説明

アルカリ液処理装置

【課題】製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液を処理対象とし、その被処理アルカリ液の効果的な泡処理、洗剤使用量の低減、効果的で実用性の高いスカム除去が達成されるアルカリ液処理装置を提供する。
【解決手段】処理されるアルカリ液を貯留するタンク1に、該貯留タンク1内のアルカリ液の液面上の泡相を該タンク1から吸い出し、遠心分離方式で消泡して生じた微細泡及び液の混淆体を該タンク1外に抽出する処理器2付きのものを充て、この処理器2の抽出管24に、スカムと液を分離するタンク3を接続し、該分離タンク3において分離したスカムと液分とを、スカム取出し手段31、液取出し手段34で、別々に該分離タンク3外に取出すようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液の泡の処理を行う装置に関する。
【0002】
この種のアルカリ液は、所要の洗浄に充てたものを貯留タンクに回収し、被洗浄体の洗浄工程に戻して、再使用されるのが一般であり、その再使用は何回も繰り返されるのが通常である。
【0003】
被洗浄体の洗浄工程から貯留タンクに回収されたアルカリ液には、多量の泡が浮遊している。その泡は、油等の夾雑物を含んでいる。この夾雑物は当業者に知られるように、アルカリ液による被洗浄体の洗浄に対し、非常に好ましくないものであり、除去する必要がある。
【背景技術】
【0004】
従来、製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液から泡を取るには、貯留タンク内のアルカリ液の液面に浮く泡相を液分から分離する手法をとっている。その仕様は、次の(1)、(2)に大別できる。
(1)貯留タンク内のアルカリ液の泡を吸引器で取り出す手法。(2)貯留タンク内のアルカリ液の泡を吸い出し、遠心分離で消泡処理し、その処理で生じた微細泡と液との混淆体の全量を貯留タンクに戻すやり方。
(1)の仕様では、貯留タンクから泡が溢れ出て、床面の辺り等を汚したり、液排出溝が泡で埋没する等の不都合がある。この仕様では、泡の廃棄量が1日約10〜20トンと膨大な量となり、泡の流出に伴う汚染の問題が大きい。
(2)の仕様では、貯留タンク内で発生する泡と、貯留タンクに戻した混淆体の液で生じる泡とが混ざり、泡の量が増す。そして、泡量増大に伴い泡の質も悪化が進み、前示の泡吸い上げ→消泡→液戻し(貯留タンクへの混淆体戻し)を10日程繰り返すと(註:製鉄工業は最低15日〜30日間が連続操業であるのが実状)、泡がソフトクリーム状のスカムと化すし、泡質の悪化で貯留タンク内のアルカリ液が汚毒され、被洗浄体の洗浄につき甚だ好ましくない。
(2)の仕様で当該問題を解消するべく、混淆体を貯留タンクに戻さずに、廃棄したとすると、その廃棄量は、1日約10〜20トンと膨大な量となり、多くの問題が派生する。また、繰り返し使用するアルカリ液に洗浄力補填のための洗剤の消費量も相当大量となり、その経費が大いに嵩むことになる。
【0005】
以上、従来技術につき、換言要約すると、貯留タンク内のアルカリ液の効果的な泡処理、洗剤使用量の低減、効果的で実用性の高いスカム除去の三点については、未解決であるということになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、上記従来技術による問題を解消する即ち、製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液を処理対象とし、貯留タンク内のアルカリ液の効果的な泡処理、洗剤使用量の低減、効果的で実用性の高いスカム除去が達成されるようにしようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決のため本発明は、被処理アルカリ液の泡の除去処理に、次に示す仕様をとっている。
【0008】
被処理アルカリ液を貯留するタンクに、該タンク内のアルカリ液の液面上の泡相を該タンクから吸い出し、遠心分離方式で消泡して該タンク外に抽出する処理器付きのものを充て、この処理器の抽出管に、スカムと液を分離するタンクを接続し、該分離タンクにおいて分離したスカムと液分とを別々に、当該分離タンク外に取り出し手段で取り出すようにしている。
【0009】
