説明

アルキル化触媒および関連する工程

希土類交換分子篩の形態にある水素化金属および固体酸を有する固体アルキル化触媒であって、そこで、当該触媒は、直径が100nmを下回る細孔内における0.20ml/g未満の細孔性、および0.30ml/gより大きい総細孔性を少なくとも特徴とする。当該触媒を用いるアルキル化のための工程も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明
本明細書で用いられるアルキル化という用語は、アルキル化可能な化合物(例えば、飽和炭化水素)のアルキル化剤(例えば、オレフィン)との反応を指す。当該反応は、例えば、イソブタンの2〜6個の炭素原子を含有するオレフィンとのアルキル化を通じて、高オクタン価を有しかつガソリン範囲内で沸騰するアルキル化物を得ることを可能にするため、興味の対象となる。真空軽油および常圧残油等の、より重い石油画分を分解することにより得られるガソリンとは異なり、アルキル化により得られるガソリンは、硫黄および窒素等の汚染物質を実質的に非含有であり、ひいては清浄な燃焼特性を有する。高オクタン価に代表されるその高いアンチノック特性は、芳香族化合物または鉛等の、環境的に有害なアンチノック化合物を添加する必要性を低減する。また、ナフサを改質することにより、あるいはより重い石油画分を分解することにより得られるガソリンとは異なり、アルキル化物は、たとえ芳香族化合物またはオレフィンがあるとしてもほとんど含有せず、これは、さらなる環境的な利点を提供する。
【背景技術】
【0002】
歴史的には、固体酸アルキル化触媒の活性および安定性は、競合的な液体酸アルキル化工程と比較すると、多分に依然として不十分な点が残っている。固体酸アルキル化における最近の発展は、国際公開第98/23560号(米国特許第5,986,158号)に開示されているような、沸石を含有する固体酸触媒の容易な再生を使用するアルキル化工程と、米国特許出願公開第2007/0293390号による、改善された固体酸触媒の製造工程と、国際公開第2005/075387号による、アルキル化触媒の水和工程と、米国特許第7,176,340号、米国特許出願公開第2002/0198422号、および欧州特許第1 485 334号による、連続的または準連続的なアルキル化工程および再生工程と、米国特許出願公開第2008/0183025号に教示されているような、希土類(RE)交換固体酸触媒と、を含んでいる。
【0003】
驚くべきことに、しかしながら、特有の細孔性分布に恵まれる、このような固体酸アルキル化触媒中の希土類交換分子篩(例えば、Y沸石)は、本明細書に記載されている特別な細孔性特性を有しない同様の触媒と比較すると、遥かに高い活性および安定性を与えることができることが発見されている。これは、過去において(米国特許第6,855,856号)、REを有しない分子篩は全く異なる細孔性分布を必要とすることが発見されたため、特別に驚くべきことであった。
【発明の概要】
【0004】
従って、本発明の1つの実施形態では、希土類交換分子篩の形態にある水素化金属および固体酸を含む固体触媒が提供され、そこで、当該触媒は、直径が100nmを下回る細孔における0.20ml/g未満の細孔性、および0.30ml/gより大きい総細孔性を少なくとも特徴とする。
【0005】
本発明の別の実施形態は、飽和炭化水素の供給材料および1つ以上のオレフィンを、本発明の触媒とアルキル化工程条件にて接触させることを含む、炭化水素のアルキル化のための工程を提供する。
【0006】
本発明のこれらおよびなおさらなる実施形態、特徴、および利点は、添付の図および請求項を含む、下記の詳細な説明によってさらにより明白にされることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の特定の触媒の実施形態に関する、および、本発明のものでない比較上の触媒に関する、細孔径による細孔性分布のグラフであり、本開示の実験の項に準じて作られている。
