説明

アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法およびその装置

【課題】風味や色調を損なわず、塩類を多く含むアルコール含有液11であっても、アルコール含有液11中のアルデヒド化合物を除去する方法とその装置を目的とする。
【解決手段】本発明は、アルコール含有液11を1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂とに接触させることよりなる。前記アルコール含有液は、pH8〜12を調整した後に、1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法、および、その装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール含有液、例えば、酒類の主成分はアルコールと水であるが、その他の成分としてワインや日本酒などの醸造酒では原料由来の糖分、アミノ酸、仕込み水由来のミネラル、発酵生成物のエステル類、有機酸、アルデヒド類等が含まれる。焼酎やウィスキーなどの蒸留酒では発酵生成物のうち揮発性物質であるエステル類、アルデヒド化合物、有機酸および飛沫混入による少量のミネラル等の不揮発成分が含まれる。中でも、アルデヒド化合物が含まれていると、酒類の保管中等において、不快な香りや着色の原因となる。特にアセトアルデヒドは人体に有害であることが知られており、酒類中から除去することが望ましい。従来、酒類中のアルデヒド化合物の除去は、醸造、あるいは、蒸留後の酒類を数日間にわたって開放系で放置し揮発させる方法が、一般的に行われている。
【0003】
また、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法として、亜硫酸水素形強塩基性アニオン交換樹脂を用いた方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。この技術では、亜硫酸水素形強塩基性アニオン交換樹脂を用いてアルデヒド化合物を吸着除去し、後段にH形強酸性カチオン交換樹脂と塩基性アニオン交換樹脂との混合樹脂を用いて脱塩、脱酸を行う。この方法では塩類や有機酸類をすべて除いてしまう。このため、これらをほとんど含まない蒸留酒には適用できるが、塩類やアミノ酸、有機酸を多く含む醸造酒に適用した場合には、風味が著しく損失されるという問題がった。
【0004】
一方で、置換芳香族系、または、アクリル系の合成吸着剤を用いて、酒類からアルデヒド化合物を除去する技術が示されている(例えば、特許文献3)。しかし、除去されるアルデヒド化合物は、フェニルアセトアルデヒド等の芳香族炭化水素基を有する疎水性の高いアルデヒド化合物であり、例えば酒類に多く含まれるアセトアルデヒド等の疎水性の低いアルデヒド化合物は除去できない。
【0005】
以上のような理由から、例えば、醸造酒のような塩類を多く含むアルコール含有液であっても、風味を損なわずにアルデヒド化合物の除去が可能な、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法が望まれている。
【特許文献1】特公昭36−12194号公報
【特許文献2】特開2005−102554号公報
【特許文献3】国際公開第WO2002/004593号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、風味や色調を損なわず、塩類を多く含むアルコール含有液であっても、アルコール含有液中のアルデヒド化合物を除去する方法を目的とする。
本発明は、風味や色調を損なわず、塩類を多く含むアルコール含有液であっても、アルコール含有液中のアルデヒド化合物を除去する装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、アルコール含有液中のアルデヒド化合物を除去する方法として、1級アミン、および/または、2級アミンを官能基に持つイオン交換樹脂を用いてアルデヒドを吸着除去する方法を見い出した。この技術では、アルデヒド化合物がイオン交換樹脂の1級アミン官能基と脱水縮合してシッフ塩基を形成し、複合体として樹脂層に保持されることで、アルデヒド化合物がアルコール含有液中から除去される。2級アミン官能基も同様の機構でシッフ塩基を形成するため、2級アミン弱塩基性アニオン樹脂のみでも、1級アミン官能基と2級アミン官能基との両方を有する弱塩基性アニオン交換樹脂でもアルデヒド化合物の除去が可能である。
【0008】
しかし、アルコール含有液を遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させるとアルデヒド化合物は除去できるが、他の酸成分が樹脂に吸着し、処理液のpHが高くなる。例えば酒類のpHは、通常、弱酸性から中性の範囲であるが、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させると、弱アルカリ性となる。酒類のpHが高くなることで酒類本来の味と香りが悪化し、飲料として好ましくない。また、pHが高いことで着色反応も促進され、処理した酒類は色戻りしやすくなり外観も損なわれる。さらに、原料由来成分を多く含む醸造酒の場合には、うまみや酸味を有するアミノ酸や有機酸が樹脂に吸着することで味が薄くなってしまう等の欠点がある。
【0009】
さらに検討を進めた結果、アルコール含有液を1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と接触させた後、または、同時に、H形弱酸性カチオン交換樹脂に接触させることにより、アルコール含有液中の余剰なアルカリ成分をH形弱酸性カチオン交換樹脂に吸着させて、pHを弱酸性〜中性の範囲に調整でき、風味の変化を抑えられることを見出した。加えて、アルコール含有液をpH8〜12とした後、1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と接触させると、アニオン交換樹脂への酸成分の吸着が抑えられることを見い出した。
