説明

アルミニウム−セラミックス複合体及びその製造方法

【課題】アルミニウム−セラミックス複合体の残留応力を除去することにより、使用環境下での温度変化等による、平面度や寸法の変化量が極めて小さい寸法安定性に優れる大型部品にも適用可能なアルミニウム−セラミックス複合体を提供する。
【解決手段】アルミニウム−セラミックス複合体を製造した後、各種温度条件にて加熱冷却処理を行い、複合化時及び加工時の残留応力に加え、複合体由来の残留応力を除去することで、複合体由来の残留応力を低減することにより、アルミニウム−セラミックス複合体の寸法安定性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム−セラミックス複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックスを分散粒子として添加し、マトリックスを金属とする金属−セラミックス複合体は、金属とセラミックスの両方の特性を兼ね備えており、セラミックスの持つ低熱膨張特性、高剛性等の特徴を活かしながら、金属の持つ高靱性、加工性を付加した材料であり、いろいろな分野での利用が期待されている。従来、この様な材料としては、Cu−W、Cu−Mo等の材料が検討されていたが、比重が大きく、大型の装置部品として用いる場合に問題があり、機械装置メーカー等の業界より、次世代材料として金属−セラミックス複合体が注目されている。
【0003】
金属−セラミックス複合体としては、金属としてアルミニウムをマトリックスとする材料が、近年、活発に研究されている(特許文献1)。アルミニウムは、軽量で熱伝導特性に優れ且つ融点が低い為、比較的容易に複合化できる特徴がある。この様な、アルミニウム−セラミックス複合体の製造方法としては、従来、高圧鍛造法にてアルミニウム又はアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金を含浸するものが知られており、セラミックス粒子又は繊維による多孔体を作製し、高温、高圧下でアルミニウム合金を複合化させる方法である。
アルミニウム−セラミックス複合体の製法については、高圧鍛造法以外にも加圧を行わずに含浸を行う非加圧含浸法(特許文献2)、セラミックス粉末とアルミニウム粉末を混合して温度と圧力を加えて製造を行う粉末冶金法(特許文献3)等の製法がある。
【特許文献1】特開平3−509860号公報。
【特許文献2】特開平11−116362号公報。
【特許文献3】特開平10−8164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造治具等として、アルミニウム−セラミックス複合体を用いる場合、表面の平面度等の要求が厳しく、アルミニウム−セラミックス複合体は、研削加工等により表面を高精度に加工して用いられている。更に、当該用途では、使用環境下での温度変化等による、平面度や寸法の変化量が極めて小さいことが要求される為、アルミニウム−セラミックス複合体を半導体製造治具等に用いる場合、複合化時及び加工時の残留応力を除去する目的で、アニール処理を行っている。
【0005】
一方で、アルミニウム−セラミックス複合体は、熱膨張率の大きく異なる、アルミニウムとセラミックスの複合体であり、両物質間の界面には、複合化後の冷却過程で不可避的に残留応力が発生する。この両物質間の界面に発生する残留応力は、高温でのアニール処理を施したアルミニウム−セラミックス複合体であっても、その冷却過程で、両物質の熱膨張差により残留する。この複合体由来の残留応力は、アルミニウム−セラミックス複合体を室温近傍の温度域でヒートサイクルを負荷すると、部分的に開放されアルミニウム−セラミックス複合体の寸法が変化することがある。この為、アルミニウム−セラミックス複合体を、使用環境下での温度変化等による、平面度や寸法の変化量が極めて小さいことが要求される半導体製造治具等として用いるには、この複合体由来の残留応力を如何に除去するかが課題である。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アルミニウム−セラミックス複合体の残留応力を除去することにより、使用環境下での温度変化等による、平面度や寸法の変化量が極めて小さい寸法安定性に優れる大型部品にも適用可能なアルミニウム−セラミックス複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、アルミニウム−セラミックス複合体を製造した後、各種温度条件にて加熱冷却処理を行い、複合化時及び加工時の残留応力に加え、複合体由来の残留応力を除去することができることを見出した。この複合体由来の残留応力を低減することにより、アルミニウム−セラミックス複合体の寸法安定性を改善することが出来るとの知見を得て本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、セラミックス多孔体にアルミニウム合金を含浸し、歪み除去のためのアニール処理を行った後、温度−200℃〜350℃の温度範囲にて、温度差100℃以上の加熱冷却処理を行うことを特徴とするアルミニウム−セラミックス複合体の製造方法である。