【図2】本発明の特定の触媒の実施形態に関する、および、本発明のものでない比較上の触媒に関する、経時的な(以下でさらに定義されるとおりの)オレフィン転換率に関して表された触媒活性のグラフであり、本開示の実験の項に準じて作られている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のさらなる詳細な説明
本発明の触媒は、希土類交換分子篩の形態にある水素化金属および固体酸を含む。適切な水素化金属の例は、周期表の第VIII群の金属、およびその混合物等の、遷移金属である。これらの中でも、周期表の第VIII群の貴金属が好適である。白金が、特別に好適である。水素化金属の量は、その性質に依存することになる。水素化金属が周期表の第VIII群の貴金属である際に、触媒は、金属として算出すると、約0.01乃至約2重量%の範囲内の金属を含有することになる。別の実施形態では、金属の量は、約0.1から約1重量%に及ぶ。本明細書で他に明記されない限り、本開示で与えられる重量百分率は、触媒を1時間にわたり600℃で加熱する際の重量損失(強熱減量、つまりLOI 600、1時間)を用いて算出することができる、乾燥触媒の総重量に基づいている。
【0009】
分子篩の例は、沸石ベータ、MCM−22、MCM−36、モルデナイト、X沸石等のフォージャサイト、および、HY沸石およびUSY沸石を含むY沸石等の、沸石である。好適な固体酸は、沸石ベータ、X沸石等のフォージャサイト、および、HY沸石およびUSY沸石を含むY沸石を含む、沸石である。固体酸の混合物を使用することもできる。1つの実施形態では、当該固体酸は、24.72乃至約25.00オングストロームの単位セル径(a)を有するフォージャサイトであり、別の実施形態では、当該固体酸は、24.34〜24.72オングストロームの単位セル径を有するY沸石である。さらに別の実施形態では、当該固体酸は、24.56〜24.72オングストロームの単位セル径を有するY沸石である。
【0010】
触媒の固体酸成分は、希土類(RE)、すなわち、ランタニド系列から選択される1つ以上の元素を含む。1つの実施形態では、希土類の量は約0.5重量%から約32重量%に及ぶ。別の実施形態では、希土類は約2重量%から約9重量%に及ぶ。さらに別の実施形態では、希土類は約3重量%から約6重量%に及ぶ。希土類の重量%に対する本明細書での全ての参照値は、乾燥量基準(600℃、1時間)で希土類酸化物として算出される。ランタンまたはランタンの豊富なRE混合物は、1つ(または複数)の希土類元素としての使用に特に適していることがある。ランタンの豊富なRE混合物とは、ランタンが、使用される1つ(または複数)の希土類元素の総量の約70〜80重量%以上になるだろうことを意味する。
【0011】
1つ(または複数)の希土類元素を、以下でより十分に記載されている従来の手段により、固体酸成分に交換することができる。固体酸成分の交換工程の最中に、ナトリウム(Na)は、触媒から除去される。1つの実施形態では、当該固体酸成分は、わずか約1.5重量%のNaO、別の実施形態では、わずか約1.0重量%のNaO、および、さらに別の実施形態では、約0.8重量%以下のNaO、を含有する。さらに別の実施形態では、それは、全て乾燥量基準(600℃、1時間)で算出すると、約0.6重量%以下のNaOを含有する。
【0012】
本発明の特定の触媒は、マトリックス物質を追加的に含むことができる。適切なマトリックス物質の例は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、粘土、およびそれらの混
合物である。アルミナを含むマトリックス物質が、一般的に好適である。1つの実施形態では、触媒は、触媒中に含有される固体酸およびマトリックス物質の総重量に基づいて、約10重量%乃至約40重量%のマトリックス物質および残部の固体酸を含む。
【0013】
触媒は、好ましくは、ハロゲン成分を全く含有しない。
【0014】
好ましくは、水素化金属成分に加え、本発明の触媒は、約65乃至約85重量%の固体酸、および約15乃至約35重量%のマトリックス物質を含む。より好ましくは、当該触媒は、約70乃至約80重量%の固体酸、および約20乃至約30重量%のマトリックス物質を含む。
