説明

アルキレンオキシドの調製方法

アルキレンオキシドの調製方法であって、(i)有機ヒドロペルオキシドおよびアルケンを含む新鮮な供給物を再循環ストリームと混合して、反応混合物の総量に対して5〜80重量%のアルコールを含む反応混合物を得るステップと、(ii)前記反応物を不均一エポキシ化触媒と接触させて、アルキレンオキシドおよびアルコールを含むストリームを得るステップと、(iii)ステップ(ii)で得られたストリームの30〜95重量%を、ステップ(i)へ再循環するステップとを含む調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンオキシドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルケンを、有機ヒドロペルオキシドと反応させることによってアルケンオキシドへとエポキシ化することは、当技術分野において知られている。
【0003】
たとえば、エチルベンゼンから出発して、プロピレンオキシドとスチレンを同時生産する一般的に知られた方法において、上記のエポキシ化反応が適用されている。一般的に、この同時生産方法は、(i)エチルベンゼンを酸素または空気と反応させて、エチルベンゼンヒドロペルオキシドを形成するステップと、(ii)こうして得られたエチルベンゼンヒドロペルオキシドを、エポキシ化触媒存在下、プロペンと反応させてプロピレンオキシドおよび1−フェニルエタノールを得るステップと、(iii)この1−フェニルエタノールを、適切な脱水触媒を使用した脱水によって、スチレンに変換するステップとを含む。
【0004】
アルキレンオキシドを生産するもう1つの方法は、イソブタンおよびプロペンから出発して、プロピレンオキシドおよびメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)を同時生産する方法である。この方法は、当技術分野でよく知られており、前のパラグラフで説明したスチレン/プロピレンオキシド生産方法と類似の反応ステップを含んでいる。エポキシ化ステップにおいて、tert−ブチルヒドロペルオキシドを、不均一系エポキシ触媒存在下、プロペンと反応させて、プロピレンオキシドおよびtert−ブタノ−ルを形成させる。tert−ブタノールは、続いてメタノールによってMTBEへとエーテル化され、これは自動車燃料で添加剤として使用される。
【0005】
さらなる方法には、クメンを用いたプロピレンオキシドの製造を含む。この方法では、クメンを酸素または空気と反応させてクメンヒドロペルオキシドを形成させる。こうして得られたクメンヒドロペルオキシドを、エポキシ化触媒存在下、プロペンと反応させてプロピレンオキシドおよび2−フェニルプロパノールを得る。後者は、不一系触媒および水素を用いて、クメンに変換することができる。適切な方法は、たとえば、WO 02/48126に記載されている。
【0006】
本発明は、不均一系触媒を使用した、アルケンと有機ヒドロペルオキシドとの間のエポキシ化反応に関する。
【0007】
不均一系エポキシ化触媒は、当技術分野で知られている。このような触媒は、触媒として活性な金属として、1種または複数の、バナジウム、モリブデン、タングステン、チタニウム、ジルコニウムなどの遷移金属を含むことができる。特に適した不均一系エポキシ化触媒の1種は、チタニウムベースの触媒である。このような触媒の例は、たとえば、米国特許第4,367,342号および欧州特許出願公開第0,345,856号に記載されている。米国特許第4,367,342号は、少なくとも0.1重量%のチタニウムオキシドまたはヒドロキシドを有する化学組成のシリコン無機酸素化合物を使用することを開示しており、一方欧州特許出願公開第0、345、856号は、シリコン化合物を気体状態の四塩化チタン流で添着(impregnate)させ、続いて焼成および加水分解ステップを施し、場合によってはシリル化ステップによって得られるシリカ担持チタニア不均一系触媒を開示している。
【0008】
このような不均一系エポキシ化触媒が、アルケンのエポキシ化の触媒として使用される場合、触媒はゆっくりと失活する。この触媒が長期間高い活性を維持できるなら、触媒の消耗ならびに反応器の再ロードの時間および費用に起因するコストを低減できるので有益である。さらに、失活が遅くなると、平均反応温度を低く保つことができるので望ましい。平均反応温度が低いと、一般的に副産物の生成も少なくなることが判明している。したがって、高い触媒活性は、より費用効果があり生産的な方法をもたらす。
【0009】
WO 98/32530は、固体接触触媒を使用して、プロピレンを有機ヒドロペルオキシドと反応させることによるオキシラン化合物の生産方法を記載している。この方法では、反応熱の約25〜75%が、反応器からの加熱されたプロペンストリームとの直接接触による冷たい反応器の予備加熱によって除去される。図3の工程で、部分的に変換された反応混合物は2つの部分に分割され、一方は再循環された冷たい供給物と混合され、残りは後続の触媒ベッドへと移動する。再循環する反応混合物の量または行われた変換についての情報は無い。さらに、プロピレンは反応混合物が再循環される前に蒸発し除去されると記述されているので、再循環される反応混合物には実質上プロピレンが含まれない。
