説明

アルキン誘導体の製造方法

【課題】原料末端アルキンの選択自由度が広く、脂肪族末端アルキン類のみならず芳香族末端アルキン類にも適用でき、しかも、安価かつ高収率で末端アルキンとアルケンからアルキン誘導体を生成し得る、工業的に有利なアルキン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】末端アルキン類とアルケン類を反応させて対応するアルキン誘導体を製造する方法において、ブレンステッド酸又はルイス酸としてブレンステッド酸がスルホン酸化合物又はスルホイミド化合物、ルイス酸がスルホン酸塩又はスルホイミド塩を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキン誘導体の製造方法に関し、更に詳しくは、末端アルキン類とアルケン類とをブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で反応させてアルキン誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキン誘導体が様々な分野で利用されており、たとえばアリール基を有するアルキン誘導体などのアルキン誘導体は、重合して共役二重結合を生成するので導電性高分子や高分子発光素子などのモノマーとして用いられている。また、アルキン誘導体は、ポリアセン化合物などの有機半導体材料(縮合多環化合物)の出発原料として有用なものであり、更には、アルキン部位への様々な官能基変換反応が可能であり、医薬品中間体や有機材料の原料として付加価値の高い化合物である。加えて、ノルボルニル基を有するアルキン化合物は、レジスト材料への応用が期待されている。
【0003】
このようなアルキン誘導体の製造方法としては、これまでに、幾つかが知られており、たとえば、RuH2(PnBu3)4触媒の存在下で、末端脂肪族アセチレンと1,3-ジエンから脂肪族アセチレン誘導体を合成する方法が提案されている(非特許文献1)。
この方法によれば、1,3-エンイン及び1,5-エンインの構造を持つ脂肪族アルキン誘導体が高選択率で得られるが、触媒として空気に不安定で高価なルテニウム錯体を用いる必要があり、さらに、末端アルキンとして末端芳香族アルキンを用いた場合やアルケンとして1,3-ジエン以外のものを用いた場合には反応が進行しないといった難点があった。
【0004】
また、パラジウム錯体触媒の存在下で、末端脂肪族又は芳香族アセチレンとノルボルナジエンから脂肪族又は芳香族アセチレン誘導体を合成する方法が提案されている(非特許文献2)。
この方法によれば、ノルボルナジエンの一方のみにアセチレンが付加反応したエンインの構造を持つアルキン誘導体が高選択率で得られるが、触媒として空気に不安定で高価なパラジウム錯体を用いる必要がある。さらに、アルケンとしてノルボルナジエン以外のものを用いた場合には反応が進行しないといった難点があった。
【0005】
【非特許文献1】J. Org. Chem. 1985年、Vol.50、565頁
【非特許文献2】Org.Lett. 2006年、Vol.8、4315頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、原料となる末端アルキン類やアルキン類の選択自由度が拡がり、しかも、対応するアルキン誘導体を安価かつ高収率で合成できる、工業的に有利なアルキン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、触媒として、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下でアルキニル化反応を行うと、末端アルキン類と種々のアルケンから効率よく対応するアルキン誘導体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願は、以下の発明を提供するものである。
〈1〉末端アルキン類とアルケン類とを触媒の存在下で反応させて対応するアルキン誘導体を製造する方法において、触媒として、ブレンステッド酸又はルイス酸を用いることを特徴とするアルキン誘導体の製造方法。
〈2〉ブレンステッド酸が、スルホン酸化合物又はスルホイミド化合物であることを特徴とする〈1〉に記載のアルキン誘導体の製造方法。
〈3〉ルイス酸が、スルホン酸塩又はスルホイミド塩であることを特徴とする〈1〉に記載のアルキン誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法によれば、取り扱いが容易で、安価かつ適用基質範囲が広い触媒を用いたことから、原料である末端アルキン類およびアルケン類の選択自由度が著しく拡がり、しかも、対応するアルキン誘導体を安価かつ高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のアルキン誘導体の製造方法は、末端アルキン類とアルケン類を、ブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で、反応させることを特徴とする。
【0010】
本発明で用いる末端アルキン類は、通常、下記一般式(1)で示される。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又は反応に関与しない有機基を表す。)
反応に関与しない有機基としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ヘキサデカニル、エイコサニル等)、内部アルキニル基(例えば、プロパルギル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ヘキシニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、スピロ[4.5]デカニル等)、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリール基(例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、2-アンスリル、3-インデニル、5-フルオレニル等)、アラルキル基、複素環基(例えば2-チエニル、3-チエニル、2-フリル、3-フリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、ピラジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、3-ピロリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、3-ピリダジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、3-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル等の芳香族複素環基、例えば1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル、2-ピラゾリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、ピペリジノ、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ等の非芳香族複素環基、シリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルエチルシリル、ジエチルメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジエチルシリル、トリイソプロピルシリル、イソプロピルジメチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル等)、(これらの基は置換基を有してもよい)を表す。「置換基」としては、例えばオキソ、チオキソ、置換基を有していてもよいイミノ、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、C1-3アルキレンジオキシ(例、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等)、ニトロ、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、カルボキシC2-6アルケニル(例、2-カルボキシエテニル、2-カルボキシ-2-メチルエテニル等)、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキル、C6-14アリール(例、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、2-アンスリル等)、C1-8アルコキシ、C1-6アルコキシ−カルボニル-C1-6アルコキシ(例、エトキシカルボニルメチルオキシ等)、ヒドロキシ、C6-14アリールオキシ(例、フェニルオキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシ等)、C7-16アラルキルオキシ(例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ等)、メルカプト、C1-6アルキルチオ、C6-14アリールチオ(例、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ等)、C7-16アラルキルチオ(例えば、ベンジルチオ、フェネチルチオ等)が挙げられる。ここに挙げられた置換基において「アルキル部」(アルコキシ中のアルキル部を含む)、「アルキレン部」、「アルケニル部」、「アルキニル部」、「アリール部」、及び「複素環部」は、任意に、1個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよく、その場合の置換基としては上記で説明したような基であってよい。上記「置換基」の説明で「置換基を有していてもよい」場合の置換基は、同様に、上記で説明したような基である。このような末端アルキン類としては、たとえば、(アセチレン、メチルアセチレン、1-ブチン、3-メチル-1-ブチン、3,3-ジメチ-1-ブチン、1-ペンチン、1-ヘキシン、1-ヘプチン、1-オクチン、1,3-ブタジイン、1,4-ヘキサジイン、1,4-デカジイン、シクロアルキルアセチレン、フェニルアセチレン、2-ピリジルアセチレン)などを挙げることができる。
【0011】
また、本発明で用いる他方の原料であるアルケン類は通常下記一般式(2)で示される。
【化2】