本発明は以上の知見を基になされたものである。
【0010】
即ち、本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法は、アルコール含有液を遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させ、次いで、H形弱酸性カチオン交換樹脂に接触させることを特徴とする。
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法は、アルコール含有液を遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂とを混合したイオン交換樹脂に接触させることを特徴とする。
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法は、アルコール含有液をpH8〜12に調整した後に、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と接触させることが好ましく、塩形のカチオン交換樹脂に接触させてアルコール含有液をpH8〜12に調整しても良く、前記アルコール含有液は酒類であることが好ましい。
【0011】
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置は、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂を充填したアニオン交換塔と、H形弱酸性カチオン交換樹脂を充填したカチオン交換塔とを有し、前記アニオン交換塔に通液されたアルコール含有液が、前記カチオン交換塔に流されるように配置されていることを特徴とする。
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置は、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂を上層とし、H形弱酸性カチオン交換樹脂を下層とした複床塔を有し、前記複床塔にアルコール含有液が下降流で通液されることを特徴とする。
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置は、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂とを混合充填した混床塔を有することを特徴とする。
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置は、塩形のカチオン交換樹脂が充填され、アルコール含有液を予めpH8〜12に調整する前処理カチオン交換塔を有していても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法は、風味や色調を損なわず、塩類を多く含むアルコール含有液であっても、アルデヒド化合物を除去することができる。
本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置は、風味や色調を損なわず、塩類を多く含むアルコール含有液であっても、アルデヒド化合物を除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法、およびその装置について、以下に例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施形態に限られるものではない。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、アルコール含有液を遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させ、次いで、H形弱酸性カチオン交換樹脂に接触させるものである。
【0014】
本発明の第1の実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態のアルデヒド化合物除去装置10の模式図である。図1の通り、アルデヒド化合物除去装置10は、アニオン交換塔12が図示されないアルコール含有液の供給源と接続され、アニオン交換塔12とカチオン交換塔14とが配管により接続され、カチオン交換塔14が図示されない次工程と接続されている。
【0015】
アニオン交換塔12には、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂が単床形態で充填されている。カチオン交換塔14には、H形弱酸性カチオン交換樹脂が単床形態で充填されている。
【0016】
1級アミン化合物および2級アミン化合物は、アルデヒド化合物に求核付加してイミンを形成することが知られており、本発明における遊離塩基形の1級アミンまたは2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂ではこの反応を利用し、アルデヒド化合物を樹脂層に固定して、通液したアルコール含有液からアルデヒド化合物を除去する。
【0017】
1級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば下記式(1)で表される構成単位を有するものが挙げられる。1級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、ランクセス社製レバチットVPOC1065(商品名)、 ピュロライトインターナショナル社製ピュロライトA109(商品名)、ローム・アンド・ハース社製デュオライトA365(商品名)を用いることができる。
