説明

アルカリ乾電池

【課題】強負荷パルス放電時の分極を抑制してデジタル機器の動作安定化を向上させ、かつ高温保存後の強負荷放電特性を向上させたアルカリ電池を提供することを目的とする。
【解決手段】正極活物質として用いるオキシ水酸化ニッケルが、粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θである水酸化ニッケルを酸化して得られたものであるとともに、前記オキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数が2.95以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmであるアルカリ乾電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質として少なくともオキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ乾電池の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリマンガン乾電池は、正極端子を兼ねる正極ケースの中に、正極ケースに密着して円筒状の正極合剤が配置され、その中央にセパレータを介してゲル状負極が配置されたインサイドアウト型の構造を有する。近年のデジタル機器の普及に伴い、これらの電池が使用される機器の負荷電力は次第に大きくなり、強負荷放電性能に優れる電池が要望されてきた。これに対応するべく、特許文献1では、正極合剤にオキシ水酸化ニッケルを混合して強負荷放電特性に優れたアルカリ乾電池を作製することが提案され、近年では実用化に到っている。
【特許文献1】特開2000−48827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ乾電池は従来のアルカリマンガン乾電池に比べて強負荷放電特性に優れるため、デジタルカメラに代表されるようなデジタル機器の主電源として普及しつつある。しかしながら、例えばデジタルカメラではストロボ発光、光学レンズの出し入れ、液晶部の表示、画像データの記録媒体への書き込みといった様々な機能に応じた強負荷電力を瞬時に必要としており、現在のオキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ乾電池では放電により生成する水酸化ニッケルが絶縁体となるため、電池の放電が進むと瞬時の強負荷電力を供給しきれなくなり突然デジタルカメラの電源が切れるといった問題が発生する。すなわち、強負荷パルス放電時の分極が放電末期にアルカリ乾電池に比較して大きくなるために、この突然の電池切れといった問題が生じている。
【0004】
また、正極活物質にオキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ乾電池は、正極ケースと正極合剤間の抵抗の増大、および放電可能な正極活物質の量の減少などによって、オキシ水酸化ニッケルを含まないアルカリマンガン乾電池よりも高温保存後の強負荷放電特性が劣るという問題があったが、正極合剤への酸化亜鉛の添加などにより課題解決が図られている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、優れた強負荷放電特性を維持しつつ、強負荷パルス放電時の分極を抑制してデジタル機器の動作安定化を向上させ、かつ高温保存後の強負荷放電特性を向上させたアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアルカリ乾電池は、正極活物質として少なくともオキシ水酸化ニッケルを含み、導電剤として黒鉛を含む正極と、負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を含む負極と、前記正極と負極との間に配されるセパレータと、前記負極内に挿入される負極集電体と、前記セパレータに含まれるアルカリ水溶液と、前記正極、負極、セパレータ、負極集電体、アルカリ水溶液を収容する電池ケース、ならびに前記電池ケースの開口部を封口する封口体を具備するアルカリ乾電池であって、前記オキシ水酸化ニッケルは、粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θ以下である水酸化ニッケルを酸化して得られたものであり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数は2.95以上であるとともに、前記オキシ水酸化ニッケルの粉末の平均粒径が8〜18μmであるものである。また、前記正極活物質に含まれるオキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンとの重量比は、10:90〜90:10であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によると、正極活物質として少なくともオキシ水酸化ニッケルを含むアルカリ乾電池の優れた強負荷放電特性を維持しつつ、電池の強負荷パルス放電時の分極を抑制してデジタル機器の動作安定化を向上させ、かつ高温保存後の強負荷放電特性を向上できる。従って、産業上の価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは、優れた強負荷放電特性を有するアルカリ乾電池用に用いられるオキシ水酸化ニッケルは二次電池用として高率充放電特性を重視して結晶性を制御した水酸化ニッケルを化学酸化して得たものである状況を踏まえ、デジタルカメラに代表されるデジタル機器の特性に適うアルカリ電池用オキシ水酸化ニッケルを得るために、その原材料である水酸化ニッケルの結晶性の最適化を図った。
