説明

アリール酢酸誘導体及びヘテロアリール酢酸誘導体を製造する方法

本発明は、式(III)で表されるα−アリールメチルカルボニル化合物を調製するための新規調製方法に関し、ここで、該方法は、式(I)で表されるアリール酢酸及びヘテロアリール酢酸及びそれらの誘導体をパラジウム触媒、ホスフィンリガンド、無機塩基及び相間移動触媒の存在下で、場合により有機溶媒を使用して、式(II)で表されるα−ハロメチルカルボニル化合物と反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリールボロン酸誘導体又はヘテロアリールボロン酸誘導体をパラジウム触媒、塩基及び相間移動触媒の存在下でα−ハロ酢酸又はその誘導体と反応させることによる、アリール酢酸及びヘテロアリール酢酸並びにそれらの誘導体を調製する方法に関する。この調製方法によって、多くの種類の官能基化アリール酢酸及び官能基化ヘテロアリール酢酸並びにそれらの誘導体を調製することが可能となる。それは、さらに、別のα−アリールカルボニル化合物を調製するのにも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
典型的には、フェニル酢酸誘導体は、一般的に基耐性(group tolerance)が低い、多段階合成で調製される。該調製は、例えば、アセトフェノンから出発して、ヴィルゲロット・キンドラー(Willgerodt−Kindler)反応(例えば、「H.E. Zaugg et al., J. Amer. Chem. Soc. 70 (1948) 3224−8」を参照されたい)によって達成され得る。しかしながら、この方法は、大量の硫黄含有廃棄物を生じさせる。さらに、極めて悪臭性の揮発性硫黄化合物も生じ得る。
【0003】
アリール酢酸を調製するためのさらなる方法は、臭化ベンジル又は塩化ベンジルから出発する。例えば、シアン化ナトリウムを使用して、対応するニトリルを調製し、次に、それらを加水分解する。必要とされる臭化ベンジル又は塩化ベンジルは、例えば、対応する芳香族化合物をブロモメチル化又はクロロメチル化に付すことによって得ることができる。しかしながら、この調製方法における不利点は、ビス(クロロメチル)エーテル又はビス(ブロモメチル)エーテルなどの極めて発癌性が高い化合物が生成される可能性を排除することができず、従って、工業においては高レベルの安全対策を取らなくてはならないということである。さらに、置換されている芳香族化合物をハロメチル化に付すことにより、多くの場合、異性体混合物が生じる。
【0004】
アルコールの存在下におけるハロゲン化ベンジルのカルボニル化も、同様に、フェニル酢酸エステルをもたらす。ハロゲン化ベンジルに関する上記で挙げられている限られた利用可能性及び毒性を有するCOガスを使用する必要性は、高圧下においてさえ、場合によっては、、この調製方法のさらなる不利点である。
【0005】
既に知られている別の方法は、α−クロロアセトフェノン類をケタール化し、次いで、得られたケタールを転位反応に付すことである(C.Giordano et al., Angew. Chem. 96(1984)413−9)。該α−クロロアセトフェノン類は、アセトフェノン類を塩素化することによって得られるか、又は、当該芳香族化合物をクロロアセチルクロリドで直接にフリーデル−クラフツアシル化することによって得られる。これも、置換されている芳香族化合物に対するフリーデル−クラフツアシル化が多くの場合非選択的に進行するという不利点を生じさせる。
【0006】
フェニル酢酸類を調製するためのさらなる既知方法では、第1段階において対応するアニリンをジアゾ化し、得られたジアゾニウム化合物を第2段階において塩化ビニリデンと反応させ、次いで、そのようにして得られたトリクロロエチル化合物又はブロモジクロロエチル化合物を第3段階において水又はアルコールと反応させて、アリール酢酸又はそのエステルを生成させる(例えば、「V.M.Naidan and A.V.Dombrovskii, Zhurnal Obshchei Khimii 34 (1984) 1469−73」、「EP−A−835243」を参照されたい)。しかしながら、この反応は、一般に、芳香族環上に電子吸引性ラジカルを有し且つアミノ基が立体障害を受けていないアニリンを用いた場合にのみ良好な収率がもたらされる。
【0007】
化学量論的な量の銀又は銅の存在下、180〜200℃でのブロモベンゼンとクロロ酢酸誘導体の反応も知られている。これらの調製方法の不利点は、温度が高いこと(これは、熱感受性化合物の場合、使用を不可能とする)、収率が低いこと及び再生するのが困難な高価な金属の化学量論的な量を使用することである。
【0008】
アリールグリニャール化合物とα−ハロ酢酸誘導体の反応も、同様に、フェニル酢酸誘導体を生成させる。しかしながら、不利点は、取扱いが困難な高い反応性を有するグリニャール化合物を使用する結果として、官能基に関する耐性が極めて限られているということである。
【0009】
ハロゲン化アリールをマロン酸ジアルキルと反応させ、同時に、脱アルコキシカルボニル化することによって、アリール酢酸誘導体を調製することも知られている(Tetrahedron Lett. 2004, 45, 5823−5)。しかしながら、これは、必要とされる塩基が高価な炭酸セシウムであるという不利点を有している。
【0010】
上記調製方法の代替的な方法として、ハロゲン化アリールとレフォルマトスキー(Reformatsky)試薬、スズエノラート類、銅エノラート類及び別のエノラート類又はケテンアセタール類のクロスカップリングも、記述されている(例えば、「J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 1627−1630」、「J. Organomet. Chem. 1979, 177, 273−281」、「Synth. Comm. 1987, 17, 1389−1402」、「Bull. Chem. Soc. Jpn. 1985, 58, 3383−3384」、「J. Org. Chem. 1993, 58, 7606−7607」、「J. Chem. Soc. Perkin 1 1993, 2433−2440」、「J. Am. Chem. Soc. 1975, 97, 2507−2517」、「J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 4833−4835」、「J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 1473−78」、「J. Org. Chem. 1991, 56, 261−263」、「Heterocycles 1993, 36, 2509−2512」、「Tetrahedron Lett. 1998, 39, 8807−8810」などを参照されたい。当該反応についての概説は、「Chem. Rev. 2010, 110, 1082−1146」及び「Angew. Chem. 2010, 122, 686−718」の中に見いだすことができる)。
