説明

アルミナ複合分離膜及びその製造方法

【課題】混合気体及び液体の分離性能が高く、耐熱、耐水、耐酸及びアルカリ性に優れた分離膜の提供。
【解決手段】多孔質無機支持体上に、平均アスペクト比30〜5000の繊維状アルミナ粒子を含む水性ゾルを塗布し、形成された被覆膜を5〜100℃の温度で乾燥して、繊維状アルミナ粒子が一方向に並列し重積しているアルミナミ水和物ゾル被覆層を形成し、さらに130〜1000℃の熱処理を施して、繊維状アルミナ粒子間に互いに連通する特定形状の細孔が形成されしている繊維状アルミナ気孔質薄膜層を形成し、それによって液体分離及び気体分離などに有用なアルミナ複合分離膜を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミナ複合分離膜およびその製造方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は耐熱性、耐有機溶媒性、耐水性及び耐高及び低pH性を有するアルミナ複合分離膜及びその製造方法に関するものである。本発明のアルミナ複合分離膜は、その細孔径分布域を、0.3〜40nm(3オングストローム〜400オングストローム)の範囲内に制御することが可能であるので、種々の気体又は液体の分離膜として有用である。
【背景技術】
【0002】
一般にセラミックスは、強度、耐熱性、耐薬品性に優れた物性を有し基板、フィルター、触媒担体など工業的に広く使用されている。また近年、セラミックスが、その多孔性を利用して、液体および気体の無機分離膜として利用されている。無機膜の特徴は、有機膜では使用に耐えない高温、pH、有機溶媒下での使用が可能であることにあるが、しかし、膜のモジュール化が困難で、シール性が低く、コストが高いなどの点において実用上の問題を有していた。
さらに、従来の無機膜において、その細孔表面の極性、電荷を利用することにより、ガス分離、各種低分子の分離に高い分離性能を付与することができるが、この効果が発現する細孔径が1nm程度と非常に小さく、このため従来のゾルゲル法による製膜方法では実用可能な分離膜の作成が困難であった。
そのため、無機膜の製膜方法としてゾルゲル法の他に、水熱合成法、陽極酸化法、有機無機膜複合法などの様々な方法について検討が行われている。
【0003】
たとえば特開平7−185275号公報(特許文献1)にはA型ゼオライトの親水性を利用して、アルコール水溶液中から水を選択透過することによるアルコール濃縮方法が記載されている。しかしながらA型ゼオライト膜は耐酸性、耐水性が低いという問題を有しており、さらには細孔径が結晶固有の構造で決まるため、使用条件が限られる。さらには、このようなゼオライト膜を製膜する際には、多孔質の担体を反応容器に投入し水熱処理する必要があり、このため特殊な反応装置を必要とするという実用上の問題もある。
【0004】
特開平9−142964号公報(特許文献2)には、アルミニウムアルコキシドに水溶性の有機溶媒とカルボン酸無水物、アセト酢酸エステル、ジカルボン酸エステル等を添加して加水分解して得られたアルミナゾルを多孔質セラミックス支持体に塗布し、焼成して得られるアルミナ多孔質膜の製造方法が記載されている。しかしながら、この製造条件で得られる粒子は、そのアスペクト比は小さく、細孔径が1nm以上なので制御範囲が狭いため、より小さな分子径を有するガスや有機物の分離には適さないものである。
【0005】
特開平9−316692号公報(特許文献3)にはアルミニウムもしくは多孔質無機材料に担持したアルミニウムをパルス電圧によって陽極酸化し微細な細孔を有する膜およびその製造方法が記載されている。しかしながら、この製造方法には、アルミニウムを基盤上に担持させる必要があること、精密な印加電圧の制御が必要なこと、及び特殊な製膜装置が必要なことなどから、コスト面、および工業化技術面で問題を有していた。
【0006】
特開2003−275550号公報(特許文献4)には、多孔質担体をアルミナゾル溶液(長径:100nm、短径:10nm)に浸漬し、回転させながら引き上げることにより過剰なガス分離膜成形成分を飛散除去して得られるガス分離膜およびその製造方法が記載されている。しかしながらこの方法においては、目的とする細孔径を得るためには、浸漬〜乾燥までの工程を10回以上繰り返し行う必要があり、分離膜作成に膨大な時間を要するという問題点がある。
【0007】
上述のように、従来技術においては、実用上必要な要件、すなわち制御できる細孔径の範囲が広く、かつ製膜方法が簡便であり、低コストで作成可能であることを満す製膜方法が未だ提供されていないというのが実情であり、当分野において前記の要件を満たすアルミナ分離膜を開発することが要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−185275号公報
【特許文献2】特開平9−142964号公報