【0010】
WO 01/12617は、失活した触媒の活性が、失活した触媒を、少なくとも部分的に失活した触媒が再活性化の開始直前に使用中であった最終温度よりも少なくとも5℃高い温度で、エポキシ化反応混合物と接触させることによって復元できると教示している。実施例1では、再活性される触媒が、確実にエポキシ化反応製品と接触するようにするために、大規模な再循環ストリームを反応器上で維持しながら、失活した触媒を供給物と接触させる。供給物処理量48g/時間、再循環流量2.5kg/時間で、98重量%を超える製品が再循環される。WO 01/12617は、理想的な混合状態をシミュレートするために、大規模再循環だけを使用している。WO 01/12617は、アルキレンオキシドの生産における再循環の使用について教示していないし暗示してもいない。
【0011】
WO 01/12617は、エポキシ化のための典型的な供給物は、15〜25重量%のエチルベンゼンヒドロペルオキシド、30〜50重量%のエチルベンゼン、30〜50重量%のプロペン、0〜5重量%の1−フェニルエタノール、および0〜5重量%のメチルフェニルケトンを、合計で100%含んでいると記述している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
我々は、高い触媒活性を長期間維持することを可能にする方法を発見した。驚くべきことに、再循環を使用すると触媒の失活が遅くなることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明はアルキレンオキシド調製方法に関するもので、この方法は、
(i)有機ヒドロペルオキシドを含む新鮮な供給物を再循環ストリームと混合させて、反応混合物の総量に対して5〜80重量%のアルコールを含む反応混合物を得るステップと、
(ii)混合反応物を、不均一系エポキシ化触媒と接触させて、アルキレンオキシドおよびアルコールを含むストリームを得るステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られたストリームの30〜95%をステップ(i)へ再循環するステップとを含む。
【0014】
特定の理論に拘泥するものではないが、再循環を使用することによって得られる利点は、触媒と接触した反応混合物中のアルコール量の増加によるものであると考えられる。
【0015】
さらに本発明は、反応混合物総量に対して5〜25重量%の有機ヒドロペルオキシド、30〜50重量%のプロペン、5〜70重量%のアルコール、30〜50重量%のその他化合物を合計で100%含む混合物を、不均一系エポキシ化触媒と接触させて、プロピレンオキシドおよびアルコールを得ることを含むプロピレンオキシド調製方法に関する。
【0016】
エポキシ化触媒と接触させる混合反応物は、新鮮な供給物および再循環反応混合物から成る。新鮮な供給物は、通常反応混合物の重量に対して5重量%未満のアルキレンオキシドを、より具体的には3重量%未満のアルキレンオキシドを含む。好ましくは、新鮮な供給物は1重量%未満のアルキレンオキシドを含む。最も好ましいのは、アルキレンオキシドを含まない新鮮な供給物である。
【0017】
本発明で使用するアルケンは、少なくとも1個の脂肪族の炭素−炭素二重結合を有するどんな有機化合物でもよい。このような化合物は、一般的に2〜25個の炭素原子を、好ましくは、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−ドデセン、スチレン、メチルスチレンなど3〜12個の炭素原子を有している。しかしながら、最も好ましくは、プロペンをアルケンとして使用し、本発明の方法に従ってプロピレンオキシドを製造する。
【0018】
使用できる有機ヒドロペルオキシドは、適切であると認められているどの有機ヒドロペルオキシドでもよい。商業的に広範囲に使用されている有機ヒドロペルオキシドは、t−ブチルヒドロペルオキシドおよびアルキルアリルヒドロペルオキシドである。アルキルアリルヒドロペルオキシドが特に有利である。特定のアルキルアリルヒドロペルオキシドは、クメンヒドロペルオキシドおよびエチルベンゼンヒドロペルオキシドである。
【0019】
使用される不均一系触媒は、アルケンと有機ヒドロペルオキシドとの間の反応の触媒として働き、対応するアルケンオキシドおよびアルコールとするのに適していると当技術分野で知られている触媒であればどれでもよい。しかしながら、チタニウム含有触媒が好ましい。したがって、たとえば、上記で説明した米国特許第4,367,342号および欧州特許出願公開第0,345,856号の特許明細書で開示された触媒を適用することができる。しかしながら、欧州特許出願公開第0,345,856号で開示されたシリカ担持チタニア触媒を、全てのエポキシ化反応器で本発明のために使用するのが特に有利であることが判明した。これら触媒を使用した場合、本発明の方法によって極めて良好な結果が達成された。
【0020】
商業運転において、ステップ(ii)のエポキシ化反応は、一般的に温度50〜135℃、好ましくは70〜125℃で行われる。圧力は、80バールまで、好ましくは10〜60バールである。反応媒体は液相であることが好ましい。
