説明

アルカンをアルケンに変換するための一体化された触媒方法およびその方法に有用な触媒

【課題】アルカンをアルケンに変換するための一体化された触媒方法およびその方法に有用な触媒を提供する。
【解決手段】本発明は、アルカンをそれらの対応するアルケンに変換するための一体化されたマルチゾーン方法に関するものであり、その方法は、アルカンの一部の、酸素および適切な触媒の存在下における、発熱反応ゾーンでの酸化的脱水素化によりその対応するアルケンに発熱的に変換し、その後、発熱反応ゾーンの生成物を吸熱反応ゾーンへ送り、吸熱反応ゾーン内において、少なくとも、残留する未変換アルカンの一部が二酸化炭素および他の適切な触媒の存在下で吸熱的に脱水素化されることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府との利害関係)
この発明は、United States Department of Energyにより与えられた法律文書第DE−FC36−O4GO14272号の下での政府の支援を受けて為されたものである。本政府は、この発明における特定の権利を有している。
【0002】
本発明は、アルカンをそれらの対応するアルケンに触媒により変換するための方法、更にはそのような方法において使用するのに適した触媒に関係する。
【背景技術】
【0003】
モノマー、例えば不飽和カルボン酸および不飽和ニトリルなどを製造するための広く知られた商業的な方法は、典型的には、一つまたはそれ以上のアルケンから始め、それらを、触媒的気相酸化により、所望のモノマー生成物に変換する。本産業内における競争により及ぼされる圧力、およびアルカンとそれらの対応するアルケンとの間の価格差、例えば、それぞれ、プロパンとプロペンとの間の価格差などを背景に、アルカンを開始物質として使用し、最終的にもっと安い総経費で所望のモノマーを製造する方法を開発すべく努力が払われている。
【0004】
商業的産業において幾分かの成功を享受している一つの方法の改変は、単に上流反応ステージ(ここで、アルカンが、初めに適切な触媒の存在下で、対応するアルケンに変換される)を追加するものである。その後、結果的に生じたアルケン(例えばプロペン)が、そのアルケンを酸化するため(例えば、プロペンの二段階酸化によりアクリル酸を形成する場合の如く、初めにアクロレインに変換し、その後、所望のモノマー生成物に変換する場合など)、通常の酸化反応ステージへ供給される。例えば、欧州特許出願公開第EP117146号および米国特許第5,705,684号の両者は、アルカン(プロパン)をその対応する不飽和カルボン酸(アクリル酸)に変換するための多段触媒方法を記載しており、その方法は、アルケンを含む生成物ストリームを生成するための一つまたはそれ以上の適切な触媒を有する、最初のアルカンからアルケンへの変換ステージを含んでおり、その生成物ストリームが一つまたはそれ以上の下流酸化ステージに供給される。アルカンからそれらの対応するアルケンへの変換を触媒するための様々な触媒および方法が知られている。
【0005】
アルカンの酸化的脱水素化を触媒することが知られている種々の触媒が存在し、前述の酸化的脱水素化は、発熱反応であり、その名が示すとおり、酸素の存在下において起こる。例えば、米国特許第5,086,032号は、ニッケル−モリブデンをベースとした酸化物触媒でのプロパンの酸化的脱水素化について記載している。別のカテゴリーの既知の酸化的脱水素化触媒が米国特許出願公開公報第2002/0077518号に開示されており、それらの触媒は、一つまたはそれ以上のアンチモン、タングステンおよびクロムの酸化物を伴い、更に場合によっては、追加の酸化物(例えば、これらに限定するものではないが、ニッケル、コバルト、ニオブ、タンタル、セシウム、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの酸化物などを含む)を伴う、マンガンをベースとした多金属酸化物である。
【0006】
米国特許出願公開公報第2004/0034266号(「US 266号」)に記載されているように、プロパンおよびエタンの触媒による酸化的脱水素化はマイクロチャンネル反応器内で実施され、ここで、それらのマイクロチャンネルは、マンガンを伴う場合と伴わない場合との両方のケースにおいて、マグネシウム−バナジウムをベースとした酸化物触媒を含んでいる。また、US 266号は、アルカンを酸化的に脱水素化するための、Pt、Pd、Rh、IrおよびRuから選択される一つまたはそれ以上の貴金属を含む「高温触媒」、更にはLi、Mo、V、Nb、Sb、Sn、Zr、Mg、Mn、Ni、Co、Ceおよび希土類金属(例えばSmなど)から選択される金属の少なくとも一つの酸化物またはリン酸塩を含む「低温触媒」ついても一般的に開述している。更に、どちらのタイプの触媒も追加の金属を用いて促進することができ、および前述のどの触媒組成物も担持されていてよいと述べられている。
【0007】
必須元素として、Mo−Sb−WまたはCr−Sb−W、ならびにV、Nb、K、Mg、Sn、Fe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一つの金属を有する混合金属酸化物触媒は、10%より高い単一パス収率において、プロペンを製造するためのプロパンの酸化的脱水素化に有用であることが示されている(米国特許第6,239,325号)。また、酸化ジルコニウム担体上のPd−Cu/Mn触媒も、70%〜80%の範囲におけるエタンに対する選択性を伴って、エタンの酸化的脱水素化を触媒し、コークス形成を低減させた(米国特許出願公開公報第2005/0124840号)。
【0008】
バナジウムをベースとした触媒のアルカンの酸化的脱水素化に対する性能が幅広く研究されている。例えば、Mo−V−Te−Nbをベースとした混合金属酸化物触媒の存在下におけるエタンの酸化的脱水素化は、50%もの高い収率でエテンを生成することが示されており、一つのケースにおいては更に60%よりも高い収率でエテンを生成することが示されている(米国特許出願公開公報第2005/0085678号)。Cr、Zn、FeおよびMgのうちの一つまたはそれ以上の追加的な金属酸化物を伴って、または伴わずに、バナジウム−アルミニウムをベースとした混合金属酸化物触媒は、酸素の存在下において、プロパン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタンをそれらの対応するアルケンへ変換することを触媒することが可能であり、コークスの形成を最小化しつつ、これにより、触媒再生の必要性を最小化しながら、比較的高いアルケン選択性を達成できることが知られている(米国特許第4,046,833号)。米国特許第4,410,752号に開示されている如く、エタンの酸化的脱水素化は、バナジウム−リン混合酸化物触媒において22%もの高い収率でエタンを形成し、これは、Co、UまたはWを使用することにより促進させることができる。Zhaorigetuら(1996年)は、一つまたはそれ以上の希土類金属(La、Ce、Pr、SmおよびEr)を用いて促進される非担持型のバナジウムをベースとした触媒でのプロパンの酸化的脱水素化が、酸素のほかに二酸化炭素を反応ゾーンへ供給することにより増強され得ることを示した(Zhaorigetu,B.;Kieffer,R.;Hinderman J.−P.、「Oxidative Dehydrogenation of Propane on Rare Earth Vanadates.Influence of the Presence of CO2 in the feed.(希土類バナジウム酸塩でのプロパンの酸化的脱水素化。供給物中にCO2が存在することによる影響)」、Studies in Surface Science and Catalysis、1996、101、1049〜1058)。
【0009】
発熱性であるため、酸化的脱水素化方法が連続的に運転されるときには、過剰な熱を連続的に取り除かなければならず、これは、設備支出および操業費用を増大させる。酸化的脱水素化の別の欠点は、その方法が商業的に有用な、より高いアルカン変換率で運転されるときに、アルケンに対する選択性が低減しがちなことである。従って、実際には、これらの方法はより低い変換率(100%をはるかに下回って)で運転される傾向があり、そのような低い変換率は、それらの生成物生産能力を制限し、かつ一般的に、それらの方法を、工業規模方法として使用するには経済的に適していないものにする。
【0010】
他の触媒は、「弱い」酸化剤、例えば蒸気または二酸化炭素などの存在下において、アルカンの吸熱的な脱水素化を触媒し、その対応するアルケンを形成することが知られている。幾つかの吸熱的脱水素化触媒は、他のものが少量の酸素の存在を許容するものの、上述の弱い酸化剤と共に、有意な活性の損失を伴うことなく、酸素の不在下において一層良好に機能する。
【0011】