(式中、R2、R3、R4、R5は、同一又は異なっていてもよく、水素原子又は反応に関与しない有機基を表す。)
反応に関与しない有機基としては、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ヘキサデカニル、エイコサニル等)、アルケニル基(例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチル-2-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル等)、内部アルキニル基(例えば、プロパルギル、2-ブチニル、3-ブチニル、2-ヘキシニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、スピロ[4.5]デカニル等)、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アリール基(例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、2-アンスリル、3-インデニル、5-フルオレニル等)、アラルキル基、複素環基(例えば2-チエニル、3-チエニル、2-フリル、3-フリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、ピラジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル、3-ピロリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、3-ピリダジニル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、3-イソチアゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル等の芳香族複素環基、例えば1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル、2-ピラゾリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、ピペリジノ、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ等の非芳香族複素環基、シリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルエチルシリル、ジエチルメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジエチルシリル、トリイソプロピルシリル、イソプロピルジメチルシリル、イソプロピルジエチルシリル、トリフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル等)、(これらの基は置換基を有してもよい)を表す。「置換基」としては、例えばオキソ、チオキソ、置換基を有していてもよいイミノ、ハロゲン原子(例、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、C1-3アルキレンジオキシ(例、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等)、ニトロ、シアノ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、カルボキシC2-6アルケニル(例、2-カルボキシエテニル、2-カルボキシ-2-メチルエテニル等)、C2-6アルキニル、C3-6シクロアルキル、C6-14アリール(例、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、2-アンスリル等)、C1-8アルコキシ、C1-6アルコキシ−カルボニル-C1-6アルコキシ(例、エトキシカルボニルメチルオキシ等)、ヒドロキシ、C6-14アリールオキシ(例、フェニルオキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシ等)、C7-16アラルキルオキシ(例えば、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ等)、メルカプト、C1-6アルキルチオ、C6-14アリールチオ(例、フェニルチオ、1-ナフチルチオ、2-ナフチルチオ等)、C7-16アラルキルチオ(例えば、ベンジルチオ、フェネチルチオ等)が挙げられる。ここに挙げられた置換基において「アルキル部」(アルコキシ中のアルキル部を含む)、「アルキレン部」、「アルケニル部」、「アルキニル部」、「アリール部」、及び「複素環部」は、任意に、1個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよく、その場合の置換基としては上記で説明したような基であってよい。上記「置換基」の説明で「置換基を有していてもよい」場合の置換基は、同様に、上記で説明したような基である。このようなアルケン類としては、たとえば、(エチレン、プロペン、1-ブテン、2-ブテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、1,3-ブタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,3-シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、ノルボルネン、スチレン、インデン)などを挙げることができる。
【0012】
本発明の合成反応は、典型的には、下記反応式(3)で表わすことができる。
【化3】

