説明

アルカリ蓄電及びこのアルカリ蓄電池を用いたアルカリ蓄電池システム

【課題】高出力(回生特性)及び高耐久性能をあわせたアルカリ蓄電池を低コストで供給することが可能となる。
【解決手段】水酸化ニッケルを主正極活物質とするニッケル正極と水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極とセパレータとからなる電極群を、アルカリ電解液とともに外装缶内に備えたアルカリ蓄電池であって、前記ニッケル正極は、主正極活物質となる水酸化ニッケルに亜鉛が、前記正極活物質中のニッケル質量に対して8質量%以下添加されており、かつ前記水素吸蔵合金は、一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表され、x/yが0.4以上であり、かつ前記アルカリ電解液は、タングステン等の化合物が、前記正極活物質の質量に対し0.5質量%以上で2.0質量%以下添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)等の車両用途に適したアルカリ蓄電池及びこのアルカリ蓄電池を用いたアルカリ蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車用途に加えて、アイドリングストップ自動車用アルカリ蓄電池の検討がなされている。アイドリングストップ自動車用途においては、鉛蓄電池との互換性の観点から、システムの低電圧化(システムあたりのセル数削減)が必要となっている。加えて短時間でのエネルギー回生が必要なことから、電池回生出力の更なる向上が求められている。
【0003】
一般に、アルカリ蓄電池は、活物質である水酸化ニッケルを導電性基板に充填したニッケル正極を使用している。前記正極を含むアルカリ蓄電池は、過充電時に生じる正極の膨化抑制を目的に正極活物質中に亜鉛を固溶添加している。ただし、過充電領域までの使用を想定しない車両用途においては、正極活物質中で電気抵抗成分となる亜鉛の添加量を削減する方法が検討されている。(特許文献1)
【0004】
また、負極活物質として用いられる水素吸蔵合金については、市場のコスト要求、性能要求から様々な希土類元素及び組成について検討されており、車両用途においては、一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素:Nd、Sm、Y等、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表される水素吸蔵合金が提案されている。(特許文献2)
【0005】
【特許文献1】特開2010-231949号公報
【特許文献2】特開2011-023337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素:Nd、Sm、Y等、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表される水素吸蔵合金において、回生出力特性の向上を目的にLa比率を増大させると合金の耐酸化性が低下し、出力劣化が加速される課題があることが分かった。また、前記課題は、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して8質量%以下の場合に顕著となることが分かった。このため、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して8質量%以下の場合、x/yが0.4以上となる合金組成を採用することができず、電池の高出力化(回生出力)と耐久性能の両立が困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアルカリ蓄電池は、主正極活物質となる水酸化ニッケルに亜鉛が添加されているとともに、前記亜鉛の添加量は前記正極活物質中のニッケル質量に対して8質量%以下であって、負極活物質である水素吸蔵合金は、一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素:Nd、Sm、Y等、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表され、x/yが0.4以上であり、ニオブ化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物が電解液中に添加され
ており、前記化合物の添加量を前記正極活物質の質量に対し0.5質量%以上で2.0質量%以下としている。(請求項1)

加えて、前記アルカリ蓄電池の電解液のアルカリ濃度が7mol/L以下であって、前記電解液中のナトリウム量が0.4mol/L以上、4.2mol/L以下であることが望ましい。(請求項2)
【発明の効果】
【0008】
一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素:Nd、Sm、Y等、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表される水素吸蔵合金において、La比率を増大させると、水素吸蔵合金の水素平衡圧低下に伴う、電池作動電圧の低下から、初期電池出力(回生特性)が改善される。
