説明

アルケニル芳香族系樹脂

【課題】ポリエチレン系樹脂との相溶性に優れ、黄色などの着色のないアルケニル芳香族系樹脂およびそれを用いたホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】下記(A1)、(A2)および(A3)からなる混合物をフリーデルクラフツ型触媒を用いて、−78℃〜50℃において共重合して得られる、重量平均分子量がポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあるアルケニル芳香族系樹脂に関する。
(A1)沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物および/またはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物:50〜80質量%
(A2)ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油:20〜50質量%
(A3)フェノール化合物:上記(A1)と(A2)の合計100重量部に対して1〜15重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂との相溶性に優れ、また黄色などの着色のないアルケニル芳香族系樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香族系石油樹脂は、石炭やナフサクラッキングから生じる留分を原料に、主としてカチオン重合で製造されている。このような石油樹脂は非常に安価で、原料に由来する独特の黄色から赤褐色の着色がある。石油樹脂はホットメルト接着剤、インキ、トラフィックペイント、粘着テープなどに使用されている。
中でもホットメルト接着剤は、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)やSBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素化物)などをベースに、石油樹脂のような粘着付与剤を添加して製造される。
また粘着テープも、ベース樹脂に石油樹脂を添加することで製造されている。
このようなホットメルト接着剤や粘着テープに供する石油樹脂は、高度に着色していると、最終製品に着色をもたらす。それゆえ、同用途での意匠性の高い分野への進出が制限されている。
【0003】
一般に、石油樹脂を無色化するという目的だけにこだわれば、石油樹脂を水素化することで目的を達成できることは知られている。しかしながら水素添加石油樹脂を再度加熱した際に、着色が復活してしまう問題もある。
本出願人は先に、特殊な化合物、それを含んだテレビン油を使用することで、エチレン系樹脂、特にEVAとの相溶性に優れることを提案した(特許文献1)。しかしながらこれらの方法で製造した樹脂は、かなり濃く黄色に着色しており、他の樹脂と混合した際にも着色が見られる。
同じく本出願人は、沸点が140〜220℃の範囲にある成分を主とした、ビニルトルエン含有率が10%以上60%未満、インデン含有率が10〜80%である石油系炭化水素類の熱分解により得られる成分と、特定のジエン価のテレビン油、フェノール化合物とを共重合した変性芳香族石油樹脂と、エチレン系共重合樹脂、ワックスとからなるホットメルト組成物およびそれに用いた変性芳香族石油樹脂を提案した(特許文献2)。このようにインデンを含有する成分からなる組成物では、先に述べたような着色の問題が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−69408号公報
【特許文献2】特開平9−316294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らはこのような問題を鋭意検討したところ、特定の化合物を含まないアルケニル芳香族化合物と特定のテレビン油を共重合してなる樹脂が、優れた色調を持ち、エチレン系共重合樹脂と高い相溶性を持つことを見出した。さらに本発明の樹脂からなるホットメルト接着剤は、従来の低温接着性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、下記(A1)、(A2)および(A3)からなる混合物をフリーデルクラフツ型触媒を用いて、−78℃〜50℃において共重合して得られる、重量平均分子量がポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあるアルケニル芳香族系樹脂に関する。
(A1)沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物および/またはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物:50〜80質量%
(A2)ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油:20〜50質量%
(A3)フェノール化合物:上記(A1)と(A2)の合計100重量部に対して1〜15重量部
【0007】
また、本発明は、下記(A)、(B)および(C)からなるホットメルト組成物に関する。
(A)下記(A1)、(A2)および(A3)からなる混合物をフリーデルクラフツ型触媒を用いて、−78℃〜50℃において共重合して得られる、重量平均分子量がポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあるアルケニル芳香族系樹脂:50−150重量部