【0009】
また、本発明は、セラミックス多孔体が、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするアルミニウム−セラミックス複合体の製造方法である。
【0010】
更に、本発明は、温度20℃と150℃のヒートサイクル試験を10回行った後の寸法変化量が、30ppm以下であることを特徴とするアルミニウム−セラミックス複合体である。
【0011】
また、本発明は、温度20℃の熱伝導率が100W/mK以上および温度150℃の熱膨張係数が10×10−6/K以下であることを特徴とするアルミニウム−セラミックス複合体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルミニウム−セラミックス複合体は、使用環境下の温度変化による寸法変化が極めて小さい寸法安定性に優れた材料であり、かつ高熱伝導という特性を有しており、静電チャック部材等の半導体製造治具として用いることができる特性の優れた放熱部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
金属−セラミックス複合体の製法は、大別すると含浸法と粉末冶金法の2種がある。このうち粉末冶金法は熱伝導率等の特性面で十分なものが得られておらず、実際に商品化されているのは、含浸法によるものである。含浸法にも種々の製法が有り、常圧で行う方法と、高圧下で行う方法(高圧鍛造法)がある。高圧鍛造法には、溶湯鍛造法とダイキャスト法がある。
【0014】
本発明に好適な方法は、高圧下で含浸を行う高圧鍛造法であり、溶湯鍛造法とダイキャスト法のどちらも使用できるが、緻密な複合体を得るには溶湯鍛造法がより好ましい。高圧鍛造法は、高圧容器内に、セラミックス多孔体(以下、プリフォームという)を装填し、これにアルミニウム合金の溶湯を高温、高圧下で含浸させて複合体を得る方法である。
【0015】
以下、本発明について、溶湯鍛造法による製法例を説明する。原料であるセラミックス粉末(必要に応じて例えばシリカ等の結合材を添加する)を、成形、焼成してプリフォームを作製する。得られたプリフォームは、所定の平面度を確保する為に、必要に応じて面加工を行う場合もある。また、必要に応じて最終製品で穴加工を施す部分については、最終製品での穴寸法より大きな寸法の穴を、予めプリフォームに加工する。予めプリフォームに穴加工を施した部分は、複合体でアルミニウム合金のみが満たされた部分となり、穴加工等を行う場合に通常の機械加工で容易に加工することができる。また、プリフォームに予め穴加工した部分に、アルミナ等のセラミックス繊維等を充填して複合化すると、アルミニウム合金部分の強度向上に効果があると共に、アルミニウム合金部を取り囲む複合体部との熱膨張差を小さくすることにより、アルミニウム合金と複合体の境界部に発生する応力を低減する効果もある。更に、プリフォームに予め穴加工した部分に、黒鉛成形体を充填して複合化すると、複合化後にアルミニウム−黒鉛複合体となり、アルミニウム−黒鉛複合体部を取り囲むアルミニウム−セラミックス複合体部との熱膨張差を極めて小さくすることができ、境界部に発生する応力を低減することができ、且つアルミニウム−黒鉛複合体は、加工性に優れ、加工コストを低減できる効果もある。
【0016】
本発明のアルミニウム−セラミックス複合体に用いられるセラミックスは、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムの群から選ばれる少なくとも1種以上からなることが好ましい。本発明のアルミニウム−セラミックス複合体は、その用途から高熱伝導性が要求される。アルミニウム−セラミックス複合体の熱伝導率は、セラミックス材料自体の熱伝導率と、アルミニウム合金との界面状態により決まる。この為、セラミックス材料として、熱伝導率、アルミニウム合金との濡れ性、並びに密着性の点から、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムの群から選ばれることが好ましい。
【0017】
本発明に係るプリフォームの製造方法に関して特に制限はなく、公知の方法で製造することが可能である。例えば、炭化珪素粉末にシリカ或いはアルミナ等を結合材として添加して混合、成形し、800℃以上で焼成することによって得ることができる。成形方法についても特に制限は無く、プレス成形、押し出し成形、鋳込み成形等を用いることができ、必要に応じて保形用バインダーの併用が可能である。