【0015】
本発明に係る工程において用いられる触媒は、含水率を調節することにより調製される。例えば、固体酸成分をマトリックス物質と混合して担体粒子を形成することができ、その後に当該粒子の焼成が続く。水素化機能を、例えば、担体粒子を水素化金属成分の溶液で含浸させることにより、触媒組成物に組み込むことができる。含浸の後に、触媒を焼成することができる。
【0016】
1つの実施形態では、当該触媒は、水素等の還元気体中にて、約200乃至約500℃の範囲内の温度で還元される。別の実施形態では、当該触媒は、約250乃至約350℃の範囲内の温度で還元される。含水率の調節の前に、水の触媒への添加の後に、および/または、含水率を調節する方法として還元を用いることにより、本還元を行うことができる。1つの実施形態では、本還元は、含水率の調節の前に行われる。別の実施形態では、本還元は、乾燥した非還元気体(窒素、ヘリウム、空気、および同様のもの等)中で触媒を乾燥させた後に行われる。
【0017】
当該触媒は、約1.5乃至約6重量%の範囲内の量の水を含有し、一方で、別の実施形態では、含水率は約1.8乃至約4重量%の範囲内にあり、別の実施形態では、それは約2乃至約4重量%の範囲内にある。当該含水率は、アルキル化工程における使用の最中の含水率と定義され、触媒を2時間にわたり660℃(LOI)で加熱する際の重量損失を決定することにより測定される。触媒の含水率を、参照により全体として組み込まれる国際出願第PCT/EP2005/000929号に記載されているような、様々な方法により調節することができる。このような方法は、方法1、2、および3として以下で例示される。
【0018】
方法1は、触媒を水に曝露することにより、触媒のLOIを増加させることを伴う。これを、含水雰囲気、例えば周囲条件にある空気に触媒を曝露することにより、達成することができる。本方法の実施形態は、所望のLOIに達するまで還元された触媒を水に曝露することと、所望の度合を上回るLOIに達するまで非還元の触媒を水に曝露し、その後に当該触媒の還元が続き、それによりLOIを所望の度合に減少させることと、所望の度合を上回るLOIに達するまで還元された触媒を水に曝露し、その後に不活性雰囲気または還元雰囲気の何れかの中での当該触媒の処理が続き、それによりLOIを所望の度合に減少させることと、水素および含水雰囲気中で当該触媒を還元することと、を含む。
【0019】
方法2は、非還元の触媒を所望の度合を上回るLOIで還元することにより、既存の触媒のLOIを所望の度合に減少させることを伴う。
【0020】
方法3は、所望の度合を下回るLOIを有する触媒でアルキル化工程を開始し、処理の最中に水をアルキル化装置に添加することによる、例えば、水を炭化水素の供給物に添加することによる、触媒を含水雰囲気中で再生することによる、および/または、その再生された触媒を含水雰囲気に曝露することによる、その場での水の添加を伴う。
【0021】
上記方法のうち2つ以上の組み合わせを使用することもできる。
【0022】
好ましくは、当該触媒は、水素化金属、希土類交換分子篩、および随意に、マトリックス物質から本質的に成る。より好ましくは、当該触媒は、1つ以上の希土類交換フォージャサイト、1つ以上の第VIII群の貴金属、および1つ以上のマトリックス物質から本質的に成る。さらにより好ましくは、本発明の触媒は、1つ以上の第VIII群の貴金属化合物、1つ以上の希土類交換Y沸石、および、アルミナを含む1つ以上のマトリックスから本質的に成る。
【0023】
当該触媒を、当該業界に現在知られている工程により調製し、変性して本発明の特定の細孔特性を達成することができる。典型的な工程は、
(i)固体酸成分を成形し、例えば、押出して、随意にそれをマトリックス物質と混合した後に、粒子を形成することと、
(ii)結果として生じる粒子を焼成することと、
(iii)例えば、粒子を水素化金属成分の溶液で含浸させることにより、および/または、(競合的な)イオン交換により、水素化金属を焼成された粒子に組み込むことと、の逐次的な段階を含む。
