説明

アルキルアミノアルキルアルコキシシランの製造法

本発明は、一般式IIR(NR’)H (II)〔式中、Rは、1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、R’は、水素原子(H)を表わすかまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わす〕で示される過剰量で使用されるアルキルアミンを、一般式IIIX−Y−Si(R1)n(OR23-n (III)〔式中、Xは、ClまたはBrを表わし、Yは、一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH(CH3))(CH2)−および−(CH24−からの2価アルキル基であり、基R1およびR2は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、nは、0または1または2である〕で示されるハロゲンアルキルアルコキシシランと反応させ、過剰の遊離アルキルアミンを留去し、同時に、残留するアルキルアミンヒドロハロゲン化物およびアルキルアミノアルキルアルコキシシランヒドロハロゲン化物を含有する生成物混合物を、存在する化合物に相当するアルキルアミノアルキルアルコキシシランを添加しながら処理し、それによって遊離されたアルキルアミンを系から導出し、および残留する生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物を後処理することにより、一般式(I)R−(NR’)−Y−Si(R1)n(OR23-n (I)〔式中、Rは、1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、R’は、水素原子(H)を表わすかまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、Yは、一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH(CH3))(CH2)−および−(CH24−からの2価アルキル基であり、基R1およびR2は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、nは、0または1または2である〕で示されるアルキルアミノアルキルアルコキシシランを製造するための方法に関する。後処理のために、生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物は、温度調節され、アルカリ金属アルコラート溶液と反応され、アルカリ金属ハロゲン化物が沈殿され、および分離され、使用されたアルカリ金属アルコラート溶液の溶剤は、蒸留によって生成物から除去され、生成物が取得される。しかし、後処理は、生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物に非極性の有機溶剤を添加し、この混合物を水性のアルカリ金属アルカリ液またはアルカリ土類金属アルカリ液で処理し、その際に生じる、金属塩含有水性相を、有機生成物相と分離し、有機相を、蒸留し、生成物を取得することにより、水性で実施されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルアミンをハロゲンアルキルアルコキシシランと反応させ、引続き得られた反応混合物を後処理し、アルキルアミンをプロセス中に返送することによって、アルキルアミノアルキルアルコキシシランを製造する方法に関する。
【0002】
アルキルアミノアルキルアルコキシシラン、例えばDynasylan(登録商標)1189、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、を相応するアルキルアミンとハロゲンアルキルアルコキシシランとの反応によって製造することは、公知である(ドイツ連邦共和国特許第10140563号明細書)。この反応の場合には、ハロゲン化水素、例えば塩化水素(HCl)が生成し、この塩化水素は、一般に過剰量で使用されるアルキルアミンならびに反応の際に生じた生成物、アルキルアミノアルキルアルコキシシラン、と反応し、相応するアミンヒドロハロゲン化物に変わる。アミンヒドロハロゲン化物は、部分的に生成物中に溶解しており、沈殿のために晶出器中に移される。この晶出器は、冷却され、場合によっては先行する反応段階よりも低い圧力段階で運転される。晶出器中で沈殿したアミンヒドロハロゲン化物は、濾過によって粗製生成物から分離され、純粋な生成物は、蒸留によって取得される。この場合、アミンヒドロクロリドの除去の際に、使用されたアルキルアミンがアルキルアミンヒドロハロゲン化物の形で分離され、ならびに生成物がアルキルアミノアルキルアルコキシ−シランヒドロハロゲン化物の形で分離されることは、欠点である。この結果、理論的に予想すべき収率と比較して生成物の損失をまねく。更に、反応体は、相応するアミノアルキルヒドロハロゲン化物の形で失われ、このことは、付加的に方法の経済的負担を生じる。更に、分離されたアミンヒドロハロゲン化物は、廃棄されなければならないか、または多くの場合には、費用の掛かる方法で回収されなければならない。
