アルツハイマー病の静脈内免疫グロブリン処置における脳室拡大速度の使用
【課題】アルツハイマー病を処置するための方法および治療有効性をモニターするための方法を提供する。
【解決手段】以下の一連の段階を含む:(a)脳室容積のベースライン値を取得する段階;(b)第1の期間中にアルツハイマー病を処置する目的で対象に脳保護治療剤を投与する段階;(c)脳室容積の第1の中間値を取得する段階;(d)段階(c)由来の中間値を段階(a)由来のベースライン値と比較する段階;および(e)用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を増加する段階、または、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【解決手段】以下の一連の段階を含む:(a)脳室容積のベースライン値を取得する段階;(b)第1の期間中にアルツハイマー病を処置する目的で対象に脳保護治療剤を投与する段階;(c)脳室容積の第1の中間値を取得する段階;(d)段階(c)由来の中間値を段階(a)由来のベースライン値と比較する段階;および(e)用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を増加する段階、または、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年4月13日に出願された米国特許仮出願第61/323,739号に優先権を主張し、その内容は全体として参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病は、530万人ものアメリカ人を苦しめる認知症の最も一般的な形態である。疾患は、神経細胞の死および神経伝達物質レベルにおける随伴性の減少をもたらす、脳におけるβ-アミロイド班の蓄積により引き起こされると一般に信じられている。記憶、認知、推理、および判断における機能障害が、情緒安定性における低下および行動の問題の発生と共に生じる。疾患は進行性であり、深在性の精神荒廃および究極的には死を導く。
【0003】
アルツハイマー病には公知の治癒法が存在しない。患者の介護は、本疾患の症状の管理に主として焦点を合わせている。アルツハイマー患者における疾患の進行は、脳組織容積における減少、または脳室容積の拡大に関して経時的にモニターされ得る。磁気共鳴画像法(MRI)などの科学技術によりもたらされ、これらの画像ベースのモニタリング技術は、脳状態における任意の変化を管理および定量化することの容易さにおいて有利である。β-アミロイドに対する抗体がヒト免疫グロブリン調製物(例えば、静脈内免疫グロブリンまたはIVIG)に存在し、かつβ-アミロイドの神経毒効果を阻害し得るという最近の発見が、アルツハイマー患者における臨床治験を先導する。疾患の安定化および認知能力における適度の改善が注目された。
【0004】
2006年に、2660万人のアルツハイマー病罹患者が世界中に存在した。2050年までに、全世界で予測的に85人に1人が診断されると考えられる。本疾患の悲惨な性質、多い患者人口、および介護者への極めて大きい負担を考慮すると、新たな、かつより有効な治療剤および方法についての差し迫った必要性が存在する。本発明は、この必要性および他の関連する必要性を満たすための改善を提供する。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、アルツハイマー病の脳保護処置の効果をモニターし、かつさらなる処置計画を策定することを手引きするための、脳室容積における変化の使用に関連する。1つの局面において、本発明は、処置を必要とする対象においてアルツハイマー病を処置するための方法を提供する。この方法は、特定の処置用量および/または頻度が有効であるか否かを処置の期間の後に判定するために有用であり、この判定がその後、将来の処置の改変を手引きするために使用される。典型的に、有効との判定がなされた場合、同一の用量および/または頻度が維持され;有効でないとの判定がなされた場合、その後の期間は、有効性を再び評価する前に、より高い用量および/または頻度が使用される。具体的には、本方法は以下の一連の段階を含む:(a)磁気共鳴画像法(MRI)により対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積のベースライン値を取得する段階;(b)第1の期間中にアルツハイマー病を処置する目的で対象に脳保護治療剤を投与する段階;(c)MRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の第1の中間値を取得する段階;(d)段階(c)由来の中間値を段階(a)由来のベースライン値と比較する段階;および(e)段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を増加する段階、または、段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【0006】
いくつかの態様において、段階(b)〜(d)は少なくとも1回さらに繰り返され、かつ、各繰り返しにおいて、段階(e)と同一の様式で治療剤の将来の投与を決定するために、最新の中間値が2番目に最新の中間値と比較される。
【0007】
いくつかの場合において、有効でないとの判定は、増加された用量および/または頻度スケジュールでの繰り返し処置の少なくとも一巡の後になされ(例えば、段階(b)〜(d)が既に少なくとも1回繰り返されたとき)、処置はその後中断されるであろう。これはしばしば、最新の用量および/または頻度が一般的に使用される用量および/または頻度範囲内で既に比較的高いときに見られる。そのように、任意の繰り返し中の、特許請求する方法の段階(d)がある中間値からその次の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが2つの中間値間の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、またはそれより大きく、かつ、脳保護治療剤の投与が用量または頻度において増加されているとき、前記方法は以下の段階をさらに含む:(f)治療剤が対象に投与される追加的な期間の後にMRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の追加的な中間値を取得する段階;(g)追加的な中間値をその前の中間値と比較する段階;および(h)段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する脳保護処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、治療剤のさらなる投与を中断する段階、または、段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【0008】
いくつかの態様において、時間間隔、例えば、第1、第2、または任意のその後の期間は、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月であってもよい。いくつかの態様において、治療剤は、免疫グロブリンGなどの免疫グロブリンベースの脳保護治療剤である。特定の態様において、治療剤は、静脈内に頻繁に投与されるIVIGである。いくつかの場合において、IVIGは、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与される。投与の頻度は、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回であってもよい。1つの例において、IVIGは、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される。
【0009】
別の局面において、本発明は、アルツハイマー病を処置するように意図された脳保護治療の有効性を評価するための方法を提供する。この方法は以下の段階を含む:(a)アルツハイマー病を患っているが治療を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の非治療的速度として脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;(b)アルツハイマー病を患っておりかつ治療を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の治療的速度として脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;および(c)治療的速度を非治療的速度と比較し、それにより治療の有効性を判定する段階。段階(a)および(b)における脳室容積は、磁気共鳴画像法(MRI)により測定される。治療的速度が非治療的速度より低いとき、治療は有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、治療は有効でないとみなされる。
【0010】
いくつかの態様において、段階(a)または(b)中の脳室容積における変化の速度は、約3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月の期間に渡って測定される。
【0011】
いくつかの態様において、治療は、免疫グロブリンGなどの免疫グロブリンベースの脳保護治療剤の投与による。1つの例において、治療は、好ましくは静脈内のIVIG投与である。例えば、IVIGは、1カ月当たりに、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与されてもよい。投与の頻度は、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回であってもよい。1つの例示的な処置計画において、IVIGは、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】18カ月IVIG試験設計の模式的表示である。
【図2】18カ月の試験の間、CGICスコアにおいてIVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図3】18カ月の試験の間、ADAS-Cogスコアにおいて、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4A】18カ月の試験の間、日常生活動作(ADL)において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4B】18カ月の試験の間、神経精神症状評価(NPI)において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4C】18カ月の試験の間、生活の質(QOL)の項目表(介護者)において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4D】18カ月の試験の間、改変簡易精神(3MS)試験において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図5】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのCGICスコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図6】0から18カ月まで、CGICスコアにおいてプラセボ群およびIVIG 0.4g/kg/2wk群を比較する。
【図7】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのADAS-Cogスコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図8】0から18カ月まで、ADAS-Cogスコアにおいてプラセボ群およびIVIG 0.4g/kg/2wk群を比較する。
【図9】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのADL試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図10】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのNPI試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図11】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのQOL-介護者試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図12】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までの3MS試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図13】プラセボ群、4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)、およびすべてのIVIG群において、18カ月の試験の間の脳室容積における年間変化を示す。