例えば、米国特許第2,500,920号の背景の項で論じられているように、酸化アルミニウム担体上の酸化クロム触媒はn−ブタンからn−ブテンへの脱水素化を触媒するであろうことがずっと以前から知られている。米国特許第2,500,920号は、酸化アルミニウムをベースとした触媒が、酸化モリブデン、酸化タングステンおよび酸化バナジウムからなる群から選択される少なくとも一種の酸化物を伴い、ならびに活性化剤としての酸化クロムを伴って、蒸気の存在下において、酸素を伴うことなく、ブタンおよびペンタンのそれぞれをそれらの対応するアルケンへ脱酸素化することを触媒し得ることを開示している。
【0012】
もっと最近になって、特には酸化クロム(III)(Cr)を含む触媒は、酸素を伴って、または酸素を伴わずに、約30%から40%までの収率で、イソブタンの触媒による脱水素化によりイソブテンを形成するのに有用であることが示されている(米国特許第5,013,706号)。米国特許出願公開第2004/0181107号においては、担持型または非担持型のクロムをベースとした脱水素化触媒は、二酸化炭素の存在下において、酸素を伴うことなく、イソブタンのイソブテンへの吸熱的脱水素化を成功裏に触媒して、これにより、コークス化の問題を回避し、イソブテンに対する選択性を高め、47%までのイソブテンの収率を達成したことが報じられた。酸化クロムおよびK、Mg、Ca、Ba、Ni、LaまたはFeから選択される少なくとも一つの金属の酸化物を含む酸化ケイ素担持触媒は、2004年2月4日に出願された中国特許出願公開公報第1472005号で報じられているように、二酸化炭素の存在下において、プロパンをプロペンへ成功裏に脱水素化するであろう。
【0013】
更にもっと最近になって、Li、Na、KまたはMgを用いて促進される担持型のバナジウムをベースとした触媒は、「ソフトな酸化剤」、即ち、二酸化炭素の存在下において、酸素の不在下で、エチルベンゼンを脱水素化し、約98〜99%の選択性でスチレンを生成することが示されている(Li,X.−H.;Li,W.−Y.;Xie,K.−C.、「Supported Vanadia Catalysts for Dehydrogenation of Ethylbenzene with CO2(CO2を用いるエチルベンゼンの脱水素化用の担持型バナジア触媒)」、Catalyst Letters、2005年12月、Vol.105、Nos.3〜4)。2002年にDuryらにより、ニッケル−モリブデンベースの触媒の存在下においてプロペンを形成するためのプロパンの酸化的脱水素化に二酸化炭素が様々な量で与えられ、変換率を増大させる(約18〜28%)ものの、選択性を低減させることが判明した(Dury,F.;Gaigneaux,E.M.、Ruiz,P.、「The Active Role of CO2 at Low Temperature in Oxidation Processes:The Case of the Oxidative Dehydrogenation of Propane on NiMoO4 catalysts(酸化方法における低温でのCO2の積極的役割:NiMoO4触媒でのプロパンの酸化的脱水素化の場合)」、Applied Catalysis A:General 242(2003)、187〜203)。Duryらは、脱水素化反応において二酸化炭素は不活性であるという従来の予想に反して、二酸化炭素は、酸素の不在下においてさへ、プロパンの脱水素化に積極的に関与していることを示した。
【0014】
Takehiraらは、ケイ素含有担体物質(メソ多孔性MCM−41、Cab−O−Silおよび酸化ケイ素を含む)上に担持された様々な金属酸化物触媒(Cr、Ga、Ni、V、Fe、MnおよびCo)の活性について試験し、MCM−41上に担持されたCrベースの触媒が、二酸化炭素の存在下において、プロペンを形成するためのプロパンの脱水素化で最良の結果をもたらすことを見出した。Takehira,K.;Oishi,Y.;Shishido,T.;Kawabata,T.;Takaki,K.;Zhang,Q.;およびWang,Y.、「CO2 Dehydrogenation of Propane over Cr−MCM−41 Ctalyst(Cr−MCM−41触媒でのプロパンのCO2による脱水素化)」、Studies in Surface Science and Catalysis、2004、153、323〜328。
【0015】
当然、吸熱的脱水素化方法は、その方法に熱を加えることを必要とする。それらは、典型的には、炉または他の容器内の酸素を用いて、炭化水素燃料(しばしば、脱水素化されるべきアルカンとは異なる)を燃やすこと(即ち、燃焼)を含み、結果として、初期設備投資の増大によるコストの増加および燃料を消費し続けることによるコストの増加をもたらす。
【0016】
欧州特許出願公開第EP 1112241号(「EP 241号」)は、この問題の解決に向けて設計された方法を開述している。熱を生成するために別の燃料を燃やすのではなく、そこで開示されている方法は、適切な燃焼触媒の存在下において、酸素を用いて、脱水素化されるべきアルカンの一部を燃焼させ、燃焼の生成物(即ち、炭素の酸化物および水)、消費されなかった酸素および消費されなかったアルカンを含有する加熱された流れを生成することを含む。その加熱された流れが吸熱的な触媒による脱水素化反応ステージへ直接的に送られ、その反応ステージで、未反応のアルカンが、適切な脱水素化触媒の存在下において、対応するアルケンに変換される。
【0017】
更に最近になって、国際特許出願公開第WO2004/054945号(「WO 945号」)は前述の二段型の発熱−吸熱方法に改良を加えており、その改良は、点火源、例えば口火または火花点火などを代用し、アルカンの一部を燃やして、未反応のアルカンおよび燃焼の生成物(即ち、炭素の酸化物、水および熱)または合成ガス(即ち、一酸化炭素および水素)のいずれかを含む加熱された流れを生成することにより、燃焼触媒の必要性を排除している。
【0018】
このようにして、EP 241号およびWO 945号の両者における方法では、アルカン供給物を予熱するために別に供給された炭化水素燃料を燃やす必要性が回避されている。しかし、アルカン反応物の一部が消費され、これにより、脱水素化ステージにおいて所望の生成物に変換するために利用できる量が少なくなる。その上、燃焼の生成物が付随的に形成され、これは、所望のアルケン生成物の量に何ら寄与することのない、望ましくない副産物の量を増大させる。実際、アルカン反応物自体の一部が燃やされるときには、これらの出典により教示されている如く、残って脱水素化反応に利用できるアルカンの量が低減され、生成される所望のアルケン生成物の量が少なくなる。
【特許文献1】欧州特許出願公開第EP117146号明細書
【特許文献2】米国特許第5,705,684号明細書
【特許文献3】米国特許第5,086,032号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0077518号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0034266号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0124840号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0085678号明細書
【特許文献8】米国特許第4,046,833号明細書
【特許文献9】米国特許第4,410,752号明細書
【特許文献10】米国特許第2,500,920号明細書
【特許文献11】米国特許第5,013,706号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0181107号明細書
【特許文献13】中国特許出願公開第1472005号
【特許文献14】欧州特許出願公開第EP 1112241号明細書
【特許文献15】国際公開第WO2004/054945号パンフレット
【非特許文献1】Zhaorigetu,B.;Kieffer,R.;Hinderman J.−P.、「Oxidative Dehydrogenation of Propane on Rare Earth Vanadates.Influence of the Presence of CO2 in the feed.(希土類バナジウム酸塩でのプロパンの酸化的脱水素化。供給物中にCO2が存在することによる影響)」、Studies in Surface Science and Catalysis、1996、101、1049〜1058
【非特許文献2】Li,X.−H.;Li,W.−Y.;Xie,K.−C.、「Supported Vanadia Catalysts for Dehydrogenation of Ethylbenzene with CO2(CO2を用いるエチルベンゼンの脱水素化用の担持型バナジア触媒)」、Catalyst Letters、2005年12月、Vol.105、Nos.3〜4