【0021】
本発明で使用される反応混合物の組成は、所要量のアルコールが存在する限り、重要ではない。したがって、スチレン/プロピレンオキシド同時生産方法の場合、反応混合物は一般的に幾らかのエチルベンゼンヒドロペルオキシドを含んでおり、普通はかなりの量のエチルベンゼンも含んでいる。クメンヒドロペルオキシドを用いたプロピレンオキシド調製方法の場合、かなりの量のクメンが存在してもよい。プロピレンオキシドがメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)と共に生産される場合には、反応混合物はt−ブタンを含んでいてもよい。
【0022】
プロペンは、別個の供給物ストリームとして反応器に加えるか、あるいはエポキシ化反応器に入る前に新鮮な供給物または再循環反応混合物に加えてもよい。
【0023】
新鮮な供給物は、以前の酸化部または以前のエポキシ化反応器内で形成されたか、あるいは再循環ストリームに含まれていた幾らかのメチルフェニルケトンおよび/または1−フェニル−エタノールを含んでいてもよい。典型的な新鮮な供給物は、エチルベンゼンヒドロペルオキシド15〜25重量%、エチルベンゼン30〜50重量%、プロペン30〜50重量%、1−フェニル−エタノール0〜5重量%、メチルフェニルケトン0〜5重量%を、合計で100%含んでいる。このような新鮮な供給物ストリームを、本発明で用いる所望の反応混合物を得るために再循環ストリームと合流させる。
【0024】
ステップ(ii)で用いる本発明の反応混合物は、一般的に反応混合物総量に対して、少なくとも7重量%のアルコールを、より具体的には少なくとも8重量%のアルコールを、好ましくは少なくとも10重量%のアルコールを含んでいる。アルコールの濃度は、再循環ストリームに存在するアルコールに、アルコールを添加することによって非常に高くすることができる。このようなアルコールは、基本的にはどんなアルコールでもよい。しかしながら、好ましいアルコールは、本発明の方法で使用される有機ヒドロペルオキシドから誘導されるアルコールおよびプラントのその他の場所から得られるかもしれない純粋なまたは幾分純度の低い形態のアルコールである。
【0025】
アルコール含有量が非常に高いと、反応混合物中の反応物の濃度が低下するという欠点がある。したがって、一般的には80重量%未満、より好ましくは多くても60重量%、より好ましくは多くても50重量%、より好ましくは多くても40重量%、最も好ましくは多くても30重量%のアルコールが存在する。一般的に、ステップ(ii)に反応混合物は、10〜40重量%のアルコールを含んでいる。
【0026】
本発明による方法において主に存在するアルコールは、有機ヒドロペルオキシドの変換生成物である。t−ブチルヒドロペルオキシドを使用した場合、アルコールはt−ブタノールである。エチルベンゼンヒドロペルオキシドを使用した場合、アルコールは1−フェニル−エタノールである。クメンヒドロペルオキシドを使用した場合、アルコールは2−フェニルプロパノールである。
【0027】
より具体的には、ステップ(ii)にかけられる反応混合物は、3〜25重量%の有機ヒドロペルオキシド、20〜50重量%のアルケン、5〜50重量%のアルコールおよび0〜60重量%のその他の化合物を、合計で100重量%含む。より好ましくは、ステップ(ii)にかけられる反応混合物は、5〜20重量%の有機ヒドロペルオキシド、30〜50重量%のアルケン、5〜40重量%のアルコールおよび0〜60重量%のその他化合物を、合計で100重量%含む。より具体的には、ステップ(ii)にかけられる反応混合物は、5〜20重量%の有機ヒドロペルオキシド、30〜50重量%のアルケン、5〜25重量%のアルコールおよび5〜60重量%のその他化合物を、合計で100重量%含む。
【0028】
ステップ(ii)からステップ(i)へと再循環される反応混合物は、所要量のアルコールが存在するように、ある程度まで変換されていることが好ましい。したがって、再循環される製品ストリームは、多くても15重量%の有機ヒドロペルオキシドを、より具体的には多くても10重量%の有機ヒドロペルオキシドを含んでいることが好ましい。最も好ましくは、再循環される反応混合物が0.5〜10重量%の有機ヒドロペルオキシドを含む。さらに、アルケンが常にモル過剰で存在し、通常ヒドロペルオキシドの一部だけが変換されるので、再循環される反応混合物は一般的にかなりの量のアルケンを含む。一般的に、再循環される反応混合物は、10〜50重量%のアルケンを含んでいる。この点が、WO 98/32530で使用される再循環ストリームとは異なる。
【0029】
この再循環されるストリームは、幅広い比率で新鮮な供給物と混合することができる。好ましくは、ステップ(iii)の再循環ストリームと新鮮な供給物との重量比が0.5〜4、より具体的には1〜3、最も具体的には約2である。
【0030】