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、a、b、cは重合度を示す1以上の整数である。)
【0020】
遊離塩基形の1級アミンおよび2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂としては、特に限定されないが、下記式(2)で表される母体がスチレン系の高分子であるもの、あるいは、母体がアクリル系の高分子であるものが挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、n、d、e、fは重合度を示す1以上の整数である。)
【0023】
母体がスチレン系の、遊離塩基形の1級アミンおよび2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学株式会社製ダイヤイオンWA20(商品名)、WA21J(商品名)が挙げられ、アクリル系の、遊離塩基形の1級アミンおよび2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学株式会社製リライトMG1(商品名)、ピュロライトインターナショナル社製ピュロライトA830(商品名)等を用いることができる。母体がアクリル系の高分子である弱塩基性アニオン交換樹脂は、母体がスチレン系の高分子である弱塩基性アニオン交換樹脂と比べて、酒類中の芳香成分の吸着が少ないことが知られている。原酒の香りを取り除き、酒類をすっきりした飲み口にしたい場合には母体がスチレン系の高分子である弱塩基性アニオン交換樹脂を用い、原酒中の芳香成分を残し、酒類を特徴のある飲み口にしたい場合には母体がアクリル系の高分子である弱塩基性アニオン交換樹脂を用いることができる。
【0024】
H形弱酸性カチオン交換樹脂としては特に限定されず、例えば、ローム・アンド・ハース社製アンバーライトIRC84(商品名)、IRC76(商品名)、FPC3500(商品名)、三菱化学株式会社製ダイヤイオンWK20(商品名)、ランクセス社製レバチットCNP80(商品名)等を用いることができる。
【0025】
アルデヒド化合物除去装置10による、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法について説明する。
まず、アルコール含有液11の供給源から、アルコール含有液11をアニオン交換塔12に供給する。この際、アルカリ性水溶液16をアルコール含有液11に添加して、pH調整が行われる。アニオン交換塔12に供給されたアルコール含有液11は、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂(以下、単に弱塩基性アニオン交換樹脂ということがある)内を拡散しながら流通する。この間、アルコール含有液11中のアルデヒド成分のカルボニル基に、1級アミンまたは2級アミンが求核付加して、アミンの窒素上の水素がカルボニル酸素へと移動してヒドロキシ基を形成し、該ヒドロキシ基が酸触媒によりプロトン化されて脱離することによりイミンが形成される。こうして、アルコール含有液11からアルデヒド化合物が除去される。一方で、弱塩基性アニオン交換樹脂に、アルコール含有液11中のアニオン成分が酸として吸着することで、アルコール含有液11のOH濃度が上がり、アルカリ性に傾く。
【0026】
アニオン交換塔12を流通したアルコール含有液11は、カチオン交換塔14に送液される。カチオン交換塔14に送液されたアルコール含有液11は、H形弱酸性カチオン交換樹脂内を拡散しながら流通する。この間、アルコール含有液11中のカチオン成分が吸着されると同時に、H形弱酸性カチオン交換樹脂からHが放出されることで、アルコール含有液11は酸性に傾く。こうして、アニオン交換塔12出口でアルカリ性に傾いたアルコール含有液11は、酸性側にpH調整される。
そして、アルコール含有液11は、アルデヒド化合物の除去とpH調整とがなされ、精製アルコール含有液15となって、次工程へ供給される。
【0027】
本発明に用いられるアルコール含有液11は特に限定されないが、醸造酒または蒸留酒を用いることで、本発明の効果が顕著に表われる。醸造酒としては、例えば、日本酒、ビール、ワイン等が挙げられる。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ウィスキー、ブランデー、白酒等が挙げられる。
【0028】
アルコール含有液11のアルコール濃度は60質量%以下であることが好ましい。アルコール濃度を60質量%以下とすることで、弱塩基性アニオン交換樹脂が水和された状態となる。そして、弱塩基性アニオン交換樹脂とアルコール含有液11中のアルデヒド化合物との接触効率が良くなり、アルデヒド化合物の除去効率が高くなるためである。
【0029】
アニオン交換塔12における、アルコール含有液11の温度は特に限定されないが、−10〜40℃とするのが好ましい。アルコール濃度にも依存するが、通液温度を−10℃以上とすれば溶液の凍結や粘性の増加がなくなり、アルコール含有液と弱塩基性アニオン交換樹脂とが効率的に接触できるため、アルデヒド化合物の除去効率が高くなる。また、通液温度を40℃以下とすれば、アルコール含有液11中のアルコール成分が蒸発しにくくなる。また、アルコール含有液11中に香気成分が含まれる場合には、通液温度を40℃以下とすることにより香気成分の蒸発や変性が起き難くなる。
【0030】