【特許文献3】特開平9−316692号公報
【特許文献4】特開2003−275550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、制御可能な細孔径の範囲が広く、実用上十分高い耐熱性、耐有機溶媒性、耐水性、耐高・低pH性を有し、製膜方法が簡便であり、かつコストが低いアルミナ複合分離膜及びその製造方法を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のアルミナ複合分離膜は、多孔質材料から形成された支持体と、この支持体の少なくとも1面上に形成された多孔質薄膜層とを含み、
前記多孔質薄膜層中に、30〜5000の平均アスペクト比を有する繊維状アルミナ粒子が一方向に並列して重積しており、この並列・重積した繊維状アルミナ粒子の間に互に連通する細孔が形成されていることを特徴とするものである。
本発明のアルミナ複合分離膜において、前記繊維状アルミナ粒子の平均短径が1〜10nmであり、かつその平均長径が100〜10000nmであることが好ましい。
本発明のアルミナ複合分離膜において、前記多孔質薄膜層中にシランカップリング剤が含まれていてもよい。
本発明のアルミナ複合分離膜を製造する方法は、前記アルミナ複合分離膜を製造するために、多孔質材料から形成された支持体の少なくとも1面上に、30〜5000の平均アスペクト比を有する繊維状アルミナ水和物粒子が分散含有されている水性アルミナ水和物ゾルの被覆層を形成し、この水性アルミナ水和物ゾル被覆層を5〜100℃の温度で10分以上の時間をかけて乾燥し、さらに130〜1000℃の温度で熱処理して、一方向に並列・重積している繊維状アルミナ粒子を含む多孔質薄膜層を形成する
ことを特徴とするものである。
本発明のアルミナ複合分離膜の製造方法において、前記アルミナ水和物粒子がベーマイト又は擬ベーマイトから選ばれた、少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
本発明のアルミナ複合分離膜の製造方法において、前記水性アルミナゾルがアルミニウムアルコキシドを加水分解し、解膠して調製されたものであることが好ましい。
水と水溶性アルコールとの混合物から、水を分離回収する本発明方法は、前記本発明のアルミナ複合分離膜を用いることを特徴とするものである。
水蒸気と、それとは異種の気体との混合気体から、前記異種気体を分離除去する本発明方法は、前記本発明のアルミナ複合分離膜を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアルミナ複合分離膜は、耐熱性、耐有機溶媒性、耐水性、耐高及び(低)pH性においてすぐれているのみならず、多孔質薄膜層中の繊維状アルミナ粒子間に形成される連通細孔の細孔径を0.3nm〜40nmの広い範囲にわたって制御することが可能なものであり、このため例えば水と水溶性アルコールとの混合物から水の分離回収、及び水蒸気とそれとは異種の気体との混合気体から、前記異種気体の分離除去などが高い効率で実施可能になり、また本発明方法において、前記アルミナ複合分離膜を低コストで簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のアルミナ複合分離膜の繊維状アルミナ粒子含有多孔質薄膜層の透過型電子顕微鏡(TEM)画像(倍率:×71万倍)。
【図2】実施例1において用いられた水/IPA混合溶液の分離装置の説明図。
【図3】実施例4において用いられた水/窒素混合気体の分離装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアルミナ複合分離膜は多孔質材料から形成された支持体と、この支持体の少なくとも1面上に形成された多孔質薄膜層とを含むものである。前記多孔質薄膜層中には、アスペクト比が30〜5000の繊維状(針状とも云う)アルミナ粒子が、一方向に並列して重積しており、この並列・重積した繊維状アルミナ粒子の間に、互に連通する細孔が形成されている。
【0014】
本発明のアルミナ複合分離膜の支持体は、多孔質材料から形成されており、本発明に用いられる多孔質材料は本願発明の目的を阻害しない限り広い範囲の多孔質材料から選択することができる。本発明に用いられる支持体用多孔質材料として例えば、アルミナ、ムライト、ジルコニアなどの無機酸化物、ステンレススチール、及びアルミニウムなどの金属及び合金、ハイドロアパタイトなどの無機材料の粉末からなる多孔質焼結体又は圧着体、或はポリテトラフルオロエチレン樹脂の延伸多孔質体、或はセルロース多孔質成形体などが用いられる。前記多孔質支持体の気孔率は5〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜50%である。また本発明に用いられる多孔質支持体の細孔径分布曲線のピークトップを示すd peakが0.5〜4.0nmであることが好ましく、より好ましくは0.6〜2.0nmである。