【0003】
本発明は、上記欠点を軽減する方法を見出すという課題に基づくものである。殊に、廃棄すべき残留物をできるだけ殆んど生じさせず、高い収量を可能にする方法を提供すべきである。
【0004】
前記課題は本発明により、特許請求の範囲の記載に相応して解決される。
【0005】
即ち、アルキルアミン、例えばn−ブチルアミンとハロゲンアルキルアルコキシシラン、例えば3−クロロプロピルトリメトキシシランとの反応は、有利に簡単な攪拌装置中、例えばパドル型乾燥機(Schaufeltrockner)または攪拌型釜中で付加的な晶出器なしに有利に実施することができ、この場合には、高い収量が達成される。更に、過剰量で使用されるアルキルアミンとハロゲンアルキルアルコキシシランとの反応の終結後に遊離アルキルアミンは、留出されうる。生じる生成物混合物は、アルキルアミンヒドロハロゲン化物およびアルキルアミノアルキルアルコキシシラン塩酸塩を含有し、有利に存在する化合物に相当するアルキルアミノアルキルアルコキシシランを添加しながらさらに蒸留されることができ、この場合には、殊に相応する量のアルキルアミノアルキルアルコキシシランの添加によって生成物混合物中に存在するアルキルアミン塩酸塩から残留するアルキルアミンも遊離され、蒸留によって導出されることができる。
【0006】
即ち、比較的簡単な方法で過剰量で使用されるアルキルアミンは、90%超を回収し、再びプロセス中に再循環させることができ、このことは、本方法の特殊な経済性に有利に貢献する。蒸留工程の塔底部中には、生成物に相当するアルキルアミノアルキルアルコキシシランヒドロハロゲン化物が残留する。
【0007】
こうして得られた生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物を有利に後処理するために、
生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物は、熱処理され、アルカリ金属アルコラート溶液と反応され、アルカリ金属ハロゲン化物が沈殿し、およびアルカリ金属ハロゲン化物が分離され、使用されたアルカリ金属アルコラート溶液の溶剤が蒸留によって生成物から除去され、生成物が取得されるか、
または
生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物に非極性の有機溶剤が添加され、この混合物は、水性のアルカリ金属アルカリ液またはアルカリ土類金属アルカリ液で処理され、その際に生じる、金属塩含有水性相は、有機生成物相と分離され、有機相は、蒸留され、生成物が取得される。
【0008】
従って、本発明の対象は、
一般式II
R(NR’)H (II)
〔式中、Rは、1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、R’は、水素原子(H)を表わすかまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わす〕で示される過剰量で使用されるアルキルアミンを
一般式III
X−Y−Si(R1)n(OR23-n (III)
〔式中、Xは、ClまたはBrを表わし、Yは、一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH(CH3))(CH2)−および−(CH24−からの2価アルキル基であり、基R1およびR2は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、nは、0または1または2である〕で示されるハロゲンアルキルアルコキシシランと反応させ、
過剰の遊離アルキルアミンを留去し、
同時に、即ち前記の蒸留中に残留するアルキルアミンヒドロハロゲン化物およびアルキルアミノアルキルアルコキシシランヒドロハロゲン化物を含有する生成物混合物を、存在する化合物に相当するアルキルアミノアルキルアルコキシシランを添加しながら処理し、それによって遊離されたアルキルアミンを系から導出し、および
残留する生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物を後処理することにより、一般式I
R−(NR’)−Y−Si(R1)n(OR23-n (I)
〔式中、Rは、1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、R’は、水素原子(H)を表わすかまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、Yは、一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH(CH3))(CH2)−および−(CH24−からの2価アルキル基であり、基R1およびR2は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、nは、0または1または2である〕で示されるアルキルアミノアルキルアルコキシシランを製造する方法である。