カチオン交換塔14におけるアルコール含有液11の温度は、アニオン交換塔12におけるアルコール含有液11の温度と同様である。通液温度を−10℃以上とすれば溶液の凍結や粘性の増加がなくなり、アルコール含有液とH形弱酸性カチオン交換樹脂とが効率的に接触できるため、アルコール含有液11のpH調整が効率的に行なえる。また、通液温度を40℃以下とすれば、アルコール含有液中のアルコール成分が蒸発しにくくなる。また、アルコール含有液中に香気成分が含まれる場合には、通液温度を40℃以下とすることにより香気成分の蒸発や変性が起き難くなる。
【0031】
アニオン交換塔12におけるアルコール含有液11の通液速度は、SV=0.1〜50とすることが好ましい。通液速度をSV=0.1以上とすれば、時間当たりの通液量を増大させられる。また、通液速度をSV=50以下とすれば、アルコール含有液11と弱塩基性アニオン交換樹脂との効率的な接触が可能となり、アルデヒド化合物の除去効率が高くなる。ここでSVとは、イオン交換樹脂の単位体積(L−R)に対して1時間に流通させる流量(L)であるL/L−R・h−1で表される空間速度である。
【0032】
カチオン交換塔14におけるアルコール含有液11の通液速度は、アニオン交換塔12におけるアルコール含有液11の通液速度と同様である。通液速度をSV=0.1以上とすれば、時間当たりの通液量を増大させられる。また、通液速度をSV=50以下とすれば、アルコール含有液11とH形弱酸性カチオン交換樹脂との効率的な接触が可能となり、精製アルコール含有液15のpH調整が効率的に行える。
【0033】
カチオン交換塔14出口における精製アルコール含有液15のpHは特に限定されず、処理対象となるアルコール含有液11のpHに応じて調節することが好ましい。
【0034】
アルコール含有液11に添加するアルカリ性水溶液16は特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
【0035】
アルカリ性水溶液16の添加により、アルコール含有液11はpH8〜12とすることが好ましく、pH9〜10とすることがより好ましい。上記範囲内とすることで、弱塩基性アニオン交換樹脂の官能基が解離せず、アルコール含有液11中のアミノ酸や有機酸の吸着を減らすことができるためである。
【0036】
アルカリ性水溶液16の濃度は特に限定されないが、0.0001〜1Nの範囲で決定することが好ましい。
【0037】
アルコール含有液11へのアルカリ性水溶液16の添加量は特に限定されないが、0.01〜5体積%の範囲で決定することが好ましい。0.01体積%未満であるとpH調整が不充分となる場合があり、5体積%を超えると得られる精製アルコール含有液15のアミノ酸や有機酸等の成分が薄まり、品質を低下させるおそれがある。
【0038】
本実施形態によれば、アルコール含有液11を弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させることで、アルデヒド化合物を除去することができる。また、弱塩基性アニオン交換樹脂にアルコール含有液を接触させアルカリ性に傾いたアルコール含有液11をH形弱酸性カチオン交換樹脂に接触させることで、pHを酸性側に調整することができる。このため、精製アルコール含有液15は酸性となり、風味や色調が劣化することを防ぐことができる。さらに、予めアルコール含有液11をpH8〜12とした後に弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させることで、アルコール含有液11中のアミノ酸や有機酸、即ち、うまみ成分や酸味成分の吸着を減少させることができる。この結果、精製アルコール含有液15に、うまみや酸味を残すことができる。
【0039】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂(弱塩基性アニオン交換樹脂)とH形弱酸性カチオン交換樹脂とを充填したイオン交換塔にアルコール含有液を通液して、アルデヒド化合物を除去する方法である。
【0040】
本発明の第2の実施形態について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の第2の実施形態のアルデヒド化合物除去装置20の模式図である。図2に示すとおりアルデヒド化合物除去装置20は、イオン交換塔22が図示されないアルコール含有液の供給源、および、次工程と接続されている。
【0041】
イオン交換塔22には、弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂とが充填されている。弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂との充填形態は、弱塩基性アニオン交換樹脂とH形弱酸性カチオン交換樹脂とが混合された混床形態、あるいは、弱塩基性アニオン交換樹脂を上層とし、H形弱酸性カチオン交換樹脂を下層として充填した複床形態である。
【0042】
弱塩基性アニオン交換樹脂は、第1の実施形態のアニオン交換塔12に充填されている弱塩基性アニオン交換樹脂と同様である。H形弱酸性カチオン交換樹脂は、第1の実施形態のカチオン樹脂塔14に充填されている、H形弱酸性カチオン交換樹脂と同様である。
【0043】
アルデヒド化合物除去装置20による、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法について説明する。