前記多孔質支持体の形状寸法は、複合分離膜の用途、使用条件などを勘案して適宜に設定される。その形状は例えば、平膜状体、管状体、などのいずれであってもよく、その寸法において、厚さは0.01〜5mmであることが好ましい。
【0015】
本発明の多孔質薄膜層を形成する主成分は、繊維状アルミナ粒子であって、その平均アスペクト比は30〜5000であり、好ましくは100〜300である。また前記繊維状アルミナ粒子の平均短径は、1〜10nmであることが好ましく、さらに好ましくは、2〜5nmであり、かつ、その平均長径は100〜10000nmであることが好ましく、より好ましくは500〜7000nmである。
アルミナ粒子の平均アスペクト比が30未満の場合、粒子形状は柱状又は長方形板状になり、このような形状のアルミナ粒子を製膜すると、得られる膜材中の細孔径分布における極大値d peakが1nmを超えて大きくなり、分離性能が不十分になる。また上記平均アスペクト比が5000を超える繊維状アルミナ粒子はその粒子合成に過大な長時間を要し、製造コストが上昇し、製造効率が低下するなど操業上、経済上の不利を生ずる。
また、前記繊維状アルミナ粒子の平均短径が1nm未満の場合は、粒子がランダムに凝集し易くなり、得られる多孔質薄膜層の細孔径分布の不均一性が増大し、得られるアルミナ複合分離膜の分離特性の信頼度が低下する。前記繊維状アルミナ粒子の平均長径が10000nmを超える粒子の合成には極めて長い時間を要し、製造コストが増大し、製造効率が低下するなどの不利益を生ずる。
【0016】
本発明のアルミナ複合分離膜の多孔質薄膜層中に含まれる繊維状アルミナ粒子のアスペクト比の測定には、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、300個の粒子の短径及び長径を計測し、測定値を算術平均して平均短径及び平均長径を求め、平均長径/平均短径=アスペクト比を算出する。
【0017】
本発明の多孔質薄膜層に含まれる繊維状アルミナ粒子の結晶形には、格別の制限はないが、無定形、ベーマイト、擬ベーマイト結晶形の1種以上を有していることが好ましく、より好ましくはベーマイト及び/又は擬ベーマイト結晶形である。一般にアルミナ水和物を加熱処理すると、その結晶形は、ベーマイト、擬ベーマイト、γ、δ、θ−アルミナなどに遷移し、最終的にはα−アルミナに遷移する。本発明における多孔質薄膜層中の繊維状アルミナ粒子は、前述のように、ベーマイト、及び/又は擬ベーマイト結晶形を有することが好ましいが、無定形、及び/又はγ、δ、θ、α−アルミナ結晶形を有するものが含まれていてもよい。
アルミナ粒子の結晶形はX−線回析装置を用いて確認することができる。
X−線回析装置の諸元は例えば下記のとおりである。
タイプ:Mac.Sci.MXP−18
管球:Cu、管電圧:40kV
管電流:250mA、ゴニオメーター:広角ゴニオメーター
サンプリング幅:0.020°、走査速度:10°/min
発散スリット:0.5°、散乱スリット:0.5°
受光スリット:0.30mm
【0018】
本発明のアルミナ複合分離膜の多孔質薄膜層中において繊維状アルミナ粒子は、図1に示されているように互に一方向に並列して重積しており、かつ、この並列重積している繊維状アルミナ粒子のそれぞれは、きわめて緩く波状に曲折しているから、互に隣り合う繊維状アルミナ粒子は互に接触又は交差接触する部位を有し、これらの接触点の間において、狭いスリット状断面形状を形成する空隙空間を形成しており、これらの狭い空隙空間、すなわち細孔は、互に連通していて、特定サイズの物質の透過を許し、上記サイズ以外の物質の透過を許さないものである。このような細孔の径の分布、すなわち細孔の壁面の一点から、対向する壁面までの最短距離の分布については、多孔質薄膜層供試片を液体窒素温度において、窒素と接触させて、その細孔に窒素を吸着させて、液体窒素温度における窒素吸着分布曲線を作成し、この窒素吸着分布曲線の、マイクロ孔乃至メソ孔依存のヒステリシスより、MP法又はBSH法により解析して、前記窒素吸着分布曲線において、極大分布を示す細孔径:d peakを求めることができる。
本発明の多孔質薄膜層のd peakは、0.4nm〜40nmであることが好ましく、さらに好ましくは、0.5nm〜30nmである。前記d peak値が、0.4nm未満であると、本発明の課題解決のためには、当該多孔質薄膜層を透過可能な粒子のサイズが過小になり、また、それが40nmを超えると、透過可能な粒子のサイズが過大になる。