上記処理器としては、次のものを好ましい例として挙げることができる。羽根車及び該羽根車を内部に持つケーシングを構成要素として包含するもので、該ケーシングが前記貯留タンク内のアルカリ液の泡相域に通じる吸引管、及び分離タンクに通じる抽出管を包含するもの。
【0010】
上記分離タンクにおいて液分と分離したスカムを分離タンク外に取り出す手段としては、次のものを好ましい例として挙げることができる。分離タンク内の液の液面沿いに延びて該液面上を移動し、その移動で該液面上のスカムを、該分離タンクに設けたスカム排出口に集める乃至は押しやるスクレパー。該スクレパーは、前記分離タンクの側壁内面側の端縁が、当該側壁内面に近接するものがより好ましい。
【0011】
上記分離タンクにおいてスカムと分離した液分を分離タンク外に取り出す手段としては、分離タンクと貯留タンクとの間に介在する電磁弁付きの管を好ましい例として挙げることができる。
【0012】
上記分離タンクにおけるスカム排出口は、軟質乃至は可撓性材で形成された竪の樋型のスカム落とし口でり、該スカム落とし口の入り側(上縁)の位相(高さ)が、前記スクレパー下縁の移動軌跡に対応する高さであるものが好ましく、より好ましくは当該スカム落とし口の入り側の位相が、スクレパー下縁が描く移動軌跡より少し高い所であること。スカム落とし口の入り側の位相が、スクレパー下縁の移動軌跡に対応する高さとは、次のことをいう。スクレパーが、移動でスカム落とし口の上縁を通過するとき、該上縁にスクレパー下縁が軽く接触する、或いは該上縁との間に若干の隙間があること。
【0013】
本発明では、貯留タンク内のアルカリ液の液面上の泡相は、上記処理器で該タンク外に吸い出され、遠心分離方式で消泡される。遠心分離方式で泡が消されると、極く微細な泡と液との混淆体となる。この混淆体は、該処理器の抽出管から抽出され、分離タンクに入り、該タンクに溜まる。
【0014】
或る時間が経過すると、上記分離タンク内の液面にはスカムが発生する。この事象は、本発明の研究過程で見られたもので、前記混淆体中の極く微細な泡が、時間の経過で該混淆体から分離乃至は遊離することに基づくものと推考される。
【0015】
分離タンク内の液面上のスカムは、スカム取り出し手段で該タンク外に取り出され、スカム下の液は、液取り出し手段で該タンク外に取り出される。分離タンクでスカムと分離した液は、貯留タンクに回収するのがよい。
【0016】
分離タンクから排出されるスカムの排出量は、一日約1トン程度で、従来の泡処理仕様による泡排出量(一日当たり約10〜20トン)の約1/10〜20程度と少なく、泡廃棄処分のコストが従来仕様のそれに比較し、相当安くて済む。
【0017】
こうして、本発明によれば、製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液を処理対象とし、貯留タンク内のアルカリ液の効果的な泡処理、洗剤使用量の低減、効果的で実用性の高いスカム除去の達成が得られる。
【0018】
また、既述から明らかなように、微細泡と液との混淆体が貯留タンクに戻されないため、従来の遠心分離方式による泡の処理仕様で見られた、貯留タンクにおける泡量の増大、それに伴う該タンク内の泡質の悪化進行、及び泡質悪化によるアルカリ液の汚濁が解消される。
【0019】
分離タンクからの排出スカムは、油等夾雑物を含有し、その含有量が140g/kg(スカム相の量)程度と可成り多いことが、分析の結果、分かった。この夾雑物は、当業者に知られるように、アルカリ液による被洗浄体の洗浄につき、非常に好ましくないものである。このことは、前述のように本発明では、貯留タンクからの吸い出し泡相を遠心分離で処理して生じた微細泡と液との混淆体を貯留タンクに戻さずに、分離タンクに移して、液分からスカムを分離し、液分と別個に除去している点に照らして考えるに、スカム分離除去の有用性が大であると言える。これに反し、従来の遠心分離方式による処理では、微細泡と液との混淆体を貯留タンクに戻しているので、油等夾雑物が該タンクに入って漸増してゆき、貯留タンク内の処理済みアルカリ液の再使用に悪影響を与え、好ましくない。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明では、製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液を対象とし、貯留タンク内のアルカリ液の効果的な泡処理、洗剤使用量の低減、効果的で実用性の高いスカム除去が達成される。しかも、それらのレベルが相当に高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面を参照して、実施例と共に説明する。図で1が製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液を貯留するタンク、2が処理器、3が分離タンクである。