まず、アルコール含有液11の供給源から、アルコール含有液11をイオン交換塔22に供給する。この際、アルカリ性水溶液16をアルコール含有液11に添加して、pH調整が行われる。イオン交換塔22のイオン交換樹脂の充填形態が複床形態の場合、イオン交換塔22に供給されたアルコール含有液11は、下降流で、上層の弱塩基性アニオン交換樹脂内を拡散しながら流通する。この間、主にアルコール含有液11中のアルデヒド化合物、アニオン成分が除去される一方、弱塩基性アニオン交換樹脂にアルコール含有液11中のアニオン成分が酸として吸着することで、アルコール含有液11中のOH濃度が上がり、アルカリ性に傾く。次いで、下層のH形弱酸性カチオン交換樹脂内を拡散しながら流通する。この間、主にアルコール含有液11中のカチオン成分が除去される一方、H形弱酸性カチオン交換樹脂からHが放出されて、酸性に傾く。こうして、アルコール含有液11は、アルデヒド化合物の除去とpH調整がなされ、精製アルコール含有液25となって次工程へ供給される。
【0044】
また、イオン交換塔22における弱塩基性アニオン交換樹脂とH形弱酸性カチオン交換樹脂との充填形態が混床形態である場合には、アルカリ性水溶液16によりpH調整されたアルコール含有液11が、前記混床形態のイオン交換樹脂内を拡散しながら流通する。この間、アルコール含有液11は、弱塩基性アニオン交換樹脂に接触して、アルデヒド化合物とアニオン成分が除去されて、アルコール含有液11のOH濃度が上がる一方で、アルコール含有液11がH形弱酸性カチオン交換樹脂を接触してカチオン成分が除去されてHが放出される。こうして、イオン交換塔22内では、OHとHとが同時に放出されるために、イオン交換塔22の出口では、アルデヒド化合物が除去され、pHが調整された精製アルコール含有液25を得ることができる。
【0045】
イオン交換塔22におけるアルコール含有液11の通液温度は、第1の実施形態のアニオン交換塔12、カチオン交換塔14におけるアルコール含有液11の通液温度と同様である。また、イオン交換塔22におけるアルコール含有液11の通液速度は、第1の実施形態のアニオン交換塔12、カチオン交換塔14におけるアルコール含有液11の通液速度と同様である。
【0046】
イオン交換塔22出口における精製アルコール含有液25のpHは特に限定されず、処理対象となるアルコール含有液11のpHに応じて調節することが好ましい。
【0047】
本実施形態によれば、1つのイオン交換塔22で、アルコール含有液11中のアルデヒド化合物の除去と、pH調整を行うことができる。
【0048】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、アルコール含有液を塩型のカチオン交換樹脂に接触させた後、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂(弱塩基性アニオン交換樹脂)と、H形弱酸性カチオン交換樹脂との順に通液して、アルデヒド化合物を除去する方法である。
【0049】
本発明の第3の実施形態について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の第3の実施形態のアルデヒド化合物除去装置30の模式図である。図3に示すとおりアルデヒド化合物除去装置30は、アニオン交換塔12とカチオン交換塔14とが設置され、アニオン交換塔12の前段に前処理カチオン交換塔32が設置されている。前処理カチオン交換塔32は図示されないアルコール含有液の供給源と接続され、前処理カチオン交換塔32とアニオン交換塔12とは配管で接続され、アニオン交換塔12とカチオン交換塔14とは配管で接続されている。カチオン交換塔14は図示されない次工程と接続されている。前処理カチオン交換塔32には、塩形のカチオン交換樹脂が単床形態で充填されている。
【0050】
塩形のカチオン交換樹脂とは、カチオン交換樹脂の交換基の対イオンが、プロトンではない、カチオンに置換されているものを言う。
塩形で用いられるカチオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂であっても弱酸性カチオン交換樹脂であっても良い。このようなカチオン交換樹脂としては、例えば、ローム・アンド・ハース社製アンバーライトIR120B(商品名)、IRC76(商品名)、FPA3500(商品名)、三菱化学株式会社製ダイヤイオンSK1B(商品名)、WK20(商品名)等を用いることができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等を挙げることができる。
【0051】
アルデヒド化合物除去装置30による、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法について説明する。
まず、アルコール含有液11の供給源から、アルコール含有液11を前処理カチオン交換塔32に供給する。供給されたアルコール含有液11は、前処理カチオン交換塔32内の塩形のカチオン交換樹脂内を拡散しながら流通し、カチオン交換樹脂に吸着したカチオン成分がアルコール含有液に放出されることにより、アルコール含有液11はアルカリ性に傾く。前処理カチオン交換塔32を流通したアルコール含有液11は、アニオン交換塔12に送液される。送液されたアルコール含有液11は、アニオン交換塔12内の弱塩基性アニオン交換樹脂内を拡散しながら流通し、この間、主にアルデヒド化合物は除去されるが、アルコール含有液11が既にアルカリ性であるために、弱塩基性アニオン交換樹脂の交換基は解離せず、アニオン成分は吸着されない。
【0052】
アニオン交換塔12を流通したアルコール含有液11は、カチオン交換塔14に送液される。送液されたアルコール含有液11は、カチオン交換塔内のH形弱酸性カチオン交換樹脂内を拡散しながら流通し、主にカチオン成分が除去され、H形弱酸性カチオン交換樹脂からHが放出されて、酸性に傾く。こうして、アルコール含有液11は、アルデヒド化合物の除去とpH調整がなされて、精製アルコール含有液35となって次工程へ供給される。
【0053】
