説明

アルカリ賦活炭およびその製造方法

【課題】高比表面積および大径細孔を有するアルカリ賦活炭を提供する。
【解決手段】本発明のアルカリ賦活炭は、窒素含有材料を、アルカリ賦活して得られることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ賦活炭およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、活性炭は、高比表面積を有することから電気二重層キャパシタの分極性電極、吸着材などの用途に用いられている。このような活性炭は、一般にヤシガラ炭化物、フェノール樹脂炭化物、石炭などの原料を、水蒸気賦活あるいは薬品賦活することにより作製される(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
また、電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解液との界面に生じる電気二重層を蓄電原理とする大容量キャパシタとして知られており、エレクトロニクス分野の進展と共に、高性能化が期待されている。電気二重層キャパシタの高性能化を実現するためには、その電極材料として用いられる活性炭のさらなる高比表面積化、細孔径の増大が必須となっている。
【0004】
そこで、さらなる高比表面積化、細孔径の増大が図られた活性炭およびそのような活性炭の製造方法が種々提案されており、例えば、特許文献3〜6には、含窒素化合物および含硫黄化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物と縮合多環式化合物との反応生成物、蛋白質または蛋白質含有汚泥などの特定の原料を用い、水蒸気賦活して作製された活性炭およびその製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献7に、炭素質原料を水蒸気賦活した後の細孔直径20Å(2.0nm)以上の比表面積と全比表面積との比が0.30以上であるものをさらにアルカリ賦活する活性炭の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−344508号公報
【特許文献2】特開2003−203829号公報
【特許文献3】特開平5−811号公報
【特許文献4】特開平8−81210号公報
【特許文献5】特開2001−319837号公報
【特許文献6】特開2002−33249号公報
【特許文献7】特開平8−119614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3〜6に記載されているような水蒸気賦活では、高比表面積化しても2000m2/g以上の比表面積を有する活性炭を得ることが困難であった。一方、特許文献7に記載されているようなアルカリ賦活では、2000m2/g以上の比表面積を有する活性炭が得られるものの、このような2000m2/g以上の高比表面積を有し、且つ、2.0nm以上の平均細孔径を有する活性炭を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、高比表面積および大径細孔を有するアルカリ賦活炭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアルカリ賦活炭は、窒素含有材料を、アルカリ賦活して得られることを特徴としている。原料として窒素含有材料を用いることにより、高比表面積および大径細孔を有するアルカリ賦活炭を得ることができる。
【0009】
前記アルカリ賦活炭は、窒素含有材料を炭化し、得られた炭化物をアルカリ賦活して得られるものが好ましい。前記窒素含有材料の炭化物の窒素含有量は、4質量%〜50質量%であることが好ましい。前記製造方法に用いられる窒素含有材料としては、トリアジン化合物またはトリアジン樹脂が好ましく、より好ましくはメラミンもしくはその誘導体、またはメラミン樹脂である。
【0010】
前記アルカリ賦活炭は、BET比表面積が2000m2/g〜3500m2/g、全細孔容積が1.0cm3/g〜3.0cm3/g、BJH法により求められる平均細孔径が2.0nm〜4.0nmであることが好ましい。
【0011】
本発明には、窒素含有材料をアルカリ賦活することを特徴とするアルカリ賦活炭の製造方法も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高比表面積および大径細孔を有するアルカリ賦活炭が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のアルカリ賦活炭は、窒素含有材料を、アルカリ賦活して得られることを特徴としている。
【0014】
本発明のアルカリ賦活炭に用いられる窒素含有材料について説明する。
【0015】