【0018】
本発明に用いるセラミックス多孔体の気孔率は、15〜60%が好ましく、25〜50%がより好ましい。アルミニウム−セラミックス複合体の特性、特に熱膨張係数は、用いるセラミックスの熱膨張係数とその含有量により決まる。本発明の放熱部品を、例えば静電チャックモジュールの放熱部品として用いる場合、静電チャックの素材(アルミナ、窒化アルミニウム等)との膨張係数の差が大きくなると、接合時に接合部に応力が発生し、部品が反る場合がある。この為、アルミニウム−セラミックス複合体の膨張係数を小さくする為、気孔率の上限は60%が好ましく、50%がより好ましい。一方、気孔率が15%未満では、アルミニウム合金との複合化が難しく、複合化時に気孔が残留する等の弊害が生じ、その結果、熱伝導率が低下する場合がある。セラミックス多孔体の気孔率は、用いるセラミックス粉末の種類、粒子形態、粒度及び配合比を調整することにより制御できる。また、セラミックス多孔体の気孔率は、成形方法によっても調整することができる。
【0019】
プリフォームを積層して一つのブロックとする方法は特に限定されるものではないが、例えば、次の方法が挙げられる。前記プリフォームを、離型剤を塗布した離型板で挟み積層して一つのブロックとする方法、前記プリフォームの両面に、アルミナまたはシリカを主成分とする繊維、並びに、球状または破砕形状の粒子を直接接するように配置し、離型板で挟み、一つのブロックとする方法である。
【0020】
次に、前記ブロックを500〜750℃程度で予備加熱後、高圧容器内に1個または2個以上配置し、ブロックの温度低下を防ぐために出来るだけ速やかにアルミニウム合金の溶湯を給湯して30MPa以上の圧力で加圧し、アルミニウム合金をプリフォームの空隙中に含浸させることで、アルミニウム−セラミックス複合体が得られる。
【0021】
得られたアルミニウム−セラミックス複合体は、含浸時の残留歪み除去の為に、アニール処理を行う。このアニール処理の温度は、使用するアルミニウム合金の種類によっても異なるが、アルミニウム合金の融点以下のより高い温度であることが好ましく、アルミニウム−シリコン系合金の場合、500℃〜550℃であることが好ましい。処理時間は、アルミニウム−セラミックス複合体の形状、サイズによっても異なるが、アルミニウム−−セラミックス複合体自体の温度が均一となった後、10分以上保持することが好ましい。更に、残留歪み除去の点から、アニール処理時の降温速度は、3℃/分以下であることが好ましい。アニール処理時の降温速度が3℃/分より速い場合、アルミニウム−セラミックス複合体に、冷却過程で歪みが発生し、得られた複合体の残留歪み除去が十分に行われない為である。また、アニール処理回数については、アルミニウム−セラミックス複合体の寸法変化が無くなる迄、複数回実施することが好ましく、アルミニウム−セラミックス複合体の種類にもよるが、3回以上実施することが好ましい。
【0022】
このアニール処理に関しては、複合化直後に実施することもできるが、その後の加工等の工程で発生する残留応力を除去する目的から、最終形状に近い形状となった時点で実施することが好ましい。一方で、含浸後にアニール処理を実施せずに形状加工を行い、その後にアニール処理を実施する場合、製品寸法が変化する為、予めその後のアニール処理等の処理での寸法変化量を加味して加工を行う必要がある。この為、含浸直後にアニール処理を実施して、含浸時の残留応力を除去した後、更に、最終形状に近い形状となった時点でアニール処理を行うことがより好ましい。
【0023】
本発明のアルミニウム−セラミックス複合体中のアルミニウム合金は、アルミニウムの他にマグネシウム等が含まれることがある。このようなアルミニウム合金として、例えばマグネシウム0.2〜3質量%含有したアルミニウム合金を用いる場合がある。マグネシウムを含有させることにより、セラミックス粒子と金属部分との結合がより強固になり好ましい。更に、含浸時にプリフォームの空隙内に十分にアルミニウム合金を浸透させるため、アルミニウム合金の融点がなるべく低いことが好ましいため、例えばシリコンを5〜25質量%含有したアルミニウム合金を用いる場合もある。アルミニウム合金中のアルミニウム、マグネシウム以外の金属成分に関しては、極端に特性が変化しない範囲であれば特に制限はなく、例えば銅等が含まれていても良い。
【0024】
