説明

アルミニウム合金のろう付け方法及びアルミニウム合金クラッド材

【課題】ろう付け性と耐食性を両立したアルミニウム合金のろう付け方法及びアルミニウム合金クラッド材を提供する。
【解決手段】Siを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドしたアルミニウム合金クラッド材に、ケイフッ化カリウムおよび不可避不純物からなるフラックスを塗布して、不活性ガス中で加熱することにより、材料中のSiとフラックスから置換反応により生成されるSiにより、少ないフラックス付着量でも良好にろう付けすることが可能となる。また、ろう付け後のアルミ製品材料は、優れた耐食性を有するため、より高品質のろう付け製品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付け加熱時にフラックスからSiを析出させてAl−Siろう材を生成してろう付けするアルミニウム合金のろう付け方法及びアルミニウム合金クラッド材に関するものであり、特に自動車用熱交換器を構成するチューブ材料であるアルミニウム合金のろう付け方法及びアルミニウム合金クラッド材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用熱交換器などのアルミニウム製品又はアルミニウム合金製品の接合には、ノコロックブレージング法と呼ばれるろう付け方法が広く使用されている。ノコロックブレージングは接合するアルミニウム製品又はアルミニウム合金製品部材およびろう材に、アルミフッ化カリウム等のKF−AlF系のフラックスを付着させ、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中でフラックスおよびろう材が溶融する温度まで加熱し、所定の部位をろう付けする方法である。
ろう材としてはAl−Si系のJIS4045合金やJIS4343合金が用いられる。特に自動車用熱交換器ではアルミニウム合金を心材として、ろう材をその表面にはり合わせてクラッドしたブレージングシートが使われることが多い。
【0003】
係る自動車用熱交換器は屋外の環境にさらされることが多いため耐食性を確保することが必要となる。特に、冷媒通路となるチューブ材は、腐食により貫通孔が発生すると、冷媒の漏れが発生して熱交換器として機能しなくなるため、防食処理が施されることが多い。この様なチューブ材の防食処理としては、チューブ材よりも電位的に卑な合金をチューブ材の表面に犠牲陽極材として設置し、優先的に腐食させることによりチューブ材の腐食を防ぐ方法が使われている。
たとえば、チューブ材の表面に電位的に卑になるZnを含有させた合金をクラッドして、犠牲陽極層とするのである。したがって、チューブ材とベア材を接合する場合は、チューブ材の表面にAl−Si−Zn系合金からなるろう材をクラッドしたブレージングシートを使ってろう付けし、熱交換器を構成していた。
【0004】
近年、熱交換器の小型軽量化が進み、熱交換器のチューブ材においても、薄肉化する傾向がある。これに対応して、より高耐食なチューブ材が必要となってきた。しかし、Al−Si−Zn系の犠牲陽極機能を有するろう材をクラッドしたブレージングシートでは、充分な耐食性を確保することが難しい。
充分な防食効果を得るためにろう材中により多量のZnを添加した場合には、ろう付け時にろう材の共晶部のZnが濃化するため、Zn濃化部が短時間のうちに腐食してしまい、防食機能が失われる。
これに対し、心材とAl−Si系ろう材層の間に、中間層としてAl−Zn系合金をクラッドしたブレージングシートがある。このブレージングシートではろう付け後に未溶融のAl−Zn系合金層が犠牲陽極層として残るため、Al−Si−Zn系合金をクラッドしたブレージングシートよりも耐食性に優れている。しかし、ブレージングシートの構成が複雑になるため、材料製造が難しく、コスト高になる。
【0005】
一方で、チューブ材にはAl−Si系ろう材をクラッドせずに、ケイフッ化カリウムを塗布してろう付けする方法が特許文献1や特許文献2に提案されている。この方法は、ろう付け加熱中にケイフッ化カリウムとアルミニウム製品又はアルミニウム合金製品材料(以下「アルミ製品材料」とする)が反応してAl−Si合金とアルミフッ化カリウムを生成し、ろう付する方法である。この方法ではAl−Si−Zn系のろう材合金をクラッドする必要は無く、Al−Zn系犠牲陽極材のみをクラッドすればよいので、良好な耐食性を得ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平08−267229
【特許文献2】特開平12−015481
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ケイフッ化カリウムからろう付けに十分な量のAl−Si合金を生成するためには多量のケイフッ化カリウムが必要になる。
また、その様に多量に塗布したとしても、アルミ製品材料と未接触のケイフッ化カリウムは未反応のフラックスとしてアルミ製品材料上に残ってしまい、十分な量のAl−Si合金が生成されず良好なろう付性を確保することができない。