【非特許文献3】Dury,F.;Gaigneaux,E.M.、Ruiz,P.、「The Active Role of CO2 at Low Temperature in Oxidation Processes:The Case of the Oxidative Dehydrogenation of Propane on NiMoO4 catalysts(酸化方法における低温でのCO2の積極的役割:NiMoO4触媒でのプロパンの酸化的脱水素化の場合)」、Applied Catalysis A:General 242(2003)、187〜203
【非特許文献4】Tkehira,K.;Oishi,Y.;Shishido,T.;Kawabata,T.;Takaki,K.;Zhang,Q.;およびWang,Y.、「CO2 Dehydrogenation of Propane over Cr−MCM−41 Ctalyst(Cr−MCM−41触媒でのプロパンのCO2による脱水素化)」、Studies in Surface Science and Catalysis、2004、153、323〜328
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、この分野において今日まで行われてきた研究にもかかわらず、本業界は、低級アルカンをそれらの対応するアルケンへ脱水素化するコストを最小化しながら、アルケンの全体的な生産性を高める(即ち、アルケンの選択性および収率を高める)ことに関する前述の問題に取り組み続けている。所望の生成物であるアルケンの改善された選択性および収率をもたらす、アルカンをその対応するアルケンに変換するための改善された方法および触媒系の開発は、本業界に歓迎されるであろう。本発明の方法および触媒は、これらのニーズに合ったものであると確信される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、C−Cアルカンをその対応するC−Cアルケンに触媒により変換するための方法を提供し、その方法は、熱的に統合されており、かつ単独で運転されるどのような個々のプロセス構成要素よりも良好な性能を達成する。より詳細には、本方法は、A)C−Cアルカンおよび酸素を発熱反応ゾーン内において上流触媒と接触させるステップ、ここで、上流触媒は酸素の存在下において、C−Cアルカンの、その対応するC−Cアルケンへの発熱的変換に対して触媒的に活性である;およびB)発熱反応ゾーン内においてC−Cアルカンの一部をその対応するC−Cアルケンに発熱的に変換して、加熱された混合生成物ガス(当該生成物ガスは、対応するC−Cアルケン、未反応のC−Cアルカンおよび前記発熱的変換ステップにより生成された熱を含む)を生成するステップ:を含む。本方法は、更に、加熱された混合生成物ガスおよび弱い酸化剤を吸熱反応ゾーン内において下流触媒と接触させるステップ、ここで、下流触媒は、弱い酸化剤の存在下において未反応のC−Cアルカンの、その対応するC−Cアルケンへの吸熱的変換に対して触媒的に活性である;およびD)吸熱反応ゾーン内において未反応のC−Cアルカンの少なくとも一部をその対応するC−Cアルケンに吸熱的に変換して、累積的な生成物の流れ(当該累積的な生成物の流れは、少なくとも、反応ゾーンのそれぞれにおいて生成された対応するC−Cアルケンを含む)を生成するステップ:を含む。
【0021】
上流触媒は酸化的脱水素化触媒であってよく、および下流触媒は吸熱的脱水素化触媒であってよい。酸化的脱水素化触媒は、以下の触媒組成物、A)Pt、Pd、Rh、IrおよびRuから選択される一種以上の貴金属を含む触媒;ならびにB)Li、Mo、W、V、Nb、Sb、Sn、Ga、Zr、Mg、Mn、Ni、Co、Ceおよび希土類金属から選択される金属の少なくとも一つの酸化物を含む触媒;のうちの一種以上であってよい。例えば、酸化的脱水素化触媒は、必須物質として、酸化バナジウム、ならびに、ニオブ、銅およびクロム、からなる群から選択される金属の少なくとも一つの酸化物を含んでいてよい。上述の吸熱的脱水素化触媒は、以下の触媒組成物、A)酸化クロムおよび、場合によってMo、W、V、Ga、Mg、Ni、Fe、アルカリ元素、アルカリ土類元素および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一つの金属の酸化物を含む触媒、B)酸化バナジウムおよび、場合によってLi、Na、KおよびMgからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含む触媒、C)白金および、場合によってナトリウム、カリウム、セシウム、レニウムおよびスズからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む触媒、ならびにD)Ga、Fe、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む触媒、のうちの一つまたはそれ以上であってよい。例えば、その吸熱的脱水素化触媒は、必須物質として、酸化バナジウム、酸化クロム、ならびに、銅、銀および金、からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む。
【0022】
酸化的脱水素化触媒および吸熱的脱水素化触媒のうちのどちらかまたは両方が、担体物質、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ゼオライト、希土類金属酸化物、他の金属酸化物、メソ多孔性物質、耐火性(refractory)物質および前述の物質の組合せなどを含んでいてよい。更に、触媒のうちのどちらかまたは両方が、更に、担体、例えばモノリシック担体、例えばコーディエライト、金属またはセラミックを含んでなるモノリシック担体などを含んでいてよい。
【0023】
本発明の一実施形態においては、上流の酸化的脱水素化触媒は、酸素含有ガスの存在下においてプロパンをプロペンに発熱的に変換し、および下流の吸熱的脱水素化触媒は、弱い酸化剤、例えば二酸化炭素などの存在下において、プロパンをプロペンに吸熱的に変換する。この後、累積的なプロペン生成物が下流の部分的酸化プロセスへ送られてよく、その部分的酸化プロセスでは、プロペンが先ずアクロレインに変換され、その後、アクリル酸に変換される。
後述の態様から、および図面を参照して、本発明のより完全な理解が得られるであろう。図1は本発明の方法の1態様を示す略図である。
【0024】
本発明は、C−Cアルカンをその対応するC−Cアルケンに触媒により変換するための方法を提供する。本方法は、C−Cアルカンをその対応するC−Cアルケンに変換し、かつ熱を生成する上流の発熱反応、および発熱反応からの生成物の流れおよび熱を受け入れ、かつC−Cアルカンを対応する同じC−Cアルケンに変換する下流の吸熱反応を含む。これらの反応は、順序どおりに行われ、発熱反応で付随的に生成された熱が、その後、吸熱反応で利用され、これにより、追加的な燃料の必要性を最小化し、かつ生成物であるアルケンに対する全体的な選択性および収率を増大させるように統合されている。それぞれの脱水素化ステージにおいて使用するのに適した触媒も本発明により提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下の定義および意味は明確にする目的で与えられており、以降ではそれらの定義および意味が用いられる。
【0026】
「炭化水素」という用語は、少なくとも一個の炭素原子および少なくとも一個の水素原子を含む化合物を意味する。
【0027】
本明細書で使用する場合、「CからCまでのアルカン」という用語は、一つのアルカン分子当たり2個から4個までの炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルカン、例えばエタン、プロパンおよびブタンを意味し、これらのアルカンは、典型的には、通常の温度および圧力(例えば、少なくとも10℃および1気圧)において気相状態にある。従って、「CからCまでのアルケン」という用語は、一つのアルケン分子当たり2個から4個までの炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルケン、例えばエテン、プロペンおよびブテンを意味する。
【0028】
「対応するC−Cアルケン」という用語は、一つのアルケン分子当たり、検討中のアルカンと同じ個数の炭素原子を有するアルケンを意味する。
【0029】
更に、本明細書で使用する場合、「CからCまでのアルカンおよびアルケン」という用語は、少なくとも一種の前述のC−Cアルカン、ならびにその対応するC−Cアルケンを含む。同様に、「CからCまでのアルカン」もしくは「CからCまでのアルケン」、または「CからCまでのアルカンおよびアルケン」という用語と併せて本明細書で使用する場合、「それらの混合物」という用語は、一つのアルカン分子当たり2個から4個までの炭素原子を有する少なくとも一種の前述のアルカン、および一つのアルケン分子当たり、検討中のアルカンと同じ個数の炭素原子を有するアルケンを含む混合物を意味し、例えば、これらに限定するものではないが、プロパンおよびプロペンの混合物、またはn−ブタンおよびn−ブテンの混合物を意味する。
