説明

アルコールの製造方法

【課題】医薬品、農薬、液晶、高分子等の原料として、毒性が低く高純度のアルコールを簡便な方法で提供する。
【解決手段】下記工程を含む、式(1)で示されるアルコールの製造方法。


(I)R−CH(XR)COORで示されるカルボン酸類を、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物の存在下に還元する工程(II)前記還元反応における反応液中に存在する還元剤のアルミニウムをキレートする工程(III)前記反応液に、2−メトキシエタノールと共沸する溶媒を添加する工程(IV)蒸留により2−メトキシエタノール除去する工程(R、R及びR、は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。Xは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールは、医薬品、農薬、液晶、高分子等の原料として有用な化合物である。
カルボン酸誘導体からアルコールを製造する方法としては、(1)金属ホウ素水素化物とヨウ化アルキルなどから発生させたボランにより還元する方法(特許文献1参照)、(2)ルテニウム触媒存在下、50〜200℃、50〜200kg/cmで水素化反応を行う方法(特許文献2参照)、(3)環状カルボン酸を水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムで還元することにより環状アミノアルコールを製造する方法(特許文献3及び非特許文献1参照)等が知られている。
しかしながら、(1)の方法では、毒性が高く、自然発火性を有するボランが使用されること、(2)の方法は、高温、高圧下で還元反応を実施することから、これらの方法は工業スケールでの大量製造には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−221935号公報
【特許文献2】特表2002−501817号公報
【特許文献3】特開2004−26762号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Indian Journal of Chemistry,12,290−291(1974)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、(3)の方法では、還元に供する基質としてヘテロ原子が環を形成するプロリンを使用するが、当該方法をヘテロ原子が環を形成しない基質に応用した場合、非常に低い純度のアルコールしか得られなかった。
そこで、本発明は、高純度のアルコール(特に、ヘテロ原子が環を形成していないアルコール)を簡便な方法で得ることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の溶媒を用いて蒸留することにより、カルボン酸を還元することにより得られたアルコールから2‐メトキシエタノールを高度に除去できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0007】
下記工程を含む、一般式(1)
【0008】
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。Xは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。)
で示されるアルコールの製造方法。
(I)下記一般式(2)
【0009】
【化2】

(式中、R、R及びXは前記と同じ。Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。)
で示されるカルボン酸類を、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物の存在下に還元する工程
(II)前記還元反応における反応液中に存在する還元剤のアルミニウムをキレートする工程
(III)前記反応液に、2−メトキシエタノールと共沸する溶媒を添加する工程
(IV)蒸留により2−メトキシエタノール除去する工程
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な方法で高純度のアルコールを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(イ)還元反応
(1)アルコール
本発明で製造されるアルコールは、下記一般式(1)
【0012】
【化3】

で示されるアルコールである。
式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。Xは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。
【0013】
本明細書において、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定はされないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヒドロキシメチル基等が挙げられる。
【0014】
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアリール基としては、特に限定はされないが、例えば、フェニル基、2−クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、エチルベンジル基、メチルフェネチル基、ジメチルフェネチル基、ジエチルベンジル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアラルキル基としては、特に限定はされないが、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられる。
本発明で精製に供される好ましいアルコールとしては、例えば、Xが窒素の場合は、アラニノール、バリノール、ロイシノール、イソロイシノール、tert−ロイシノール、セリノール、トレオニノール、システイノール、メチオニノール、アスパラギノール、グルタミノール、プロリノール、ヒドロキシプロリノール、フェニルアラニノール、フェニルグリシノール、チロシノール、トリプトファノール、アスパルチジオール、グルタミジオール、2−アミノブタノール等のアミノアルコール誘導体が挙げられる。
Xが酸素の場合は、1,2−プロパンジオール、1−フェニル−1,2−エタンジオール、1−(2−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−クロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−メチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−メチルフェニル)1,2−エタンジオール、1−(4−メチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−ヒドロキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−ヒドロキシフェニル)− −1,2−エタンジオール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−メトキシフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−アミノフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−アミノフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−アミノフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2−ニトロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3−ニトロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(4−ニトロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2,4−ジクロロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,2−エタンジオール、1−(3,4−メチレンジオキシフェニル)−1,2−エタンジオール等の1,2−ジオール誘導体が挙げられる。
これらの化合物の中でも、高い化学純度及び高い光学純度が得られる点で、tert−ロイシノールが好ましい。
このようなアルコールは、以下に示すように、対応するカルボン酸を還元することにより得られる。
(2)カルボン酸類
本発明においてアルコールを得るための原料(出発物質)として使用されるのは、下記一般式(2)
【0015】
【化4】

