説明

アラミドポリマー溶液の製造方法、製造システム、およびアラミドポリマー成形物

【課題】アラミドポリマーを溶剤中に迅速に溶解できるアラミドポリマー溶液の製造方法を提供する。
【解決手段】溶剤中に分散した固体状のアラミドポリマーが薄膜の状態で、強いせん断場にさらされる機能を有する薄膜旋回ミキサーを用いてアラミドポリマーを溶剤に溶解することを特徴とするアラミドポリマー溶液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラミドポリマー溶液の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、薄膜旋回ミキサーを用いてアラミドポリマーを溶剤に溶解することによりアラミドポリマー溶液を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分とからなるアラミドポリマーは、その高強度、高弾性率、耐薬品性等の特性を生かし、アラミド繊維やアラミド薄膜等として産業資材用途や機能性衣料用途等に広く利用されている。
【0003】
アラミドポリマーは、溶融成形することが困難な樹脂である。このため、アラミド成形体を得るには、通常、アラミドポリマーを溶剤に溶解し、溶液の形態で賦型し、更に溶剤を除く処理を経て成形体としている。
【0004】
このような成形方法として、例えば硫酸溶液にアラミドポリマーを溶解させるアラミド成形物の製造方法が提案されている(特許文献1)。この提案では、硫酸溶液を紡糸または製膜などで成形した後、成形物を水洗し、次いで残留硫酸を中和処理した後、必要であれば再度水洗し、必要に応じて乾燥、延伸、熱処理等を行ことにより成形物を得ている。しかしながら、特許文献1の方法は、溶剤に強酸を用いるため、製造設備に特殊な材料を用いる必要がある。その他、残留硫酸による成形品の品質上の問題、強酸に弱い添加剤を使用できない問題がある。このため、特許文献1の方法は、経済的ではなく、成形品の用途も限定される。
【0005】
一方、溶剤として硫酸を使用しない方法として、例えば無機塩を含有するアミド系溶剤にアラミドポリマーを溶解させるアラミド成形物の製造方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。この提案では、溶剤として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどアミド系溶剤を例示している。また、混練装置として、一軸押出機、二軸押出機などのスクリュー式押出機、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、ローラー、ニーダー等せん断混練りできるものを例示している。しかしながら、特許文献2や特許文献3の方法は、せん断混練りの強さが弱いため、溶解を迅速に行うことができない。また、せん断混練りを長時間行っても、未溶解のままのアラミドポリマーが残存してしまう問題がある。また、フィラー等の添加物を添加した場合も、分散不良等の問題が生じる。
【0006】
また、アラミドポリマーは一旦析出、固化させてしまうと再溶解させることが難しく、上述したように、溶解助剤として塩化カルシウムなどの無機塩を必要とする。或は、硫酸などの特殊な溶剤を必要とする。メタ型のアラミドポリマーはパラ型に比べ溶解性は良いが、これを溶解させる工程も煩雑で継粉を生じさせないで適切に溶解することは極めて難しいのが実情である。これがアラミドポリマーの用途展開において課題の1つになっている。
このように、現状ではアラミドポリマーを溶剤中に迅速に溶解できる方法が無く、その解決策が切望されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−114474号公報
【特許文献2】特開2006−241271号公報
【特許文献3】特開2006−241624号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その主たる目的は、アラミドポリマーを溶剤中に迅速に溶解できるアラミドポリマー溶液の製造方法および製造システムを提供することにある。更に、本発明の目的の一つは、未溶解のままのポリマー残存が少ないアラミドポリマー溶液の製造方法および製造システムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるアラミドポリマー溶液を用いて製造したアラミドポリマー成形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、検討を重ねた結果、アラミドポリマーの溶解に特定の装置を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し本発明に至った。すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
【0010】
(1)薄膜旋回ミキサーを用いてアラミドポリマーを溶剤に溶解することを特徴とするアラミドポリマー溶液の製造方法。
(2)予め該アラミドポリマーを該溶剤中に混合して分散させておき、この分散液を該薄膜旋回ミキサーに供給して、該薄膜旋回ミキサーにより該アラミドポリマーを該溶剤に溶解することを特徴とする(1)記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(3)予め該分散液中にビーズメディアを含ませておき、この分散液を薄膜旋回ミキサーに供給して、該薄膜旋回ミキサーにより該アラミドポリマーを該溶剤に溶解し、その後、アラミドポリマー溶液中から該ビーズメディアを分離することを特徴とする(2)記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(4)該薄膜旋回ミキサーは少なくとも2つの液体供給口を備え、一方の液体供給口に該分散液を供給し、他方の液体供給口に、該アラミドポリマーに対し貧溶剤に相当する成分を供給することを特徴とする(2)又は(3)記