説明

アルキル化によってm−またはp−置換フェニルアルカノールを製造するための方法

本発明の対象は、R1がm位またはp位でフェニル環に結合されており、かつC1〜C5アルキルを表わし、およびR2、R3、R4およびR5が互いに独立に水素またはメチルを表わす式(I)のm−またはp−置換フェニルアルカノールを製造するための方法であって、R2、R3、R4およびR5が式(I)に記載された意味を有する式(II)の非置換フェニルアルカノールを、式(III)R1−Hal (III)[式中、R1は、式(I)に記載の意味を有し、Halは、ハロゲンを表わす]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(I)のm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を後処理し、式(I)の望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせることを特徴とする、式(I)のm−またはp−置換フェニルアルカノールを製造するための方法である。式(I)のm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールから酸化または脱水素化によって、価値のある生成物として相応するアルデヒドを形成させることができ、このアルデヒドは、臭気物質および香料として興味深い役を演じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、フェニルアルカノールをフリーデル・クラフツアルキル化させ、引続き望ましくない副生成物を異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルキルを生じさせることによって、m−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを製造するための方法である。m−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールならびにこれらから製造されるm−またはp−アルキル置換フェニルアルカナール、例えば臭気物質3−フェニル−1−プロパノールは、香料として興味深いものがある。
【0002】
アルキル置換フェニルアルカノールおよびその誘導体を製造するために、種々の合成が公知である。
【0003】
WO 2008/053148中には、1−第三ブチル−3−エチルベンゼンから出発して3−(3−第三ブチルフェニル)プロパノールを製造するための3段階の合成が記載されている。この場合、出発化合物は、最初に臭素化され、1−第三ブチル−3−(1−ブロモエチル)ベンゼンを生じ、引続き除去され、相応する置換スチレンを生じる。引続き、ヒドロホルミル化によって3−(3−第三ブチルフェニル)プロパナールが得られる。この合成は、収量が僅かであるために大工業的プロセスにはあまり適当であるとは思われない。
【0004】
2−メチル−3−(3−第三ブチルフェニル)プロパナールおよび2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパナールの製造は、イシイ他(J.Org.Chem.2005,70,5471−5474)により、第三ブチルベンゼンまたはイソプロピルベンゼンをメタクロレインとパラジウム接触酸化カップリングさせ、引続きパラジウム接触水素化させることによって達成される。カップリング工程においては、Pd(OAc)2とH4PMo11VO40×26H2Oとからなる触媒系が使用される。約7モル%の高い触媒量が必要とされる。約65%の収率では、m/p比は、56/44(2−メチル−3−(3−第三ブチルフェニル)プロパナールに対して)であるか、または51/40(2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパナールに対して)である。この方法も大工業的プロセスにはあまり適当であるとは思われない。
【0005】
欧州特許第0045571号明細書には、2−メチル−3−フェニルプロパノールを2−メチル−3−(3−第三ブチルフェニル)プロパノールおよび2−メチル−3−(4−第三ブチルフェニル)プロパノールにフリーデル・クラフツアルキル化させることが記載されている。アルキル化試薬として、イソブチレン、ジイソブチレンおよび塩化t−ブチルが使用される。触媒として塩化鉄および燐酸が使用され、溶剤として塩化メチレンまたは燐酸が使用される。反応条件および触媒に依存して、1/13〜1/5のm/p比が得られる。全収率(m−異性体およびp−異性体)は、52%までである。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許第2952719号明細書には、同様に2−メチル−3−フェニルプロパノールの塩化鉄接触フリーデル・クラフツアルキル化が記載されている。溶剤としてのシクロヘキサンまたはジクロロエタンにおいては、2−メチル−3−(3−t−ブチルフェニル)プロパノールの収率84〜86%が得られる。m−異性体、(2−メチル−3−(3−t−ブチルフェニル)プロパノール)、の形成は、検証されなかった。記載されたフリーデル・クラフツアルキル化の欠点は、形成されたm−異性体化合物の量が同定されなかったことにある(m:pの比は、最大1:5である)。
【0007】
前記の公知方法と比較して、本発明による方法は、置換フェニルアルカナール(フェニルアルキルアルデヒド)に相応して極めて興味深い前駆物質として使用される、m−置換フェニルアルカノールまたはp−置換フェニルアルカノールが安価に極めて良好な収率で最も簡単に製造されることを可能にする。
【0008】
本発明は、非置換フェニルアルカノールをアルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツアルキル化させることによって得ることができる、m位またはp位で置換されたフェニルアルカノールを製造するための方法に関する。アルキル化は、一定のフリーデル・クラフツ触媒上で行なわれる。従って、本発明の対象は、式(I)
【化1】