【図14】プラセボ群、4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)、およびすべてのIVIG群において全脳容積のパーセント変化を比較することにより、18カ月の試験におけるIVIG処置の効果を示す。
【図15】18カ月の試験において、脳室容積における変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。
【図16】18カ月の試験において、全脳容積における変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
「アルツハイマー病(AD)」とは、早期発症タイプはもっと早期に起こり得るが、典型的には65歳より上の年齢の人々の間で観察される認知症の一般的な形態である。不治で、不可逆性で、進行性の脳疾患であるアルツハイマー病は、ある特定の共通の症状に基づいて診断される。初期において、最も一般的に認識されるADの症状は、最近学習された事実を想起するのが困難であることなどの、記憶喪失である。医師は典型的に、行動評価および認知試験、多くの場合続いて脳スキャンで、ADの診断を確認するであろう。疾患が進行するにつれて、混乱、過敏性および攻撃性、気分変動、言語崩壊、長期記憶喪失、および患者の感覚低下故の一般的な引きこもりを含む、さらなる症状が明白になるであろう。本明細書において使用される際、アルツハイマー病またはADを患っている患者は、脳障害の任意の変種に苦しんでいてもよく、および現在使用される診断基準に従って診断される状態の任意の病期であってもよい。
【0014】
脳室系は、脳において脳脊髄液を含有する一連の構造である。脳室系は、4個の相互に連結した脳室を含み、かつ脊髄中心管と連続している。本明細書において使用される際、「脳室容積」または「脳室腔」という用語は、中に脳脊髄液が含有される脳室系の腔全体を指す。脳室腔は、CTスキャンおよび磁気共鳴画像法(MRI)などの画像化技術により可視化することができ、かつ種々のコンピュータソフトウェアの助けを借りて定量的に測定することができる。状態が進行するにつれて、脳室腔の拡大、しばしば連続的な過程を呈する多数の状態が公知である。「脳室拡大速度」という用語は、CTスキャンまたはMRIなどの画像化技術を通して定量化された変化により示される、特定の量の時間に渡る(例えば、1年当たりの)脳室容積の増加を指す。
【0015】
本明細書において使用される際、「免疫グロブリンベースの脳保護治療剤」とは、1つまたは複数の免疫グロブリンを含み、かつ、加速性脳収縮を含む状態(例えば、アルツハイマー病)を患っている患者を処置するため、そのような加速性収縮を予防、低減、または逆転するために使用される任意の治療用組成物を指す。例えば、そのような組成物は、天然に存在してもよく、組換えで産生されてもよく、または免疫グロブリンの部分(特に、その結合部分、例えば、FabもしくはF(ab')2断片、または一本鎖抗体)であってもよい、1つまたは複数の免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンG)を含んでもよい。そのような抗体ベースの脳保護治療剤の例は、例えば米国特許第2009/0155256号において見出され得る。
【0016】
「静脈内免疫グロブリン」または「IVIG」とは、多数の(多くの場合千人を上回る)血液供与者の血漿由来のプールされた免疫グロブリンG(IgG)免疫グロブリンを含有する血液製剤を指す。IVIGは、典型的に、無傷のFc依存性エフェクター機能を有する、95%より多い未改変IgG、およびほんの極微量の免疫グロブリンA(IgA)または免疫グロブリンM(IgM)を含有し、ある特定の医学的状態を処置する段階において使用される、無菌の、精製されたIgG製品である。「静脈内」という用語は、静脈内注入による投与を示すが、本用語が本特許出願において使用される際、IVIG組成物は、皮下投与を含む様々経路のために製剤化され、かつそれにより投与されるIgG組成物もまた包含する。
【0017】
治療レジメンが次の時期について調整されるべきか否かを判定する目的で治療受容者の脳室容積がモニターされる、アルツハイマー病の処置法を説明する文脈において使用されるとき、「アルツハイマー病を有するが疾患に対する脳保護治療を受けていない対象における脳室容積において期待される増加」とは、同一の長さの時間内に、抗アルツハイマー脳保護処置を受けていないアルツハイマー患者において予期されるであろう脳室拡大の量を指す。この脳室拡大の量は、平均速度での疾患の自然の進行によるものである。実際に、この量は、脳保護処置を受けているアルツハイマー患者(または処置された個体)とその他の点では比較可能な条件の下で観察した際、アルツハイマー病を有するが疾患について脳容積および機能の保護のための処置を受けていないか、または、脳容積を保護しない症状緩和処置(例えば、抗コリンエステラーゼまたはACEIおよびメマンチジン処置)のみを受けている、処置されていない個体群より計算される平均の量である。好ましくは、IVIGで処置された個体およびIVIGで処置されていない個体は、アルツハイマー病の同様の病期または重症度である点において、および疾患の持続時間、年齢、性別、病歴、民族的背景、教育の水準などの他の局面において妥当に一致しているべきである。処置された個体と処置されていない個体との間の脳室容積における変化は、そのような変化が起きる時間の長さを考慮に入れた後に比較されるべきである。例えば、平均的な処置されていないアルツハイマー病患者について期待される年間脳室拡大は、観察および計算をする実際の期間が1年より長かったりまたは短かったりし得るが、約10%と測定される。加えて、脳室拡大または脳萎縮の期待される速度を計算するために使用される処置されていない群は、例えば、少なくとも5または10人またはより多い個体を含む、妥当なサイズであることが好ましい。アルツハイマー病を有する処置されていない個体についての脳室容積増加および脳萎縮の平均速度は、当業者により測定されており、かつ周知である(例えば、Frisoni et al., 2010, Neurology 6:67-77を参照されたい)。
【0018】
発明の詳細な説明
I.序論
脳室拡大は、アルツハイマー病(AD)において脳萎縮の結果として起き、かつ、認知低下および増加するアルツハイマー神経病理と相関する。軽度から中等度のADを患っている個体の間で脳室拡大速度(VER)をモニターするために連続磁気共鳴画像法(MRI)を利用して、本発明者らは、静脈内免疫グロブリン(IVIG)免疫療法の効果を評価するための客観的手段としてVERを使用した。IVIG処置は、有意に減少した速度の脳室拡大を達成することが示されている。この効果は、IVIG投与量と共に変動し、かつ患者において減少した認知低下と相関するとして観察されている。これらの結果は、IVIG治療が、神経変性の特徴である脳萎縮の速度、従ってAD患者における疾患の進行を有意に減少させ得ることを示す。患者の脳機能を評価するために種々の認知試験が利用可能であるが、VERを定量的にモニターするためのMRIなどの画像化技術の使用は、脳保護治療に応答してAD患者の認知能力における任意の変化をモニターするための迅速かつ客観的な手段を提供する。画像化技術はまた、全脳容積の直接的な測定がAD患者における脳萎縮を示し、従って、ADを処置する段階における脳保護剤の治療有効性を示すことを可能にする。本発明者らは、いくらかの期間、例えば12カ月後に、脳保護処置を受けているAD患者の間で全脳容積における統計学的に有意な変化(全脳収縮速度の減少)を観察してきた。VERモニタリングは、全脳測定と比較してより感度が高く、かつ、脳保護処置の開始に続いて3カ月または6カ月以内などの、相対的により短い期間における脳容積変化の指標を提供することができる。VER法は従って、AD患者脳容積における変化、および脳保護治療の有効性を検出することについて相対的により迅速である。
【0019】
II.アルツハイマー病のIVIG処置
A.処置を受ける患者
本発明によるIVIG処置(または他の抗アルツハイマー脳保護治療剤)を受ける患者は、アルツハイマー病を患っていると診断されている。アルツハイマー病の発症は通常漸進的であり、かつ緩徐進行性である。記憶、特に短期記憶についての問題が、アルツハイマー病の経過の初期に一般的である。より少ない自発性、感情鈍麻、および社会的相互作用から引きこもる傾向などの軽度の人格変化もまた、疾病の初期に起きる可能性がある。疾患が進行するにつれて、抽象的思考および他の知的機能における問題が発生する。患者は、請求書に取り組むときの桁、読まれているものを理解すること、またはその日の仕事を組織化することに困難を有し始める可能性がある。激越、過敏性、爆発性人格異常、および適切に服を着る能力の減少などの、行動および外見におけるさらなる撹乱もまた、この時点で見られる可能性がある。障害の経過のより後に、罹患した個体は、何月もしくは何年であるかについて混乱するもしくは見当を失うようになる、どこに住んでいるかを正確に説明することができない、または訪れた場所の名称を言うことができない可能性がある。究極的に、患者は、徘徊し、会話に参加することができなくなり、気分が不安定になり、非協力的になり、ならびに膀胱および腸の制御を失う可能性がある。疾患の後期には、人は自分自身の面倒を見ることが全くできなくなる可能性がある。恐らく肺炎、または健康の重大に悪化した状態において起きるいくつかの他の問題から、その後、死が結果として起こり得る。人生の後期に障害を発生する人々は、より多くの場合、アルツハイマー病の結果としてよりもむしろ、他の疾病(心臓疾患など)により死去する。
【0020】
アルツハイマー病を診断するための臨床的基準は、現役の医師に周知である。アルツハイマー病は、(1)人が認知症の基準を満たすのに十分な認知低下を有するとき;(2)臨床経過がアルツハイマー病のものと一致するとき;および(3)他の脳疾患または他の過程が認知症についてのより良好な説明ではないときに、診断される。アルツハイマー病の診断が適正になされ得る前に、認知問題についての他の原因が排除されなければならない。それらは、パーキンソン病などの神経障害、脳血管疾患および卒中、脳腫瘍、血餅、および多発性硬化症、中枢神経系の感染性疾患、薬物療法の副作用、精神障害、物質乱用、代謝障害、外傷、毒性因子などを含む。要するに、正確な診断に到達するのに包括的な臨床評価が不可欠である。そのような評価は、少なくとも3つの主要な構成要素;(1)徹底的な全身の医学的精密検査;(2)記憶および思考の他の機能の試験を含む神経学的調査;ならびに(3)気分、不安、および考えの明確さを評価するための精神医学的評価を含むべきである。加えて、脳の画像化が、評価の目的のために時折使用される。画像化のために頻繁に使用される技術は、非造影CTスキャンおよびMRIを含む。他の画像化手順(SPECT、PET、およびfMRIなど)は、脳機能の情報(機能的神経画像化)を提供することができるが、使用される頻度はより低い。
【0021】
本発明の方法を実施する目的で、抗アルツハイマー処置(例えば、IVIG投与)を受けるアルツハイマー患者は、治療剤に由来する改善がより測定しやすいと考えられ、従って、将来の処置計画が適正に調整され得るように、典型的に、軽度から中等度の症状を伴う疾患の進行の、比較的に初期にある。いくつかの場合において、アルツハイマー病を発症し始めていると疑われるか、または本疾患を発症するリスクにあると考えられる個体もまた、疾患の発症に向かう進行が停止もしくは逆転され得るように、または疾患を発症するリスクが減少もしくは除去され得るように、そのような処置を受けてもよい。換言すると、抗アルツハイマー処置(例えば、IVIG投与)は、症状がないかまたは疑わしい症状のみを伴うリスクがある個体において、アルツハイマー病を予防するか、または、疾患の発症を阻害もしくは遅延する方法として適用され得る。
【0022】
いくつかの場合において、アルツハイマー病を処置するように意図された治療剤はその有効性について評価され、その場合、例えば、治療剤の効果に起因する脳室拡大速度における任意の変化を立証するために、アルツハイマー患者は比較の目的のための処置群および未処置群に入れられる。2つの群に割り当てられた患者は、好ましくは、全体的にみて妥当に一致した、年齢、性別、病歴、民族的背景、教育水準、アルツハイマー病の重症度などのような特徴を有するであろう。
【0023】
B.IVIG投与
