金属イオンまたはEDTAの相対活性(%)を表1に示す。相対活性とは、金属イオンを添加する前の酵素活性に対する30分間の酵素反応後の酵素活性との比を%表示したものである。
【0031】
【表1】

【0032】
分子量の測定:
前記したところにより得た本発明の精製酵素(タンパク質)の分子量をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定した。具体的には、Laemmli法(U.K. Laemmli, Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4, Nature 227 (1970) 680-685.)に従い、10%のアクリルアミドゲルを作製し、本発明のタンパク質およびタンパク質分子量マーカーであるbenchmark protein ladder (invitrogen社製)を同時に電気泳動した。タンパク質分子量マーカーの移動距離との比例計算から本発明のタンパク質の分子量は約52000であることがわかった。なお、本酵素は、エンドグリコシダーゼH(ロシュ社製)の作用により、分子量が52000から48000に変化した。
【0033】
N末端アミノ酸配列:
SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により本発明のタンパク質を分離した後、PVDF膜に電気的に転写し、ペプチドシーケンサーPSQ−1(島津製作所)によりN末端アミノ酸配列を決定した。具体的には上記方法と同様にしてSDSポリアクリルアミド電気泳動を行った後、本発明のタンパク質をセミドライ式ブロッティング装置AE−6675(ATTO社)を用い、PVDF膜にタンパク質を転写した。ペプチドシーケンサーPSQ−1(島津製作所)にて、N末端アミノ酸配列を解読してその配列を配列表の配列番号:1に示した。操作方法は、それぞれの装置のマニュアルに従って行った。
アミノ酸配列:AlaTrpProAsnGlyProPheLysThrGluGlyArgTrpIleValAsnSerAsnGly(配列表:配列番号:1)
【0034】
実施例2
本発明の酵素(タンパク質)をコードする遺伝子配列の決定
A トータルRNAの抽出:
フザリウム オキシスポラム(Fusarium oxysporum)12S株(受託番号FERM P−20380)からRNeasy mini kit(キアゲン社)を使用し、トータルRNAを抽出した。具体的にはFusarium oxysporum 12S株を前記したlarch woodアラビノガラクタン培地10mlで5日間30℃で振とう培養し、その菌体からRNeasy mini kit(キアゲン社)を用い、トータルRNAを抽出した。操作方法は使用説明書にしたがって行った。
【0035】
B(1) トータルRNAから一本鎖cDNAの合成:
上記にて得られたトータルRNAとOligo−dtプライマー(T20AP、配列番号:6)を混合し、逆転写により一本鎖cDNAを得た。具体的にはトータルRNA5μgにOligo(dt)プライマーを0.25μg(50pmol)を入れ、DEPC水(日本ジーン社)にて12μlにfill upして、反応液を調製した。反応液を70℃で10分間インキュベートし、その後、氷上で10分間インキュベートした。その後、5×緩衝液(逆転写用)(TAKARA Bio)3.5μl、dNTPs(10mM) 1μl、reverase transcriptase M−MLV RNaseH free(TAKARA Bio) 1μl、RNase inhibitor 1μlを入れ、42℃で1時間反応させた。その後、70℃で15分インキュベートし、反応をストップさせ、氷上で10分間冷却した。その後、反応液にRNaseH (TAKARA Bio)を1μl入れ、37℃で30分間反応させた。これにより一本鎖cDNAを含む液を得た。
【0036】
T20AP
5‘−CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGCGAGCGGCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN−3’(配列表:配列番号:6)
(V:A, G or C)
【0037】
B(2) 3’末端DNAのクローニング:
上記で得られた一本鎖cDNAを利用して、上記したN末端アミノ酸配列より設計した2種のプライマー(ag−f1(配列番号:9)、ag−f2(配列番号:10))および、T20AP配列より設計した2種のプライマー(AP−1(配列番号:4)、AP−2(配列番号:5))を用いて、PCRを行った。一回目のPCRはag−f1とAP−1のプライマーセットを用いて、上記で得られた一本鎖cDNAを鋳型に行った。2回目のPCRはag−f2とAP−2のプライマーセットを用いて、一回目のPCRで得られたDNA断片を鋳型に行った。2回のPCRによって得られたDNA断片をPCRII−TOPOベクター(invitrogen社製)にクローニングした。