(A1)沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物および/またはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物:50〜80質量%
(A2)ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油:20〜50質量%
(A3)フェノール化合物:上記(A1)と(A2)の合計100重量部に対して1〜15重量部
(B)エチレン系共重合樹脂:100重量部
(C)ワックス:10〜100重量部
【発明の効果】
【0008】
本発明のアルケニル芳香族系樹脂は優れた色調を持つと共に、エチレン系共重合樹脂、特にEVAと高い相溶性を有しており、さらにかかる本発明のアルケニル芳香族系樹脂を含むホットメルト接着剤は低温接着性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明における(A1)成分は、沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物および/またはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物である。
【0010】
沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物とは、原油、灯軽油、ナフサ、ブタンなどの石油系炭化水素類の熱分解により得られる沸点範囲140〜180℃の留分に含まれる芳香族化合物であり、インデンを実質的に含まないものである。なお、上記の芳香族化合物は、沸点140〜180℃の留分に含まれる限り、化合物としての限定は特にない。
沸点が140℃未満のものにはアルケニル芳香族がほとんど含まれないので、原料として使用することは好ましくない。
またインデンは石油系炭化水素類の熱分解により生成するため熱分解留分に含まれるものであるが、その沸点は181.6℃であることから、沸点範囲が180℃を超えるとインデンが含まれるので好ましくない。
なお、本発明において、インデンを実質的に含まないとは、留分中のインデンの含有量が0.05質量%以下、好ましくは0.01質量%以下であることをいう。
【0011】
これらの留分を得る方法は特に限定されずいかなる方法も採用することができるが、具体的には蒸留による分離が好適である。目的の留分を得るためには条件に格別の限定はないが、圧力は50Pa〜常圧、ボトム温度は常温〜250℃が好ましい。さらに蒸留の精度を上げるため、リフラックスを行うことも好ましく用いられる。リフラックスはリフラックス弁を開閉することで、「留分を抜き出す」、「留分を蒸留系に戻す」の作用をするが、その比はリフラックス比(=開時間/閉時間)と定義することができる。リフラックス比は、通常0.01〜100が採用される。
【0012】
また、(A1)成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物を使用することができる。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエンなどを単独で、あるいは混合物として、またはこれらと上記のインデンを含まないアルケニル芳香族化合物との混合物として使用することができる。
【0013】
本発明における(A2)成分は、ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油である。
テレビン油は、針葉樹に含まれる樹液の揮発成分から製造されるものであり、工業的には主としてガムテレビン、水蒸気ウッドテレビン、サルフェートウッドテレビン、および乾留ウッドテレビンの4種から製造されるものに分類される。このうちガムテレビンは、松の生木の傷口や傷跡から採取した、生松ヤニを蒸留することにより得られる。水蒸気ウッドテレビンまたはウッドテレビンは、樹皮と辺材が腐敗して脱落した未採取の松の切り株の抽出物を蒸留することで得られる。またサルフェートウッドテレビンまたはサルフェートテレビンは、製紙用クラフト(サルフェート)パルプ化プロセスの加熱工程で発生する蒸気を濃縮することで得られる。乾留ウッドテレビンは、樹脂分の多い樹木や伐採木などの針葉樹廃材を乾留(炭化)させて得られる、軽質蒸留物から製造される。通常使用されるものはさらに蒸留されたものであって、天然物由来であるためもあり、その成分の詳細は不明であるが、本発明においては、ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にある限り、いずれのものも用いることができる。
【0014】
具体的に本発明で使用するジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油は、粗サルフェートテレビンの留分を減圧蒸留により、精製分離した常圧換算の沸点が150〜200℃、好ましくは165〜185℃の範囲にある留分、粗サルフェートテレビンの異性化物、α−ピネン、β−ピネンなどの異性化物、またはこれらの混合物などが例示される。ジエン価が低いもの、または一定のジエン化を有するものであっても、これらを適宜異性化することにより、ジエン化を規定の範囲にすることにより、これらを用いることができる。
【0015】