(R〜R5は前記と同じ)
【0013】
本発明においては、上記アルキニル化反応をブレンステッド酸又はルイス酸の存在下で行うことが必要である。
ここで、ブレンステッド酸とは、(プロトン供与体)と定義され、ルイス酸とは、(電子受容体)と定義される。
【0014】
ブレンスデッド酸としては、スルホン酸化合物又はスルホイミド化合物が挙げられ、さらにポリマー又は固体担持ブレンステッド酸であってもよい。好ましくは、ポリフルオロアルキルスルホン酸、ビス(ポリフルオロアルキルスルホニル)イミド、ビス(ポリフルオロアルキルスルホニル)メタン、トリス(ポリフルオロアルキルスルホニル)メチドを挙げることができ、例えば、1-[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル]-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼン(1-[bis(trifluoro-methanesulfonyl)methyl]-2,3,4,5,6-penta-fluorobenzene)、1-[ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチル]-4-(1H,1H-ペルフルオロテトラデシルオキシ)-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)メチルテトラフルオロフェニル-ポリスチレン樹脂(bis(trifluoromethanesulfonyl)methyl-tetrafluorophenyl Polystyrene Resin)なども含まれる。ブレンステッド酸における好適な有機基部分としては、当該置換基に存在する水素原子の半分以上がフッ素原子で置換されているようなものが挙げられ、更には当該置換基に存在する水素原子のすべてがフッ素原子で置換されているようなものであってよく、またそれが好ましい場合がある。こうした基の代表的なものとしては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、ウンデカフルオロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、ペンタデカフルオロヘプチル、ヘプタデカフルオロオクチル、ペンタフルオロフェニル、p-トリフルオロメチルテトラフルオロフェニルなどが挙げられる。より好ましくは、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホイミドを用いることが好ましい。
【0015】
ルイス酸としては、上記で示した「ブレンステッド酸」から調整されたスルホン酸塩又はスルホイミド塩が挙げられる。トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ニッケル(II)、フェニルアンモニウムトリフラート、ジフェニルアンモニウムトリフラートを用いることが好ましい。また、「ブレンステッド酸」から調整されたスルホン酸塩又はスルホイミド塩は、それぞれ別途に調製して反応系に加えてもよいし、あらかじめ反応系外で反応させて用いてもよい。
【0016】
ブレンステッド酸又はルイス酸の使用量に特に制限はないが、アルケン類に対してモル比で1/10000〜1、好ましくは1/100〜1/10程度である。
【0017】
本発明における前記末端アルキン類とアルケン類の反応温度に特に制限はないが、好ましくは-80〜300℃であり、より好ましくは室温〜200℃である。
【0018】
また、本発明の反応では、反応を阻害しないような溶媒を用いてもよく、無溶媒でもよい。溶媒に特に制限はないが、例えば、炭化水素類、ハロゲン化物類、エーテル類などが挙げられ、具体的には、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサンなどが例示される。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0020】
実施例1
撹拌装置を具備した25ml容積の反応容器に、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)(0.08mmol)、ジクロロエタン(2ml)、フェニルアセチレン(4mmol)、ノルボルネン(4mmol)を加え80℃まで加熱し、24時間反応をさせた。冷却後、ガスクロマトグラフィーにより分析した。フェニルアセチレン基準の2−フェニルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は40%であった。
【0021】
実施例2
実施例1と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をヘキサンで抽出し水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。祖生成物をゲルパーメーションクロマトグラフィーにより精製・単離した。フェニルアセチレン基準の2−フェニルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は35%であった。
【0022】
実施例3〜5
トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)の代わりに以下の表1に記述したブレンステッド酸又はルイス酸を用いた以外、実施例1と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。フェニルアセチレン基準の2−フェニルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンを合成した。その結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例6
トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)(0.08mmol)の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸(0.24mmol)を用い、実施例1と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。フェニルアセチレン基準の2−フェニルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は18%であった。
【0025】
実施例7〜8
ノルボルネンの量を変えた以外、実施例1と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率はフェニルアセチレン基準で求めた。その結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
実施例9〜10
フェニルアセチレンの量及び反応時間を変えた以外、実施例1と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率はノルボルネン基準で求めた。その結果を表3に示す。
【0028】
【表3】

