説明

アルカリ電池用増粘剤

【課題】収納缶への注入性及びアルカリ電解液の保持性に優れたアルカリ電池用増粘剤、及びそれを用いた長期放電特性、耐振動衝撃性に優れるアルカリ電池を提供する。
【解決手段】下記エチレン性不飽和モノマー(a1)及び/又は下記エチレン性不飽和モノマー(a2)並びに下記エチレン性不飽和モノマー(a3)を必須構成単位とする重合体(A)を含有し、要件(1)及び(2)を満足するアルカリ電池用増粘剤。
エチレン性不飽和モノマー(a1):カルボキシル基、スルホ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン基を有するエチレン性不飽和モノマー。
エチレン性不飽和モノマー(a2):(a1)とアルカリ金属及び/又はオニウムのカチオンとの塩。
エチレン性不飽和モノマー(a3):(a1)と2価以上の金属イオン(b)との塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池用増粘剤、この増粘剤を含有してなるアルカリ電池負極組成物及びこの負極組成物を用いたアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルカリ電池は、負極、正極剤、負極と正極を隔てるセパレーター及びこれらを収納する収納缶から構成され、負極組成物としては、高濃度のアルカリ電解液(高濃度の水酸化カリウム水溶液、および必要により酸化亜鉛等を含有させたもの)と亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末等とを含有する組成物が使用されている。
ところが、該組成物は曳糸性が大きく取り扱いにくいこと、組成物中における亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末等が沈降しやすいこと、電池から液漏れしやすいこと等、種々の問題がある。そこでこれらを解決し、電池の生産性の向上を図ることを目的に、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)を架橋剤で不溶化した吸水性樹脂等の増粘剤を該組成物に加えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−34379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら吸水性樹脂等の増粘剤を加えた上記組成物は、過度な増粘により収納缶に注入しにくい、アルカリ電解液に起因する曳糸性が残る等の理由で、電池製造工程において生産効率が悪いという問題がある。また、該負極組成物のアルカリ電解液の保持性(アルカリ電解液が分離することなく該組成物中に安定して均一に存在する性質)が不十分である問題がある。さらに、負極組成物の亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末の分散安定性が不十分である問題がある。これらの問題を解決できる増粘剤及び負極組成物の開発が切望されている。
本発明の目的は、亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末の分散安定性が良好で、負極容器への注入性が良好で、曳糸性がなく、アルカリ電解液の保持性に優れた負極組成物及び長期放電特性に優れ(放電量が多く放電時間が長い)、耐振動衝撃性に優れるアルカリ電池を与えるアルカリ電池用増粘剤、この増粘剤を含有してなる負極組成物及びこの負極組成物を用いたアルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記エチレン性不飽和モノマー(a1)及び/又は下記エチレン性不飽和モノマー(a2)並びに下記エチレン性不飽和モノマー(a3)を必須構成単位とする重合体(A)を含有し、下記要件(1)及び(2)を満足するアルカリ電池用増粘剤。
エチレン性不飽和モノマー(a1):カルボキシル基、スルホ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン基を有するエチレン性不飽和モノマー。
エチレン性不飽和モノマー(a2):(a1)とアルカリ金属及び/又はオニウムのカチオンとの塩。
エチレン性不飽和モノマー(a3):(a1)と2価以上の金属イオン(b)との塩。
要件(1):下記数式(1)により求められる(A)中のモル比(Q)が0.0001〜1である。
モル比(Q)=Σ(Ta×Ua)/S (1)
[数式(1)中、Sは(a1)、(a2)及び(a3)のアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数、Taは(A)中の各金属イオン(b)のモル数、Uaは各金属イオン(b)のイオン価数を表す。]
要件(2):アルカリ電池用増粘剤と40重量%水酸化カリウム水溶液を重量比1/99で1時間撹拌混合し、40℃で24時間静置した後の混合液の25℃における粘度(V1)が50〜5,000mPa・sである。
【0006】
また、本発明のアルカリ電池負極組成物は、アルカリ電解液、亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末並びに本発明の増粘剤を含有してなるアルカリ電池負極組成物である。
さらに、本発明のアルカリ電池は、本発明の負極組成物を負極容器に充填してなる負極、正極剤、該負極と正極剤を隔てるセパレーターおよび集電棒が、これらの収納缶中に封入されてなるアルカリ電池である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の増粘剤を、アルカリ電池用増粘剤として使用した場合、下記の効果を奏する。
(1)亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末の分散安定性に優れる。
(2)収納缶への注入性が良好で、曳糸性がなく生産効率に優れる。
(3)アルカリ電解液の保持性に優れる。
(4)長期放電特性(放電量及び放電時間)及び耐振動衝撃性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[重合体(A)]
本発明における重合体(A)は、下記エチレン性不飽和モノマー(a1)及び/又は下記エチレン性不飽和モノマー(a2)並びに下記エチレン性不飽和モノマー(a3)を必須構成単位とするものである。
エチレン性不飽和モノマー(a1):カルボキシル基、スルホ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン基を有するエチレン性不飽和モノマー。
エチレン性不飽和モノマー(a2):(a1)とアルカリ金属及び/又はオニウムのカチオンとの塩。
エチレン性不飽和モノマー(a3):(a1)と2価以上の金属イオン(b)との塩。
【0009】
(a1)としては、特開2005−075982号公報に記載のアニオン性ビニルモノマー(カルボキシル基、スルホ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基を有するビニルモノマー)が挙げられる。
【0010】
カルボキシル基を有するビニルモノマー(a11)としては、例えば、不飽和カルボン酸〔モノカルボン酸[炭素数(以下Cと略記)3〜10、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸];不飽和ジカルボン酸(C4〜30、例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸);不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(C1〜8)エステル(C5〜30、例えばマレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸エチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエステル)等〕及びこれらの混合物等が挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。
【0011】
スルホ基を有するビニルモノマー(a12)としては、例えば、脂肪族及び芳香族ビニルスルホン酸[C2〜30、例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸];(メタ)アクリロキシアルキルスルホン酸[C4〜30、例えば(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸];アルキル(C3〜18)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[C10〜24、例えばプロピル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル]及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0012】
リン酸基を有するビニルモノマー(a13)としては、例えば、(メタ)アクリロキシアルカン(アルカンはC2〜6)ホスホン酸[2−(メタ)アクリロキシエタンホスホン酸等]及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0013】
これら(a1)のうち、アルカリ電池の放電特性等の観点から、C3〜30の不飽和カルボン酸が好ましく、特に好ましいのは不飽和モノカルボン酸、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸である。
【0014】
エチレン性不飽和モノマー(a2)は、(a1)とアルカリ金属及び/又はオニウムのカチオンとの塩である。
アルカリ金属のカチオンとしては、例えば、Na+、K+等が挙げられる。
オニウムとしては、特開2003−251178号公報、特開2005−95357号公報等に記載されているもの等が挙げられ、オニウムカチオンとしては第4級アンモニウムカチオン(I)、第3級ホスホニウムカチオン(II)、第4級ホスホニウムカチオン(III)、第3級オキソニウムカチオン(IV)、アルキルピリジニウムカチオン(V)、上記(I)を除くアンモニウムカチオン(VI){第1級、第2級、第3級アンモニウムカチオンが含まれ、例えば、C1〜10のアミン(メチルアミン、ジメチルアミン等)にプロトンが付加したもの等}等が挙げられる(以下カチオンという用語は省略)。
本発明においては、これらのカチオンを2種以上を使用してもいい。
上記カチオンのうち、アルカリ電池の放電特性等の観点から、アルカリ金属のカチオンが好ましく、さらに好ましくはNa+、K+である。
また、(a2)のうち、アルカリ電池の放電特性等の観点から、C3〜30の不飽和カルボン酸塩が好ましく、さらに好ましいのは不飽和モノカルボン酸塩、特に好ましいのは(メタ)アクリル酸塩、最も好ましいのは(メタ)アクリル酸ナトリウム及び(メタ)アクリル酸カリウムである。
【0015】
エチレン性不飽和モノマー(a3)は、(a1)と2価以上の金属イオン(b)との塩である。