で示されるカルボン酸類である。
式中、R、R及びXは、前記の通りである。Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。Rは、R又はRと同様の基を例示することができる。
ここでは、カルボン酸類とは、カルボン酸だけでなくカルボン酸エステルも含む。
より詳細には、Xが窒素原子の場合、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、tert−ロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン等のカルボン酸又はカルボン酸誘導体が挙げられる。
Xが酸素原子の場合は、乳酸、マンデル酸、2−クロロマンデル酸、3−クロロマンデル酸、4−クロロマンデル酸、2−メチルマンデル酸、3−メチルマンデル酸、4−メチルマンデル酸、2−ヒドロキシマンデル酸、3−ヒドロキシマンデル酸、4−ヒドロキシマンデル酸、2−メトキシマンデル酸、3−メトキシマンデル酸、4−メトキシマンデル酸、2−トリフルオロメチルマンデル酸、3−トリフルオロメチルマンデル酸、4−トリフルオロメチルマンデル酸、2−アミノマンデル酸、3−アミノマンデル酸、4−アミノマンデル酸、2−ニトロマンデル酸、3−ニトロマンデル酸、4−ニトロマンデル酸、2,4−ジクロロマンデル酸、2,4−ジフルオロマンデル酸、3,4−メチレンジオキシマンデル酸等のヒドロキシ酸およびヒドロキシ酸誘導体が挙げられる。
また、Xが硫黄原子の場合はチオ乳酸などが挙げられる。
本発明で使用されるカルボン酸は、光学活性を有していても良い。例えば、ラセミ体であってもよいし、D体又はL体のどちらかが多く含まれている混合物であってもよいし、純粋にD体又はL体であってもよい。
本発明では、光学活性を有するアルコールを製造する場合には、その光学活性を有するカルボン酸を使用することにより、当該光学活性を保持したまま、所望の光学活性を有するアルコールを得ることができる。
(3)還元剤
本発明で使用する還元剤は、当該還元剤が分解された際に、2−メトキシエタノールが生じる化合物を好適に使用することができる。このような化合物としては、反応性などの観点から水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物が好ましい。その中でも、特に、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムカリウム、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムリチウムが好ましい。
還元反応における水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムの使用量は、効率良くカルボン酸のカルボキシル基やエステル基等が水酸基に還元されれば限定さない。例えば、カルボン酸に対して、1〜5当量が好ましく、2〜4当量であることがより好ましい。1当量以上使用するのは、還元反応を効率良く進めることができるからである。また、5当量以下とするのは、反応後に未反応の還元剤が残存し、後処理において時間を要するという問題を防ぐことができるからである。
(4)還元反応
還元反応に使用する溶媒は、触媒として使用する水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物に対して不活性な化合物である。例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングルコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒を使用することができる。
本発明における還元反応時の反応温度も特には限定されない。例えば、−20〜80℃、好ましくは0〜60℃である。−20℃以上で反応を行うことにより、十分な反応速度を得ることができる。また、80℃以下で反応を行うことにより、不純物の増加を防ぐことができる。
還元反応により生成物(アルコール)が得られたことや原料(カルボン酸)が消失したことは、公知の方法、例えば、液体クロマトグラフィー等によって確認することができる。
(ロ)アルミニウムのキレート
還元反応が終了した後、生成物(アルコール)を精製する。本発明では、まず、還元剤として使用した水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物に含まれるアルミニウムをキレートした後に、アルコールを抽出・精製する。
触媒として使用した水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物をキレートするために使用する化合物としては、ジカルボン酸を挙げることができる。ジカルボン酸とは、ジカルボン酸及びその塩を含む。
より詳細には、酒石酸、メソ酒石酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは、酒石酸、メソ酒石酸等であり、酒石酸がより好ましい。酒石酸はD体でもL体でもラセミ体でもどちらでもよい。