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(5)該溶剤が極性アミド溶剤であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(6)該溶剤が、極性アミド溶剤に加え、該アラミドポリマーに対し貧溶剤に相当する成分を含むことを特徴とする(5)記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(7)該薄膜旋回ミキサーの周速が20〜50m/秒であり、滞留時間が5〜100秒であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(8)該薄膜旋回型ミキサーの運転温度が20〜100℃であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(9)該分散液の温度が−15〜25℃であることを特徴とする(2)〜(8)のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(10)該アラミドポリマーが粉末状であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(11)該アラミドポリマーの平均粒子径が0.1〜200μmの範囲であることを特徴とする(10)記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
(12)アラミドポリマー溶液を製造するシステムであって、該アラミドポリマーを供給する手段と、該アラミドポリマーの溶剤を供給する手段と、前記各供給手段からそれぞれ供給されたアラミドポリマーおよび溶剤を薄膜状に旋回させて、該アラミドポリマーを該溶剤に溶解させる薄膜旋回ミキサーと、を備えたことを特徴とするアラミドポリマー溶液の製造システム。
(13)アラミドポリマー溶液を製造するシステムであって、該アラミドポリマーを供給する手段と、該アラミドポリマーの溶剤を供給する手段と、前記各供給手段からそれぞれ供給されたアラミドポリマーおよび溶剤を混合して分散する分散手段と、この分散手段からの分散液を薄膜状に旋回させて、該アラミドポリマーを該溶剤に溶解させる薄膜旋回ミキサーと、を備えたことを特徴とするアラミドポリマー溶液の製造システム。
(14)上記(1)〜(11)のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液を用いて製造されたことを特徴とするアラミドポリマー成形物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アラミドポリマーを溶剤中に迅速に溶解できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[アラミドポリマー]
本発明でいうアラミドとは、1種又は2種以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、該芳香族基は2個の芳香環が酸素、硫黄又はアルキレン基で結合されたものであってもよい。また、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、クロル基などのハロゲン基等が含まれていてもよい。さらには、これらアミド結合は限定されず、パラ型、メタ型のどちらでもよい。
【0013】
かかるアラミドの具体例としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレンなどが挙げられるが、本発明においては、実質的に、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドが好ましく使用される。
【0014】
本発明に適用可能なアラミドポリマーの形態は特に限定されず、粉末状、繊維状、フィブリル状などいずれの形態も適用可能である。ただし、接触面積が大きく溶解が容易という観点においては粉末状であることが特に好ましい。
【0015】
本発明で使用するアラミドポリマーは、公知の製造方法により製糸されたアラミド繊維であっても良く、粒状、粉体状のものであっても良い。これらのうち、粉体状のものがアラミドポリマーの溶剤への溶解性が良好であるため、特に好ましい。
【0016】
前記の粉末状アラミドポリマーの平均粒子径は0.1〜200μmの範囲が好ましい。平均粒子径が0.1μmより小さいとハンドリング性が低下し好ましくないだけでなく、このような粉末を得ることは実質的に困難である。また、200μmより大きいと接触面積が十分でなく溶解性が低下するため好ましくない。なお、平均粒子径は顕微鏡で観察する方法、コールター法等の手法から測定可能である。
【0017】
[溶剤]
本発明において、溶剤はアラミドポリマーを溶解するものであれば好適に用いることができる。これらのうち、アミド系溶剤、特に極性アミド系溶剤が好ましい。このような極性アミド系溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどを例示することができる。取扱い性や安定性及び溶剤の毒性等の点から、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0018】
[溶解装置]
本発明では溶解装置として薄膜旋回ミキサーを用いることが大きな特徴である。本発明における薄膜旋回ミキサーとは、ミキサー内で溶剤中に分散した固体状のアラミドポリマーを薄膜の状態で旋回し、強いせん断場に曝す機能を有するミキサーを云う。
【0019】
ここで、薄膜旋回ミキサーは通常、溶剤に非溶解性の粉末を分散させる装置として適用されている。例えば特開2006−241271号公報には、ポリアクリロニトリル変性ゴム結着剤のN−メチル−2−ピロリドン溶液中に、薄膜旋回ミキサーを用いてアルミナ微粒子を分散させた例が示されている。このように従来、薄膜旋回ミキサーは粉末の分散装置としては知られていたが、ポリマーを溶剤に溶解させるために用いると言う視点は存在しなかったと言える。ましてや難溶解性の固体状のアラミドポリマーについて、硫酸や溶解助剤を用いずに分散器で再溶解させるということは、常識的にはまず不可能と考えられていた。