【0024】
代替的には、当該触媒を、例えば、
(i)固体酸成分に、あるいは、固体酸成分およびマトリックス物質の混合物に、水素化金属を組み込むことと、
(ii)結果として生じる物質を成形し、例えば、押出して粒子を形成することと、
(iii)結果として生じる粒子を焼成することと、
の逐次的な段階を含む工程により調製することができる。
【0025】
触媒の調製に関しては、米国特許出願第2008/0183025号に記載されている手順に従うこともできる。本発明の特定の細孔性特性を得るために、押出段階を慎重に実行することが特に有用である。従って、押出しを下記のように実行することが特に有用である:
1)マトリックス物質(例えば、沈殿したアルミナ粉末)、希土類交換分子篩(例えば、沸石)、水、硝酸、および数パーセントの押出助剤(例えば、メチルセルロース)を混合し、混合物を形成することと、
2)この混合物を押出機に供給することと、
3)結果として生じる押出生成物の視覚検査に応じて、いくらかの追加の水を押出しの最中に添加すること。
【0026】
本発明の触媒を得るために実験的にこの手順を実行する際に、最終押出混合物の含水率(LOI 600℃、1時間)が、ほぼ40乃至45重量%であることが観測された。(アルミナ粉末に対して)ほぼ0.15乃至0.25当量の硝酸が添加された。押出物の沸石含有率(ほぼ65乃至85重量%)、残部のマトリックスおよび水素化金属(0.05乃至0.5重量%のPt)は、乾燥量基準(600℃、1時間)で算出された。当業者は、ここで、所望の特性(側面破砕強度およびバルク破砕強度等の物理的強度を含む)を有する押出物を得るのに必要とされる正確なLOIおよび酸添加は、用いられるマトリックス物質の分子篩含有率および特定の特性に依存することを十分に理解することができる。これは、出発成分物質が決定された後に、試行錯誤の実験により典型的に発見される。平均粒子長は約2から約6mmに及び、粒子直径は約0.5から約3mmに及び、側面破砕強度は約1.5から約10lbs/mmに及ぶ。
【0027】
当該触媒は、飽和炭化水素のアルキル化に特に適している。本発明は、従って、こうし
た供給原料のアルキル化における本発明の触媒の使用にさらに関連する。上述のとおり、これは、より高い分子量を有する高度に分岐した飽和炭化水素を得るための、本発明の触媒の存在下における、飽和炭化水素のオレフィンまたはオレフィン前駆体との反応を含む。
【0028】
好ましくは、当該炭化水素は、約4〜10個の炭素原子を有するイソアルカン等の、分岐した飽和炭化水素である。適切なイソアルカンの例は、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、またはそれらの混合物であり、イソブタンが最も好適である。アルキル化工程において用いられるべきオレフィンは、概して約2〜10個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子、さらにより好ましくは約3〜5個の炭素原子、最も好ましくは約4個の炭素原子、を有する。最も好ましくは、当該アルキル化工程は、イソブタンのブテンとのアルキル化から成る。
【0029】
当業者にとって明らかになることになるように、流動床工程、スラリー工程、および固定床工程を含む任意の適切な形態で、アルキル化工程を適用することができる。当該工程を、それぞれが別個のオレフィン添加を伴う、いくつかの床および/または反応器内で実行することができる。このような場合において、本発明の当該工程を各別個の床または反応器内で実行することができる。
【0030】
適切なアルキル化工程条件は、当業者に知られている。好ましくは、国際公開第98/23560号に開示されているようなアルキル化工程が適用されるが、本明細書に記載されている触媒を用いる。本工程において適用される工程条件は、下記の表内に要約される:
【表1】

【0031】
