説明

アルテミシニンのアーテスニックアシドへの単一ポット転換

【課題】アルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換のための、単一ポットプロセスを提供すること。
【解決手段】本発明は、室温での還元とそれに続く還元された生成物のエステル化を含む、アルテミシニンからのアーテスニックアシドの調製のための単一ポットプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテミシニンからアーテスニックアシド(artesunic acid)を調製するための単一ポットプロセスに関する。アーテスニックアシドは、ジヒドロアルテミニシニンの10α−ヘミスクシネートエステルである。アーテスニックアシドおよびアーテスネートは、それぞれジヒドロアルテミシニンヘミスクシネートおよびそのナトリウム塩の慣用名である。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、原虫寄生体、特に、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)によって引き起こされる。マラリアの予防および治療用の市販薬の範囲は限られており、薬剤抵抗性の問題がある。アルテミシニンおよびその誘導体:アーテメーターおよびアーテエーター(油溶性)、アーテリネートおよびアーテスネート(水溶性)は、クソニンジン(Artemisia ammua)に由来する抗マラリア化合物の類であり、現在その有望視されている活性を提供中であり、合併症のない/重症および合併症のある/大脳および多薬剤耐性マラリアの治療に使用されている。出版物に記述された、これらの化合物の化学および抗原虫活性作用は、引用参考文献としてリストされている。
【0003】
水不溶性のアーテスニックアシドは、通常、錠剤の形状で経口的に、または坐剤の形状で経直腸的投与されるが、水溶性のアーテスネートは静脈内に投与される。
【0004】
アーテスニックアシドは、ジヒドロアルテミシニンの多くの他のC10−エステルおよびC10−エーテル誘導体とともに、中国の科学者により、1979年の終わりから1980年の初頭にかけて初めて調製された。シャオフォン(Shaofeng)ら、「Hラベリング・オブ・QHS・デリバティブズ(H Labeling of QHS Derivatives)」、(Bull. Chin. Materia Medica)1981年、第6巻、第4号、p.25−27、および、リ(Li)ら、Synthesis of Ethers. Carboxylic esters and carbonates of Dihydroartemisinin、(Acta Pharm. Sin)1981年、第16巻、第6号、p.429−39は、ピリジン中での無水コハク酸を用いたジヒドロアルテミシニンのアシル化によるアーテスニックアシドの調製を記述している。上記の出版物は種々のジヒドロアルテミシニンC10−エステルの調製のための一般的な方法を記述しており、またジヒドロアルテミシニンおよび無水コハクをピリジン中で30℃において24時間加熱することにより、アーテスニックアシドを60%の収率で調製するプロセスを提供している。
【0005】
イン(Ying)らは、the Synthesis of some carboxylic esters and carbonates of Dihydroartemisinin by using 4-(N,N-Dimethylamino)pyrijine as an active acylation catalyst、(Acta Chim Sinica) 982年、第40巻、第6合、p.557−561は、ジヒドロアルテミシニンのアシル化の改良版を提案した。前記出版物は、ジヒドロアルテミシニン−10−バレレートの調製を利用して、前述のプロセスを詳細に記述した。このプロセスでは、ジヒドロアルテミシニンは1,2−ジクロロエタン中に溶解され、無水吉草酸、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、およびトリエチルアミンで処理され、混合物はジヒドロアルテミシニンが使い果たされるまで室温で撹拌された。反応混合物は次いで希塩酸で酸性化され、水相が分離された。有機相を洗浄および乾燥し、溶媒を蒸留した後に得られた油性の残渣は、シリカゲル上での石油エーテル60〜80℃/酢酸エチル(10:1)を溶出剤として用いたクロマトグラフィーにより精製された。無水コハク酸および4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンを用いたジヒドロアルテミシニンからのアーテスニックアシドの調製のためのこのプロセスの使用は、5時間で65%の収率でアーテスニックアシドを生じた。
【0006】
オグニャノフ(Ognyanov)らに対し1997年8月5日に付与された「Process for preparation of Dihydroartemisinin Hemisuccinate (artemsumic acid)」という名称の米国特許第5,654,446号は、トリアルキルアミンおよびそれらの混合物の存在下に、低沸点、中性、水混和性、不活性の有機溶媒または溶媒混合物中で、20〜60℃において0.5時間の、無水コハク酸によるジヒドロアルテミシニンのアシル化によりC10α−アーテスニックアシドを調製するための、および次にpH5〜8においてアーテスニックアシドが直接に、91.8〜97.2%の収率で単離されるプロセスを教示している。
【0007】