得られたアルミニウム−セラミックス複合体の加工方法の例を説明する。本発明のアルミニウム−セラミックス複合体は、高圧鍛造法で作製するため、周囲をアルミニウム合金で覆われている。先ず、この表面アルミニウム合金層をグラインダー等で除去した後、ダイヤモンド製の工具を用いて平面研削盤等により面加工を行い平板状のアルミニウム−セラミックス複合体とする。尚、表面のアルミニウム合金層を除去せずに、直接、ダイヤモンド製の工具を用いて平面研削盤等により面加工することもできる。次に、マシニングセンター、ウォータージェット加工機、放電加工機等により、外周加工及び穴加工等を行う。特に、複雑なタップ穴等を加工する場合、前述したように、予め穴加工を行う部分のプリフォームを最終形状より数mm程度大きめに加工することが好ましい。アルミニウム合金含浸後にその部分がアルミニウム合金層となり、通常の機械加工により容易に加工することができ、加工コストを低減できる。
【0025】
本発明のアルミニウム−セラミックス複合体は、上述した加工を行うことにより、平板で両主面においてアルミニウム−セラミックス複合体が露出してなることを特徴とする。表面のアルミニウム合金層が完全に除去できず残留した場合、アルミニウム−セラミックス複合体とアルミニウム合金層の熱膨張率の差より、使用時の温度変化で反りが発生し、温度勾配のある環境下で高精度の平坦度等が要求される用途で用いられる治具、例えば半導体製造治具等に用いる場合、必要とする平坦度等が確保できなくなることがある。
【0026】
この様にして得られたアルミニウム−セラミックス複合体には、アルミニウム合金とセラミックスの熱膨張差に由来する残留応力(以下、複合体由来の残留応力と云う)、が不可避的に存在する。この複合体由来の残留応力は、熱膨張率の大きく異なる、アルミニウムとセラミックスの両物質間の界面に、複合化後の冷却過程で不可避的に発生する残留応力であり、通常の高温域でのアニール処理を施したアルミニウム−セラミックス複合体であっても、その冷却過程で、両物質の熱膨張差により残留する。
【0027】
この為、この複合体由来の残留応力を除去する為に、温度−200℃〜350℃の温度範囲にて、温度差100℃以上の加熱冷却処理を行うことが好ましい。この加熱冷却処理に関しては、一般的な使用環境温度に近い温度域で、より温度差の大きい処理を行うことが好ましい。処理温度の下限に関しては、冷媒の関係から、温度−200℃であり、好ましくは、温度−70℃である。また、処理温度の上限に関しては、アルミニウム合金のクリープ温度以下であることが好ましく、温度350℃であり、好ましくは、温度300℃である。温度350℃を超えると、処理温度からアルミニウム合金のクリープ温度迄に冷却過程で、アルミニウム−セラミックス複合体に残留応力が発生し、本発明が目的とする残留歪み除去が十分に実施できない為である。加熱冷却処理の温度域に関しては、アルミニウム−セラミックス複合体の使用される環境温度域を含む温度域で実施することが好ましく、より好ましくは、想定される使用環境温度域の低温側及び高温側を含む温度域である。
【0028】
加熱冷却処理の温度差については、温度差100℃以上であり、より好ましくは、温度差120℃以上であり、更に好ましくは、温度差150℃以上である。加熱冷却処理の温度差が100℃未満では、複合体由来の残留応力除去が十分ではなく、好ましくない。但し、極端に加熱冷却処理回数を増やせば、温度差100℃未満でも複合体由来の残留応力除去は可能であるが、生産性、コスト面から現実的ではない。
【0029】
加熱冷却処理時の保持時間に関しては、製品温度が所定温度に達するに必要な時間であり、気相の場合は20分以上、液相の場合は10分以上であることが好ましい。また、加熱冷却処理回数に関しては、アルミニウム−セラミックス複合体の種類、処理温度域、温度差により異なるが、製品寸法が安定する迄(具体的には製品寸法増が無くなる迄)実施することが好ましい。
【0030】
加熱冷却処理後のアルミニウム−セラミックス複合体は、複合体由来の残留応力が除去されている為、その後の温度20℃と150℃のヒートサイクル試験を10回実施した場合、その際の寸法変化量が30ppm以下であり、寸法安定性に優れている。一方、加熱冷却処理での複合体由来の残留応力除去が不十分な場合は、温度20℃と150℃のヒートサイクル試験を10回実施した場合、寸法変化量が30ppmを超えてしまうことがあり、この場合は、更に、加熱冷却処理を実施することにより、目的とする寸法安定性を確保することが出来る。
【0031】
本発明のアルミニウム−セラミックス複合体は、温度150℃の熱膨張係数が10×10−6/K以下であることが好ましく、温度勾配のある環境下で高精度の平坦度等が要求される用途で用いられる治具、例えば半導体製造治具等に好適である。温度150℃の熱膨張係数が10×10−6/Kを超えると、上記した半導体製造治具等に用いる場合、使用時の微妙な温度勾配により、複合体自体の熱膨張により平坦度等が確保できなくなることがある。熱膨張係数については、例えばセラミックス製の静電チャック等の部材と接合して用いる場合、接合する部材の熱膨張係数に合わせることが好ましい。