【0030】
時には「希釈剤」と呼ばれることもある「不活性な」物質は、実質的に不活性なあらゆる物質、即ち、関係のある特定の反応に関与しない物質、そのような特定の反応により影響されない物質、及び/又はそのような特定の反応で不活性の物質である。例えば、窒素は、アルカンをそれらの対応するアルケンへ変換する反応において不活性である。より具体的な例として、窒素は、プロパンからプロペンを生成する酸化的脱水素化反応において不活性である。酸化反応に有用な混合金属酸化物触媒がジルコニウムをベースとした物質により担持されているケースでの触媒との関連において、ジルコニウムをベースとした物質は、不活性であると考えられ、従って、その混合金属酸化物触媒により触媒される酸化反応に直接的に影響を及ぼさず、また、そのような酸化反応により直接的に影響されない。(寧ろ、理論により拘束されるものではないが、幾つかの担体物質、例えばジルコニウムなどは、触媒と直接的に相互作用し、それが、順に、その酸化反応の変換率、選択性などに影響を及ぼし得るものと確信される。)
【0031】
本明細書で検討されている方法を含めた化学的な反応方法の有効性は、用語「供給物の変換率」、特定の生成物に対する「選択性」、および「生成物の収率」を用いて特徴付けし、分析することができる。これらの用語が以降で使用され、それらの用語は以下の標準的な意味を有するであろう。
【0032】
供給物の変換率または単に「変換率」は、どのような特定の生成物が生成されたのかにかかわらず、反応により消費された供給物(例えば、CからCまでのアルカンおよびアルケン、例えばプロパンおよびプロペンなど、またはそれらの混合物)の総モル数の百分率であり、一般的に、以下の如くにして算出される。
【0033】
【数1】

【0034】
特定の生成物に対する選択性または単に「選択性」は、反応により消費された供給物(例えば、CからCまでのアルカン、例えばエタン、プロパン、およびプロペンなど、またはそれらの混合物)、即ち、消費された供給物が、他の生成物にかかわらず、所望の生成物に実際に変換された割合の総モル数の百分率である。選択性は、一般的に、以下のようにして算出される。
【0035】
【数2】

【0036】
生成物の収率または単に「収率」は、すべての供給物がその生成物(望ましくない副生物、例えば酢酸およびCO化合物などに対立するものとして)に変換された場合に形成されると考えられる所望の生成物(アルケン)の理論的な総モル数の百分率であり、一般的に、以下のようにして算出される。
【0037】
【数3】

【0038】
本明細書で使用する場合、「酸素含有ガス」という用語は、0.01%から100%までの酸素または酸素含有化合物を含んだあらゆるガスを意味し、例えば、これらに限定するものではないが、空気、酸素富化空気、亜酸化窒素、二酸化窒素、純酸素、純酸素または酸素含有化合物と少なくとも一種の不活性ガス(例えば窒素)との混合物、およびこれらの混合物、を含む。酸素含有ガスは純酸素ガスであってもよいが、純度が特に要求されないときには、通常、酸素含有ガス、例えば空気などを使用する方がより経済的である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「酸化的脱水素化」は、炭化水素と酸素が反応し、結果として、炭化水素から一つまたはそれ以上の水素原子の除去をもたらし、酸化生成物を生成する化学反応を意味する。従って、本明細書でこの用語が使用される場合、酸化的脱水素化は、必要な酸素を提供するための酸素含有ガスまたはガス状酸素含有化合物を必要とする。
【0040】
本明細書で使用する場合、「発熱的酸化的脱水素化」は、酸化生成物化合物に加え、熱を生成する酸化的脱水素化方法を意味する。
【0041】
本明細書で使用する場合、「吸熱的脱水素化」は、炭化水素から一つまたはそれ以上の水素原子が除去され、かつ熱を消費し、従って、反応の外部のソースから熱が供給されることを必要とする化学反応を意味する。
【0042】
範囲の端点を明確にすべく考慮すると、範囲の端点は、それらの許容範囲内において、当業者の知識の範囲内における他の値、例えば、これらに限定するものではないが、本発明に関わる個々の端点から僅かに異なる値を含めた他の値を組み入れるものと認識される(言い換えれば、端点は、個々の各端点に対する「大凡の」値、または各端点に「近い」値もしくは各端点「付近の」値を組み入れるものと解釈すべきである)。本明細書で言及されている範囲および比の限界は組合せ可能である。例えば、ある特定のパラメーターに対して1〜20および5〜15の範囲が言及されている場合、1〜5、1〜15、5〜20または15〜20の範囲も想定されており、それにより包含されるものと理解される。
【0043】
本発明の方法は逐次的な熱的に統合された反応を含み、そのそれぞれは、特定のC−Cアルカンを同じ対応するC−Cアルケンへ変換する。この方法は、それぞれの反応が単独で行われた場合よりも、より高い全体的な熱効率をもって、対応するC−Cアルケンの、より高い全収率をもたらす。初めに、本方法、更には本方法において使用するのに適した触媒について一般的に説明する。その後、本発明のある典型的な実施形態についてのもっと詳細な説明が与えられ、その実施形態は、プロパンをプロペンに変換するための酸化的脱水素化反応と吸熱的脱水素化反応との組合せである。この典型的実施形態の特異性にもかかわらず、当業者であれば、本発明が他のタイプの反応および生成物にも適用可能であり、および必要な場合および望ましい場合には、関連する技術分野における実践者の通常の技術および一般的知識により、修正および変更を加え得ることが認識され、理解されよう。例えば、本発明の方法は、熟練者により、様々な炭化水素、例えばイソプロパン、エタンおよびエチルベンゼンなどを脱水素化するように容易に適合化することができよう。
【0044】
次に、図1に与えられている本発明の方法の略図を参照すると、一般的に、C−Cアルカン(10)および酸素(12)が発熱反応ゾーン(14)内で上流触媒(それ自体は図示されていない)と接触させられる。この上流触媒は、酸素の存在下においてC−Cアルカンをその対応するC−Cアルケンへ発熱的に変換することについて触媒的に活性である。酸素(12)は、当業者に広く知られているように、酸素含有ガスの形態で供給されてよい。C−Cアルカン(10)および酸素(12)は、発熱反応ゾーン(14)に別々にかつ同時に(図1に示されている如く)供給されてもよいし、またはそれらを一緒にブレンドし(図示せず)、結果として生じるブレンドした流れを発熱反応ゾーン(14)に供給してもよい。一つもしくはそれ以上の不活性物質または希釈剤(図示せず)も、別々に、またはC−Cアルカン(10)および酸素(12)のうちのどちらか一方もしくは両方と混ぜ合わせて、発熱反応ゾーン(14)に供給されてよい。適切な希釈剤には、これらに限定するものではないが、窒素、二酸化炭素、希ガスおよび蒸気が挙げられる。発熱反応ゾーン(15)への供給物の組成は、例えば、供給物物質の全体積をベースとして、5〜50体積%のアルカン、2〜30体積%の酸素、0〜50体積%の二酸化炭素および残りの窒素であってよい。吸熱反応ゾーンに対する適切な供給物の組成の別な例は、これらに限定するものではないが、供給物物質の全体積をベースとして、5〜20体積%のアルカン、2〜15体積%の酸素、10〜40体積%の二酸化炭素および残りの窒素であってよい。
【0045】
−Cアルカンの一部が発熱反応ゾーン(14)内で発熱的に変換され、加熱された混合生成物ガス(16)を生成し、その混合生成物ガスは、少なくともその対応するC−Cアルケン、未反応のC−Cアルカンおよび前述のC−Cアルカンの一部の発熱的な変換により生成された熱を含む。この加熱された混合生成物ガス(16)は、更に、化合物、例えば、これらに限定するものではないが、一酸化炭素、二酸化炭素、他の炭素含有化合物および水をはじめとする化合物を含んでいてよい。
【0046】
尚も図1を参照しながら説明すると、本発明の方法は、加熱された混合生成物ガス(16)および穏やかな酸化剤、例えば二酸化炭素(18)を吸熱反応ゾーン(20)内において下流触媒(それ自体は図示されていない)と接触させることをさらに含む。この下流触媒は、未反応のC−Cアルカンを発熱反応ゾーン(14)内において生成されたのと同じ対応するC−Cアルケンへ吸熱的に変換することにとって触媒的に活性である。二酸化炭素(18)が、当業者にとって既知のあらゆる仕方で吸熱反応ゾーン(20)に供給されてよい。例えば、図1に示されているように、二酸化炭素(18)は、上述の加熱された混合生成物ガス(16)と同時に、別な流れとして吸熱反応ゾーン(20)に直接的に供給されてよい。他の選択肢(ここには示されていない)は、これらに限定するものではないが、吸熱反応ゾーン(20)に入る前に二酸化炭素(18)を加熱された混合生成物ガス(16)とブレンドすること;または二酸化炭素(18)を発熱反応ゾーン(14)への一つもしくはそれ以上の供給物の流れと(即ち、C−Cアルカン(10)および酸素(12)のうちの一方もしくは両方と)ブレンドすること;を含む。また、一つもしくはそれ以上の不活性物質または希釈剤(図示せず)も、別々に、または加熱された混合生成物ガス(16)および二酸化炭素(18)のうちのどちらか一方もしくは両方と混ぜ合わせて、吸熱反応ゾーン(20)に供給されてよい。適切な希釈剤は、これらに限定するものではないが、窒素、希ガスおよび蒸気が挙げられる。吸熱反応ゾーン(20)への供給物の組成は、例えば、供給物物質の全体積をベースとして、5〜50体積%のアルカン、0〜5体積%の酸素、10〜80体積%の二酸化炭素および残りの窒素であってよい。吸熱反応ゾーンに対する適切な供給物の組成の別な例は、これらに限定するものではないが、供給物物質の全体積をベースとして、5〜20体積%のアルカン、0〜2体積%の酸素、20〜60体積%の二酸化炭素および残りの窒素であってよい。