【0011】
しかしながら、これら調製方法の適用性は限られている。例えば、レフォルマトスキー試薬とケテンアセタール類は、調製及び取扱いが困難である。スズ化合物を使用することは毒物学的な理由で不利であり、化学量論的な量の銅を使用することはその廃棄において高コストの原因となる。エノラート類を使用することは、一般に、当該分子内にエノール化可能な別の基が存在していない場合にのみ可能である。従って、例えば、ケトン類は、そのような調製方法のための基体としては許容されない。数種類の電気化学的な調製方法も知られている(「Synthesis 1990, 369−381」、「J. Org. Chem. 1996, 61, 1748−1755」)。しかしながら、これらの調製方法は、複雑な反応レジメ及び低い空時収率のために不利である。
【0012】
広く利用可能で取扱いが容易で安定なアリールボロン酸とブロモ酢酸エチルの間のパラジウムが触媒するカップリング反応によってフェニル酢酸誘導体を調製する方法も同様に知られている(「L.J.Gooen, Chem. Commun. 2001, 660−70」、「DE−A−10111262」)。しかしながら、この調製方法を立体的要求性の(sterically demanding)、例えば、2,6−二置換フェニル酢酸誘導体の調製に使用することは今日まで不可能である。「Chem. Commun. 2001, 660−70」には、立体障害性アリールボロン酸もその中に記載されている条件下で効率的に変換することが可能であるということが示されている。しかしながら、その実施例には、立体障害性基体としては、2−トリルボロン酸しか含まれていない。さらに多くの立体的な制限を受けるアリールボロン酸(例えば、2,6−ジアルキルフェニルボロン酸類)は、記載されていない。社内試験(比較例1を参照されたい)は、そのような場合において上記で引用されている方法ではアリール酢酸誘導体の不充分な収率しか得られないということを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第835243号
【特許文献2】独国特許出願公開第10111262号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】H.E. Zaugg et al., J. Amer. Chem. Soc. 70 (1948) 3224−8
【非特許文献2】Angew. Chem. 96(1984)413−9
【非特許文献3】V.M.Naidan and A.V.Dombrovskii, Zhurnal Obshchei Khimii 34 (1984) 1469−73
【非特許文献4】Tetrahedron Lett. 2004, 45, 5823−5
【非特許文献5】J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 1627−1630
【非特許文献6】J. Organomet. Chem. 1979, 177, 273−281
【非特許文献7】Synth. Comm. 1987, 17, 1389−1402
【非特許文献8】Bull. Chem. Soc. Jpn. 1985, 58, 3383−3384
【非特許文献9】J. Org. Chem. 1993, 58, 7606−7607
【非特許文献10】J. Chem. Soc. Perkin 1 1993, 2433−2440
【非特許文献11】J. Am. Chem. Soc. 1975, 97, 2507−2517
【非特許文献12】J. Am. Chem. Soc. 1977, 99, 4833−4835
【非特許文献13】J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 1473−78
【非特許文献14】J. Org. Chem. 1991, 56, 261−263
【非特許文献15】Heterocycles 1993, 36, 2509−2512
【非特許文献16】Tetrahedron Lett. 1998, 39, 8807−8810
【非特許文献17】Chem. Rev. 2010, 110, 1082−1146
【非特許文献18】Angew. Chem. 2010, 122, 686−718
【非特許文献19】Synthesis 1990, 369−381
【非特許文献20】J. Org. Chem. 1996, 61, 1748−1755
【非特許文献21】L.J.Gooen、Chem. Commun. 2001, 660−70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、立体要求性の置換を有しているフェニル酢酸誘導体を調製するための今日までに知られている全ての方法は、その適用を困難なものとする欠陥及び不利点(それらの一部は、重要である)を有している。フェニル酢酸類は、一般に、及び、それらの中で、特に、立体要求性の置換を有しているものは、重要な中間体(例えば、作物保護における活性成分のための重要な中間体)であるので、そのような化合物を調製するための技術的に容易で且つ効率の良い方法が、求められている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、アリール酢酸及びヘテロアリール酢酸及びそれらの誘導体をアリールボロン酸誘導体及びヘテロアリールボロン酸誘導体とα−ハロ酢酸及びその誘導体から調製するための調製方法が見いだされ、ここで、該調製方法は、当該反応をパラジウム触媒、ホスフィン、無機塩基及び相間移動触媒の存在下で実施することを特徴とする。
【0017】
相間移動触媒を添加することが当該反応の選択性に対してポジティブな影響を及ぼすという発見は、予測不可能であった。また、そのような発見が予測不可能であったということが本発明の調製方法の発見を特に驚くべきものとしている。
【0018】
相間移動触媒を使用することで、選択性を所望の生成物にとって極めて有利となるようにシフトすることが初めて可能となる。より詳細には、プロト脱ボリル化(protodeborylation)を伴う領域の形成が抑制される。望ましくない副産物はほんの僅かな割合しか形成されない。
【0019】
さらに、相間移動触媒を添加することは、極めて実質的な変換に対して必要とされるパラジウム触媒の量が著しく低減されるという効果も有している。このことによって、本発明の調製方法は、従来技術によって知られている調製方法よりも、極めて経済的に実用的なものとなる。
【0020】
本発明による調製方法は、立体要求性の置換を有しているアリールボロン酸に限定されない。異なる種類の置換を有しているアリールボロン酸も、本発明の条件下において、良好な収率で変換することが可能である。
【0021】
アリールカルボニル化合物及びヘテロアリールカルボニル化合物を調製するための本発明による調製方法は、式(I)
【0022】
【化1】