【0020】
ところが、本発明者は、薄膜旋回ミキサーを用いて固体状のアラミドポリマーと溶剤を旋回したところ、驚くべきことに、硫酸等を用いずとも固体状のアラミドポリマーを再溶解させることができることを見出した。このように固体状のアラミドポリマーを再溶解できたのは次の理由によるものと考えられる。すなわち、アラミドポリマーの溶解を困難にしている主な要因は、アラミドポリマー同士が強い分子間力で凝集していることにあるが、薄膜旋回ミキサーを用いたことにより、該ミキサー内での強いせん断場によってこの分子間力による凝集がときほぐされ、アラミドポリマーは高度に分散された状態となった。そのため、継粉の発生もなく、アラミドポリマーは溶剤と十分な接触面積を確保することができ、結果としてアラミドポリマーは容易に溶剤に溶解したものと考えられる。
【0021】
このような薄膜旋回ミキサーとしては、例えば、図1に示すようなものが挙げられる。すなわち、図1において、薄膜旋回ミキサー1は、モータ10、駆動軸11、攪拌具12、略円筒状の攪拌槽13、リング状の堰板14、および冷却手段15を備えている。攪拌具12は、攪拌槽13の内部に配設されており、攪拌槽13の内径よりも僅かに径小でかつ周面に多数の孔が形成された円筒部121を有している。この円筒部121は、駆動軸11および攪拌槽13と同軸上に設けられており、モータ10からの駆動力を受けて攪拌槽13内において高速に回転可能とされている。攪拌槽13の底部には液体供給口131,132が設けられており、これら液体供給口131,132から原料液体が攪拌槽13内に供給されるようになっている。攪拌槽13の上部には、処理液排出口133が設けられており、堰板14を超えて上部に流動したポリマー溶液は、この処理液排出口133を介して外部に排出されるようになっている。冷却手段15は、攪拌槽13の外側を取り囲む冷却容器150と、この冷却容器150内にそれぞれ接続された冷却水供給口151および排出口152とを備えており、冷却水が供給口151から冷却容器150内部を通って排出口152へと流動するよう構成されており、これにより攪拌槽13を所定温度に制御することが可能となっている。このような薄膜旋回ミキサー1においては、撹拌槽13に少量の被処理液を供給して撹拌具12を高速回転させると、被処理液16は撹拌槽13の内面に沿って薄い円筒状に立ち上がりながら撹拌され、強いせん断場に曝されるようになる。このような薄膜旋回ミキサーについては、例えば、特開2001−300281号公報に詳細に記載されている。また、本発明における薄膜旋回ミキサーとして、例えば、プライミックス社製の薄膜旋回ミキサー T.K.フィルミックス(登録商標、型式FM−80−50)を挙げることができる。なお、本発明において、薄膜旋回ミキサーは図1に示した構成に限定されるものではなく、例えば特開平11−333275に示された回転翼を備えたタイプなど、被処理液を薄膜状に旋回させて強いせん断場を形成するものであればいずれをも使用することができる。
【0022】
[アラミドポリマーと溶剤の供給]
薄膜旋回ミキサーへのアラミドポリマーと溶剤の供給は、アラミドポリマー粉末を溶剤に予め分散させ、この分散液を薄膜旋回ミキサーへ送液する方法であっても良く、アラミドポリマー粉末と溶剤とを別々に薄膜旋回ミキサーへ供給し薄膜旋回ミキサー内で混合させ溶解する方法であっても良い。
【0023】
液体(溶剤等)や、粉体(アラミドポリマー粉末等)の移送方法は特に限定されない。液体の移送は液体移送可能なポンプ等によるもので良く、粉体の移送はフィーダー等の定量的に粉体を移送する方法によるもので良い。
【0024】
[アラミドポリマーの溶剤への分散]
薄膜旋回ミキサーを用いてアラミドポリマーを溶剤に溶解するとき、予めアラミドポリマーを溶剤と混合し、分散させた分散液を調整し、この分散液を薄膜旋回ミキサーに送液する方法が好ましい。この分散液を得る手法は特別に限定されることはないが、例えば、タービン翼、プロペラ翼、パドル翼、アンカー翼等の攪拌翼が設置されたタンクに該溶剤と固体状アラミドポリマーを入れ、攪拌翼で攪拌することで容易に得ることができる。
【0025】
この分散液を薄膜旋回ミキサーへ供給する手法は特に限定されない。運転に不具合を生じさせない程度の定量性をもって供給されればよい。具体的な供給手段としては、ギアポンプ、チューブポンプ、フランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ロータリーポンプなどが挙げられ、いずれの手法も好適に用いられることができる。
【0026】
[ビーズメディア]
本発明は、分散液中にビーズメディアを含ませ、この分散液を薄膜旋回ミキサーに供給し、その後該ビーズメディアを分離することでアラミドポリマーを溶剤に溶解することアラミドポリマー溶液の製造方法であっても良い。分散液中にビーズメディアを混合させることはアラミドポリマーの溶解を促進させる観点でより好ましい形態である。
【0027】
分散液にビーズメディアを混合させ、この分散液を薄膜旋回ミキサーに送液すると、薄膜旋回ミキサー内でアラミドポリマーがビーズメディアにより粉砕され微細化されるため溶解が効率よく迅速に進行する。
【0028】
本発明で用いるビーズメディアは、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズ等が好適に用いられる。ビーズ径は特に限定されるものではないが、0.1μm以上1mm以下が好適である。ビーズ径が1mmより大きくなると十分な粉砕効果が得られないことがある。ビーズ径が0.1μmより小さくなると分離操作等でハンドリング性が低下し好ましくない。ビーズの含有量も特に限定されるものではないが、アラミドポリマーの重量に対して1〜5倍重量添加することが概ね好ましい。1倍より少ないと十分な粉砕効果が得られず溶解を促進させることができない場合がある。5倍を超えると分離操作が困難となりポリマー溶液の収率が低下するといった不具合が生じることがある。