前処理カチオン交換塔32におけるアルコール含有液11の通液温度は特に限定されないが、−10〜40℃とするのが好ましい。アルコール濃度にも依存するが、通液温度を−10℃以上とすれば溶液の凍結や粘性の増加がなくなり、アルコール含有液と塩形のカチオン交換樹脂とが効率的に接触できるため、pH調整の精度を上げることができる。通液温度を40℃以下とすれば、アルコール含有液11中のアルコール成分が蒸発しにくくなる。アルコール含有液11中に香気成分が含まれる場合には、通液温度を40℃以下とすることにより香気成分の蒸発や変性が起き難くなる。
【0054】
前処理カチオン交換塔32におけるアルコール含有液11の通液速度は、通液後のアルコール含有液11に求めるpHに応じて決定することができ、例えば、SV=0.1〜50とすることが好ましい。通液速度をSV=0.1以上とすれば、時間当たりの通液量を増大させられる。通液速度をSV=50以下とすれば、アルコール含有液11と塩形のカチオン交換樹脂とが効率的に接触し、pH調整の精度向上を図ることができる。
【0055】
前処理カチオン交換塔32出口におけるアルコール含有液11は、pH8〜12であることが好ましく、pH9〜10がより好ましい。上記範囲内とすることで、弱塩基性アニオン交換樹脂の官能基が解離せず、アルコール含有液11中のアミノ酸や有機酸の除去量を減らすことができるためである。
【0056】
カチオン交換塔14出口における精製アルコール含有液35のpHは特に限定されず、処理対象となるアルコール含有液11のpHに応じて調節することが好ましい。
【0057】
本実施形態によれば、アルカリ性水溶液の添加を伴うことなく、アルコール含有液11をpH8〜12に調整した後に、アニオン交換塔12に供給することができる。このため、薬剤添加による精製アルコール含有液35への品質劣化等の影響を防止することができる。
【0058】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態は、アルコール含有液を塩型のカチオン交換樹脂に接触させた後、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂(弱塩基性アニオン交換樹脂)とH形弱酸性カチオン交換樹脂とを充填したイオン交換塔にアルコール含有液を通液して、アルデヒド化合物を除去する方法である。
【0059】
本発明の第4の実施形態について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の第4の実施形態のアルデヒド化合物除去装置40の模式図である。図4に示すとおりアルデヒド化合物除去装置40は、イオン交換塔22を有し、イオン交換塔22の前段に前処理カチオン交換塔32が設置されている。前処理カチオン交換塔32は図示されないアルコール含有液の供給源と接続され、前処理カチオン交換塔32とイオン交換塔22とは配管で接続されている。イオン交換塔22は図示されない次工程と接続されている。
【0060】
アルデヒド化合物除去装置40による、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法について説明する。
まず、アルコール含有液11の供給源から、アルコール含有液11を前処理カチオン交換塔32に供給する。供給されたアルコール含有液11は、前処理カチオン交換塔32内の塩形のカチオン交換樹脂内を拡散しながら流通し、カチオン交換樹脂に吸着したカチオン成分が、アルコール含有液11中に放出されることにより、アルコール含有液11はアルカリ性に傾く。前処理カチオン交換塔32を流通したアルコール含有液11は、イオン交換塔22に送液される。
【0061】
イオン交換塔22のイオン交換樹脂の充填形態が複床形態の場合、イオン交換塔22に供給されたアルコール含有液11は、下降流で、上層の弱塩基性アニオン交換樹脂内を拡散しながら流通する。この間、アルコール含有液11中のアルデヒド化合物、アニオン成分が除去され、pHがアルカリ性に傾く。次いで、H形弱酸性カチオン交換樹脂内を拡散して流通する。この間、主にアルコール含有液11中のカチオン成分が除去され、pHは酸性に傾く。こうして、アルコール含有液11は、アルデヒド化合物の除去とpH調整がなされて、精製アルコール含有液45となって次工程へ供給される。
【0062】
また、イオン交換塔22における弱塩基性アニオン交換樹脂とH形弱酸性カチオン交換樹脂との充填形態が混床形態である場合には、pH調整されたアルコール含有液11は、前記混床形態のイオン交換樹脂内を拡散しながら流通する。この間、アルデヒド化合物、アニオン成分、カチオン成分が除去され、かつ、pHが調整される。こうして、アルコール含有液11は、イオン交換塔22内でアルデヒド化合物が除去され、pH調整がなされて、精製アルコール含有液45となって次工程へ供給される。
【0063】
イオン交換塔22出口における精製アルコール含有液45のpHは特に限定されず、処理対象となるアルコール含有液11のpHに応じて調節することが好ましい。
【0064】
本実施形態によれば、前処理カチオン交換塔32とイオン交換塔22のみで、アルカリ性水溶液の添加を伴うことなく、うまみや酸味を残すことができる。
【0065】
第1、第2の実施形態では、アルコール含有液11にアルカリ性水溶液16を添加してpH調整し、第3、第4の実施形態では、前処理カチオン交換塔32にアルコール含有液11を通液してpH調整しているが、該pH調整は行わなくても良い。ただし、醸造酒等を処理する場合には、アミノ酸、有機酸の除去量を抑えるために、前記pH調整によりアルコール含有液11をpH8〜12とした後に、弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させることが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アルコール含有液として日本酒を用いた。該日本酒にアセトアルデヒド濃度が104mg/Lとなるようにアセトアルデヒドを添加して、サンプル日本酒を調整した。サンプル日本酒は、pH4.3、アルコール濃度15体積%であった。
