説明

アルカリ二次電池

【課題】環境負荷の軽減に優れるばかりでなく、優れた充放電特性を発揮する高容量のアルカリ二次電池を安価に提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ二次電池2は、セパレータ10を介して対向配置された正極12及び負極14からなる電極群16と、電極群16をアルカリ電解液18とともに収容する容器20とを備え、正極12は、正極活物質として水酸化ニッケルを含み、負極14は、負極活物質としてオリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ二次電池としては、例えば、ニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池等が実用化されている。これらニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池は、充電効率が高く、しかも、安定した充放電が可能であり、充放電特性に優れることから、様々な用途に用いられている。
【0003】
ところで、これらニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池は、負極にカドミウムや水素吸蔵合金といった材料を用いているので、環境負荷の軽減や少資源の有効利用性の点で課題がある。
そこで、その課題を解決すべく、負極に、例えば、環境負荷が少なく且つ資源的に豊富な鉄や鉄化合物(以下、鉄系材料という)を用いたアルカリ二次電池の開発が望まれている。
【0004】
ここで、負極に鉄を用いたアルカリ二次電池としては、例えば、ニッケル鉄二次電池が提案さている。しかし、この電池の場合、負極に含まれる鉄がアルカリ電解液により不動態化されやすいので、電池反応の進行が阻害され、安定した充放電を行うことが困難であるとともに、充電効率も低くい。このニッケル鉄二次電池の充放電特性及び充電効率は、ニッケルカドミウム二次電池の充放電特性及び充電効率に比べてはるかに劣っているため、ニッケル鉄二次電池が市場に出ることはほとんどなかった。
【0005】
しかしながら、鉄は、カドミウムに比べて環境負荷の軽減に優れていることから、鉄系材料を含む負極(鉄系負極)を備えたアルカリ二次電池は見直されつつある。しかも、鉄系負極は、カドミウム負極に比べ、理論容量が高いことから、この鉄系負極を備えたアルカリ二次電池は、高エネルギー密度を必要とする用途、例えば、電気自動車やポータブル電子機器等に使用できる潜在能力を有する電池として注目されるようになってきた。
このため、鉄系負極を備えたアルカリ二次電池に対し、種々の特性を改善するための研究が行われ始めている。
【0006】
ここで、充電効率の改善を図ったニッケル鉄二次電池としては、例えば、特許文献1の鉄アルカリ蓄電池が知られている。
この特許文献1の鉄アルカリ蓄電池は、電解液にL−アスコルビン酸が添加されていることを特徴としており、これにより鉄系負極の電池反応が促進され、従来よりも充電効率が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭61−034231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の鉄アルカリ蓄電池の充電効率は未だ、製品として十分なレベルには達していない。
このように、特許文献1の鉄アルカリ蓄電池をはじめとする負極に鉄系材料を含むアルカリ二次電池については、充電効率や充放電特性の更なる改善が望まれているところであるが、製品として十分なものは得られておらず、未だ市場に出るまでには至っていないのが現状である。
【0009】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、負極に鉄系材料を含むアルカリ二次電池において、安定した充放電特性を発揮するアルカリ二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、セパレータを介して対向配置された正極及び負極からなる電極群と、前記電極群をアルカリ電解液とともに収容する容器とを備え、前記正極は、正極活物質として水酸化ニッケルを含み、前記負極は、負極活物質としてリチウム含有リン酸鉄化合物を含んでいることを特徴とするアルカリ二次電池が提供される(請求項1)。
【0011】
好ましくは、前記リチウム含有リン酸鉄化合物は、オリビン型の結晶構造を有し、組成式がLiFePO4で示されるリン酸鉄リチウムである構成とする(請求項2)。
【0012】
また、前記負極は、前記負極活物質を担持する負極芯体を更に含み、この負極芯体はニッケル製の発泡体からなる構成とすることが好ましい(請求項3)。
【0013】
また、前記負極は、導電剤としてのカーボンを更に含んでいる構成とすることが好ましい(請求項4)。
【0014】
更に、前記アルカリ電解液は、溶質として水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムのうちの少なくとも一つを含む構成とすることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0015】
鉄系材料であるリチウム含有リン酸鉄化合物は、熱力学的に安定であり不動態化しにくいため、アルカリ電解液中であっても安定した電池反応を維持することができる。このため、リチウム含有リン酸鉄化合物を負極活物質として含むアルカリ二次電池は、長期にわたって安定した充放電が可能になるので、製品化にも十分耐え得る。しかも、鉄系材料の電極は本来高容量であることから、得られる電池は、高エネルギー密度を必要とする用途に好適である。また、資源的に豊富で安価な鉄を負極活物質の主要原料として使用できるので、電池のコスト削減に寄与し、得られる電池は、経済性にも優れている。更に、本発明の電池は、電解液として不燃性のアルカリ水溶液を用いているので、有機電解液を用いるLiイオン電池に比べて取り扱いが容易で、大型電池等にも幅広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る開放型のアルカリ二次電池の概略構成を示した断面図である。