現代医学において日常的に実施されるように、濃縮免疫グロブリン(特にIgG)の滅菌調製物は、以下の3つの主なクラス:免疫不全、炎症性および自己免疫疾患、ならびに急性感染症に分類される医学的状態を処置するために使用される。1つの一般的に使用されるIgG製品である静脈内免疫グロブリンまたはIVIGは、静脈内投与のために製剤化されている。濃縮免疫グロブリンはまた、皮下投与のために製剤化されてもよいが、議論を容易にするため、そのような皮下用に製剤化されたIgG組成物もまた、本出願において「IVIG」という用語に含まれる。本発明を実施する段階における使用に適するIVIG製品は、Baxter BioScience、Talecris Biotherapeutics、Grifols USA、Octapharma USA、およびZLB Behringを含む、多数の商業的供給者から取得されてもよい。
【0024】
疾患または状態を成功裡に処置するために、治療剤は有効量で投与されなければならない。「有効量」という用語は、対象において処置される医学的状態(例えば、アルツハイマー病)の検出可能な改善または矯正をもたらす、IVIG調製物などの治療剤の量を指す。対象に投与される有効量は、年齢、重量、疾患の重症度、投与の用量および頻度、ならびに治療への個体の応答における個体差を考慮して、医師により決定され得る。ある特定の態様において、IVIG製品は、毎回、患者の体重1キログラム当たり約0.2 g〜体重1キログラム当たり約4 gの範囲内で対象に投与され得、かつ、投与の頻度は、1週間に2回、1週間に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、または1カ月おきに1回の範囲に渡ってもよい。1例としてのIVIGの用量範囲は、患者の体重1kg当たり約0.1〜約1または約0.2〜約0.8 gの間であり、典型的に、1カ月に2回または1カ月に1回の頻度で投与される。例えば、IVIGは、1カ月に2回のスケジュールに従って、0.2、0.4、または0.8 g/kg体重の用量で何人かのアルツハイマー患者に投与される。他の場合において、IVIGは、1カ月に1回のスケジュールに従って、0.2、0.4、または0.8 g/kg体重の用量で投与される。
【0025】
アルツハイマー病のためのIVIG処置の持続時間は変動することができ:3もしくは6カ月のように短くてもよいし、または18カ月、2年、5年、もしくは10年のように長くてもよい。いくつかの場合において、IVIG処置は、患者の天寿の残りの間継続する可能性がある。IVIG処置の有効度は、投与過程全体の間、ある特定の期間の後に、例えば、18カ月処置計画では3カ月毎または6カ月毎に評価されてもよい。他の場合において、有効度は、より長い処置過程では9または12カ月毎に評価されてもよい。投与スケジュール(用量および頻度)は、任意の次の投与についてそれに応じて調整されてもよい。評価および調整のこのスキームは、アルツハイマー病のIVIG処置に限定される必要はなく:アルツハイマー病処置のために使用されるかまたは提案される任意の他の治療用脳保護剤が、同一または同様の様式で解析および追跡されてもよい。
【0026】
III.脳室容積をモニターする段階および治療有効性を評価する段階
多数の脳障害が、拡大した脳室腔を呈する。多くの場合、特にアルツハイマー病におけるそのような拡大は、脳萎縮、従って脳状態のさらなる悪化と相関すると信じられている。本発明者らは、脳室拡大速度がIVIG処置への応答と密接に相関すること、および、脳保護治療での治療的介入が、神経心理学的評価により示されるような認知機能における改善と相関する、減少した測定可能な脳室拡大または脳萎縮を示すことを発見した。人の認知能力を評価するために一般的に使用される方法は、施すのに時間がかかり、かつ解析において管理者の主観的判断に依拠するが、脳室容積における変化は、画像化法により容易に検出および定量化され得る。脳室拡大速度をモニターする段階は、従って、IVIG処置への応答を評価するためのはるかにより客観的かつ信頼性のある標準を提供する。
【0027】
脳室容積を可視化および定量化するために脳を画像化することについて、様々な方法が医療専門家に公知である。CTスキャンおよびMRIは、最も頻繁に使用される方法のひとつである。画像を示すため、および脳室腔における変化を解析するためのソフトウェアは、典型的に製造業者から画像化装置と共に提供されるが、特定の必要性に従って商業的供給者から取得してもよい。
【0028】
治療を受けているアルツハイマー患者へのIVIGなどの治療様式の効果を解析する目的、および将来の処置計画の任意の改変を決定する目的で、あらかじめ決定された時間スケジュールで脳室容積がモニターされる。例えば、IVIG処置中の患者は、処置の開始の直前である第1の時点に加え、処置の持続時間に渡って3カ月毎または6カ月毎に画像化されてもよい。彼らの脳室容積は各時点について測定され、かつ、変化を測定するために、各脳室容積について、前の時点での脳室容積との比較が、第2の時点から開始して行われる。この変化がその後、同様の状態であるが任意の抗アルツハイマー脳保護処置を伴わないアルツハイマー患者における脳室拡大の「期待される」速度に対して比較される。観察される変化が拡大の「期待される」速度より小さい場合、2つの時点間の期間に渡る処置が有効であるとみなされる。観察される変化が拡大の「期待される」速度と同等であるか、またはそれより大きい場合、2つの時点間の期間に渡る処置が有効でないとみなされる。種々の措置がその後、特定の状況に依存して講じられてもよい。例えば、相対的に低い用量または低い投与頻度が使用された後に処置が有効でないとみなされた場合、医師は患者のために用量または投与頻度を増加することを考え、かつ次の期間に渡って、改善された有効度の徴候について観察してもよい。他方で、治療様式が既に非常に高い用量および/または投与頻度で与えられた後、特に少なくとも一巡の処置および有効性判定段階の後に処置が有効でないとみなされた場合、医師は特定の患者について処置が有効でないことを理解し、かつ処置を中断するよう指図してもよい。同様に、治療が有効であるとみなされたとき、医師は、同一のスケジュールの処置を維持するか、または、ある場合では適宜、必要に応じて評価および調整のために処置計画をわずかに改変するかの選択肢を有し得る。
【0029】
患者の脳を保護することにより(単に症状を緩和することとは対照的に)アルツハイマー病を処置するように意図されたかまたは提案された治療剤の有効度を評価する目的で、アルツハイマー病を有する患者における脳室容積変化が、治療群(すなわち、治療剤を受けている群)と非治療群(すなわち、治療剤を受けていない群)との間で比較される。簡潔には、非治療群における脳室拡大の平均速度がある期間に渡って測定され、その後、ある期間に渡って測定された治療群における脳室拡大の平均速度と比較される。治療群が非治療群のものより低い平均脳室拡大速度を有する場合、治療剤は脳容積および機能を保護するために有効であるとみなされる。そうでない場合、治療は脳容積および機能を保護するために有効でないとみなされる。必要とはされないが、治療群および非治療群の脳室拡大速度が測定される期間は典型的に同一の長さであり、かつ同時に進む。比較および評価が正確であることを保証するために、治療および非治療群の各々は、例えば、少なくとも5、8、もしくは10人、または少なくとも12、15、もしくは20人の妥当な個体数を含むべきである。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、例証のみのために提供され、かつ限定のためには提供されない。当業者は、本質的に同一または同様の結果を生じるように変化または改変され得る様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0031】
実施例I:アルツハイマー病を有する患者における18カ月の連続した静脈内免疫グロブリン(IVIG)処置の後の神経心理学的成果
IVIG第2相試験設計:試験は、アルツハイマー病(AD)についてIVIG処置の安全性および有用性/無益性を試験する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群比較、追加型臨床治験であった。軽度から中等度のAD(MMSE14-26により判定される)を有する24人の被験者が治験に参加した。プラセボ群については、6カ月のプラセボ期が12カ月の非盲検延長と共に調節された。一次的臨床成果がADAS-CogおよびCGICにより測定され、陽性の成果は、IGIV群における6カ月での少なくとも1.7 ADAS-Cogポイントの差、およびCGICでの数値的な優位性としてあらかじめ定義された。二次的臨床成果は、NPI、ADCS-ADL、QOL、3MS、および神経心理学的バッテリーにより測定された。図1は、試験設計の概要を提供する。
【0032】
投与量範囲:2週間当たり1回または4週間当たり1回の頻度で、患者の体重1kg当たり0.2、0.4、または0.8グラムIVIGの単一用量でIVIG注入が与えられた。
【0033】
患者個体群統計およびベースラインの成績:表1および2に提供される。
【0034】
(表1)ベースラインの個体群統計
【0035】
(表2)ベースラインの成績
ADAS-Cog:アルツハイマー病評価尺度-認知下位尺度;ADL:日常生活動作;GDS:老人性うつ病尺度;NPI:神経精神症状評価;QOL:生活の質;3MS:改変簡易精神状態調査。
*ベースラインでのこれらの測定において群間で有意な差はなかった。
【0036】
結果:IVIG群(すべての用量がプールされたもの)をプラセボ群(最初の6カ月後にIVIGに切り換えられたもの)と比較した際、CGICスコア(図2)およびADAS-Cog(図3)における改善が観察された。同様に、IVIG群をプラセボ群と比較した際、種々の二次的測定においても改善が観察された(図4A〜4D)。
【0037】
様々な投薬スケジュールでのIVIG処置の効果を図5に示し、ベースラインから18カ月までのCGICスコアにおける平均変化を、プラセボ群および4つのIVIG群(0.8 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを2週間当たり1回;および0.2 g/kgを2週間当たり1回)の間で比較する。2週間毎に0.4 g/kgの注入を受けた群は、ベースラインのCGICスコアから最も著しい改善を示す。0.4 g/kg/2wk群を18カ月の過程に渡ってプラセボ群と比較した際、統計的有意の改善がすべての時点で観察される(図6)。
【0038】
図7は、プラセボ群を4つのIVIG群(0.8 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを2週間当たり1回;および0.2 g/kgを2週間当たり1回)と比較することにより、ベースラインから18カ月までのADAS-CogスコアへのIVIG処置の効果を示す。2週間毎に0.4 g/kgの注入を受けた群は再び、ベースラインのADAS-Cog結果から最も著しい改善を示す。
【0039】
図9〜12は、プラセボ群を4つのIVIG群(0.8 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを2週間当たり1回;および0.2 g/kgを2週間当たり1回)と比較することにより、それぞれADLおよび3MSの二次的測定へのIVIG処置の効果を示す。0.4 g/kg/2wk群が一貫して最高の改善を達成した。
【0040】
表3は、試験の18カ月でのレスポンダー解析を提供する。
【0041】
(表3)18カ月レスポンダー解析(応答についての基準=18カ月でCGICスコア≧−1)
・6カ月で0または1のCGICスコアを有する被験者の100%が、18カ月でレスポンダーであった。
・6カ月で0より小さいCGICスコアを有する被験者の0%が、18カ月でレスポンダーであった。
【0042】
安全性および認容性:24人の被験者のうち21人が18カ月の処置を完了した(12.5%が自然減)。648回の計画された注入のうち632回が成功裡に投与された(98.25%の服薬遵守)。処置に関連した重大な有害事象はなかった:1つのSAEが起きた(新たな発作性障害の発症)が、処置に関連してはいないとみなされた。IVIGを受けた被験者において期待された頻度より多い頻度で起きたAEは、非溶血性貧血(20.8%)および発疹(20.8%)を含んだ。IVIGは概して安全であり、かつ本試験においてAD患者に良好に認容された。
【0043】
結論:18カ月に渡るAD患者の連続したIVIG処置は、最初のプラセボ処置と比較して、CGIC、ADAS-Cog、ADL、およびNPI尺度に関して有意により良好な成果をもたらした。18カ月でIVIGに応答した被験者は、言語の機能および構成において、ならびに注意力、作動記憶、概念化、および言葉の流暢性の課題を含む実行機能の試験において、遂行がノンレスポンダーよりも有意に優れていた。IVIG 0.4g/kg/2W用量群を支持する、有意な用量依存性が観察された。IVIGは安全であり、かつ本試験においてAD患者に良好に認容された。この18カ月の試験の結果は、連続MRIにより測定された脳萎縮の速度と強く相関した。
【0044】