前記MP法は、吸着等温線からマイクロ孔の容積、マイクロ孔面積及びマイクロ孔分布などを求める方法の1つ(文献:R.S. Mikhail, S. Brunauer, E.E. Bodor, J. Colloid Interface Sci., 26, 45 (1968))である。また、前記BJH法とは吸着等温線から、メソ孔容積、メソ孔表面積及びメソ孔分布などを求める方法の1つ(文献:E.P. Barrett, L.G. Joyer, P.P. Halenda. J. Am. Chem. Soc., 73. 373 (1951))である。
本発明において多孔質薄膜層中の細孔分布におけるd peakは、下記方法により測定された。
測定機器 :タイプBelsorp MAX、日本ベル株式会社製
サンプル量:100mg
予備乾燥 :150℃×1時間、窒素ガス雰囲気中
乾燥 :150℃×3時間
吸着気体 :窒素
【0019】
本発明のアルミナ複合分離膜の多孔質薄膜層の厚さには制限はなく、その用途、所望性能などを勘案して適宜に設定することができるが、一般に0.01〜100μmであることが好ましく、0.1〜50μmであることがさらに好ましい。上記多孔質薄膜層の所望厚さは一回の塗布により達成してもよいし、2回以上の重ね塗布により達成してもよい。一般に、1回の塗布により形成される多孔質薄膜層の厚さは、0.01〜100μmの範囲内にあることが、均一な薄膜層を形成するために好ましい。多孔質薄膜層の厚さは、アルミナ複合分離膜の断面をSEMで観察することにより測定することができる。SEM観察用断面は、イオンミリングなどの装置を用いて作成することができる。
【0020】
本発明に用いられる繊維状アルミナ粒子の表面にはヒドロキシル基が存在しており、このヒドロキシル基は容易に修飾することができる。この修飾のために、修飾剤として、シランカップリング剤、シリル化剤、多価アルコール、アルミニウムキレート化合物、チタンキレート化合物、芳香族スルホン酸、燐酸及び長鎖カルボン酸などを用いることができる。上記修飾剤による修飾量は繊維状アルミナ粒子の含有アルミニウム1molに対して、0.01〜2mol%であることが好ましい。
【0021】
繊維状アルミナ粒子の表面ヒドロキシル基の修飾用シランカップリング剤としては、シランカップリングの種類としてはビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシ系、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミン系シラン処理剤のほかp−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがあげられる。シランカップリング剤による修飾量は、アルミナ粒子の含有アルミニウム1モルに対して0.01〜2molであり、好適には0.05〜1molである。それが0.01molよりも少ない場合は、期待される修飾効果が不十分になることがあり、またそれが2molよりも多い場合はSiO2層が厚くなり細孔の精密な制御が困難になり、さらには価格的に不利になり好ましくない。
シランカップリング剤の添加方法としては、アルミナ水和物ゾル水溶液にシランカップリング処理剤を添加し均一に混合すればよい。また、アルミナ水和物ゾル水溶液と均一な混合液ができない場合は、分離膜を作成後、溶媒で希釈したシランカップリング剤溶液を分離膜上に塗布することにより処理することができる。
アルミナ分離膜の場合、粒子表面に大量のヒドロキシル基を保有しているため、膜表面や細孔内は親水性になっている。そのため水などの親水性物質は通りやすく、ベンゼンやブタノールのような疎水性物質は膜を通過しにくくなる。シランカップリング処理し表面の極性を変えることにより、膜を通過できる物質を制御することができる。
【0022】
本発明のアルミナ複合分離膜の製造方法は、前記本発明の、アルミナ複合分離膜を製造するために、多孔質材料から形成された支持体の少なくとも1面上に、30〜5000の平均アスペクト比を有する繊維状アルミナ水和物粒子が分散含有されている水性アルミナ水和物ゾルの被覆層を形成し、この水性アルミナゾル被覆層を、5〜100℃の温度で10分以上の時間をかけて乾燥し、さらに130〜1000℃の温度で熱処理して、一方向に並列・重積している繊維状アルミナ粒子を含む多孔質薄膜層を形成することを特徴とするものである。
本発明方法に用いられる水性アルミナゾルの調製方法には格別の制限はないが、例えば下記方法を用いることが好ましい。
すなわち加水分解性アルミニウム化合物を、加水分解し、得られた水酸化アルミニウム含有水性混合液を酸性下において解膠する。加水分解性アルミニウム化合物の種類、加水分解条件及び解膠条件を適宜に選択することにより、無定形、ベーマイト結晶形又は擬ベーマイト結晶形のアルミニウム水和物粒子を含む水性アルミナゾルを調製することができる。このときアルミナ水和物粒子の結晶形はベーマイト又は擬ベーマイト、又はこれらの混合であることが好ましい。
【0023】