上記の方法は、本発明の方法に比較して、高コストで時間がかかるという、いくつかの不都合があり、上記のすべての参考法は、アルテミシニンをジヒドロアルテミシニンの10−エステルに転換するために二つの別々の段階、すなわち(a)第一のポットにおけるアルテミシニンのジヒドロアルテミシニンへの還元とそれに続くジヒドロアルテミシニンの単離および、(b)第二のポットにおけるジヒドロアルテミシニンの、別のエステルへのエステル化、を必要とすることが注目されるべきである。
【0008】
さらに、これらのプロセスにおいて使用される溶媒、ピリジンまたは1,2ジクロロエタン、および触媒、4(N,N−ジメチルアミノ)ピリジンは、衛生基準によって容認されていない。それゆえ、上記の不都合を克服する一段階のプロセスを提供することが必要である。
【0009】
本件は、記述されたプロセスを室温で使用しての、アルテミシニンを(前文に引用されたようなジヒドロアルテミシニンよりもむしろ)直接用いた単一ポット転換であることにより、引用された先行技術のプロセスの欠陥を克服することが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主要な目的は、アルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換のための、単一ポットプロセスを提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの目的は、アーテスニックアシドを得るためのアルテミシニンの還元およびエステル化が単一ポットで行なわれるプロセスを提供することである。
【0012】
したがって、本発明のさらにもう一つの目的は、アルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換が室温で行なわれるプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって本発明は、室温での還元とそれに続く還元された生成物のエステル化を含む、アルテミシニンからのアーテスニックアシドの調製のための単一ポットプロセスを提供する。
【0014】
本発明は、アルテミシニンからアーテスニックアシドを調製するための単一ポットプロセスを提供し、前記プロセスは:
(a)アルテミシニンを、20〜35℃の範囲の温度において溶媒中に溶解して溶液を得ること、前記溶液に触媒を添加すること;
(b)段階(a)の溶液に還元剤を添加すること、混合物を20〜35℃の間の範囲の温度において、約0.5時間〜4時間撹拌し、還元された生成物、ジヒドロアルテミシニンを得ること;
(c)段階(b)の混合物に対し、20〜35℃の間の範囲の温度において、無水コハク酸および塩基を添加すること。
(d)段階(c)の混合物を、20〜35℃の間の範囲の温度において、1時間から3時間の期間撹拌すること、
(e)段階(d)の混合物に冷水を添加すること、溶液のpHを5〜7の間に調整すること、pH5〜7の溶液を酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物で抽出すること、有機層を分離すること;
(f)段階(e)の有機層を水で洗浄すること、洗浄された有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥すること、濾過すること、有機層を蒸発させて残渣を得ること、および
(g)段階(f)の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、純粋なアーテスニックアシドを得ることを含む。
【発明の効果】
【0015】
1.単一ポットで行なわれる2ポット反応:アルテミシニンのジヒドロアルテミシニンへの還元、およびジヒドロアルテミシニンのアーテスニックアシドへのエステル化は、ジヒドロアルテミシニンの単離のプロセス(が避けられる)を避け、そのことは化学物質、労力を節約し、ジヒドロアルテミシニンの単離中の損失を防ぐ。
2.単一ポットでのアルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換は、約2〜5時間で行なわれ、先に報告された、第一のポットにおけるアルテミシニンのジヒドロアルテミシニンへの転換にジヒドロアルテミシニンの単離が続き、第二のポットにおけるアーテスニックアシドへのエステル化もまた長時間のプロセスである方法に比較して、より時間のかからない方法である。
3.単一ポットでのアルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換は、室温(20〜35℃)において行なわれ、それにより冷却ユニットの使用が回避される。
4.還元反応を行なうべく用いられる溶媒はまたエステル化においても使用され、したがってコスト効率の良いプロセスを可能にする。
5.アルテミシニンのジヒドロアルテミシニンへの室温(20〜35℃)における還元を行なうべく用いられる触媒、ポリヒドロキシ化合物または陽イオン交換樹脂は、コスト効率の良い。
6.アルテミシニンの粗アーテスニックアシドへの転換と、それに続くワークアップ、および純粋な生成物を生じるための精製は、先に報告された方法(約20〜40時間)に比較して、6〜10時間を要し、したがってこのプロセスはより時間がかからない。
7.本発明の最終産物、すなわち、純粋なアーテスニックアシドの収率は、96%w/wまでである。
8.したがって、先の既知のプロセスの不都合を回避する改良された本プロセスは、大量のアーテスニックアシドの調製に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一つの態様においては、二つの反応、すなわちアルテミシニンのジヒドロアルテミシニンへの還元、およびジヒドロアルテミシニンのエステル化が、単一ポットにおいて行なわれ、それにより中間体、ジヒドロアルテミシニンの単離のプロセスを避けるようにする。