前記窒素含有材料としては、窒素原子を有するものであれば特に限定されず、例えば、メチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、メラミン、グアナミン、グアニジン、尿素、アニリン、芳香族または脂肪族スルホンアミドなどのアミノ化合物;4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのイソシアネート化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、アクリロニトリルなどのニトリル化合物;ジニトロナフタレンなどのニトロ化合物;イミダゾール、ベンゾイミダゾールなどのイミダゾール化合物;カルバゾール、N−メチルカルバゾールなどのカルバゾール化合物;アクリジン、9−メチルアクリジンなどのアクリジン化合物;ピリジン、アミノピリジンなどのピリジン化合物;ピロール、メチルピロールなどのピロール化合物;などの窒素含有化合物、および、メラミン樹脂;グアニジン樹脂;尿素樹脂;アニリン樹脂;スルホンアミド樹脂;イミド樹脂;ウレタン樹脂;ポリアクリロニトリルなどのニトリル樹脂;ポリベンゾイミダゾール樹脂;カルバゾール樹脂;アクリジン樹脂;ピリジン樹脂;ピロール樹脂;などの窒素含有樹脂が挙げられる。これらの窒素含有材料は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記の窒素含有材料の中でも、本発明に使用されるものとしては、分子中または樹脂構造中にトリアジン環構造を有するトリアジン化合物またはトリアジン樹脂が好ましい。前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミンやその誘導体が好適である。前記トリアジン樹脂としては、例えば、メラミン樹脂が好適である。
【0017】
前記メラミンやその誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、R1〜R6は、同一または異なって、水素原子、アクリロイル基、エポキシ基、アクリロイル基および/またはエポキシ基を有してもよい炭素数が1〜12のアルキル基、炭素数が1〜12のヒドロキシアルキル基、炭素数が1〜12のアルキルエーテル基を示す。]
【0020】
上記一般式(1)において、R1〜R6で表されるアクリロイル基および/またはエポキシ基を有してもよい炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、グリシジル基などが挙げられる。上記一般式(1)において、R1〜R6で表される炭素数1〜12のヒドロキシアルキル基としては、例えば、メチロール基、エチロール基、プロピロール基、ブチロール基、ペンチロール基、ヘキシロール基、ヘプチロール基、オクチロール基、ノニロール基、デカノール基、ウンデカノール基、ドデカノール基などが挙げられる。上記一般式(1)において、R1〜R6で表される炭素数1〜12のアルキルエーテル基としては、例えば、メチルエーテル基、エチルエーテル基、プロピルエーテル基、ブチルエーテル基、ペンチルエーテル基、ヘキシルエーテル基、ヘプシルエーテル基、オクチルエーテル基、ノニルエーテル基、デシルエーテル基、ウンデシルエーテル基、ドデシルエーテル基などが挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)で表されるメラミンもしくはその誘導体の具体例としては、例えば、メラミン;トリメチルメラミン、トリエチルメラミンなどのアルキルメラミン;メチロールメラミン、エチロールメラミンなどのヒドロキシアルキルメラミン;メチルエーテルメラミン、エチルエーテルメラミンなどのアルキルエーテルメラミン;メラミントリアクリレートなどのアクリル変性メラミン;トリスグリシジルメラミンなどのエポキシ変性メラミンなどが挙げられる。これらのメラミンもしくはその誘導体は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、メチロールメラミン、エチロールメラミンなどのヒドロキシアルキルメラミン;エチルエーテルメラミンなどのアルキルエーテルメラミンが好ましい。特に、トリアジン環が架橋された網目構造を構成し得るメチロールメラミン、メチルエーテルメラミンが好適である。
【0022】
前記メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、メチロールメラミン、メチルエーテルメラミン、アクリル変性メラミン、エポキシ変性メラミンおよび/またはメラミン樹脂プレポリマーから得られるものが挙げられる。前記メラミン樹脂は、種々の官能基が導入されているものも使用でき、例えば、アミノ基含有メラミン樹脂、イミノ基含有メラミン樹脂、メチロール基含有メラミン樹脂、ヒドロキシアルキル基含有メラミン樹脂、アルキルエーテル基含有メラミン樹脂、アクリロイル基含有メラミン樹脂、エポキシ基含有メラミン樹脂なども使用することができ、さらにこれらの官能基がアルキル基で変性されたアルキル化メラミン樹脂も使用できる。なお、メラミン樹脂には、メラミン樹脂の前駆体であるメラミン樹脂プレポリマーも含まれる。
【0023】