【図2】実施例に係るアルカリ二次電池の電池電圧と充電容量との関係を示したグラフである。
【図3】実施例に係るアルカリ二次電池の電池電圧と放電容量との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る負極に鉄系材料を含むアルカリ二次電池2につき、電解液リッチな開放型の電池に適用した場合を例に説明する。本発明のアルカリ二次電池2は、図1に示すように、セパレータ10を介在させて積層した正極12及び負極14からなる電極群16と、この電極群16をアルカリ電解液18とともに収容する容器20とを備えている。
【0018】
正極12は、多孔質構造を有する導電性の正極芯体と、正極芯体の空孔内に保持された正極合剤とからなる。
このような正極芯体としては、例えば、ニッケルめっきが施された網状、スポンジ状若しくは繊維状の金属体を用いることができる。
【0019】
正極合剤は、正極活物質粒子、導電剤及び結着剤を含む。この結着剤は正極活物質粒子及び導電剤を互いに結着させると同時に正極合剤を正極芯体に結着させる働きをなす。
正極活物質粒子は、水酸化ニッケル粒子又は高次水酸化ニッケル粒子である。なお、これら水酸化ニッケル粒子は、コバルト、亜鉛等を含む固溶体の形態をなすものであってもよい。
【0020】
導電剤としては、例えば、コバルト酸化物(CoO)やコバルト水酸化物(Co(OH)2)などのコバルト化合物及びコバルト(Co)から選択された1種又は2種以上を用いることができる。この導電剤は、必要に応じて正極合剤に添加されるものであり、添加される形態としては、粉末の形態のほか、正極活物質の表面を覆う被覆の形態で正極合剤に含まれていてもよい。
【0021】
正極合剤の結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
【0022】
正極12は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、水酸化ニッケル粒子からなる正極活物質粉末、水、導電剤及び結着剤を含む正極合剤スラリーを調製する。正極合剤スラリーは、例えばスポンジ状のニッケル製金属体に充填され、乾燥させられる。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填された金属体は、ロール圧延されてから裁断され、正極12が製造される。
【0023】
負極14は、多孔質構造を有する導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が担持されている。
負極芯体は、三次元網状構造の金属材からなり、例えば、ニッケル製の発泡体を用いることができる。
負極合剤は、負極芯体の空孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。ここで、負極芯体としては、ニッケル製の発泡体に限定されるものではなく、例えば、ニッケルフェルト、貫通孔が分布されたシート状の金属材からなるパンチングメタルシート及び金属粉末を型成形して焼結した焼結基板を用いることができる。
【0024】
負極合剤は、負極活物質としてのリチウム含有リン酸鉄化合物、導電剤、及び結着剤を含む。ここで、結着剤としては親水性若しくは疎水性のポリマー等を用いることができ、導電剤としては、カーボン、ニッケルフレーク等を用いることができる。
【0025】
リチウム含有リン酸鉄化合物としては、例えば、LiFePO4を基本組成とするオリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムが挙げられる。ここで、LiFePO4を基本組成とするとは、組成式がLiFePO4で表される組成のオリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムだけではなく、前記結晶構造におけるLi、Fe等のサイトの一部が他の元素(例えば、Mn)で置換されたものも含む。更に、このリン酸鉄リチウムには、化学量論組成のものだけでなく、LiやFe等の一部の元素が欠損等した非化学量論組成のものも含む。
【0026】
ここで、LiFePO4で表される組成のオリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムの粒子は、例えば以下のようにして得られる。
【0027】
まず、原料となる水酸化リチウムや鉄、リン等を混合し、焼結前の前駆体を作製し、この前駆体を不活性ガス雰囲気で固相焼成法により焼成してオリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムを合成する。ここで、好ましくは、得られたリン酸鉄リチウムに対し、微粒子活物質の合成とともに導電性炭素析出によるナノハイブリット化を行い、表面にカーボンを析出させる。その後、2次粒子や嵩密度の調整が行われる。
【0028】
ここで、負極14は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、リン酸鉄リチウム粒子からなるリン酸鉄リチウム粉末、導電剤、結着剤及び水を混練して負極合剤スラリーを調製する。得られた負極合剤スラリーは、ニッケル発泡体等の負極芯体に塗着され、乾燥させられる。
【0029】
次いで、乾燥した負極合剤を保持した負極芯体をロール圧延し、所定厚さとした後、所定の大きさに裁断して負極14を得る。