前記加水分解性アルミニウム化合物には、各種の無機アルミニウム化合物、及び有機性の基を有するアルミニウム化合物が包含される。無機アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウムなどの無機酸の塩、アルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸塩、水酸化アルミニウムなどが例示される。
【0024】
前記有機性基を有する加水分解性アルミニウム化合物としては、炭酸アルミニウムアンモニウム塩、酢酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシドなどのアルミニウムアルコキシド、環状アルミニウムオリゴマー、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウムなどのアルミニウムキレート、アルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物などが例示される。
【0025】
上記加水分解性アルミニウム化合物のうち、適度な加水分解性を有し、副生成物の除去が容易であることなどから、アルミニウムアルコキシドを用いることが好ましく、炭素数2〜5のアルコキシル基を有するものが特に好ましい。加水分解に用いられる水の量は、水性アルミナ水和物ゾル中の繊維状のアルミナ、好ましくはベーマイト又は擬ベーマイト水和物粒子の濃度が、0.1〜20質量%になるように調整することが好ましく、更に好ましくは、0.5〜10質量%になるように調整する。
【0026】
水性アルミナ水和物ゾル中の繊維状のアルミナ水和物、好ましくはベーマイト又は擬ベーマイト水和物粒子の濃度が、0.1質量%以下の場合は、適切な膜厚を作成するのに塗布−乾燥の操作を繰り返す必要があり、操作が煩雑となるため好ましくなく、それが20質量%以上の場合は、分散液の粘度が高くなり、均一な膜が形成され難いことがあるので好ましくない。前記の水性アルミナ水和物ゾルには、目的とするアルミナ多孔質を膜層の性状に悪影響を及ぼさない範囲で、アルコール、ケトン、エーテル、水溶性高分子などを添加することが可能である。
【0027】
加水分解性アルミニウム化合物の加水分解において、所定量の水に所定量の加水分解性アルミニウム化合物を添加後、これに80〜170℃の範囲の温度で、0.5〜10時間加熱し、好ましくは100〜150℃の範囲の温度で、1〜5時間加熱し、水熱処理を施す。水処理温度が80℃未満の場合は、加水分解に長時間を必要とし、また、それが、170℃を超える温度で実施しても、加水分解速度の増大は僅かであり、しかも、この高温処理には高耐圧容器などを必要とするから、経済的に不利である。好ましくない。加水分解処理時間が0.5時間未満の場合は、温度調節が難しく、また、それが10時間を超えて加熱しても、工程時間が長くなるだけで、利点はない。
【0028】
上記加水分解により得られたアルミナの水中スラリーを酸の存在下において加熱することにより解膠(アルミナ水和物粒子凝集体が溶媒中にコロイド微粒子状に分散すること)する。この解膠のために用いられる酸は、好ましくは塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸などの一価の酸が用いられる。通常は酢酸を用いることがより好ましい。酸の添加量は、加水分解性アルミナ水和物粒子量に対して、0.1〜2モル倍であることが好ましく、0.3〜1.5モル倍がより好ましい。解膠されたアルミナコロイド液中の酸の共存量が、アルミナ水和物粒子量に対して0.1モル倍未満であると、解膠の十分に進行しないことがあり、このため、得られる解膠後の水性アルミナゾル中のアルミナ水和物が1〜10nmの平均短径、100〜10000nmの平均長径、及び30〜5000の平均アスペクト比の繊維状(又は針状)のいずれか一以上を有していないことがある。酸の共存量が2モル倍を超えると、得られるアルミナ水和物の水性ゲルの経時安定性が低下し、実用性が低下することがある。
【0029】
本発明方法において、用いられる多孔質薄膜層形成用繊維状アルミナ水和物ゾルのpH値は、2.5〜4であることが好ましく、より好ましくは2.7〜3.7である。このようにすると、アルミナ水和物ゾルの経時的安定性が向上する。しかし、アルミナ水和物ゾルのpHを中性又はアルカリ性にしてもアルミナ水和物微粒子含有多孔質薄膜層を形成することは可能である。この場合、アルミナ水和物水性ゾルのpH値調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸アンモニウム、などの無機化合物、並びにエチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、尿素などの有機アミン化合物を用いることができる。これらの塩基性pH値調整剤のうちナトリウム又はカリウムの水酸化物炭酸塩などは、それに含まれる金属成分が焼成の後にも残留するから、実用上好ましくない。またアルミナ多孔質薄膜層の形成過程において、アンモニア、有機アミンなどが生成して酸性pH値調整剤が中和される場合には前記解膠後の、得られたアルミナ水和物ゲルの中和は、省略されてもよい。