本発明は、以上の従来技術の問題に鑑み、ろう付け性と耐食性を両立したアルミニウム合金のろう付け方法及びアルミニウム合金クラッド材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明のろう付け方法は、Siを3.0〜6.0%(wt%、以下同様)、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドしたアルミニウム合金クラッド材に、ケイフッ化カリウムおよび不可避不純物からなるフラックスを塗布して、不活性ガス中で加熱することを特徴とする。
【0009】
アルミフッ化カリウムを5〜40%若しくは亜鉛フッ化カリウムを10〜40%含有する様にするのが望ましい。
【0010】
またアルミフッ化カリウムと、亜鉛フッ化カリウムとを合わせ15〜40%含有する様にしてもよい。
【0011】
また本発明のろう付け方法に用いるアルミニウム合金クラッド材は、Siを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドした物であって、ケイフッ化カリウムを主成分とするフラックスを用いた不活性ガス中ろう付けに用いられる。
犠牲陽極材の厚さは25μm以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアルミニウム合金のろう付け方法及びアルミニウム合金クラッド材によれば、材料中のSiとフラックスから置換反応により生成されるSiにより、少ないフラックス付着量でも良好にろう付けすることが可能となる。また、ろう付け後のアルミニウム製品又はアルミニウム合金製品は、優れた耐食性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明する。
ケイフッ化カリウムからなるフラックスを塗布して、アルミ製品材料との置換反応によりろう材を生成してろう付する方法は、以前より提案されている。ケイフッ化カリウムとしては一般的にKSiFが使用される。
【0014】
アルミ製品材料上に塗布されたフラックスとアルミ製品材料との間には、ろう付け加熱の昇温中に下記の置換反応が起きていると考えられる。
3KSiF + 4Al → 3Si + 2KAlF + 2KAlF
生成したSiはアルミ製品材料中のAlとAl−Siろう材を生成するため、あらかじめAl−Siろう材をクラッドした材料を用いる必要が無い。また、生成したKAlF,KAlFは通常のノコロックブレージング法で使用されるフラックス成分であり、ろう付け加熱中のろう材が溶融する前に溶解し、アルミ製品材料表面の酸化膜を除去して、ろう付を可能にしている。
【0015】
しかし、ろう付けに十分な量のろう材をケイフッ化カリウムから生成するためには、多量のケイフッ化カリウムを塗布する必要がある。たとえば、厚さ20μmのAl−10%Si合金のろう材層をKSiFのフラックスから生成しようとすると、アルミ製品材料上には20g/m以上のフラックス塗布量で厚く塗布することが必要となる。フラックスを厚く塗布したチューブ材を使って熱交換器を組み付けると、ろう付け時の寸法変動が大きくなり、良好なろう付け性が得られないことが多い。
さらに、フラックスとアルミ製品材料の置換反応は相互が直接接触する領域でのみ生じるため、フラックスが厚く塗布したとしても必ずしも置換反応を促進することはできず、ろう付け後に反応に寄与しない未反応のケイフッ化カリウムが残ってしまうことがある。
【0016】
そこで、本発明ではフラックスを塗布する面にSiを含有した材料をクラッドし、アルミ製品材料からもSiを供給して、少ないケイフッ化カリウム塗布量でもろう付けに十分なAl−Siろう材を生成することを可能とした。
Siを含有したアルミ製品材料上にケイフッ化カリウムからなるフラックスを塗布してろう付け加熱すると、昇温中に置換反応が起こり、Siが生成する。アルミ製品材料上にはもともと3.0〜6.0%のSiが存在するため、フラックスから生成したSiが少量でも十分なろう材量が得られる。Si含有材の置換反応は表層でのみ発生し、しかもケイフッ化カリウムが置換反応によりすべて消費されてしまえば、それ以上の反応は起こらない。したがって、表層に生成したAl−Siろう材層の下には、未反応のSi含有層が残ることになる。
【0017】
したがって、Si含有材に犠牲陽極材としてZn等を添加したクラッド材を使用してろう付け加熱することにより、Al−Siろう材層の下にAl−Si−Zn合金の犠牲陽極層が未反応のまま残るため、優れた耐食性を確保することが出来る。
【0018】
Siの含有量を3.0〜6.0%としたのは下記の理由による。
Si含有量が3.0%未満だと、ろう付けに十分なSi量が確保できないため、生成するAl−Siろう材量が少なく、ろう付け性が低下する。