[式中、R1は、m位またはp位でフェニル環に結合されており、かつC1〜C5アルキルを表わし、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立に水素またはメチルを表わす]で示されるm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを製造するための方法であり、この方法は、式(II)
【化2】

[式中、R2、R3、R4およびR5は、式(I)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルアルカノールを、式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1は、式(I)に記載の意味を有し、Halは、ハロゲンを表わす]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(I)のm−およびp−アルキル置換フェニルアルカノールの混合物を生じさせ、引続きこの反応混合物を、特に水の存在下でアルカリ性のpH値で後処理し、式(I)の望ましいm−アルキル置換フェニルアルカノールまたは式(I)の望ましいp−アルキル置換フェニルアルカノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせることによって特徴付けられる。
【0009】
アルキル化反応のmとpとの比を望ましい方向に影響を及ぼさせるために、望ましい生成物、即ちm−アルキル置換フェニルアルカノールまたはp−アルキル置換フェニルアルカノールのアルキル化後および分離後になお望ましくない成分の異性体化を行ない、望ましい成分を生じさせる。異性体化として特徴付けられた反応工程は、フリーデル・クラフツ触媒の存在下にある条件下で反応の種々の成分を平衡になるように調節することに言及される。異性体化工程に引き続いて、後処理、特に水性の後処理が特にアルカリ性のpH値で行なわれ、特に有利には、アルカリ液、例えば苛性ソーダ液および/または苛性カリ液の存在下での水性の後処理であり、次に望ましい生成物が分離され、特に蒸留により分離され、および望ましくない生成物は、再び異性体化に掛けられる。異性体化工程は、全ての異性体化工程の後に水性の後処理を、特に上記したようなアルカリ性の条件下で行ない、次に分離、特に蒸留により分離を行ない、望ましい生成物の収率を上昇させることにより、あたかも連続的に行なうことができる。
【0010】
本発明方法による反応材料の水性の後処理は、反応材料に室温で水を、特にアルカリ性のpH値で、特に有利にアルカリ液、殊に苛性ソーダ液または苛性カリ液の存在下で添加することにより、アルキル化後に行なわれ、異性体化後にも行なわれる。次に、望ましい反応生成物は、特に蒸留によって分離される。
【0011】
非置換のフェニルアルカノールをアルキル化し、アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせる際に一定の条件下で>1.5/1のm/p異性体比を得ることができることが見い出された。式(I)の純粋なm−またはp−置換フェニルアルカノールは、前記方法では滅多に得ることができず、従ってこのアルキル化には、望ましい反応生成物への望ましくない副生成物の異性体化が引き継がれた。
【0012】
勿論、同様に、式(I)のm−アルキル置換成分およびp−アルキル置換成分を、例えば分別蒸留によって分離し、残りの副生成物を再び反応材料に供給し、異性体化によって2つの成分の収率を上昇させることが可能である。
【0013】
本発明による方法において、C1〜C5アルキルハロゲン化物として、例えば次のものがこれに該当する:臭化メチル、沃化メチル、臭化エチル、沃化エチル、塩化n−プロピル、臭化n−プロピル、沃化n−プロピル、塩化イソプロピル、臭化イソプロピル、沃化イソプロピル、塩化n−ブチル、臭化n−ブチル、塩化イソブチル、臭化イソブチル、塩化s−ブチル、臭化s−ブチル、塩化t−ブチル、臭化t−ブチル、塩化n−ペンチル、臭化n−ペンチル。
【0014】
式(III)の好ましいC1〜C5アルキルハロゲン化物は、エチルハロゲン化物、殊に臭化エチルおよび沃化エチル、イソプロピルハロゲン化物、殊に塩化イソプロピルおよび臭化イソプロピル、イソブチルハロゲン化物、殊に塩化イソブチルおよび臭化イソブチル、t−ブチルハロゲン化物、殊に塩化t−ブチルである。
【0015】
式(IV)
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、式(I)に記載された意味を有する]で示されるm−またはp−置換フェニルプロパノールを製造するための方法は、好ましく、この方法は、式(V)
【化4】