【0009】
有利には、反応は、加熱可能または冷却可能の耐圧性または耐低圧性の攪拌装置中で実施され、この攪拌装置は、同時に蒸留可能性を提供する。好ましくは、この装置は、相分離のための付加的な可能性を備えていることができる。
【0010】
この場合、本発明による方法の際に、アルキルアミンとハロゲンアルキルアルコキシシランとは、有利に1.1対1〜10対1、特に1.5対1〜10対1、特に有利に1.8対1〜6対1、殊に有利に2対1〜5対1、殊に4対1のモル比で使用される。
【0011】
こうして、本発明による方法の場合には、式IIに記載のアルキルアミンとしては、特にメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−ブチルアミン、2−ペンチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、3−ペンチルアミン、2−オクチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミンまたはドデシルアミンが使用される。
【0012】
更に、好ましくは、本発明による方法の場合には、式IIIに記載のハロゲンアルキルアルコキシシランとしては、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロイソブチルトリメトキシシラン、3−クロロイソブチルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、1−クロロメチルトリメトキシシラン、1−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシラン、クロロイソブチルメチルジメトキシシラン、クロロイソブチルジメチルメトキシシラン、クロロイソブチルジメチルエトキシシラン、クロロイソブチルジメチルジエトキシシラン、クロロエチルメチルジメトキシシラン、クロロエチルメチルジエトキシシラン、クロロエチルジメチルメトキシシラン、クロロエチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシランまたはクロロメチルジメチルエトキシシランが使用される。
【0013】
本発明による方法を実施するために、アルキルアミンおよびハロゲンアルキルアルコキシシランは、良好に混合されながら実施のために設けられた反応装置中に供給され、この場合この反応混合物の温度は、一般に上昇する。この反応の実施のために、装置は、必要に応じて冷却されてもよいし、加熱されてもよく、ならびに内部圧力は、変動してもよい。この反応混合物は、適当な攪拌装置、混合装置または混練装置によって混合することができる。即ち、この反応は、60〜200℃、特に60〜180℃、特に有利に60〜130℃の温度および0.1〜20バール、特に0.1〜5バールの圧力で有利に実施される。反応は、一般に30分〜16時間後、特に1〜15時間後、特に有利に2〜14時間後に終結している。その後に、過剰のアルキルアミンは、有利に蒸留によってシステムから導出され、この場合本発明によれば、生成物中には、十分に定義された量で相応するアルキルアミノアルキルアルコキシシランが添加され、したがって生成物混合物中になお存在する量のアルキルアミンヒドロハロゲン化物からアルキルアミンは、平衡のシフトによって遊離され、供給されたアルキルアミノアルキルアルコキシシランは、相応してアルキルアミノアルキルアルコキシシランヒドロハロゲン化物に変わる。
【0014】
後処理のために、こうして得られた生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物は、十分に温度調節することができ、即ち軟質の攪拌可能な状態またはペースト状の混合可能な状態でアルカリ金属アルコラート溶液と反応することができ、この場合には、アルカリ金属ハロゲン化物が沈殿し、これは、例えば簡単な経済的方法で生成物の濾過によって分離される。引続き、使用されたアルカリ金属アルコラート溶液の溶剤は、例えば蒸留によって生成物から除去することができ、生成物は、精留に供給されることができる。この場合、それぞれの蒸留工程は、薄膜蒸発器または短路蒸発器中および/または蒸留塔内で実施されてよい。生成物流の一部分は、プロセス中で再び、アルキルアミン塩酸塩からのアルキルアミンの先行して記載された遊離のために有利に利用されることができる。
【0015】
しかし、本発明による方法の場合、後処理は、
存在する生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物が特に一連のヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、殊にトルエンから選択された、本質的に非極性の有機溶剤と混合され、
得られた混合物が水性アルカリ液で処理され、ならびに特に定義された予定作業時間で反応させることができ、以下の反応方程式も参照のこと、