〔式中、
は、水素又はC−C−アルキルであり;
は、水素又はC−C−アルキルであり;又は、
とRは、それらが結合している原子と一緒に、飽和又は不飽和の、置換されているか又は置換されていない環であり;
Arは、基
【0023】
【化2】

[ここで、R、R、R、R及びRは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ハロゲンで置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、フェニル、−CO−C−C−アルキル、−COO−C−C−アルキル又は−COO−C−C10−アリールである]
であり;
該Arラジカルは、さらに、ヘテロ芳香族ラジカル、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル若しくは3−チエニルなどであることもでき;又は、
該Arラジカルは、1−ナフチル若しくは2−ナフチルであることもできる〕
で表されるアリールボロン酸又はヘテロアリールボロン酸を、パラジウム触媒、ホスフィンリガンド、無機塩基及び相間移動触媒の存在下で、場合により有機溶媒を使用して、式(II)
【0024】
【化3】

〔式中、
Halは、ハロゲンであり;
は、ヒドロキシルであるか、又は、いずれの場合にも置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、フェニル、アリール、フェノキシ若しくはアリールオキシであるか、又は、NR’[ここで、R及びR’は、同一であるか若しくは異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、C−C−アルキル若しくはフェニル{ここで、該フェニルは、C−C−アルキル(ここで、該アルキルは、フッ素又は塩素で置換されていてもよい)で置換されていてもよいか、又は、ニトロ、シアノ若しくはジ−C−C−アルキルアミノで置換されていてもよい}であるか、又は、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和若しくは不飽和の、置換されているか若しくは置換されていない環である]である〕
で表されるα−ハロメチルカルボニル化合物と反応させて、式(III)
【0025】
【化4】

〔式中、Ar及びRは、それぞれ、上記で定義されているとおりである〕
で表されるα−アリールメチルカルボニル化合物を生成させることを特徴とする。
【0026】
この反応は、下記反応式によって例証される:
【0027】
【化5】

【発明を実施するための形態】
【0028】
上記及び下記において言及されている式の中で示されているラジカルに関する好ましい置換基及び範囲について、以下で説明する:
は、好ましくは、水素又はC−C−アルキルである;
は、好ましくは、水素又はC−C−アルキルである;又は、
とRは、それらが結合している原子と一緒に、好ましくは、C−C−アルキル−若しくはアリール−(特に、フェニル−)で置換されていてもよいC−C−アルカンジイルである;
は、好ましくは、ヒドロキシル、フッ素で置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシであるか、又は、いずれの場合にも置換されていてもよいフェニル、フェノキシであるか、又は、NR’[ここで、R及びR’は、好ましくは、同一であるか若しくは異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピルであるか、若しくは、メチル−、エチル−、i−プロピル−、n−プロピル−、CF−、C−、C−、ニトロ−、シアノ−、N(メチル)−、N(エチル)−、N(n−プロピル)−、N(i−プロピル)−で置換されていてもよいフェニルであるか、又は、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和若しくは不飽和の、置換されているか若しくは置換されていない5員若しくは6員の環である]である;
Arは、好ましくは、1−ナフチル若しくは2−ナフチルであるか、又は、基
【0029】
【化6】

[ここで、R、R、R、R及びRは、好ましくは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、フッ素で置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、フェニル、−CO−C−C−アルキル、−COO−C−C−アルキル又は−COO−C−C−アリールである]
である;
Halは、好ましくは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0030】
は、さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、i−プロピル又はn−プロピルである;
は、さらに好ましくは、水素、メチル、エチル、i−プロピル又はn−プロピルである;又は、
とRは、それらが結合している原子と一緒に、さらに好ましくは、メチルで1置換〜4置換されていてもよいC−アルカンジイル、メチルで1置換〜6置換されていてもよいC−アルカンジイルである(重要なのは、−CHC(CHCH−、−C(CHC(CH−である);
は、さらに好ましくは、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、CF、C、C、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、n−プロポキシ若しくはtert−ブトキシであるか、又は、いずれの場合にも置換されていてもよいフェニルであるか、又は、NR’[ここで、R及びR’は、さらに好ましくは、同一であるか若しくは異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピルであるか、又は、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和の置換されていない5員若しくは6員の環である]である;
Arは、さらに好ましくは、1−ナフチルであるか、又は、基
【0031】
【化7】