[式中、R2、R3、R4およびR5は、式(IV)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルプロパノールを、式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1およびHalは、式(III)に記載の意味を有する]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(IV)のm−およびp−アルキル置換フェニルプロパノールの混合物を生じさせ、引続きこの反応混合物を、特に水の存在下でアルカリ性のpH値で後処理し、式(IV)の望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを生じさせることによって特徴付けられる。
【0016】
式(VI)
【化5】

[式中、R2は、式(I)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルプロパノールから出発して、この非置換フェニルプロパノールを式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1およびHalは、式(III)に記載された意味を有する]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒に、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で反応させ、式(VII)
【化6】

[式中、R1およびR2は、式(I)に記載された意味を有する]で示されるm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を、特に水の存在下でアルカリ性のpH値で後処理し、式(VII)の望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−置換フェニルプロパノールを生じさせることによって特徴付けられる方法は、特に好ましい。
【0017】
1つの殊に好ましい方法は、出発物質として2−メチル−3−フェニルプロパノールをt−ブチルハロゲン化物、殊に塩化t−ブチルと一緒に三塩化アルミニウム(AlCl3)の存在下で反応させ、2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を特に水の存在下でアルカリ性のpH値で後処理し、望ましい3−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましい3−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールを生じさせることによって特徴付けられる。
【0018】
同様に特に好ましい方法は、出発物質として2−メチル−3−フェニルプロパノール、3−フェニルプロパノール、3−フェニル−2,2−ジメチルプロパノールまたは3−フェニルブタノールを使用し、アルキル化を、イソブチルハロゲン化物、特に塩化イソブチル、t−ブチルハロゲン化物、特に塩化t−ブチル、イソプロピルハロゲン化物、特に塩化イソプロピル、エチルハロゲン化物、特に臭化エチルの存在下で、およびフリーデル・クラフツ触媒の存在下で実施し、化合物2−メチル−3−(3−または4−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−または4−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(3−または4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノールまたは3−(3−または4−イソプロピルフェニル)−ブタノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を、特に水の存在下でアルカリ性のpH値で後処理し、望ましい生成物を分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、およびフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましい生成物を生じさせることによって特徴付けられる。
【0019】
更に、好ましい実施態様は、反応混合物の後処理後に、特に水性の後処理後に、アルカリ性のpH値で望ましいm−置換反応生成物を分離し、即ち特に式(I)のm−アルキル置換フェニルアルカノールまたは式(IV)のm−アルキル置換フェニルプロパノールまたは式(VII)のm−アルキル置換フェニルプロパノールまたは3−メチル−3−(3−t−ブチルフェニル)−プロパノールを分離するか、または化合物2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−t−ブチルフェニル)−プロパノール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノールまたは3−(3−イソプロピルフェニル)ブタノールを分離することによって特徴付けられる。
【0020】
触媒として、典型的なフリーデル・クラフツ触媒が使用されてよい。例として、AlCl3、AlBr3、TiCl4、ZrCl4、VCl3、ZnCl2、FeBr3およびFeCl3が挙げられる。好ましくは、フリーデル・クラフツ触媒AlCl3またはAlBr3が使用される。一般的に使用されるフェニルアルカノール化合物のモル量に対して1〜200モル%の触媒量が使用される。使用されるフェニルアルカノール化合物のモル量に対して33モル%〜110モル%の触媒量が好ましい。
【0021】
アルキル化ならびに異性体化は、0℃〜100℃の温度で行なわれる。10℃〜50℃の温度が特に好ましい。反応時間は、30分間ないし24時間である。1時間ないし6時間の反応時間が特に好ましい。
【0022】
アルキル化ならびに異性体化は、溶剤を含まないで実施されてもよいし、溶剤中で実施されてもよい。適した溶剤は、次の通りである:シクロヘキサン、トルエン、p−t−ブチルトルエン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン。ジクロロメタンおよびクロロベンゼンは、特に好ましい。
【0023】
