説明

アルカノールアミンの脂肪酸エステル及び柔軟剤としてのそれらの使用

本発明は、アルコキシル化アミンと脂肪酸のエステル化反応から誘導された化合物(随意に、アルキル化剤で四級化された)の並びにこれらから得られ得るカチオン性界面活性剤及びエステルクァトの、繊維及び製紙工業における並びにパーソナルケアの分野における柔軟剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシル化アミンと脂肪酸のエステル化反応から誘導された化合物(随意に、アルキル化剤で四級化された)の並びにこれらから得られ得るカチオン性界面活性剤及びエステルクァト(esterquats)の、パルプ及び製紙工業において用いられる柔軟、デボンディング(「脱結合」)及びバルキング剤としての使用に関する。
【0002】
かくして得られたカチオン性界面活性剤及び部分エステルクァトは、天然及び合成繊維を柔軟にする及び状態調節する際に高度の効能を示す。この化学剤は、パルプ及び製紙工業における柔軟化、バルキング又は脱結合用途のために用いられ得る。
【0003】
先行技術
アミンから誘導されたカチオン性界面活性剤はあらゆるタイプの天然及び合成繊維用柔軟、脱結合及び状態調節剤としてここ数十年間広く用いられており、また紡織繊維の及び紙の処理のような分野において並びにヘアケア製品において用いられる。
【0004】
より大きい生分解性の故、疎水性炭化水素鎖が官能エステル基により中断されているカチオン性アミン誘導体の使用がここ数年間用いられており、しかしてたいてい用いられるものはポリアルカノールアミンエステルの四級化誘導体(一般に、「エステルクァト」として知られている)である。典型的には、最も用いられるタイプは、より低い費用の故、トリエタノールアミンから誘導されたエステルクァトである。
【0005】
上記のエステルクァトは、アルカノールアミンエステル(アルカノールアミンと脂肪酸又はそれらの官能基化反応性誘導体とのエステル化反応により前もって生成された)から、アルキルハライド又はサルフェートのようなアルキル化剤でのそれらの四級化により製造される、ということも周知である。本主題に関してたくさんの参考文献があり、しかしてそれらのなかでとりわけ仏国特許出願公開第1593921号明細書、欧州特許出願公開第239910号明細書、欧州特許出願公開第295385号明細書、国際公開第9101295号パンフレット、独国特許出願公開第19539846号明細書及び国際公開第9849132号パンフレットが挙げられ得る。
【0006】
しかしながら、エステルクァトはエステル基を含有しないそれらの同族体より効果が劣る柔軟剤であることは周知であり、そしてこのことがこれらのエステルクァトの柔軟化効能を改善することに向けられた様々な技術的開発に通じてきた。
【0007】
英国特許第866408号明細書は、生地材料を処理するための新規第4級アンモニウム化合物であって、アルカノールアミン構造中の窒素原子がヒドロキシアルキル基に結合されている第4級アンモニウム化合物を記載する(ポリアルコキシル化変型については規定されていない)。
【0008】
米国特許第4439331号明細書は、エステル化ポリアルコキシル化ジアミンから製造された液状生地用柔軟剤であって、第3級窒素基がアルキル化剤で完全に四級化されている液状生地用柔軟剤を挙げる。取扱い不能なほど高い粘度を下げるためにイソプロパノールが四級化手順において溶媒として用いられ、また水中における生成物の分散性を改善するために非イオン性分散剤が優先的に添加される。
【0009】
かくして、米国特許第5593614号明細書はエステルクァトを非イオン性界面活性剤と混合することによるエステルクァトの柔軟化効果の改善を記載し、米国特許第5501806号明細書はエステルクァトと他のカチオン性界面活性剤との混合を提案し、そして欧州特許出願公開第394133号明細書は柔らかさを改善するための添加剤としてのアクリルカチオン性ポリマーの使用を記載する。
【0010】
英国特許第602048号明細書はトリエタノールアミンとジカルボン酸及び脂肪酸とのエステル化反応に基づくオリゴマーアルカノールアミンエステル、並びにメチルクロライド又はジメチルサルフェートでのそれらの四級化並びに天然及び合成繊維用柔軟剤としてのそれらの使用を記載し、そして米国特許第4719382号明細書及び米国特許第4237016号明細書はエステル基を含有しないカチオン性界面活性剤の柔軟化効能を改善するための添加剤としての、数多くの他のタイプのカチオン性ポリマーのなかで上記に挙げられた英国特許明細書に記載されたエステルクァトの使用を記載する。更に、国際公開第9812293号パンフレットは、柔軟化効能を改善する目的でエステルクァトを含有する柔軟化用組成物の水性相中への組込み用添加剤としての、同じオリゴマーエステルクァトの使用を記載する。