さらに、正極活物質中で電気抵抗成分となる亜鉛の添加量を削減し、ニッケル質量に対して8質量%以下とすることで、更なる高出力化を図り、所望の初期電池出力を得ることが可能となった。
一方、部分充放電耐久後の出力維持率に関して、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して8質量%より大きい従来の範囲では、水素吸蔵合金組成のLa比率を増大させても、顕著な出力維持率の低下は見られなかった。
しかしながら、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して8質量%以下の範囲では、La比率の増大に伴い、部分充放電耐久後の出力維持率が顕著に低下することを確認した。
【0009】
これは、従来範囲に対して、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して8質量%以下の範囲では、高温充電効率が大きく低下し、充放電中に正極から発生した酸素による水素吸蔵合金の酸化劣化が促進されるためと考えられる。
詳細調査を行なった結果、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して8質量%以下であって、前記一般式で表される水素吸蔵合金においてx/yが0.4以上の範囲において、部分充放電耐久後の出力維持率が急激に低下するという課題が顕在化することを見出した。
上記範囲においては、ニオブ化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物を電解液中に添加することで、高温充電効率特性が向上し、部分充放電耐久後の出力維持率が改善されることを確認した。
したがって、上記構成のアルカリ蓄電池であると、高出力(回生特性)及び高耐久性能の両立が可能となる。
なお、負極合金組成中のLaは比較的安価なことから、本発明の範囲では上記特長を有するアルカリ蓄電池を低コストで供給することが可能となる。
特に、アルカリ蓄電池の電解液のアルカリ濃度が7mol/L以下であって、前記電解液中のナトリウム量が0.4mol/L以上、4.2mol/L以下であると、高温充電効率特性がさらに改善されることから、アルカリ蓄電池の高耐久性能を特に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明及び比較例のアルカリ蓄電池を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のアルカリ蓄電池システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ついで、本発明の実施の形態を以下に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものでなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0012】
1.ニッケル正極
本発明のニッケル正極11は、基板となるニッケル焼結基板の多孔内に水酸化ニッケルを主成分とし、水酸化亜鉛、水酸化コバルト、水酸化イットリウムから選択したいずれかの化合物とが所定の充填量となるように充填されて形成されている。
この場合、ニッケル焼結基板は以下のようにして作製されたものを用いている。例えば、ニッケル粉末に、増粘剤となるメチルセルロース(MC)と高分子中空微小球体(例えば、孔径が60μmのもの)と水とを混合、混練してニッケルスラリーを作製する。ついで、ニッケルめっき鋼板からなるパンチングメタルの両面にニッケルスラリーを塗着した後、還元性雰囲気中で1000℃で加熱して、増粘剤や高分子中空微小球体を消失させるとともにニッケル粉末同士を焼結することにより作製されている。
【0013】
そして、得られたニッケル焼結基板を含浸液に浸漬して、ニッケル焼結基板の細孔内に含浸液を含浸させた後、乾燥させ、ついで、アルカリ処理液に浸漬してアルカリ処理を行う。これにより、ニッケル塩や亜鉛塩を水酸化ニッケルや水酸化亜鉛に転換させる。この後、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥させる。このような、含浸液の含浸、乾燥、アルカリ処理液への浸漬、水洗、および乾燥という一連の正極活物質の充填操作を6回繰り返すことにより、所定量の正極活物質がニッケル焼結基板に充填される。
【0014】
この場合、含浸液としては、硝酸ニッケルと硝酸亜鉛を所定のモル比となるように調製した混合水溶液を用い、アルカリ処理液としては、比重が1.3の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を用いている。
【0015】
2.水素吸蔵合金負極
水素吸蔵合金負極12は、パンチングメタルからなる負極芯体に水素吸蔵合金スラリーが充填されて形成されている。この場合、まず、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を所定のモル比の割合で混合し、この混合物を高周波誘導炉で溶解させ、これを溶融急冷して、A19型構造の結晶構造を有し、一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素:Nd、Sm、Y等、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。ついで、得られた水素吸蔵合金の融点よりも30℃だけ低い温度で所定時間(この場合は10時間)の熱処理を行った。