Siの含有量が6.0%を超えると、犠牲陽極材中のSiとケイフッ化カリウムから供給されるSiの合計Si量が多くなることにより、多量のAl−Siろう材が生成する。このため、犠牲陽極材の内部までAl−Siろう材による侵食が進み、未反応の犠牲陽極層が少なくなるため、耐食性が低下する。
また、未反応の犠牲陽極層内でも、部分的に溶融し、Zn等が濃化する部位が発生するため、犠牲陽極層の自己耐食性が著しく低下し、耐食性が低下する。
係るSiの含有量は3.0〜4.5%とするのがろう付け性と耐食性のバランスがよく、より好ましい。
【0019】
Znは犠牲陽極材として電位を卑にするために添加する。
Znの含有量を0.5〜6.5%としたのは、0.5%未満だと犠牲陽極材の効果が十分に得られないため、耐食性が低下する。また、Zn含有量が6.5%を超えると犠牲陽極層の溶融開始温度が低下するため、犠牲陽極層内で部分的な溶融が発生してZnの濃化が起こり、犠牲陽極層の自己耐食性が低下する。また、フラックスとの反応により生成したろう材部にもZnの濃化が発生し、ろう付け接合部が短時間で腐食して、剥離してしまう可能性がある。Znの含有量は1.0〜3.0%とするのがより好ましい。
【0020】
犠牲陽極材の厚さは25μm以上であることが望ましい。ケイフッ化カリウムと犠牲陽極材表面の置換反応によりAl−Siろう材が生成するが、表面に生成したAl−Siろう材は犠牲陽極材内部に拡散する。犠牲陽極材の厚さが25μm未満だと、拡散したろう材が心材まで到達するため、耐食性が低下する。
【0021】
次にフラックスの成分およびその限定理由を説明する。
フラックス成分のケイフッ化カリウムは、本発明の手法によりろう付するために必要なもので、一般的な成分はKSiFである。フラックス中のケイフッ化カリウム含有量が60%未満だとろう付け加熱中のAlとの反応により生成するSi量が少ないため、Al−Siろう材が少なくなり、ろう付け性が低下する。
【0022】
ケイフッ化カリウムを単独で使用してもかまわないが、さらにアルミフッ化カリウムまたは亜鉛フッ化カリウムをフラックスに添加することができる。
アルミフッ化カリウムはKAlF, KAlF, KAlF・HOの混合物として添加する。
アルミフッ化カリウムを添加することにより、ケイフッ化カリウムとAlの置換反応が促進し、速やかにSiが生成するため、未反応の残存ケイフッ化カリウムを少なくすることができる。
アルミフッ化カリウムは低融点であり、ケイフッ化カリウムとアルミの置換反応よりも低い温度で溶融を開始する。そのため、犠牲陽極材表面の酸化膜が破壊され、ケイフッ化カリウムとAlの接触部が増え、置換反応が促進される。
アルミフッ化カリウムの添加量が40%を超えると、ろう付け加熱中のAlとの反応により生成するSi量が少ないため、Al−Siろう材が少なくなり、ろう付け性が低下する。
【0023】
亜鉛フッ化カリウムとしてはKZnFを添加する。
亜鉛フッ化カリウムはAlと反応することによりアルミ製品材料の表面にZnを生成する。生成したZnはAl中に拡散するため、犠牲陽極材のZn濃度が上昇し、犠牲陽極材はより卑な電位となる。したがって、犠牲陽極材に添加されたZn含有量が少なくても、良好な耐食性を確保することができる。
亜鉛フッ化カリウムの添加量が40%を超えると、ろう付け加熱中のAlとの反応により生成するSi量が少ないため、Al−Siろう材が少なくなり、ろう付け性が低下する。
【0024】
心材としてはJISA3003等のAl−Mn系合金が適用される。さらに、犠牲陽極材と心材の電位差を確保するために、心材にCuを添加する方法も適用できる。また、ろう付け後の強度を確保するためにSi,Fe,Ti,Zr等の元素を添加する方法も適用できる。心材へのMg添加はろう付け後の強度確保には有効であるが、ケイフッ化カリウムとアルミの置換反応を妨げて、ろう付け性が大きく低下するため、添加量は0.5%以下に抑えたほうがよい。
【0025】
[実施例1]
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
JISA3003合金にCuを0.5%添加した組成の合金を金型鋳造し、厚さ40mmに面削して、心材用鋳塊を作製した。
表1に示す組成の合金を皮材用に鋳造し、500℃にて熱間圧延により所定の厚さまで圧延した。心材と皮材を表2に示す組み合わせおよびクラッド率で合わせ、熱間圧延により厚さ3mmまで圧延した。さらに冷間圧延により0.3mmまで圧延し、360℃×2時間の条件で焼鈍して、ブレージングシートを製造した。
【0026】
得られたブレージングシートを長さ100mm、幅20mmに切断した後、フラックスのアルコール懸濁液をブレージングシートの皮材面に塗布した。フラックスはケイフッ化カリウム(KSiF)粉末、アルミフッ化カリウム(KAlF)粉末、亜鉛フッ化カリウム(KZnF)粉末を表2に示す割合で混合したものを使用した。
【0027】