以上のようにして得られた正極12及び負極14は、セパレータ10を介して積層され、電極群16に形成される。このセパレータ10は、正極12及び負極14の間の短絡を避けるために配設され、電気絶縁性の材料が採用される。このセパレータ10に採用される材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したものを用いることができる。
【0030】
アルカリ電解液18としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びこれらのうちの2つ以上を混合した水溶液等をあげることができる。アルカリ電解液は、正極及び負極の間での充放電反応を進行させる。ここで、アルカリ電解液の濃度については特には限定されず、例えば、20〜40%の水溶液を用いることができる。
【0031】
上記した電極群16はアルカリ電解液18とともに容器20に収容され、本発明に係るアルカリ二次電池2が形成される。電池が電解液リッチな開放型のアルカリ二次電池2の場合、図1に示すように、アクリル製の有底筒状の容器20中にて、電極群16の全体がアルカリ電解液18に浸かるように配置される。
【0032】
なお、本発明は、開放型のアルカリ二次電池に限定されるものではなく、密閉型のアルカリ二次電池に採用することもできる。この場合、有底円筒状あるいは有底角筒状の外装缶(容器)の開口端が封口体で密閉される。また、電極群としては、板状の正極及び負極をセパレータを介して積層した態様のものを用いたが、この態様に限定されるものではなく、正極及び負極を帯状とし、これらを同じく帯状のセパレータを介して渦巻き状に巻回して形成した円筒型の電極群としてもよい。
【0033】
(実施例)
(1)正極(ニッケル極)の作製
ニッケルに対して、亜鉛3.0質量%、コバルト1質量%となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸コバルトの混合水溶液を攪拌しながら、1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して反応させ、ここでの反応中、pHが13〜14に維持されるようにして沈殿物を生成させた。ついで、生成した沈殿物を濾別して、10倍量の純水で3回洗浄した後、脱水、乾燥することにより、正極活物質としての水酸化ニッケル粉末を得た。
【0034】
得られた水酸化ニッケル粉末100重量部、導電剤としての水酸化コバルト粉末10重量部、結着剤としてのヒドロキシプロピルセルロースディスパージョン溶液0.1重量部、水27重量部を混合して、正極合剤スラリーを作製した。
【0035】
ついで、正極合剤スラリーを面密度(目付)が350g/m2、厚みが約1.55mmのニッケル発泡体に充填し、これを乾燥させ、正極活物質の充填密度が約2.9g/cm3となるように調整して厚さ1.41mmに圧延した圧延体を得た。この後、圧延体を縦35mm、横35mmの寸法に切断してニッケル極(正極)12を得た。なお、得られた正極12の容量は、約565mAhであった。
【0036】
(2)負極の作製
オリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムを以下のようにして作製した。
【0037】
まず、原料となる水酸化リチウム、鉄、リンを混合し、焼結前の前駆体を作製し、この前駆体を不活性ガス雰囲気で固相焼成法により焼成してリン酸鉄リチウムを合成した。得られたリン酸鉄リチウムに対し、微粒子活物質の合成とともに導電性炭素析出によるナノハイブリット化を行い、表面にカーボンを析出させた。その後、2次粒子や嵩密度の調整を行い、カーボン含有量が4〜6%でかさ密度が0.3g/cm3のオリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムを得た。
【0038】
得られたリン酸鉄リチウムの粉末の組成を高周波プラズマ分光分析法(ICP)によって分析したところ、組成はLiFePO4であった。また、このリン酸鉄リチウムの粉末についてX線回折測定(XRD測定)を行ったところ、結晶構造は、オリビン型であった。
【0039】
得られたリン酸鉄リチウムの粉末に導電剤としてニッケルフレーク及びカーボンを混合して混合粉末を調製した。この混合粉末の配合比は、リン酸鉄リチウム:ニッケルフレーク:カーボン=50:49.5:0.5とした。そして、この混合粉末100重量部に対して、結着剤としてのヒドロキシプロピルセルロースディスパージョン溶液0.2重量部、水100重量部を混合して、負極合剤スラリーを作製した。
【0040】
ついで、負極合剤スラリーを面密度(目付)が420g/m2、厚みが約1.8mmのニッケル発泡体に充填し、これを乾燥させ、負極活物質の充填密度が約0.9g/cm3となるように調整して厚さ0.74mmに圧延した圧延体を得た。この後、圧延体を縦30mm、横30mmの寸法に切断して負極14を得た。なお、得られた負極14の容量は、約86mAhであった。
【0041】
(3)アルカリ二次電池の作製
以上のようにして得られた正極12を2枚、負極14を1枚準備した。また、セパレータ10として、厚さ0.19mm、縦36mm、横300mmのポリアミド繊維製不織布のシートを1枚準備した。ついで、準備したセパレータ10の一部で負極14を包み込んだ後、このセパレータ10で包まれた状態の負極14を2枚の正極12,12で挟み込んだ。そして、セパレータ10の残部で正極12,12の外周部を更に包んで正極12、負極14及びセパレータ10からなる複合体を形成した。その後、得られた複合体を所定の圧力で加圧し、これら正極12、負極14及びセパレータ10を一体化して、図1に示すような電極群16を形成した。