アルキル化にとって好ましい出発物質は、次の基質である:2−メチル−3−フェニルプロパノール、2−メチル−3−フェニルプロパノール、3−フェニルプロパノール、2−メチル−3−フェニルプロパノール、3−フェニル−2,2−ジメチルプロパノール、3−フェニルブタノール。好ましいアルキル化剤は、次の通りである:塩化イソブチル、塩化t−ブチル、塩化イソプロピル、臭化エチル。その中から次のm−異性体が反応の主要生成物としてもたらされる:2−メチル−3−(3−t−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−t−ブチルフェニル)−プロパノール、2−メチル−3−(3−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(3−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノール、3−(3−イソプロピルフェニル)ブタノール。更に、前記反応から次のp−異性体が反応の生成物としてもたらされる:2−メチル−3−(4−t−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(4−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(4−t−ブチルフェニル)−プロパノール、2−メチル−3−(4−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノール、3−(4−イソプロピルフェニル)ブタノール。基質2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールは、特に好ましい。
【0024】
反応は、一般的に触媒が式(III)のアルキルハロゲン化物と一緒に、溶剤中に溶解されたフェニルアルカノール中に導入されるように実施される。後処理は、水および場合によっては苛性ソーダ液での後処理によって、ならびに溶剤の蒸留によって行なわれる。粗製生成物の後処理および望ましいm−またはp−置換フェニルアルカノールの単離は、一般的に蒸留によって行なわれる。
【0025】
反応の際に生じる芳香族化合物上でモノ−およびトリ置換フェニルアルカノールならびに式(A)、(B)および(C)
【化7】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、式(I)に記載されて意味を有する]で示される場合により望ましくないm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールは、特にアルカリ性のpH値で、特に水性の後処理後に、および特に蒸留による分離後に反応材料に再び供給される。前記の生成物を反応材料中に返送することによって、p−置換、およびm−置換成分とモノ−およびトリ置換フェニルアルカノールとの平衡は、繰返し新たに調節され、それによって高められた割合の望ましいm−またはp−置換生成物が得られる。それというのも、この望ましい生成物は、それぞれの返送前(後処理後および蒸留後)に反応材料から取り出されるからである。好ましくは、この反応は、一槽法による反応として行なわれ、この場合第1の工程においてアルキル化が実施され、反応生成物は、未反応の出発材料と一緒に水性の後処理後に特に蒸留により分離され、望ましいm−またはp−置換フェニルアルカノールの留分が捕集され、式(A)、(B)および(C)の副生成物は、反応容器中に返送され、第2の工程において、再びフリーデル・クラフツ触媒の存在下で場合によって溶剤中で前記条件下で異性体化され、望ましいm−またはp−置換フェニルアルカノール化合物が生じる。望ましい成分の異性体化および次の水性の後処理および蒸留による分離ならびに再度の異性体化のための式(A)、(B)および(C)の残りの成分の返送は、数回行なうことができるかまたはあたかも連続的に行なうことができ、望ましい成分の留分、m−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールが高い収率で得られる。
【0026】
式(I)の本発明により製造されたアルカノールは、公知の脱水素化法または酸化法に基づいて、相応するアルデヒドに変換することができる(例えば:Houben−Weyl,"Methoden der organischen Chemie",第7/1卷,第160頁以降、第171頁以降参照)。前記物質種の中で特に興味深い化合物は、2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−または4−イソブチルフェニル)プロパナール、3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−または4−イソプロピルフェニル)プロパナール、3−(3−または4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナールおよび3−(3−または4−イソプロピルフェニル)ブタナールである。
【0027】
欧州特許出願公開第0045571号明細書の記載と同様に、フェニルプロパノールは、酸化または脱水素化によって相応するフェニルプロパナールに変換することができる。この変換は、例えば亜クロム酸銅触媒による液相脱水素化によって達成される。
【0028】
アルデヒドを生じさせるための反応に好ましい出発物質は、2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−または4−イソブチルフェニル)プロパノール、3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノール、2−メチル−3−(3−または4−イソプロピルフェニル)プロパノール、3−(3−または4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパノール、3−(3−または4−イソプロピルフェニル)ブタノールである。その中から酸化または脱水素によって次のアルデヒドがもたらされる:2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−または4−イソブチルフェニル)プロパナール、3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパナール、2−メチル−3−(3−または4−イソプロピルフェニル)プロパナール、3−(3−または4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナール、3−(3−または4−イソプロピルフェニル)ブタナール。
【0029】
従って、更に、本発明は、式(I)のm−またはp−置換フェニルアルカノールから酸化または脱水素化によって得られる、臭気物質および香料として興味深い役を演じる、式(VIII)の価値のある生成物の製造を提供する。
【0030】
【化8】