【0047】
未反応のC−Cアルカンの少なくとも一部が吸熱反応ゾーン(20)内において吸熱的に変換され、累積的な生成物の流れ(22)を生成し、その累積的な生成物の流れは、少なくとも、発熱反応ゾーン(14)および吸熱反応ゾーン(20)のそれぞれにおいて形成された対応するC−Cアルケンを含む。また、累積的な生成物の流れ(22)は、一つまたはそれ以上の、次の化合物:未反応のC−Cアルカン、未反応の酸素、未反応の二酸化炭素、更には他の化合物、例えば、これらに限定するものではないが、一酸化炭素、水蒸気および水素を含む他の化合物、も含んでいてよい。
【0048】
図1には示されていないが、当業者であれば、累積的な生成物の流れ(22)は更なる処理及び/又は更なる反応への関与に付されてよいことが容易に認識されよう。例えば、累積的な生成物の流れ(22)は、別の反応プロセスに直接的に供給されてよく、例えば不飽和カルボン酸またはニトリルを生成するためのアルケンの気相酸化などに直接的に供給されてよい。また、累積的な生成物の流れ(22)は、その累積的な生成物の流れ(22)から少なくとも一部の未反応の反応物および他の化合物を分離することにより、所望の対応するC−Cアルケン生成物を精製すべく、更に処理されてよい。
【0049】
特定の反応、所望の生成物、ならびに反応ゾーンにおいて使用するために選択される触媒のみならず、反応物物質(C−Cアルカン、酸素、二酸化炭素など)の量およびそれらの反応物を如何にして発熱反応ゾーンおよび吸熱反応ゾーンのそれぞれに供給するのかについての決定は、一般的に利用可能な知識に基づき、充分に当業者の能力の範囲内である。例えば、選定された上流触媒の性能を二酸化炭素が阻害することが予想される場合には、二酸化炭素は、発熱反応ゾーンに供給される最初の反応物物質(C−Cアルカンおよび酸素)とブレンドされるべきではなく、むしろ二酸化炭素は、加熱された混合生成物ガスとブレンドされるべきであり、または吸熱反応ゾーンに直接的に供給されるべきである。逆に、直接的にせよ、または加熱された混合生成物ガスとブレンドするにせよ、二酸化炭素を吸熱反応ゾーンに供給することができない場合には、上流触媒は、二酸化炭素の存在を許容することができるように選択されるべきである。下流触媒の性能が酸素の存在により悪影響を受けるような場合には、酸化反応ゾーンにおける運転条件(例えば温度および床のサイズ)を、酸素がすべて消費され、その結果として、吸熱反応ゾーンに供給される加熱された混合生成物ガスが適切に酸素不含となるように調節することができる。
【0050】
本発明の方法において使用するのに適した触媒は、特に制限がなく、当技術分野において一般的に知られている。適切な上流触媒および下流触媒は、単に、それぞれ、発熱反応ゾーンおよび吸熱反応ゾーンのそれぞれにおいて起こるべき特定の反応に対して触媒的に活性な触媒である。
【0051】
上流触媒および下流触媒は、現在または未来において、当技術分野で知られているあらゆる適切な方法により調製されてよい。例えば、触媒は、初期湿気含浸法、化学気相堆積法、水熱合成法、塩溶融法、共沈法および他の方法により調製することができる。以降の箇所で更に詳細に検討されているように、対応するC−Cアルケンを生成するためのC−Cアルカンの発熱変換または吸熱変換に対して活性である触媒は、典型的には、一種もしくはそれ以上の金属及び/又は金属酸化物を含む。これに加え、上流触媒および下流触媒のうちのいずれか一方または両方が、例えば適切な金属または金属酸化物を用いて促進されてよい。
【0052】
その上、上流触媒および下流触媒のうちのいずれか一方または両方が担体物質を更に含んでいてよい。触媒物質は、当技術分野において既知のあらゆる方法により、およびあらゆるタイミングで、例えば、これらに限定するものではないが、触媒物質の調製中、焼成前または焼成後、更には促進剤の付加前または付加後を含めたあらゆるタイミングで担体に適用されてよい。適切な典型的担体物質は、これらに限定するものではないが、酸化マグネシウム、ジルコニア、安定化ジルコニア、ジルコニア安定化アルミナ、イットリウム安定化ジルコニア、カルシウム安定化ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、マグネシア、窒化物、炭化ケイ素、コーディエライト、コーディエライト−アルファアルミナ、アルミナ−シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、シリカ−アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−セリアおよび前述の物質の組合せ、を含む。更に、適切な触媒担体は、希土類金属酸化物、混合金属酸化物、メソ多孔性物質、耐火物質およびこれらの組合せを含んでいてよい。担体は、本触媒が使用されるであろう運転条件を維持するために望まれる適切な構造的安定性を達成するため、修飾されてよく、安定化されてよく、または前処理を施されてよい。
【0053】
担体は、細目金網、モノリス、粒子、ハニカム、環および他の形状であってよい。担体が粒子の形態を成している場合、それらの粒子の形状は、特に制限がなく、顆粒状、ビーズ状、錠剤状、ペレット状、円筒状、三葉状、球状、不規則な形状などを含むことができる。
【0054】
モノリスは、典型的には、何らかの連続製造物の単一片物質(unitary piece of material of continuous manufacture)を含み、例えば金属片もしくは金属酸化物片、発泡物質、またはハニカム構造物などを含む。当技術分野においては、望ましい場合、反応ゾーンは互いに積み重ねられた二つまたはそれ以上のそのような触媒モノリスを含んでいてよいことが知られている。例えば、触媒は、コーディエライトまたはムライトでできた耐火性酸化物「ハニカム」直線チャンネル押し出し物またはモノリスとして構造化することができ、またはそのような押し出し物またはモノリス上に担持されてよく、または最小の圧力降下を有し、高い空間速度を可能にする長手方向のチャンネルまたは通路を有する他の形状として構造化することができ、またはそのような構造上に担持されてよい。
【0055】
更に、本触媒物質は、当業者にとって既知の方法により、モノリシック担体上のウォッシュコートとして堆積されてもよい。加えて、触媒物質は、担体物質をウォッシュコートとして堆積させ、続いて、その担体物質のウォッシュコートに活性触媒物質、例えば、これらに限定するものではないが、酸化バナジウムまたは白金などを含浸させ、その後、その合わせられた担体および触媒物質を焼成することによりモノリシック担体と組み合わされてもよい。
【0056】
モノリシック担体は、安定化ジルコニア(PSZ)発泡体(Mg、CaまたはYで安定化された)、またはα−アルミナ、コーディエライト、セラミックス、チタニア、ムライト、ジルコニウム−安定化α−アルミナもしくはこれらの混合物の発泡体を含んでいてよい。また、モノリシック担体は、金属またはそれらの金属の合金、例えばアルミニウム、スチール、フェクラロイ、ハスタロイおよび当業者にとって既知の他のものなどから製作されてもよい。更に、他の耐火性発泡および非発泡モノリスも、満足のいく担体として機能し得る。セラミック酸化物担体形成性成分を伴っている場合と伴っていない場合の両方のケースにおける、促進剤金属前駆体および何らかのベース金属前駆体が押し出されることができ、三次元形状または構造物、例えばハニカム、発泡体または他の適切な紆曲路または直線路構造物などを調製することができる。
【0057】