引続き水相が有機相と分離され、
有機相から有機溶剤が除去され、および
残留する有機相が取得されるように実施されてもよい。
[CH3(CH23(NH2)(CH23Si(OMe)3+Cl-+NaOH(水性)→[CH3(CH23(NH)(CH23Si(OMe)3+[Na++Cl-+H2O]
【0016】
この場合には、水性アルカリ液として特に少なくとも12、特に有利に13〜14のpH値を有する強アルカリ液を使用することができる。pH値は、当業者に自体公知の方法で、例えばpH紙を用いて測定されることができる。アルカリ液としては、有利にNaOHアルカリ液またはKOHアルカリ液が使用される。この場合、水性アルカリ液の濃度は、この水相が後処理後に12のpH値を達成するように選択されることができる。好ましいのは、12を上廻るpH値である。好ましくは、こうして得られた混合物は、攪拌しながら30分間まで、特に10秒間〜10分間、特に有利に15秒間〜5分間、殊に有利に20秒間〜3分間、殊に30秒間〜1分間反応させることができる。
【0017】
好ましくは、この水相の後処理は、5〜100℃、特に有利に10〜60℃、殊に有利に20〜40℃の範囲内の温度で実施される。この場合、好ましくは、底部排出口および覗き窓を含めて円錐形に延在する底部を備えた加熱可能/冷却可能な攪拌釜中で作業することができる。釜および攪拌機は、特に不銹鋼材料、例えば特殊鋼または琺瑯仕上げされた鋼から構成されている。一般に、既に短い停止時間後に、明確に互いに別々に存在する2つの相が形成される。2つの相の形成後に、水相は、釜の底部バルブを介して有機相を放棄することができ、即ち有機相と分離することができる。水相は、一般に反応の際に形成された塩を溶解された形で含有し、したがって、苛性ソーダ液を使用する場合には、水相は、例えば溶解されたNaClを含有する。更に、有機相は、分離ユニット中、例えば蒸留装置中に移送することができるかまたは薄膜蒸発器または短路蒸発器を介して運搬される。蒸留装置中に存在するかまたは運搬される有機溶剤は、有利に減圧下で分離によって除去されることができる。塔底部中には、有機相が残留し、この有機相は、生成物の取得のために有利に濾過および/または蒸留される。
【0018】
本発明による方法の1つの好ましい実施態様において、n−ブチルアミンと3−クロロプロピルトリメトキシシラン(CPTMO)とが3対1のモル比で攪拌釜中、例えば攪拌型オートクレーブ中で使用される場合には、60〜180℃の温度で0.1〜10バールの圧力で良好な混合下に反応させることができ(略して反応とも呼ばれる)、引続き過剰のn−ブチルアミンは、特に105〜115℃で反応器から、例えば次に示すように留去される:
2Cl(CH23Si(OMe)3+6H2N(CH23CH3→CH3(CH23(NH)(CH23Si(OMe)3+3H2N(CH23CH3+[CH3(CH23(NH2)(CH23Si(OMe)3+Cl-+[H3N(CH23CH3+Cl-
【0019】
遊離したn−ブチルアミンの留去中に、ブチルアミン塩酸塩は、存在するn−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランならびに存在する量比に相応して場合により添加されたn−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan 1189)と反応させることができ、n−ブチルアミンおよび3−(トリメトキシシリル)−N−(n−ブチル)プロピルアミン塩酸塩に変わることができる。即ち、蒸留の開始時にn−ブチルアミンならびに3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシランは、部分的にのみプロトン化され、即ちヒドロハロゲン化物として存在する。n−ブチルアミンは、蒸留によりシステムから除去され、それによって3−(トリメトキシシリル)−N−(n−ブチル)プロピルアミン塩酸塩への平衡にシフトされる:
CH3(CH23(NH)(CH23Si(OMe)3+[CH3(CH23(NH2)(CH23Si(OMe)3+Cl-+[H3N(CH23CH3+Cl-→2[CH3(CH23(NH2)(CH23Si(OMe)3+Cl-+H2N(CH23CH3
【0020】
n−ブチルアミンとCPTMOとを3:1の比で反応させる場合には、n−ブチルアミン1モルが使用される。n−ブチルアミン2モルは、全ての添加なしに再び蒸留によって除去されることができる。なぜならば、この反応の場合には、HCl1モルが生じ、蒸留によって反応の終結時にn−ブチルアミノプロピルシラン塩酸塩1モルが存在するからである。
【0021】
しかし、n−ブチルアミンとCPTMOとを反応させる場合には、相応する"ビスシリルアミン"[N−ブチル−N,N−ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン]は、副生成物としても生じる。
【0022】