【0011】
独国特許発明第19539846号明細書はジカルボン酸、脂肪酸及びトリエタノールアミンから誘導されたエステルクァトの合成及びヘアコンディショナーとしてのそれらの使用を記載し、そして独国特許発明第19715835号明細書はメチルジエタノールアミンと脂肪酸及びジカルボン酸の混合物との反応に基づく且つ後続のエトキシル化及び/又は四級化を伴うエステルクァトを記載する。
【0012】
国際公開第9849132号パンフレットは、割合の特定の選択範囲内のジカルボン酸/脂肪酸/トリエタノールアミンから誘導されたエステルクァトの合成及び布柔軟化用組成物におけるそれらの使用を記載する。
【0013】
最後に、独国特許発明19519876号明細書は、トリアルカノールアミンと脂肪酸、ジカルボン酸及びソルビトールの混合物との反応並びに生成エステルの後続の四級化及び/又はエトキシル化に基づくエステルクァトを記載する。
【0014】
しかしながら、本発明者が知る限り、四級化エステルに関する先行技術は、紙用柔軟剤の所望性質のすべてを単一化合物の使用によって達成され得るようにしない。製紙工業は柔軟剤化学物質に対して独特の要求をし、そしてかかる所望性質のなかに、紙繊維に対する親和力、良好な柔軟化効果、紙シートの再湿潤性及び増加嵩、液状低粘度製品の易生分解性がある。本発明は、かかる性質がいかに化学剤の変性によって最適化され得るか及び単一分子にて実現され得るかを記載する。
【0015】
発明の要約
本発明の主題は、アルカノールアミン、脂肪酸及びアルキル化剤から誘導されたエステルの並びにこれらから得られ得るカチオン性界面活性剤の、パルプ及び製紙工業における使用である。
【0016】
本発明の主題内に、アルカノールアミン及び脂肪酸から誘導された該エステル特にこれらから得られ得る部分エステルクァトをベースとしたカチオン性界面活性剤の、天然及び合成繊維用状態調節及び柔軟剤としての使用も包含される。
【0017】
発明の説明
本発明において用いられるアルカノールアミンエステルは、一般式(I)
【化1】

のアルカノールアミンと一般式R5COOHのカルボン酸若しくはその反応性誘導体との又は一般式HOOC−R6−COOHのジカルボン酸若しくはその反応性誘導体とのエステル化反応により得られ、そしてここで基R1からR4の少なくとも一つ好ましくはそれらの各々は−[CH2CHR7O]p−Hでありそしてその他のものはH又はC1〜C6アルキルであり、R5は線状又は分枝状C2〜C22アルキル又はアルケニル基であり、R6はC1〜C36アルキレン基(随意に、置換された又は不飽和)又はアリーレン基であり、R7はH又はC1〜C4アルキルであり、nは1と20の間の数であり、mは1と5の間の数であり、そしてpは1と10の間の数である。
【0018】
カルボン酸の反応性誘導体の例は、それらのエステル、それらの無水物又はそれらの酸塩化物である。
【0019】
本発明内で、エステル化度、カルボン酸のアルキル鎖の長さ及びアルキル鎖内の飽和/不飽和のレベルは、柔軟化/脱結合性能を調節するように用いられ得る。高レベルの飽和を有するより長い鎖(C18~22)の酸は紙シートの最良柔軟化性能を与える、ということは周知である。かかる長鎖飽和カルボン酸は撥水性(不良な再湿潤化)のような好ましくない性質及び固体又はペースト様製品(製紙工場において取り扱う又は分配するのが容易でない)の一因となる、ということも知られている。アルコキシル化ジアミンのトリエステルであって、そのカルボン酸がC18アルケニル鎖をベースとしており、しかも加えて部分的にアルキル化されて部分四級化カチオン性界面活性剤を形成しているトリエステルは、良好な柔軟化及び再湿潤化性質を有する液状製品をもたらす、ということが今般発見された。
【0020】
アルカノールアミンの例は、脂肪族ジアミン、トリアミン又はポリアミンとアルキレンオキシドとの反応生成物であって、アミン窒素原子における各水素が最小限1モルのアルキレンオキシドで置き換えられている反応生成物である。典型的には、エチレンジアミンと4モルより多いエチレンオキシドとの反応生成物が有効であると判明した。
【0021】