【0017】
本発明のもう一つの態様においては、段階(a)において用いられる溶媒は、1,4−ジオキサンまたはテトラヒドロフランからなる群より選ばれる。
【0018】
本発明のさらにもう一つの態様においては、段階(a)において用いられる触媒は、ポリヒドロキシ化合物または陽イオン交換樹脂からなる群より選ばれる。
【0019】
本発明のなおもう一つの態様においては、用いられるポリヒドロキシ化合物はデキストロースである。
【0020】
本発明のさらなる態様においては、アルテミシニンと触媒とのw/w比は、1:2〜1:5の範囲内である。
【0021】
本発明のさらにもう一つの態様においては、段階(b)において用いられる還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、リチウム・トリ−tert−ブトキシ・アルミニウム・ガイドライド(gydride)、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、ビス−2−メトキシナトリウム、水素化エトキシアルミニウム、または、アルコールまたはアンモニア中のリチウムまたはナトリウムの混合物からなる群より選ばれる。
【0022】
本発明のもう一つの態様においては、使用される還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。
【0023】
本発明の一つの態様においては、アルテミシニンと水素化ホウ素ナトリウムとのw/w比は、1:0.5〜1:5.0の範囲内である。
【0024】
本発明のもう一つの態様においては、段階(c)で用いられる無水コハク酸はエステル化剤である。
【0025】
本発明のさらにもう一つの態様においては、アルテミシニンと無水コハク酸とのw/w比は、1:0.3〜1:0.7の範囲内である。
【0026】
本発明のなおもう一つの態様においては、アルテミシニンと無水コハク酸とのw/w比は、1:0.5である。
【0027】
本発明のもう一つの態様においては、段階(c)で用いられる塩基は、トリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、または陰イオン交換樹脂からなる群より選ばれる。
【0028】
本発明のさらにもう一つの態様においては、アルテミシニンと塩基とのw/w比は、1:1.2〜1:7の範囲内である。
【0029】
本発明のもう一つの態様においては、段階(e)の溶液のpHは、酢酸の添加により調整される。
【0030】
本発明の一つの態様においては、段階(e)の溶液からの粗アーテスニックアシドの抽出は、不要の極性不純物の抽出を避けるべく、40%酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物を用いて行なわれる。
【0031】
本発明のもう一つの態様においては、40%酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物を用いた抽出は、アーテスニックアシドの完全な抽出のため、一回以上行なわれてよい。
【0032】
本発明のさらにもう一つの態様においては、段階(g)における粗アーテスニックアシドの精製は、シリカゲルカラム上で行なわれる。
【0033】
本発明のなおもう一つの態様においては、用いられた粗アーテスニックアシドとシリカゲルとのw/w比は、1:4〜1:5の範囲内である。
【0034】
本発明のさらなる態様においては、シリカゲルカラムは、n−ヘキサン中の20〜30%酢酸エチルの勾配溶媒混合物を用いて溶出される。
【0035】
本発明のさらに一つの態様においては、96%w/wのアーテスニックアシドが得られる。
【0036】
本発明のもう一つの態様においては、アルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換に必要な時間は、約6時間〜10時間である。
【0037】
本発明のさらなる態様においては、ジヒドロアルテミシニンの他の10エステル、たとえば10−プロピオネート、クロロアセテート、およびアセテートもまた、この改良されたワンポットプロセスで調製された。
【0038】
本発明のプロセスにおいては、アルテミシニンおよび触媒、ポリヒドロキシ化合物、または陽イオン交換樹脂は、1,4−ジオキサンまたはテトラヒドロフラン中で5分間撹拌された。水素化ホウ素ナトリウムは、室温(20〜35℃)において徐々に添加され、反応混合物は室温で約0.5〜2時間撹拌された。アルテミシニンの還元の完了後、ワークアップまたはジヒドロアルテミシニンの単離なしに、塩基の存在下に室温(20〜35℃)において無水コハク酸が添加された。反応混合物はさらに約1〜3時間、室温(20〜35℃)において撹拌された。エステル化反応の完了の後、冷水が添加された。本出願者らは実験的に、もし溶液のpHが6〜7の間に維持されれば、それは酢酸エチル、n−ヘキサン混合物による抽出の助けになることを見出した。それゆえ、酢酸の添加により溶液のpHは6〜7の間に維持される。pH6〜7を有する溶液は、次いで酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物で抽出された(3〜4回)。合併された抽出物は水で洗浄された。酢酸エチル−ヘキサン抽出物は無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、溶媒の除去は、純粋ではないアーテスニックアシドを与えた。溶出液として、n−ヘキサン中の20〜30%の酢酸エチルを用いた、純粋ではないアーテスニックアシドのシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:4〜5比)は、純粋なアーテスニックアシドを85〜96%w/wの収率で与えた。