【0016】
この後、得られた水素吸蔵合金の塊をそれぞれ粗粉砕した後、水素吸蔵合金を不活性雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400メッシュ〜200メッシュの間に残る合金粉末を選別した。なお、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定すると、質量積分50%にあたる平均粒径は25μmであった。これを水素吸蔵合金粉末とした。
【0017】
この後、得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に対し、非水溶性高分子結着剤としてのSBR(スチレンブタジエンラテックス)を0.5質量部と、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)を0.03質量部と、適量の純水を加えて混練して、水素吸蔵合金スラリーを調製した。そして、得られた水素吸蔵合金スラリーをパンチングメタル(ニッケルメッキ鋼板製)からなる負極芯体の両面に塗着した後、100℃で乾燥させ、所定の充填密度になるように圧延した後、所定の寸法に裁断してLa-Nd系水素吸蔵合金を作製した。同様の方法で、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を用いて、La-Sm系水素吸蔵合金負極を作製した。以上のようにして作製したLa-Sm系水素吸蔵合金負極に使用した水素吸蔵合金A〜Jの組成を表1にまとめる。
【0018】
【表1】

【0019】
3.電解液
電解液は水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムを所定のモル比、アルカリ濃度となるよう調整した混合水溶液に、ニオブ化合物、タングステン化合物及びモリブデ
ン化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物を添加した。この場合、ニオブ、タングステン及びモリブデンが前記正極活物質の質量に対し所定量となるよう添加した。
【0020】
4.ニッケル−水素蓄電池
上述のようにして作製されたニッケル正極11と、水素吸蔵合金負極12とを用い、これらの間に、目付が55g/m2のポリオレフィン製不織布からなるセパレータ13を介在させて渦巻状に巻回して渦巻状電極群を作製した。なお、このようにして作製された渦巻状電極群の上部にはニッケル正極11の芯体露出部11cが露出しており、その下部には水素吸蔵合金電極12の芯体露出部12cが露出している。ついで、得られた渦巻状電極群の下端面に露出する芯体露出部12cに負極集電体14を溶接するとともに、渦巻状電極群の上端面に露出するニッケル電極11の芯体露出部11cの上に正極集電体15を溶接して、電極体とした。
【0021】
ついで、得られた電極体を鉄にニッケルメッキを施した有底筒状の外装缶(底面の外面は負極外部端子となる)17内に収納した後、負極集電体14を外装缶17の内底面に溶接した。一方、正極集電体15より延出する集電リード部15aを封口体18の底部に溶接した。なお、封口体18には正極キャップ18aが設けられていて、この正極キャップ18a内に所定の圧力になると変形する弁体18bとスプリング18cよりなる圧力弁(図示せず)が配置されている。
【0022】
ついで、外装缶17の上部外周部に環状溝部17aを形成した後、アルカリ電解液を注液し、外装缶17の上部に形成された環状溝部17aの上に封口体18の外周部に装着された絶縁ガスケット19を載置した。この後、外装缶17の開口端縁17bをかしめることにより、公称容量は6AhでDサイズ(直径が32mmで、高さが60mm)の実施例1〜8及び比較例1〜20のニッケル−水素蓄電池10を作製した。この場合、作製した各ニッケル−水素蓄電池10の構成を表2にまとめる。
【0023】
【表2】

【0024】
5.電池試験
(1)電池活性化
比較例1〜19、および実施例1〜8記載の電池において、25℃の温度雰囲気で、1
Itの充電電流でSOC(State Of Charge:充電深度)の120%まで充電し、1時間休止させた。ついで、60℃の温度雰囲気で24時間放置した後、30℃の温度雰囲気で、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vになるまで放電させるサイクルを2サイクル繰り返して、電池を活性化した。
【0025】
(2)電池容量
活性化終了後の各電池において、25℃の温度雰囲気で、1Itの充電電流でSOC(State Of Charge:充電深度)の120%まで充電し、1時間休止させた。ついで、25℃の温度雰囲気で、1Itの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させるサイクルを2サイクル繰り返して各電池の初期電池容量を求めた。
【0026】