2価以上の金属イオン(b)としては、例えば、2価の金属イオン[IIA族(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+等)、IIB族(Zn2+等)、IVB族(Ti2+等)、VIIB族(Mn2+等)、VIII族(Fe2+、Co2+等)等]、3価の金属イオン[IB族(Au3+等)、VA族(Bi3+等)、IIIA族(Al3+等)、VIII族(Fe3+等)等]、4価の金属イオン[IVB族(Ti4+等)、IIB族(Zn4+等)等]等が挙げられる。
これらの金属イオン(b)は、2種以上を併用してもいい。
これらのうち、アルカリ電池のガス発生低減の観点から、亜鉛よりイオン化傾向が大きいもの{例えば2価(IIA族、IVB族、VIIB族)の金属イオン及び3価(IIIA族)の金属イオン等}が好ましく、アルカリ電解液の保持性の観点から、さらに好ましいのはIIA族、IVB族及びIIIA族の金属イオン、とくに好ましいのはMg2+、Ca2+、Al3+及びTi2+である。
【0016】
エチレン性不飽和モノマー(a3)は、(a1)及び/又は(a2)中に、前記金属イオン(b)の水酸化物及び/又は塩を添加し、中和又は塩交換して作成することができる。また、(a1)及び/又は(a2)を含むモノマーの重合体中に上記金属イオン(b)の水酸化物及び/又は塩を添加し、中和又は塩交換して、(a1)及び/又は(a2)並びに(a3)を必須構成単位とする重合体(A)を作成することができる。
【0017】
前記中和に使用する金属イオン(b)の水酸化物としては、アルカリ電池のガス発生低減の観点から、2価(IIA族、IVB族、VIIB族)の金属イオンの水酸化物及び3価(IIIA族)の金属イオンの水酸化物が好ましく、さらに好ましくは水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化チタンである。
【0018】
前記塩交換に使用する金属イオン(b)の塩について、対アニオンとしては、例えば、ハロゲンイオン(F-、Cl-、Br-、I-等)、カルボキシラートアニオン{C1〜10のカルボキシル基含有化合物のイオン(−COO-)}、リン酸イオン{リン酸又はC1〜10のリン酸基含有化合物のイオン(−OPO32-)}及びスルホン酸イオン{スルホン酸又はC1〜10のスルホ基含有化合物のイオン(−SO3-)}等が挙げられる。
これらのアニオンのうち、放電性能の観点から、カルボキシラートアニオンが好ましい。
また、塩として、放電性能の観点から、C1〜10のカルボン酸塩が好ましい。
【0019】
前記(b)の水酸化物及び/又は塩としては、2種以上を使用してもいい。2種以上使用する場合、それぞれ1種以上使用してもよく、水酸化物を2種以上使用してもよく、塩化物を2種以上使用してもいい。
また、前記(b)の水酸化物及び塩のうち、アルカリ電池のガス発生低減の観点から、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び水酸化アルミニウムが好ましい。
【0020】
エチレン性不飽和モノマー1分子中に、アニオン基を複数有している場合には、アニオン基の少なくとも1つが前記金属イオン(b)との塩を形成している場合は、(a3)であるとする。また、(a3)でないもので、アニオン基の少なくとも1つが前記アルカリ金属及び/又はオニウムのカチオンとの塩を形成している場合は、(a2)であるとする。(a3)でも(a2)でもないものが(a1)である。
【0021】
重合体(A)中の(a1)の含有量(重量%)は、アルカリ電解液の保持性の観点から、(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量に基づいて、0.0000001〜99.999が好ましく、さらに好ましくは10〜99.995である。
重合体(A)中の(a2)の含有量(重量%)は、アルカリ電解液の保持性の観点から、(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量に基づいて、0.0000001〜99.999が好ましく、さらに好ましくは10〜99.995である。
重合体(A)中の(a3)の含有量(重量%)は、アルカリ電解液の保持性の観点から、(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量に基づいて、0.001〜99.9999999が好ましく、さらに好ましくは0.001〜99.9999998、次にさらに好ましくは0.005〜90、特に好ましくは0.005〜80である。
【0022】
重合体(A)は、さらにその他の水溶性エチレン性不飽和モノマー(a4)を構成単位に加えることができる。ここおよび以下において水溶性とは、25℃の水100gに100g以上溶解する性質を指す。
【0023】
水溶性エチレン性不飽和モノマー(a4)としては、(a1)〜(a3)と共重合可能なモノマーであれば特に限定は無いが、特開2005−075982号公報に記載のビニルモノマー[1,3−オキソ−2−オキサプロピレン(−CO−O−CO−)基、エステル基、シアノ基、リン酸エステル基、アミド基、アミノ基、アンモニウム基及びヒドロキシル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するビニルモノマー等]等が含まれる。
【0024】
1,3−オキソ−2−オキサプロピレン基を有するビニルモノマー(a41)としては、C4〜20の不飽和カルボン酸無水物が含まれ、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる
【0025】
エステル基を有するビニルモノマー(a42)としては、例えば、不飽和カルボン酸アルキル(アルキル基はC1〜50)エステル[C4〜60、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート];カルボン酸の不飽和アルコール(C2〜3)カルボン酸エステル[C4〜20、例えば酢酸ビニル、酢酸(メタ)アリル]等が挙げられる。
【0026】
シアノ基を有するビニルモノマー(a43)としては、C3〜15のものが含まれ、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン等が挙げられる。
【0027】
リン酸エステル基を有するビニルモノマー(a44)としては、例えば、(メタ)アクリロキシアルカン(アルカンはC2〜6)リン酸モノエステル[(メタ)アクリロキシエタンリン酸モノエステル等](メタ)アクリロキシアルカン(アルカンはC2〜6)のリン酸ジエステル[ビス(2−アクリロキシエタン)リン酸ジエステル等]等が挙げられる。
【0028】
アミド基を有するビニルモノマー(a45)としては、C3〜20のものが含まれ、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N−メチルアクリルアミド等];N,N−ジアルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、等];N−ヒドロキシアルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等];N,N−ジヒドロキシアルキル(C1〜8)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等];ビニルラクタム[N−ビニルピロリドン等]等が挙げられる。
【0029】
アミノ基を有するビニルモノマー(a46)としては、例えば、複素環式ビニル化合物(C7〜12、例えば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等);アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸アミド[C5〜18、例えばアミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド];ジアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸アミド[C7〜30、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド];ジヒドロキシアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸アミド[C7〜30、例えばジ(ヒドロキシメチル)アミノエチル(メタ)アクリル酸アミド];モルホリノアルキル(アルキルはC1〜8)不飽和カルボン酸アミド[C8〜20、例えばモルホリノエチル(メタ)アクリル酸アミド];アミノアルキル不飽和カルボン酸エステル[C5〜15、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート];ジアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸エステル[C6〜24、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルフマレート];ジヒドロキシアルキル(C1〜8)アミノアルキル(C2〜10)不飽和カルボン酸エステル[C7〜24、例えばジ(ヒドロキシメチル)アミノエチル(メタ)アクリレート];モルホリノアルキル(アルキルはC1〜8)不飽和カルボン酸エステル[C8〜20、例えばモルホリノエチル(メタ)アクリレート];ジアリルアミン等が挙げられる。
【0030】
アンモニウム基を有するビニルモノマー(a47)としては、前記のアミノ基を有するビニルモノマーを酸[無機酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、過臭素酸等)、有機酸(C1〜4、例えばギ酸、酢酸、プロパン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸)等]で中和した中和塩;(a14)をアルキル化剤[ハロゲン化アルキル(C1〜8、例えばメチルクロライド、ベンジルクロライド)、アルキル硫酸(C2〜8、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸)、アルキル炭酸(C2〜8、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート)、アルキレンオキシド(C2〜3、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド)]等を用いて4級化した第4級アンモニウム塩[トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレート・クロライド、メチルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリレート・メトサルフェート、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミド・クロライド及びジエチルベンジルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミド・クロライド等]等が挙げられる。