【0029】
ビーズメディアの混合は、アラミドポリマーと溶剤からなる分散液を調整するときに、該ビーズメディアも一緒に添加することで容易に実施可能である。このようにして、ビーズメディアを混合させた分散液も前述の送液方法と同様の方法で薄膜旋回ミキサーに送液することが可能である。
【0030】
分散液にビーズメディアを混合させた場合は、薄膜旋回ミキサーからビーズメディアを含んだアラミドポリマー溶液が排出される。アラミドポリマー溶液を得るためにはビーズメディアを除去する必要がある。ビーズメディアの除去は、ろ過分離、沈降分離といった手法によって容易に実施できる。
【0031】
[貧溶剤]
本発明において、極性アミド溶剤に加え、アラミドポリマーに対し貧溶剤に相当する成分を含むことができる。本発明においては、極性アミド溶剤に加えアラミドポリマーに対して貧溶剤となる成分が添加されていてもアラミドポリマーの溶解が可能となる。
【0032】
該貧溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶剤、水などが挙げられる。これらの成分はアラミドポリマーの溶解を阻害しない範囲で添加される。具体的な添加量はアラミドポリマー、極性アミド溶剤、貧溶剤の組み合わせによるが、溶剤全量に対して概ね50重量%以下の範囲で貧溶剤を添加することが可能である。
【0033】
相分離法を用いてアラミド多孔膜を作製する場合、これら貧溶剤をアラミドポリマー溶液に添加し多孔構造を制御する技術は公知であり、この貧溶剤を適量添加することで好適な多孔構造が得られる場合が多い。ただし、貧溶剤を所定量予め添加した溶剤にアラミドポリマーを溶解することは困難であるため、極性アミド溶剤へアラミドポリマーを溶解したアラミドポリマー溶液を作製した後、貧溶剤を添加する工程が必要で、非常に煩雑であった。しかし、この本発明では薄膜旋回ミキサーを適用しているため溶解を効率よく行うことができる。そのため予め貧溶剤を添加した溶剤にも十分に溶解可能であり、多孔膜を製造する際に用いるアラミドポリマー溶液を得るためには非常に有効な手段となる。
【0034】
貧溶剤を添加する場合、予め貧溶剤と極性アミド溶剤を混合してこれを薄膜旋回ミキサーに送液してもよいが、貧溶剤を別の供給口から供給し、薄膜旋回ミキサー内で貧溶剤と極性アミド溶剤が混合されるような形態の方がさらに好ましい。このような手法とすることで溶解時間が短縮され生産性を向上させることが可能である。特に、貧溶剤を多量に添加する場合にこの手法は有効である。
【0035】
[アラミドポリマー溶液の製造方法]
本発明において、アラミドポリマー溶液の製造には上述した薄膜旋回ミキサーを用いる。薄膜旋回ミキサー中でアラミドポリマーは強いせん断場にさらされ、固体状のアラミドポリマーは、先ず溶剤中に極めて良好に分散される。このため固体状のアラミドポリマーと溶剤との接触面積が大きくなり容易に溶解することが可能となる。
【0036】
本発明において、薄膜旋回ミキサーの運転時周速は20〜50m/秒が好適である。周速が20m/秒より遅いとアラミドポリマーを十分に溶解することが困難となり好ましくない。また、周速が50m/秒を超えるとせん断発熱が大きくなりすぎ温度制御が困難となる。
【0037】
本発明において薄膜旋回ミキサー運転時の滞留時間は5〜100秒が好適であり、さらに10〜60秒が好ましい。滞留時間が5秒より短いとアラミドポリマーを十分に溶解することができないことがある。また、100秒を超えるとせん断発熱による熱が蓄積されこれを十分に除去することが難しくなるだけでなく、生産性も低下するため好ましくない。
【0038】
本発明において薄膜旋回ミキサーの運転温度は20〜100℃が好適である。運転温度が20℃より低いとアラミドポリマーを十分に溶解することができない。また、運転温度が100℃を超えると溶剤の蒸発等が問題となり好ましくない。また、貧溶剤を添加した系においてはゲル化の問題も生じる。貧溶剤を添加した場合、アラミドポリマー溶液が高温にさらされるとゲル化するという問題が生じ、好適な温度範囲は貧溶剤の添加量によって詳細には決定されるが、概ね100℃以下、さらに好ましくは70℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。
【0039】
薄膜旋回ミキサーへ送液される該分散液の温度は特に限定されるものではないが、−15〜25℃が好適である。温度が−15℃より低くなると該溶剤が凝固し送液に支障をきたすことがあり好ましくない。上限温度は特に限定されるものではないが、少なくとも加温は不要である。そのような観点から25℃より高い温度である必要はない。また、薄膜旋回ミキサー運転時に発生する剪断熱により液温は上昇し、これを効率的に除去する必要があるが、この効率を考えると25℃以下の低温が運転上好ましく、0℃以下の低温がさらに好ましい。さらに、溶解を効率よく行うためにはこの分散液中でアラミドポリマーを極性アミド溶剤で膨潤させることは好ましいことではなく、このような観点からも25℃以下が好適であり、さらに0℃以下が好適で、さらに−10℃以下が好適である。
【0040】
[アラミドポリマー溶液の製造システム]
本発明において、上述したアラミドポリマー溶液の製造方法は例えば以下の製造システムにより好適に実現することが可能である。
例えば、図2に示すように、本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムSは、アラミドポリマーを供給するポリマー供給手段2と、アラミドポリマーを溶解する良溶剤を供給する良溶剤供給手段3と、各供給手段2,3からそれぞれ供給されたアラミドポリマーおよび溶剤を薄膜状に旋回させて、アラミドポリマーを溶剤に溶解させる薄膜旋回ミキサー1と、ポリマー溶液の回収容器4とを備えて構成されている。なお、ポリマー供給手段2はフィーダー等を有して構成され、良溶剤供給手段3はポンプ等を有して構成される。また、薄膜旋回ミキサー1としては図1に示したタイプのものを使用できる。
【0041】