実施例II:静脈内免疫グロブリン処置はアルツハイマー病において脳室拡大および認知低下の速度を低下させる
目的:軽度から中等度のアルツハイマー病(AD)において脳室拡大速度への18カ月の静脈内免疫グロブリン(IVIG)処置の効果を検討するため;IVIGで処置されたAD患者において脳室拡大速度と臨床成果との間の相関を検討するため。
【0045】
正常な加齢の間の神経損失は脳萎縮(または収縮)を引き起こす。しかしながら、アルツハイマー病における神経変性は加速性脳萎縮を引き起こす。ヒトの頭蓋骨は閉ざされた空間であるため、脳萎縮は流体で満たされた脳室の進行性の拡大をもたらす。経時的な脳室拡大の速度は、アルツハイマー病進行速度の客観的測定値を提供する。
【0046】
様々な脳室拡大速度が、正常、軽度の認知障害(MCI)、およびアルツハイマー病の脳において観察されている。例えば、約6〜8%の年間脳室容積変化および約1〜2%の年間脳容積変化を有するMCIを伴う人々、ならびに約8〜12%(他は5〜16%の範囲を示す)の年間脳室容積変化および約2〜4%(他は1.4〜2.2%の範囲を示す)の年間脳容積変化を有するADを伴う人々と対照的に、正常な高齢者は、約3〜6%(他は1.5〜3%の範囲を示す)の年間脳室容積変化および約0.5〜1%(他は0.7%より小さい範囲を示す)の年間脳容積変化を有することが、文献において報告されている。
【0047】
脳室容積の測定は、脳萎縮をモニターするために使用され得る他の脳容積測定解析を上回るある特定の利点を有する。1つのそのような利点は、脳室容積測定がより好都合な信号対雑音特徴を有することである。例えば、海馬の容積測定は、2〜5%の測定誤差を伴い、AD患者において5%の年間変化を記録し、および全脳の容積測定は、0.5〜1%の測定誤差を伴い、AD患者において2〜4%の年間変化を記録するのに対して;脳室容積測定は、0.5〜1%の測定誤差を伴い、AD患者において8〜12%の年間変化を検出できることを、試験は示している。
【0048】
方法:すべてのスキャンを、3D-SPGR配列を用いて3T MRIスキャナー上で行った。FreesurferおよびBrain Ventricular Quantificationソフトウェアを用いて、脳室容積を定量化した。ベースライン容積およびスキャン間(interscan)間隔の積で割ったベースラインと18カ月の脳室容積との間の差から、脳室拡大速度(VER)を計算した。画像解析は、処置割り当ておよび臨床成果に対して盲検で行った。
【0049】
MRI脳画像および臨床成果データを、軽度から中等度のADの処置についてのGammagard IVIG(Baxter)の第2相試験において18カ月に渡って収集した。ベースラインの容積測定MRI、および試験参加の18カ月後の1回の経過観察MRIを完了した被験者が、本解析に含まれた。連続的に18カ月に渡ってIVIGで処置された被験者を、最初にプラセボで処置された被験者と比較することにより、脳室容積変化を解析した。
【0050】
MRI測定を3T GE Echospeed MRIスキャナー上で行った。脳容積全体を通して1 mmの厚さの128連続スライスを取得した。全脳および脳室容積測定には十分であるが、灰白質および白質の区分、ならびに詳細な小領域解析には最適以下である3D-SPGRシーケンスを使用した。画像データの後処理は、試験群割り当ておよび臨床成果に対して盲検で行った。脳室容積の自動定量化を、脳容積測定ソフトウェアパッケージであるFREESURFERを用いて最初に行った。BRAIN VENTRICULAR QUANTIFICATION (BVQ)ソフトウェアを用いて脳室容積測定を検証した。脳容積変化の長期的評価および頭蓋内容積全体の測定は、SIENAを用いて行った。
【0051】
結果:24人の試験参加者のうち20人が評価可能なMRIデータを有し、最初にプラセボに割り当てられた6人、およびIVIGに無作為化された14人を含んだ。IVIGに割り当てられたすべての被験者の間の平均年間VERは7%であり、プラセボ群における12%の速度より有意に低かった(p=0.048)。VERは18カ月で、CGIC(r=−0.58, p=0.006)およびADAS-Cog変化スコア(r=0.64, p=0.007)と有意に相関した。VERはIVIG用量と共に変動し、最も好都合な臨床成果を生じた用量であるIVIG 0.4g/kgを月2回受けた被験者において最も低かった(2.63%, p=0.048)。
【0052】
図13は、18カ月の試験の間にプラセボまたはIVIGを受けたAD患者の間で脳室容積における年間変化を比較しており、IVIG処置は有意に低下したVERを示す。図14は、18カ月の試験の間にプラセボまたはIVIGを受けたAD患者の間で全脳容積における変化を比較しており、IVIG処置は再度、有意に減少した速度の脳萎縮を示す。図15は、18カ月の試験において、VERにおける変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。図16は、18カ月の試験において、全脳容積における変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。
【0053】
結論および考察:容積測定MRIでの測定は、18カ月の連続したIVIG処置を伴うAD患者において脳室拡大および脳萎縮の速度における有意な減少を示した。IVIG処置の有効度は、IVIG用量と共に変動し、かつ減少した認知低下と相関した。脳萎縮へのIVIGの効果は、18カ月で臨床成果(ADAS-Cog, CGIC)と高度に相関した。これらの結果は、IVIG治療がAD患者において脳萎縮の速度を有効に減少させ、かつ疾患進行を阻害できることを示す。0.4g/kg/2wで処置されたAD患者における脳容積変化および臨床成果が、正常のものと比べても遜色ないことは、注目する価値がある。
【0054】
アルツハイマー病は個々の患者の間で変動する様々な速度で進行することもまた、観察された。しかしながら、ADの進行速度は、脳室容積および全脳容積における変化の速度と相関するように見える。18カ月の試験の間にベースラインの脳萎縮と脳室容積における変化との間の相関は確立されなかった。18カ月でベースラインの脳または脳室容積と脳室容積変化の速度との間の相関も見出されなかった。同様に、ベースラインの年齢、性別、推定されるIQ、または学歴との相関は見出されなかった。18カ月での容積測定結果は、従って、個々の患者の間での疾患の進行速度における既存の差よりもむしろ、IVIG処置の効果の指標である可能性がより高い。
【0055】
本出願において引用されるすべての特許、特許出願、および他の刊行物は、GenBankアクセッション番号を含めて、すべての目的のために全体が参照により組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2010年4月13日に出願された米国特許仮出願第61/323,739号に優先権を主張し、その内容は全体として参照により組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病は、530万人ものアメリカ人を苦しめる認知症の最も一般的な形態である。疾患は、神経細胞の死および神経伝達物質レベルにおける随伴性の減少をもたらす、脳におけるβ-アミロイド班の蓄積により引き起こされると一般に信じられている。記憶、認知、推理、および判断における機能障害が、情緒安定性における低下および行動の問題の発生と共に生じる。疾患は進行性であり、深在性の精神荒廃および究極的には死を導く。
【0003】
アルツハイマー病には公知の治癒法が存在しない。患者の介護は、本疾患の症状の管理に主として焦点を合わせている。アルツハイマー患者における疾患の進行は、脳組織容積における減少、または脳室容積の拡大に関して経時的にモニターされ得る。磁気共鳴画像法(MRI)などの科学技術によりもたらされ、これらの画像ベースのモニタリング技術は、脳状態における任意の変化を管理および定量化することの容易さにおいて有利である。β-アミロイドに対する抗体がヒト免疫グロブリン調製物(例えば、静脈内免疫グロブリンまたはIVIG)に存在し、かつβ-アミロイドの神経毒効果を阻害し得るという最近の発見が、アルツハイマー患者における臨床治験を先導する。疾患の安定化および認知能力における適度の改善が注目された。
【0004】
2006年に、2660万人のアルツハイマー病罹患者が世界中に存在した。2050年までに、全世界で予測的に85人に1人が診断されると考えられる。本疾患の悲惨な性質、多い患者人口、および介護者への極めて大きい負担を考慮すると、新たな、かつより有効な治療剤および方法についての差し迫った必要性が存在する。本発明は、この必要性および他の関連する必要性を満たすための改善を提供する。
【発明の概要】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、アルツハイマー病の脳保護処置の効果をモニターし、かつさらなる処置計画を策定することを手引きするための、脳室容積における変化の使用に関連する。1つの局面において、本発明は、処置を必要とする対象においてアルツハイマー病を処置するための方法を提供する。この方法は、特定の処置用量および/または頻度が有効であるか否かを処置の期間の後に判定するために有用であり、この判定がその後、将来の処置の改変を手引きするために使用される。典型的に、有効との判定がなされた場合、同一の用量および/または頻度が維持され;有効でないとの判定がなされた場合、その後の期間は、有効性を再び評価する前に、より高い用量および/または頻度が使用される。具体的には、本方法は以下の一連の段階を含む:(a)磁気共鳴画像法(MRI)により対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積のベースライン値を取得する段階;(b)第1の期間中にアルツハイマー病を処置する目的で対象に脳保護治療剤を投与する段階;(c)MRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の第1の中間値を取得する段階;(d)段階(c)由来の中間値を段階(a)由来のベースライン値と比較する段階;および(e)段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を増加する段階、または、段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【0006】
いくつかの態様において、段階(b)〜(d)は少なくとも1回さらに繰り返され、かつ、各繰り返しにおいて、段階(e)と同一の様式で治療剤の将来の投与を決定するために、最新の中間値が2番目に最新の中間値と比較される。
【0007】
いくつかの場合において、有効でないとの判定は、増加された用量および/または頻度スケジュールでの繰り返し処置の少なくとも一巡の後になされ(例えば、段階(b)〜(d)が既に少なくとも1回繰り返されたとき)、処置はその後中断されるであろう。これはしばしば、最新の用量および/または頻度が一般的に使用される用量および/または頻度範囲内で既に比較的高いときに見られる。そのように、任意の繰り返し中の、特許請求する方法の段階(d)がある中間値からその次の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが2つの中間値間の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、またはそれより大きく、かつ、脳保護治療剤の投与が用量または頻度において増加されているとき、前記方法は以下の段階をさらに含む:(f)治療剤が対象に投与される追加的な期間の後にMRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の追加的な中間値を取得する段階;(g)追加的な中間値をその前の中間値と比較する段階;および(h)段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する脳保護処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、治療剤のさらなる投与を中断する段階、または、段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【0008】
いくつかの態様において、時間間隔、例えば、第1、第2、または任意のその後の期間は、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月であってもよい。いくつかの態様において、治療剤は、免疫グロブリンGなどの免疫グロブリンベースの脳保護治療剤である。特定の態様において、治療剤は、静脈内に頻繁に投与されるIVIGである。いくつかの場合において、IVIGは、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与される。投与の頻度は、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回であってもよい。1つの例において、IVIGは、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される。