【0031】
ヒドロキシル基を有するビニルモノマー(a48)としては、例えば、1価エチレン性不飽和アルコール[C3〜6、例えば(メタ)アリルアルコール];2〜6価のポリオール{C2〜20、例えばアルキレングリコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール(以下それぞれEG、PG、TEGと略記)等]、グリセリン(以下GRと略記)、ポリオキシアルキレン(アルキレンはC2〜4)グリコール〔分子量106以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]2,000以下〕}の(メタ)アクリレート[TEG(メタ)アクリレート、ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)(ランダム及び/又はブロック)グリコール(Mn200〜2,000)モノ(メタ)アリルエーテル等]及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
重合体(A)において、重合体(A)を構成する(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量と(a4)の重量との重量比[{(a1)+(a2)+(a3)}/(a4)]は、アルカリ電池の放電特性及び重合体(A)の吸収性能の観点から好ましくは75/25〜100/0、さらに好ましくは85/15〜100/0、とくに好ましくは90/10〜100/0である。
【0033】
重合体(A)は、さらに共重合可能なその他のビニルモノマー(a5)を構成単位に加えることができる。(a5)としては特に限定はなく公知{特許第3648553号公報、特開2003−165883号公報、特開2005−75982号公報及び特開2005−95759号公報等}の疎水性ビニルモノマー等が使用でき、下記の(i)〜(iii)のビニルモノマー等が使用できる。
(i)炭素数8〜30の芳香族エチレン性モノマー
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン及びヒドロキシスチレン等のスチレン、並びにビニルナフタレン及びジクロルスチレン等のスチレンのハロゲン置換体等。
(ii)炭素数2〜20の脂肪族エチレンモノマー
アルケン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等];並びにアルカジエン[ブタジエン及びイソプレン等]等。
(iii)炭素数5〜15の脂環式エチレンモノマー
モノエチレン性不飽和モノマー[ピネン、リモネン及びインデン等];並びにポリエチレン性ビニル重合性モノマー[シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等]等。
【0034】
重合体(A)において、(a5)の含有量(モル%)は、反応性の観点から、(a1)、(a2)、(a3)、(a4)及び(a5)の合計モル数に基づいて、0〜5モル%が好ましく、さらに好ましくは0〜3モル%、次に好ましくは0〜2モル%、特に好ましくは0〜1.5モル%である。
【0035】
重合体(A)は、上記(a1)及び/又は(a2)並びに(a3)を必須構成単位とするが、(A)を架橋重合体とする場合は、さらに内部架橋剤(c1)を構成単位に加えることができる。(c1)としては、アルカリ性条件下で加水分解される加水分解性架橋剤(c11)、及び同条件下で加水分解されない非加水分解性架橋剤(c12)が挙げられる。
【0036】
加水分解性架橋剤(c11)としては、分子内に加水分解性結合(アミド結合、エステル結合等)を有する架橋剤{2〜10価のエチレン性不飽和結合を有する共重合性の架橋剤〔C4〜30、例えば2価[N,N’−メチレンビスアクリルアミド、EGジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)ジ(メタ)アクリレート等]、3価[TMPトリ(メタ)アクリレート、PEトリ(メタ)アクリレート等]、4価[PEテトラ(メタ)アクリレート等]、及び2価又はそれ以上のポリGR(重合度3〜13)ポリアクリレート、及びこれらの2種又はそれ以上の混合物〕;架橋して形成される結合(エステル結合、アミド結合等)が加水分解性である架橋剤〔エステル形成性の反応型架橋剤[C2〜100、例えば多価(2〜3又はそれ以上)グリシジル化合物(EGジグリシジルエーテル等)、多価(2〜3)イソシアネート(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等)、多価(2〜3)アミン(エチレンジアミン等)、多価(2〜3又はそれ以上)アルコール(GR等)];及びこれらの2種又はそれ以上の混合物等が挙げられる。該反応型架橋剤は、(a1)等が有するカルボキシル基と反応してエステル結合又はアミド結合が形成される。
【0037】
非加水分解性架橋剤(c12)は、加水分解性結合を分子内に有さず、また、架橋反応により加水分解性結合を生成しない架橋剤である。
(c12)としては、2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(c121)[C2〜100、例えばEGジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)ジビニルエーテル(重合度2〜5)、ビスフェノールAジビニルエーテル、PEトリビニルエーテル、ソルビトールトリビニルエーテル及びポリGR(重合度3〜13)ポリビニルエーテル等]、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(c122)、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0038】
2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(c122)としては、分子内にアリル基を2個有しかつヒドロキシル基を含まない架橋剤(c1221)、分子内にアリル基を2個有しかつヒドロキシル基を1〜5個有する架橋剤(c1222)、分子内にアリル基を3〜10個有しかつヒドロキシル基を有さない架橋剤(c1223)、分子内にアリル基が3〜10個有しかつヒドロキシル基を1〜3個有する架橋剤(c1224)等が挙げられる。分子内にヒドロキシル基を有する場合は、(a1)及び/又は(a2)並びに(a3)[とくに(メタ)アクリル酸(塩)]との相溶性が良く、均一な架橋により増粘剤の安定性が向上し、増粘剤を含むアルカリ電解液の粘度の長期安定性がさらに優れることとなる。
【0039】
分子内にアリル基を2個有しかつヒドロキシル基を含まない架橋剤(c1221)としては、ジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(C2〜5)グリコールジアリルエーテル、及びPEG〔重量平均分子量[以下Mwと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]100〜4,000)〕ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を2個有しかつヒドロキシル基を1〜5個有する架橋剤(c1222)としては、GRジアリルエーテル、TMPジアリルエーテル、PEジアリルエーテル、ポリGR(重合度2〜5)ジアリルエーテル等が挙げられる。
【0040】
分子内にアリル基を3〜10個有しかつヒドロキシル基を有さない架橋剤(c1223)としては、TMPトリアリルエーテル、GRトリアリルエーテル、PEテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
分子内にアリル基が3〜10個有しかつヒドロキシル基を1〜3個有する架橋剤(c1224)としては、PEトリアリルエーテル、ジGRトリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル、ポリGR(重合度3〜13)ポリアリルエーテル等が挙げられる。
これらの(c12)のうち反応性及びエチレン性不飽和モノマー(a1)〜(a3)との相溶性の観点から好ましいのは(c122)、さらに好ましいのはTMPジアリルエーテル、PEジ−及びトリ−アリルエーテルである。
【0041】
これらの内部架橋剤(c1)のうち、アルカリ電解液の保持性の観点から好ましいのは、(c11)、(c12)、及びこれらの混合物である。
【0042】
(c1)の割合は、(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量に基づいて、アルカリ電解液の保持性及びアルカリ電池の長期放電特性の観点から、好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.03〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
また、(c1)の割合は、エチレン性不飽和モノマー(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の合計重量に基づいて、アルカリ電解液の保持性及びアルカリ電池の長期放電特性の観点から、好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.03〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0043】
本発明における重合体(A)の製造方法について以下に説明する。
(A)の製造方法としては公知のものを含む種々の重合方法、例えば溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合及び乳化重合の各重合方法が適用できる。
これらの重合方法のうち、アルカリ電池の長期放電特性及び耐振動衝撃性に寄与する増粘剤を得るとの観点から好ましいのは水溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合、乳化重合、さらに好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合、乳化重合、特に好ましいのは水溶液重合、逆相懸濁重合である。これらの重合には、公知の重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は溶媒等が使用できる。
【0044】
構成成分である前記のエチレン性不飽和モノマー{(a1)、(a2)、(a3)、(a4)及び(a5)等}や内部架橋剤(c1)を加えてなるモノマー成分を水溶液重合法又は逆相懸濁重合法で重合させる方法は、通常の方法でよく、例えばラジカル重合開始剤を用いて重合させる方法、放射線、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射して重合させる方法が挙げられる。
【0045】
ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物[アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2、2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等]、レドックス開始剤[還元剤(アルカリ金属塩の(重)亜硫酸塩、(重)亜硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸等)と過酸化物(アルカリ金属塩の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等)との組み合わせ等]、及びこれらの2種類以上の併用等が挙げられる。
【0046】
重合温度は使用するラジカル重合開始剤の種類等によっても異なるが、重合速度及び重合度の観点から、好ましくは−10〜100℃、さらに好ましくは−5〜80℃である。
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの合計重量に基づいて、重合度の観点から、好ましくは0.000001〜3重量%、さらに好ましくは0.000001〜0.5重量%である。
重合時の溶存酸素量は、ラジカル重合開始剤の使用量等にもよるが、高重合度の観点から、好ましくは0〜2ppm、さらに好ましくは0〜0.5ppmである。
【0047】
水溶液重合の場合、モノマー濃度(重量%)は、他の重合条件によっても種々異なるが、重合の反応速度及び重合温度のコントロール性、モノマーの自己架橋抑制、重合度の向上、オリゴマー成分の生成抑制の観点から、好ましくは10〜40%、さらに好ましくは10〜30%である。
【0048】
重合モノマーとして(メタ)アクリル酸を用いる場合、その中和度については、必要により加える所定量の内部架橋剤(c1)がモノマー水溶液に完全に溶解できるのであれば特に限定はないが、(メタ)アクリル酸の重合度及び(c1)の溶解性の観点等から、(メタ)アクリル酸は中和度0〜30モル%で重合させ、必要により重合後にさらに中和するのが好ましく、未中和の状態で重合した後に必要により重合後に中和するのがさらに好ましい。
【0049】
逆相懸濁重合法は、ヘキサン、トルエン、キシレン等の疎水性有機溶媒中でモノマーの水溶液を、分散剤の存在下、懸濁、分散させて重合させる重合法であり、この重合法におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度(重量%)は、前記の水溶液重合と同様の観点から好ましくは10〜50%、さらに好ましくは10〜40%である。
【0050】
逆相懸濁重合法では、重合時に分散剤を使用してもよい。分散剤としては、グリフィンのHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が3〜8の界面活性剤[ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタンモノステアリン酸エステル等)、GR脂肪酸エステル(GRモノステアリン酸エステル等)、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ジステアリン酸エステル等)等];分子内に親水性基を有し、かつ、モノマー水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤(親水性基の含有割合0.1〜20重量%、重量平均分子量1,000〜1,000,000)[エチレン/アクリル酸共重合体のマレイン化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体のマレイン化物、スチレンスルホン酸(塩)/スチレン共重合体等]等が挙げられる。
これらのうち、重合体(A)の粒子径のコントロールの観点から好ましいのは高分子分散剤である。
なお、HLBは値が高いほど親水性が高いことを意味し、下記計算式で計算される数値である(藤本武彦著、界面活性剤入門、142頁、三洋化成工業株式会社発行)。
HLB=20×{親水基の分子量/界面活性剤の分子量}
【0051】
分散剤の添加量は、アルカリ電池の長期放電特性の観点から、疎水性有機溶媒の重量に基づいて好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。
逆相懸濁重合におけるモノマー水溶液と疎水性有機溶媒との重量比(W/O比)は、重合体(A)の粒子径のコントロールの観点から、好ましくは0.1〜2.0、さらに好ましくは0.3〜1.0である。
【0052】
重合体(A)の製造において、内部架橋剤(c1)を使用することなく重合体を製造した場合のポリマーの重量平均分子量[測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、アルカリ電池の放電特性及び重合体(A)の吸収性能の観点から、好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜1,000,000である。
重量平均分子量が5,000以上となる重合条件において、重合モノマーとして内部架橋剤(c1)を併用した場合は、得られる重合体(A)を含有する本発明の増粘剤をアルカリ電池に用いると、アルカリ電解液の粘度低下の防止を図ることができる。
【0053】
水溶液重合、逆相懸濁重合等で製造された重合体(A)は、通常水を含むゲル(含水ゲル)として得られる。含水ゲルは、通常乾燥粒子とした後に増粘剤として使用される。
含水ゲルの乾燥方法としては、水溶液重合の場合、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機を用いて、ゲルを適度な大きさに細分化(細分化のレベルは通常0.5〜20mm角程度)あるいはヌードル化し、必要によりアルカリ金属水酸化物等を添加して含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、50〜150℃の熱風を強制的に通気させる乾燥法)や通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気、循環させて乾燥させたり、ロータリーキルンの様な機械でさらにゲルを細分化しながら乾燥させる乾燥方法)等の方法が挙げられる。これらのうち、短時間での効率的な乾燥の観点から透気乾燥が好ましい。
一方、逆相懸濁重合の場合の含水ゲルの乾燥方法としては、得られた含水ゲルと疎水性有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度100〜50,000Pa程度)又は通気乾燥させる方法が一般的である。
【0054】
本願発明において、重合体(A)を製造する際には、(a1)及び/又は(a2)のモノマー中に(b)の水酸化物及び/又は塩を添加してモノマー(a3)を含むモノマーを製造してから重合してもよいし、(a1)及び/又は(a2)を含むモノマーを重合して重合体(A’)の含水ゲルを製造した後、重合体(A’)の含水ゲルを中和する工程や、重合体(A’)の含水ゲルの乾燥後に(b)の水酸化物及び/又は塩を添加してもよい。
これらのうち、アルカリ電解液の保持性の観点から好ましいのは、(b)の水酸化物及び/又は塩をモノマー中へ添加する、及び/又は(b)の水酸化物及び/又は塩を重合体(A’)の含水ゲルの中和工程で添加することであり、さらに好ましいのは含水ゲルの中和工程での添加である。
【0055】
得られた重合体(A)中の残存モノマー量は、アルカリ電池の放電特性の観点から好ましくは2,000ppm以下、さらに好ましくは1,000ppm以下、とくに好ましくは500ppm以下である。
【0056】
[アルカリ電池用増粘剤]
本発明のアルカリ電池用増粘剤は、前記重合体(A)を含有してなり、下記の要件(1)及び(2)を満足する。
要件(1):下記数式(1)により求められる(A)中のモル比(Q)が0.0001〜1である。
モル比(Q)=Σ(Ta×Ua)/S (1)
[数式(1)中、Sは(a1)、(a2)及び(a3)のアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数、Taは(A)中の各金属イオン(b)のモル数、Uaは各金属イオン(b)のイオン価数を表す。]
要件(2):アルカリ電池用増粘剤と40重量%水酸化カリウム水溶液を重量比1/99で均一になるまで撹拌混合し、40℃で24時間静置した後の混合液の25℃における粘度(V1)が50〜5,000mPa・sである。
【0057】
上記要件(1)のモル比(Q)は、好ましくは0.0008〜1、さらに好ましくは0.01〜0.99999、次にさらに好ましくは0.02〜0.999、特に好ましくは0.05〜0.999、最も好ましくは0.09〜0.99である。モル比(Q)が0.0001未満ではアルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性が悪くなる。
【0058】
本発明のアルカリ電池用増粘剤は、重合体(A)を含むが、さらに金属イオン(b)の水酸化物(D1)及び/又は塩(D2)を有していてもいい。
金属イオン(b)の水酸化物(D1)及び/又は塩(D2)は、前述の中和又は塩交換に使用するものとして例挙したものが使用できる。
アルカリ電池用増粘剤中の金属イオン(b)の水酸化物(D1)及び/又は塩(D2)の含有量(重量%)は、アルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性の観点から、増粘剤の重量に基づいて、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜30重量%である。
アルカリ電池用増粘剤中の重合体(A)の含有量(重量%)は、アルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性の観点から、50〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは70〜100重量%である。
【0059】
また、本発明のアルカリ電池用増粘剤は、下記数式(2)により求められる増粘剤中の金属イオン(b)と重合体(A)中のアニオン基とのモル比(R)が、アルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性の観点から、0.0001〜4であることが好ましく、さらに好ましくは0.001〜2、特に好ましくは0.01〜1である。
モル比(R)=Σ(Oa×Pa)/S (2)
[数式(2)中、Sは(A)中の(a1)、(a2)及び(a3)のアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数、Oaは増粘剤中の各金属イオン(b)のモル数、Paは各金属イオン(b)のイオン価数を表す。]
【0060】