また、本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムSは、図2に示したシステムにおいて、さらにアラミドポリマーと溶剤とを混合・分散させて分散液を作製する分散器を加えても良い。すなわち、例えば図3に示すように、分散器5は、ポリマー供給手段2からアラミドポリマーが供給され、良溶剤供給手段3から良溶剤が供給されるようになっており、分散器5にて作製された分散液は薄膜旋回ミキサー1へと供給されるように構成されている。このような分散器5としては、上述したようにタービン翼等の攪拌翼を有したものを使用することができる。
【0042】
また、本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムSは、図3に示したシステムにおいて、さらに、分散液にビーズメディアを供給する構成を加えても良い。すなわち、例えば図4に示すように、システムSは、分散器5にビーズメディアを供給するビーズメディア供給手段6を備えており、これにより分散器5にて作製される分散液にはビーズメディアが適量含まれるようになっている。また、システムSは、薄膜旋回ミキサー1と回収容器4との間にビーズメディア分離手段7を備えており、これにより薄膜旋回ミキサー1にて作製されたポリマー溶液中からビーズメディアのみを分離し、ビーズメディアを除去したポリマー溶液を回収容器4に移送することが可能となっている。なお、図4に示したように、ビーズメディア分離手段7にて分離したビーズメディアについては、再度ビーズメディア供給手段6に返送する構成としてもよく、このようにすることでビーズメディアを無駄にすることなく、資源を有効に活用することができる。
【0043】
アラミドポリマー溶液中に、アラミドポリマーに対して貧溶剤となる成分を加える場合には、図2に示したシステムにさらに貧溶剤を供給する手段を加えても良い。すなわち、図5に示すように、システムSは、薄膜旋回ミキサー1に貧溶剤を供給する貧溶剤供給手段8を備えている。このような貧溶剤供給手段8はポンプ等を有して構成される。
【0044】
貧溶剤供給手段を備えたシステムの他の例としては、例えば図6に示したようなものが挙げられる。すなわち、図6において、システムSは、ポリマー供給手段2と、良溶剤供給手段3と、分散器5と、貧溶剤供給手段8と、薄膜旋回ミキサー1と、回収容器4とを備えて構成されている。この場合、薄膜旋回ミキサー1には液体供給口が少なくとも2つ設けられている必要がある。そして、一方の液体供給口にはアラミドポリマーと良溶剤とを含む分散液を分散器5から供給し、他方の液体供給口にはアラミドポリマーの貧溶剤が貧溶剤供給手段8から供給されるようになっている。
【0045】
貧溶剤供給手段を備えたシステムの他の例として、例えば図7に示したようなものも挙げられる。すなわち、図7において、システムSは、ポリマー供給手段2と、良溶剤供給手段3と、薄膜旋回ミキサー1と、貧溶剤供給手段8と、混合器9と、回収容器4とを備えて構成されている。薄膜旋回ミキサー1には、ポリマー供給手段2からのアラミドポリマーと、良溶剤供給手段3からの良溶剤が供給されるようになっている。混合器9には、薄膜旋回ミキサー1により作製されたアラミドポリマー溶液と、貧溶剤供給手段8からの貧溶剤が供給され、この混合器9によりこれらが混合されて、最終的なポリマー溶液が作製されるようになっている。なお、混合器9としては、上述した分散器5と同様のものを使用することができる。
【0046】
[アラミドポリマー成形物]
本発明には、上述した方法で作製したアラミドポリマー溶液を用いて製造したアラミドポリマー成形物も含まれる。
上述した方法で作製したアラミドポリマー溶液には、特許文献1に示された従来技術のような硫酸や無機塩等が含まれることもなく、また、特許文献2,3に示された従来技術のように未溶解のままのアラミドポリマーが残存してしまう可能性も極めて低い。したがって、かかるアラミドポリマー溶液を用いて得られた成形物は、硫酸や無機塩等の不純物が含まれることもなく高品質のものとなる。このような成形物としては、例えばアラミド繊維やアラミド薄膜等が挙げられ、電子材料や産業用資材、機能性衣料等の様々な用途に広く利用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
[平均粒子径の測定]
アラミドポリマーの平均粒子径はアラミドポリマーを走査型電子顕微鏡で30サンプル観察し、その画像から粒子の面積を求め、これを円で近似した場合に算出される直径を求め、これを平均粒子径とした。
【0048】
[実施例1]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス粉末(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製:平均粒子径100μm)15重量部を−10℃に冷却したジメチルアセトアミド85重量部中に添加し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。
この分散液をチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ滞留時間が20秒となるように送液した。このとき、薄膜旋回ミキサーは周速27m/秒で運転し、内部温度が60℃となるようにチラーにて温調した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体を脱泡した結果、透明で粘性のあるコーネックスのジメチルアセトアミド溶液が得られた。なお、この溶液に継粉状の未溶解成分は認められなかった。
得られた溶液をガラス板上にドクターブレードにてクリアランス500μmでキャストし、150℃で乾燥した結果、透明なフィルムが得られた。
【0049】
[実施例2]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス粉末(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製:平均粒子径100μm)58重量部、ジメチルアセトアミド660重量部、トリプロピレングリコール282重量部を室温にて混合し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。