【0042】
次に、アクリル製の容器20を準備し、この容器20内に電極群16を配置した。そして、この電極群16が完全に浸かるようにKOHを30%含む水溶液からなるアルカリ電解液18を容器20内に注入し、図1に示す開放型のアルカリ二次電池2を作製した。なお、図1中の参照符号22、24は、正極12、負極14にそれぞれ接続されたリードを表し、これらリード22、24は、図示しない充電用電源、測定機器等に接続されている。
【0043】
(4)アルカリ二次電池の評価
得られた開放型のアルカリ二次電池2に対し、温度25℃において、リン酸鉄リチウム1gに対して12mA(約0.1C)の電流で16時間(約160%)充電し、その後10分間休止したのち、充電時と同じ電流で電池電圧が0.3Vになるまで放電し、その後10分間休止することを1サイクルとする操作を3回繰り返し行った。そして、各サイクル毎の充電容量及び放電容量を測定し、その結果を電池電圧と充電容量との関係及び電池電圧と放電容量との関係として、図2及び図3に示した。
【0044】
図2及び図3の結果より以下のことが明らかである。
本発明のアルカリ二次電池2の充電カーブ及び放電カーブは、充放電を繰り返しても安定している。つまり、電池2は、サイクル数が進んでも、ほぼ同じ容量が充電され、また、ほぼ同じ容量が放電されており、安定的な容量が得られていることが確認できた。このことから、本発明のアルカリ二次電池は、優れた充放電特性を有しているといえる。
【0045】
また、電池電圧も満充電時で1.5V、放電時の電圧も1.2Vであり、ニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池とほぼ同じ電圧挙動を示していることがわかる。
【0046】
これは、オリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムが熱力学的に安定な結晶構造を有するため、アルカリ電解液中でも不動態化しにくく安定した電池反応を維持することができ、その結果、電池2は、安定した充放電が可能になったためと考えられる。
【0047】
また、オリビン型の結晶構造を有するリン酸鉄リチウムは、従来のニッケル鉄二次電池の負極に含まれるような純粋な鉄に比べて、充電時の反応電位が貴側にあり、水素発生過電圧を大きくとれるため、ニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池とほぼ同程度の充放電挙動が得られたものと考えられる。
【0048】
ここで、アルカリ電解液においては、導電性の高いKOHやNaOHの水溶液を主体とする電解液に水酸化Liを添加することにより正極の充電受け入れ性が向上し、電池のサイクル寿命の改善に寄与することが知られている。本発明では、負極のリン酸鉄リチウムに含まれるリチウムが充放電にともない、少しずつ電解液中に溶出すると考えられることから、この溶出したリチウムが正極に作用して、上記した水酸化Liを電解液に添加した場合と同様な効果も発揮されていると考えられる。このため、本発明の電池では、正極の充電受け入れ性が向上し、その結果優れた充放電特性が得られたものと考えられる。
【0049】
更に、本発明の電池では、電極の芯体としてニッケル発泡体を用いているため、電極自体の導電性が向上し、安定した充放電が可能となっている。このことも電池2の充放電特性の安定化に寄与していると考えられる。
以上のように、本発明のアルカリ二次電池は、優れた充放電特性を有するため、製品化が十分可能である。
【符号の説明】
【0050】
2 アルカリ二次電池
10 セパレータ
12 正極
14 負極
16 電極群
18 アルカリ電解液
20 容器
22 リード
24 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して対向配置された正極及び負極からなる電極群と、
前記電極群をアルカリ電解液とともに収容する容器と
を備え、
前記正極は、
正極活物質として水酸化ニッケルを含み、
前記負極は、
負極活物質としてリチウム含有リン酸鉄化合物を含んでいる
ことを特徴とするアルカリ二次電池。
【請求項2】
前記リチウム含有リン酸鉄化合物は、
オリビン型の結晶構造を有し、組成式がLiFePO4で示されるリン酸鉄リチウムであることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ二次電池。
【請求項3】
前記負極は、
前記負極活物質を担持する負極芯体を更に含み、この負極芯体はニッケル製の発泡体からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルカリ二次電池。
【請求項4】
前記負極は、
導電剤としてのカーボンを更に含んでいることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアルカリ二次電池。
【請求項5】
前記アルカリ電解液は、
溶質として水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化リチウムのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のアルカリ二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−77456(P2013−77456A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216901(P2011−216901)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(510206213)FDKトワイセル株式会社 (36)
【Fターム(参考)】