【0009】
そして、粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θである水酸化ニッケル粉末を酸化して得られたオキシ水酸化ニッケルを正極活物質として少なくとも含み、前記オキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数が2.95以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmであるアルカリ乾電池で、優れた強負荷放電特性を維持しつつ、電池の強負荷パルス放電時の分極を抑制してデジタル機器の動作安定化を向上させ、かつ高温保存後の強負荷放電特性を向上できることを見出した。
【0010】
水酸化ニッケル粉末の(101)面の半値幅が0.6deg./2θ未満であると、次亜塩素酸ソーダ等による酸化が難しく、前記水酸化ニッケル粉末から得られるオキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数は2.95を下回ることが多くなって、オキシ水酸化ニッケルに含まれる水酸化ニッケルの割合が大きくなり、水酸化ニッケルがオキシ水酸化ニッケルの放電を阻害するため、強負荷放電特性に乏しい電池となる。
【0011】
また、水酸化ニッケル粉末の(101)面の半値幅が0.8deg./2θを越えると、この水酸化ニッケルから得られるオキシ水酸化ニッケルの結晶サイズが小さいため、電池に強負荷パルスが負荷されると、結晶表面全体に放電生成物である水酸化ニッケル層が急激に形成され、初期の強負荷放電特性には優れるものの、強負荷パルス放電時の分極は大きくなる。
【0012】
水酸化ニッケル粉末の(001)面の半値幅が0.5deg./2θ未満の水酸化ニッケルからは、粒径が8μm以上のオキシ水酸化ニッケル粉末を作製することが困難で、正極合剤の充填性が著しく低くなって電池に不適である。
【0013】
また、水酸化ニッケル粉末の(001)面の半値幅が0.7deg./2θを越えると、このような低い結晶配向性の水酸化ニッケルから得られたオキシ水酸化ニッケルを電池に用いた場合、正極合剤中の黒鉛等との密着性が低下し、このためとくに電池の保存後の強負荷放電特性は著しく低下する。
【0014】
また、粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θである水酸化ニッケル粉末を用いても、得られるオキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数が2.95未満であると、オキシ水酸化ニッケルに含まれる水酸化ニッケルの割合が大きくなり、水酸化ニッケルがオキシ水酸化ニッケルの放電を阻害するため、電池の強負荷放電特性が著しく低下する。
【0015】
そして、オキシ水酸化ニッケル粉末の平均粒径が8μm未満では、前述のように正極合剤の充填性が著しく低くなり、電池の特性も低下する。また、18μmを超えると、導電剤として用いている黒鉛粒子との接触性が低下するため、初期および高温保存後の強負荷特性は著しく低下する。
【0016】
さらにオキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数が3.00以上であると、オキシ水酸化ニッケル中の水酸化ニッケルの割合が極わずかとなり、電池放電特性のバラツキも少なくなって、さらに好ましい。
【0017】
正極合剤中の二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの配合比は、重量比で10:90〜90:10の範囲であれば、電池の初度および高温保存後の放電特性に優れて好適である。
【0018】
また、本発明のオキシ水酸化ニッケルを、平均価数が3.0よりも大のコバルト酸化物で、オキシ水酸化ニッケルの重量に対して前記コバルト酸化物を0.5〜15重量%加えて被覆することにより、正極活物質粉末の集電性をさらに高めて高エネルギー密度のアルカリ乾電池を得ることができる。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明の実施例を示す。
【0020】
(水酸化ニッケル粉末の作製)
2.4mol/l硫酸ニッケル水溶液、5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液、5mol/lのアンモニア水溶液を準備し、40℃に保持された攪拌翼を備えた反応装置内に、それぞれ0.5ml/minの流量で連続的にポンプで供給した。続いて、反応装置内のpHが一定、金属塩濃度と金属水酸化物粒子濃度のバランスが一定となり、定常状態になったところで、オーバーフローにて得られた懸濁液を採取し、デカンテーションにより沈殿物を分離した。これをpH13〜14の水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ処理し、金属水酸化物粒子中の硫酸イオン等のアニオンを除去し、水洗し、乾燥した。このようにして、レーザー回折式粒度分布計による体積基準の平均粒径が12.3μmの水酸化ニッケル粉末を得て、これを水酸化ニッケル粉末1とした。
【0021】
こうして作製した水酸化ニッケル粉末の結晶構造を、以下に示す条件の粉末X線回折法により測定した。図2に代表的な水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折図を示す。
【0022】
〔測定装置〕 理学株式会社製、粉末X線回折装置 「RINT1400」
〔対陰極〕 Cu
〔フィルタ〕 Ni
〔管電圧〕 40kV
〔管電流〕 100mA
〔サンプリング角度〕 0.02deg.