具体的には一回目のPCRは、上記で得られた一本鎖cDNAを1μlとり、10×Blend Taq buffer(TOYOBO)10μlに2mMのdNTP mix を10μl、蒸留水78μl、Blend Taq(TOYOBO)1μlを加えて混合し、計100μlの反応液を調整した。その反応液にプライマーag−f1とAP−1を20pmol加え、PCR反応を行った。PCRプログラムは95℃2分間の熱変性の後、熱変性94℃ 1分間、アニーリング 55℃ 1分間、伸長反応 72℃ 2分間のサイクルを30回行った。2回目のPCRは一回目のPCR後の反応液を蒸留水で500倍に薄めたもの1μlに10×Blend Taq buffer(TOYOBO)10μlに2mMのdNTP mix を10μl、蒸留水78μl、Blend Taq(TOYOBO)1μlを加えて混合し、計100μlの反応液を調整した。その反応液にプライマーag−f2とAP−2を20pmol加え、PCR反応を行った。PCR条件は一回目と同様である。得られたDNA断片約1.4KbpをPCRII−TOPOベクター(invitrogen社製)にクローニングした。
AP1
5´−CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGC-3´(配列表:配列番号:4)
AP2
5´−ACTCACTATAGGGCGAGCGGC-3´(配列表:配列番号:5)
ag−f1
5´−TGGCCIAAYGGICCITTYAARACNGA-3´
(I:inosine, Y: C or T, R: A or G, N: A or T or G or C) (配列表:配列番号:9)
ag−f2
5´−TTYAARACIGARGGIMGITGGATHGT-3´
(M: A or C, H: A or T or C) (配列表:配列番号:10)
【0038】
C 3´側遺伝子の塩基配列:
上記方法によりクローニングした本発明タンパク質をコードする3´側遺伝子の塩基配列をCEQ DTCS−quick start kit(Beckman Coulter)を用い、DNAシーケンサーCEQ 2000XL(Beckman Coulter)により解読した。操作手順はすべてマニュアルに従った。決定された3´側遺伝子配列中には、本発明のタンパク質の推定TAG終始コドンを含んでいた。
決定された塩基配列は本発明タンパク質をコードする全長cDNA配列の78番目から1263番目の塩基配列である。
【0039】
D 5´側遺伝子のクローニング:
5´側の塩基配列は上記で得られた3´側塩基配列より設計された2種のプライマー(5/ag1(配列番号:7)、5/ag2(配列番号:8))およびFusarium oxysporum 12S株のゲノムライブラリー作製に用いたカセットに相補する2種のプライマー(C1、C2)により行った。
C1、C2として、下記するLA PCR in vitro Cloning Kit(TAKARA Bio社製)を用いた。
5/ag1
5´−CTTCAACACCTTCTGAAGAATAATTGTACC-3´(配列表:配列番号:7)
5/ag2
5´−AGATCAACGTCTTTACCATTGTTGGCGTAG―3´(配列表:配列番号:8)
【0040】
E ゲノムライブラリーの作製:
Fusarium oxysporum 12S株のゲノムを抽出した。抽出したゲノムを制限酵素Sal I(TAKARA Bio社製)で処理し、様々な断片をLA PCR in vitro Cloning Kit(TAKARA Bio社製)を用いて、カセットライゲーションを行い、ゲノムライブラリーを作製した。
具体的には、Fusarium oxysporum 12S株をlarch woodアラビノガラクタン含有培地10mlで30℃で5日間培養し、菌体を回収した後、DNA抽出キットであるISOPLANTII(日本ジーン)を用いてゲノムを抽出した。作業はマニュアルにしたがって行った。その後、得られたゲノム溶液5μlに制限酵素Sal Iを50U、10×Sal I buffer 5μl、滅菌蒸留水50μlを入れ、37℃で3時間反応させ、ゲノムを制限酵素処理した。その後、LA PCR in vitro Cloning Kit(TAKARA Bio)を用いて、制限酵素処理したゲノムをSal Iカセットにライゲーションし、ゲノムライブラリーを得た。作業はマニュアルにしたがって行った。
【0041】
F 5´側遺伝子のクローニング:
3´側塩基配列から設計された2種のプライマー(5/ag1、5/ag2)および上記にて作製したゲノムライブラリーのSal Iカセットに相補する2種のプライマー(C1、C2)(TAKARA Bio社製) により行った。一回目のPCRはゲノム溶液を鋳型に5/ag1とC1のプライマーセットを用いて行い、2回目のPCRは一回目のPCRで得られたDNA断片を鋳型に5/ag2とC2をプライマーセットを用いて行った。得られたDNA断片をPCRII−TOPOベクター(invitorogen社製)にクローニングした。