また、アルカリ電池用増粘剤中の2価以上の金属イオン(b)[重合体(A)中の金属イオン(b)と(D){(D1)及び(D2)}が含有する金属との合計量]の合計金属元素量(B)(重量%)は、アルカリ電池用増粘剤の重量に基づいて0.0001〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは0.02〜75重量%、次にさらに好ましくは0.04〜50重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。(B)が0.01重量%以上であることでアルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性が良好となり、80重量%以下であることで後述する負極組成物の負極容器への注入性が良好となる。
【0061】
(B)の測定は、例えば、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて増粘剤の元素含有量の分析を行うことで測定することができる。測定方法はJIS K 0119−2008に準ずるが、具体的には以下の通りである。
【0062】
<蛍光X線分析法>
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「UniQuant 5」(PANalytical社製)を用いる。尚、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は27mmとする
【0063】
測定サンプルとしては、専用のプレス用塩化ビニルの中に増粘剤約3gを入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRIQUETING MACHINE MP−35」(島津製作所社製)を用いて、20トンで、10秒間加圧し、厚さ約2.5mm、直径(外径)約40mmに成型したペレットを用いる。
測定サンプルの粒子径が粗い場合は成形が困難であるため、粉砕器「VIBRATING SAMPLE MILL T1−100」(C・M・T CO. LTD.)を用いて粉砕した後、プレス用塩化ビニルの中に粉砕した増粘剤を入れ成形を行う。
【0064】
上記条件で測定を行い、各元素量(重量%)を算出する。この値から、下記式により合計金属元素量(B)(重量%)を算出する。なお、(B)の測定に用いる測定サンプルは、順風乾燥機中で105℃で乾燥し、恒量になったサンプルを使用する。
合計金属元素量(B)(重量%)=Σαb
αb:増粘剤中の2価以上の金属イオンとなり得る各金属の元素量(重量%)の値
【0065】
また、上記要件(2)に示されるとおり、本発明のアルカリ電池用増粘剤と40重量%水酸化カリウム水溶液を重量比1/99で1時間撹拌混合し、40℃で24時間静置した後の混合液の25℃における粘度(V1)(mPa・s)は50〜5,000であり、好ましくは80〜2,500、さらに好ましくは100〜1,500である。
該粘度が50未満ではアルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性が悪くなり、5,000を超えると後述する負極組成物の負極容器への注入性が悪くなる。
ここにおいて、粘度は、混合液を再撹拌して温度を25℃に調整後、B型粘度計[例えば型番「DVL−B II」、TOKIMEC(株)製]を用いた測定開始から5分経過後の値である。
粘度(V1)は、非加水分解性架橋剤(c12)の量、増粘剤の粒子径、ラジカル重合開始剤の量を調整することでコントロールできる。非加水分解性架橋剤(c12)の量を減少させる、増粘剤が粉末である場合は増粘剤の粒子径を小さくする、又は重合体製造時のラジカル重合開始剤の量を減少させることで粘度(V1)は増加する。
【0066】
本発明のアルカリ電池用増粘剤の、40重量%水酸化カリウム水溶液に対する吸収倍率(K)とイオン交換水に対する吸収倍率(H)との比は、アルカリ電解液の保持性、電池の長期放電特性及び後述する負極組成物の負極容器への注入性の観点から好ましくは0.01〜200、さらに好ましくは0.1〜100、とくに好ましくは0.4〜80である。ここにおいて吸収倍率とは、下記計算式で求められる値である。

吸収倍率=(吸収対象吸収後の増粘剤の重量)/(吸収対象吸収前の増粘剤の重量)
【0067】
40重量%水酸化カリウム水溶液及びイオン交換水に対する各吸収倍率は、具体的には次の方法で測定される。
(1)40重量%水酸化カリウム水溶液に対する吸収倍率の測定法
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網で作成したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に、篩にて106μm以下の粒子をカットした測定試料(増粘剤)1.00gを入れたものを、40重量%水酸化カリウム水溶液1,000ml中に無撹拌下、25℃で24時間浸漬した後、該ティーバッグを取り出し、25℃、50%RHの雰囲気中に30分間吊るして水切りを行ったティーバッグの重量(W4)を測定する。
測定試料(増粘剤)を用いないこと以外は上記と同様にして、ティーバッグの重量(W5)を測定する。
次の計算式から40重量%水酸化カリウム水溶液に対する吸収倍率(g/g)を求める。

40重量%水酸化カリウム水溶液に対する吸収倍率(K)=[(W4)−(W5)]/1.00
40重量%水酸化カリウム水溶液に対する吸収倍率(K)は非加水分解性架橋剤(c12)の量を調整することでコントロールできる。非加水分解性架橋剤(c12)の量を増加させると(K)が減少し、非加水分解性架橋剤(c12)の量を減少させると(K)が増加する。
【0068】
(2)イオン交換水に対する吸収倍率の測定法
測定試料1.00gを0.10g、40重量%水酸化カリウム水溶液をイオン交換水、24時間浸漬を1時間浸漬に代えたこと以外は前記(1)と同様にして、ティーバッグの重量(W6)を測定する。
測定試料を用いないこと以外は上記と同様にして、ティーバッグの重量(W7)を測定する。
次の計算式からイオン交換水に対する吸収倍率(g/g)を求める。

イオン交換水に対する吸収倍率(H)=[(W6)−(W7)]/0.10
イオン交換水に対する吸収倍率(H)は内部架橋剤量(c1)及び表面架橋剤の量で調整できる。架橋剤量が増加すると(H)が減少し、架橋剤量が減少すると(H)が増加する。
また、増粘剤中に含まれる金属イオン(b)の量を調整してコントロールすることもできる。金属イオン(b)の量が減少すると(H)が増加し、(b)の量が増加すると(H)が減少する。
また、重合体(A)中のエチレン性不飽和モノマー(a2)の割合が増加すると(H)が増加し、(a2)の割合が減少すると(H)が減少する。
【0069】
本発明のアルカリ電池用増粘剤の、40重量%水酸化カリウム水溶液に対する吸収倍率(K)とイオン交換水に対する吸収倍率(H)の比は、(K)/(H)から求めることができる。
吸収倍率の比{(K)/(H)}を上げるには、使用する架橋剤中の非加水分解性架橋剤(c12)の割合を減らす、増粘剤中に含まれる金属イオンの量を増やす、又は重合体(A)中に含まれる(a2)の割合を減らせばよい。
吸収倍率の比{(K)/(H)}を下げるには、使用する架橋剤中の非加水分解性架橋剤(c12)の割合を増やす、増粘剤中に含まれる金属イオン(b)を減らす、又は重合体(A)中に含まれる(a2)の割合を増やせばよい。
【0070】
以下、本発明のアルカリ電池用増粘剤の製造方法について記載する。
本発明の増粘剤は、前述の重合体(A)の製造方法により作成された重合体(A)をそのまま増粘剤としてもいい。また、重合体(A)は含水ゲルとして用いるよりも乾燥することが好ましい。
【0071】
含水ゲルの乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、効率的な乾燥及びポリマーの熱架橋抑制の観点から好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜130℃である。
含水ゲルの乾燥時間は、使用する乾燥機の機種及び乾燥温度等により異なるが、含水率低減及び工業上の観点から好ましくは5〜300分、さらに好ましくは5〜120分である。
【0072】
本発明の増粘剤中には金属イオン(b)の水酸化物(D1)及び/又は塩(D2)を含んでもいい。(D1)及び/又は(D2)を含む場合、重合体(A)製造時のモノマー中に混合してもよく、重合体(A)の含水ゲルに混合してもよく、(A)を乾燥後に混合してもよく、(A)を粉砕後に混合してもいい。
(D1)及び/又は(D2)を増粘剤中に均一存在させる観点から、重合体(A)の製造時のモノマー中に混合する、又は重合体(A)の含水ゲルに混合することが好ましい。
【0073】
増粘剤の形状としては、特に限定されないが、収納缶への注入性の観点から、粉末であることが好ましい。
粉末の形状としては、不定形破砕状、リン片状、パール状及び米粒状等が挙げられ、収納缶への注入性の観点から、不定形破砕状、パール状が好ましく、さらに好ましくは不定形破砕状である。
【0074】
増粘剤は、必要により粉砕して粉末化される。粉砕方法は、通常の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル、ACMパルペライザー等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。
【0075】
該粉末化された乾燥物は、必要により所望のスクリーンを備えたフルイ機(振動フルイ機、遠心フルイ機等)を用いて、所望の粒子径の乾燥粉末を採取することができる。
尚、本発明において、乾燥後の任意の段階で、磁気を利用した除鉄機を用いて混入した鉄等の金属粉末を除去するのが好ましい。しかし、除鉄機を用いてかなり精密に除鉄を行っても、除鉄機では磁性のない金属を除去するのは困難であり、また磁性のある金属に関しても、乾燥したポリマー粒子内部に含まれているものや乾燥粒子に付着しているものは除去できないので、初めからこれら金属が混入しないように、生産設備に関しても、十分に配慮することが望ましい。
【0076】
増粘剤が粉末である場合、粒子径は特に限定されないが、収納缶への注入性及びアルカリ電解液の保持性の観点から、乾燥物の重量平均粒子径が0.01〜500μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜200μmである。
【0077】
[アルカリ電池負極組成物]
本発明のアルカリ電池負極組成物は、アルカリ電解液、亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末、並びに前記増粘剤を含有してなる組成物である。
【0078】
アルカリ電解液は、金属水酸化物の水溶液である。金属水酸化物としては、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウム等)水酸化物、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)水酸化物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、アルカリ電池の放電特性の観点から好ましいのは水酸化カリウム水溶液である。
アルカリ電解液には、上記金属水酸化物の他に、アルカリ電池の放電特性、生産性の向上等を目的として必要により金属酸化物を含有させることができる。