フラックス塗布量は塗布前後の重量測定により10g/mとした。フラックス塗布後のブレージングシートを熱交換器のチューブ材相当とし、フラックス塗布面にコルゲート加工したフィンを組み合わせて、熱交換器の模擬コアを作製した。フィン材としては、JISA3003合金にZnを1%添加し、板厚0.1mm、幅20mmのベア材を使用し、フィンピッチ3mmでコルゲート加工したものを使用した。模擬コアを窒素雰囲気中で600℃×3分の条件で加熱してろう付けした。また、従来例としてはノコロックブレージングで一般的に使用されるKF−AlF系のフラックス(KAlF等)を塗布して、同様にろう付け加熱した。
【0028】
ろう付け後の模擬コアについて、ブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定した。さらに、ろう付けできた模擬コアについて、耐食性試験を実施した。耐食性試験は、模擬コアの外面(コルゲートフィンが付いていない面)をマスキングし、JISH8681に準じたCASS試験を1000時間行った。CASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した。フィン接着率およびCASS試験後の最大孔食深さを表2に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
表1に示される様に本発明例A1〜A7の皮材はいずれもSiを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、特に本発明例A4がSiを上限値の6.0%に近い5.8%含有し、一方本発明例A5がZnを下限値の0.5%に近い0.6%含有し、本発明例A7がZnを上限値の6.5%に近い6.4%含有して製造された。
【0032】
これに対し各比較例の皮材にあっては、比較例A8はSi含有量が2.6%であって本発明の下限値である3.0%に到達せず、比較例A9はSi含有量が6.2%であって本発明の上限値である6.0%を超える。
比較例A10はZn含有量が0.4%であって本発明の下限値である0.5%に到達せず、 比較例A11はZn含有量が7.0%であって本発明の上限値である6.5%を超える。
比較例A12はSi含有量が7.5%であって本発明の上限値である6.0%を超え、また比較例A13はSi含有量が10.5%であって本発明の上限値である6.0%を超える。
【0033】
これらの各本発明例A1〜A7及び比較例A8〜A13の皮材を用いてなる各ブレージングシートの中で本発明例No.1〜No.7はそれぞれ皮材A1〜皮材A7を用い、クラッド率10%、クラッド厚30μm、塗布フラックスをKSiF100%として構成された。これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は本発明例No.1では85%であったが 本発明例No.2〜No.7ではいずれも100%であった。
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは本発明例No.5では80μmであったが本発明例No.1〜No.4及び本発明例No.6,No.7では35〜60μmであった。
【0034】
さらに本発明例No.8、No.9は皮材A2を用い、本発明例No.10は皮材A6を用いて構成され、クラッド率5〜15%、クラッド厚15〜45μm、塗布フラックスをKSiF100%として構成された。ただし皮材の厚さは本発明例No.9は25μmを超える45μmであったが、本発明例No.8及び本発明例No.10は25μmに達しない15μmであった。
その結果、これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は本発明例No.9では100%であったが 本発明例No.8、No.10ではいずれも90%であった。
【0035】
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは本発明例No.8、No.10ではそれぞれ80μm、75μmであったが本発明例No.9では45μmであった。
また本発明例No.11、No.12は皮材A1を用いて構成され、クラッド率10%、クラッド厚30μmとして構成された。ただし、塗布フラックスは本発明例No.11がKSiF96%、KAlF4%でありアルミフッ化カリウムを5〜40%含有するという条件には適合しない。一方、本発明例No.12は塗布フラックスの構成がKSiF94%、KAlF4 6%でありアルミフッ化カリウムを5〜40%含有するという条件に適合する。
【0036】
その結果、これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は本発明例No.11では85%であったが 本発明例No.12では100%であった。
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは本発明例No.11、No.12それぞれ50μm、55μmであった。
また本発明例No.13、No.14はそれぞれ皮材A3、A4を用い、クラッド率10%、クラッド厚30μmとして構成された。なお、塗布フラックスの構成は本発明例No.13がKSiF80%、KAlF20%であり、本発明例No.14はKSiF65%、KAlF35%でありアルミフッ化カリウムを5〜40%含有するという条件に適合する。