ジカルボン酸の塩としては、アルカリ金属が挙げられ、この中でもリチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。ジカルボン酸が当該塩を2つ含む場合、その2つの塩は同じであってもよいし異なっていてもよい。ジカルボン酸塩のうち、例えば、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられ、酒石酸ナトリウムカリウムがより好ましい。
ジカルボン酸を還元反応の反応液に添加する場合、固体のままで添加してもよいし、水溶液として添加することもできる。操作のし易さ、安全面から水溶液として使用するのが好ましい。その場合のジカルボン酸水溶液中のジカルボン酸の濃度は限定されないが、例えば、10〜50質量%とすればよい、20〜40質量%がより好ましい。
アルミニウムをキレートするために使用するジカルボン酸の使用量は、還元剤由来のアルミニウムを十分にキレートできる量であれば限定されない。例えば、還元剤に対して0.1〜3モル当量が好ましく、0.5〜2モル当量であることがよりに好ましい。
0.1モル当量以上使用することにより、アルミニウムのキレートが不十分であるためにアルミニウムが溶解したジカルボン酸の水溶液の粘性が高くなり、以降の操作で生成物であるアルコールの抽出が困難となるという問題を避けることができる。また、3モル当量以下使用することにより、抽出溶媒の使用量が増加することにより抽出の効率が悪くなるという問題を回避することができる。
キレートを行う際の温度は、0〜80℃が好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。0℃以上で行うことにより、還元剤由来のアルミニウムとジカルボン酸との錯体形成を効率良く行うことができ、アルコールの回収率を低減させるという問題を避けることができる。また、80℃以下で行うことにより、アルコールのジカルボン酸の水溶液への溶解が大きくなり、その結果、生成物であるアルコールの収率を低減させるという問題を避けることができる。反応時間は特に限定されないが、例えば、0.5〜3時間、好ましくは1〜2時間とすればよい。
上記のようにしてジカルボン酸の水溶液で処理した反応液は、有機相を分離することでアルコールを回収することができる。しかしながら、使用するジカルボン酸の種類によっては、水に対する溶解度が高く、有機相への回収率が低下する場合がある。そのような場合には、水相からの再抽出を行えばよい。
再抽出に用いる溶媒としては、該水溶液と混合しない溶媒であれば特に限定するものではないが、例えばn−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチレングルコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。
(ハ)2−メトキシエタノールの除去(アルコールの精製)
次に、上記で得られた有機相から、生成物であるアルコールを回収すればよい。本発明の方法で得られた有機相には、還元剤由来の2−メトキシエタノールが含まれている。生成物であるアルコールとこの2−メトキシエタノールとが高い親和性を有するために、通常の濃縮工程では2−メトキシエタノールを優先的には除去することができない。そこで、2−メトキシエタノールを除去するという操作が必要となる。
なお、必要に応じて、2−メトキシエタノールを除去する前に、上記有機相を濃縮してもよい。濃縮操作により溶媒の量を減らして、後の工程の操作効率が良くすることができるからである。有機相を濃縮する際の温度は、0〜50℃が好ましく、10〜40℃であることがより好ましい。圧力に関しては限定されず、常圧でも減圧下でもよい。
2−メトキシエタノールを除去する方法は、上記有機相に2−メトキシエタノールと共沸する溶媒を添加して蒸留を行うことにより、有機相から当該溶媒と共に2−メトキシエタノールを除去することができる。
上記2−メトキシエタノールと共沸する溶媒としては、カルボン酸の還元反応において使用する溶媒とは異なる溶媒であって、2−メトキシエタノールと共沸するものであれば特に限定されるものではない。例えば、水、トルエン、ヘプタン、オクタン、o−キシレン、m−キシレン、2−ペンタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、水、トルエン、ヘプタンが好ましい。
当該溶媒の使用量は特には限定されないが、例えば、2−メトキシエタノールに対して1〜10倍量が好ましく、2〜8倍量であることがより好ましい。1倍量以上の溶媒を使用することにより、2−メトキシエタノールを十分に除去でき高純度のアルコールが得られる。一方、10倍量以下とすることにより、濃縮に要する時間を短縮するという利点がある。
メトキシエタノールを除去する(蒸留を行う)際の条件については限定されないが、例えば、以下の表に示すような条件を採用することができる。蒸留時間も限定されず、適宜選択することができる。例えば、2−メトキシエタノール含量が反応液中1質量%以下、好ましくは0.5質量%となった時点で反応を停止すればよい。
メトキシエタノールが十分に除去できたことは、公知の方法、例えば、液体クロマトグラフィー等によって確認することができる。
【0016】
【表1】