図1に示されているように、発熱反応ゾーン(14)および吸熱反応ゾーン(20)は、単一の反応器(24)(点線で示されている)内に収容されていてよく、その反応器は、当技術分野において既知のあらゆる適切な反応器であってよく、例えば、これらに限定するものではないが、バッチ反応器、攪拌槽型反応器、連続攪拌槽型反応器(CSTRs)、管型反応器、シェルアンドチューブ熱交換器型反応器、多経路型反応器、マイクロチャンネルを有する反応器、短接触時間型反応器、触媒固定床型反応器および前述の特徴の組合せを有する反応器を含む。代替的に、各反応ゾーン(14、20)は別々の反応器(図示せず)内に配置されていてよく、および様々な組合せの反応器および反応ゾーンが配列されてよい。各反応ゾーン(14、20)は、運転温度、触媒の組成もしくは触媒の濃度が異なるサブゾーン、または当業者にとって既知の他の仕方で異なるサブゾーン(同じく図示されていない)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。更に、上流触媒および下流触媒は、任意の適切な配置でそれらの個々の反応ゾーンに設けられていてよく、そのような配置は、例えば、これらに限定するものではないが、固定床、流動床および噴流床を含む。このような構成はすべて、当技術分野において広く知られている。
【0058】
ある典型的な実施形態と結びつけて以降で更に詳しく検討されているように、所望の特定の生成物、ならびにその所望の生成物を生成するために選択される反応および触媒に依存して、発熱反応ゾーンおよび吸熱反応ゾーンのそれぞれに対する適切な運転条件を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0059】
ある典型的な実施形態においては、上流触媒は酸化的脱水素化触媒(ODH触媒)であってよく、その触媒は、酸素と共にC−Cアルカンの発熱的な触媒による酸化的脱水素化を触媒し、対応するC−Cアルケンおよび熱を生成する。更に、上流触媒は、例えば、固定床式の管型反応器内に収容されていてよい。
【0060】
当業者であれば、本発明の方法により発熱反応ゾーンにおいて成功裏に使用され得る様々なODH触媒について熟知しているであろう。適切なカテゴリーのODH触媒は、これらに限定するものではないが、Pt、Pd、Rh、IrおよびRuから選択される一つまたはそれ以上の貴金属を含む触媒;ならびにLi、Mo、W、V、Nb、Sb、Sn、Ga、Zr、Mg、Mn、Ni、Co、Ceおよび希土類金属から選択される金属の少なくとも一種の酸化物を含む触媒:を含む。例えば、必須元素として、Mo−Sb−WまたはCr−Sb−W、ならびにV、Nb、K、Mg、Sn、Fe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも一種の金属を有する混合金属酸化物触媒;更には、Nb、Cr、Zn、Fe、Mo、Mgおよび希土類元素の一つもしくはそれ以上の追加的な金属酸化物を伴うか、または伴わない、バナジウム−アルミニウムをベースとした混合金属酸化物触媒;および、更に、La、Ce、Pr、SmおよびErのうちの一種またはそれ以上を用いて促進されたバナジウムベースの触媒:は、すべて、プロパンの発熱的酸化的脱水素化を触媒し、プロペンを形成することが示されている。ある典型的な実施形態においては、ODH触媒は、必須物質として、酸化バナジウム、ならびに、ニオブ、マグネシウム、モリブデンおよび希土類元素、からなる群から選択される金属の少なくとも一種の酸化物を含む。既に述べられているように、ODH触媒は、種々の物質、例えばアルミナ、白金、シリカ、他の金属酸化物、ミクロ多孔性物質、メソ多孔性物質および耐火性物質などにより担持されていてよい。例えば、バナジウム−ニオブ−酸化物触媒を酸化ケイ素担体物質と合わせてその担体物質上に担持し、本発明の方法における発熱反応ゾーンにおいて有利に使用することができる。
【0061】
本出願人らは、驚くべきことに、高活性ODH触媒、例えば特定の物質、例えばアルミナ、ジルコニアまたはチタニア(例えばシリカに対立するものとして)などに担持されたバナジウム−酸化物をベースとした触媒などは、微粒子状(粉末状)の形態において単独で使用する場合よりも寧ろ、その担持された触媒をモノリシック担体上に担わせた場合の方が、プロパンからプロペンへの発熱的ODH変換を一層良好に触媒することを見出した。例えば、シリカに担持されたバナジウムベースのODH触媒は、ウォッシュコートとしてのコーディエライトモノリス上に堆積されているか、または単に粉末状の形態(300〜500ミクロンの平均粒子サイズを有する)において使用されるかにかかわらず、プロパンのODHに対して同様な性能をもたらすことが判明した。しかし、驚くべきことに、ウォッシュコートとしてのコーディエライトモノリス担体上に担われたアルミナ担持型のバナジウムをベースとした触媒組成物は、粉末状の形態(同じく、300〜500ミクロンの平均粒子サイズを有する)において使用されたときよりも、プロパンのODHに対して一層良好に機能を果たした。更に、モノリシック担体がコーディエライト以外の物質、例えば、何らかの統合体の形態、例えば、これらに限定するものではないが、モノリス、ハニカム、プレート、発泡体、熱交換器の構成部品、反応器のチャンバー壁などを含めた統合体の形態における、金属またはセラミックなどから形成された場合においてさへ、同様な性能の改善が期待される。
【0062】
発熱反応ゾーン内におけるC−Cアルカンの酸化的脱水素化に適した運転条件は、当技術分野において一般的に知られており、当業者により決定可能である。例えば、典型的には、C−Cアルカン、酸素および場合によって希釈剤が、別々に、または様々な相互の組合せにおいて、約1,000hr−1から1,000,000hr−1までの間(例えば約5,000hr−1から200,000hr−1までの間、更には5,000hr−1から10,000hr−1まで)の全ガス時間空間速度(GHSV)で発熱反応ゾーンへ供給され。反応圧力は、典型的には、0.1気圧から約10気圧(atm)までの範囲、例えば0.8atmから5.0atmまでの範囲であり、反応温度は、典型的には、400℃から1,100℃までの間、例えば450℃から650℃までの間に維持される。反応物と触媒との間の接触時間は、典型的には、10ミリ秒(ms)(360,000h−1)から4秒(900h−1)までの範囲である。発熱反応ゾーンへ供給されるC−Cアルカンと酸素との分子比は、例えば1:1から10:1までの範囲であってよく、例えば1:1から5:1までの間などであってよい。
【0063】
この典型的な実施形態において、選定された上流触媒がODH触媒であるときには、下流触媒は、穏やかな酸化剤の存在下において、発熱反応ゾーンにおけるODH触媒と同じC−Cアルカンの同じ対応するC−Cアルケンへの吸熱的脱酸素化を触媒する、吸熱的脱水素化触媒であってよい。例えば、上流触媒がプロパンをプロペンに変換する酸化的脱水素化触媒である場合には、下流触媒は、同じくプロパンをプロペンに変換する吸熱的脱水素化触媒であってよい。穏やかな酸化剤は、例えば、これらに限定するものではないが、二酸化炭素、蒸気、またはこれらの組合せであってよい。上述のように、多くのそのような吸熱的脱水素化触媒が知られており、それらの吸熱的脱水素化触媒は、本発明の方法による吸熱反応ゾーンにおいて使用するのに適していよう。
【0064】
当業者であれば、本発明の方法により吸熱反応ゾーンにおいて成功裏に使用され得る様々な吸熱的脱水素化触媒について熟知しているであろう。適切なカテゴリーの吸熱的脱水素化触媒は、これらに限定するものではないが、酸化クロムをベースとした触媒であって、Mo、W、V、Ga、Mg、Ni、Fe、アルカリ元素、アルカリ土類元素および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物も含んでいてよい酸化クロムベースの触媒;更には酸化バナジウムをベースとした触媒であって、Li、Na、KまたはMgを用いて促進されていてよい酸化バナジウムベースの触媒;白金をベースとした触媒であって、ナトリウム、カリウム、セシウム、レニウムおよびスズからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含んでいてもよい白金ベースの触媒;ならびにGa、Fe、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する触媒:を含む。
【0065】
当業者であれば容易に認識されるように、本発明による吸熱反応ゾーンにおいて使用するのに適した多くの触媒組成物が存在する。例えば、吸熱的脱水素化触媒は、バナジウム−クロム−酸化物、および場合によって、銅、銀および金、からなる群から選択される金属の少なくとも一種の酸化物を含んでいてよい。バナジウム−クロム−酸化物触媒は、Cu、Ag、Au、K、Cs、Pt、Rh、からなる群から選択される一種またはそれ以上の金属の酸化物、および追加的な金属酸化物も含んでいてよい。更に、バナジウム−クロム−酸化物触媒は、リン酸塩および硫酸塩、からなる群から選択される一つまたはそれ以上の試薬を用いて修飾されていてよい。
【0066】