【0022】
タンク1には処理器2が装備される。処理器2は、底部が漏斗状をしたケーシング21、該ケーシング21内に設けられた羽根車22、ケーシング21からタンク1内の液の液面上の泡相に延びる吸引管23、タンク1外に通じる抽出管24を持つ。22Mが羽根車22を駆動するモータである。
【0023】
分離タンク3は円形の漏斗型で、内部の上端寄りの箇所で水平に延びるスクレパー型のスカム集め器31(以下、スカム集め器をスクレパーとも言う)を具備する。スクレパー31は、分離タンク3の中心線上で竪向きに延びる回転軸32に結合され、図2の矢符方向に回る。スクレパー31は先端縁が分離タンク3の側壁内面に近接している。分離タンク3の上端の開口には、ケーシング21の抽出管24が延びている。分離タンク3は、スカム排出口乃至はスカム落とし口33を持つ。スカム落とし口33は、タンク3の周面一部から中心近くに亘って断面逆台形に凹んだ竪形の樋状になっている(図2、図6参照)。スカム落とし口33の上縁即ち入り側の端は、スクレパー31の進行で、その下縁が描く軌跡に対応する高さである。スカム落とし口33の分離タンク3中心側の壁には、その下端にタンク3中心側から反対側へ下向きに傾斜する底330が形成され、スカム落とし口33の対向する壁は、排出ガード板331になっている。スカム落とし口33の下方には外部スラッジバッグ4(図1参照)が配置される。
【0024】
スカム落とし口33は、ゴム等の軟質乃至は可撓性材で形成するのがよい。軟質乃至は可撓性材で形成されたスカム落とし口33の分離タンク3内に延びる上縁は、スクレパー31下縁の進行軌跡より若干上方に達する高さとするのがよい。これによると、スカム落とし口33の分離タンク3内に延びる上縁をスクレパー31の下縁が押圧するようして通過し、分離タンク3内の液面高さの上昇がスカム落とし口33の上縁近くになった状態でも、分離タンク3内の液がスカム落とし口33の当該上縁より零れ落ちることがない。
【0025】
スクレパー31の移動中、スクレパー31先端縁と分離タンク3内周面との間のスカム相についてのシールは、スクレパー31先端縁が分離タンク3の側壁内面に近接していることで得られる。分離タンク3の底は電磁弁34付きの管を介しタンク1に通じている。分離タンク3は液面センサー35を持つ。(図4参照)
タンク1には被処理アルカリ液が貯留され、その液の泡が次に述べるようにして、除去処理される。
【0026】
貯留タンク1内のアルカリ液の液面には、泡相が堆積している。該泡相は、処理器2の羽根車22の回転で、吸引管23を通じケーシング21に吸引され、該羽根車22の回転による遠心力で、ケーシング21内周面に衝突され消泡されて、極く微細な泡と液との混淆体となる。その混淆体は、ケーシング21の抽出管24を経て、分離タンク3に入り、該タンク3に溜まる。分離タンク3ではスカムが発生する。このスカムは分離タンク3内の微細泡と液との混淆体に発生し、貯留タンク1内で生じる泡とは、別もので言わば、二次泡的なものである。
【0027】
スクレパー31は連続回転される。分離タンク3には、処理器2からの微細泡及び液の混淆体が流入し、時間が進む(前示泡処理の進行)に従い、漸次溜まって行く、即ち液面が漸次高くなって行く。スクレパー31は回転を続けている。そして、該液面上にスカムが溜まりながら液面が上昇して行く。
【0028】
分離タンク3内のスカム上面がスクレパー31の下縁を超える高さに達すると、上層のスカムがスクレパー31で押しやられてスカム落とし口33から排出される。このスカム排出は、スカム下の液面上昇がセンサー35で検知されるまで続く。検知されると、電磁弁34が開き、分離タンク3内の液が重力流下で、貯留タンク1に回収され、分離タンク3が空になる。
【0029】