【0031】
上記式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、式(I)に記載された意味を有する。
【0032】
式(VIII)
【化9】

[式中、R1は、m位またはp位でフェニル環に結合されており、かつC1〜C5アルキルを表わし、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立に水素またはメチルを表わす]で示される臭気物質および芳香剤を製造するための本発明による方法は、式(II)
【化10】

[式中、R2、R3、R4およびR5は、式(VIII)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルアルカノールを、式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1およびHalは、式(III)に記載された意味を有する]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒に、フリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(I)
【化11】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、式(I)に記載された意味を有する]で示されるm−およびp−アルキル置換フェニルアルカノールの混合物を生じさせ、引続き反応混合物を、特に水の存在下でアルカリ性のpH値で後処理し、式(I)の望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせ、引続き得られた式(I)のm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを酸化または脱水素化によって式(VIII)のm−またはp−アルキル置換フェニルアルカナールに変換することによって特徴付けられる。
【0033】
本発明を次の実施例によって詳説する。実施例中、%での全ての記載は、モル%である。
【実施例】
【0034】
実施例1
2−メチル−3−フェニルプロパノール15.1g(100mmol)をクロロメタン87g中に予め装入した。AlCl313.4g(100mmol)および塩化t−ブチル9.3g(100mmol)を1〜10℃で4時間で添加した。この混合物を室温に昇温させ、水および苛性ソーダ液で後処理し、溶剤を除去した。次の組成を有する混合物が得られた:2−メチル−3−(3−t−ブチルフェニル)プロパノール(41%);2−メチル−3−(4−t−ブチルフェニル)プロパノール(24%);3−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−2−メチル−プロパノール(19%);2−メチル−3−フェニルプロパノール(15%)。
【0035】
実施例2
2−メチル−3−フェニルプロパノール15.1g(100mmol)をクロロメタン78g中に予め装入した。FeCl316.2g(100mmol)および塩化t−ブチル9.3g(100mmol)を1〜5℃で1.5時間で添加した。この混合物を室温に昇温させ、水および苛性ソーダ液で後処理し、溶剤を除去した。次の組成を有する混合物が得られた:2−メチル−3−(3−t−ブチルフェニル)プロパノール(36%);2−メチル−3−(4−t−ブチルフェニル)プロパノール(24%);3−(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)−2−メチル−プロパノール(27%);2−メチル−3−フェニルプロパノール(7.5%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、R1は、m位またはp位でフェニル環に結合されており、かつC1〜C5アルキルを表わし、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立に水素またはメチルを表わす]で示されるm−またはp−置換フェニルアルカノールを製造するための方法であって、式(II)
【化2】