再循環を適用した場合、再循環は比較的高いホールドアップを必要とするので、実質上完全な変換を達成するのは厄介なことになる。本発明の好ましい実施形態では、有機ヒドロペルオキシドの大部分は再循環ストリームの存在の下で変換され、一方変換の最終部分は再循環ストリーム無しで行われる。したがって、本発明は、(iv)ステップ(ii)において得られた残りのストリームを、さらなるエポキシ化触媒と接触させて、実質上有機ヒドロペルオキシドを含まない製品ストリームを得るステップをさらに含むことが好ましい。長期間にわたって高い触媒活性を維持するためのアルコール添加は、この製造ステップでは必要がないことが判明した。
【0031】
特に好ましい実施形態において、ステップ(iv)は、必要な場合製造を停止せずに触媒を交換することが可能なように、少なくとも2基の別個の反応器で行われる。これらの反応器を直列に設置した場合、最も有利であったことが分かった。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態では、ステップ(ii)において、反応混合物を、少なくとも2基の、好ましくは2〜5基の並列反応器内でエポキシ化触媒と接触させる。並列反応器を使用することによって、反応混合物が様々な活性の触媒と接触する機会が得られる。各並列反応器へ送られる供給物の量は、反応器内に存在する触媒の活性に基づいて変えることができる。このような運転によって、存在する触媒が最適に利用される。さらに、並列反応器の使用によって、製造を停止せずに触媒を交換する機会が与えられる。
【0033】
さらなる状況によっては、新鮮な触媒を、アルケンのヒドロペルオキシドに対するモル比が様々な供給物と接触させる方が、触媒をある期間使用しているよりも有利である。このような運転の好ましい実施形態は、事前公開されなかった特許出願WO−A−03/082843に記述されている。
【0034】
好ましくは、ステップ(ii)で得られたストリームの50〜90重量%を、より具体的には60〜80重量%を、反応混合物として再循環する。
【0035】
本発明で、熱統合を適用する方法は、実際の状況によって大きく左右される。再循環を使用すると、新鮮な供給物は、ステップ(ii)の再循環されたストリームと混合されるので、加熱されて高温となる傾向がある。任意の製造ステップ(iv)において得られたような実質的に有機ヒドロペルオキシドを含まない最終製品を、ステップ(ii)で得られたストリームの再循環された部分と、熱交換器を経由して接触させることにより、再循環されるストリームの温度を低下させることができる。
【0036】
ステップ(ii)および/またはステップ(iv)で得られるアルコールは、当技術分野の技術者によって知られている任意の方法によってさらに変換することができる。有機ヒドロペルオキシドがクメンヒドロペルオキシドである場合、得られた2−フェニル−プロパン−2−オールは、再度クメンへと水素添加することができる。有機ヒドロペルオキシドがエチルベンゼンヒドロペルオキシドである場合、さらに1−フェニルエタノールを製品ストリームから分離し、これを脱水触媒を用いて脱水してスチレンを得ることを含むことが好ましい。有機ヒドロペルオキシドがt−ブチルヒドロペルオキシドである場合は、さらにメタノールをt−ブタノールと反応させてMTBEを得ることを含むことが望ましい。
【0037】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示するが、本発明の範囲はこれら特定の実施形態によって限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
実施例は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの供給ストリームおよびアルケンの供給ストリームをそれぞれ含む2つの容器が載っている自動計量秤、2基の高圧ポンプ、固定ベッド反応器、再循環ストリームを反応器にポンピングする第3ポンプ、反応器を50〜140℃の所望の温度に均一に維持する手段、アルケンのような低沸点成分を除去するためのストリッパー、製品を捕集するための冷却器および容器を備えた連続エポキシ化ベンチスケール設備で行った。
【0039】
供給物は、2基の高圧ポンプによって反応器に供給され、反応器に入る前に混合された。反応器は、圧力50バールにおいて、満杯の液体状態で運転した。反応器に供給される供給物の温度は約90℃であった。必要ならば、製品の一部を第3ポンプを用いて再循環し、新鮮な供給物と混合することができる。残りの製品を取り出し、冷却し貯蔵した。再循環ストリームが適用された場合は、エチルベンゼン溶液中のプロペンおよびエチルベンゼンヒドロペルオキシド供給物は、反応器に導入される前に再循環ストリームと混合された。
【0040】
エポキシ化触媒は、シリカ担持チタニウムを含む触媒であって、欧州特許出願公開第345,856号の教示による実施例に記述されているやり方で調製された。この触媒の総量21gを反応器に装入した。
【0041】
使用した有機ヒドロペルオキシドは、エチルベンゼン中に30〜40重量パーセントのエチルベンゼンヒドロペルオキシドを含んでいた。新鮮な供給物は、プロペンとエチルベンゼンヒドロペルオキシド溶液を、プロペンのエチルベンゼンヒドロペルオキシドに対するモル比が約6となるような量で混合することで得られた。
【0042】