既に述べられているように、吸熱的脱水素化触媒は、種々の物質、例えばアルミナ、白金、シリカ、ジルコニア、ゼオライト、他の金属酸化物、ミクロ多孔性物質、メソ多孔性物質および耐火性物質などと混ぜ合わされて、およびそれらの物質上に担持されてよい。例えば、酸化ケイ素物質またはメソ多孔性物質、例えばMCM−41などは、酸化バナジウムをベースとした触媒、例えばV/Cr/Si/O、V/Cr/Ag/Si/O、V/Cr/Ag/Cs/Si/Oなど、および他の触媒を担持するために使用することができる。更に、他の例は、これらに限定するものではないが、アルミナ上に担持されたV/Cr/Mn/W/O触媒、ミクロ多孔性ゼオライト物質、例えばZSM−5などに担持された酸化白金ベースの触媒、および酸化ガリウム物質(例えば、β−Ga)上に担持されたV/Cr/AgO触媒、を含む。当業者であれば容易に認識されるように、本発明による吸熱反応ゾーンにおいて使用するのに適する触媒組成物および担体物質の数多くの組合せが存在する。
【0067】
−Cアルカンの吸熱的脱水素化に適した運転条件は当業者により一般的に知られており、および吸熱反応ゾーンの運転に適用することができる。例えば、二酸化炭素、未反応のC−Cアルカンを含む加熱された混合生成物ガスおよび場合によって希釈剤が、別々に、または混合して、約500hr−1から100,000hr−1までの全ガス時間空間速度(GHSV)で吸熱反応ゾーンに供給されてよい。反応圧力は、典型的には、0.1atmから約10atmまでの範囲、例えば0.8atmから5.0atmまでの範囲であり、および反応温度は、典型的には、300℃から900℃までの間に維持され、例えば450℃から700℃までの間に維持される。反応物と触媒との間の接触時間は、典型的には、36ms(100,000h−1)から7.2秒(500h−1)までの範囲であり、例えば200msから5秒までなどの範囲である。発熱反応ゾーンに供給される未反応のC−Cアルカンと穏やかな酸化剤、例えば二酸化炭素などとの分子比は、例えば1:0.1から1:10までの範囲であってよく、更には1:1から1:5までの間であってよい。C−Cアルケンの酸化的脱水素化を果たすため、従来の蒸気クラッキングおよび非酸化的脱水素化方法に代わるものとして、短い接触時間(SCT)の運転条件を使用したことに留意すべきであり、ここで、反応物と酸化的脱水素化触媒との接触時間は、200℃から1100℃までの間の温度および0.3atmから40atmまでの圧力の下で、典型的には1msから650msまでの範囲である。
【実施例】
【0068】
「ODH/DH統合方法の実施例」
(上流の)酸化的脱水素化触媒として選定された触媒である、酸化ケイ素上に担持されたV/Nb/Oは、次のようにして調製された。
【0069】
シリカ担体物質(Davisilグレード646)が、1グラムの触媒当たり0.05gのVおよび0.05gのNbをもたらす、1.3モルのシュウ酸水溶液中におけるメタバナジン酸アンモニウムおよびシュウ酸ニオブアンモニウムを含有する溶液でインシピエントウェットネスに含浸された。その物質を120℃で8時間乾燥させ、500℃で2時間焼成した。
【0070】
(下流の)吸熱的脱水素化触媒として選定された触媒である、酸化ケイ素上に担持されたV/Cr/Ag/Oは、次のようにして調製された。
【0071】
10グラムのシリカ担体物質(1グラム当たり675平方メートルの平均表面積、1グラム当たり0.68立方センチメートルの細孔体積、および40オングストローム(Å)の平均細孔径を有するMerck Silicaゲル)が、硝酸クロム(III)水和物(〜13重量%のCr)、硫酸バナジウム(IV)水和物(〜21重量%のV)および硝酸銀(〜64重量%のAg)の7ミリメートルの均一溶液でインシピエントウェットネスで含浸された。結果として生じたクロム、バナジウムおよび銀の原子比は1:1:0.05であった。密閉容器中において60分間浸漬した後、その湿った青色のシリカ前駆体をセラミック製の皿に入れ、蒸気焼成プロセスに適した状態をもたらすべく鉛で軽く蓋をした。焼成ステップは三段階で実施された:初めに、等温箱形炉内において80℃に3時間加熱した。125℃における6時間の乾燥ステップの後、最後に、1分間当たり約2〜4標準リットル(SLPM)で内部を連続的にエアーパージしながら、300℃で1時間、その後、650℃で2時間焼成した。
【0072】
(実施例1〜3で使用した装置構成)
連続的な酸化的脱水素化および吸熱的脱水素化(「ハイブリッド方法」)によるプロパンの変換が、上流の発熱反応ゾーンおよび隣接した下流の吸熱反応ゾーンを含む、外径(OD)が0.75インチ(1.9センチメートル)の石英管状マイクロリアクター内で実施された。反応条件は以下のとおりであった。1psigの圧力(1.07atm)および1分間当たり620標準立方センチメートル(SCCM)の流量において、500℃から650℃まで。供給ガス混合物は、10%のプロパン、40%の二酸化炭素、45%の窒素および5%の酸素(供給物A)、を含んでいた。この供給物が、ODH触媒の独立した評価、更には、本明細書の以降の箇所で説明されているODH/EDハイブリッド方法において使用された。
【0073】
吸熱的脱水素化触媒の独立した評価では、供給ガス混合物は、10%のプロパン、40%の二酸化炭素および50%の窒素(供給物B)、を含んでいた。オンラインガス生成物分析は、フレームイオン化検出器および熱伝導度検出器(FID/TCD)を備えたガスクロマトグラフ装置を用いて果たされた。
【0074】
(実施例1)
上で説明されている方法により調製された2ミリリットル(ml)のV/Nb/Si/O酸化的脱水素化触媒を発熱反応ゾーンに配置し、および吸熱反応ゾーンでは2mlのV/Cr/Ag/Si/O吸熱的脱水素化触媒を使用した。それぞれの触媒が、625℃において、0.4秒の滞留時間で独立に試験された。第一のゾーンにおける触媒、V/Nb/Si/Oは供給物Aを用いて評価され、一方、第二のゾーンにおける触媒、V/Cr/Ag/Si/Oは供給物Bを用いて試験された。ハイブリッド実験(即ち、両方の触媒)は供給物Aを用いて実施された。これらの実験の結果が表1に与えられている。表に示されているように、ハイブリッド方法での累積的な収率は、別々に運転されたどちらの反応ゾーンの場合よりも高かった。
【0075】
【表1】

【0076】
選定された酸化的脱水素化触媒、酸化ケイ素上に担持されたV/Nb/Oは、供給ガス混合物中に二酸化炭素および酸素を有することに対して充分に応答し、および発熱反応ゾーンにおいてプロピレンを生成しながら熱を発生させた。選定された吸熱的脱水素化触媒、酸化ケイ素上に担持されたV/Cr/Ag/Oは、酸素を伴うことなく、二酸化炭素の存在下において、高められた性能を呈し、および吸熱反応ゾーンにおける補助的なプロピレン生成のために、ODH反応ゾーンにおいて発生した熱を使用した。
【0077】
(実施例2)
第二の実験は、滞留時間が0.6秒である点を除き、実施例1と同じ量の同じ触媒を用いて実施された。結果が以下の表2に与えられている。表に示されているように、ハイブリッド方法での累積的な収率は、別々に運転されたどちらの反応ゾーンの場合よりも高かった。
【0078】
【表2】

【0079】
(実施例3)
本発明により、実施例1または2の場合よりももっと高濃度のプロパン、例えば約10%から約50%までなどの濃度のプロパンを含有する供給ガス混合物を用いてハイブリッド方法を運転することもできる。
【0080】
以下の供給ガス混合物が使用される。
供給物C:40%のプロパン、5%の酸素、45%の二酸化炭素および10%の窒素
供給物D:40%のプロパン、50%の二酸化炭素および10%の窒素
第三の実験は、温度が522℃であり、供給物CおよびDが用いられる点を除き、実施例1と同じ量の同じ触媒を用い、実施例1と同じ滞留時間で実施される。期待された結果が以下の表3に与えられている。ハイブリッド方法での累積的な収率は、別々に運転されたどちらの反応ゾーンの場合よりも高いことが期待される。
【0081】
【表3】

【0082】
「モノリスまたは粉末担体上の触媒を用いるODHの実施例」
(実施例4〜5で使用した装置構成)
実施例4および5における担持された触媒の性能が、内径10ミリメートルの石英製管型マイクロリアクター内におけるプロパンの酸化的脱水素化の下で実施された。
【0083】
反応条件は以下のとおりであった。以下で指示されている反応物流量を用い、1psigの圧力で600℃。供給ガス混合物は、10%のプロパン、5%の酸素および85%の窒素、を含んでいた。実施例4および5において以下で説明されているすべての担持型触媒のすべての評価でこの供給物を使用した。生成物の分析は、FID/TCDを備えたガスクロマトグラフ装置を用いて果たされた。
【0084】
(実施例4−コーディエライト上に担持されたバナジウム−シリカ(粉末対モノリス))
5重量%のV/SiOの組成を有する粉末触媒が、シリカゲル(Merck、グレード10181、粒径300〜500ミクロン)のサンプルを、焼成後、1グラムの触媒当たり0.05gのVをもたらす、1.3モルのシュウ酸水溶液中におけるメタバナジン酸アンモニウムの溶液で含浸させることにより調製された。この物質を120℃において8時間乾燥させ、500℃で2時間焼成した。触媒粉末(1g)を管型反応器内の石英フリット上に装填した。供給ガスは0.5SLPMの流量で供給された。
【0085】