電磁弁34はタイマーで閉となり、分離タンク3における液及びスカムの溜まりが再び始まる。分離タンク3内の液が溜まる量は一定であり、分離タンク3からの液の重力流下に要する時間も一定となる。
【0030】
分離タンク3におけるスカムの分離排出、液の分離回収は繰り返される。
【0031】
タンク1に回収された液は、ストリップの洗浄工程に戻され、再使用される。分離タンク3からの排出スカムは、外部スラッジバッグ4に捕集される。外部スラッジバッグ4のスカムは廃棄処分すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明装置の一実施例を示す縦断立面図である。
【図2】図1の平面図を示す。
【図3】図1の装置に於ける処理器の一部を省略して示す拡大図である。
【図4】図1に示す装置における分離タンクの抽出立面図である。
【図5】当該実施例装置のスカム落とし口部についての図1の左側面拡大図である。
【図6】当該スカム落とし口の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 貯留タンク
2 処理器
21 ケーシング
22 羽根車
23 吸引管
24 抽出管
3 分離タンク
31 スカム集め器
33 スカム落とし口
330 底
331 排出ガード板
34 電磁弁
35 液面センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄工業におけるストリップを洗浄したアルカリ液を貯留するタンクに、該タンク内のアルカリ液の液面上の泡相を該タンクから吸い出し遠心分離方式で消泡して該タンク外に抽出する処理器を備え、この処理器の抽出管に、スカムと液を分離するタンクを接続し、該分離タンクにおいて分離したスカムと液分とを別別に、当該分離タンク外に取り出し手段で取り出すようにしたことを特徴とするアルカリ液処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のアルカリ液処理装置において、分離タンクでスカムと分離した液分を、アルカリ液を貯留するタンクに回収するようにしたアルカリ液処理装置。
【請求項3】
請求項1記載のアルカリ液処理装置において、分離タンクで液分と分離したスカムを、ストリップの洗浄に循環使用されるアルカリ液の経路外に廃棄するようにしたアルカリ液処理装置。
【請求項4】
請求項1記載のアルカリ液処理装置において、アルカリ液を貯留するタンク内のアルカリ液の液面上の泡相に所要の処理を行う処理器が、羽根車及び該羽根車を内部に持つケーシングを構成要素として包含するもので、該ケーシングが前記貯留タンク内のアルカリ液の泡相域に通じる吸引管、及び分離タンクに通じる抽出管を包含し、上記分離タンクのスカムを該タンク外に取り出す手段が、該分離タンク内の液面上のスカムを該分離タンクに設けたスカム排出口に集めて該排出口から排出するものであり、上記分離タンク内の液分を該分離タンク外に取り出す手段が、当該分離タンクに付設された電磁弁付き管であるアルカリ液処理装置。
【請求項5】
請求項4記載のアルカリ液処理装置において、分離タンク内の液面上のスカムを該分離タンクに設けたスカム排出口に集めて該排出口から排出するものが、該分離タンク内の液の液面沿いに延びて該液面上を移動し、当該分離タンクのスカム排出口に当該液面上のスカムを押しやるスクレパーであり、当該分離タンクのスカム排出口は、竪の樋型のスカム落とし口であり、当該口の入り側の位相が前記スクレパー下縁の移動軌跡に対応する高さであり、該スクレパーの前記分離タンクの周壁内面側の端縁が当該周壁内面に近接しているアルカリ液処理処置。
【請求項6】
請求項5記載のアルカリ液処理装置において、分離タンクの竪の樋形のスカム落とし口が軟質乃至は可撓性材で形成され、当該スカム落とし口の入り側の位相が、前記スクレパー下縁が描く移動軌跡より少し高所であるアルカリ液処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−124768(P2006−124768A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313860(P2004−313860)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000137096)株式会社ホタニ (6)
【Fターム(参考)】