【0009】
別の局面において、本発明は、アルツハイマー病を処置するように意図された脳保護治療の有効性を評価するための方法を提供する。この方法は以下の段階を含む:(a)アルツハイマー病を患っているが治療を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の非治療的速度として脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;(b)アルツハイマー病を患っておりかつ治療を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の治療的速度として脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;および(c)治療的速度を非治療的速度と比較し、それにより治療の有効性を判定する段階。段階(a)および(b)における脳室容積は、磁気共鳴画像法(MRI)により測定される。治療的速度が非治療的速度より低いとき、治療は有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、治療は有効でないとみなされる。
【0010】
いくつかの態様において、段階(a)または(b)中の脳室容積における変化の速度は、約3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月の期間に渡って測定される。
【0011】
いくつかの態様において、治療は、免疫グロブリンGなどの免疫グロブリンベースの脳保護治療剤の投与による。1つの例において、治療は、好ましくは静脈内のIVIG投与である。例えば、IVIGは、1カ月当たりに、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与されてもよい。投与の頻度は、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回であってもよい。1つの例示的な処置計画において、IVIGは、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】18カ月IVIG試験設計の模式的表示である。
【図2】18カ月の試験の間、CGICスコアにおいてIVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図3】18カ月の試験の間、ADAS-Cogスコアにおいて、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4A】18カ月の試験の間、日常生活動作(ADL)において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4B】18カ月の試験の間、神経精神症状評価(NPI)において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4C】18カ月の試験の間、生活の質(QOL)の項目表(介護者)において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図4D】18カ月の試験の間、改変簡易精神(3MS)試験において、IVIG群およびプラセボ群を比較する。
【図5】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのCGICスコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図6】0から18カ月まで、CGICスコアにおいてプラセボ群およびIVIG 0.4g/kg/2wk群を比較する。
【図7】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのADAS-Cogスコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図8】0から18カ月まで、ADAS-Cogスコアにおいてプラセボ群およびIVIG 0.4g/kg/2wk群を比較する。
【図9】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのADL試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図10】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのNPI試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図11】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までのQOL-介護者試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図12】プラセボ群および4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)の0から18カ月までの3MS試験スコアにおける平均ベースライン変化を示す。
【図13】プラセボ群、4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)、およびすべてのIVIG群において、18カ月の試験の間の脳室容積における年間変化を示す。
【図14】プラセボ群、4つのIVIG群(0.8g/kg/4wk; 0.4g/kg/4wk; 0.4g/kg/2wk; 0.2g/gk/2wk)、およびすべてのIVIG群において全脳容積のパーセント変化を比較することにより、18カ月の試験におけるIVIG処置の効果を示す。
【図15】18カ月の試験において、脳室容積における変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。
【図16】18カ月の試験において、全脳容積における変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
「アルツハイマー病(AD)」とは、早期発症タイプはもっと早期に起こり得るが、典型的には65歳より上の年齢の人々の間で観察される認知症の一般的な形態である。不治で、不可逆性で、進行性の脳疾患であるアルツハイマー病は、ある特定の共通の症状に基づいて診断される。初期において、最も一般的に認識されるADの症状は、最近学習された事実を想起するのが困難であることなどの、記憶喪失である。医師は典型的に、行動評価および認知試験、多くの場合続いて脳スキャンで、ADの診断を確認するであろう。疾患が進行するにつれて、混乱、過敏性および攻撃性、気分変動、言語崩壊、長期記憶喪失、および患者の感覚低下故の一般的な引きこもりを含む、さらなる症状が明白になるであろう。本明細書において使用される際、アルツハイマー病またはADを患っている患者は、脳障害の任意の変種に苦しんでいてもよく、および現在使用される診断基準に従って診断される状態の任意の病期であってもよい。
【0014】
脳室系は、脳において脳脊髄液を含有する一連の構造である。脳室系は、4個の相互に連結した脳室を含み、かつ脊髄中心管と連続している。本明細書において使用される際、「脳室容積」または「脳室腔」という用語は、中に脳脊髄液が含有される脳室系の腔全体を指す。脳室腔は、CTスキャンおよび磁気共鳴画像法(MRI)などの画像化技術により可視化することができ、かつ種々のコンピュータソフトウェアの助けを借りて定量的に測定することができる。状態が進行するにつれて、脳室腔の拡大、しばしば連続的な過程を呈する多数の状態が公知である。「脳室拡大速度」という用語は、CTスキャンまたはMRIなどの画像化技術を通して定量化された変化により示される、特定の量の時間に渡る(例えば、1年当たりの)脳室容積の増加を指す。
【0015】
本明細書において使用される際、「免疫グロブリンベースの脳保護治療剤」とは、1つまたは複数の免疫グロブリンを含み、かつ、加速性脳収縮を含む状態(例えば、アルツハイマー病)を患っている患者を処置するため、そのような加速性収縮を予防、低減、または逆転するために使用される任意の治療用組成物を指す。例えば、そのような組成物は、天然に存在してもよく、組換えで産生されてもよく、または免疫グロブリンの部分(特に、その結合部分、例えば、FabもしくはF(ab')2断片、または一本鎖抗体)であってもよい、1つまたは複数の免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンG)を含んでもよい。そのような抗体ベースの脳保護治療剤の例は、例えば米国特許第2009/0155256号において見出され得る。
【0016】
「静脈内免疫グロブリン」または「IVIG」とは、多数の(多くの場合千人を上回る)血液供与者の血漿由来のプールされた免疫グロブリンG(IgG)免疫グロブリンを含有する血液製剤を指す。IVIGは、典型的に、無傷のFc依存性エフェクター機能を有する、95%より多い未改変IgG、およびほんの極微量の免疫グロブリンA(IgA)または免疫グロブリンM(IgM)を含有し、ある特定の医学的状態を処置する段階において使用される、無菌の、精製されたIgG製品である。「静脈内」という用語は、静脈内注入による投与を示すが、本用語が本特許出願において使用される際、IVIG組成物は、皮下投与を含む様々経路のために製剤化され、かつそれにより投与されるIgG組成物もまた包含する。
【0017】
治療レジメンが次の時期について調整されるべきか否かを判定する目的で治療受容者の脳室容積がモニターされる、アルツハイマー病の処置法を説明する文脈において使用されるとき、「アルツハイマー病を有するが疾患に対する脳保護治療を受けていない対象における脳室容積において期待される増加」とは、同一の長さの時間内に、抗アルツハイマー脳保護処置を受けていないアルツハイマー患者において予期されるであろう脳室拡大の量を指す。この脳室拡大の量は、平均速度での疾患の自然の進行によるものである。実際に、この量は、脳保護処置を受けているアルツハイマー患者(または処置された個体)とその他の点では比較可能な条件の下で観察した際、アルツハイマー病を有するが疾患について脳容積および機能の保護のための処置を受けていないか、または、脳容積を保護しない症状緩和処置(例えば、抗コリンエステラーゼまたはACEIおよびメマンチジン処置)のみを受けている、処置されていない個体群より計算される平均の量である。好ましくは、IVIGで処置された個体およびIVIGで処置されていない個体は、アルツハイマー病の同様の病期または重症度である点において、および疾患の持続時間、年齢、性別、病歴、民族的背景、教育の水準などの他の局面において妥当に一致しているべきである。処置された個体と処置されていない個体との間の脳室容積における変化は、そのような変化が起きる時間の長さを考慮に入れた後に比較されるべきである。例えば、平均的な処置されていないアルツハイマー病患者について期待される年間脳室拡大は、観察および計算をする実際の期間が1年より長かったりまたは短かったりし得るが、約10%と測定される。加えて、脳室拡大または脳萎縮の期待される速度を計算するために使用される処置されていない群は、例えば、少なくとも5または10人またはより多い個体を含む、妥当なサイズであることが好ましい。アルツハイマー病を有する処置されていない個体についての脳室容積増加および脳萎縮の平均速度は、当業者により測定されており、かつ周知である(例えば、Frisoni et al., 2010, Neurology 6:67-77を参照されたい)。
【0018】
発明の詳細な説明
I.序論
脳室拡大は、アルツハイマー病(AD)において脳萎縮の結果として起き、かつ、認知低下および増加するアルツハイマー神経病理と相関する。軽度から中等度のADを患っている個体の間で脳室拡大速度(VER)をモニターするために連続磁気共鳴画像法(MRI)を利用して、本発明者らは、静脈内免疫グロブリン(IVIG)免疫療法の効果を評価するための客観的手段としてVERを使用した。IVIG処置は、有意に減少した速度の脳室拡大を達成することが示されている。この効果は、IVIG投与量と共に変動し、かつ患者において減少した認知低下と相関するとして観察されている。これらの結果は、IVIG治療が、神経変性の特徴である脳萎縮の速度、従ってAD患者における疾患の進行を有意に減少させ得ることを示す。患者の脳機能を評価するために種々の認知試験が利用可能であるが、VERを定量的にモニターするためのMRIなどの画像化技術の使用は、脳保護治療に応答してAD患者の認知能力における任意の変化をモニターするための迅速かつ客観的な手段を提供する。画像化技術はまた、全脳容積の直接的な測定がAD患者における脳萎縮を示し、従って、ADを処置する段階における脳保護剤の治療有効性を示すことを可能にする。本発明者らは、いくらかの期間、例えば12カ月後に、脳保護処置を受けているAD患者の間で全脳容積における統計学的に有意な変化(全脳収縮速度の減少)を観察してきた。VERモニタリングは、全脳測定と比較してより感度が高く、かつ、脳保護処置の開始に続いて3カ月または6カ月以内などの、相対的により短い期間における脳容積変化の指標を提供することができる。VER法は従って、AD患者脳容積における変化、および脳保護治療の有効性を検出することについて相対的により迅速である。