この異性化は常法により加熱して異性化する熱異性化により行うことができるが、実際の反応は異性化のほか、熱分解や熱転移などの反応も伴う複雑な反応である。例えば熱異性化は粗サルフェートテレビン、α−ピネンなどを、ステンレスチューブ反応器を用いて、大気圧の気相中で、例えば315〜325℃で加熱異性化し、ジエン化を向上させることができる。その後は必要に応じて、適宜減圧蒸留することで、目的とする異性化物が得られる。
【0016】
本発明における(A3)成分は、フェノール化合物である。フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、カテコール、ハイドロキノン、酸化防止剤であるBTHやTBCなどが用いられる。この中でもフェノールが好ましい。
【0017】
本発明において、(A1)成分と(A2)成分の配合割合は、(A1)成分が50〜80質量%、好ましくは60〜70質量%であり、(A2)成分が20〜50質量%、好ましくは30〜40質量%である。(A2)成分が20質量%を下回ると、EVA相溶性が悪化するので好ましくない。また(A2)成分が50質量%を超えると、樹脂の軟化点が低下するため好ましくない。
また、(A3)成分の配合割合は、(A1)成分と(A2)成分の合計100重量部に対して1〜15重量部であり、好ましくは2〜15重量部、より好ましくは3〜10重量部である。(A3)成分を加えることで、特にEVAとの相溶性を向上させことができる。
また、後記するホットメルト組成物を作る場合には、フェノール化合物の添加量が1重量部未満では、ホットメルトの接着機能が十分でなく、またフェノール化合物の添加量が15重量部を超えるとフェノール化合物による重合反応阻害が顕著になるので好ましくない。
【0018】
本発明においては、前記した(A1)、(A2)および(A3)からなる混合物をフリーデルクラフツ型触媒を用いて、−78℃〜50℃において共重合を行い、重量平均分子量がポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあるアルケニル芳香族系樹脂を得る。
フリーデルクラフツ型の触媒としては、具体的には塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素メタノール錯体、三フッ化ホウ素エタノール錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体などが好適に使用できる。なお触媒の添加量は、(A1)成分および(A2)成分の合計量100重量部に対して、0.05〜5.0重量部加えることが好ましい。
【0019】
重合反応温度は−78℃〜50℃、好ましくは−50℃〜20℃で行う。−78℃よりも低い温度は制御することが難しく、また多大なエネルギーを消費するため好ましくない。また反応温度を50℃より高くすると、連鎖移動反応が頻発して分子量を上げることが困難になるため好ましくない。
【0020】
重合反応時には溶媒を使用することができる。溶媒としては、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系などの炭化水素系溶剤を使用することが好ましい。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、テトラリン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが好適に使用される。また極性を有する、特に不対電子を有する元素を含有する溶媒は、ルイス酸系触媒と強い相互作用があり、触媒機能を阻害するため好ましくない。
【0021】
得られる共重合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあることが肝要である。分子量が500を下回ると軟化点が低くなるため好ましくない。また、分子量が1650を超えるとEVAとの相溶性が悪化するので好ましくない。
【0022】
このようにして得られた本発明のアルケニル芳香族系樹脂は、色調に優れ、エチレン系共重合樹脂、特にEVAとの相溶性に優れる。
また、本発明のアルケニル芳香族系樹脂はスチレン系樹脂との相溶性にも優れている。スチレン系樹脂としては、SBS(スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体)などが挙げられる。
【0023】
また、本発明は、前記で得られた(A)アルケニル芳香族系樹脂に、(B)エチレン系共重合樹脂および(C)ワックスをそれぞれ所定量配合してなるホットメルト組成物である。
【0024】
本発明のホットメルト組成物において(B)成分としてエチレン系共重合樹脂が用いられる。エチレン系共重合樹脂としては、特にEVAが好適に使用される。EVAの酢酸ビニル含有量、MFRなどについては特に限定はないが、強いて言えば極性単量体成分含有量は1〜60重量%、好ましくは15〜45重量%であるものが適当である。MFR(190℃、2.16kg荷重、10分)も強いて言えば10〜1000g/10分が適当である。
【0025】
本発明において(C)成分として使用するワックスとは、パラフィンワックス、マイクロクリスタルワックスなどの石油系ワックス、天然ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレンワックス、サゾールワックスなどがその目的に応じ、適宜利用できる。
【0026】
本発明のホットメルト組成物において、(A)アルケニル芳香族系樹脂の配合割合は、(B)エチレン系共重合樹脂100重量部あたり、50〜150重量部であり、好ましくは80〜120重量部である。アルケニル芳香族系樹脂の添加量が50重量部未満では、粘着性が低くなるため好ましくない。またアルケニル芳香族系樹脂の添加量が150重量部を超えると、接着剤が軟化しすぎるなどの不都合を生じる。