本発明内で、カチオン性界面活性剤中のジ又はポリアミンのアルコキシル化度は、パルプ及び製紙工業における用途のための最適な再湿潤化性質を与えるように制御され得る、ということが発見された。
【0022】
それ故、カルボン酸の反応性誘導体がそれらのエステル、それらの無水物又はそれらの酸塩化物であり、しかも
1からR4が−[CH2CHR7O]p−Hであり、
nが1から4であり、
mが1から3であり、
pが1から5であり、
5が線状又は分枝状C12〜C20アルキル又はアルケニル基であり、
6がC24〜C36アルキレン基であり、そして
7がH又はメチルである
アルカノールアミンエステルの使用が好ましい。
【0023】
1からR4が−[CH2CHR7O]p−Hであり、
nが2であり、
mが1であり、
pが1から3であり、
5が線状又は分枝状C12〜C20アルケニル基であり、そして
7がHである
アルカノールアミンエステルの使用が特に好ましい。
【0024】
エステル化反応において含まれ得る脂肪酸の例は、ココナッツ、獣脂、パーム、ヒマワリ、ダイズ、オレイン、オイルグリーブス(oil greaves)、等から得られたもののような植物及び動物油脂から得られたもの(随意に、全体的に又は部分的に水素化された)、並びにラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸及び2−エチルヘキサン酸、等のような精製又は合成脂肪酸である。
【0025】
カルボン酸対アルカノールアミンのモル比は、0.5と3.5の間好ましくは1.0と3.5の間最も好ましくは2.5と3.5の間にある。
【0026】
エステル化反応は、好ましくは、120℃と220℃の間の温度にて2から10時間の期間、好ましくは約5から200mbarの減圧にて並びに慣用のエステルクァトのエステル化のために既に知られている触媒のあるものたとえば次亜リン酸及びパラトルエンスルホン酸の存在下で、並びにまた通常の安定剤及び抗酸化剤(トコフェロール、BHT、BHA、クエン酸、等のような)の存在下で、脂肪酸とアルカノールアミンの混合物との縮合により遂行される。エステル化反応はまた、その代わりに、カルボン酸の反応性誘導体たとえばそれらのエステル、それらの無水物又はそれらの酸塩化物から出発する他の慣用の技法により遂行され得る、ということは当業者に明らかであろう。
【0027】
かくして生成されたエステルは、パルプ及び製紙工業において用いられるもののような天然及び合成繊維の柔軟化、バルキング及び脱結合処理における使用のために有効なカチオン性界面活性剤を製造するために有用である。カチオン性界面活性剤は、アルキル化剤でのそれらの四級化により得られ得るエステルクァト、又は本発明のアルカノールアミンエステルと塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、乳酸、等のような鉱酸若しくは有機酸との付加塩であり得る。分子内のいくつかの窒素原子が四級化されそして他のものが第3級アミン塩のままである部分エステルクァトが、カチオン性の繊維柔軟化性界面活性剤として好ましい。
【0028】
部分エステルクァトは、本発明のアルカノールアミンエステルから、やはり本質的に知られた付加四級化反応により、たとえば上記に挙げられた国際公開第9849132号パンフレットに記載されたように生成される。
【0029】
たとえば、エステル化から生じた反応混合物は、メチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、ジメチルサルフェート、ジエチルサルフェート、ジメチルカーボネート、等のようなアルキル化性製品と、随意にプロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、等のようなそれらの取扱いを容易にする有機溶媒の存在下で反応され、そしてpHが引き続いて1.5と7.0の間好ましくは2と4.5の間に塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、等のいずれかのような酸の添加により調整される。
【0030】
好ましいアルキル化剤はメチルクロライド、ベンジルクロライド及びジメチルサルフェートであり、そして最も好ましいものはジメチルサルフェートである。アルキル化度は決定的に重大であり、そしてカチオン電荷(中性pH条件下で)、生成物粘度及び水中における最終生成物の分散性を最適にするように制御される。完全四級化エステルは多すぎる水溶解度、減少柔軟化効力及び取扱い不能なほど高い生成物粘度をもたらし、そしてそれ故部分四級化アルカノールアミンエステルが好ましい。