〔走査速度〕 3.0deg./min.
〔発散スリット〕 1/2deg.
〔散乱スリット〕 1/2deg.
CuKα線を用いたX線回折パターンを記録したところ、β−Ni(OH)2型の単相であることが確かめられ、2θ=37〜40゜付近の(101)面のピーク半値幅は0.92deg./2θ、2θ=18〜21゜付近に位置する(001)面のピーク半値幅は0.90deg./2θであった。なお、この半値幅は、二次電池の高率充放電特性を重視して水酸化ニッケル粉末の結晶性を制御した場合に有効な値である。
【0023】
水酸化ニッケル粉末の(101)面および(001)面の半値幅の異なるサンプルを得ることを目的として、アンモニア水溶液濃度、水酸化ナトリウム水溶液濃度を変化させ、これ以外は水酸化ニッケル粉末1と同様にして水酸化ニッケル粉末2〜10を作製した。なお、水酸化ニッケル粉末10では、その平均粒径は6.4μmと細かな粒子しか得られなかった。
【0024】
水酸化ニッケル粉末4である(101)面の半値幅が0.78deg./2θで(001)面の半値幅が0.61deg./2θの水酸化ニッケル粉末を用い、平均粒径の異なる水酸化ニッケル粉末を得ることを目的として、硫酸ニッケル、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液の流量を変化させ、これ以外は水酸化ニッケル粉末4の条件と同様にして水酸化ニッケル粉末11〜15を得た。
【0025】
(オキシ水酸化ニッケル粉末の作製)
続いて、前記水酸化ニッケル粉末に対する化学酸化処理として、前記粉末を0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液中に投入し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:12wt%)を酸化剤当量として1.2となるように加えて、反応雰囲気温度45℃で3時間攪拌してオキシ水酸化ニッケル粉末を作製し,それぞれをオキシ水酸化ニッケル粉末1〜15とした。得られたオキシ水酸化ニッケル粉末は十分に水洗を行った後、60℃の真空乾燥を行い正極活物質粉末とした。
【0026】
オキシ水酸化ニッケル粉末の平均ニッケル価数を以下の化学測定により算出した。
【0027】
1)重量法(ジメチルグリオキシム法)によるニッケル重量比率の測定
オキシ水酸化ニッケル粉末0.05gに濃硝酸10cm3を加えて加熱・溶解させ、酒石酸水溶液10cm3を加えた上でさらにイオン交換水を加えて全量を200cm3に体積調整した。この溶液のpHをアンモニア水及び酢酸を用いて調整した後、臭素酸カリウム1gを加えて測定誤差となりうるコバルトイオンを3価の状態に酸化させた。次に、この溶液を加熱攪拌しながらジメチルグリオキシムのエタノール溶液を添加し、ニッケル(II)イオンをジメチルグリオキシム錯化合物として沈殿させた。続いて吸引濾過を行い、
生成した沈殿物を捕集して110℃雰囲気で乾燥させ、沈殿物の重量を測定した。この操作から、正極活物質粉末中に含まれるニッケル重量比率は次式により算出される。
【0028】
【数1】

【0029】
2)酸化還元滴定による平均ニッケル価数の測定
オキシ水酸化ニッケル粉末0.2gにヨウ化カリウム1gと硫酸25cm3を加え、十分に攪拌を続けることで完全に溶解させた。この過程で価数の高いニッケルイオンは、ヨウ化カリウムをヨウ素に酸化し、自身は2価に還元される。20分の放置後、pH緩衝液としての酢酸−酢酸アンモニウム水溶液とイオン交換水を加えて反応を停止させ、生成・遊離したヨウ素を0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液で滴定した。この際の滴定量は上記のような価数が2価よりも大きい金属イオン量を反映する。そこで、1)で求めたニッケルの含有重量比率を用い、各オキシ水酸化ニッケル粉末の平均ニッケル価数を見積もった。
【0030】
また、水酸化ニッケル粉末4である(101)面の半値幅が0.78deg./2θで(001)面の半値幅が0.61deg./2θの水酸化ニッケル粉末を用い、平均ニッケル価数の異なるオキシ水酸化ニッケル粉末を得ることを目的として、水酸化ニッケル粉末4を、次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度:12wt%)を酸化剤当量として0.9〜1.4まで変化させて処理し、オキシ水酸化ニッケル粉末16〜18を得た。
【0031】
表1〜3に、オキシ水酸化ニッケル粉末1〜18について、水酸化ニッケル粉末の(101)面ならびに(001)面の半値幅と、オキシ水酸化ニッケル粉末の平均粒径と平均ニッケル価数を示す。
【0032】
(アルカリ乾電池の作製)