好ましくは、国際公開第98/23560号に開示されているような再生技術は、アルキル化工程の最中に適用される。より具体的には、アルキル化工程の最中に、触媒は、好ましくは、脂肪族化合物および水素を含有する供給物と接触されることにより、再生段階を間欠的に受け、前記再生は、触媒の活性周期の、好ましくは約90%以下、より好ましくは約60%以下、さらにより好ましくは約20%以下、最も好ましくは約10%以下、にて実行される。触媒の活性周期は、アルキル化剤の供給の出発点から、触媒を含有する反応器部分の入口と比較して、アルキル化剤の約20%が、転換されずに(分子の内部における異性化を勘案しない)触媒を含有する反応器部分を出る瞬間までの時間と定義される。
【0032】
随意に、本工程では、触媒は、気相中において、水素での高温再生を周期的に受けることがある。この高温再生は、好ましくは少なくとも約150℃、より好ましくは約175〜600℃、最も好ましくは約200〜400℃、の温度で実行される。この再生手順の詳細については、国際公開第98/23560号に対して、具体的には、4ページの5〜19行目と、9ページの13行目乃至13ページの3行目に対して、参照が行われている。本発明の触媒は、バッチ、準連続的および連続的なアルキル化工程において用いられることがあり、かつ再生を経ることがある。従って、例えば、国際公開第98/23560号(米国特許第5,986,158号)、米国特許出願公開第2007/0293390号、国際公開第2005/075387号、米国特許第7,176,340号、米国特許出願公開第2002/0198422号と欧州特許第1 485 334号、および米国特許出願公開第2008/0183025号に教示されているアルキル化工程を、それらに教示されている条件下で本触媒を用いて実行することができる。
【0033】
上記のアルキル化工程における本発明の触媒の使用は、高いオレフィン転換率(反応中に転換される供給物中のオレフィンの量)、高いC5+アルキル化物の収量(消費されるオレフィンの全重量で割った、生成されるC5+アルキル化物の重量量)、および高オクタン価を結果的にもたらし、一方、非所望のC9+副生成物の量を制限することができ、そのため、触媒の安定性を改善することができる。これらの母数の点における詳細については、国際公開第98/23560号に対して参照が行われている。
【0034】
下記の実施例は、例解の目的のために提示されており、本発明の範囲に限定を課すことを目的としていない。
【実施例】
【0035】
実験
本実験にて用いられた押し出機は、ヴェルナー・プフライデラー社(Werner-Pfleiderer Corp.)製の商業的に利用可能な二軸押出機(型番ZSK−30)であった。加えて、直径が100nm未満の細孔に対する細孔容積、ならびに生成された触媒の総細孔容積を、ウォッシュバーン方程式、
【数1】

に基づく水銀(Hg)侵入を介して決定し、式中、Dは細孔直径であり、pは測定の最中に印加される圧力であり、γは表面張力であって、480dynes/cmであると考え、θは接触角であって、140°であると考える。本測定では、当該測定が3.6〜8,000nmの範囲内の直径を有する細孔に及ぶような範囲にわたり、圧力を変化させた。
【0036】
これらの実験試料では、各触媒を作る際に、希土類交換Y沸石の約70乃至約83重量%を用い、その残部は、押出しより前には、試料中にあるアルミナマトリックスであった。
【0037】
希土類イオンを有するY沸石を、米国特許出願公開第2008/0183025号に記載されている経路を介して調製しており、すなわち、ナトリウム−Y沸石(NaY)を調製し(シリカ対アルミナのモル比(SAR)は5.5、NaOは約13重量%)、その後に、希土類イオン(好ましくは、ランタンの豊富なRE混合物)およびNHイオン(残存するNaOは典型的に約4.2重量%)とのイオン交換、および約400乃至約500°での蒸熱が続いた。蒸気処理の後に、NHイオンとの交換を実行し、その後、沸石を乾燥させる。しかしながら、複合蒸熱およびNHイオンとのイオン交換の段階を、適当なSAR、a、およびNaO含有率を達成するために必要な場合に使用することができる。
【0038】