また、(C)ワックスの配合割合は(B)エチレン系共重合樹脂100重量部あたり、10〜100重量部であり、好ましくは20〜80重量部である。ワックスの添加量が10重量部未満では、ホットメルトを高温で溶解する必要があるため好ましくない。またワックスの添加量が100重量部を超えると、溶融時の粘度が低くなりすぎるため、液垂れなどの不都合を生じる。
【0027】
かかる本発明のホットメルト組成物からなるホットメルト接着剤は、優れた色調を持ち、かつ低温接着性に優れている。
【実施例】
【0028】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
なお、実施例、比較例における試験方法は以下のとおりである。
【0029】
(1)ジエン価の測定
テレビン油脂量5gに所定量の無水マレイン酸のトルエン溶液を加え、加熱還流して反応させる。反応後は、所定量の水で抽出し、フェノールフタレインを指示薬として、1Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。別にブランク試験も行い、その数値を控除して真のテレビン油試料のジエン価を求める。
【0030】
(2)分子量、分子量分布
GPCにより、重合体の分子量・分子量分布を測定する。カラムおよび分析条件は、下記のとおりである。
カラム:TSK−Gel G−4000+2000Hs
分析条件:温度 38℃
圧力 5.9MPa
流速 1.0mL/min
溶媒 テトラヒドロフラン
【0031】
(3)色相
JIS K 5600に準拠して、ガードナーナンバーを測定する。
【0032】
(4)耐熱色相
試料10gを入れた内径18mm、長さ180mmの試験管を、180℃に加熱したアルミブロックヒーターに仕込み、72時間後の色相をガードナー法により測定した。
【0033】
(5)エチレン系共重合樹脂との相溶試験
EVA(エバフレックス#210、酢酸ビニル含有量28%、MFR=400)0.5gを、200℃に制御したホットプレートに乗せたガラス板の上で溶融させる。ここに樹脂0.5gを加え、ガラス棒で十分に混合する。ホットプレートからガラス板をはずし、ヘラを使用して溶融混合樹脂をガラス板上に手早く塗布する。室温で10分放置し、透明・白濁を目視で評価し、透明は相溶性良好で、白濁は相溶しないと判断した。
【0034】
(6)スチレン系樹脂との相溶試験
SEBS(クレイトンG1657)0.5gを、250℃に制御したホットプレートに乗せたガラス板の上で溶融させる。ここに樹脂0.5gを加え、ガラス棒で十分に混合する。ホットプレートからガラス板をはずし、ヘラを使用して溶融混合樹脂をガラス板上に手早く塗布する。室温で10分放置し、透明・白濁を目視で評価し、透明は相溶性良好で、白濁は相溶しないと判断した。
【0035】
(7)熱安定性試験
所定配合で得られたホットメルト接着剤50gを100mlのビーカーに入れ、180℃、72時間加熱後、冷却固化した状態で、目視により皮張りおよび炭化物の生成状態を次に示す判断基準で判定する。ここで皮張りとは、加熱処理によりホットメルト接着剤に発生するゲルであり、また炭化物余波、ビーカー下部のホットメルト接着剤に発生する黒色物である。いずれの発生もホットメルト接着剤の吐出ノズルの詰まりを誘発する。
皮張り:◎なし、○わずかにあり、×多い
炭化物:◎なし、○わずかにあり、×多い
【0036】
(8)低温接着性
幅50mm、長さ100mmのKライナーのダンボールBフルート(220g/m)を試験片とし、所定配合で得られたホットメルト接着剤を試験片の表面に、フルートに対して並行(幅方向)に塗布し、前記耐熱接着性の条件で試験片材料の裏面でフルートがクロスするように張り合わせる。この試験片を、所定の低温度下において接着試験片の接合部をL字型剥離形式で破壊させたときの該剥離面の破壊状態を次の判定条件により判定する。
評価:◎材料破壊、○大部分材料破壊、△大部分界面破壊、×界面破壊
【0037】
[実施例1]
石油類の熱分解により得られた140〜180℃の沸点範囲を有する次の留分を留分aとした。
α−メチルスチレン 6.4%
シスβ−メチルスチレン 4.4%
ビニルトルエン 53.1%
インデン 0.0%
(重合可能成分 63.9%)
【0038】
留分aを800g、市販のテレビン油(ジエン価32cg/g)を200g、混合キシレンを1000g混合した。このキシレン溶液の合計2000gに、フェノール19gをさらに加えた。
あらかじめ窒素置換した180mL連続重合装置を、5℃に温度制御したバスに浸漬した。先に調製した原料液を液送ポンプにて使用して、180mL/hの速度で、温度制御している連続重合装置に導入した。あらかじめトルエンで希釈した三フッ化ホウ素フェノール錯体(0.238mol/L)を、連続重合反応装置に4.2mL/hで導入した。
なおオーバーフローする反応溶液は、同じ温度に制御した300mLの三口フラスコに導入した。
反応開始から3〜4時間後の反応液を取り出し(180mL)、5gの消石灰で中和した。中和された反応液をろ過し、単蒸留装置に導入して、オイルバス温度150℃でキシレンを留去した。そのまま真空ポンプを接続して、系内の圧力を300Paに制御して、オイルバスを250℃に昇温して、軽質分を留去した。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は800で、Mw/Mn=2.5であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとの相溶性は良好であった。