前記窒素含有材料の具体名を商品名で例示すると、例えば、三和ケミカル社製の「ニカラックMW−30M」、「ニカラックMW−30」、「ニカラックMX−45」、「ニカラックMX−302」などのメラミン誘導体;レック社製の「激落ち(登録商標)ダブルキング」などのメラミン樹脂;サンプラテック社製の「ウレタン」などのウレタン樹脂;サンプラテック社製の「ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)」などのニトリル樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、窒素含有材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、窒素を含有しない化合物または窒素を含有しない樹脂を含んでもよい。
【0025】
前記窒素含有材料の窒素含有量は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。窒素含有量が4質量%以上であれば、メソ細孔を有し、且つ、高比表面積を有するアルカリ賦活炭の作製が容易となり、90質量%以下であれば、メソ細孔を有し、且つ、高比表面積を有するアルカリ賦活炭を、高賦活収率で作製することができる。
【0026】
本発明において、前記窒素含有材料をそのまま用いてもよいが、前記窒素含有材料を炭化処理して得られる窒素含有材料の炭化物(以下、「窒素含有炭化物」ということがある。)を用いることが好ましい。窒素含有材料の炭化処理方法については、後述する。
【0027】
前記窒素含有炭化物を用いる場合、当該窒素含有炭化物の窒素含有量は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。窒素含有炭化物の窒素含有量が4質量%以上であれば、メソ細孔を有し、且つ、高比表面積を有するアルカリ賦活炭の作製が容易となり、50質量%以下であれば、メソ細孔を有し、且つ、高比表面積を有するアルカリ賦活炭を、高賦活収率で作製することができる。
【0028】
本発明で採用するアルカリ賦活について説明する。
【0029】
アルカリ賦活とは、前記窒素含有材料または窒素含有炭化物と、アルカリ賦活剤とを混合し、加熱することにより賦活処理を行う賦活方法である。ここで、「賦活処理」とは、窒素含有材料に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。
【0030】
アルカリ賦活に使用されるアルカリ賦活剤としては、アルカリ金属化合物が好ましい。前記アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩などが挙げられる。これらのアルカリ賦活剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水酸化カリウムが好適である。
【0031】
前記アルカリ賦活剤の使用量は、賦活される窒素含有材料または窒素含有炭化物とアルカリ賦活剤との質量比(アルカリ賦活剤/窒素含有材料または窒素含有炭化物)を、1以上とすることが好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2.0以上であり、4.5以下とすることが好ましく、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。
【0032】
また、アルカリ賦活剤を添加する際、窒素含有材料または窒素含有炭化物との混合を十分とするために、アルカリ賦活剤を水溶液として使用しても良い。このときの水の使用量は、アルカリ賦活剤の0.05質量倍〜10質量倍が好ましい。なお、アルカリ賦活剤を水溶液として使用する場合には、賦活処理のための加熱を行う前に、水分の突沸防止のための水分除去を目的として、賦活処理における加熱温度よりも低温の加熱を行なうことが好ましい。
【0033】
賦活処理を行う際の加熱温度は600℃以上が好ましく、より好ましくは650℃以上であり、950℃以下が好ましく、より好ましくは900℃以下である。また、賦活処理を行う際の加熱時間は0.1時間以上が好ましく、より好ましくは1.5時間以上であり、3.5時間以下が好ましく、より好ましくは3時間以下である。なお、加熱時の雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0034】
本発明のアルカリ賦活炭の比表面積は2000m2/g以上が好ましく、より好ましくは2100m2/g以上であり、3500m2/g以下が好ましく、より好ましくは3300m2/g以下である。ここで、本発明において比表面積とは、多孔質炭素の窒素吸着等温線を測定するBET法により求められる値である。
【0035】
本発明のアルカリ賦活炭の全細孔容積は1.0cm3/g以上が好ましく、より好ましくは1.5cm3/g以上であり、3.0cm3/g以下が好ましく、より好ましくは2.8cm3/g以下である。ここで、本発明において全細孔容積とは、相対圧P/P0(P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、P0:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧)が0.93までの窒素吸着量を測定するBET法により求められる値である。
【0036】