【0031】
すべての窒素原子がエステル化後に第3級アミンの形態にあると仮定すると、部分四級化と称されるアルキル化度は、各々の利用可能な窒素について20から80%の範囲内にある(すなわち、第3級アミンの1モルにつき0.2から0.8モルのアルキル化剤、そして好ましい範囲は0.4〜0.6である)。
【0032】
本発明のアルカノールアミンエステルから得られ得るカチオン性界面活性剤は、更なる変性なしに、追加的界面活性剤と共に若しくは追加的界面活性剤なしに水中の予備調製分散液として、又はヒドロキシ化合物のような他の添加剤との配合物にて用いられ得る。他の添加剤の典型的例は、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセロール及びポリグリセロール、糖(ソルビトール、グルコース及びフルクトースのような)である。
【0033】
本発明のアルカノールアミンエステルから得られ得るカチオン性界面活性剤は高度の繊維柔軟化効能を示し、また更にそれらの生分解性度の故に生態学的観点から非常に十分に許容される。更に、該界面活性剤が大割合又は主割合にて用いられない場合でさえ、それらは慣用のエステルクァト及び他のカチオン性界面活性剤をベースとした組成物の柔軟化効能をかなり改善し、そして布用柔軟剤として用いられる場合、洗濯後の及びすすぎ段階中における紡織繊維中のアニオン性界面活性剤残留物の存在の悪影響を打ち消す。
【0034】
要約すると、本発明のカチオン性界面活性剤は、パルプ及び製紙工業にとって最も有益な性質を与えるように最適化された。各反応段階において、原料選択及びモル比は注意深く選択された。アミンの選択、アルコキシル化度、脂肪酸選択、エステル化度及びアルキル化はすべて、最終生成物の性質の制御に影響を及ぼす。
【0035】
本発明の部分四級化アルカノールアミンエステルから得られ得るカチオン性界面活性剤は、ティッシュの柔軟化のために又はフラッフパルプ(「綿毛パルプ」)用脱結合剤として、パルプ及び製紙工業における使用に意図されている。柔軟化及び脱結合性質はまた紙シートの嵩を増加し(密度を減少し)、しかして印刷及び筆記等級の紙用のバルキング剤としてのその使用を可能にする。ティッシュ工業にとって、紙シートの再湿潤性(水吸着の尺度)は最も重要であり、何故なら先行技術のいくつかの製品は基材にある度合いの撥水性を付与することが知られていることが公知であるからである。本発明のカチオン性界面活性剤は、優秀な再湿潤化傾向を示す。
【0036】
本特許出願において定められた生成物特に脂肪鎖が不飽和結合を有するものでもって、半透明又は透明である柔軟化用処方物を、このタイプの処方のために通常用いられる溶媒又は乳化剤を用いる必要なしに作ることが可能である。
【0037】
次の例は、本発明をより詳細に説明するものとする。
【0038】
実施例
例1(先行技術に関する)
撹拌機、温度プローブ及び不活性ガス用入口を備えた反応フラスコ中で、オレイン酸(560g)及びトリエタノールアミン(149g)を混合した。次いで、50重量%次亜リン酸(1.4g)を撹拌しながら添加した。この混合物を窒素ガスの一定の流れ下で170℃に加熱し、そしてこの温度を維持する一方、混合物の酸価が5mgKOH/g未満になるまでエステル化水を留出させた。次いで、この混合物を70℃に冷却し、そしてイソプロピルアルコール(70g)を添加した。温度を60℃に調整し、そして温度を60と65℃の間に保ちながらジメチルサルフェート(119g)を6時間かけてゆっくり添加した。最後に、この混合物を50℃に冷却した。完成柔軟剤濃厚物の収量は865gであった。
【0039】
例2
撹拌機、温度プローブ及び不活性ガス用入口を備えた反応フラスコ中で、植物脂肪酸(362.3g)、及びエチレンジアミンと6モルのエチレンオキシドとの反応生成物(アルカノールアミン,129.5g)を混合した。次いで、50重量%次亜リン酸(0.8g)を撹拌しながら添加した。この混合物を窒素ガスの一定の流れ下で170℃に加熱し、そしてこの温度を維持する一方、混合物の酸価が5mgKOH/g未満になるまでエステル化水を留出させた。次いで、この混合物を70℃に冷却し、そしてジプロピレングリコール(25.4g)を添加した。温度を60℃に調整し、そして温度を60と65℃の間に保ちながらジメチルサルフェート(65.3g)を6時間かけてゆっくり添加した。最後に、この混合物を50℃に冷却し、そしてジプロピレングリコール(25.4g)を添加した。完成柔軟剤濃厚物の収量は600.0gであった。