【0032】
また、本発明の複合体は、温度20℃における熱伝導率が100W/mK以上であることが好ましい。これは、放熱が要求される部品に用いる場合に好適であり、且つ上記した半導体製造治具等に用いる場合にも、熱伝導特性に優れる材料は、複合体自他の熱勾配を低減する効果があり好ましい。
【実施例】
【0033】
(実施例1〜11、比較例1〜4)
炭化珪素粉末A(大平洋ランダム社製:NG−80、平均粒径:200μm)1200g、炭化珪素粉末B(大平洋ランダム社製:NG−150、平均粒径:100μm)1200g、炭化珪素粉末C(屋久島電工社製:GC−1000F、平均粒径:10μm)600g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)300gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、Φ300mm×18mmの寸法の平板状に面圧30MPaでプレス成形した。
【0034】
得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、大気中、温度950℃で2時間焼成して、気孔率が28%の炭化珪素プリフォームを得た。得られた炭化珪素プリフォームは、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、15mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法がΦ290mmの形状に外周部を加工した。
【0035】
得られた炭化珪素プリフォームは、両主面を0.5mmtの黒鉛シートで挟んで、上下に12mm厚みの鉄板を配置して、M10のボルト8本で連結して一つのブロックとした。次に、このブロックを電気炉で650℃に予備加熱した後、あらかじめ加熱しておいた内径Φ400mm×300mmtのプレス型内に収め、シリコンを12質量%及びマグネシウムを1質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で25分間加圧して炭化珪素プリフォームにアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて離型板の形状に沿って切断し、挟んだ黒鉛シートをはがしてアルミニウム−炭化珪素複合体を得た。
【0036】
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素複合体より、研削加工により熱膨張係数測定用試験体(直径3mm長さ10mm)、熱伝導率測定用試験体(25mm×25mm×1mm)を作製した。それぞれの試験片を用いて、温度150℃の熱膨張係数を熱膨張計(セイコー電子工業社製;TMA300)で、温度20℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法(アルバック社製;TC3000)で測定した。その結果、温度150℃の熱膨張係数は6.2×10-6/K、温度20℃での熱伝導率は215W/mKであった。
【0037】
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素複合体を、平面研削盤にてダイヤモンド工具を用いて、厚みが:14mmとなるように両面を均一に研削加工した。その後、部材を外形寸法がΦ280mmの形状に外周部を研削加工した。得られた加工品は、表1に示す条件にて、含浸時及び加工時の歪み除去のためのアニール処理を行った後、表2に示す条件の加熱冷却処理を実施した。アルミニウム−炭化珪素複合体の各処理前後での外径(直径)寸法の変化量を三次元形状測定機で計測した。その結果を表1及び表2に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
次に、各処理品を温度20℃で60分間保持した後、温度150℃に加熱した乾燥器に投入し、60分間保持するヒートサイクル試験を10回行った。ヒートサイクル前後での各処理品の外径(直径)寸法の変化量を表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
(実施例12)