このようにして2−メトキシエタノールを留去された反応液から、目的とするアルコールを蒸留によって得ることもできる。蒸留の条件も限定されず、適宜選択することができる。
【実施例】
【0017】
L−tere−ロイシンの転化率は高速液体クロマトグラフィーを、L−tert−ロイシノールの化学純度分析にはガスクロマトグラフィーを、L−tert−ロイシノールの光学純度測定には旋光度計を用いて測定を実施した。
〔カルボン酸誘導体の濃度分析〕
L−tere−ロイシンの高速液体クロマトグラフィーによる純度分析
試料調製方法 :試料125mgを溶離液25mLに溶解
装置 :カラムオーブン日本分光社製 865−CO
UV 日本分光社製 870−UV
ポンプ 日本分光社製 880−PU
インテグレーター島津製作所社製 C−R3A
カラム :ODS−3V(GLサイエンス社製)
キャリヤー :0.1%リン酸水溶液
カラム温度 :40℃
流速 :1mL/min
波長 :210nm。
〔アルコールのガスクロマトグラフィーによる純度分析〕
ガスクロマトグラフィー:GC−17A(島津製作所)
カラム:DB−5(J&W Scientific、0.32mmI.D.×30m)
キャリアー:ヘリウム(1.8ml/min/50℃)
カラム温度:50℃→250℃(10℃/min)
インジェクター:スプリット 50:1(250℃)
検出器:FID(250℃)。
〔アルコールの光学純度測定〕
試料調整:100mlメスフラスコにアルコール1.5gを秤量し、メスアップする。
セル長:100mm
旋光度計:HORIBA SEPA−300。
<実施例1>
攪拌機および温度計を付した2000ml三口フラスコに、70%水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム500.0g(1.73mol)とテトラヒドロフラン625mlを入れ、L−tert−ロイシン75.7g(0.58mol)を15〜20℃で1時間かけて添加し、その後、45〜50℃で2時間攪拌した。L−tert−ロイシンが実質的に消失したことを高速液体クロマトグラフィーで確認し、反応液を30℃まで冷却した。
この反応液を28重量%酒石酸ナトリウムカリウム水溶液454.0g中へ35〜40℃で1時間かけて滴下し、その後、50℃で1時間攪拌した。
反応液を35〜40℃で1時間静置した後、水相と有機相に分離した。回収した有機相を130hPa、25℃で減圧濃縮し、粗L−tert−ロイシノール160.5g(純度36.8%、収率86.9%)を得た。
この粗L−tert−ロイシノールに純水150.0gを添加し、130hPa、50℃で減圧濃縮を行ない、2−メトキシエタノールの含有量を低減し、L−tert−ロイシノールの純度を92.6%まで向上させた。
さらに、この粗体を4kPa、130℃で蒸留することで、L−tert−ロイシノール44.9gを取得した(化学純度99.0%、光学純度99.5%ee以上、収率76.0%)。
<比較例1>
実施例1と同様の方法で還元反応、酒石酸ナトリウムカリウム溶液での処理、および濃縮により回収した粗L−tert−ロイシノール64.2g(純度36.8%)を4kPa、130℃で蒸留を行ない、L−tert−ロイシノール(37.8g、純度50.0%)を得た(2−メトキシエタノールの共沸する溶媒を用いて蒸留する以外は、実施例1と同様に実験を行った)。
この結果より、2−メトキシエタノールの共沸する溶媒を用いて蒸留しない場合には、非常に低い純度のアルコールしか得られないことが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含む、一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。Xは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を示す。)
で示されるアルコールの製造方法。
(I)下記一般式(2)
【化2】

(式中、R、R及びXは前記と同じ。Rは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。)
で示されるカルボン酸類を、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム化合物の存在下に還元する工程
(II)前記還元反応における反応液中に存在する還元剤のアルミニウムをキレートする工程
(III)前記反応液に、2−メトキシエタノールと共沸する溶媒を添加する工程
(IV)蒸留により2−メトキシエタノール除去する工程
【請求項2】
2−メトキシエタノールと共沸する溶媒が、水、トルエン、ヘプタン、オクタン、o−キシレン、m−キシレン、2−ペンタノール、酢酸エチル及び酢酸ブチルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1記載の方法。



【公開番号】特開2011−116677(P2011−116677A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273578(P2009−273578)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】