具体的には一回目のPCRは、上記で得られたゲノムを1μlとり、10×Blend Taq buffer(TOYOBO社製)10μlに2mMのdNTP mix を10μl、蒸留水78μl、Blend Taq(TOYOBO社製)1μlを加えて混合し、計100μlの反応液を調整した。その反応液にプライマー5/ag1とC1を20pmol加え、PCR反応を行った。PCRプログラムは95℃2分間の熱変性の後、熱変性94℃ 1分間、アニーリング 55℃ 1分間、伸長反応 72℃ 2分間のサイクルを30回行った。二回目のPCRは、上記一回目のPCRで得られたDNA溶液を500倍に薄めたものを1μlとり、10×Blend Taq buffer(TOYOBO)10μlに2mMのdNTP mix を10μl、蒸留水78μl、Blend Taq(TOYOBO)1μlを加えて混合し、計100μlの反応液を調整した。その反応液にプライマー5/ag2とC2を20pmol加え、PCR反応を行った。PCRプログラムは95℃2分間の熱変性の後、熱変性94℃ 1分間、アニーリング 55℃ 1分間、伸長反応 72℃ 2分間のサイクルを30回行った。得られたDNA断片0.4KbpをPCRII−TOPOベクター(invitorogen)にクローニングした。
【0042】
G 5´側塩基配列の決定:
上記方法によりクローニングした本発明タンパク質の5´側遺伝子の塩基配列をCEQ DTCS−quick start kit(Beckman Coulter)を用い、DNAシーケンサーCEQ 2000XL(Beckman Coulter)により解読した。操作手順はすべてマニュアルに従った。決定された5´側遺伝子配列の中には推定されるATGスタートコドンが存在した。
決定された塩基配列は全cDNA配列の1番目から77番目の塩基配列である。
【0043】
H 本発明のタンパク質をコードする全長cDNAのクローニング:
本発明タンパク質をコードする全長cDNAのクローニングは3´末端DNA配列から設計したプライマーgal1−stop(配列番号:12)および5´末端DNA配列から設計したプライマーgal1−start(配列番号:11)を用い、一本鎖cDNAを鋳型にしたPCRによって行った。具体的には上記で得られた一本鎖cDNAを1μlとり、10×Blend Taq buffer(TOYOBO)10μlに2mMのdNTP mix を10μl、蒸留水78μl、Blend Taq(TOYOBO)1μlを加えて混合し、計100μlの反応液を調整した。その反応液にプライマーgal1−stopとgal1−startをそれぞれ20pmol加え、PCR反応を行った。PCRプログラムは95℃2分間の熱変性の後、熱変性94℃ 1分間、アニーリング 55℃ 1分間、伸長反応 72℃ 2分間のサイクルを30回行った。得られたDNA断片1263bpをPCRII−TOPOベクター(invitorogen)にクローニングした。
gal1−stop:5´−CTACTTCTTCAAAGTGCCCG−3´(配列番号:12)
gal1−start:5´−ATGAAGCTATTCGTCAGCCC−3´(配列番号:11)
【0044】
I 全cDNA塩基配列の決定:
上記方法によりクローニングした本発明タンパク質の全cDNA塩基配列をCEQ DTCS−quick start kit(Beckman Coulter)を用い、DNAシーケンサーCEQ 2000XL(Beckman Coulter)により解読した。操作手順はすべてマニュアルに従った。
解読された本発明のタンパク質をコードする全cDNAは1263bpであった。
配列表:配列番号:3に示した。
【0045】

ATGAAGCTATTCGTCAGCCCTCTCCTGGCACTCAGCTGCCTCATCGGCAATGCTGTAGCAGCATGGCCCAA
TGGACCTTTCAAAACCGAAGGTCGTTGGATCGTCAACTCCAATGGTGACAAGATCAGCCTCGCTGGAGCCA
ACTGGCCCGGCCACGGCGAAGTCATGGTCCCCGAAGGTCTGCAGTACCAATCCATCAAGGATGTTCTCTCC
GATATTAAGAGCATTGGCATGAACGCTATTCGCCTCACCTTCGCCACTGAGCTTGTTGACCAGATCTACGC
CAACAATGGTAAAGACGTTGATCTCAAGACTGCCTTCGAGGAAGGCCTTGGAAAGGAGAATGGTACAATTA
TTCTTCAGAAGGTGTTGAAGAACAACCCTTCTTTCACCGCTCAGACAACACGTCTTGAGGTCTACGACGCC
ATTGCTGCTGAGTGTCTCCGTCAACAGATCTACATCGACCTTGACAACCACATTTCTGAGGCTAAGTGGTG
CTGCGGCGGTACAGATGGCAACACTTGGTGGGGAGATACCCAGTTTAATGTCGACAACTGGGTTCGAGGTG
GCAAATACATGGCAGCTCACAGCAAGAAATGGCCCGCCAAGATCACCCAGTCTCTGCGCAACGAGCCCCGC