図1は本発明の一実施例に係るアルカリ乾電池の一部を断面にした正面図である。この電池は、以下のようにして製造される。正極ケース1は、ニッケルメッキされた鋼板からなる。この正極ケース1の内部には、黒鉛塗装膜2が形成されている。この正極ケース1の内部に、オキシ水酸化ニッケルまたは二酸化マンガンを主成分として含む短筒状の正極合剤ペレット3を複数個挿入し、正極ケース1内において再加圧することによりケース1の内面に密着させる。そして、この正極合剤ペレット3の内側にセパレ−タ4および絶縁キャップ5を挿入した後、セパレ−タ4と正極合剤ペレット3を湿潤させる目的で電解液を注液する。電解液には、例えば40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いる。注液後、セパレータ4の内側にゲル状負極6を充填する。ゲル状負極6は、例えばゲル化剤のポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液、および負極活物質のビスマス(Bi)250ppm,インジウム(In)250ppm,アルミニウム(Al)35ppmを含有する亜鉛合金粉末からなる。次に、樹脂製封口板7、負極端子を兼ねる底板8、および絶縁ワッシャ9と一体化された負極集電体10を、ゲル状負極6に差し込む。そして正極ケース1の開口端部を樹脂製封口板7の端部を介して底板8の周縁部にかしめつけて正極ケース1の開口部を密着する。次いで、正極ケース1の外表面に外装ラベル11を被覆する。こうしてアルカリ乾電池が完成する。
【0033】
オキシ水酸化ニッケル粉末1を用い、まずオキシ水酸化ニッケル粉末、黒鉛および電解液を重量比100:6.5:1の割合で混合した後、ミキサ−で均一に撹拌・混合して一定粒度に整粒した。得られた粒状物を中空円筒型に加圧成型して正極合剤とし、電解液には、40重量%の水酸化カリウム水溶液を用いて図1に示す単3サイズのアルカリ乾電池を組み立て、これを電池1とした。また、オキシ水酸化ニッケル粉末1の代わりにオキシ水酸化ニッケル粉末2〜18を用い、それ以外は電池1と同様にしてアルカリ乾電池を作製し、それぞれを電池2〜18とした。
【0034】
また、オキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンの配合比率の検討においては、オキシ水酸化ニッケル粉末1と4を用い、それぞれオキシ水酸化ニッケル粉末と二酸化マンガン粉末を、0〜100%の間で互いに変化させ、それ以外は電池1と同様のアルカリ乾電池を作製して、それぞれを電池19〜31とした。なお、電池25は正極活物質として二酸化マンガンが100%の電池とした。
【0035】
そして、これらの電池1〜31を用いて、初度および60℃で2週間保存後に、20℃で、1Wの定電力で連続放電を行い、電圧が終止電圧0.9Vに至るまでの持続時間を測定し、電池の強負荷放電特性の評価を行った。また、デジタルカメラでの電池実使用を想定した評価として、1.5W2秒−0.65W28秒のパルスを10サイクルとするパルス放電を1時間毎に行い、電圧が1.05Vに至るまでのサイクル数と1.05V時の電圧降下幅(ΔV)を測定した。表1〜5には、電池1の各放電における持続時間を100として、電池2〜31について各々10個の測定値の平均を示した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1により、電池4,5,8,9からわかるように、水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θである水酸化ニッケルから得たオキシ水酸化ニッケル粉末を用いた場合には、オキシ水酸化ニッケルが適度な結晶サイズと結晶配向性を持ち合わせているため、優れた強負荷放電特性を維持しつつ、強負荷パルス放電時の分極が抑制されることでデジタルカメラの動作安定化が図られるとともにカメラの撮影可能枚数も大幅に増加し、かつ高温保存後の強負荷放電特性も著しく良化することができた。
【0038】
【表2】

【0039】
表2より、電池11と電池15からわかるように、水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θの水酸化ニッケル粉末から得たオキシ水酸化ニッケル粉末で、かつその平均ニッケル価数が2.95以上である場合でも、平均粒径が8μm未満では正極合剤の成形性が悪くなり、18μmを越えると放電末期におけるオキシ水酸化ニッケルの電子伝導性が低下し、これによって電池の内部抵抗が増大して、電池の初度および高温保存後の強負荷放電特性が著しく低下した。
【0040】
【表3】

【0041】