試験した触媒は、焼成した押出物の含浸により約0.20重量%の白金を含有し、沸石のNaO含有率は約0.8重量%であり、沸石のaは約24.66であり、RE含有率は約4重量%であった。沸石含有率は、70および75重量%の間で試料中にて変化した。ここで提示するデータから分かることになるように、最も高い活性を有する試料の活性は10%未満の沸石含有率における差異(75%沸石対70%沸石)から説明すること
ができるよりも遥かに高かった(>20%)。マトリックスおよび沸石の量を変化させることにより、および、酸(例えば、HNO)および水の付加により、押出し等の成形技術により形成した触媒粒子の細孔性を制御することができる。走査電子顕微鏡法(SEM)により測定した際の沸石粒子の大きさは、ほぼ100乃至1,000nmであった。
【0039】
触媒A〜Dを下記の手順に従って調製した;触媒CおよびDの場合には70%、触媒AおよびBの場合には75%、の上記に記載したとおりに調製したRE交換沸石を用い、残部はアルミナマトリックスおよび約0.20重量%のPtであった(全て乾燥量基準、LOI 600℃、1時間で算出した)。上記で述べたように押出しを実行した。押出物の平均長は約4mmであり、平均直径は約1mmであった。結果として、以前に米国特許第6,855,856号で言及された方法に従って計算した比長は、約0.22mmであった。
【0040】
上記で参照したHg法を用いて、各触媒を細孔容積について分析した。細孔容積の分布を図1にグラフで表し、100nm未満の直径を有する細孔内の細孔容積を決定し、総細孔容積を以下の図1に提示する。
【表2】

【0041】
表2では、米国特許第6,855,856号に定義されているとおりの大細孔性、および、大細孔性および比長の比率を触媒A〜Dについて提示する。
【表3】

【0042】
触媒D(基準)のみが、米国特許第6,855,856号に照らして好適な特性を有することが分かる。本発明の触媒A、B、およびCは、本発明の触媒の驚くべき挙動を例解する、先の発明の好適な特性と比較して明確な差異を示す。触媒A〜Cの大細孔性(細孔は>40nm)は、触媒Dのそれと比較して比較的に高いことに留意されたい。
【0043】
触媒Aの比長は0.22mmであり、水銀侵入の測定結果(例えば、図1のグラフを参照されたい)から試算した大細孔容積は約0.36ml/gであり、そのため、比長に対する大細孔容積の比率は0.36/0.22=1.6であり、以前に米国特許第6,855,856号で教示された最大比率よりも遥かに高い。
【0044】
各触媒A〜Dを、下記のように実行したアルキル化工程において用いた:本明細書で参照により全体として組み込まれ、2cmの直径を有する、国際公開第98/23560号
に記載されているような固定床の再循環反応器を、(乾燥量基準、すなわち、含水率に対して補正した実際の重量で)38.6グラムの触媒押出物、およびカーボランダム粒子(60メッシュ)の1:1体積/体積混合物で満たした。当該反応器管の中央に、直径が6mmの熱電対を配列した。当該反応器を乾燥窒素で30分にわたり(21Nl/時)洗い流した。次に、本システムを昇圧での漏出について試験し、その後、圧力を21バールに、窒素流を21Nl/時に設定した。当該反応器の温度をその後1℃/分の速度で275℃に上昇させ、275℃で窒素を乾燥水素に置換し、触媒を275℃で還元した。
【0045】
代替的には、実行間の同じ触媒試料の高温再生の場合では、アルキル化反応温度を維持しながら、反応器を流出しかつ水素で洗い流して炭化水素を除去した後に、水素流を21Nl/時に設定し、反応器の温度をその後1℃/分の速度で275℃に上昇させ、触媒を275℃で再生した。
【0046】
2時間後に、反応器の温度を約75℃の反応温度に下げた。冷却する間に、水を水素流に添加し、約2〜4重量%の触媒のLOIを得た(この場合、触媒のLOIを、2時間にわたり600℃で加熱した後の触媒の重量損失と定義する)。
【0047】