【0030】
得られた水性アルミナ水和物ゾルの粘度が高い場合、このゾル中に気泡が残留し易く、これに脱気(脱泡)処理を施すことが必要になることがある。脱気方法としては、減圧処理、及び遠心処理などを利用することができる。脱気された水性アルミナ水和物ゾルを、多孔質支持体の所望表面に塗布し、乾燥により分散媒を除去し、熱処理を施して、多孔質薄膜層を形成する。
【0031】
また得られたアルミナ水和物ゲルの粘度、所望の多孔質薄膜層の形状、厚さなどを勘案して、アルミナ水和物ゲルの塗布方法及び条件などを設定することができる。アルミナ水和物ゾルの、多孔質支持体の所望表面への塗布方法は、例えば下記方法から選択することができる。
1.アルミナ水和物ゾルを水で希釈して、この希釈水溶液を、スプレー塗布して、アルミナ水和物の塗布量を、例えば2g/m2〜30g/m2に調節する方法。
2.アルミナ水和物ゾルの水溶液中に多孔質支持体を浸漬し、所望時間、例えば10秒〜10分間、滞在させた後に、所定速度、例えば0.05m/分〜1m/分の速度で引き上げ、多孔質支持体に対するアルミナ水和物付着質量を所望値、例えば2g/m2〜30g/m2に調節(自然流下、又は絞り)する方法。
3.その他既知の塗布方法(ブレード塗布、ロール塗布、ブラシ塗布、スリット塗布及び、転写法など)を用いる方法。
前述のように所望の塗布量を有する塗布層は、1回の塗布操作により形成されてもよく、2回以上の重ね塗りにより形成されてもよい。
【0032】
上記のようにして、多孔質支持体の所望表面に塗布された水性アルミナ水和物ゾル塗布層を、5〜100℃、好ましくは10〜60℃、の温度で10分間以上、好ましくは、10分−時間乾燥して、水性アルミナ水和物ゾルの分散媒を除去する。このとき、温度を徐々に上昇させることが好ましい。このような低温長時間の乾燥処理により、アルミナ水和物の繊維状粒子を一方向に配列・重積させることができる。このような乾燥のために恒温乾燥装置を用いることが好ましい。
【0033】
乾燥されたアルミナ水和物の繊維状粒子含有塗布層を、さらに、130〜1000℃、好ましくは150〜600℃の温度において熱処理する。熱処理時間は30分〜5時間であることが好ましく、1時間〜3時間であることがさらに好ましい。この熱処理のためには焼成炉(電気炉)などの恒温熱処理装置を用いることができる。この熱処理によりアルミナ水和物の繊維状粒子は、一方向に互に並列して重積したまゝ、脱水して繊維状アルミナ粒子に変化して多孔質薄膜層を形成する。
この熱処理の温度を適宜に設定することにより、得られる繊維状アルミナ粒子の結晶形を制御することができる。すなわち熱処理温度300〜500℃でγ−アルミナに変化し、800℃附近で、δ、θ−アルミナに変化し、1100℃以上でα−アルミナに変化する。
【0034】
本発明のアルミナ複合分離膜は、多孔性支持体と、多孔性薄膜層とから複合構造を有することにより、所望の形状、寸法を有し、かつ実用上十分な耐久性を有することができ、かつ本発明の方法により容易に製造することができる。
さらに、本発明のアルミナ複合分離膜は、その多孔性薄膜層内の繊維状アルミナ粒子が所定の平均短径、平均長径及びアスペクト比を有し、かつ一方向に並列して重積していることによって均一な分離性能を発現することができる。
【実施例】
【0035】
本発明のアルミナ複合分離膜及びその製造方法を下記実施例によりさらに説明する。
【0036】
実施例1
多孔質支持体として、α−アルミナを主成分として含み、下記寸法、形状を有する多孔質管を用いた。
外径 :2mm
内径 :1.6mm
長さ :50mm
平均細孔径:135nm
気孔率 :40%
下記繊維状アルミナ水和物粒子が分散している水性アルミナ水和物ゾルを調製した。
繊維状アルミナ水和物粒子の
平均アスペクト比:400
平均短径 :5nm
平均長径 :2000nm
ゾル中のアルミナ水和物の濃度:5質量%
前記多孔質α−アルミナ管の両端に栓をして閉塞し、これを前記水性アルミナ水和物ゾル15g中に5分間浸漬し、その後に多孔管をゆっくり1分間をかけて引き上げ、前記ゾルにより外表面にアルミナ水和物ゾルからなる被覆層を形成し、これを恒温乾燥装置内において、30℃で2時間乾燥し、その後に恒温乾燥装置内150℃で2時間の熱処理を施した。
得られた管状アルミナ複合分離膜の多孔性薄膜層は20μmの厚さを有していた。この多孔質薄膜層を剥離して、細孔径分布を、窒素吸着法(MP法)により測定したところ、細孔径100nm以下の細孔径分布のd peakは、1nmであった。
【0037】
アルミナ複合分離膜の浸透気法による水/IPA分離特性評価
(IPA:イソプロピルアルコール)