即ち、反応の場合には、僅かなn−ブチルアミンが消費され、それによって蒸留の場合には、僅かなn−ブチルアミノプロピルシランが使用され、このn−ブチルアミノプロピルシランは、HClを吸収することができる。従って、例えば蒸留の終結時にn−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランを添加することは、好ましい。それによって、n−ブチルアミンは、実際に完全に取得されることができる。
【0023】
更に、メタノール(MeOH)は、共沸蒸留によるMeOHおよびn−ブチルアミンからの塩分離後に回収することができる。
【0024】
本発明による方法の場合、好ましくは過剰のn−ブチルアミンの約93〜99%は、例えば98%の純度で回収されることができ、再び直ぐ次の反応で使用されることができる。
【0025】
3−(トリメトキシシリル)−N−(n−ブチル)プロピルアミン塩酸塩は、約75℃で軟質であり、ペースト状である。生成物は、簡単で経済的な方法で蒸留後に得られた生成物ヒドロハロゲン化物[3−(トリメトキシシリル)−N−(n−ブチル)プロピルアミン塩酸塩]から約70℃の温度でナトリウムメタノラート溶液、特にメタノール中のナトリウムメタノラート30質量%を用いて遊離されてよい。
[CH3(CH23(NH2)(CH23Si(OMe)3+Cl-+NaOMe→CH3(CH23(NH)(CH23Si(OMe)3+NaCl↓+MeOH
【0026】
その際に沈殿したNaClまたは前記組成物の冷却後に沈殿したNaClは、例えばSupra 5000濾板を介して濾別することができる。フィルターケークは、一般にさらさらと流れ能力を有し、僅かな残留湿分だけを有する。メタノールは、生成物から34〜93℃および200ミリバールの圧力で除去されることができる。更に、生成物3−(n−ブチルアミン)プロピルトリメトキシシランは、93〜146℃の塔底温度および1ミリバール未満の圧力で蒸留によって後精製することができる。即ち、蒸留は、蒸留塔、塔システム、薄膜蒸発器または短路蒸発器、または前記方法からの組合せを使用しながら行なうことができる。
【0027】
特に有利には、本発明方法により3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシランまたは3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリエトキシシランは、生成物として取得することができる。
【0028】
本発明は、以下の例により詳細に説明されるが、本発明の対象はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1
蒸留装置を備えた5 lの攪拌型オートクレーブ中での反応:
窒素で覆われた攪拌型オートクレーブ中にn−ブチルアミン1878.8g(25.7モル)を装入した。79℃の塔底部温度(油浴温度90℃)および0.5バールの圧力で、1.5時間でDynasylan(登録商標)CPTMO1719.6g(8.6モル)(3−クロロプロピルトリメトキシシラン)を計量供給ポンプで供給した。この場合、温度は、79℃から89℃へ上昇し、圧力は、0.4バールへ低下した。引続き、後反応のために、100〜102℃および0.5バールの圧力で13時間攪拌し、この場合圧力は、2時間後に0.5バールから0.2バールも低下した。
【0030】
反応後のGC組成:
CH3OH:0.8GC−WLD−FL%
CH3(CH2)SNH2:29.1GC−WLD−FL%
3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン:62.6GC−WLD−FL%
高沸点物:5.8GC−WLD−FL%。
【0031】
n−ブチルアミンの分離:
蒸留を74℃および400ミリバールで開始し、圧力を徐々に200ミリバールへ低下させた。
97.7%の純度を有するブチルアミン全部で1211.8g(16.2モル)が得られた。
n−ブチルアミンの収率:95%。
【0032】
ナトリウムメタノラート溶液でのアミノアルキルアルコキシシランの遊離:
n−ブチルアミンの蒸留後、塔底部温度を75℃へ減少させ、30%のナトリウムメタノラート溶液1608.5gを添加した。引続き、約70℃で1時間攪拌した。
25℃への冷却後、このバッチ量を放置し、10 lの圧力吸引漏斗中で0.6バールの圧力でSupra500濾板を介して濾過した。フィルターケークをメタノール600g(3×200g)で洗浄した。
NaClの秤量された量:534.4g
濾液の秤量された量:3795.7g(濾液は、なお付加的に洗浄メタノール600gを含有していた)。
【0033】
蒸留
34℃〜93℃の塔底部温度および200ミリバールの圧力で約2時間で前留出物を取り出した。前留出物を取り出した後、圧力を徐々に1ミリバール未満に減少させ、塔底部温度を108℃(沸騰)へ上昇させた。93〜146℃の塔底部温度および1ミリバール未満の圧力で生成物を取り出した。
前留出物:洗浄メタノールを含めて1643.9g(メタノール91%、n−ブチルアミン9%)