[式中、R、R、R、R及びRは、さらに好ましくは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、CF、C、C、メトキシ、エトキシ、フェニル、−CO−メチル、−CO−エチル、−COO−メチル、−COO−エチル又は−COO−フェニルである]
である;
Halは、さらに好ましくは、塩素、臭素又はヨウ素である。
【0032】
は、最も好ましくは、水素である;
は、最も好ましくは、水素である;
は、最も好ましくは、メトキシ、エトキシ、tert−ブトキシ、フェニル又はNR’[ここで、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和の置換されていない6員環である]である;
Arは、最も好ましくは、1−ナフチル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−アセチルフェニル、4−クロロ−2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−エトキシカルボニルフェニルである;
Halは、最も好ましくは、臭素である。
【0033】
上記において与えられているラジカルの一般的な定義及び説明又は好ましい範囲のなかで与えられているラジカルの一般的な定義及び説明は、互いに組み合わせることが可能であり、即ち、特定の範囲と好ましい範囲の間の組合せを包含する。それらは、対応して、最終生成物及び中間体に適用される。
【0034】
式(I)で表されるボロン酸は、概ね既知であるか、又は、既知方法によって、例えば対応するブロモ芳香族化合物、マグネシウム金属及びホウ酸トリメチルから、調製することができる。
【0035】
該ボロン酸は、従来技術に従って、パラジウム触媒の存在下で、対応するハロゲン化アリール又はハロゲン化ヘテロアリールをジボロン化合物又はボランのいずれかと反応させることによって、その場で得ることもできる。
【0036】
式(II)で表される化合物は、概ね既知であるか、又は、既知方法で調製することができる。
【0037】
本発明による調製方法において使用される塩基は、無機塩基、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、酸化物、リン酸塩、リン酸水素塩、フッ化物又はフッ化水素である。好ましくは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のリン酸塩、炭酸塩又はフッ化物を使用し、特に好ましくは、フッ化カリウム、炭酸カリウム及びリン酸カリウムを使用する。フッ化カリウムが重要である。
【0038】
本発明による調製方法においては、1〜10当量の特定の塩基を使用する。好ましくは、2〜7当量の塩基を使用する。
【0039】
本発明による調製方法において使用されるパラジウム触媒は、パラジウム(II)塩、例えば、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトネート(palladium acetylacetonate)など〔これらは、さらなるリガンド、例えば、アルキルニトリルなどで安定化させてもよい〕、又は、Pd(0)類、例えば、活性炭担持パラジウム、Pd(PPh、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム又はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムなどである。好ましいのは、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム及び酢酸パラジウムであり;ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムが重要である。
【0040】
本発明による調製方法において使用するパラジウム触媒の量は、使用するアリールボロン酸に基づいて、0.001〜5モル%である。好ましくは、0.005〜3モル%を使用し;特に好ましくは、0.01〜1モル%を使用する。
【0041】
本発明による調製方法において使用されるホスフィンリガンドは、リガンドPR101112〔ここで、R10ラジカル、R11ラジカル及びR12ラジカルは、それぞれ、水素、直鎖及び分枝鎖のC−C−アルキル、ビニル、アリール又はヘテロアリール(ここで、該ヘテロアリールは、ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン又はフランからなる群から選択される)であり、ここで、これらは、直鎖及び分枝鎖のC−C−アルキル又はC−C10−アリール、直鎖及び分枝鎖のC−C−アルキルオキシ又はC−C10−アリールオキシ、直鎖及び分枝鎖のハロゲン化C−C−アルキル又はハロゲン化C−C10−アリール、直鎖及び分枝鎖のC−C−アルキルオキシカルボニル又はC−C10−アリールオキシカルボニル、直鎖及び分枝鎖のC−C−アルキルアミノ、直鎖及び分枝鎖のC−C−ジアルキルアミノ、C−C−アリールアミノ、C−C−ジアリールアミノ、ホルミル、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ並びにハロゲン(例えば、F、Cl、Br及びI)からなる群から選択されるさらなる置換基で置換されていてもよい〕である。
【0042】
好ましいホスフィンリガンドは、トリフェニルホスフィン、トリ(1−ナフチル)ホスフィン及びトリ(o−トリル)ホスフィンである。トリ(1−ナフチル)ホスフィン及びトリ(o−トリル)ホスフィンが重要である。
【0043】
あるいは、予め上記リガンドから1以上のプロセス段階で得られた、確定されたパラジウム錯体を使用することも可能である。
【0044】
本発明による調製方法においては、使用するパラジウムの量に基づいて、1〜20モル当量のホスフィンを使用する。好ましくは、1〜4モル当量使用する。
【0045】
本発明による調製方法においては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩及び金属塩(これらは、クラウンエーテル類又はクリプタンド類によって可溶化されてる)からなる群から選択される相間移動触媒を使用する。
【0046】
この相間移動触媒は、好ましくは、一般式(IV)
【0047】
【化8】