【0067】
下記式(1)を構成単位とする遊離塩基形の1級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂50mLを内径10mmのガラスカラムに充填し、アニオン交換塔を作製した。内径10mmのガラスカラムに、H形とした弱酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトFPC3500、30mL)を充填し、カチオン交換塔を作製した。
【0068】
前記サンプル日本酒2000mLを20℃、150mL/hでアニオン交換塔からカチオン交換塔の順に通液し、200mL毎に分取した。こうして、アルデヒド化合物の除去処理およびpH調整を行った日本酒Aを得た。日本酒Aについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0069】
【化3】

【0070】
(式中、a、b、cは重合度を示す1以上の整数である。)
【0071】
(実施例2)
実施例1と同様の遊離塩基形の1級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂50mLと、H形弱酸性カチオン交換樹脂30mLとを混合し、内径10mmのガラスカラムに充填して混床塔を作製した。前記混床塔に実施例1と同様の条件でサンプル日本酒を通液し、アルデヒド化合物の除去処理およびpH調整を行い、日本酒Bを得た。日本酒Bについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
サンプル日本酒に0.01mol/L水酸化ナトリウムを添加し、pHを9.2に調整した他は、実施例1と同様の条件で通液を行い、アルデヒド化合物の除去処理およびpH調整を行い、日本酒Cを得た。日本酒Cについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
ナトリウム形に調製した弱酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトFPC3500、20mL)を内径10mmのガラスカラムに充填し、前処理カチオン交換塔を作製した。実施例1と同様の条件で、サンプル日本酒を前処理カチオン交換塔、アニオン交換塔、カチオン交換塔の順に通液し、アルデヒド化合物の除去処理およびpH調整を行い、日本酒Dを得た。日本酒Dについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0074】
(実施例5)
アルコール含有液として芋焼酎を用いた。該芋焼酎にアセトアルデヒドが98mg/Lとなるようにアセトアルデヒドを添加して、サンプル芋焼酎を調整した。サンプル芋焼酎のpHは4.5、アルコール濃度は25体積%であった。
サンプル日本酒の代わりに、該サンプル芋焼酎を用いた他は、実施例1と同様の条件で通液し、アルデヒド化合物の除去処理およびpH調整を行い、焼酎Aを得た。焼酎Aについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0075】
(実施例6)
サンプル日本酒の代わりにサンプル芋焼酎を用いた他は、実施例2と同様の条件で通液を行い、アルデヒド化合物の除去処理およびpH調整を行い、焼酎Bを得た。焼酎Bについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0076】
(比較例1)
サンプル日本酒の通液をアニオン交換塔のみとした他は、実施例1と同様にして、アルデヒド化合物の除去処理を行い、日本酒Eを得た。日本酒Eについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
サンプル芋焼酎の通液をアニオン交換塔のみとした他は、実施例5と同様にして、アルデヒド化合物の除去処理を行い、焼酎Cを得た。焼酎Cについて、アセトアルデヒドの平均濃度、平均pHの測定と、香り、味の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0078】
(測定方法および評価方法)
<アセトアルデヒドの平均濃度>
アセトアルデヒドの平均濃度は、200mL毎に分取した10検体のアルコール含有液について、ガスクロマトグラフGC−2010(株式会社島津製作所製)により、アセトアルデヒド濃度を測定し、10検体の測定値の平均をアセトアルデヒドの平均濃度とした。
【0079】
<平均pH>
平均pHは、pH METER HM−21P(東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、200mL毎に分取した10検体についてpHを測定し、10検体の測定値の平均を平均pHとした。
【0080】
<香りの評価>
実施例ならびに比較例の香りの評価は、アセトアルデヒド添加前の日本酒または芋焼酎を基準品質とし、5人のパネラーによって、下記の評価基準により官能試験で行った。
基準品質と同等=5
基準品質にわずかに劣る=4
基準品質にやや劣るが許容できる=3
基準品質に明らかに劣り許容できない=2
異臭を感じる=1
【0081】
<味の評価>
実施例ならびに比較例の味の評価は、アセトアルデヒド添加前の日本酒または芋焼酎を基準品質とし、5人のパネラーによって、下記の評価基準により官能試験で行った。
基準品質と同等=5
基準品質にわずかに劣る=4
基準品質にやや劣るが許容できる=3
基準品質に明らかに劣り許容できない=2
異味を感じる=1
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