【0019】
II.アルツハイマー病のIVIG処置
A.処置を受ける患者
本発明によるIVIG処置(または他の抗アルツハイマー脳保護治療剤)を受ける患者は、アルツハイマー病を患っていると診断されている。アルツハイマー病の発症は通常漸進的であり、かつ緩徐進行性である。記憶、特に短期記憶についての問題が、アルツハイマー病の経過の初期に一般的である。より少ない自発性、感情鈍麻、および社会的相互作用から引きこもる傾向などの軽度の人格変化もまた、疾病の初期に起きる可能性がある。疾患が進行するにつれて、抽象的思考および他の知的機能における問題が発生する。患者は、請求書に取り組むときの桁、読まれているものを理解すること、またはその日の仕事を組織化することに困難を有し始める可能性がある。激越、過敏性、爆発性人格異常、および適切に服を着る能力の減少などの、行動および外見におけるさらなる撹乱もまた、この時点で見られる可能性がある。障害の経過のより後に、罹患した個体は、何月もしくは何年であるかについて混乱するもしくは見当を失うようになる、どこに住んでいるかを正確に説明することができない、または訪れた場所の名称を言うことができない可能性がある。究極的に、患者は、徘徊し、会話に参加することができなくなり、気分が不安定になり、非協力的になり、ならびに膀胱および腸の制御を失う可能性がある。疾患の後期には、人は自分自身の面倒を見ることが全くできなくなる可能性がある。恐らく肺炎、または健康の重大に悪化した状態において起きるいくつかの他の問題から、その後、死が結果として起こり得る。人生の後期に障害を発生する人々は、より多くの場合、アルツハイマー病の結果としてよりもむしろ、他の疾病(心臓疾患など)により死去する。
【0020】
アルツハイマー病を診断するための臨床的基準は、現役の医師に周知である。アルツハイマー病は、(1)人が認知症の基準を満たすのに十分な認知低下を有するとき;(2)臨床経過がアルツハイマー病のものと一致するとき;および(3)他の脳疾患または他の過程が認知症についてのより良好な説明ではないときに、診断される。アルツハイマー病の診断が適正になされ得る前に、認知問題についての他の原因が排除されなければならない。それらは、パーキンソン病などの神経障害、脳血管疾患および卒中、脳腫瘍、血餅、および多発性硬化症、中枢神経系の感染性疾患、薬物療法の副作用、精神障害、物質乱用、代謝障害、外傷、毒性因子などを含む。要するに、正確な診断に到達するのに包括的な臨床評価が不可欠である。そのような評価は、少なくとも3つの主要な構成要素;(1)徹底的な全身の医学的精密検査;(2)記憶および思考の他の機能の試験を含む神経学的調査;ならびに(3)気分、不安、および考えの明確さを評価するための精神医学的評価を含むべきである。加えて、脳の画像化が、評価の目的のために時折使用される。画像化のために頻繁に使用される技術は、非造影CTスキャンおよびMRIを含む。他の画像化手順(SPECT、PET、およびfMRIなど)は、脳機能の情報(機能的神経画像化)を提供することができるが、使用される頻度はより低い。
【0021】
本発明の方法を実施する目的で、抗アルツハイマー処置(例えば、IVIG投与)を受けるアルツハイマー患者は、治療剤に由来する改善がより測定しやすいと考えられ、従って、将来の処置計画が適正に調整され得るように、典型的に、軽度から中等度の症状を伴う疾患の進行の、比較的に初期にある。いくつかの場合において、アルツハイマー病を発症し始めていると疑われるか、または本疾患を発症するリスクにあると考えられる個体もまた、疾患の発症に向かう進行が停止もしくは逆転され得るように、または疾患を発症するリスクが減少もしくは除去され得るように、そのような処置を受けてもよい。換言すると、抗アルツハイマー処置(例えば、IVIG投与)は、症状がないかまたは疑わしい症状のみを伴うリスクがある個体において、アルツハイマー病を予防するか、または、疾患の発症を阻害もしくは遅延する方法として適用され得る。
【0022】
いくつかの場合において、アルツハイマー病を処置するように意図された治療剤はその有効性について評価され、その場合、例えば、治療剤の効果に起因する脳室拡大速度における任意の変化を立証するために、アルツハイマー患者は比較の目的のための処置群および未処置群に入れられる。2つの群に割り当てられた患者は、好ましくは、全体的にみて妥当に一致した、年齢、性別、病歴、民族的背景、教育水準、アルツハイマー病の重症度などのような特徴を有するであろう。
【0023】
B.IVIG投与
現代医学において日常的に実施されるように、濃縮免疫グロブリン(特にIgG)の滅菌調製物は、以下の3つの主なクラス:免疫不全、炎症性および自己免疫疾患、ならびに急性感染症に分類される医学的状態を処置するために使用される。1つの一般的に使用されるIgG製品である静脈内免疫グロブリンまたはIVIGは、静脈内投与のために製剤化されている。濃縮免疫グロブリンはまた、皮下投与のために製剤化されてもよいが、議論を容易にするため、そのような皮下用に製剤化されたIgG組成物もまた、本出願において「IVIG」という用語に含まれる。本発明を実施する段階における使用に適するIVIG製品は、Baxter BioScience、Talecris Biotherapeutics、Grifols USA、Octapharma USA、およびZLB Behringを含む、多数の商業的供給者から取得されてもよい。
【0024】
疾患または状態を成功裡に処置するために、治療剤は有効量で投与されなければならない。「有効量」という用語は、対象において処置される医学的状態(例えば、アルツハイマー病)の検出可能な改善または矯正をもたらす、IVIG調製物などの治療剤の量を指す。対象に投与される有効量は、年齢、重量、疾患の重症度、投与の用量および頻度、ならびに治療への個体の応答における個体差を考慮して、医師により決定され得る。ある特定の態様において、IVIG製品は、毎回、患者の体重1キログラム当たり約0.2 g〜体重1キログラム当たり約4 gの範囲内で対象に投与され得、かつ、投与の頻度は、1週間に2回、1週間に1回、1カ月に2回、1カ月に1回、または1カ月おきに1回の範囲に渡ってもよい。1例としてのIVIGの用量範囲は、患者の体重1kg当たり約0.1〜約1または約0.2〜約0.8 gの間であり、典型的に、1カ月に2回または1カ月に1回の頻度で投与される。例えば、IVIGは、1カ月に2回のスケジュールに従って、0.2、0.4、または0.8 g/kg体重の用量で何人かのアルツハイマー患者に投与される。他の場合において、IVIGは、1カ月に1回のスケジュールに従って、0.2、0.4、または0.8 g/kg体重の用量で投与される。
【0025】
アルツハイマー病のためのIVIG処置の持続時間は変動することができ:3もしくは6カ月のように短くてもよいし、または18カ月、2年、5年、もしくは10年のように長くてもよい。いくつかの場合において、IVIG処置は、患者の天寿の残りの間継続する可能性がある。IVIG処置の有効度は、投与過程全体の間、ある特定の期間の後に、例えば、18カ月処置計画では3カ月毎または6カ月毎に評価されてもよい。他の場合において、有効度は、より長い処置過程では9または12カ月毎に評価されてもよい。投与スケジュール(用量および頻度)は、任意の次の投与についてそれに応じて調整されてもよい。評価および調整のこのスキームは、アルツハイマー病のIVIG処置に限定される必要はなく:アルツハイマー病処置のために使用されるかまたは提案される任意の他の治療用脳保護剤が、同一または同様の様式で解析および追跡されてもよい。
【0026】
III.脳室容積をモニターする段階および治療有効性を評価する段階
多数の脳障害が、拡大した脳室腔を呈する。多くの場合、特にアルツハイマー病におけるそのような拡大は、脳萎縮、従って脳状態のさらなる悪化と相関すると信じられている。本発明者らは、脳室拡大速度がIVIG処置への応答と密接に相関すること、および、脳保護治療での治療的介入が、神経心理学的評価により示されるような認知機能における改善と相関する、減少した測定可能な脳室拡大または脳萎縮を示すことを発見した。人の認知能力を評価するために一般的に使用される方法は、施すのに時間がかかり、かつ解析において管理者の主観的判断に依拠するが、脳室容積における変化は、画像化法により容易に検出および定量化され得る。脳室拡大速度をモニターする段階は、従って、IVIG処置への応答を評価するためのはるかにより客観的かつ信頼性のある標準を提供する。
【0027】
脳室容積を可視化および定量化するために脳を画像化することについて、様々な方法が医療専門家に公知である。CTスキャンおよびMRIは、最も頻繁に使用される方法のひとつである。画像を示すため、および脳室腔における変化を解析するためのソフトウェアは、典型的に製造業者から画像化装置と共に提供されるが、特定の必要性に従って商業的供給者から取得してもよい。
【0028】
治療を受けているアルツハイマー患者へのIVIGなどの治療様式の効果を解析する目的、および将来の処置計画の任意の改変を決定する目的で、あらかじめ決定された時間スケジュールで脳室容積がモニターされる。例えば、IVIG処置中の患者は、処置の開始の直前である第1の時点に加え、処置の持続時間に渡って3カ月毎または6カ月毎に画像化されてもよい。彼らの脳室容積は各時点について測定され、かつ、変化を測定するために、各脳室容積について、前の時点での脳室容積との比較が、第2の時点から開始して行われる。この変化がその後、同様の状態であるが任意の抗アルツハイマー脳保護処置を伴わないアルツハイマー患者における脳室拡大の「期待される」速度に対して比較される。観察される変化が拡大の「期待される」速度より小さい場合、2つの時点間の期間に渡る処置が有効であるとみなされる。観察される変化が拡大の「期待される」速度と同等であるか、またはそれより大きい場合、2つの時点間の期間に渡る処置が有効でないとみなされる。種々の措置がその後、特定の状況に依存して講じられてもよい。例えば、相対的に低い用量または低い投与頻度が使用された後に処置が有効でないとみなされた場合、医師は患者のために用量または投与頻度を増加することを考え、かつ次の期間に渡って、改善された有効度の徴候について観察してもよい。他方で、治療様式が既に非常に高い用量および/または投与頻度で与えられた後、特に少なくとも一巡の処置および有効性判定段階の後に処置が有効でないとみなされた場合、医師は特定の患者について処置が有効でないことを理解し、かつ処置を中断するよう指図してもよい。同様に、治療が有効であるとみなされたとき、医師は、同一のスケジュールの処置を維持するか、または、ある場合では適宜、必要に応じて評価および調整のために処置計画をわずかに改変するかの選択肢を有し得る。
【0029】
患者の脳を保護することにより(単に症状を緩和することとは対照的に)アルツハイマー病を処置するように意図されたかまたは提案された治療剤の有効度を評価する目的で、アルツハイマー病を有する患者における脳室容積変化が、治療群(すなわち、治療剤を受けている群)と非治療群(すなわち、治療剤を受けていない群)との間で比較される。簡潔には、非治療群における脳室拡大の平均速度がある期間に渡って測定され、その後、ある期間に渡って測定された治療群における脳室拡大の平均速度と比較される。治療群が非治療群のものより低い平均脳室拡大速度を有する場合、治療剤は脳容積および機能を保護するために有効であるとみなされる。そうでない場合、治療は脳容積および機能を保護するために有効でないとみなされる。必要とはされないが、治療群および非治療群の脳室拡大速度が測定される期間は典型的に同一の長さであり、かつ同時に進む。比較および評価が正確であることを保証するために、治療および非治療群の各々は、例えば、少なくとも5、8、もしくは10人、または少なくとも12、15、もしくは20人の妥当な個体数を含むべきである。
【実施例】
【0030】
以下の実施例は、例証のみのために提供され、かつ限定のためには提供されない。当業者は、本質的に同一または同様の結果を生じるように変化または改変され得る様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0031】
実施例I:アルツハイマー病を有する患者における18カ月の連続した静脈内免疫グロブリン(IVIG)処置の後の神経心理学的成果