(3)部分充放電サイクル試験
活性化終了後の各電池において、10Itの充電電流にて、55℃の温度雰囲気で、上記で求めた初期の電池容量に対するSOCが40%から60%の間を充放電させるというサイクルを繰り返す部分充放電サイクル試験を行った。この時、放電電気量の積算値が50kAhとなるまでサイクルを繰り返した。
【0027】
(4)電池出力
活性化後の各電池において、1.0Itの充電電流で電池容量の50%までを充電を行った後、25℃の温度雰囲気で3時間保管した。この3時間保管後の電池電圧をEとした。ついで、20Itの充電電流で10秒間充電を行った。このときの10秒後の電池電圧をEとした。前記E及びEを充電電流に対し直線近似し、1.6Vまで外挿したときの充電電流を初期電池出力とした。また、積算放電電気量が50kAhになった後、上述同様にして耐久後電池出力を算出した。この時、「出力維持率(%)=耐久後電池出力/初期電池出力×100」により出力維持率を算出した。
【0028】
(5)評価結果
上述のようにして得られた各評価結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
La-Nd系負極合金組成のx/y増大(La比率増大)に伴い、電池出力が向上することを確認した。特にx/yが0.4以上の領域で顕著な改善効果が見られた。本効果は負極合金組成のx/yが0.4以上において、負極合金の水素平衡圧が大きく低減し、電池作
動電圧が低下するためと考えられる。ただし、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量に対して10質量%においては、十分な初期電池出力を得ることができなかった(比較例1〜5)。
【0031】
そこで、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量の8質量%であって、負極合金組成のx/yが0.4以上としたところ、所望の初期電池出力を得ることが可能となった。ただし、耐久後電池出力が大きく低下し、十分な出力維持率を得ることができず、本合金組成を適用することは不可能であった(比較例6〜10)。本傾向はLa-Sm系水素吸蔵合金負極においても同様であることを確認した(比較例11〜15)。ここで、特に結果は示さないが、La−Y系合金においても同様の傾向を確認した。
【0032】
ついで、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量の8質量%であって、負極合金組成のx/yが0.4以上であり、電解液中のタングステン添加量を0.5質量%としたところ、大幅な出力維持率の改善効果を確認し、高出力化(回生出力)と高耐久性能の両立が可能となった(実施例1〜3)。ここで、特にデータは示さないが、ニオブ化合物、モリブデン化合物においても同様の効果を確認した。なお、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量の8質量%であって、負極合金組成のx/yが0.4未満であり、電解液中のタングステン添加量を0.5質量%とした場合では、十分な初期電池出力を得ることができなかった(比較例16、17)。
【0033】
また、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量の8質量%であって、負極合金組成のx/yが0.4以上において、電解液中のタングステン添加量を2.0質量%としたところ、若干出力維持率が向上することを確認した(実施例4)。ただし添加量を2.5質量%まで増大させた場合、抵抗増大にともなう初期電池出力の低下を確認した(比較例18)。ちなみに本発明の効果は、正極活物質中の亜鉛添加量をニッケル質量の1質量%まで低下させても、有効であることを確認した(実施例5、6)
【0034】
以上のことから、本発明の範囲では、正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量の8質量%以下であって、負極合金組成のx/yが0.4以上であり、電解液中のタングステン添加量を0.5質量%以上、2.0質量%以下とすることで、高出力化(回生出力)と高耐久性能の両立が可能となった。なお、負極合金組成中のLaは比較的安価なことから、本発明の範囲では上記特長を有するアルカリ蓄電池を低コストで供給することが可能となる。
【0035】
次に、電解液のナトリウム量について検討した結果を表4に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
正極活物質中の亜鉛添加量がニッケル質量の8質量%であって、負極合金組成のx/yが0.4以上であり、電解液中のタングステン添加量が0.5質量%において、電解液中のナトリウム量を変動させたところ、0.4mol/L以上とすることで、さらに出力維持
率が改善することを確認した(実施例7、8)。ただし、ナトリウム量が5.0mol/Lでは、抵抗増大に伴う初期電池出力が低下した(比較例19)。
【0038】
なお、電解液のアルカリ濃度が高すぎると、粘度増大により注液性が悪くなることから、アルカリ濃度は7mol/L以下が望ましい。