金属酸化物としては、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウム等)酸化物、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)酸化物、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうちアルカリ電池の放電特性の観点から好ましいのはアルカリ金属酸化物である。
【0079】
アルカリ電解液中の金属水酸化物濃度(重量%)は、アルカリ電池の放電特性の観点から好ましくは20〜50%、さらに好ましくは25〜45%、とくに好ましくは30〜40%である。
【0080】
亜鉛粉末としては、亜鉛の形状はとくに限定されない。亜鉛粉末の体積平均粒子径は、アルカリ電解液への均一分散性及び後述の負極容器への充填性の観点から好ましくは0.1〜2,000μm、さらに好ましくは1〜1,000μm、とくに好ましくは10〜500μmである。
【0081】
亜鉛合金粉末に含まれる亜鉛以外の金属はとくに制限されないが、アルカリ電池の放電特性の観点から好ましいのはインジウム、ビスマス、アルミニウムである。
亜鉛合金粉末の形状はとくに限定されることはなく、体積平均粒子径及びその好ましい範囲は上記亜鉛粉末の場合と同様である。
【0082】
本発明のアルカリ電池負極組成物は、後述する負極組成物の負極容器への充填時の流動性の改善等を目的として、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要によりその他の添加剤を併用することができる。
その他の添加剤としては、(A)を除くゲル化剤、耐振動衝撃性向上剤、放電特性向上剤等が挙げられる。
【0083】
(A)を除くゲル化剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、天然ガム(グァーガム等)、架橋されていないポリ(メタ)アクリル酸(塩)、微架橋型のポリ(メタ)アクリル酸(塩)、架橋型のポリ(メタ)アクリル酸(塩)、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂等が挙げられる。これらのうちで、微粉末状の微架橋型のポリ(メタ)アクリル酸(塩)等は、負極組成物の負極容器への適度の注入性(流動性)の観点から好ましい。
【0084】
これらのゲル化剤の重量平均粒子径(μm)は、亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末(以下において亜鉛粉末と略記することがある。)の沈降防止及び負極組成物の負極容器への充填性の観点から好ましくは0.01〜1,000、さらに好ましくは0.1〜850、とくに好ましくは0.5〜500である。
【0085】
(A)を除くゲル化剤の添加量は、アルカリ電解液の重量に基づいて、該組成物の負極容器への充填性及びアルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは0.01〜3重量%である。
【0086】
その他のゲル化剤の添加方法としては、本発明の増粘剤とその他のゲル化剤とをあらかじめドライブレンドした後、アルカリ電解液等の他の負極組成物成分とを混合する方法;本発明の増粘剤を含む負極組成物作成とは別にその他のゲル化剤を後添加して混合する方法;アルカリ電解液とその他のゲル化剤を混合した後、本発明の増粘剤及び亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末を添加、混合する方法等、が挙げられる。
これらのうち、均一分散性の観点から好ましいのは本発明の増粘剤とその他のゲル化剤とをあらかじめドライブレンドした後、アルカリ電解液等の他の負極組成物成分とを混合する方法である。
【0087】
耐振動衝撃性向上剤としては、チタン、インジウム、スズ及びビスマスからなる群から選ばれる金属の酸化物、水酸化物及び硫化物等が挙げられる。
該耐振動衝撃性向上剤は、これを添加することによりアルカリ電池に衝撃が加わった際に負極において亜鉛粉末が沈降しアルカリ電解液が遊離するのを防止することができる。
耐振動衝撃性向上剤の添加量は、アルカリ電解液の重量に基づいて、アルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3.0重量%以下である。
【0088】
放電特性向上剤としては、二酸化珪素、珪酸カリウム等、亜鉛の針状結晶化を防止する特性を有する公知の化合物が挙げられる。
放電特性向上剤の添加量は、アルカリ電解液に対して、アルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0089】
アルカリ電池負極組成物の全重量に基づくアルカリ電解液の含有量はアルカリ電池の放電特性及びアルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは10〜99重量%、さらに好ましくは20〜97重量%である。
アルカリ電池負極組成物の全重量に基づく増粘剤の含有量はアルカリ電池の放電特性及びアルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは0.05〜9重量%、さらに好ましくは0.2〜3.5重量%である。
アルカリ電池負極組成物の全重量に基づく亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末の含有量はアルカリ電池の放電特性及びアルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは0.3〜89重量%、さらに好ましくは2〜79重量%である。
アルカリ電池負極組成物の全重量に基づくその他の添加剤全体は、アルカリ電池の放電特性及びアルカリ電解液の保持性の観点から好ましくは10重量%以下である。
【0090】
本発明のアルカリ電池負極組成物の製造方法は、公知の増粘剤を使用した製造方法を使用できる。
【0091】
[アルカリ電池]
本発明のアルカリ電池は、収納缶中に、前記負極組成物を負極容器に充填してなる負極、正極剤、該負極と正極剤を隔てるセパレーター及び集電棒が封入されてなる。
本発明のアルカリ電池の製造方法は、公知のアルカリ負極組成物を使用した製造方法を使用できる。
該アルカリ電池としては特に限定されず、通常のアルカリ電池、例えばLR−20型(単1型アルカリ電池)、LR−6型(単3型アルカリ電池)はもとより、その他各種のアルカリ電池が挙げられる。
【0092】
本発明における負極は、通常、本発明の増粘剤、アルカリ電解液、亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末、及び必要によりその他の添加剤をあらかじめ均一混合して負極組成物を作成し、該組成物を電池の負極容器内にこれを充填して負極とする方法により製造される。
【実施例】
【0093】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%、超純水は電気伝導率0.06μS/cm以下の水、イオン交換水は電気伝導率1.0μS/cm以下の水を示す。
【0094】
実施例1
アクリル酸250部、PEトリアリルエーテル0.25部(対アクリル酸0.1%)、TMPトリアクリレート0.75部(対アクリル酸0.3%)及びイオン交換水750部を撹拌混合してアクリル酸水溶液を調製し、4℃に温度調整した。
該アクリル酸水溶液を断熱重合槽に仕込み、水溶液に窒素を通じてアクリル酸水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。この断熱重合層に、10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド[商品名「V−50」、和光純薬工業(株)製]水溶液1.25部を添加し、0.1%過酸化水素水5部、0.1%L−アスコルビン酸水溶液5部を添加し、重合が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。重合が始まり、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止してその後6時間重合させて重合体(A’−1)からなる含水ゲルを得た。反応系の最高到達温度は75℃であった。
(A’−1)からなるブロック状の架橋含水ゲルを断熱重合槽から取り出し、小型ミートチョッパー[型番「VR−400K」、ローヤル(株)製]を用いてゲルを3〜10mmの太さのヌードル状になるように細分化した後、水酸化マグネシウム(試薬特級)10部(アクリル酸の中和度10モル%相当)を加えミンチ機に通して含水ゲルを中和し、含水ゲル状の重合体(A−1)を得た。
重合体(A−1)を、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機[型番「HAP2031F」、(株)HAKKO製]を用いて120℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて、含水ゲルを乾燥した。
乾燥物をクッキングミキサーを用いて粉砕し、篩を用いて粒径が32〜500μm(400〜30メッシュ)のものを採取し、重量平均粒子径(測定はマイクロトラックによる)が150μmの増粘剤(1)を得た。
【0095】
実施例1でのモル比(Q)を、下記数式より算出した。
モル比(Q)=(T×U)/S
S:重合体(A)の製造に使用したアクリル酸のモル数
T:アクリル酸の中和に使用した水酸化マグネシウムのモル数
U:マグネシウムイオンのイオン価数である2
また、モル比(R)を下記数式より算出した。
モル比(R)=(O×P)/S
S:重合体(A)の製造に使用したアクリル酸のモル数
O:増粘剤の製造に使用した水酸化マグネシウムのモル数
P:マグネシウムイオンのイオン価数である2
【0096】
実施例2
実施例1において、PEトリアリルエーテル0.25部を同0.13部(対アクリル酸0.05%)としたこと、TMPトリアクリレート0.75部を用いなかったこと、水酸化マグネシウム10部を同2部(アクリル酸の中和度2モル%相当)とし、乾燥物を衝撃粉砕機[型番「Retch ZM200」、(株)日本精機製作所製]を用いて粉砕し、粒度分布測定機「マイクロトラック MT3000II」[商品名、日機装(株)製。以下同じ。]での測定による重量平均粒子径を30μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして増粘剤(2)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0097】
実施例3
実施例1において、TMPトリアクリレート0.75部を同4.75部、水酸化マグネシウム10部を水酸化アルミニウム64部(アクリル酸の中和度71モル%相当)としたこと以外は、実施例1と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(3)を得た。
実施例3でのモル比(Q)を、下記数式より算出した。
モル比(Q)=(T×U)/S