表1に示すとおり、実施例1〜4はいずれもアセトアルデヒドの平均濃度は11mg/L以下であった。加えて、平均pHはアセトアルデヒド添加前のpHとほぼ同等の4.3〜4.5であった。実施例1〜4は、香りの評価が3点以上、味の評価が3点以上であった。特にpH調整したサンプル日本酒を1級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させた実施例3、4は、香りの評価が4点、味の評価が5点であり、実施例1、2よりも、味、旨みを濃厚に残していた。
一方、比較例1は、アセトアルデヒドの平均濃度は1mg/L未満であったものの、平均pHは9.1となっていた。比較例1の香り評価は1点であり、異臭を感じるものであった。味の評価は1点であり、異味を感じるものであった。
【0085】
表2に示すとおり、実施例5、6、比較例2は、サンプル芋焼酎を1級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させることで、アセトアルデヒドの平均濃度は1mg/L未満にできた。しかし、実施例5、6は平均pHが4.2〜4.5であったのに対し、比較例2はpH9.0であった。官能評価においては、いずれも香り評価は3点であり、芋臭がやや弱くなり、すっきりとしたものであった。味の評価においては、実施例5、6の味の評価が4点であり原酒の重い味に対して、雑味が除かれた軽快な味であった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるアルデヒド化合物除去装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第2の実施形態にかかるアルデヒド化合物除去装置を示す模式図である。
【図3】本発明の第3の実施形態にかかるアルデヒド化合物除去装置を示す模式図である。
【図4】本発明の第4の実施形態にかかるアルデヒド化合物除去装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
10、20、30、40 アルデヒド化合物除去装置
11 アルコール含有液
12 アニオン交換塔
14 カチオン交換塔
22 イオン交換塔
32 前処理カチオン交換塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール含有液を遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂に接触させ、次いで、H形弱酸性カチオン交換樹脂に接触させる、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法。
【請求項2】
アルコール含有液を遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂とを混合したイオン交換樹脂に接触させる、アルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法。
【請求項3】
アルコール含有液をpH8〜12に調整した後に、遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と接触させることを特徴とする、請求項1または2に記載のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法。
【請求項4】
塩形のカチオン交換樹脂に接触させて、アルコール含有液をpH8〜12に調整することを特徴とする、請求項3に記載のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法。
【請求項5】
アルコール含有液は酒類であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去方法。
【請求項6】
遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂を充填したアニオン交換塔と、H形弱酸性カチオン交換樹脂を充填したカチオン交換塔とを有し、前記アニオン交換塔に通液されたアルコール含有液が、前記カチオン交換塔に流されるように配置されているアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置。
【請求項7】
遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂を上層とし、H形弱酸性カチオン交換樹脂を下層とした複床塔を有し、前記複床塔にアルコール含有液が下降流で通液されることを特徴とするアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置。
【請求項8】
遊離塩基形の1級アミン、および/または、2級アミン弱塩基性アニオン交換樹脂と、H形弱酸性カチオン交換樹脂とを混合充填した混床塔を有するアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置。
【請求項9】
塩形のカチオン交換樹脂が充填され、アルコール含有液を予めpH8〜12に調整する前処理カチオン交換塔を有する、請求項6〜8に記載のアルコール含有液中のアルデヒド化合物の除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−247284(P2009−247284A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99685(P2008−99685)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】