本発明のアルカリ賦活炭の平均細孔径は2.0nm以上が好ましく、より好ましくは2.1nm以上であり、4.0nm以下が好ましく、より好ましくは3.5nm以下である。ここで、本発明において平均細孔径とは、アルカリ賦活炭のBET法により求められる比表面積と、BET法により求められる全細孔容積とを用いて、細孔の形状をシリンダー状と仮定して算出される値であり、下記式(1)で求めることができる。
【0037】
【数1】

【0038】
本発明のアルカリ賦活炭の窒素含有量は、0.8質量%以上が好ましく、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。アルカリ賦活炭の窒素含有量が0.8質量%以上であれば、アルカリ賦活炭の表面の親水性化が可能となり、電極材料としてアルカリ賦活炭を用いた電気二重層キャパシタの静電容量を向上させることができ、50質量%以下であれば、アルカリ賦活炭の熱的な安定性を向上させることができる。
【0039】
なお、本発明のアルカリ賦活炭の比表面積、全細孔容積、平均細孔径などは、原料に用いる窒素含有材料、アルカリ賦活の加熱条件などを適宜選択することによって、調整することができる。
【0040】
次に、本発明のアルカリ賦活炭の製造方法について説明する。
【0041】
本発明のアルカリ賦活炭の製造方法は、窒素含有材料とアルカリ賦活剤との質量比(アルカリ賦活剤/窒素含有材料)を1〜4.5の範囲で混合し、得られた混合物を600℃〜950℃で加熱してアルカリ賦活することを特徴とする。なお、アルカリ賦活は前述した条件で行えばよい。
【0042】
また、本発明のアルカリ賦活炭の製造方法としては、アルカリ賦活する前に、窒素含有化合物を、500℃〜900℃で加熱して炭化することが好ましい。
【0043】
本発明では、前記窒素含有材料を不活性雰囲気下で加熱することにより炭化する。不活性雰囲気としては、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気が挙げられる。炭化処理を行う際の加熱温度は500℃以上が好ましく、より好ましくは600℃以上であり、900℃以下が好ましく、より好ましくは800℃以下である。また、炭化処理を行う際の加熱時間は0時間以上が好ましく、より好ましくは1.0時間以上であり、10時間以下が好ましく、より好ましくは5時間以下である。
【0044】
なお、窒素含有材料として、メチロールメラミンなどの加熱により架橋して樹脂となり得る窒素含有化合物を用いる場合には、前記炭化処理を行う前に、熱硬化処理を行ってもよい。熱硬化処理の加熱温度および加熱時間は、用いられる窒素含有化合物に応じて適宜調整すればよい。例えば、メチロールメラミンを用いる場合は、加熱温度を200℃以上400℃以下、より好ましくは250℃以上350℃以下とし、加熱時間を0.5時間以上10時間以下、より好ましくは1時間以上5時間以下とすることが好ましい。
【0045】
本発明のアルカリ賦活炭の製造方法は、前記炭化処理およびアルカリ賦活に加えて、洗浄処理、熱処理、粉砕処理を行ってもよい。
【0046】
洗浄処理は、アルカリ賦活後のアルカリ賦活炭を洗浄し、乾燥させる処理である。アルカリ賦活後のアルカリ賦活炭の表面には、アルカリ賦活剤として使用した水酸化アルカリ金属などが付着しているため、このような付着物を除去するために、アルカリ賦活炭の洗浄を行う。アルカリ賦活炭の洗浄としては、水洗、酸洗浄などを挙げることができる。
【0047】
水洗方法は、特に限定されないが、例えば、アルカリ賦活炭を水に投入し、必要に応じて撹拌、分散させた後、濾取することにより行うことが好ましい。前記撹拌、分散は、機械的撹拌、気体吹込み、超音波印加によって行うことができるが、加熱煮沸させることによっても行うことができる。水洗時の水温は、30℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。撹拌、分散時間は0.5時間以上が好ましく、より好ましくは1時間以上、さらに好ましくは1.5時間以上である。
【0048】
酸洗浄は、無機酸、有機酸などを含有する洗浄液を用いて行う洗浄である。酸洗浄を行うことによって、アルカリ賦活剤として使用した水酸化アルカリ金属などを効率よく除去できる。
【0049】
前記無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などが挙げられる。これらの無機酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。無機酸を使用する場合、洗浄液中の無機酸濃度は、0.5mol/L以上が好ましく、より好ましくは1.0mol/L以上、さらに好ましくは1.5mol/L以上であり、3.5mol/L以下が好ましく、より好ましくは3.0mol/L以下、さらに好ましくは2.5mol/L以下である。無機酸を用いた酸洗浄の方法は、特に限定されないが、例えば、メソポア活性炭と、無機酸を含有する洗浄液とを混合して、50℃〜100℃の温度で、30分間〜120分間撹拌することにより行うことが好ましい。
【0050】