S:重合体(A)の製造に使用したアクリル酸のモル数
T:アクリル酸の中和に使用した水酸化アルミニウムのモル数
U:アルミニウムイオンのイオン価数である3
また、モル比(R)を下記数式より算出した。
モル比(R)=(O×P)/S
S:重合体(A)の製造に使用したアクリル酸のモル数
O:増粘剤の製造に使用した水酸化アルミニウムのモル数
P:アルミニウムイオンのイオン価数である3
【0098】
実施例4
実施例1において、TMPトリアクリレート0.75部を同0.5部、水酸化マグネシウム10部(アクリル酸の中和度10モル%相当)で中和した後40%水酸化ナトリウム水溶液122部(アクリル酸の中和度35モル%相当)で中和したこと以外は、実施例1と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(4)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0099】
実施例5
実施例1において、PEトリアリルエーテル0.25部(対アクリル酸0.1%)を用いなかったこと、TMPトリアクリレート0.75部(対アクリル酸0.3%)を同1.25部(対アクリル酸0.5%)としたこと、水酸化マグネシウム10部を同101部(アクリル酸の中和度100モル%相当)としたこと以外は、実施例1と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(5)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0100】
実施例6
実施例1において、PEトリアリルエーテル0.25部をTMPジアリルエーテル0.25部(対アクリル酸0.1%)、TMPトリアクリレート0.75部をN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.75部(対アクリル酸0.3%)としたこと以外は、実施例1と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(6)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0101】
実施例7
25%の水酸化ナトリウム水溶液242.3部(アクリル酸の中和度75モル%相当)に、水酸化マグネシウム0.05部(アクリル酸の中和度0.08モル%相当)を加え均一混合しておく(混合液1)。アクリル酸145.4部に水9.4部を加え、20〜30℃に冷却しつつ該混合液1の242.3部を加えて中和した。該水溶液にEGジグリシジルエーテル[商品名「デナコールEX−810」、ナガセ化成工業(株)製]0.09部、次亜リン酸ソーダ1水和物0.0146部、過硫酸カリウム0.29部を加えて均一溶解させ、モノマー水溶液を得た。次いで、反応容器にシクロヘキサン624部を仕込み、さらにソルビタンモノステアレート2部を加えて溶解させた後、撹拌しつつ反応容器内を窒素置換した。次に、反応容器内を70℃に温度調整した後、該モノマー水溶液397部を6.6部/分の速度で1時間かけて滴下し、その後、75℃で30分間反応、熟成させて、重合体(A−7)の懸濁液を得た。
得られた(A−7)の懸濁液から、水及びシクロヘキサンを共沸除去し、含水率約20重量%[赤外水分計「FD−100型」、Kett(株)製、加熱温度180℃、20分で測定]の水溶液とした。30℃に冷却し撹拌を停止して樹脂粒子を沈降させ、デカンテーションにより樹脂粒子を分離し、乾燥させて増粘剤(7)を得た。増粘剤(7)の重量平均粒子径は300μmであった。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0102】
実施例8
アクリル酸150部、PEトリアリルエーテル0.15部(対アクリル酸0.1%)、TMPトリアクリレート0.45部(対アクリル酸0.3%)及びイオン交換水850部を撹拌混合してアクリル酸水溶液を調製し、4℃に温度調整した。
該アクリル酸水溶液を断熱重合槽に仕込み、水溶液に窒素を通じてアクリル酸水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。この断熱重合層に、10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド[商品名「V−50」、和光純薬工業(株)製]水溶液0.75部を添加し、0.1%過酸化水素水3部、0.1%L−アスコルビン酸水溶液3部を添加し、重合が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。 重合が始まり、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止してその後6時間重合させて重合体(A’−8)からなる含水ゲルを得た。反応系の最高到達温度は40℃であった。
(A’−8)からなるブロック状の架橋含水ゲルを断熱重合槽から取り出し、小型ミートチョッパー[型番「VR−400K」、ローヤル(株)製]を用いてゲルを3〜10mmの太さのヌードル状になるように細分化した後、水酸化マグネシウム(試薬特級)6部(アクリル酸の中和度10モル%相当)を加えミンチ機に通して含水ゲルを中和し、含水ゲル状の重合体(A−8)を得た。
重合体(A−8)を、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機[型番「HAP2031F」、(株)HAKKO製]を用いて120℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて、含水ゲルを乾燥した。
乾燥物をクッキングミキサーを用いて粉砕し、篩を用いて粒径が32〜500μm(400〜30メッシュ)のものを採取し、重量平均粒子径が150μmの増粘剤(8)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0103】
実施例9
PEトリアリルエーテル0.15部をTMPジアリルエーテル0.15部(対アクリル酸0.1%)、水酸化マグネシウム6部を12部(アクリル酸の中和度20モル%相当)としたこと以外は、実施例8と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(9)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0104】
実施例10
アクリル酸250部をアクリル酸225部及びアクリル酸メチル25部とした以外は、実施例1と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(10)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0105】
実施例11
実施例1において、水酸化マグネシウム10部を同121部(アクリル酸の中和度120モル%相当)とし、さらに、PEトリアリルエーテル0.25部(対アクリル酸0.1%)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、重量平均粒子径は150μmの増粘剤(11)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0106】
実施例12
アクリル酸100部、PEトリアリルエーテル0.10部(対アクリル酸0.1%)、TMPトリアクリレート0.30部(対アクリル酸0.3%)及びイオン交換水900部を撹拌混合してアクリル酸水溶液を調製し、4℃に温度調整した。
該アクリル酸水溶液を断熱重合槽に仕込み、水溶液に窒素を通じてアクリル酸水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。この断熱重合層に、10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド[商品名「V−50」、和光純薬工業(株)製]水溶液0.50部を添加し、0.1%過酸化水素水2部、0.1%L−アスコルビン酸水溶液2部を添加し、重合が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。 重合が始まり、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止してその後6時間重合させて重合体(A’−12)からなる含水ゲルを得た。反応系の最高到達温度は40℃であった。
(A’−12)からなるブロック状の架橋含水ゲルを断熱重合槽から取り出し、小型ミートチョッパー[型番「VR−400K」、ローヤル(株)製]を用いてゲルを3〜10mmの太さのヌードル状になるように細分化した後、水酸化マグネシウム(試薬特級)4部(アクリル酸の中和度10モル%相当)を加えミンチ機に通して含水ゲルを中和し、含水ゲル状の重合体(A−12)を得た。
重合体(A−12)を、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機[型番「HAP2031F」、(株)HAKKO製]を用いて120℃の熱風を2時間含水ゲルに透気させて、含水ゲルを乾燥した。
乾燥物をクッキングミキサーを用いて粉砕し、篩を用いて粒径が32〜500μm(400〜30メッシュ)のものを採取し、重量平均粒子径が300μmの増粘剤(12)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0107】
比較例1
市販のカルボキシメチルセルロース[商品名「CMC2450」、ダイセル化学工業(株)製]を増粘剤(H1)とした。
【0108】
比較例2
実施例1において、PEトリアリルエーテルを用いなかったこと、水酸化マグネシウム10部を水酸化ナトリウム40%水溶液347.2部(アクリル酸の中和度100モル%相当)としたこと以外は、実施例1と同様にして増粘剤(H2)を得た。
【0109】
比較例3
実施例1において、PEトリアリルエーテル及びTMPトリアクリレートを用いなかったこと、水酸化マグネシウムを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして増粘剤(H3)を得た。
【0110】
比較例4
実施例1において、PEトリアリルエーテル0.25部を同7.5部(対アクリル酸3.0%)としたこと、水酸化ナトリウム40%水溶液 312.5部(アクリル酸の中和度90モル%相当)で中和した後、水酸化マグネシウム10部(アクリル酸の中和度10モル%相当)を加えたこと以外は、実施例1と同様にして増粘剤(H4)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0111】
比較例5
実施例1において、10%2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド水溶液、0.1%過酸化水素水、0.1%L−アスコルビン酸水溶液をそれぞれ実施例1の10倍量用いたこと、イオン交換水750部に代えて20%のエタノール水溶液(エタノール/水=20/80)750部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして増粘剤(H5)を得た。