【0039】
本発明は添付の実施例を参照してさらに記述されるが、それらは単なる例として示されるものであり、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0040】
実施例1
アルテミシニン(500mg)およびポリヒドロキシ化合物(デキストロース、2.5g)は1,4−ジオキサン(15ml)中で、室温において5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(2.5g)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜30℃)で約2時間撹拌される。反応の完了後(TLCによりチェックされる)、無水コハク酸(250mg)および陰イオン交換(塩基性)樹脂(1.5g)が室温で添加され、反応混合物は室温でさらに2時間撹拌される。冷水(50ml)が反応混合物へ添加され、pHは希酢酸を用いて6〜7の間に調整され、ヘキサン中の40%酢酸エチル(3x25ml)で抽出される。合併された抽出物は水(50ml)で洗浄される。酢酸エチル、n−ヘキサン抽出物は、無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、溶媒の蒸発は655mgの粗アーテスニックアシドを生じ、それはシリカゲル(1:5比)上での、ヘキサン中の20〜30%酢酸エチルを用いた精製により、純粋なアーテスニックアシド(465mg)を93%w/wの収率で与える(CO−TLCによる)。純粋なα−アーテスニックアシドを乾燥した後、スペクトル分析によりmp140〜142℃が特徴づけられる。
【0041】
実施例2
アルテミシニン(500mg)およびポリヒドロキシ化合物(デキストロース、2.0g)は1,4−ジオキサン(10ml)中で撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(2.5g)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜30℃)で約2時間撹拌される。還元段階の完了後、無水コハク酸(250mg)およびトリエチルアミン(1ml)が添加され、反応混合物はさらに2時間、室温(20〜30℃)で撹拌される。通常のワークアップおよびカラムクロマトグラフィー(1:4比)による粗生成物(690mg)の精製の後、91.2%の純粋なアーテスニックアシドが得られる。
【0042】
実施例3
アルテミシニン(500mg)、ポリヒドロキシ化合物(デキストロース、2.0g)はテトラヒドロフラン(10ml)中で撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(2.5g)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温で約2時間撹拌される。還元段階の完了後、無水コハク酸(250mg)およびトリエチルアミン(1ml)が添加され、反応混合物は室温でさらに2時間撹拌される。通常のワークアップおよびカラムクロマトグラフィーによる粗生成物(615mg)の精製の後、87.4%の純粋なアーテスニックアシドが得られる。
【0043】
実施例4
アルテミシニン(500mg)、ポリヒドロキシ化合物(デキストロース、2g)はジオキサン(15ml)中で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(2.4g)が徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜30℃)で約2時間撹拌される。還元段階の完了後、無水コハク酸(250mg)および炭酸水素ナトリウム(3.5mg)が添加され、反応混合物は室温でさらに2時間撹拌される。通常のワークアップおよび純粋でない反応生成物(650mg)の精製の後、89.6%の純粋なアーテスニックアシドが得られる。
【0044】
実施例5
アルテミシニン(500mg)および陽イオン交換樹脂(1g)は、テトラヒドロフラン(10ml)中で、室温で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(250mg)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約30分間撹拌される。反応完了後、無水コハク酸(250mg)およびトリエチルアミン(0.7ml)が室温で添加され、反応混合物は室温でさらに1時間撹拌される。樹脂は濾過される。通常のワークアップおよび粗生成物(710mg)のカラムクロマトグラフィーの後、480mgの純粋なアーテスニックアシド(収率=約96%w/w)が得られる。
【0045】
実施例6
アルテミシニン(500mg)および陽イオン交換樹脂(1g)は、1,4ジオキサン(10ml)中で、室温で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(250mg)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約30分間撹拌される。反応完了後、無水コハク酸(250mg)およびトリエチルアミン(0.7ml)が室温で徐々に添加され、反応混合物は室温でさらに1.25時間撹拌される。通常のワークアップおよび粗アーテスニックアシド(680mg)の精製の後、純粋な生成物が91.7%w/wで得られる。