IVIG第2相試験設計:試験は、アルツハイマー病(AD)についてIVIG処置の安全性および有用性/無益性を試験する、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群比較、追加型臨床治験であった。軽度から中等度のAD(MMSE14-26により判定される)を有する24人の被験者が治験に参加した。プラセボ群については、6カ月のプラセボ期が12カ月の非盲検延長と共に調節された。一次的臨床成果がADAS-CogおよびCGICにより測定され、陽性の成果は、IGIV群における6カ月での少なくとも1.7 ADAS-Cogポイントの差、およびCGICでの数値的な優位性としてあらかじめ定義された。二次的臨床成果は、NPI、ADCS-ADL、QOL、3MS、および神経心理学的バッテリーにより測定された。図1は、試験設計の概要を提供する。
【0032】
投与量範囲:2週間当たり1回または4週間当たり1回の頻度で、患者の体重1kg当たり0.2、0.4、または0.8グラムIVIGの単一用量でIVIG注入が与えられた。
【0033】
患者個体群統計およびベースラインの成績:表1および2に提供される。
【0034】
(表1)ベースラインの個体群統計
【0035】
(表2)ベースラインの成績
ADAS-Cog:アルツハイマー病評価尺度-認知下位尺度;ADL:日常生活動作;GDS:老人性うつ病尺度;NPI:神経精神症状評価;QOL:生活の質;3MS:改変簡易精神状態調査。
*ベースラインでのこれらの測定において群間で有意な差はなかった。
【0036】
結果:IVIG群(すべての用量がプールされたもの)をプラセボ群(最初の6カ月後にIVIGに切り換えられたもの)と比較した際、CGICスコア(図2)およびADAS-Cog(図3)における改善が観察された。同様に、IVIG群をプラセボ群と比較した際、種々の二次的測定においても改善が観察された(図4A〜4D)。
【0037】
様々な投薬スケジュールでのIVIG処置の効果を図5に示し、ベースラインから18カ月までのCGICスコアにおける平均変化を、プラセボ群および4つのIVIG群(0.8 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを2週間当たり1回;および0.2 g/kgを2週間当たり1回)の間で比較する。2週間毎に0.4 g/kgの注入を受けた群は、ベースラインのCGICスコアから最も著しい改善を示す。0.4 g/kg/2wk群を18カ月の過程に渡ってプラセボ群と比較した際、統計的有意の改善がすべての時点で観察される(図6)。
【0038】
図7は、プラセボ群を4つのIVIG群(0.8 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを2週間当たり1回;および0.2 g/kgを2週間当たり1回)と比較することにより、ベースラインから18カ月までのADAS-CogスコアへのIVIG処置の効果を示す。2週間毎に0.4 g/kgの注入を受けた群は再び、ベースラインのADAS-Cog結果から最も著しい改善を示す。
【0039】
図9〜12は、プラセボ群を4つのIVIG群(0.8 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを4週間当たり1回;0.4 g/kgを2週間当たり1回;および0.2 g/kgを2週間当たり1回)と比較することにより、それぞれADLおよび3MSの二次的測定へのIVIG処置の効果を示す。0.4 g/kg/2wk群が一貫して最高の改善を達成した。
【0040】
表3は、試験の18カ月でのレスポンダー解析を提供する。
【0041】
(表3)18カ月レスポンダー解析(応答についての基準=18カ月でCGICスコア≧−1)
・6カ月で0または1のCGICスコアを有する被験者の100%が、18カ月でレスポンダーであった。
・6カ月で0より小さいCGICスコアを有する被験者の0%が、18カ月でレスポンダーであった。
【0042】
安全性および認容性:24人の被験者のうち21人が18カ月の処置を完了した(12.5%が自然減)。648回の計画された注入のうち632回が成功裡に投与された(98.25%の服薬遵守)。処置に関連した重大な有害事象はなかった:1つのSAEが起きた(新たな発作性障害の発症)が、処置に関連してはいないとみなされた。IVIGを受けた被験者において期待された頻度より多い頻度で起きたAEは、非溶血性貧血(20.8%)および発疹(20.8%)を含んだ。IVIGは概して安全であり、かつ本試験においてAD患者に良好に認容された。
【0043】
結論:18カ月に渡るAD患者の連続したIVIG処置は、最初のプラセボ処置と比較して、CGIC、ADAS-Cog、ADL、およびNPI尺度に関して有意により良好な成果をもたらした。18カ月でIVIGに応答した被験者は、言語の機能および構成において、ならびに注意力、作動記憶、概念化、および言葉の流暢性の課題を含む実行機能の試験において、遂行がノンレスポンダーよりも有意に優れていた。IVIG 0.4g/kg/2W用量群を支持する、有意な用量依存性が観察された。IVIGは安全であり、かつ本試験においてAD患者に良好に認容された。この18カ月の試験の結果は、連続MRIにより測定された脳萎縮の速度と強く相関した。
【0044】
実施例II:静脈内免疫グロブリン処置はアルツハイマー病において脳室拡大および認知低下の速度を低下させる
目的:軽度から中等度のアルツハイマー病(AD)において脳室拡大速度への18カ月の静脈内免疫グロブリン(IVIG)処置の効果を検討するため;IVIGで処置されたAD患者において脳室拡大速度と臨床成果との間の相関を検討するため。
【0045】
正常な加齢の間の神経損失は脳萎縮(または収縮)を引き起こす。しかしながら、アルツハイマー病における神経変性は加速性脳萎縮を引き起こす。ヒトの頭蓋骨は閉ざされた空間であるため、脳萎縮は流体で満たされた脳室の進行性の拡大をもたらす。経時的な脳室拡大の速度は、アルツハイマー病進行速度の客観的測定値を提供する。
【0046】
様々な脳室拡大速度が、正常、軽度の認知障害(MCI)、およびアルツハイマー病の脳において観察されている。例えば、約6〜8%の年間脳室容積変化および約1〜2%の年間脳容積変化を有するMCIを伴う人々、ならびに約8〜12%(他は5〜16%の範囲を示す)の年間脳室容積変化および約2〜4%(他は1.4〜2.2%の範囲を示す)の年間脳容積変化を有するADを伴う人々と対照的に、正常な高齢者は、約3〜6%(他は1.5〜3%の範囲を示す)の年間脳室容積変化および約0.5〜1%(他は0.7%より小さい範囲を示す)の年間脳容積変化を有することが、文献において報告されている。
【0047】
脳室容積の測定は、脳萎縮をモニターするために使用され得る他の脳容積測定解析を上回るある特定の利点を有する。1つのそのような利点は、脳室容積測定がより好都合な信号対雑音特徴を有することである。例えば、海馬の容積測定は、2〜5%の測定誤差を伴い、AD患者において5%の年間変化を記録し、および全脳の容積測定は、0.5〜1%の測定誤差を伴い、AD患者において2〜4%の年間変化を記録するのに対して;脳室容積測定は、0.5〜1%の測定誤差を伴い、AD患者において8〜12%の年間変化を検出できることを、試験は示している。
【0048】
方法:すべてのスキャンを、3D-SPGR配列を用いて3T MRIスキャナー上で行った。FreesurferおよびBrain Ventricular Quantificationソフトウェアを用いて、脳室容積を定量化した。ベースライン容積およびスキャン間(interscan)間隔の積で割ったベースラインと18カ月の脳室容積との間の差から、脳室拡大速度(VER)を計算した。画像解析は、処置割り当ておよび臨床成果に対して盲検で行った。
【0049】
MRI脳画像および臨床成果データを、軽度から中等度のADの処置についてのGammagard IVIG(Baxter)の第2相試験において18カ月に渡って収集した。ベースラインの容積測定MRI、および試験参加の18カ月後の1回の経過観察MRIを完了した被験者が、本解析に含まれた。連続的に18カ月に渡ってIVIGで処置された被験者を、最初にプラセボで処置された被験者と比較することにより、脳室容積変化を解析した。
【0050】
MRI測定を3T GE Echospeed MRIスキャナー上で行った。脳容積全体を通して1 mmの厚さの128連続スライスを取得した。全脳および脳室容積測定には十分であるが、灰白質および白質の区分、ならびに詳細な小領域解析には最適以下である3D-SPGRシーケンスを使用した。画像データの後処理は、試験群割り当ておよび臨床成果に対して盲検で行った。脳室容積の自動定量化を、脳容積測定ソフトウェアパッケージであるFREESURFERを用いて最初に行った。BRAIN VENTRICULAR QUANTIFICATION (BVQ)ソフトウェアを用いて脳室容積測定を検証した。脳容積変化の長期的評価および頭蓋内容積全体の測定は、SIENAを用いて行った。
【0051】
結果:24人の試験参加者のうち20人が評価可能なMRIデータを有し、最初にプラセボに割り当てられた6人、およびIVIGに無作為化された14人を含んだ。IVIGに割り当てられたすべての被験者の間の平均年間VERは7%であり、プラセボ群における12%の速度より有意に低かった(p=0.048)。VERは18カ月で、CGIC(r=−0.58, p=0.006)およびADAS-Cog変化スコア(r=0.64, p=0.007)と有意に相関した。VERはIVIG用量と共に変動し、最も好都合な臨床成果を生じた用量であるIVIG 0.4g/kgを月2回受けた被験者において最も低かった(2.63%, p=0.048)。
【0052】
図13は、18カ月の試験の間にプラセボまたはIVIGを受けたAD患者の間で脳室容積における年間変化を比較しており、IVIG処置は有意に低下したVERを示す。図14は、18カ月の試験の間にプラセボまたはIVIGを受けたAD患者の間で全脳容積における変化を比較しており、IVIG処置は再度、有意に減少した速度の脳萎縮を示す。図15は、18カ月の試験において、VERにおける変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。図16は、18カ月の試験において、全脳容積における変化と2つの認知試験スコア(CGICおよびADAS-Cog)との間の相関を示す。
【0053】
結論および考察:容積測定MRIでの測定は、18カ月の連続したIVIG処置を伴うAD患者において脳室拡大および脳萎縮の速度における有意な減少を示した。IVIG処置の有効度は、IVIG用量と共に変動し、かつ減少した認知低下と相関した。脳萎縮へのIVIGの効果は、18カ月で臨床成果(ADAS-Cog, CGIC)と高度に相関した。これらの結果は、IVIG治療がAD患者において脳萎縮の速度を有効に減少させ、かつ疾患進行を阻害できることを示す。0.4g/kg/2wで処置されたAD患者における脳容積変化および臨床成果が、正常のものと比べても遜色ないことは、注目する価値がある。
【0054】
アルツハイマー病は個々の患者の間で変動する様々な速度で進行することもまた、観察された。しかしながら、ADの進行速度は、脳室容積および全脳容積における変化の速度と相関するように見える。18カ月の試験の間にベースラインの脳萎縮と脳室容積における変化との間の相関は確立されなかった。18カ月でベースラインの脳または脳室容積と脳室容積変化の速度との間の相関も見出されなかった。同様に、ベースラインの年齢、性別、推定されるIQ、または学歴との相関は見出されなかった。18カ月での容積測定結果は、従って、個々の患者の間での疾患の進行速度における既存の差よりもむしろ、IVIG処置の効果の指標である可能性がより高い。
【0055】
本出願において引用されるすべての特許、特許出願、および他の刊行物は、GenBankアクセッション番号を含めて、すべての目的のために全体が参照により組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする対象においてアルツハイマー病を処置するための方法であって、以下の一連の段階を含む、方法:
(a)磁気共鳴画像法(MRI)により対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積のベースライン値を取得する段階;
(b)第1の期間中にアルツハイマー病を処置する目的で対象に脳保護治療剤を投与する段階;
(c)MRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の第1の中間値を取得する段階;
(d)段階(c)由来の中間値を段階(a)由来のベースライン値と比較する段階;および
(e)段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を増加する段階、または
段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【請求項2】