炭化珪素粉末B:1000g、炭化珪素粉末C:2000g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)300gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、Φ300mm×18mmの寸法の平板状に面圧30MPaでプレス成形した。得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、大気中、温度950℃で2時間焼成して、気孔率が40%の炭化珪素プリフォームを得た。得られた炭化珪素プリフォームは、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、15mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法がΦ290mmの形状に外周部を加工した。
【0043】
得られた炭化珪素プリフォームは、両主面を0.5mmtの黒鉛シートで挟んで、上下に12mm厚みの鉄板を配置して、M10のボルト8本で連結して一つのブロックとした。次に、このブロックを電気炉で700℃に予備加熱した後、あらかじめ加熱しておいた内径Φ400mm×300mmtのプレス型内に収め、マグネシウムを1質量%含有するアルミニウム合金の溶湯を注ぎ、100MPaの圧力で25分間加圧して炭化珪素プリフォームにアルミニウム合金を含浸させた。室温まで冷却した後、湿式バンドソーにて離型板の形状に沿って切断し、挟んだ黒鉛シートをはがしてアルミニウム−炭化珪素複合体を得た。
【0044】
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素複合体より、研削加工により熱膨張係数測定用試験体、熱伝導率測定用試験体を作製した。それぞれの試験片を用いて、温度150℃の熱膨張係数を熱膨張計で、温度20℃での熱伝導率をレーザーフラッシュ法で測定した。その結果、温度150℃の熱膨張係数は8.5×10-6/K、温度20℃での熱伝導率は205W/mKであった。
【0045】
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素複合体を、平面研削盤にてダイヤモンド工具を用いて、厚みが:14mmとなるように両面を均一に研削加工した。その後、部材を外形寸法がΦ280mmの形状に外周部を研削加工した。得られた加工品は、含浸時及び加工時の歪み除去のため、4時間で温度530℃まで加熱して2時間保持した後、12時間で温度20℃まで冷却するアニール処理を5回行った後、温度−70℃で30分間保持した後、温度80℃で30分間保持する加熱冷却処理を30回実施した。アルミニウム−炭化珪素複合体の各処理前後での外径(直径)寸法の変化量を三次元形状測定機で計測した。その結果、アニール処理前後で305μmの寸法増加、加熱冷却処理前後で35μmの寸法増加があった。
【0046】
次に、処理品を温度20℃で60分間保持した後、温度150℃に加熱した乾燥器に投入し、60分間保持するヒートサイクル試験を10回行った。ヒートサイクル前後での各処理品の外径(直径)寸法の変化量は16ppmであった。
【0047】
(実施例13)
炭化珪素粉末A:1500g、炭化珪素粉末B:900g、窒化珪素粉末(電気化学工業社製:SN−9S、平均粒径:2μm)600g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)300gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、Φ300mm×18mmtの寸法の平板状に圧力30MPaでプレス成形した。
【0048】
得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、窒素雰囲気中、温度1200℃で2時間焼成して、気孔率が23%のプリフォームを得た。得られたプリフォームは、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、15mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法がΦ290mmの形状に外周部を加工した。得られたプリフォームは、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素/窒化珪素複合体を得た。
【0049】
得られたアルミニウム−炭化珪素/窒化珪素複合体より、研削加工により熱膨張係数測定用試験体、熱伝導率測定用試験体を作製した。それぞれの試験片を用いて、温度150℃の熱膨張係数、温度25℃での熱伝導率を測定した。その結果、温度150℃の熱膨張係数は4.9×10-6/Kであり、温度25℃の熱伝導率は160W/mKであった。
【0050】