主要流出流:1643.9g[純度:97.7%n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン]
残留物:230g。
【0034】
実施例2
窒素で覆われた1 lのビュッヒ(Buechi)攪拌型オートクレーブ中にn−ブチルアミン219.3g(=3モル)(BTA)を装入した。129℃の塔底部温度(油浴温度=166℃)および3.2バールの過圧で1時間で3−クロロプロピルトリメトキシシラン199.0g(=1.0モル)を計量供給ポンプで計量供給した。この場合、温度は、129℃から157℃へ上昇し、過圧は、最初に4.2バールへ上昇した。計量供給の終結後、過圧は、3.0バールへ低下した。後反応のために、150〜157℃および2,9バールの過圧で4時間攪拌し、この場合圧力は、1時間後に2,9バールから2.1バールへ低下した。引続き、n−ブチルアミンを反応器から蒸留装置を経て15分間で凝縮器フラスコ(Vorlagekolben)中へ凝縮させた。この場合、絶対圧力は、1.0バールへ低下した。1.0バールの絶対圧力の達成後、143℃の塔底部温度で圧力を徐々に63ミリバールへ低下させ、n−ブチルアミンを凝縮器フラスコから除去した。絶対圧力を1ミリバール未満へ減少させ、残留するn−ブチルアミンを冷却された受器中で凝縮させた。n−ブチルアミン全部で143gが得られた。
【0035】
【表1】

【0036】
回収されたn−ブチルアミン(BTA)の評価:
BTAの秤量された量:143g、純度97.8%
BTAの理論量:149g
BTAの収率:94%。
【0037】
ナトリウムメタノラート溶液でのシランの遊離および濾過:
75℃の塔底部温度の達成後、30%のナトリウムメタノラート溶液187gを添加し、約70℃で1時間攪拌した。冷却後、このバッチ量を放置し、2 lの圧力吸引漏斗中で0.6バールの圧力でSupra500濾板を介して濾過した。濾過を数分間継続させた。引続き、フィルターケークをメタノール210g(3×70g)で洗浄した。
NaClの秤量された量:62g
濾液の秤量された量:441g(濾液は、なお付加的に洗浄メタノール210gを含有していた)。
【0038】
濾液のGC組成:
メタノール=47%
n−ブチルアミン=3%
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン=44%
N,N−ビス−[トリエトキシシリルプロピル]ブチルアミン=4%
残留物=2%。
【0039】
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランの蒸留:
34〜93℃の塔底部温度、30〜40℃の塔頂部温度および200ミリバールの圧力で前留出物を取り出した。主要流出流を取り出した後、圧力を徐々に1ミリバール未満に減少させ、塔底部温度を108℃(沸騰)へ上昇させた。93〜146℃の塔底部温度、98〜108℃の塔頂部温度および1ミリバール未満の圧力で、主要流出流のn−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランを取り出した。
前留出物(メタノール92%、n−ブチルアミン8%)=324g
主要流出流(n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン)=200g
残留物=27g
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランの収率=85%。
【0040】
実施例3
窒素で覆われた1 lのビュッヒ(Buechi)攪拌型オートクレーブ中にn−ブチルアミン220g=3モル(BTA)を装入した。130℃の塔底部温度(油浴温度=165℃)および3.2バールの過圧で1時間で3−クロロプロピルトリメトキシシラン199.0g(=1.0モル)を計量供給ポンプで計量供給した。この場合、温度は、130℃から157℃へ上昇し、過圧は、最初に4.5バールへ上昇した。計量供給の終結後、過圧は、3.0バールへ低下した。後反応のために、150℃および3バールの過圧で4時間攪拌し、この場合圧力は、1時間後に3バールから2.1バールへ低下した。引続き、n−ブチルアミンを反応器から蒸留装置を経て15分間で凝縮器フラスコ中へ凝縮させた。この場合、絶対圧力は、1.0バールへ低下した。1.0バールの絶対圧力を達成させた後、138℃の塔底部温度でn−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン20g(=0.08モル)を添加し、圧力を徐々に65ミリバールの絶対圧力へ低下させた。引続き、n−ブチルアミンを凝縮器フラスコから除去した。絶対圧力を1ミリバール未満へ減少させ、残留するn−ブチルアミンを冷却された受器中で凝縮させた。ブチルアミン全部で148gが得られた。
【0041】
【表2】

【0042】
回収されたn−ブチルアミン(BTA)の評価:
秤量された量 BTA:148g、純度98.7%
BTAの理論量:149g
BTAの収率:98%。