供給物の流量は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドの変換率が、80%でほぼ一定となるように、絶えず状況にあわせて変化させた。
【0043】
エポキシ化の2次反応速度定数(k)は、エチルベンゼンヒドロペルオキシドおよびプロペンの濃度に一次反応速度論が当てはまると仮定して決定した。
【0044】
(比較例1)
比較例1においては、得られた流出液の再循環は行わなかった。供給物流量333g/hを使用して、運転20日後に80%の変換が得られた。kは、この時点のおけるエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度およびプロペン濃度から計算し、1が得られた。
(実施例1)
【0045】
実施例1において、製品の2/3を再循環した。20日後、420g/hを反応器に供給し、840g/hの再循環した流出液と混合した。新鮮な供給物と再循環した流出液との混合物は、約13重量パーセントの1−フェニルプロパノールを含んでいた。反応器における新鮮な供給物の総体変換率は78.9%であった。kは、この時点のおけるエチルベンゼンヒドロペルオキシド濃度およびプロペン濃度から計算し、比較例で計算したkの1.6倍であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)有機ヒドロペルオキシドおよびアルケンを含む新鮮な供給物を再循環ストリームと混合して、反応混合物の総量に対して5から80重量%のアルコールを含む反応混合物を得るステップと、
(ii)前記反応物を不均一エポキシ化触媒と接触させて、アルキレンオキシドおよびアルコールを含むストリームを得るステップと、
(iii)ステップ(ii)で得られたストリームの30から95重量%を、ステップ(i)へ再循環するステップと
を含むアルキレンオキシドの調製方法。
【請求項2】
(iv)ステップ(ii)で得られた前記ストリームの残りをさらなるエポキシ化触媒と接触させて、有機ヒドロペルオキシドを事実上含まない製品ストリームを得るステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(ii)による前記反応混合物が、3から25重量%の有機ヒドロペルオキシド、20から50重量%のアルケン、5から50重量%のアルコールおよび0から60重量%のその他化合物を、合計で100重量%含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
再循環される前記製品ストリームが、多くても10重量%の有機ヒドロペルオキシドを含む請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(ii)による前記反応混合物が、10から40重量%のアルコールを含む請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(ii)において、前記反応混合物を少なくとも2基の並列反応器中でエポキシ化触媒と接触させることを含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(ii)において得られた再循環ストリームの新鮮な供給物に対する重量比が0.5から4である請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アルケンがプロペンである請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
有機ヒドロペルオキシドがエチルベンゼンヒドロペルオキシドであり、さらに1−フェニルエタノールを前記製品ストリームから分離すること、および前記1−フェニルエタノールを脱水素触媒を用いて脱水してスチレンを得ることを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反応混合物の総重量に対して、5から25重量%の有機ヒドロペルオキシド、30から50重量%のプロペン、5から70重量%のアルコールおよび30から60重量%のその他化合物を、合計で100%含む混合物を、不均一系エポキシ化触媒と接触させて、プロピレンオキシドおよびアルコールを得るプロピレンオキシドの調製方法。
【請求項11】
前記有機ヒドロペルオキシドが、エチルベンゼンヒドロペルオキシドであり、さらに前記1−フェニルエタノールを前記製品ストリームから分離して、前記1−フェニルエタノールを脱水素触媒を用いて脱水してスチレンを得ることを含む請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2007−533608(P2007−533608A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523624(P2006−523624)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051601
【国際公開番号】WO2005/016903
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】