この分散液をチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ滞留時間が60秒となるように送液した。このとき、薄膜旋回ミキサーは周速35m/秒で運転し、内部温度が50℃となるようにチラーにて温調した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体を脱泡した結果、透明で粘性のあるコーネックス溶液が得られた。なお、この溶液に継粉状の未溶解成分は認められなかった。これより、貧溶剤であるトリプロピレングリコールを含むジメチルアセトアミド中にコーネックスが溶解可能であることが分かる。
得られた溶液をガラス板上にドクターブレードにてクリアランス200μmでキャストし、これを水:ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=50:35:15(重量比)からなる凝固液に浸漬した結果、白色の多孔膜が得られた。
【0050】
[実施例3]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス粉末(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製:平均粒子径100μm)58重量部、ジメチルアセトアミド660重量部、トリプロピレングリコール282重量部、粒子径0.1mmのアルミナビーズ100重量部を室温にて混合し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。
この分散液をチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ滞留時間が10秒となるように送液した。このとき、薄膜旋回ミキサーは周速30m/秒で運転し、内部温度が50℃となるようにチラーにて温調した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体をろ過しアルミナビーズを分離し脱泡した結果、透明で粘性のあるコーネックス溶液が得られた。なお、この溶液に継粉状の未溶解成分は認められなかった。これより、貧溶剤であるトリプロピレングリコールを含むジメチルアセトアミド中にコーネックスが溶解可能であることが分かる。
得られた溶液をガラス板上にドクターブレードにてクリアランス200μmでキャストし、これを水:ジメチルアセトアミド:トリプロピレングリコール=50:35:15(重量比)からなる凝固液に浸漬した結果、白色の多孔膜が得られた。
【0051】
[実施例4]
攪拌翼、温度計、窒素流入管および粉体添加口を有するセパラブルフラスコを十分に乾燥し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2200重量部を仕込み、200℃で2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末151.07重量部を添加し、100℃に昇温して完全に溶解させた。常温に戻して、パラフェニレンジアミン68.23重量部を添加し完全に溶解させた。この溶液を20℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド124.97重量部を少量ずつ添加した。その後も攪拌しながら、溶液を20℃に保ったまま1時間放置した。その後、水酸化カルシウムで中和することでポリパラフェニレンテレフタルアミドのNMP溶液を得た。
ミキサーにイオン交換水200重量部を入れ攪拌を行い、ここに前記ポリパラフェニレンテレフタルアミドのNMP溶液を少量ずつ100重量部添加した。その結果、ミキサー内ではポリパラフェニレンテレフタルアミドが析出した分散液が得られた。この分散液を吸引ろ過することで平均粒子径5μmのポリパラフェニレンテレフタルアミド粉末を得た。
【0052】
前記ポリパラフェニレンテレフタルアミド粉末5重量部、NMP95重量部を室温にて混合し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。この分散液をチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ滞留時間が90秒となるように送液した。このとき、薄膜旋回ミキサーは周速40m/秒で運転し、内部温度が70℃となるようにチラーにて温調した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体を脱泡した結果、粘性のあるポリパラフェニレンテレフタルアミド溶液が得られた。この溶液をガラス板上にドクターブレードにてクリアランス500μmでキャストし、150℃で乾燥した結果、透明なフィルムが得られた。これより、パラフェニレンテレフタルアミド粉末がNMPへ溶解されていることが確認できた。
【0053】
[実施例5]
実施例4のパラフェニレンテレフタルアミド粉末5重量部、NMP95重量部、粒子径0.1mmのアルミナビーズ10重量部を室温にて混合し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。
この分散液をチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ滞留時間が30秒となるように送液した。このとき、薄膜旋回ミキサーは周速40m/秒で運転し、内部温度が70℃となるようにチラーにて温調した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体をろ過しアルミナビーズを分離し脱泡した結果、粘性のあるポリパラフェニレンテレフタルアミド溶液が得られた。この溶液をガラス板上にドクターブレードにてクリアランス500μmでキャストし、150℃で乾燥した結果、透明なフィルムが得られた。これより、パラフェニレンテレフタルアミド粉末がNMPへ溶解されていることが確認できた。