段階(b)〜(d)が少なくとも1回さらに繰り返され、かつ、各繰り返しにおいて、段階(e)と同一の様式で治療剤の将来の投与を決定するために、最新の中間値が2番目に最新の中間値と比較される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
任意の繰り返し中の段階(d)がある中間値からその次の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが2つの中間値間の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、またはそれより大きく、かつ、脳保護治療剤の投与が用量または頻度において増加される、以下の段階をさらに含む請求項1または2記載の方法:
(f)治療剤が対象に投与される追加的な期間の後にMRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の追加的な中間値を取得する段階;
(g)追加的な中間値をその前の中間値と比較する段階;および
(h)段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する脳保護処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、治療剤のさらなる投与を中断する段階、または
段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【請求項4】
第1の期間が、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第2またはその後の期間が、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月である、請求項1または3記載の方法。
【請求項6】
治療剤が、免疫グロブリンベースの脳保護治療剤である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
治療剤が、静脈内免疫グロブリン(IVIG)である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
IVIGが、1カ月当たりに、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
IVIGが、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回投与される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
IVIGが、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
以下の段階を含む、アルツハイマー病を処置するように意図された治療の有効性を評価するための方法であって、段階(a)および(b)における脳室容積が磁気共鳴画像法(MRI)により測定され、治療的速度が非治療的速度より低いとき、治療が有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、治療が有効でないとみなされる、前記方法:
(a)アルツハイマー病を患っているが治療を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の非治療的速度として、脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;
(b)アルツハイマー病を患っておりかつ治療を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の治療的速度として、脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;および
(c)治療的速度を非治療的速度と比較し、それにより治療の有効性を判定する段階。
【請求項12】
治療が、免疫グロブリンベースの脳保護治療剤の投与である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
治療が、静脈内免疫グロブリン(IVIG)投与である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
IVIGが、1カ月当たりに、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
IVIGが、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回投与される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
IVIGが、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
段階(a)または(b)における、脳室容積における変化の速度が、約3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月の期間に渡って測定される、請求項11記載の方法。
【請求項1】
処置を必要とする対象においてアルツハイマー病を処置するための方法であって、以下の一連の段階を含む、方法:
(a)磁気共鳴画像法(MRI)により対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積のベースライン値を取得する段階;
(b)第1の期間中にアルツハイマー病を処置する目的で対象に脳保護治療剤を投与する段階;
(c)MRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の第1の中間値を取得する段階;
(d)段階(c)由来の中間値を段階(a)由来のベースライン値と比較する段階;および
(e)段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を増加する段階、または
段階(d)がベースライン値から第1の中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが第1の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【請求項2】
段階(b)〜(d)が少なくとも1回さらに繰り返され、かつ、各繰り返しにおいて、段階(e)と同一の様式で治療剤の将来の投与を決定するために、最新の中間値が2番目に最新の中間値と比較される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
任意の繰り返し中の段階(d)がある中間値からその次の中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが2つの中間値間の期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、またはそれより大きく、かつ、脳保護治療剤の投与が用量または頻度において増加される、以下の段階をさらに含む請求項1または2記載の方法:
(f)治療剤が対象に投与される追加的な期間の後にMRIにより対象の脳における脳室容積を測定し、それにより脳室容積の追加的な中間値を取得する段階;
(g)追加的な中間値をその前の中間値と比較する段階;および
(h)段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示し、かつ、該増加が、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する脳保護処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加と同等であるか、もしくはそれより大きいとき、治療剤のさらなる投与を中断する段階、または
段階(g)が前の中間値から追加的な中間値への増加を示さないか、もしくは、アルツハイマー病を有するが追加的な期間と同一の持続時間の期間内に疾患に対する処置を受けていない対象における脳室容積において期待される増加より小さい増加を示すとき、用量もしくは頻度において脳保護治療剤の投与を維持する段階。
【請求項4】
第1の期間が、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
第2またはその後の期間が、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月である、請求項1または3記載の方法。
【請求項6】
治療剤が、免疫グロブリンベースの脳保護治療剤である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
治療剤が、静脈内免疫グロブリン(IVIG)である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
IVIGが、1カ月当たりに、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
IVIGが、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回投与される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
IVIGが、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
以下の段階を含む、アルツハイマー病を処置するように意図された治療の有効性を評価するための方法であって、段階(a)および(b)における脳室容積が磁気共鳴画像法(MRI)により測定され、治療的速度が非治療的速度より低いとき、治療が有効であるとみなされ、および治療的速度が非治療的速度と同等であるか、またはそれより大きいとき、治療が有効でないとみなされる、前記方法:
(a)アルツハイマー病を患っているが治療を受けていない対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の非治療的速度として、脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;
(b)アルツハイマー病を患っておりかつ治療を受けている対象の脳室容積における変化の速度を測定し、それにより脳室容積変化の治療的速度として、脳室容積における変化の平均速度を取得する段階;および
(c)治療的速度を非治療的速度と比較し、それにより治療の有効性を判定する段階。
【請求項12】
治療が、免疫グロブリンベースの脳保護治療剤の投与である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
治療が、静脈内免疫グロブリン(IVIG)投与である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
IVIGが、1カ月当たりに、対象の体重1kg当たり約0.2〜2グラム投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
IVIGが、1週間に1回、1週間に2回、1カ月に1回、または1カ月に2回投与される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
IVIGが、1カ月に2回、対象の体重1kg当たり約0.4グラム投与される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
段階(a)または(b)における、脳室容積における変化の速度が、約3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、または18カ月の期間に渡って測定される、請求項11記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−210413(P2012−210413A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115203(P2012−115203)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2012−539095(P2012−539095)の分割
【原出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(512107787)バクスター ヘルスケア エス.エー. (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2012−539095(P2012−539095)の分割
【原出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(512107787)バクスター ヘルスケア エス.エー. (2)
【Fターム(参考)】
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