反応温度に到達した際に、水素気流を止めた。4重量%のアルキル化物(失活速度を加速させるために添加し、添加したアルキル化物の組成物は、記載した条件での工程で生成したアルキル化物と同様である)と、約1mol%の溶存水素と、を含有するイソブタンを、反応器に約4.0kg/時の速度で供給した。約95〜98%のイソブタン/アルキル化物の混合物を反応器に戻した。約2〜5%を分析のために排出した。このような量のイソブタン/アルキル化物の混合物を反応器に供給し、一定分量の液体を本システム内に確保した。本システムが安定化していた際に、水素添加を止め、0.16のシス−2−ブテン−WHSVを与えるような量のシス−2−ブテンをそれに添加した。本システム内の液体の全体の流速を、約4.0kg/hに維持した。反応器入口でのシス−2−ブテンに対するイソブタンの重量比は、約500〜600であった。反応器内の圧力は約21バールに達した。(添加および生成したアルキル化物からの)炭化水素の再循環流の全てのアルキル化物濃度を、分析に対する排出流を制御することにより、試験の最中に約10重量%に維持した。
【0048】
1時間の反応の後に毎回、イソブタン/アルキル化物の混合物で5分にわたり洗浄し、その後に、イソブタン/アルキル化物の混合物中の1モル%のHの溶液と接触させることを通じる50分の再生が続き、その後、イソブタン/アルキル化物の混合物でさらに5分にわたり洗浄することにより、触媒を再生した(合計の洗浄および再生の時間は1時間)。この洗浄段階の後に、アルキル化を再び開始した。
【0049】
洗浄段階、再生段階、および反応段階の最中の温度は、同じであった。
【0050】
当該工程を上記のとおりに行い、触媒性能を時間の関数として測定した。当該性能は、反応器通過毎のオレフィン転換率を特徴とした。反応器通過毎のオレフィン転換率は、触媒床の入口と出口との間で転換される(分子の内部における異性化を勘案しない)オレフィンの(百分率としての)重量分率である。図2のグラフ内に結果を描画する。
【0051】
図2での触媒A乃至Dの触媒活性のグラフで表した結果から分かるように、直径が100nmより小さい細孔内における0.2ml/g未満の細孔容積と、0.3ml/gより大きい総細孔容積と、の組み合わせを有する触媒(触媒A、B、およびC)は、触媒Dの性能と比較すると、驚くほどに有益な結果を示した。図2に示した触媒A〜Cの活性の有利な増加を、触媒A、B、およびCの沸石の量の増加対触媒Dのそれの百分率により、百分率基準で説明しきることはできない。細孔特性のこの特有の組み合わせは、アルキル化
活性において予想外に有益な改善を提供すると思われる。
【0052】
本文書内のあらゆるところで化学名または化学式により言及される反応物および成分は、単数で言及されるか複数で言及されるかにかかわらず、化学名または化学型により言及される別の物質(例えば、別の反応物、溶媒、または他のもの)と接触するより前に存在すると見なされることを理解されたい。どのような予備的な化学変化、化学変換、および/または化学反応が、たとえあるとしても、このような変化、変換、および/または反応が、本開示に準じて要求される条件下で、特定の反応物および/または成分を結集させることの当然の結果であるので、結果として生じる混合物または溶液または反応媒体中で起こるかは重要でない。従って、当該反応物および成分は、所望の化学操作または化学反応を行うことに関連して、あるいは、所望の操作および反応を実行する際に用いられることになる混合物を形成する際に、結集されることになる原料と見なされる。また、たとえ一実施形態が物質、成分、および/または原料に現在時制で言及することがあるとしても(「〜から成る」、「〜を含む」、「〜である」など)、当該言及は、本開示に従って1つ以上の他の物質、成分、および/または原料と最初に接触、融合、または混合される直前の時間に存在したので、当該物質、成分、または原料に対するものである。
【0053】
明白に他に示されることがある時を除き、本明細書で用いられる場合および時における「一」または「一つの」という冠詞は、本説明または請求項を当該冠詞が言及する単一の要素に限定することを目的としておらず、かつ、限定すると解釈されるべきでない。そうではなく、本明細書で用いられる場合および時における「一」または「一つの」という冠詞は、本文が明白に他に示さない限り、1つ以上のこのような要素に及ぶことを目的としている。