得られた樹脂を40重量部、EVA樹脂(エバフレックス#210)40重量部、パラフィンワックス(融点77℃)20重量部を180℃で溶融混合してホットメルト組成物を調製し、熱安定性、低温接着性を試験した。
熱安定性:皮張り(◎)、炭化物(◎)
低温接着性:10℃(◎)、5℃(◎)、0℃(◎)
【0039】
[比較例1]
石油類の熱分解により得られた140〜220℃の沸点範囲を有する次の留分を留分bとした。
α−メチルスチレン 3.5%
シスβ−メチルスチレン 2.4%
ビニルトルエン 28.7%
インデン 12.6%
(重合可能成分 58.9%)
【0040】
留分bを留分aの代わりに用いること以外は、実施例1と同様に行った。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は750で、Mw/Mn=2.3であった。ガードナーナンバーは7であった。
ここで得られた樹脂を40重量部、EVA樹脂(エバフレックス#210)40重量部、パラフィンワックス(融点77℃)20重量部を180℃で溶融混合してホットメルト組成物を調製し、熱安定性、低温接着性を試験した。
熱安定性:皮張り(○)、炭化物(◎)
低温接着性:10℃(◎)、5℃(◎)、0℃(◎)
【0041】
また先の樹脂5g(重量平均分子量750、Mw/Mn=2.3)をシクロヘキサン100gに溶解して、200mLオートクレーブに導入した。珪藻土に担持したニッケル触媒2gを加え、水素圧力7MPa、200℃で3時間水素添加を行った。得られた水素添加溶液をろ過し、3Lのメタノールに徐々に加えて、再沈殿を行った。得られた樹脂を常温で減圧乾燥してガードナーナンバーを測定したところ<1であった。
この水素化樹脂を耐熱色相試験したところ、ガードナーナンバーは6となった。
【0042】
[実施例2]
混合キシレン500g、市販のテレビン油(ジエン価45cg/g)60g、α−メチルスチレン440g、フェノール7.5gを混合した。
あらかじめ窒素置換した180mL連続重合装置を、5℃に温度制御したバスに浸漬した。先に調製した原料液を液送ポンプにて使用して、180mL/hの速度で、温度制御している連続重合装置に導入した。あらかじめトルエンで希釈した三フッ化ホウ素フェノール錯体(0.238mol/L)を、連続重合反応装置に4.2mL/hで導入した。
なおオーバーフローする反応溶液は、同じ温度に制御した300mLの三口フラスコに導入した。
反応開始から3〜4時間後の反応液を取り出し(180mL)、5gの消石灰で中和した。中和された反応液をろ過し、単蒸留装置に導入して、オイルバス温度150℃でキシレンを留去した。そのまま真空ポンプを接続して、系内の圧力を300Paに制御して、オイルバスを250℃に昇温して、軽質分を留去した。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は1300で、Mw/Mn=2.2であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとの相溶性は良好だった。
得られた樹脂を40重量部、EVA樹脂(エバフレックス#210)40重量部、パラフィンワックス(融点77℃)20重量部を180℃で溶融混合してホットメルト組成物を調製し、熱安定性、低温接着性を試験した。
熱安定性:皮張り(◎)、炭化物(◎)
低温接着性:10℃(◎)、5℃(◎)、0℃(◎)
【0043】
[比較例2]
反応温度を0℃とする以外は、実施例2と同様に行った。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は1700で、Mw/Mn=2.5であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとは相溶しなかった。
【0044】
[実施例3]
混合キシレン500g、市販のテレビン油(ジエン価45cg/g)60g、α−メチルスチレン440gを混合した。ここにさらにフェノールを6.7g加えた。
あらかじめ窒素置換した180mL連続重合装置を、0℃に温度制御したバスに浸漬した。先に調製した原料液を液送ポンプにて使用して、180mL/hの速度で、温度制御している連続重合装置に導入した。あらかじめトルエンで希釈した三フッ化ホウ素フェノール錯体(0.238mol/L)を、連続重合反応装置に1.4mL/hで導入した。
なおオーバーフローする反応溶液は、同じ温度に制御した300mLの三口フラスコに導入した。
反応開始から3〜4時間後の反応液を取り出し(180mL)、5gの消石灰で中和した。中和された反応液をろ過し、単蒸留装置に導入して、オイルバス温度150℃でキシレンを留去した。そのまま真空ポンプを接続して、系内の圧力を300Paに制御して、オイルバスを250℃に昇温して、軽質分を留去した。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は1500で、Mw/Mn=1.8であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとの相溶性は良好だった。
【0045】
[実施例4]
混合キシレン500g、市販のテレビン油(ジエン価45cg/g)100g、スチレン400gを混合した。ここにさらにフェノールを6.7g加えた。
あらかじめ窒素置換した180mL連続重合装置を、−20℃に温度制御したバスに浸漬した。先に調製した原料液を液送ポンプにて使用して、180mL/hの速度で、温度制御している連続重合装置に導入した。あらかじめトルエンで希釈した三フッ化ホウ素フェノール錯体(0.238mol/L)を、連続重合反応装置に6.8mL/hで導入した。