5重量%のV/SiOの組成を有するモノリス触媒は、前述の5%V/SiO粉末触媒から、水を加えてスラリーを形成し、そのスラリー粒子を10ミクロン未満の平均サイズにまで粉砕し、その後、結合剤として重量で10%のコロイド状シリカ溶液(Ludox、Aldrich)としてのSiOを加えることにより、調製された。V−Si粉末および結合剤混合物のウォッシュコートを、コーディエライト基体(Corning、1平方センチメートル当たり62セル、壁厚1.65ミリメートル)上に、1立方インチ当たり3グラム(1立方センチメートル当たり0.183グラム)の負荷量で堆積させた。長さ50ミリメートルおよび外径9.5ミリメートルのモノリス触媒が、セラミックペーパーを用いて管型反応器内に取り付けられた。供給ガスは0.25SLPMの流量で供給された。
【0086】
【表4】

【0087】
(実施例5−コーディエライト上に担持されたバナジウム−アルミナ(粉末対モノリス))
5重量%のV/Alの組成を有する粉末触媒が、多孔質アルミナ(約1.0ml/グラムの窒素細孔体積、1グラム当たり145平方メートルの面積)のサンプルを、焼成後、1グラムの触媒当たり0.05gのVをもたらす、1.3モルのシュウ酸水溶液中におけるメタバナジン酸アンモニウムの溶液で含浸させることにより調製された。この物質を120℃において8時間乾燥させ、500℃で2時間焼成した。触媒粉末(粒径300〜500ミクロン、0.125g+0.875gの石英)を管型反応器内のガラスフリット上に装填した。供給ガスは0.25SLPMの流量で供給された。
【0088】
6.8重量%のV/Alの組成を有するモノリス触媒は、結合剤として疑似ベーマイトを用い、標準的なウォッシュコーティング技術により、アルミナウォッシュコートを、コーディエライト基体(Corning、1平方センチメートル当たり62セル、壁厚1.65ミリメートル)上に、1立方インチ当たり1.4グラムの負荷量で堆積させることにより調製された。続いて、そのアルミナは、1グラムのアルミナウォッシュコート当たり0.068グラムのVをもたらす、1.3モルのシュウ酸水溶液中におけるメタバナジン酸アンモニウムの溶液で含浸された。その物質を120℃において8時間乾燥させ、700℃において2時間焼成した。長さ19.1ミリメートルおよび外径9.8ミリメートルのモノリス触媒が、セラミックペーパーを用いて管型反応器内に取り付けられた。供給ガスは0.25SLPMの流量で供給された。
【0089】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明による方法の実施形態の略図である。
【符号の説明】
【0091】
10 C−Cアルカン
12 酸素
14 発熱反応ゾーン
16 加熱された混合生成物ガス
18 穏やかな酸化剤
20 吸熱反応ゾーン
22 累積的な生成物の流れ
24 単一の反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−Cアルカンをその対応するC−Cアルケンへ変換する方法であって、
A)C−Cアルカンおよび酸素を発熱反応ゾーン内において上流触媒と接触させる工程、ここで、当該上流触媒は、酸素の存在下において、C−Cアルカンの、その対応するC−Cアルケンへの発熱的変換について触媒的に活性である;および
B)発熱反応ゾーン内において、C−Cアルカンの一部を、対応するC−Cアルケンに発熱的に変換して、加熱された混合生成物ガスを生成する工程、当該生成物ガスは、対応するC−Cアルケン、未反応のC−Cアルカンおよび当該発熱的に変換する工程により生成された熱を含む;
C)加熱された混合生成物ガスおよび弱い酸化剤を、吸熱反応ゾーン内において下流触媒と接触させる工程、ここで、当該下流触媒は、弱い酸化剤の存在下で、未反応のC−Cアルカンの、対応するC−Cアルケンへの吸熱的変換について触媒的に活性である;
D)吸熱反応ゾーン内において、未反応のC−Cアルカンの少なくとも一部を、対応するC−Cアルケンに吸熱的に変換して、累積的な生成物の流れを生成する工程、ここで、当該累積的な生成物の流れが、少なくとも、反応ゾーンのそれぞれにおいて生成された対応するC−Cアルケンを含む:
を含む方法。
【請求項2】
上流触媒が酸化的脱水素化触媒を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸化的脱水素化触媒が、
A)Pt、Pd、Rh、IrおよびRuから選択される一種以上の貴金属を含む触媒;および
B)Li、Mo、W、V、Nb、Sb、Sn、Ga、Zr、Mg、Mn、Ni、Co、Ceおよび希土類金属から選択される金属の少なくとも一種の酸化物を含む触媒:
からなる群から選択される少なくとも一種の触媒組成物を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
酸化的脱水素化触媒が担体物質を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
酸化的脱水素化触媒の担体物質が、アルミナ、チタン、ジルコニウム、シリカ、ゼオライト、希土類金属酸化物、混合金属酸化物、メソ多孔性物質、耐火性物質およびこれらの組合せ:からなる群から選択される物質を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
酸化的脱水素化触媒が、必須物質として、酸化バナジウム、および金属(当該金属はニオブ、マグネシウム、モリブデンおよび希土類元素、からなる群から選択される)の少なくとも一種の酸化物を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
酸化的脱水素化触媒の担体物質が酸化ケイ素を含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
下流触媒が吸熱的脱水素化触媒を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
吸熱的脱水素化触媒が、
A)酸化クロム、および場合によってMo、W、V、Ga、Mg、Ni、Fe、アルカリ元素、アルカリ土類元素および希土類元素からなる群から選択される少なくとも一種の金属の酸化物を含む触媒;
B)酸化バナジウム、および場合によってLi、Na、KおよびMgからなる群から選択される少なくとも一種の元素を含む触媒;
C)白金、および場合によってナトリウム、カリウム、セシウム、レニウムおよびスズからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む触媒;および
D)Ga、Fe、MnおよびCoからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む触媒:
からなる群から選択される少なくとも一種の触媒組成物を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
吸熱的脱水素化触媒が担体物質を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
吸熱的脱水素化触媒の担体物質が、アルミナ、チタン、ジルコニウム、シリカ、ゼオライト、希土類金属酸化物、混合金属酸化物、メソ多孔性物質、耐火性物質およびそれらの組合せ:からなる群から選択される物質を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
吸熱的脱水素化触媒が、必須物質として、酸化バナジウム、酸化クロム、ならびに、少なくとも一種の金属(当該金属は、銅、銀および金からなる群から選択される)を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
吸熱的脱水素化触媒の担体物質が酸化ケイ素を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
弱い酸化剤が二酸化炭素を含む、請求項8記載の方法。
【請求項15】
酸素含有ガスがC−Cアルカンとは別に発熱反応ゾーンに供給される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
弱い酸化剤の少なくとも一部がC−Cアルカンとは別に発熱反応ゾーンに供給される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
弱い酸化剤の少なくとも一部が、加熱された混合生成物ガスとは別に吸熱反応ゾーンに供給される、請求項1記載の方法。
【請求項18】
−Cアルカンがプロパンを含み、対応するC−Cアルケンがプロペンを含み、および弱い酸化剤が二酸化炭素を含む、請求項1記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−110974(P2008−110974A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−267754(P2007−267754)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】