[式中、R2、R3、R4およびR5は、式(I)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルアルカノールを、式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1は、式(I)に記載の意味を有し、Halは、ハロゲンを表わす]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(I)のm−およびp−アルキル置換フェニルアルカノールの混合物を生じさせ、引続きこの反応混合物を後処理し、式(I)の望ましいm−アルキル置換フェニルアルカノールまたは式(I)の望ましいp−アルキル置換フェニルアルカノールを分離し、残りの形成された生成物を反応混合物中に返送し、この生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせることを特徴とする、式(I)のm−またはp−置換フェニルアルカノールを製造するための方法。
【請求項2】
式(IV)
【化3】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、請求項1に記載された意味を有する]で示されるm−またはp−置換フェニルプロパノールを製造するための請求項1記載の方法であって、
式(V)
【化4】

[式中、R2、R3、R4およびR5は、式(IV)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルプロパノールを、式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1およびHalは、式(III)に記載の意味を有する]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(IV)のm−およびp−アルキル置換フェニルプロパノールの混合物を生じさせ、引続きこの反応混合物を後処理し、式(IV)の望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを生じさせることを特徴とする、式(IV)のm−またはp−置換フェニルプロパノールを製造するための請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(VI)
【化5】

[式中、R2は、式(I)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルプロパノールから出発し、この非置換フェニルプロパノールを式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1およびHalは、請求項1に記載された意味を有する]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒に、フリーデル・クラフツ触媒の存在下で反応させ、式(VII)
【化6】

[式中、R1およびR2は、式(VI)および(III)に記載の意味を有する]で示されるm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を後処理し、式(VII)の望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルプロパノールを生じさせる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1〜C5アルキルハロゲン化物として、エチルハロゲン化物、殊に臭化エチルおよび沃化エチル、イソプロピルハロゲン化物、殊に塩化イソプロピルおよび臭化イソプロピル、イソブチルハロゲン化物、殊に塩化イソブチルおよび臭化イソブチル、またはt−ブチルハロゲン化物、殊に塩化t−ブチルを使用する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
フリーデル・クラフツ触媒としてAlCl3、AlBr3、TiCl4、ZrCl4、VCl3、ZnCl2、FeBr3、FeCl3を使用する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
フリーデル・クラフツ触媒としてAlCl3またはAlBr3を使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
フリーデル・クラフツ触媒を使用されるフェニルアルカノールのモル量に対して1〜200モル%、殊に33〜110モル%の量で使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アルキル化を0〜100℃の温度で実施する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
2−メチル−3−フェニルプロパノールをt−ブチルハロゲン化物、殊に塩化t−ブチルと一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下、殊に三塩化アルミニウムまたは三臭化アルミニウムの存在下で反応させ、2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を後処理し、望ましい2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましい2−メチル−3−(3−または4−t−ブチルフェニル)プロパノールを生じさせる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
反応混合物の後処理後に望ましいm−置換反応生成物を分離する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
式(VIII)
【化7】

[式中、R1は、m位またはp位でフェニル環に結合されており、かつC1〜C5アルキルを表わし、R2、R3、R4およびR5は、互いに独立に水素またはメチルを表わす]で示される臭気物質の製造法において、
式(II)
【化8】

[式中、R2、R3、R4およびR5は、式(VIII)に記載された意味を有する]で示される非置換フェニルアルカノールを、式(III)
1−Hal (III)
[式中、R1は、式(VIII)に記載された意味を有し、およびHalは、ハロゲンを表わす]で示されるC1〜C5アルキルハロゲン化物と一緒にフリーデル・クラフツ触媒の存在下でアルキル化し、式(I)
【化9】

[式中、R1、R2、R3、R4およびR5は、式(VIII)に記載の意味を有する]で示されるm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせ、引続きこの反応混合物を後処理し、式(I)の得られたm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを分離し、特に蒸留により分離し、残りの形成された副生成物を反応混合物中に返送し、この副生成物をフリーデル・クラフツ触媒の存在下で異性体化し、望ましいm−またはp−アルキル置換フェニルアルカノールを生じさせ、引続き酸化または脱水素化によって式(VIII)のm−またはp−アルキル置換フェニルアルカナールに変換することを特徴とする、式(VIII)の臭気物質の製造法。

【公表番号】特表2013−508326(P2013−508326A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534633(P2012−534633)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065466
【国際公開番号】WO2011/048012
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】