【0054】
[実施例6]
窒素を内部にフローしている攪拌槽に、NMP中に、パラフェニレンジアミンと3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが当モルとなるように秤量して投入し溶解させた。このジアミン溶液に、テレフタル酸ジクロライドを、ジアミン総モル量と略当モル、秤量し投入した。反応終了後、水酸化カルシウムで中和し、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのNMP溶液を得た。
ミキサーにイオン交換水200重量部を入れ攪拌を行い、ここに前記コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドのNMP溶液を少量ずつ100重量部添加した。その結果、ミキサー内ではコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドが析出した分散液が得られた。この分散液を吸引ろ過することで平均粒子径10μmのポリパラフェニレンテレフタルアミド粉末を得た。この工程で残留する塩化カルシウムは除去されている。
前記コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド粉末5重量部、NMP95重量部、粒子径0.1mmのアルミナビーズ10重量部を−10℃にて混合し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。
【0055】
この分散液をチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ滞留時間が30秒となるように送液した。このとき、薄膜旋回ミキサーは周速40m/秒で運転し、内部温度が70℃となるようにチラーにて温調した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体をろ過しアルミナビーズを分離し脱泡した結果、粘性のあるコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド溶液が得られた。この溶液をガラス板上にドクターブレードにてクリアランス500μmでキャストし、150℃で乾燥した結果、透明なフィルムが得られた。これより、コポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド粉末がNMPへ溶解されていることが確認できた。
【0056】
[実施例7]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス粉末(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製:平均粒子径100μm)5重量部を−10℃に冷却したジメチルアセトアミド57重量部に入れ、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌して分散液を得た。
この分散液を滞留時間30秒になるようにチューブポンプで薄膜旋回ミキサーT.K.フィルミックス(登録商標;プライミックス社製:型式FM−80−50)へ送液した。同時に別の供給口からジメチルアセトアミド57重量部に対して38重量部のトリプロピレングリコールが混合されるように該薄膜旋回ミキサーに供給した。このとき薄膜旋回ミキサーは28m/secで運転し、内部温度が40℃となるようにチラーで制御した。薄膜旋回ミキサーから出てきた液体を脱泡した結果、透明で粘性のあるコーネックス溶液が得られた。なお、この溶液に継粉状の未溶解成分は認められなかった。これより、貧溶剤であるトリプロピレングリコールを含むジメチルアセトアミド中にコーネックスが溶解可能であることが分かる。
【0057】
[比較例1]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス粉末(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製:平均粒子径100μm)15重量部を−10℃に冷却したジメチルアセトアミド85重量部に入れ、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌した。攪拌を継続し、60℃まで加熱したが、ゲル状の継粉成分が認められ良好に溶解することができなかった。
【0058】
[比較例2]
メタ型全芳香族ポリアミドであるコーネックス粉末(登録商標;帝人テクノプロダクツ社製:平均粒子径100μm)58重量部、ジメチルアセトアミド660重量部、トリプロピレングリコール282重量部を室温にて混合し、ラジアルフロータービン翼にて5分間攪拌した。攪拌を継続し、50℃まで加熱したが未溶解成分が多量に認められた。
【0059】
[比較例3]
実施例4で得たポリパラフェニレンテレフタルアミド5重量部を95重量部のNMPへ投入し、−10℃でラジアルフロータービン翼にて5分間分散させた。その後、攪拌しながら70℃まで加温したが、ポリパラフェニレンテレフタルアミドの溶解は確認されなかった。
【0060】
[比較例4]
実施例6で得たコポリパラフェニレン・3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド5重量部を95重量部のNMPへ投入し、−10℃でラジアルフロータービン翼にて5分間分散させた。その後、攪拌しながら70℃まで加温したが、ポリパラフェニレンテレフタルアミドの溶解は確認されなかった。
【0061】