前記有機酸としては、例えば、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酢酸、プロピオン酸などを挙げることができる。これらの有機酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記有機酸を含有する洗浄液中の有機酸の濃度は、1vol%以上が好ましく、より好ましくは2vol%以上、さらに好ましくは5vol%以上であり、100vol%以下が好ましく、より好ましくは80vol%、さらに好ましくは60vol%以下である。有機酸の濃度を1vol%以上とすることによって、有機酸による金属成分除去効果が得られるが、濃度が高くなりすぎると、製造コストが高くなるので好ましくない。有機酸を用いた酸洗浄の方法は、例えば、アルカリ賦活炭と、有機酸を含有する洗浄液とを混合して、得られた混合物を20℃〜80℃の温度で、1分間〜120分間撹拌することにより行うことが好ましい。洗浄後のアルカリ賦活炭は、50℃〜120℃で、0.5時間〜2.0時間乾燥させることが好ましい。
【0051】
本発明のアルカリ賦活炭の製造方法においては、洗浄処理として、酸洗浄と水洗とを行うことが好ましく、より好ましくは酸洗浄を行った後、水洗を複数回行う態様である。
【0052】
熱処理とは、アルカリ賦活後あるいは洗浄処理後のアルカリ賦活炭を、さらに不活性ガス雰囲気下で加熱する処理である。アルカリ賦活炭に熱処理を行うことにより、アルカリ賦活炭の表面の官能基量を調整することができる。
【0053】
前記熱処理としては、アルカリ賦活直後のアルカリ賦活炭を不活性ガス雰囲気下で熱処理する態様;アルカリ賦活後のアルカリ賦活炭を、酸洗浄および/または水洗した後、不活性ガス雰囲気下で熱処理する態様などを挙げることができる。前記不活性ガスとしては、例えば、アルゴン、窒素、ヘリウムなどを使用することができる。また、前記熱処理温度は、特に限定されないが、好ましくは400℃以上1000℃以下である。
【0054】
粉砕処理は、アルカリ賦活炭の粒径を調整するための粉砕を行う処理である。アルカリ賦活炭の粉砕方法は、特に限定されるものでなく、ディスクミル、ボールミル、ビーズミルなどを用いて行えばよい。粉砕後のアルカリ賦活炭の平均粒子径は15μm以下とすることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり、1μm以上とすることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。平均粒子径が前記範囲内であれば、電気二重層キャパシタ用電極材料としてアルカリ賦活炭を用いる場合に、電極における集電板と電極材料層との結着性が良くなり、実用的な結着性を保持するために必要となる電極材料層のバインダー量を低減できる。ここで、平均粒子径とは、水に分散させた試料を、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所製、「SALD(登録商標)−2000」)を用いて求められる体積基準のメジアン径である。
【0055】
本発明のアルカリ賦活炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料、活性炭、吸着剤として用いることができる。本発明のアルカリ賦活炭は、高比表面積、大径細孔を有するため、特に電気二重層キャパシタ用電極材料として好適である。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0057】
評価方法
1.比表面積、全細孔容積および平均細孔径
アルカリ賦活炭0.2gを200℃にて真空加熱した後、窒素吸着装置(島津製作所製、ASAP−2400)を用いてN2ガス吸着法による吸着等温線を求め、BET法により比表面積および全細孔容積を求めた。また、平均細孔径は、BET法により求められた比表面積および全細孔容積を用いて、上記式(1)に基づいて算出した。
【0058】
2.窒素含有量
元素分析装置(柳本製作所製、型式MT−700HCN)を用い、試料を燃焼させ、発生ガスを分析し、試料中の炭素、水素、窒素含有量を求めた。
【0059】
製造例1
窒素含有材料としてのメラミン樹脂(レック社製、商品名「激落ち(登録商標)ダブルキング」(窒素含有量;約60質量%))を、窒素雰囲気下、700℃で2時間加熱して炭化を行った。得られた窒素含有炭化物の窒素含有量は35質量%であった。窒素含有炭化物を20g秤量して、これにアルカリ賦活剤として質量比で2.5倍となるように水酸化カリウムを添加し、十分に混合した。次いで、窒素含有炭化物とアルカリ賦活剤との混合物を、窒素雰囲気下、800℃で2時間加熱しアルカリ賦活を行った。
【0060】
得られた賦活物を容器に入れ、そこに純水1.7Lと塩酸(濃度:35質量%)0.3Lを加え、100℃に加熱して2時間煮沸した後、賦活物を濾取することにより塩酸洗浄を行った。その後、塩酸洗浄を終えた賦活物に水2Lを加え、100℃に加熱して2時間煮沸した後、賦活物を濾取することにより温水洗浄を行った。同様の操作を繰り返して温水洗浄をさらに1回行った。塩酸洗浄1回と温水洗浄2回を経た賦活物を、110℃で1時間乾燥した。乾燥後の賦活物を、ディスクミルを用いて粉砕し、平均粒子径が8μmとなるように調整し、アルカリ賦活炭1を得た。
【0061】