【0029】
実施例11
ジクロロエタン(2ml)の代わりにクロロベンゼン(2ml)を用い反応温度を130℃で行なった以外、実施例10と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。ノルボルネン基準の2−フェニルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は71%であった。
【0030】
実施例12
フェニルアセチレン(4mmol)の代わりに1−オクチン(4mmol)を用い、実施例1と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。1−オクチン基準の2−ヘキシルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は14%であった。
【0031】
実施例13
実施例12と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をヘキサンで抽出し水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。祖生成物をゲルパーメーションクロマトグラフィーにより精製・単離した。1−オクチン基準の2−ヘキシルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は10%であった。
【0032】
実施例14
ジクロロエタン(2ml)の代わりにクロロベンゼン(2ml)を用い反応温度を130℃で行なった以外、実施例12と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。1−オクチン基準の2−ヘキシルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は25%であった。
【0033】
実施例15〜17
ノルボルネンの量を変えた以外、実施例14と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率は1−オクチン基準で求めた。その結果を表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
実施例18〜19
1−オクチンの量及び反応時間を変えた以外、実施例14と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率はノルボルネン基準で求めた。その結果を表5に示す。
【0036】
【表5】

【0037】
実施例20
撹拌装置を具備した25ml容積の反応容器に、トリフルオロメタンスルホイミド(0.24mmol)、クロロベンゼン(2ml)、1−オクチン(16mmol)、ノルボルネン(4mmol)を加え130℃まで加熱し、6時間反応をさせた。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。ノルボルネン基準の2−ヘキシルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は32%であった。
【0038】
実施例21
反応温度を室温に変えクロロベンゼンを加えない以外、実施例20と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。ノルボルネン基準の2−ヘキシルエチニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン収率は36%であった。
【0039】
実施例22
撹拌装置を具備した25ml容積の反応容器に、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)(0.08mmol)、クロロベンゼン(2ml)、フェニルアセチレン(4mmol)、スチレン(4mmol)を加え130℃まで加熱し、72時間反応をさせた。冷却後、ガスクロマトグラフィーにより分析した。フェニルアセチレン基準の1−フェニル−1−フェニルエチニルエタン収率は24%であった。
【0040】
実施例23〜27
トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)の代わりに以下の表6に記述したブレンステッド酸又はルイス酸を用い表6に記載の反応時間加熱した以外、実施例22と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率はフェニルアセチレン基準で求めた。その結果を表6に示す。
【0041】
【表6】

【0042】
実施例28〜30
フェニルアセチレンの量と反応時間を変えた以外、実施例23と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率はスチレン基準で求めた。その結果を表7に示す。
【0043】
【表7】

【0044】
実施例31
撹拌装置を具備した25ml容積の反応容器に、トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)(0.24mmol)、クロロベンゼン(2ml)、フェニルアセチレン(16mmol)、1,3−シクロヘキサジエン(4mmol)を加え130℃まで加熱し、24時間反応をさせた。冷却後、ガスクロマトグラフィーにより分析した。1,3−シクロヘキサジエン基準の3−フェニルエチニル−1−シクロヘキセン収率は43%であった。
【0045】
実施例32
実施例31と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をヘキサンで抽出し水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。祖生成物をゲルパーメーションクロマトグラフィーにより精製・単離した。1,3−シクロヘキサジエン基準の3−フェニルエチニル−1−シクロヘキセン収率は36%であった。
【0046】
実施例33〜43
トリフルオロメタンスルホン酸銀(I)の代わりに以下の表8に記述したブレンステッド酸又はルイス酸を用いた以外、実施例31と同様に反応を行った。冷却後、反応混合物をガスクロマトグラフィーにより分析した。収率は1,3−シクロヘキサジエン基準で求めた。その結果を表8に示す。
【0047】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端アルキン類とアルケン類とを触媒の存在下で反応させて対応するアルキン誘導体を製造する方法において、触媒として、ブレンステッド酸又はルイス酸を用いることを特徴とするアルキン誘導体の製造方法。
【請求項2】
ブレンステッド酸が、スルホン酸化合物又はスルホイミド化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアルキン誘導体の製造方法。
【請求項3】
ルイス酸が、スルホン酸塩又はスルホイミド塩であることを特徴とする請求項1に記載のアルキン誘導体の製造方法。

【公開番号】特開2009−203194(P2009−203194A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47709(P2008−47709)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】