実施例1〜7に示した結果から明らかなように、アラミドポリマーを溶剤に溶解する手段として薄膜旋回ミキサーを用いた本発明の実施例では、アラミドポリマーは溶剤に迅速に溶解している。一方、アラミドポリマーを溶剤に溶解する手段として、汎用の撹拌装置(撹拌翼としてラジアルフロータービンを装着)を用いた比較例1〜4では、アラミドポリマーの溶剤への完全溶解は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、アラミドポリマーを溶剤中に、迅速に溶解でき、同時にビーズメディアやフィラー等の添加物を均一に分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のアラミドポリマー溶液の製造方法に用いられる薄膜旋回ミキサーを模式的に示した断面図である。
【図2】本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムの第1の例を示した模式図である。
【図3】本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムの第2の例を示した模式図である。
【図4】本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムの第3の例を示した模式図である。
【図5】本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムの第4の例を示した模式図である。
【図6】本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムの第5の例を示した模式図である。
【図7】本発明のアラミドポリマー溶液の製造システムの第6の例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0064】
S…アラミドポリマー溶液の製造システム
1…薄膜旋回ミキサー
2…ポリマー供給手段
3…良溶剤供給手段
4…回収容器
5…分散器
6…ビーズメディア供給手段
7…ビーズメディア分離手段
8…貧溶剤供給手段
9…混合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜旋回ミキサーを用いてアラミドポリマーを溶剤に溶解することを特徴とするアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項2】
予め該アラミドポリマーを該溶剤中に混合して分散させておき、
この分散液を該薄膜旋回ミキサーに供給して、該薄膜旋回ミキサーにより該アラミドポリマーを該溶剤に溶解することを特徴とする請求項1記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項3】
予め該分散液中にビーズメディアを含ませておき、
この分散液を薄膜旋回ミキサーに供給して、該薄膜旋回ミキサーにより該アラミドポリマーを該溶剤に溶解し、
その後、アラミドポリマー溶液中から該ビーズメディアを分離することを特徴とする請求項2記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項4】
該薄膜旋回ミキサーは少なくとも2つの液体供給口を備え、
一方の液体供給口に該分散液を供給し、
他方の液体供給口に、該アラミドポリマーに対し貧溶剤に相当する成分を供給することを特徴とする請求項2又は3記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項5】
該溶剤が極性アミド溶剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項6】
該溶剤が、極性アミド溶剤に加え、該アラミドポリマーに対し貧溶剤に相当する成分を含むことを特徴とする請求項5記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項7】
該薄膜旋回ミキサーの周速が20〜50m/秒であり、滞留時間が5〜100秒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項8】
該薄膜旋回型ミキサーの運転温度が20〜100℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項9】
該分散液の温度が−15〜25℃であることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項10】
該アラミドポリマーが粉末状であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項11】
該アラミドポリマーの平均粒子径が0.1〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項10記載のアラミドポリマー溶液の製造方法。
【請求項12】
アラミドポリマー溶液を製造するシステムであって、
該アラミドポリマーを供給する手段と、
該アラミドポリマーの溶剤を供給する手段と、
前記各供給手段からそれぞれ供給されたアラミドポリマーおよび溶剤を薄膜状に旋回させて、該アラミドポリマーを該溶剤に溶解させる薄膜旋回ミキサーと、を備えたこと
を特徴とするアラミドポリマー溶液の製造システム。
【請求項13】
アラミドポリマー溶液を製造するシステムであって、
該アラミドポリマーを供給する手段と、
該アラミドポリマーの溶剤を供給する手段と、
前記各供給手段からそれぞれ供給されたアラミドポリマーおよび溶剤を混合して分散する分散手段と、
この分散手段からの分散液を薄膜状に旋回させて、該アラミドポリマーを該溶剤に溶解させる薄膜旋回ミキサーと、を備えたこと
を特徴とするアラミドポリマー溶液の製造システム。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載のアラミドポリマー溶液を用いて製造したことを特徴とするアラミドポリマー成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−90332(P2010−90332A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263920(P2008−263920)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】