なおオーバーフローする反応溶液は、同じ温度に制御した300mLの三口フラスコに導入した。
反応開始から3〜4時間後の反応液を取り出し(180mL)、5gの消石灰で中和した。中和された反応液をろ過し、単蒸留装置に導入して、オイルバス温度150℃でキシレンを留去した。そのまま真空ポンプを接続して、系内の圧力を300Paに制御して、オイルバスを250℃に昇温して、軽質分を留去した。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は1600で、Mw/Mn=1.7であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとの相溶性は良好だった。
【0046】
[実施例5]
ビニルトルエンをスチレンの代わりに使用する以外は、実施例4と同様に行った。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は1400で、Mw/Mn=1.7であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとの相溶性は良好だった。
【0047】
[実施例6]
4−イソプロペニルトルエンをα−メチルスチレンの代わりに使用する以外は、実施例3と同様に行った。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は1400で、Mw/Mn=1.7であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVAとの相溶性は良好だった。
【0048】
[実施例7]
混合キシレン375g、市販のテレビン油(ジエン価45cg/g)52.5g、α−メチルスチレン322.5gを混合した。ここにさらにフェノールを7.1g加えた。
あらかじめ窒素置換した180mL連続重合装置を、0℃に温度制御したバスに浸漬した。先に調製した原料液を液送ポンプにて使用して、180mL/hの速度で、温度制御している連続重合装置に導入した。あらかじめトルエンで希釈した三フッ化ホウ素フェノール錯体(0.238mol/L)を、連続重合反応装置に4.2mL/hで導入した。
なおオーバーフローする反応溶液は、同じ温度に制御した300mLの三口フラスコに導入した。
反応開始から3〜4時間後の反応液を取り出し(180mL)、5gの消石灰で中和した。中和された反応液をろ過し、単蒸留装置に導入して、オイルバス温度150℃でキシレンを留去した。そのまま真空ポンプを接続して、系内の圧力を300Paに制御して、オイルバスを250℃に昇温して、軽質分を留去した。
フラスコに残留した樹脂の重量平均分子量は700で、Mw/Mn=1.7であった。ガードナーナンバーは<1であり、耐熱色相も<1であった。EVA、SEBSとの相溶性は良好だった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のアルケニル芳香族系樹脂は、ポリエチレン系樹脂との相溶性に優れ、また黄色などの着色のなく、ホットメルト接着剤として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1)、(A2)および(A3)からなる混合物をフリーデルクラフツ型触媒を用いて、−78℃〜50℃において共重合して得られる、重量平均分子量がポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあるアルケニル芳香族系樹脂。
(A1)沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物および/またはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物:50〜80質量%
(A2)ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油:20〜50質量%
(A3)フェノール化合物:上記(A1)と(A2)の合計100重量部に対して1〜15重量部
【請求項2】
下記(A)、(B)および(C)からなるホットメルト組成物。
(A)下記(A1)、(A2)および(A3)からなる混合物をフリーデルクラフツ型触媒を用いて、−78℃〜50℃において共重合して得られる、重量平均分子量がポリスチレン換算で500〜1650の範囲にあるアルケニル芳香族系樹脂:50−150重量部
(A1)沸点140〜180℃の範囲にあるインデンを含まないアルケニル芳香族化合物および/またはスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびイソプロペニルトルエンから選ばれる1種または2種以上の芳香族化合物:50〜80質量%
(A2)ジエン価が15〜60(cg/g)の範囲にあるテレビン油:20〜50質量%
(A3)フェノール化合物:上記(A1)と(A2)の合計100重量部に対して1〜15重量部
(B)エチレン系共重合樹脂:100重量部
(C)ワックス:10〜100重量部

【公開番号】特開2012−229324(P2012−229324A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98040(P2011−98040)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】