【0043】
ナトリウムメタノラート溶液でのシランの遊離および濾過:
75℃の塔底部温度の達成後、30%のナトリウムメタノラート溶液187gを添加し、約70℃で1時間攪拌した。
冷却後、このバッチ量を放置し、2 lの圧力吸引漏斗中で0.6バールの圧力でSupra500濾板を介して濾過した。濾過を数分間継続させた。引続き、フィルターケークをメタノール210g(3×70g)で洗浄した。
NaClの秤量された量:65g
濾液の秤量された量:450g(濾液は、なお付加的に洗浄メタノール210gを含有していた)。
【0044】
濾液のGC組成:
メタノール=48%
n−ブチルアミン=1%
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン=45%
N,N−ビス−[トリエトキシシリルプロピル]ブチルアミン=4%
残留物=2%。
【0045】
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランの蒸留:
35〜95℃の塔底部温度、30〜40℃の塔頂部温度および200ミリバールの圧力で前留出物を取り出した。主要流出流を取り出した後、圧力を徐々に1ミリバール未満に減少させ、塔底部温度を108℃(沸騰)へ上昇させた。93〜146℃の塔底部温度、98〜108℃の塔頂部温度および1ミリバール未満の圧力で、主要流出流のDS 1189を取り出した。
前留出物(メタノール92%、n−ブチルアミン8%)=330g
主要流出流(n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン)=225g
残留物=20g
n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシランの収率=87%。
【0046】
実施例4
n−ブチルアミン328.95g(4.5モル)を1 lのビュッヒ(Buechi)のガラス製オートクレーブ中に装入した。130℃の温度および3,2バールの圧力でCPTMO298.5g(1.5モル)をポンプを用いて計量供給した(5ml/分)。計量供給の終結後、この反応を155℃で2時間維持し、引続き140℃へ冷却した。反応器の放圧後、n−ブチルアミンを145℃で蒸留により除去した。結晶泥状物にトルエン1295gを添加し、熱時に分離漏斗中に移した。次に、冷たい水溶液(NaOH93gおよびH2O270g)を添加し、30秒間強力に混合した。引続き、相分離を30秒間継続させた。
水相の秤量された量:413g
有機相の秤量された量:1609g。
【0047】
有機相を89〜95ミリバールおよび57〜65℃でロータリーエバポレーターでトルエンから遊離した。引続き、生成物を3ミリバールおよび126℃で蒸留した。
第1の画分(トルエン):1217g
第2の画分(生成物):271.9g、澄明な無色の液体の収率:72%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
R−(NR’)−Y−Si(R1)n(OR23-n (I)
〔式中、Rは、1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、R’は、水素原子(H)を表わすかまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、Yは、一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH(CH3))(CH2)−および−(CH24−からの2価アルキル基であり、基R1およびR2は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、nは、0または1または2である〕で示されるアルキルアミノアルキルアルコキシシランを製造するに当たり、
一般式II
R(NR’)H (II)
〔式中、Rは、1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わし、R’は、水素原子(H)を表わすかまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキル基を表わす〕で示される過剰量で使用されるアルキルアミンを
一般式III
X−Y−Si(R1)n(OR23-n (III)
〔式中、Xは、ClまたはBrを表わし、Yは、一連の−CH2−、−(CH22−、−(CH23−、−(CH2)(CH(CH3))(CH2)−および−(CH24−からの2価アルキル基であり、基R1およびR2は、同一かまたは異なり、それぞれ1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表わし、nは、0または1または2である〕で示されるハロゲンアルキルアルコキシシランと反応させ、
過剰の遊離アルキルアミンを留去し、
同時に、残留するアルキルアミンヒドロハロゲン化物およびアルキルアミノアルキルアルコキシシランヒドロハロゲン化物を含有する生成物混合物を、存在する化合物に相当するアルキルアミノアルキルアルコキシシランを添加しながら処理し、それによって遊離されたアルキルアミンを系から導出し、および