図2に示されているように、前記管状アルミナ複合分離膜1の下端2を、エポキシ樹脂接着剤(商標:トールシール、ニコラ株式会社製)を用いて封止し、その上端3をSUSセル4の下端に、前記エポキシ樹脂接着剤を用いて、気密に接合し固定した。前記SUSセルに固定された管状アルミナ複合分離膜を水とIPAとの10:90容積比の混合溶液5中に40℃において浸漬し、撹拌子6により撹拌しながら管状アルミナ複合分離膜の内部を真空に減圧した。このとき、水/IPA混合溶液から、真空において分離膜を透過した気化成分を、SUSセル4を経由し、捕集器7中に捕集し、これを液体窒素8により急冷して液化させて液化成分9を捕集器7の底部に捕集した。この液化成分をガスクロマトグラフィーに供し、捕集された液体の組成を定量分析した。その結果、捕集された液体9は、純度:99.95容積%以上の水であった。この分離における気化した水の分離膜透過流束は、0.4kg/m2・hであった。捕集器9内に捕集された液体は、排出管10を通って排出することができる。上記水/IPA混合溶液から水の分離において、実施例1の分離膜のすぐれた分離性能が確認された。
上記「透過流束」とは、分離膜を単位時間(h)、単位面積(m2)当り透過した物質の質量(kg)により表わされる。
【0038】
実施例2
実施例1と同様にしてアルミナ複合分離膜を作成した。但し、繊維状アルミナ水和物粒子として平均短径:5nm、平均長径:4000nm、平均アスペクト比:800を有するものを用いた。得られたアルミナ複合分離膜の多孔質薄膜層の細孔分布を測定した結果、孔径100nm以下の細孔のd peakは1nmであった。
得られたアルミナ複合分離膜を、実施例1と同様の、水/IPA混合液の分離試験に供した。捕集された液体成分は、純度99.90容積%の水であった。またこのときの水の透過流束は0.6kg/m2・hであった。
【0039】
実施例3
実施例1と同様にして、アルミナ複合分離膜を作成した。但し、繊維状アルミナ水和物粒子として、平均短径:3nm、平均長径:6000nm、及び平均アスペクト比:2000を有するものを用いた。得られた多孔質薄膜層の細孔分布を測定したところ孔径100nm以下の細孔のd peakは1.1nmであった。
上記アルミナ複合分離膜を実施例1と同様にして、水/IPA混合液分離試験に供した。その結果捕集された液体成分は、純度99.90容積%の水であり、水の透過流束は、0.6kg/m2・hであった。
【0040】
実施例4(混合気体の分離例)
実施例1において作成されたアルミナ複合分離膜を水/窒素混合気体の分離試験に供した。
図3に示されているように管状アルミナ複合分離膜1の下端2を封止し、その上端3を、SUSセル4の下端に気密に連結した。SUSセル4の上端を質量分析計11に連結した。管状アルミナ複合分離膜1を空気(水:1.23モル%、窒素:78.2モル%)中に保持し、管状分離膜1の内部を、真空に減圧、管状分離膜を透過した気体を、SUSセル径で、ヘリウム(He)ガスとともに、質量分析計11(Hiden HAL 301/F PIC Quadrupol Mass Spectrometer)に送入して、透過気体を分析した。その結果、水/窒素透過速度比は5785であり、水の透過速度は、0.000000461mol/m2・s・Paであった。上記水/窒素透過速度比とは、水の透過速度の、窒素の透過速度に対する比である。本実施例において、アルミナ複合分離膜を透過する水の透過速度は、窒素の透過速度の5785倍であり、この分離膜が、水に対して、高い分離回収、効果、又は窒素に対して高い除去効果を有することが確認された。
【0041】
実施例5
実施例1と同じ多孔質α−アルミナ管を支持体として用いた。
水性アルミナ水和物ゾル含有塗布液として、実施例1に記載されたものと同一の水性アルミナ水和物ゾル15gと、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.8gとの混合液を用いた。
前記α−アルミナ管の両端を密閉して前記塗布液中に、常温で5分間浸漬し、ゆっくり1分間かけて引き上げ、恒温乾燥器中で、30℃の温度で2時間乾燥し、150℃2時間の熱処理を施した。
得られた管状アルミナ複合分離膜の細孔径分布を測定したところ孔径100nm以下の細孔においてd peakは0.5nmであった。
得られた管状アルミナ複合分離膜を、実施例4と同様に、図3に示した構成の質量分析装置を用いて水/窒素混合気体から水を分離する試験に供した。分析の結果、水/窒素透過速度比は2415であり、水透過速度は、0.0000000256mol/m2・s・Paであった。
【0042】
比較例1
実施例1と同様にしてアルミナ複合分離膜を作成し水/IPA混合溶液の分離試験を行った。