で表される。
【0048】
13ラジカル、R14ラジカル、R15ラジカル及びR16ラジカルは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、C−C28−アルキル、分枝していてもよいC−C28−アルキル、C−C10−アリール又はベンジルである。
【0049】
Xラジカルは、ハロゲン、硫酸水素アニオン、硫酸アニオン、リン酸二水素アニオン、リン酸水素アニオン、リン酸アニオン又は酢酸アニオンである。
【0050】
Xは、好ましくは、臭素、塩素、フッ素、硫酸水素アニオン、硫酸アニオン、リン酸アニオン及び酢酸アニオンである。
【0051】
そのような相間移動触媒の例としては、テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド、アセテート、テトラエチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド及びメチルトリデシルアンモニウムクロリド(Aliquat 336)などを挙げることができる。テトラブチルアンモニウムフルオリド、アセテート及びベンジルトリエチルアンモニウムブロミドが重要である。
【0052】
本発明の調製方法における相間移動触媒の量は、アリールボロン酸に基づいて、1〜50モル%である。5〜20モル%の量が好ましい。
【0053】
本発明による調製方法は、−20℃〜200℃の温度で、好ましくは、0℃〜150℃で、さらに好ましくは、20℃〜120℃で、実施する。
【0054】
本発明による調製方法は、溶媒の存在下又は非存在下で実施することが出来る。好ましくは、溶媒の存在下で実施する。好ましい溶媒は、飽和脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、スルホネート類、ニトリル類、エステル類又はエーテル類である。
【0055】
例えば、、使用する溶媒は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル又は水であり得る。
【0056】
特に好ましくは、芳香族炭化水素類、アミド類、エステル類及びエーテル類を使用する。極めて特に好ましくは、エーテル類を使用する。
【0057】
本発明による調製方法は、典型的には標準気圧下で実施するが、減圧下又は高圧下で実施することも可能である。
【0058】
本発明に従って調製されたアリール酢酸及びヘテロアリール酢酸並びにそれらの誘導体を単離するために、当該反応混合物を、反応が完結した後、後処理、好ましくは、蒸留及び/又は抽出による後処理に付す。好ましくは、抽出し、次いで、蒸留することにより、当該反応混合物を後処理する。
【0059】
本発明による調製方法について、以下の実施例によって例証するが、本発明はそれらに限定されることはない。
【実施例】
【0060】
実施例1: 2,6−ジメチルフェニル酢酸エチル
磁気撹拌機、還流冷却器及び滴下漏斗が付いている25mL容三つ口フラスコに、モレキュラーシーブで乾燥させておいた20mLのテトラヒドロフラン(THF)を最初に入れる。そのTHFを、アルゴンを数分間通気させながら50℃に加熱し、次いで、再度室温まで冷却する。依然としてアルゴン下で、以下のものを加える:17.2mg[0.03mmol=0.3mol%]のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、27.4mgのP(o−トリル)(トリ−o−トリルホスフィン)[0.09mmol]、2.91gのフッ化カリウム(P上で140℃で乾燥させたもの)、272mg[1mmol=10mol%]のベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、1.5g[10mmol]の2,6−ジメチルフェニルボロン酸、及び、2.56g[15mmol]のブロモ酢酸エチル。この混合物を穏やかなアルゴン流の中で還流下に24時間撹拌する。次いで、それをセライトで濾過し、そのフィルターケーキを毎回20mLの酢酸エチルで3回洗浄する。その濾液を合して20mLの1N塩酸と一緒に振盪することにより抽出する。その水相を毎回20mLの酢酸エチルで2回再抽出する。次いで、その有機相を合して20mLの飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥させ、濃縮する。これにより、2.16gの油状物が得られ、これは、GC−MS及びm−キシレンの8.9面積%によれば、72.9面積%の2,6−ジメチルフェニル酢酸エチルを含んでいる。これは、理論値の81.9%の収率に相当する。
【0061】
比較例1: 2,6−ジメチルフェニル酢酸エチル
磁気撹拌機、還流冷却器及び滴下漏斗が付いている25mL容三つ口フラスコに、モレキュラーシーブで乾燥させておいた20mLのテトラヒドロフラン(THF)及び0.36mLの水を最初に入れる。その混合物を、アルゴンを数分間通気させながら50℃に加熱し、次いで、再度室温まで冷却する。依然としてアルゴン下で、以下のものを加える:17.2mg[0.03mmol=0.3mol%]のビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、27.4mgのP(o−トリル)[0.09mmol]、2.91gのフッ化カリウム(P上で140℃で乾燥させたもの)、1.5g[10mmol]の2,6−ジメチルフェニルボロン酸及び2.56g[15mmol]のブロモ酢酸エチル。この混合物を穏やかなアルゴン流の中で還流下に24時間撹拌する。次いで、それをセライトで濾過し、そのフィルターケーキを毎回20mLの酢酸エチルで3回洗浄する。その濾液を合して20mLの1N塩酸と一緒に振盪することにより抽出する。その水相を毎回20mLの酢酸エチルで2回再抽出する。次いで、その有機相を合して20mLの飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥させ、濃縮する。これにより、1.59gの油状物が得られ、これは、GC−MS及びm−キシレンの10.7面積%によれば、56.6面積%の2,6−ジメチルフェニル酢酸エチルを含んでいる。これは、理論値の46.8%の収率に相当する。
【0062】
実施例2〜実施例10
実験に関する一般的な記述
20mL容バイアルの中に、酸素雰囲気下、ボロン酸(1.00mmol)、Pd(dba)(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム)(1.73mg、3.00mol)、トリ−o−トリルホスフィン(2.74mg、9.00mol)、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド(27.8mg、0.10mmol)及びフッ化カリウム(174mg、3.00mmol)を導入する。その容器を密閉し、3回排気し、そして、窒素で再度満たす。撹拌しながら、ブロモ酢酸エチル(167mg、166μL、1.50mmol)及び2mLのTHF(アルゴンで脱ガスし、乾燥させたもの)を添加する。その反応混合物を60℃で24時間撹拌する。反応時間が終了した後、その混合物を冷却し、50μLのn−テトラデカンを添加する。0.25mLのサンプルを取って、3mLの酢酸エチルと2mLの水の中で洗浄し、0.25mLを取り出し、セライト/塩基性アルミナを含んでいるピペットを通して濾過し、次いで、GCで分析する。
【0063】
後処理: 反応溶液をセライト/塩基性アルミナ(1:2)組合せを通して濾過する。そのフィルターケーキを酢酸エチルで洗浄する。その濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(5:1、ヘキサン/酢酸エチル、シリカゲル)で精製する。これにより、生成物が残る。
【0064】
実施例2: 2,4,6−トリメチルフェニル酢酸エチル