実施例1と同様にして、モル比(Q)、モル比(R)を算出した。
【0112】
【表1】

【0113】
増粘剤(1)〜(12)、増粘剤(H1)〜(H5)について、下記の項目を評価した。結果を表2に示す。
【0114】
(1)注入時間と注入量のバラツキ
容量1Lの2軸のニーダーに35%水酸化カリウム水溶液150g、亜鉛粉末(上記と同じもの)300g、増粘剤3.0gを仕込み、50rpmの回転速度で60分間混合して負極組成物を作成した。該組成物を25℃にて23時間静置し、均一に混合した後ビーカーに移し、混合時に入った気泡を減圧下で脱泡した。得られた組成物を、注入口の内径が2mmで0.1ml単位の目盛りの付いた20mlの注射器内部に吸引した。
容量5mlのガラス容器(内径18mm、高さ40mm)の開口部の高さから、注射器内の組成物を2.0ml分押し出してガラス容器に注入し、その際、注射器からの押し出しを終了した時点から、注射器注入口より該組成物が完全に離脱した時点までの時間(秒)をストップウオッチで測定した。同様の操作を繰り返した合計20回の平均値を注入時間(秒)とした。ガラス容器に注入された負極組成物の重量(各20回)を測定し、注入量の標準偏差(σ)を算出して、注入量のバラツキとした。
【0115】
(2)アルカリ電解液保持性(離漿率)
なお、上記のアルカリ電解液保持性は、以下の方法で測定される離漿率で評価する。
<離漿率の測定方法>
35%水酸化カリウム水溶液100部、増粘剤2部、及び重量平均粒子径10〜400μmの亜鉛粉末200部を均一になるまで撹拌混合して調製した。この試料75部をとり、25℃で24時間静置した。JIS K7223−1996に準拠して作成した、目開きが32μm(400メッシュ)のナイロンスクリーンからなるティーバッグの底部に入れ、このティーバッグをクリップでつり下げ静置して30分間液切りを行った後、ティーバッグの液切り後の重量(w1)(部)を測定する。また、ティーバッグそのものの重量(w2)(部)を測定し、下式により離漿率を算出する。

離漿率(%)=[75−(w1)+(w2)]×100/75
【0116】
(3)亜鉛粉末の沈降性
容量1Lの2軸のニーダー[型番「PNV−1」、入江商会(株)製、以下同じ。]に、35%水酸化カリウム水溶液150部と重量平均粒径120μmの亜鉛粉末[商品名「004F(2)/68」、UNION MINIERES.A.(株)製]300部、増粘剤3部を仕込み、50rpmの回転速度で60分間混合し、負極組成物を作成した。該負極組成物50部を、密閉可能な容量50mlの透明容器(直径34mm、高さ77mm、ポリプロピレン製)に入れ、混合時に混入した気泡を減圧下で脱泡した。
該容器を密閉し、40℃の恒温槽で30日間静置した後、「パウダーテスター」[商品名、ホソカワミクロン(株)製]付属の装置を用いて、該容器を3cmの高さから30回/minの割合で300回タッピングさせて、亜鉛粉末の沈降を促進させた。タッピング終了後、亜鉛粉末の初期の位置(容器中の負極組成物の上端部の位置)から沈降した亜鉛粉末のうち最上部のものまでの距離(mm)を測定し、これを亜鉛粉末の沈降性(mm)とした。
【0117】
(4)放電特性(電池の放電持続時間)
容量1Lの2軸のニーダーに、35%の水酸化カリウム水溶液150部と亜鉛粉末(上記と同じもの)300部、及び増粘剤3部を仕込み、50rpmで60分間混合し、負極組成物を作成した。減圧下で該組成物の脱泡を行った後、該負極組成物15部を、LR−6型のモデル電池の負極容器内に注入して負極とし、モデル電池を作成した。
なお、ここで、モデル電池の負極以外の各部位の構成材料としては、収縮チューブの材質としてはポリエチレン、正極剤としては電解二酸化マンガン50部、アセチレンブラック5部及び濃度40%水酸化カリウム水溶液1部からなる配合物、収納缶の材質としては、ニッケルメッキ鋼板、セパレーターの材質としては、ポリオレフィン、集電棒の材質としては、スズめっきした黄銅製のもの、ガスケットの材質としては、ポリオレフィン樹脂、負極端子板の材質としては、ニッケルメッキ鋼板を用いた。
作成したモデル電池に、室温(20〜25℃)で2Ωの外部抵抗を接続して、連続放電させ、電圧が0.9Vに低下するまでの時間を電池の持続時間(hr)とした。モデル電池作成後、60℃の恒温槽で60日間静置したモデル電池についても同様の操作を行い、電池の持続時間(hr)を測定した。
【0118】
(5)電池の耐振動衝撃性
上記と同様にして作成したモデル電池に、室温(20〜25℃)で2Ωの外部抵抗を接続して連続放電させながら、モデル電池を1mの高さから木製の板上に10回連続して自然落下させ、初回の落下前の電圧(Va)と10回目の落下直後の電圧(Vb)を測定し、下式により耐振動衝撃性(%)を算出した。

耐振動衝撃性(%)=100×(Vb)/(Va)
【0119】
(6)曳糸性
容量1Lの2軸のニーダーに35%水酸化カリウム水溶液150部、亜鉛粉末(上記と同じもの)300部、増粘剤3部を仕込み、50rpmの回転速度で60分間混合し、負極組成物を作成した。該負極組成物を25℃にて23時間静置し、その後ポリテトラフルオロエチレン製撹拌棒(長さ30cm、直径1cm)を用いて均一に手撹拌した後、該撹拌棒を垂直に徐々に引き上げて曳糸性を目視観察し、下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎ 10mm以下
○ 10mmを超え、20mm以下
△ 20mmを超え、30mm以下
× 30mmより大
【0120】
【表2】

【0121】
表1の結果から、本発明の増粘剤[(1)〜(12)]は、本発明における要件(1)及び(2)を満足し、比較の増粘剤[(H1)〜(H5)]は、該要件(1)及び(2)の少なくとも1つを満足しないことがわかる。
また、表2の結果から、曳糸性の評価結果においては、本発明の増粘剤を用いた負極組成物の評価結果は、比較例1〜5の増粘剤を用いた負極組成物の評価結果と同等以上であり、優れていることがわかる。また、注入時間、注入量のバラツキ、アルカリ電解液保持性(離漿率)、亜鉛粉末の沈降性及び電池の耐振動衝撃性の評価結果について、本発明の増粘剤を用いたものは、比較例の増粘剤を用いたものよりも極めて優れていることがわかる。
また、電池の放電特性について、作成直後の放電持続時間は、本発明の増粘剤を用いた全ての電池において、比較例の増粘剤を用いた電池よりも長く、本発明の増粘剤を用いた電池が優れていることがわかる。さらに、60℃の恒温槽で60日間静置した後の放電持続時間も、本発明の増粘剤を用いた全ての電池において、比較例の増粘剤を用いた電池よりも長く、本発明の増粘剤を用いた電池が優れていることがわかる。
したがって、本発明の増粘剤は、全ての評価結果において優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のアルカリ電池用増粘剤は、収納缶(負極容器)への注入性及びアルカリ電解液の保持性に優れる負極組成物を与える。また、本発明の増粘剤を用いたアルカリ電池は長期放電特性及び耐振動衝撃性に優れる。したがって、本発明の増粘剤は、各種アルカリ電池[LR−20型(単1型アルカリ電池)、LR−6型(単3型アルカリ電池)等]用増粘剤として幅広く利用することができ極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記エチレン性不飽和モノマー(a1)及び/又は下記エチレン性不飽和モノマー(a2)並びに下記エチレン性不飽和モノマー(a3)を必須構成単位とする重合体(A)を含有し、下記要件(1)及び(2)を満足するアルカリ電池用増粘剤。
エチレン性不飽和モノマー(a1):カルボキシル基、スルホ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオン基を有するエチレン性不飽和モノマー。
エチレン性不飽和モノマー(a2):(a1)とアルカリ金属及び/又はオニウムのカチオンとの塩。
エチレン性不飽和モノマー(a3):(a1)と2価以上の金属イオン(b)との塩。
要件(1):下記数式(1)により求められる(A)中のモル比(Q)が0.0001〜1である。
モル比(Q)=Σ(Ta×Ua)/S (1)
[数式(1)中、Sは(a1)、(a2)及び(a3)のアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数、Taは(A)中の各金属イオン(b)のモル数、Uaは各金属イオン(b)のイオン価数を表す。]
要件(2):アルカリ電池用増粘剤と40重量%水酸化カリウム水溶液を重量比1/99で1時間撹拌混合し、40℃で24時間静置した後の混合液の25℃における粘度(V1)が50〜5,000mPa・sである。
【請求項2】
重合体(A)が、内部架橋剤(c1)をさらに必須構成単位とする請求項1に記載の増粘剤。
【請求項3】
内部架橋剤(c1)の割合が、エチレン性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量に基づいて0.01〜2重量%である請求項2に記載の増粘剤。
【請求項4】
重合体(A)が、その他の水溶性エチレン性不飽和モノマー(a4)をさらに必須構成単位とする請求項1〜3のいずれかに記載の増粘剤。
【請求項5】
エチレン性不飽和モノマー(a1)、(a2)及び(a3)の合計重量と(a4)の重量との重量比[{(a1)+(a2)+(a3)}/(a4)]が、75/25〜100/0である請求項4に記載の増粘剤。
【請求項6】
さらに金属イオン(b)の水酸化物(D1)及び/又は塩(D2)を含む請求項1〜5のいずれかに記載の増粘剤。
【請求項7】
下記数式(2)により求められる増粘剤中の金属イオン(b)と重合体(A)中のアニオン基とのモル比(R)が0.0001〜4である請求項6に記載の増粘剤。
モル比(R)=Σ(Oa×Pa)/S (2)
[数式(2)中、Sは(A)中の(a1)、(a2)及び(a3)のアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数、Oaは増粘剤中の各金属イオン(b)のモル数、Paは各金属イオン(b)のイオン価数を表す。]
【請求項8】
40重量%水酸化カリウム水溶液に対する増粘剤の吸収倍率(K)とイオン交換水に対する増粘剤の吸収倍率(H)の比[(K)/(H)]が0.01〜200である請求項1〜7のいずれか記載の増粘剤。
【請求項9】
アルカリ電解液、亜鉛粉末及び/又は亜鉛合金粉末、並びに請求項1〜7のいずれか記載の増粘剤を含有してなるアルカリ電池負極組成物。
【請求項10】
請求項9記載の負極組成物を負極容器に充填してなる負極、正極剤、負極と正極剤を隔てるセパレーター及び集電棒が、収納缶中に封入されてなるアルカリ電池。

【公開番号】特開2011−249325(P2011−249325A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101916(P2011−101916)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】