【0046】
実施例7
アルテミシニン(500mg)および陽イオン交換樹脂(10g)は、1,4ジオキサン(10ml)中で撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(250mg)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約45分間撹拌される。還元段階の完了後、無水コハク酸(250mg)および炭酸水素ナトリウム(2.5g)が添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)でさらに1.5時間撹拌される。通常のワークアップおよび粗アーテスニックアシド(630mg)の精製の後、純粋な生成物が85%w/wの収率で得られる。
【0047】
実施例8
アルテミシニン(500mg)および陽イオン交換樹脂(1g)は、テトラヒドロフラン(15ml)中で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(2.4g)が徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約45分間撹拌される。還元反応の完了後、無水コハク酸(245mg)および炭酸水素ナトリウム(3.5g)が添加され、反応混合物はさらに1.25時間撹拌される。通常のワークアップおよび純粋でない反応生成物(650mg)の精製の後、純粋な生成物が93%w/wの収率で得られる。
【0048】
実施例9
アルテミシニン(100mg)および陽イオン交換樹脂(200mg)は、テトラヒドロフラン(3ml)中で、室温で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(50mg)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約30分間撹拌される。反応完了後、無水プロピオン酸(0.5ml)およびトリエチルアミン(0.2ml)が室温で添加され、反応混合物はさらに1.5時間室温で撹拌される。通常のワークアップおよび、調製用TLCによる粗生成物の精製の後、スペクトル分析により、44mgの純粋なジヒドロアルテミシニン10−プロピオネートが得られる。
【0049】
実施例10
アルテミシニン(100mg)および陽イオン交換樹脂(200mg)は、テトラヒドロフラン(3ml)中で、室温で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(50mg)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約30分間撹拌される。反応完了後、無水クロロ酢酸(50mg)およびトリエチルアミン(0.2ml)が室温で添加され、反応混合物はさらに1.5時間室温で撹拌される。通常のワークアップおよび、調製用TLCによる粗生成物の精製の後、スペクトル分析により、35mgの純粋なジヒドロアルテミシニン10−クロロアセテートが得られる。
【0050】
実施例11
アルテミシニン(100mg)および陽イオン交換樹脂(200mg)は、テトラヒドロフラン(3ml)中で、室温で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(50mg)が10分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約30分間撹拌される。反応完了後、無水酢酸(50mg)およびトリエチルアミン(0.2ml)が室温で添加され、反応混合物はさらに1.5時間室温で撹拌される。通常のワークアップおよび、調製用TLCによる粗生成物の精製の後、スペクトル分析により同定される、42mgの純粋なジヒドロアルテミシニン10−アセテートが得られる。
【0051】
実施例12
アルテミシニン(5g)および陽イオン交換樹脂(10g)は、テトラヒドロフラン(60ml)中で、室温で5分間撹拌される。ホウ素化水素ナトリウム(2.5g)が20分間にわたって徐々に添加され、反応混合物は室温(20〜35℃)で約1時間撹拌される。反応完了後、無水コハク酸(2.5g)およびトリエチルアミン(6ml)が室温で添加され、反応混合物はさらに1.5時間室温で撹拌される。通常のワークアップおよびCCによる粗生成物(6.92g)の精製の後、純粋なアーテスニックアシドが94.6%の収率で得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルテミシニンからアーテスニックアシド(artesunic acid)を調製するための単一ポットプロセスであって、前記プロセスが:
(a)アルテミシニンを、20〜35℃の範囲の温度において溶媒中に溶解して溶液を得ること、前記溶液に触媒を添加すること;
(b)段階(a)の溶液に還元剤を添加すること、混合物を20〜35℃の間の範囲の温度において、約0.5時間〜4時間撹拌し、還元された生成物、ジヒドロアルテミシニンを得ること;
(c)段階(b)の混合物に対し、20〜35℃の間の範囲の温度において、無水コハク酸および塩基を添加すること。
(d)段階(c)の混合物を、20〜35℃の間の範囲の温度において、1時間から3時間の期間撹拌すること、
(e)段階(d)の混合物に冷水を添加すること、前記溶液のpHを5〜7の間に調整すること、pH5〜7の前記溶液を酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物で抽出すること、有機層を分離すること;