2,4,6−トリメチルフェニル酢酸エチルは、上記一般的な実験方法に従って、2,4,6−トリメチルフェニルボロン酸(164mg、1.00mmol)から調製した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理のあとで、2,4,6−トリメチルフェニル酢酸エチルが、理論値の62%の収率で無色の液体として得られる。
【0065】
H NMR(200MHz,CDCl):δ=6.89(s,2H),4.10−4.25(m,2H),3.67(s,2H),2.27−2.37(m,9H),1.27(t,J=7.1Hz,3H)ppm;
13C NMR(50MHz,CDCl):δ=171.9,137.4,136.8,129.3,129.2,61.1,35.6,21.3,20.6,14.7ppm;
MS(70eV),m/z(%):206(23)[M],160(7),133(100),105(10),91(11);
IR(NaCl):υ=2978(m),2867(w),1732(s),1157(m),1031(m)cm−1
【0066】
実施例3: 4−アセチルフェニル酢酸エチル
4−アセチルフェニル酢酸エチルは、上記一般的な実験方法によって、4−アセチルフェニルボロン酸(164mg、1.00mmol)から調製した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理のあとで、4−アセチルフェニル酢酸エチルが、理論値の60%の収率で無色の固体として得られる。
【0067】
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.90(d,J=8.2Hz,2H),7.37(d,J=8.5Hz,2H),4.11−4.17(m,2H),3.66(s,2H),2.58(s,3H),1.20−1.27(m,3H)ppm;
13C NMR(151MHz,CDCl):δ=197.7,170.8,139.5,136.0,129.6,128.6,61.1,41.3,26.6,14.2ppm;
MS(70eV),m/z(%):192(100),164(16),134(14),105(19),89(11);
IR(KBr):υ=2981(w),1735(s),1682(m)、1274(m)、1178(m)cm−1
元素分析:(理論値):C=69.89、H=6.84、(実測値):C=69.95、H=6.99;
融点:55−56℃。
【0068】
実施例4: 4−クロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸エチル
4−クロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸エチルは、上記一般的な実験方法によって、4−クロロ−2,6−ジメチルフェニルボロン酸(186mg、1.00mmol)から調製した。ここでは、290mg[5mmol]のKF及び418mg[2.5mmol]のブロモ酢酸エチルを使用した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理の後、4−クロロ−2,6−ジメチルフェニル酢酸エチルが、理論値の68%の収率で無色の液体として得られる。
【0069】
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.02(s,2H),4.13(q,J=07.Hz,2H),3.62(s,2H),2.29(s,6H),1.23(t,J=7.2HZ,3H)ppm;
13C NMR(101MHz,CDCl):δ=170.8,139.0,132.2,131.6,130.3,127.9,113.6,60.8,35.0,20.1,14.2 ppm;
MS(70eV),m/z(%):226(22)[M],180(9),153(100),115(17),91(11);
IR(NaCl):υ=2980(m),1733(s),1328(w),1155(m),1030(m)cm−1
元素分析:(理論値):C=63.58,H=6.67,(実測値):C=63.30,H=6.78。
【0070】
実施例5: 2,6−ジエチル−4−メチルフェニル酢酸エチル
2,6−ジエチル−4−メチルフェニル酢酸エチルは、上記一般的な実験方法によって、2,6−ジエチル−4−メチルフェニルボロン酸(186mg、1.00mmol)から調製した。ここでは、5.75mg[0.01mmol]のPd(dba)及び9.1mg[0.03mmol]のP(o−トリル)を使用した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理のあとで、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル酢酸エチルが、理論値の54%の収率で無色の液体として得られる。
【0071】
H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.91(s,2H),4.16(q,J=7.2Hz,2H),3.71(s,2H),2.61−2.69(m,4H),2.32(s,3H),1.19−1.28(m,9H)ppm;
13C NMR(101MHz,CDCl):δ=171.9,143.0,136.7,127.2,127.1,60.6,34.0,26.4,21.1,15.1,14.2ppm;
MS(70eV),m/z(%):234(37)[M],161(100),147(33),133(40),119(13);
IR(NaCl):υ=2966(s),1739(s),1458(w),1156(m),1032(m)cm−1
元素分析:(理論値):C=76.88,H=9.46,(実測値):C=75.85、H=9.38。
【0072】
実施例6: 1−ナフタレン酢酸エチル
1−ナフタレン酢酸エチルは、上記一般的な実験方法によって、1−ナフタレンボロン酸(172mg、1.00mmol)から調製した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理のあとで、1−ナフタレン酢酸エチルが、理論値の77%の収率で無色の液体として得られる。
【0073】
H NMR(600MHz,CDCl):δ=8.04(d,J=8.3Hz,1H),7.89(d,J=8.1Hz,1H),7.80−7.84(m,1H),7.55−7.58(m,1H),7.50−7.54(m,1H),7.43−7.47(m,2H),4.16−4.20(m,2H),4.09(s,2H),1.23−1.27(m,3H)ppm;
13C NMR(151MHz,CDCl):δ=171.7,133.9,132.2,130.8,128.8,128.1,128.0,126.4,125.8,125.6,123.9,61.0,39.4,14.3ppm;
MS(70eV),m/z(%):214(100)[M],141(34),115(45),89(9),63(6);
IR(NaCl):υ=3047(w),2981(m),1733(s),1173(m),1029(m)cm−1
元素分析:(理論値):C=78.48,H=6.59,(実測値):C=78.35,H=6.86。
【0074】
実施例7: 4−メトキシフェニル酢酸エチル
4−メトキシフェニル酢酸エチルは、上記一般的な実験方法によって、4−メトキシフェニルボロン酸(152mg、1.00mmol)から調製した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理のあとで、4−メトキシフェニル酢酸エチルが、理論値の77%の収率で無色の液体として得られる。
【0075】
H NMR(200MHz,CDCl):δ=7.25(d,J=8.5Hz,2H),6.91(d,J=8.7Hz,2H),4.13−4.26(m,2H),3.82(s,3H),3.59(s,2H),1.24−1.26(m,3H)ppm;