【0040】
例2における手順を用いて、本エステルクァト化学剤のいくつかの変型を、異なる原料及びモル比を用いて生成させた。これらの変型は、下記の表に要約されている(例3〜32)。
【0041】
【表1】

【表2】

【0042】
製紙工業用化学剤の評価
例1及び3〜32から生成されたサンプルを製紙実験室において、紙シートに関してそれらの脱結合及び柔軟化性能を評価するように査定した。ペーパーティッシュ工業は、繊維間結合を調節し、嵩を増加し(密度を低減し)且つティッシュペーパーにより柔らかい触感を与える本新規化学剤のいくつかの販路の一つである。ティッシュ等級の紙は非常に軽量であり(たとえば、18グラム毎平方メートル(gsm))、そして実験室においてシミュレートすることが困難である。性能を評価するために、より重い(100gsm)シートを生成させ、そして先行技術との比較を行う。2つの異なる技法を評価のために用いた。ウェットエンド適用(製品を水中の紙繊維のスラリーに添加し、そして次いでシートを作り、乾燥し、そしてこの紙シートの物理的性質を測定する)、及び表面適用(水中の製品の希薄分散液を紙シートの表面上に吹き付ける。乾燥後、このシートの物理的性質を測定する)。
【0043】
ウェットエンド適用
1リットルの紙料(紙繊維スラリー)を適当な容器中に所要柔軟剤の添加と共に入れ、そして500rpmにて60秒間撹拌した。各柔軟剤の添加レベルは、0.4%活性物質の値に調整された。次いで、処理紙料の200mlサンプルを取り、そして英国標準規格シート形成装置を用いて手すきシートに成形した。有意義な平均を得るために、各柔軟剤について4枚の手すきシートを作った。「対照」シートは、柔軟剤製品を含有していなかった。次いで、シートをステンレス鋼板上に4.0バールにて4分間押しつけ、乾燥リング中に入れ、そして100℃にて30分間乾燥した。50°RH及び23℃にて12時間の最小期間状態調節した後、シートは準備ができておりそして次の試験を行った。
【0044】
破裂試験
シートを乾燥破裂強さ試験(TAPPI標準規格T403 OM−91,紙の破裂強さ)に付した。結果を破裂指数(=グラム毎平方メートルでのシート重量で割ったkPaでの破裂値)として記録した。
【0045】
柔らかさ(手触り)
これは純粋に主観的な試験であるが、しかし工業標準規格である。相対的柔らかさ度を、対照サンプル(柔軟剤なし)に対して査定する。紙シートをくしゃくしゃにし、そして次いで柔らかさに顕著な差があるかどうかを調べるために手で触ってみた。6人が査定者のパネルを構成し、そして1(識別できる柔らかさなし)から5(優秀な柔らかさ)の評価点を与えた。6人の平均結果を記録した。
【0046】

シートの重量を量り、そして厚さを測定した。マイクロメートルでの厚さ測定値をグラム毎平方メートルでのシート重量で割ることにより、嵩を算出する。
【0047】
剛さ
エル・アンド・ダブリュー剛さ試験機を用いての剛さ試験(TAPPI標準規格T556)にシートを付す。結果を剛さ指数(=グラム毎平方メートルでのシート重量で割ったmNでの剛さ値)として記録した。
【0048】
ウィッキング試験
この試験は、シートの再湿潤性を未処理シートのそれとの比較にて調べる。15mm幅の試験ストリップを並べて垂直に吊るす。これらのストリップの最低部5mmを水中にあるようにした。30分後、水を除去しそして湿潤線(水が試験ストリップの上方に移動していたmmでの距離)を測定した。
【0049】
吹付け適用
1リットルの紙料を適当な容器中に入れ、そして500rpmにて60秒間撹拌した。次いで、この未処理紙料の200mlサンプルを取り、そして英国標準規格シート形成装置を用いて手すきシートに成形した。分析される各製品について、4枚の未処理手すきシートを作った。対照シートに水のみを吹き付けた。吹付け適用に先だって、シートを次いでステンレス鋼板上に4.0バールにて4分間押しつけた。この押しつけ後、シートは吹付けの準備ができている。各製品を0.2%(活性物質)に調製し、そして次いでおおよそ30cmの距離にて6秒間吹き付けた。これは、約0.1g/m2の乾燥捕捉量を与えた。各々の個々のシートが吹き付けられた後、シートの重量を量りそして湿潤捕捉量を算出した。次いで、シートを乾燥リング中に入れ、そして100℃にて30分間乾燥した。50°RH及び23℃にて12時間の最小期間状態調節した後、シートは査定の準備ができていた。破裂指数、柔らかさ(手触り)及びウィッキングについて先に挙げられた方法に従って、これらの吹付けシートを評価した。