(f)段階(e)の有機層を水で洗浄すること、洗浄された前記有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥すること、濾過すること、前記有機層を蒸発させて残渣を得ること、および
(g)段階(f)の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、純粋なアーテスニックアシドを得ることを含むプロセス。
【請求項2】
二つの反応、すなわちアルテミシニンのジヒドロアルテミシニンへの還元、およびジヒドロアルテミシニンのエステル化が、単一ポットにおいて行なわれ、それにより中間体、ジヒドロアルテミシニンの単離のプロセスを避けるようにする、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
段階(a)において、用いられる溶媒が、1,4−ジオキサンまたはテトラヒドロフランからなる群より選ばれる、請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
段階(a)において、用いられる触媒が、ポリヒドロキシ化合物または陽イオン交換樹脂からなる群より選ばれる、請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
用いられる前記ポリヒドロキシ化合物がデキストロースである、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
アルテミシニンと前記触媒とのw/w比が1:2〜1:5の範囲内である、請求項1記載のプロセス。
【請求項7】
段階(b)において、用いられる還元剤が水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、リチウム・トリ−tert−ブトキシ・アルミニウム・ガイドライド(gydride)、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、ビス−2−メトキシナトリウム、水素化エトキシアルミニウム、または、アルコールまたはアンモニア中のリチウムまたはナトリウムの混合物からなる群より選ばれる、請求項1記載のプロセス。
【請求項8】
使用される前記還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである、請求項7記載のプロセス。
【請求項9】
アルテミシニンと水素化ホウ素ナトリウムとのw/w比が1:0.5〜1:5.0の範囲内である、請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
段階(c)において、無水コハク酸がエステル化剤として作用する、請求項1記載のプロセス。
【請求項11】
アルテミシニンと無水コハク酸とのw/w比が1:0.3〜1:0.7の範囲内である、請求項1記載のプロセス。
【請求項12】
アルテミシニンと無水コハク酸とのw/w比が1:0.5である、請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
段階(c)において、用いられる前記塩基がトリエチルアミン、炭酸水素ナトリウム、または陰イオン交換樹脂からなる群より選ばれる、請求項1記載のプロセス。
【請求項14】
アルテミシニンと前記塩基とのw/w比が1:1.2〜1:7の範囲内である、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
段階(e)において、前記溶液のpHが酢酸の添加により6〜7の間に調整される、請求項1記載のプロセス。
【請求項16】
段階(e)において、前記溶液からの粗アーテスニックアシドの抽出が、不要の極性不純物の抽出を避けるべく、40%酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物を用いて行なわれる、請求項1記載のプロセス。
【請求項17】
40%酢酸エチルおよびn−ヘキサンの混合物を用いた抽出が、アーテスニックアシドの完全な抽出のため、一回以上行なわれてよい、請求項16記載のプロセス。
【請求項18】
段階(g)において、粗アーテスニックアシドの精製がシリカゲルカラム上で行なわれる、請求項1記載のプロセス。
【請求項19】
前記粗アーテスニックアシドとシリカゲルとのw/w比が1:4〜1:5の範囲内である、請求項18記載のプロセス。
【請求項20】
前記シリカゲルカラムが、n−ヘキサン中の20〜30%酢酸エチルの勾配溶媒混合物を用いて溶出される、請求項18記載のプロセス。
【請求項21】
96%w/wのアーテスニックアシドが得られる、請求項1記載のプロセス。
【請求項22】
アルテミシニンのアーテスニックアシドへの転換に必要な時間が、約6時間〜10時間である、請求項1記載のプロセス。

【公表番号】特表2006−516118(P2006−516118A)
【公表日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556564(P2004−556564)
【出願日】平成14年12月2日(2002.12.2)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005063
【国際公開番号】WO2004/050661
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505185709)カウンシル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ (35)
【Fターム(参考)】