13C NMR(50MHz,CDCl):δ=172.3,159.1,130.7,126.7,114.4,61.1,55.6,40.9,14.6ppm;
MS(70eV),m/z(%):194(24)[M],121(100),91(8),77(10),51(4);
IR(NaCl):υ=2981(m),2836(w),1732(s),1513(s),1247(m),1032(m)cm−1
元素分析:(理論値):C=68.02,H=7.27,(実測値):C=67.91,H=7.18。
【0076】
実施例8: 4−エトキシカルボニルフェニル酢酸エチル
1,4−フェニル二酢酸1,4−ジエチルは、上記一般的な実験方法によって、4−エトキシカルボニルフェニルボロン酸(194mg、1.00mmol)から調製した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル、5:1)による後処理のあとで、1,4−フェニル二酢酸1,4−ジエチルが、理論値の71%の収率で黄色の液体として得られる。
【0077】
H NMR(600MHz,CDCl):δ=8.12(d,J=8.6Hz,1H),7.99(d,J=8.3Hz,1H),7.67(d,J=8.3Hz,1H),7.34(d,J=8.1Hz,1H),4.38−4.42(m,1H),4.34−4.37(m,1H),4.12−4.16(m,1H),3.65(s,1H),1.36−1.42(m,4H),1.22−1.26(m,2H)ppm;
13C NMR(151MHz,CDCl):δ=170.9,166.4,139.2,130.2,129.8,129.4,129.3,127.2,61.1,61.0,41.4,14.4,14.2ppm;
MS(70eV),m/z(%):237(6)[M],191(39),163(100),135(39),118(13);
IR(NaCl):υ=2982(m),2938(w),1735(s),1718(s)1277(s)cm−1
元素分析:(理論値):C=66.09,H=6.83,(実測値):C=65.98,H=7.05。
【0078】
実施例9: 2,6−ジメチルフェニル酢酸エチル
2,6−ジメチルフェニル酢酸エチルは、上記一般的な方法によって、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミドの代わりに0.1mmolのテトラブチルアンモニウムフルオリドを使用して理論値の63%の収率で調製した。
【0079】
実施例10: 2,6−ジメチルフェニル酢酸エチル
2,6−ジメチルフェニル酢酸エチルは、上記一般的な方法によって、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミドの代わりに0.1mmolの酢酸テトラブチルアンモニウムを使用して理論値の66%の収率で調製した。
【0080】
実施例11: ω−(2,6−ジメチルフェニル)アセトフェノン
20mL容バイアルの中に、酸素雰囲気下、2,6−ジメチルフェニルボロン酸(151mg、1.01mmol)、ω−ブロモアセトフェノン(299mg、1.50mmol)、Pd(dba)(5.75mg、10.0mol)、トリ−o−トリルホスフィン(10.0mg、32.9mol)、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド(27.2mg、0.10mmol)及びフッ化カリウム(323mg、5.56mmol)を導入する。その容器を密閉し、3回排気し、そして、窒素で再度満たす。撹拌しながら、2mLのTHF(アルゴンで脱ガスし、乾燥させたもの)を添加する。その反応混合物を60℃で24時間撹拌する。反応時間が終了した後、その混合物を冷却し、50μLのn−テトラデカンを添加する。0.25mLのサンプルを取って、3mLの酢酸エチルと2mLの水の中で洗浄し、0.25mLを取り出し、セライト/塩基性アルミナを含んでいるピペットを通して濾過し、次いで、GCで分析する。
【0081】
後処理: 反応溶液をセライト/塩基性アルミナ(1:2)組合せを通して濾過する。そのフィルターケーキを酢酸エチルで洗浄する。その濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(5:1、ヘキサン/酢酸エチル、シリカゲル)で精製する。これにより、ω−(2,6−ジメチルフェニル)アセトフェノン(106mg、0.473mmol、理論値の47%)が残る。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=8.16(d,J=7.2Hz,2H),7.66(d,J=7.4Hz,1H),7.51−7.61(m,2H),7.12−7.21(m,3H),4.45(s,2H),2.30(s,6H)ppm;
13C NMR(101MHz,CDCl):δ=196.9,137.4,137.0,133.1,132.5,128.7,128.1,128.0,126.9,39.7ppm;
MS(70eV),m/z(%):224(11)[M],119(9),106(8),105(100),91(9),77(33),51(11);
元素分析:(理論値):C=85.68,H=7.19,(実測値):C=85.39,H=7.22;
融点:113−114℃。
【0082】
実施例12: N−(フェニルアセチル)ピペリジン
20mL容バイアルの中に、酸素雰囲気下、ベンゼンボロン酸(122mg、1.00mmol)、Pd(dba)(1.73mg、3.0mol)、トリ−1−ナフチルホスフィン(3.71mg、9.00mol)、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド(27.2mg、0.10mmol)及びフッ化カリウム(290mg、5.00mmol)を導入する。その容器を密閉し、3回排気し、そして、窒素で再度満たす。撹拌しながら、N−(ブロモアセチル)ピペリジン(309mg、1.50mmol)及び2mLのTHF(アルゴンで脱ガスし、乾燥させたもの)を添加する。その反応混合物を60℃で24時間撹拌する。反応時間が終了した後、その混合物を冷却し、50μLのn−テトラデカンを添加する。0.25mLのサンプルを取って、3mLの酢酸エチルと2mLの水の中で洗浄し、0.25mLを取り出し、セライト/塩基性アルミナを含んでいるピペットを通して濾過し、次いで、GCで分析する。
【0083】
後処理: 反応溶液をセライト/塩基性アルミナ(1:2)組合せを通して濾過する。そのフィルターケーキを酢酸エチルで洗浄する。その濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(1:2、ヘキサン/酢酸エチル、シリカゲル)で精製する。これにより、N−フェニルアセチルピペリジン(169mg、0.714mmol、理論値の71%)が残る。
【0084】
H NMR(600MHz,CDCl):δ=7.29(t,J=7.5Hz,2H),7.19−7.24(m,2H),3.71(s,2H),3.52−3.56(m,2H),3.33−3.37(m,2H),1.60−1.65(m,1H),1.52−1.57(m,2H),1.47−1.52(m,2H),1.30−1.34(m,2H)ppm;
13C NMR(151MHz,CDCl):δ=169.3,135.5,128.7,126.6,48.0,47.3,43.3,42.9,41.2,31.0,26.2,25.5,25.4,24.3ppm;
MS(70eV),m/z(%):203(44)[M],112(100),91(41),84(14),69(57),65(18),41(29)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)
【化1】