【0050】
【表3】

【表4】

【0051】
結果の解釈
柔軟化性化学物質は、繊維−繊維結合を妨害する。この脱結合効果は、紙シートの物理的強度に影響を及ぼす。それ故、柔軟化性能は、嵩、ウィッキング及び手触りの結果(数字が高ければ高いほど、性能は一層良好である)と一緒に破裂及び剛さの測定値(数字が低ければ低いほど、性能は一層良好である)を比較することにより査定され得る。
柔軟剤化合物を有さない対照サンプルは、常に、最高の破裂指数及び剛さ指数値を記録する。柔軟化及び/又は脱結合効力は、例1の先行技術に対して本化合物でもって達成された強度又は剛さの低減を比較することにより評価され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

のアルカノールアミンと一般式
5COOH
のカルボン酸若しくはその反応性誘導体との又は一般式
HOOC−R6−COOH
のジカルボン酸若しくはその反応性誘導体とのエステル化反応により得られる化合物
〔ここで、
基R1からR4の少なくとも一つは−[CH2CHR7O]p−Hであり、そしてその他のものはH又はC1〜C6アルキルであり、
5は、線状又は分枝状C2〜C22アルキル又はアルケニル基であり、
6は、C1〜C36アルキレン基(置換されていてもよく又は不飽和であってもよい)又はアリーレン基であり、
7は、H又はC1〜C4アルキルであり、
nは、1と20の間の数であり、
mは、1と5の間の数であり、そして
pは、1と10の間の数である〕
の、パルプ及び製紙工業における柔軟剤又は脱結合剤又はバルキング剤としての使用。
【請求項2】
カルボン酸の反応性誘導体がそれらのエステル、それらの無水物又はそれらの酸塩化物であり、しかも
1からR4が−[CH2CHR7O]p−Hであり、
nが1から4であり、
mが1から3であり、
pが1から5であり、
5が線状又は分枝状C12〜C20アルキル又はアルケニル基であり、
6がC24〜C36アルキレン基であり、そして
7がH又はメチルである、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
1からR4が−[CH2CHR7O]p−Hであり、
nが2であり、
mが1であり、
pが1から3であり、
5が線状又は分枝状C12〜C20アルケニル基であり、そして
7がHである、
請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
カルボン酸対アルカノールアミンのモル比が、0.5と3.5の間好ましくは1.0と3.5の間最も好ましくは2.5と3.5の間にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
化合物が、アルキル化剤で部分的に四級化される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
化合物が、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチルサルフェート又はジエチルサルフェートで好ましくはジメチルサルフェートで部分的に四級化される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
ティッシュ及び不織製品の製造の際の天然及び合成繊維に対する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
化合物を水中の予備調製分散液として、又は追加的添加剤としてのヒドロキシ化合物との配合物にて用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。

【公表番号】特表2008−516104(P2008−516104A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536173(P2007−536173)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055200
【国際公開番号】WO2006/040332
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】