GAACCTACAAACAACAATGCTCTCCGTGACAAGTCATACAACTGGAGTGATCTCTACAAGTACATGCGCCA
AGGTGCTGATGCAGTCCATGAGGCCGATCCCGAGGCAATCATCGTCATCTCCGGCATGAACTACGACACCT
ACGTCACTCCTCTCTATTCCGGTGAGAAGCTTCAGCCAGGAGGCGAAGTCTTTAACAGAGATGACTTTGTC
GGCTATGGCAAGGATAAGCTAGTTCTTGAGATTCACAACTACGAGAACAAGGGAACAAGCTGCTCTTCTCT
TCGCTACAATCTCTACAACAAGGGATTCCAGGCCATGAACGAGAGCGATCCCAATGTCGCTGAGGTCTTCC
CCGTCATGCTGACTGAGTTTGGTCAAGCTATGAATGGTGCCGATTACGACACTGCCAACACTTACGTGAGC
TGCTTGTCGGAGTATCTGCCTGAAATTAAGGCTAGTTGGTTCATTTGGGTTATTGTTGGTCGCTACTATAC
TCGTCAGGGCATCCAGGAGTTTGATGATTCTTGGGGTATGAAGAAGGCTGATTGGTCGGGATGGAAGAACG
ATGACTACATTGCGAAATACCTCAAGCCTCAGATTGCGGGCACTTTGAAGAAGTAG
【0046】
J 全アミノ酸配列:
上記で得られた塩基配列から全アミノ酸配列を配列表の配列番号:2のように決定した。
MetLysLeuPheValSerProLeuLeuAlaLeuSerCysLeuIleGlyAsnAlaValAlaAlaTrpProAsnG
lyProPheLysThrGluGlyArgTrpIleValAsnSerAsnGlyAspLysIleSerLeuAlaGlyAlaAsn
TrpProGlyHisGlyGluValMetValProGluGlyLeuGlnTyrGlnSerIleLysAspValLeuSerAsp
IleLysSerIleGlyMetAsnAlaIleArgLeuThrPheAlaThrGluLeuValAspGlnIleTyrAlaAsn
AsnGlyLysAspValAspLeuLysThrAlaPheGluGluGlyLeuGlyLysGluAsnGlyThrIleIleLeuG
lnLysValLeuLysAsnAsnProSerPheThrAlaGlnThrThrArgLeuGluValTyrAspAlaIleAla
AlaGluCysLeuArgGlnGlnIleTyrIleAspLeuAspAsnHisIleSerGluAlaLysTrpCysCysGly
GlyThrAspGlyAsnThrTrpTrpGlyAspThrGlnPheAsnValAspAsnTrpValArgGlyGlyLys
TyrMetAlaAlaHisSerLysLysTrpProAlaLysIleThrGlnSerLeuArgAsnGluProArgGluPro
ThrAsnAsnAsnAlaLeuArgAspLysSerTyrAsnTrpSerAspLeuTyrLysTyrMetArgGlnGly
AlaAspAlaValHisGluAlaAspProGluAlaIleIleValIleSerGlyMetAsnTyrAspThrTyrValThr
ProLeuTyrSerGlyGluLysLeuGlnProGlyGlyGluValPheAsnArgAspAspPheValGlyTyr
GlyLysAspLysLeuValLeuGluIleHisAsnTyrGluAsnLysGlyThrSerCysSerSerLeuArgTyrA
snLeuTyrAsnLysGlyPheGlnAlaMetAsnGluSerAspProAsnValAlaGluValPheProVal
MetLeuThrGluPheGlyGlnAlaMetAsnGlyAlaAspTyrAspThrAlaAsnThrTyrValSerCys
LeuSerGluTyrLeuProGluIleLysAlaSerTrpPheIleTrpValIleValGlyArgTyrTyrThrArgGln
GlyIleGlnGluPheAspAspSerTrpGlyMetLysLysAlaAspTrpSerGlyTrpLysAsnAspAspTyrI
leAlaLysTyrLeuLysProGlnIleAlaGlyThrLeuLysLys
【0047】
実施例3
ガラクトビオースの製造:
20%larch wood アラビノガラクタン(20mM酢酸緩衝液pH5.0)4.5mlに本発明酵素0.5ml(6mUに相当)を入れ、37℃で3日間反応させた。反応液を100℃で5分間処理することによって、酵素を失活させた。その後、反応液からガラクトビオースを精製した。具体的には、反応液に15mlのエタノールを加え、未反応の多糖を沈殿させたあと、遠心分離にて、沈殿物を取り除いた。上澄を回収し、エバポレーターにより、2mlにまで、濃縮した。その後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーであるBio−Gel P2 column(2.5x48cm、Bio-rad)に流した。本ゲルろ過カラムの展開溶媒は20mMのNaCl水溶液を用いた。カラムクロマトの溶出画分を2mlずつ分取し、各フラクションをHPLC(Dionex Dxc-500、使用カラムCarbopac-PA-1)にて分析した。展開溶媒は0.1N NaOH水溶液に0〜0.3M酢酸ナトリウムのリニアーグラジエントをかけるようにして行った(流速1.0ml/分)。ガラクトビオースのピークを認めたフラクションを回収し、その溶液を両イオン交換樹脂であるAG 501−X8(D)(Bio-rad社製)で処理した。具体的には樹脂を液に入れ、濾過して除いている。その結果、精製ガラクトビオース約5mgを得た。得られたガラクトビオースをKRATOS質量分析装置(島津製作所)分析した結果、分子量は364.4であった。操作はマニュアルに従っておこなった。また、精製したガラクトビオースを酸加水分解したのち、HPLC(上記と同じ条件)にて分析した結果、保持時間5.16分にガラクトースの単一ピークを認めた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、従前利用することができなかった木質系のアラビノガラクタン、即ち、II型アラビノガラクタンからガラクトビオースを造ることができ、多く存在するバイオマス資源を利用することができる。更に、新規な性能を備えた酵素(ペプチド)が提供され、新たな酵素製剤の提供も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明により提供される酵素(ペプチド)の至適温度、指摘pH、温度安定性、pH安定性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:3で表される塩基配列を有するDNA叉は該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項2】
請求項1記載のDNAによってコードされる配列番号:2記載のアミノ酸配列又は配列番号:2記載のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するII型アラビノガラクタン分解酵素。
【請求項3】
以下に示す物理化学的性質を有するII型アラビノガラクタン分解酵素。
作用
II型アラビノガラクタンに作用しガラクトビオースを生成する。
基質特異性
I型アラビノガラクタンには作用せずII型アラビノガラクタンに作用し、分解物としてガラクトビオースを与える。
分子量
52000(SDS−PAGE)(エンドグルコシダーゼにより48000となる。)
安定pH範囲
4.1〜9.9
至適pH
4.0〜6.9
温度安定性
60℃で一時間まで安定
至適温度
50℃
金属塩の影響
下記金属イオン1mM濃度水溶液中、37℃30分経過後の残存活性が、水銀80%、鉄65%、亜鉛60%。銀50%、銅45%、カドミウム40%を示し、本酵素の活性はバリウム、カルシウム、コバルト、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、ニッケルまたはEDTAによる影響は受けない。
【請求項4】
II型アラビノガラクタンを基質とし、請求項2又は3記載のアラビノガラクタン分解酵素を作用させ、ガラクトビオースを製造することを特徴とするガラクトビオースの製造方法。
【請求項5】
フザリウム属由来の酵素である請求項2又は3のいずれかに記載の酵素。
【請求項6】
アラビノガラクタン分解酵素がフザリウム属由来の酵素である請求項4記載の製造方法。
【請求項7】
フザリウム属に属する菌株をII型アラビノガラクタンを基質として含む培地で培養し、II型アラビノガラクタンを分解してガラクトビオースを生産する酵素を得ることを特徴とする配列番号:2に記載のアミノ酸配列を有する又は請求項3記載の物理化学的性質を有するII型アラビノガラクタン分解酵素の製造方法。
【請求項8】
フザリウム属に属し、ガラクトビオースを生産する生産菌。
【請求項9】
フザリウム オキシスポラム 12S(受託番号FERM P−20380)である請求項8記載の生産菌。
【請求項10】
フザリウム属に属するガラクトビオースを生産する生産菌をII型アラビノガラクタンを含む培地で培養し、培地からガラクトビオースを採取することを特徴とするガラクトビオースの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−211938(P2006−211938A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27015(P2005−27015)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(591018534)奥本製粉株式会社 (20)
【Fターム(参考)】