得られたアルカリ賦活炭1は、比表面積2605m2/g、全細孔容積2.025cm3/g、平均細孔径2.64nmであった。結果を表1に示した。
【0062】
製造例2
窒素含有材料としてメチルエーテルメラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW−30M」(窒素含有量;約40質量%))を用いたこと以外は製造例1と同様にしてアルカリ賦活炭2を得た。得られた窒素含有炭化物の窒素含有量は24質量%であった。得られたアルカリ賦活炭2は、比表面積2452m2/g、全細孔容積1.671cm3/g、平均細孔径2.37nmであった。結果を表1に示した。
【0063】
製造例3
原料としてディレード石油コークス(テキサコ社製、商品名「ディレードコークス」、窒素含有量3.1〜3.3質量%)を用いたこと以外は製造例1と同様にしてアルカリ賦活炭3を得た。得られたアルカリ賦活炭3は、比表面積2815m2/g、全細孔容積1.423cm3/g、平均細孔径1.60nmであった。結果を表1に示した。
【0064】
製造例4
原料としてフェノール樹脂(住友ベークライト社製、商品名「スミライトレジン(登録商標)」、窒素含有量2.1質量%)を用いたこと以外は製造例1と同様にしてアルカリ賦活炭4を得た。得られたアルカリ賦活炭4は、比表面積2686m2/g、全細孔容積1.265cm3/g、平均細孔径1.43nmであった。結果を表1に示した。
【0065】
製造例5
窒素含有材料としてのメチルエーテルメラミン(三和ケミカル社製、商品名「ニカラックMW−30M」(窒素含有量;約40質量%))を、窒素雰囲気下、700℃で2時間加熱して炭化を行った。得られた窒素含有炭化物の窒素含有量は24質量%であった。窒素含有炭化物を30g秤量して、これを、窒素雰囲気下、800℃で2時間加熱し水蒸気賦活を行った。
【0066】
得られた賦活物を、110℃で1時間乾燥した。乾燥後の賦活物を、ディスクミルを用いて粉砕し、平均粒子径が6μmとなるように調整し、水蒸気賦活炭を得た。
【0067】
得られた水蒸気賦活炭は、比表面積594m2/g、全細孔容積0.280cm3/g、平均細孔径1.5nmであった。結果を表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
アルカリ賦活炭1,2は、窒素含有材料を、アルカリ賦活することにより得られたものある。これらのアルカリ賦活炭1,2は、比表面積が2605m2/g、2452m2/gと高比表面積であり、且つ、平均細孔径が2.64nm、2.37nmと大きかった。これに対して、原料としてディレード石油コークス、フェノール樹脂を用いたアルカリ賦活炭3,4では、比表面積は2815m2/g、2686m2/gと高比表面積であるが、平均細孔径が1.60nm、1.43nmと小さいものであった。
【0070】
また、水蒸気賦活炭は、原料として窒素含有材料を用いているが、賦活方法が水蒸気賦活であるため、比表面積、平均細孔径がいずれも小さいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、高比表面積および大径細孔を有するアルカリ賦活炭に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有材料を、アルカリ賦活して得られることを特徴とするアルカリ賦活炭。
【請求項2】
前記窒素含有材料を炭化し、得られた炭化物をアルカリ賦活して得られる請求項1に記載のアルカリ賦活炭。
【請求項3】
前記窒素含有材料の炭化物の窒素含有量が、4質量%〜50質量%である請求項1または2に記載のアルカリ賦活炭。
【請求項4】
前記窒素含有材料が、トリアジン化合物またはトリアジン樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルカリ賦活炭。
【請求項5】
前記窒素含有材料が、メラミンもしくはその誘導体、または、メラミン樹脂である請求項1〜4のいずれか一項に記載のアルカリ賦活炭。
【請求項6】
BET比表面積が2000m2/g〜3500m2/g、全細孔容積が1.0cm3/g〜3.0cm3/g、BJH法により求められる平均細孔径が2.0nm〜4.0nmである請求項1〜5のいずれか一項に記載のアルカリ賦活炭。
【請求項7】
窒素含有材料とアルカリ賦活剤との質量比(アルカリ賦活剤/窒素含有材料)を1〜4.5の範囲で混合し、得られた混合物を600℃〜950℃で加熱してアルカリ賦活することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルカリ賦活炭の製造方法。
【請求項8】
アルカリ賦活する前に、窒素含有化合物を、500℃〜900℃で加熱して炭化する請求項7に記載のアルカリ賦活炭の製造方法。

【公開番号】特開2009−269764(P2009−269764A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118791(P2008−118791)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000156961)関西熱化学株式会社 (117)
【Fターム(参考)】