残留する生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物を後処理することにより、一般式Iのアルキルアミノアルキルアルコキシシランを製造する方法。
【請求項2】
後処理のために、生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物を温度調節し、アルカリ金属アルコラート溶液と反応させ、この場合には、生じたアルカリ金属ハロゲン化物が沈殿し、および分離され、使用されたアルカリ金属アルコラート溶液の溶剤を蒸留によって生成物から除去し、生成物を取得する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
後処理のために、生成物混合物または生成物ヒドロハロゲン化物混合物に非極性の有機溶剤を添加し、この混合物を水性のアルカリ金属アルカリ液またはアルカリ土類金属アルカリ液で処理し、その際に生じる、金属塩含有水性相を、有機生成物相と分離し、有機相を、蒸留し、生成物を取得する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
式Iで示される取得された生成物を、アルキルアミンヒドロハロゲン化物からの相応するアルキルアミンの遊離のために割り当て分に応じてプロセス中に返送する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
取り戻されたアルキルアミンを反応体成分として再循環させる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
式IIに記載のアルキルアミンとして、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−ヘプチルアミン、2−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、2−ペンチルアミン、3−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミンまたはドデシルアミンを使用する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式IIIに記載のハロゲンアルキルアルコキシシランとして、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロイソブチルトリメトキシシラン、3−クロロイソブチルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、1−クロロメチルトリメトキシシラン、1−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルジメチルメトキシシラン、クロロプロピルジメチルエトキシシラン、クロロイソブチルメチルジメトキシシラン、クロロイソブチルジメチルメトキシシラン、クロロイソブチルジメチルエトキシシラン、クロロイソブチルジメチルジエトキシシラン、クロロエチルメチルジメトキシシラン、クロロエチルメチルジエトキシシラン、クロロエチルジメチルメトキシシラン、クロロエチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシランまたはクロロメチルジメチルエトキシシランを使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アルキルアミンとハロゲンアルキルアルコキシシランとを1.1対1〜10対1のモル比で使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応を60〜200℃の温度、0.1〜20バールの圧力および30分間〜16時間の時間に亘って実施する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
生成物として3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシランまたは3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリエトキシシランを取得する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−521988(P2011−521988A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512044(P2011−512044)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054587
【国際公開番号】WO2009/146971
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】