表3より、電池18からわかるように、水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θである水酸化ニッケル粉末から得たオキシ水酸化ニッケル粉末で、かつその平均粒径が8〜18μmの範囲であっても、オキシ水酸化ニッケル粉末の平均ニッケル価数が2.95未満であると、オキシ水酸化ニッケルに含まれる水酸化ニッケルの割合が大きくなり、水酸化ニッケルがオキシ水酸化ニッケルの放電を阻害するため、電池の初度および高温保存後の強負荷放電特性が著しく低下した。
【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
表4には、水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.92deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.90deg./2θである水酸化ニッケル粉末から得たオキシ水酸化ニッケル粉末1を用い、これに二酸化マンガン粉末を種々の割合に混合して作製した電池1および電池19〜25の各放電特性を示した。
【0045】
表4より、オキシ水酸化ニッケルを含まず、二酸化マンガンのみを活物質とする電池25と比較すると、電池1、19〜24は強負荷連続およびパルス放電特性に優れている。しかし、本発明によらないオキシ水酸化ニッケルを用いているので、二酸化マンガンの添加量が増えるとその特性は徐々に低下し、二酸化マンガンの添加による有利な相乗効果としては高温保存後の強負荷連続放電特性が改善されることだけであることがわかった。
【0046】
一方、表5には、水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.78deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.61deg./2θである水酸化ニッケル粉末から得たオキシ水酸化ニッケル粉末4を用い、これに二酸化マンガン粉末を種々混合して作製した電池4および電池26〜31、電池25の各放電特性を示した。
【0047】
表4、表5より本発明に関するオキシ水酸化ニッケルを用いた場合には、二酸化マンガンの混合した場合でも、従来の二次電池用のオキシ水酸化ニッケルを用いた場合より、強負荷連続およびパルス放電特性とともに、高温保存後の放電特性を向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、アルカリ乾電池に利用され、電池の強負荷放電特性に優れ、さらに高温保存後の強負荷放電特性、強負荷パルス放電特性の向上を図った電池に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施例に係るアルカリ乾電池の一部を断面にした正面図
【図2】水酸化ニッケル粉末の粉末X線回折図
【符号の説明】
【0050】
1 正極ケース
2 黒鉛塗装膜
3 正極合剤ペレット
4 セパレータ
5 絶縁キャップ
6 ゲル状負極
7 樹脂製封口板
8 底板
9 絶縁ワッシャ
10 負極集電体
11 外装ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質として少なくともオキシ水酸化ニッケルを含み、導電剤として黒鉛を含む正極と、負極活物質として亜鉛または亜鉛合金を含む負極と、前記正極と負極との間に配されるセパレータと、前記負極内に挿入される負極集電体と、前記セパレータに含まれるアルカリ水溶液と、前記正極、負極、セパレータ、負極集電体、アルカリ水溶液を収容する電池ケース、ならびに前記電池ケースの開口部を封口する封口体を具備するアルカリ乾電池であって、前記オキシ水酸化ニッケルは、粉末X線回折における(101)面の半値幅が0.6〜0.8deg./2θで、かつ(001)面の半値幅が0.5〜0.7deg./2θである水酸化ニッケルを酸化して得られたものであり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均ニッケル価数が2.95以上であり、前記オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が8〜18μmであるアルカリ乾電池。
【請求項2】
前記正極活物質は前記オキシ水酸化ニッケルと二酸化マンガンを含み、前記オキシ水酸化ニッケルと前記二酸化マンガンとの重量比が、10:90〜90:10である請求項1記載のアルカリ乾電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−294288(P2006−294288A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109647(P2005−109647)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】