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素/窒化珪素複合体を、平面研削盤にてダイヤモンド工具を用いて、厚みが:14mmとなるように両面を均一に研削加工した。その後、部材を外形寸法がΦ280mmの形状に外周部を研削加工した。得られた加工品は、含浸時及び加工時の歪み除去のため、4時間で温度530℃まで加熱して2時間保持した後、12時間で温度20℃まで冷却するアニール処理を5回行った後、温度−70℃で30分間保持した後、温度150℃で30分間保持する加熱冷却処理を30回実施した。アルミニウム−炭化珪素/窒化珪素複合体の各処理前後での外径(直径)寸法の変化量を三次元形状測定機で計測した。その結果、アニール処理前後で180μmの寸法増加、加熱冷却処理前後で47μmの寸法増加があった。
【0051】
次に、処理品を温度20℃で60分間保持した後、温度150℃に加熱した乾燥器に投入し、60分間保持するヒートサイクル試験を10回行った。ヒートサイクル前後での各処理品の外径(直径)寸法の変化量は12ppmであった。
【0052】
(実施例14)
炭化珪素粉末A:1200g、炭化珪素粉末B:1200g、窒化アルミニウム粉末(トクヤマ社製:Hグレード、平均粒径:1.2μm)600g、及びシリカゾル(日産化学社製:スノーテックス)300gを秤取し、攪拌混合機で30分間混合した後、Φ300mm×18mmtの寸法の平板状に圧力30MPaでプレス成形した。
【0053】
得られた成形体を、温度120℃で2時間乾燥後、窒素雰囲気中、温度1200℃で2時間焼成して、気孔率が25%のプリフォームを得た。得られたプリフォームは、平面研削盤でダイヤモンド製の砥石を用いて、15mmの厚みに面加工した後、マシニングセンターで外形寸法がΦ290mmの形状に外周部を加工した。得られたプリフォームは、実施例1と同様にして、アルミニウム−炭化珪素/窒化アルミニウム複合体を得た。
【0054】
得られたアルミニウム−炭化珪素/窒化アルミニウム複合体より、研削加工により熱膨張係数測定用試験体、熱伝導率測定用試験体を作製した。それぞれの試験片を用いて、温度150℃の熱膨張係数、温度25℃での熱伝導率を測定した。その結果、温度150℃の熱膨張係数は5.1×10-6/Kであり、温度20℃の熱伝導率は190W/mKであった。
【0055】
次に、得られたアルミニウム−炭化珪素/窒化アルミニウム複合体を、平面研削盤にてダイヤモンド工具を用いて、厚みが:14mmとなるように両面を均一に研削加工した。その後、部材を外形寸法がΦ280mmの形状に外周部を研削加工した。得られた加工品は、含浸時及び加工時の歪み除去のため、4時間で温度530℃まで加熱して2時間保持した後、12時間で温度20℃まで冷却するアニール処理を5回行った後、温度−70℃で30分間保持した後、温度100℃で30分間保持する加熱冷却処理を30回実施した。アルミニウム−炭化珪素/窒化アルミニウム複合体の各処理前後での外径(直径)寸法の変化量を三次元形状測定機で計測した。その結果、アニール処理前後で220μmの寸法増加、加熱冷却処理前後で43μmの寸法増加があった。
【0056】
次に、処理品を温度20℃で60分間保持した後、温度150℃に加熱した乾燥器に投入し、60分間保持するヒートサイクル試験を10回行った。ヒートサイクル前後での各処理品の外径(直径)寸法の変化量は14ppmであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス多孔体にアルミニウム合金を含浸し、アニール処理を行った後、温度−200℃〜350℃の温度範囲にて、温度差100℃以上の加熱冷却処理を行うことを特徴とするアルミニウム−セラミックス複合体の製造方法。
【請求項2】
セラミックス多孔体が、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム−セラミックス複合体の製造方法。
【請求項3】
温度20℃と150℃のヒートサイクル試験を10回行った後の寸法変化量が、30ppm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の製造方法で作製されたアルミニウム−セラミックス複合体。
【請求項4】
温度20℃の熱伝導率が100W/mK以上および温度150℃の熱膨張係数が10×10−6/K以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の製造方法で作製されたアルミニウム−セラミックス複合体。


【公開番号】特開2009−149455(P2009−149455A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326764(P2007−326764)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】