〔式中、
Arは、基
【化2】

であり;又は、
Arは、ヘテロ芳香族ラジカル、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル若しくは3−チエニルなどであり;又は、
Arは、1−ナフチル若しくは2−ナフチルであり;
ここで、R、R、R、R及びRは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ハロゲンで置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、フェニル、−CO−C−C−アルキル、−COO−C−C−アルキル又は−COO−C−C10−アリールであり;
は、ヒドロキシルであるか、又は、いずれの場合にも置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、フェニル、アリール、フェノキシ若しくはアリールオキシであるか、、又は、NR’であり;
ここで、R及びR’は、同一であるか若しくは異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、C−C−アルキル若しくはフェニル[ここで、該フェニルは、C−C−アルキル(ここで、該アルキルは、フッ素又は塩素で置換されていてもよい)で置換されていてもよいか、又は、ニトロ、シアノ若しくはジ−C−C−アルキルアミノで置換されていてもよい]であるか、又は、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和若しくは不飽和の、置換されているか若しくは置換されていない環である〕
で表される化合物を調製する方法であって、式(I)
【化3】

〔式中、
は、水素又はC−C−アルキルであり;
は、水素又はC−C−アルキルであり;又は、
とRは、それらが結合している原子と一緒に、飽和又は不飽和の、置換されているか又は置換されていない環であり;
及び、
Arは、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物酸を、パラジウム触媒、ホスフィンリガンド、無機塩基及び相間移動触媒の存在下で、場合により有機溶媒を使用して、式(II)
【化4】

〔式中、
Halは、ハロゲンであり;
及び、
は、上記で定義されているとおりである〕
で表される化合物と反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
が、水素又はC−C−アルキルであり;
が、水素又はC−C−アルキルであり;又は、
とRが、それらが結合している原子と一緒に、C−C−アルキル−若しくはアリール−で置換されていてもよいC−C−アルカンジイルであり;
が、ヒドロキシル、フッ素で置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシであるか、又は、いずれの場合にも置換されていてもよいフェニル、フェノキシであるか、又は、NR’であり;
ここで、R及びR’は、同一であるか若しくは異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピルであるか、若しくは、メチル−、エチル−、i−プロピル−、n−プロピル−、CF−、C−、C−、ニトロ−、シアノ−、N(メチル)−、N(エチル)−、N(n−プロピル)−、N(i−プロピル)−で置換されていてもよいフェニルであるか、又は、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和若しくは不飽和の、置換されているか若しくは置換されていない5員若しくは6員の環であり;
Arが、1−ナフチル若しくは2−ナフチルであるか、又は、基
【化5】

[ここで、R、R、R、R及びRは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、フッ素で置換されていてもよいC−C−アルキル、C−C−アルコキシ、フェニル、−CO−C−C−アルキル、−COO−C−C−アルキル又は−COO−C−C−アリールである]
であり;
Halが、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。
【請求項3】
が、水素、メチル、エチル、i−プロピル又はn−プロピルであり;
が、水素、メチル、エチル、i−プロピル又はn−プロピルであり;又は、
とRが、それらが結合している原子と一緒に、メチルで1置換〜4置換されていてもよいC−アルカンジイル、メチルで1置換〜6置換されていてもよいC−アルカンジイルであり;
が、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、CF、C、C、メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、n−プロポキシ若しくはtert−ブトキシであるか、又は、いずれの場合にも置換されていてもよいフェニルであるか、又は、NR’であり;
ここで、R及びR’は、同一であるか若しくは異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピルであるか、又は、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和の置換されていない5員若しくは6員の環であり;
Arが、1−ナフチルであるか、又は、基
【化6】

[ここで、R、R、R、R及びRは、同一であるか又は異なっており、そして、それぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、メチル、エチル、i−プロピル、n−プロピル、CF、C、C、メトキシ、エトキシ、フェニル、−CO−メチル、−CO−エチル、−COO−メチル、−COO−エチル又は−COO−フェニルである]
であり;
Halが、塩素、臭素又はヨウ素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。
【請求項4】
が、水素であり;
が、水素であり;
が、メトキシ、エトキシ、tert−ブトキシ、フェニル又はNR’であり;
ここで、RとR’は、それらが結合している窒素原子と一緒に、飽和の置換されていない6員環であり;
Arが、1−ナフチル、フェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−アセチルフェニル、4−クロロ−2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチル−4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、4−エトキシカルボニルフェニルであり;
Halが、臭素である;
ことを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。
【請求項5】
使用するパラジウム触媒が、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム又は酢酸パラジウムであることを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。
【請求項6】
使用するホスフィンリガンドが、トリフェニルホスフィン、トリ(1−ナフチル)ホスフィン又はトリ(o−トリル)ホスフィンであることを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。
【請求項7】
使用する塩基が、フッ化カリウム、炭酸カリウム又はリン酸カリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。
【請求項8】
使用する相間移動触媒が、テトラブチルアンモニウムフルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド若しくはアセテート、テトラエチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はメチルトリデシルアンモニウムクロリドであることを特徴とする、請求項1に記載の式(III)で表される化合物を調製する方法。

【公表番号】特表2013−517255(P2013−517255A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548446(P2012−548446)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050456
【国際公開番号】WO2011/089072
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(512151078)バイエル・インテレクチユアル・プロパテイー・ゲー・エム・ベー・ハー (15)
【Fターム(参考)】