但し、繊維状アルミナ水和物ゾルとして、平均短径:10nm、平均長径:50nm、平均アスペクト比:5の柱状アルミナ水和物粒子ゾルを用いた。得られたアルミナ複合分離膜の多孔質薄膜層の細孔分布測定結果において孔径100nm以下の細孔のd peakは4.2nmであった。
また、水/IPA混合溶液の分離試験において捕集された液体成分の水含有率は12容積%であり、透過液体成分の透過流束は6kg/m2・hであった。
【0043】
比較例2
実施例1と同様にしてアルミナ複合分離膜を作成し水/IPA混合溶液の分離試験を行った。
但し、繊維状アルミナ水和物ゾルとして、平均短径:5nm、平均長径:100nm、平均アスペクト比:20の柱状アルミナ水和物粒子ゾルを用いた。得られたアルミナ複合分離膜の多孔質薄膜層の細孔分布測定結果において孔径100nm以下の細孔のd peakは4.7nmであった。
また、水/IPA混合溶液の分離試験において捕集された液体成分の水含有率は15容積%であり、透過液体成分の透過流束は5.5kg/m2・hであった。
【0044】
比較例3(水/窒素混合気体の分離)
比較例1において柱状アルミニウム水和物ゾルを用いて作成されたアルミナ複合分離膜を実施例4と同様の水/窒素混合気体分離試験に供した。その結果水/窒素透過速度比は1であり、水の透過速度は0.00000541mol/m2・s・Paであった。水/窒素分離効果は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のアルミナ複合分離膜は、混合液体及び混合気体の分離に有用であるだけでなく、機能性物質(例えば、触媒、又は酵素など)の担体、電解隔壁、及び触媒膜さらにアルミナの触媒性能を活用して、混合液体の濃縮分離及び触媒反応の両効果を同時に発揮する膜材として、種々の産業において利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 管状アルミナ複合分離膜
2 下端
3 上端
4 SUSセル
5 水/IPA混合溶液
6 撹拌子
7 捕集器
8 液体窒素
9 液化成分
10 排出管
11 質量分析機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料から形成された支持体と、この支持体の少なくとも1面上に形成された多孔質薄膜層とを含み、
前記多孔質薄膜層中に、30〜5000の平均アスペクト比を有する繊維状アルミナ粒子が一方向に並列して重積しており、この並列・重積した繊維状アルミナ粒子の間に互に連通する細孔が形成されていることを特徴とするアルミナ複合分離膜。
【請求項2】
前記繊維状アルミナ粒子の平均短径が1〜10nmであり、かつその平均長径が100〜10000nmである、請求項1に記載のアルミナ複合分離膜。
【請求項3】
前記多孔質薄膜層中にシランカップリング剤が含まれている、請求項1又は2に記載のアルミナ複合分離膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミナ複合分離膜を製造するために、多孔質材料から形成された支持体の少なくとも1面上に、30〜5000の平均アスペクト比を有する繊維状アルミナ水和物粒子が分散含有されている水性アルミナ水和物ゾルの被覆層を形成し、この水性アルミナ水和物ゾル被覆層を5〜100℃の温度で10分以上の時間をかけて乾燥し、さらに130〜1000℃の温度で熱処理して、一方向に並列・重積している繊維状アルミナ粒子を含む多孔質薄膜層を形成する
ことを特徴とするアルミナ複合分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記アルミナ水和物粒子がベーマイト又は擬ベーマイトから選ばれた、少なくとも1種の粒子である、請求項4に記載のアルミナ複合分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記水性アルミナゾルがアルミニウムアルコキシドを加水分解し、解膠して調製されたものである、請求項4又は5に記載のアルミナ複合分離膜の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のアルミナ複合分離膜を用いて、水と水溶性アルコールとの混合物から、水を分離回収する方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のアルミナ複合分離膜を用いて、水蒸気と、それとは異種の気体との混合気体から、前記異種気体を分離除去する方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−255303(P2011−255303A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131392(P2010−131392)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】