【0054】
本明細書の任意の部分で言及される、ありとあらゆる特許または他の刊行物または刊行された文書は、本明細書で完全に明示されているかのように、全体として本開示に参照により組み込まれる。本明細書で参照により組み込まれる引用された文書と、本開示の明確な文書との間における任意の不一致は、本開示の明確な文書に有利に解決されるべきである。
【0055】
本発明は、添付の請求項の趣旨および範囲内の相当な変動を受け入れる余地がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類交換分子篩の形態にある水素化金属および固体酸を含む固体触媒であって、前記触媒は、直径が100nmを下回る細孔内における0.20ml/g未満の細孔性、および0.30ml/gより大きい総細孔性を少なくとも特徴とする、固体触媒。
【請求項2】
前記分子篩が沸石を含む、請求項1に記載の固体酸触媒。
【請求項3】
前記沸石がフォージャサイト構造を有する沸石を含む、請求項2に記載の固体酸触媒。
【請求項4】
前記沸石がY沸石である、請求項3に記載の固体酸触媒。
【請求項5】
前記Y沸石が、24.56〜24.72オングストロームの範囲内の単位セル径を有する、請求項4に記載の固体酸触媒。
【請求項6】
前記単位セル径が、24.62〜24.70オングストロームの範囲内にある、請求項5に記載の固体酸触媒。
【請求項7】
前記固体酸が、乾燥量基準(600℃、1時間)で算出すると、わずか約1重量%のNaOを含む、先行する請求項の何れかに記載の固体酸触媒。
【請求項8】
前記固体酸が、乾燥量基準(600℃、1時間)で算出すると、わずか約0.8重量%のNaOを含む、請求項7に記載の固体酸触媒。
【請求項9】
直径が100nmを下回る細孔内における前記細孔性が0.18ml/g未満であり、かつ前記総細孔性が0.30ml/g超過である、先行する請求項の何れかに記載の固体触媒。
【請求項10】
直径が100nmを下回る細孔内における前記細孔性が0.18ml/g未満であり、かつ前記総細孔性が0.34ml/g超過である、先行する請求項の何れかに記載の固体触媒。
【請求項11】
前記水素化金属が第VIII群の貴金属から本質的に成る、先行する請求項の何れかに記載の固体触媒。
【請求項12】
前記第VIII群の貴金属が白金である、請求項11に記載の固体酸触媒。
【請求項13】
前記触媒がマトリックス物質を追加的に含む、先行する請求項の何れかに記載の固体酸触媒。
【請求項14】
前記マトリックス物質がアルミナを含む、請求項13に記載の固体酸触媒。
【請求項15】
前記希土類が、ランタンまたはランタンの豊富な希土類元素の混合物である、先行する請求項の何れかに記載の固体酸触媒。
【請求項16】
前記触媒が、約1.5乃至約6重量%の範囲内の量の水をさらに含む、先行する請求項の何れかに記載の固体酸触媒。
【請求項17】
水の前記量が約2乃至約4重量%の範囲内にある、請求項16に記載の固体酸触媒。
【請求項18】
飽和炭化水素の供給材料およびオレフィンを触媒とアルキル化工程条件にて接触させることを含む、炭化水素のアルキル化のための工程であって、前記触媒が請求項1〜17の何れかに従う、工程。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518522(P2012−518522A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548726(P2011−548726)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051595
【国際公開番号】WO2010/092056
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(508375653)
【Fターム(参考)】