以上より、本発明のアルカリ電解液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムのいずれか一つ以上を含有するとともに、前記アルカリ電解液のアルカリ濃度が7mol/L以下であって、かつナトリウム量が0.4mol/L以上、4.2mol/L以下であることが望ましい。
【0039】
6.アルカリ蓄電池システム
ついで、上述のようにして作製したニッケル−水素蓄電池10を複数個組み合わせて構成されるアルカリ蓄電池システム100を、図2に基づいて以下に説明する。ここで、図2に示すように、本発明のアルカリ蓄電池システム100は、電源101と、上述したニッケル−水素蓄電池10からなる単電池が8個直列接続された電池モジュールを30個直列接続して形成された組電池102とを備えている。
【0040】
電源101と組電池102との間には、この電源101からの電流および電圧を所定の定電流および定電圧に変換して組電池102に供給する充電制御部103と、組電池102に流れる電流を検出する電流検出回路104と、組電池102の電池電圧を検出する電圧検出回路105と、組電池102の強制放電を制御する放電制御部106と、電流検出回路104および電圧検出回路105からの検出値に基づいて、充電制御部103および放電制御部106の動作を制御するCPUなどからなるマイクロコンピュータ107とが接続されている。なお、放電制御部106には組電池102を放電するための放電抵抗が接続されており、マイクロコンピュータ107には所定の時間を計測するタイマー108が接続されている。マイクロコンピュータ107は、部分充放電制御回路を含んでおり、ニッケル−水素蓄電池10が部分充放電されるように制御される。
【0041】
また、上記構成のアルカリ蓄電池システム100における部分充放電制御は、アルカリ蓄電池が、SOCが20〜80%の範囲でのみ、充放電がされるようになされているので、ニッケル−水素蓄電池10が低SOC又は高SOC状態となるのを効果的に防止できる。上記制御の範囲ではニッケル−水素蓄電池10の出力性能劣化は、負極合金劣化に支配されることから、本発明のアルカリ蓄電池は、上記構成のアルカリ蓄電池システムに好適であるといえる。
【符号の説明】
【0042】
11…ニッケル電極、11c…芯体露出部、12…水素吸蔵合金電極、12c…芯体露出部、13…セパレータ、14…負極集電体、15…正極集電体、15a…集電リード部、17…外装缶、17a…環状溝部、17b…開口端縁、18…封口体、18a…正極キャップ、18b…弁板、18c…スプリング、19…絶縁ガスケット、100…アルカリ蓄電池システム、101…電源、102…組電池、103…充電制御部、104…電流検出部、105…電圧検出部、106…放電制御部、107…マイクロコンピュータ、108…タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケルを主正極活物質とするニッケル正極と水素吸蔵合金を負極活物質とする水素吸蔵合金負極とセパレータとからなる電極群を、アルカリ電解液とともに外装缶内に備えたアルカリ蓄電池であって、
前記ニッケル正極は、主正極活物質となる水酸化ニッケルに亜鉛が添加されているとともに、前記亜鉛の添加量は前記正極活物質中のニッケル質量に対して8質量%以下であり、かつ前記水素吸蔵合金は、一般式がLaReMg1−x−yNin−aa(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素、MはAl、Co、Mn、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表され、x/yが0.4以上であり、かつ前記アルカリ電解液は、タングステン化合物、モリブデン化合物、ニオブ化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物が添加されており、前記ニオブ化合物、タングステン化合物、モリブデン化合物から選択されたいずれか1種以上の化合物の添加量は、前記正極活物質の質量に対し0.5質量%以上で2.0質量%以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池。
【請求項2】
前記請求項1記載のアルカリ蓄電池であって、前記アルカリ電解液は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムのいずれか一つ以上を含有するとともに、前記アルカリ電解液のアルカリ濃度が7mol/L以下であって、かつナトリウム量が0.4mol/L以上、4.2mol/L以下であることを特徴とするアルカリ蓄電池。
【請求項3】
前記請求項1または前記請求項2に記載のアルカリ蓄電池を備えているとともに、当該アルカリ蓄電池を部分充放電制御するようにされていることを特徴とするアルカリ蓄電池システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−114888(P2013−114888A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259800(P2011−259800)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】