【0037】
その結果、これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は本発明例No.13では100%、本発明例No.14では95%であった。
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは本発明例No.13、No.14それぞれ50μm、55μmであった。
【0038】
また本発明例No.15〜No.17は皮材A5を用い、クラッド率10%、クラッド厚30μmとして構成された。ただし、塗布フラックスは本発明例No.15がKSiF82%、KZnF8%であり亜鉛フッ化カリウムを10〜40%含有するという条件には適合しない。一方、本発明例No.16は塗布フラックスの構成がKSiF88%、KZnF8%であり亜鉛フッ化カリウムを10〜40%含有するという条件に適合する。 さらに本発明例No.17は塗布フラックスの構成がKSiF65%、KZnF35%であり亜鉛フッ化カリウムを10〜40%含有するという条件に適合する。
【0039】
その結果、これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は本発明例No.17では90%であったが 本発明例No.15、16では100%であった。
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは本発明例No.16、No.17それぞれ50μm、40μmであり、本発明例No.15では80μmであった。
【0040】
さらに本発明例No.18は皮材A5を用い、クラッド率10%、クラッド厚30μmとして構成され、塗布フラックスはKSiF82%、KAlF6%、KZnF12%でありアルミフッ化カリウムと、亜鉛フッ化カリウムを合わせ15〜40%含有するという条件に適合する。
その結果、このブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は本発明例No.18では100%であった。
【0041】
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは本発明例No.18では50μmであった。
【0042】
比較例No.19〜No.22はそれぞれ比較例皮材A8〜A11を用い、クラッド率10%、クラッド厚30μm、塗布フラックスをKSiF100%として構成された。これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は比較例No.20〜No.21ではいずれも100%であったが、比較例No.19では20%にとどまった。
またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さを測定した最大孔食深さは比較例No.20では貫通孔が形成され、比較例No.21では200μm、比較例No.22では160μmに達し、各本発明例に対し格段に耐食性が劣悪であった。
【0043】
さらに比較例No.23、No.24は皮材A4を用いて構成され、クラッド率10%、クラッド厚30μmとして構成された。ただし、塗布フラックスは本発明例No.23がKSiF55%、KAlF45%でありアルミフッ化カリウムを40%以下含有するという上限を超える。また本発明例No.24はKSiF55%、KZnF45%であり亜鉛フッ化カリウムを40%以下含有するという上限を超える。そのため、これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率はそれぞれ35%、25%にとどまった。
【0044】
従来例No.25〜No.27はそれぞれ比較例皮材A9、A12、A13を用い、クラッド率10%、クラッド厚30μm、塗布フラックスをKSiF100%として構成された。これらのブレージングシートとコルゲートフィンの接合率を測定したフィン接着率は比較例No.26、No.27ではいずれも100%であったが、比較例No.25では20%にとどまった。またCASS試験後のブレージングシートについて、腐食深さの測定では比較例No.26、No.27共に貫通孔が形成された。
【0045】
以上の表2に示す結果から明らかなように、本発明例のNo.1〜18では、高いフィン接着率となり、優れたろう付け性であることを確認した。また、CASS試験の結果、犠牲防食効果により孔食の進行が抑えられていることを確認した。No.19は皮材のSi量が本発明の範囲よりも少ないため、ケイフッ化カリウムから生成したSi量ではろう材量が不十分であり、良好なろう付け性は得られなかった。No.20は皮材のSi量が本発明の範囲よりも多いため、皮材が短期間で腐食してしまい十分な犠牲防食効果が得られないため、貫通孔食が発生した。No..21とNo..22は皮材のZn量が本発明の範囲から外れているため、十分な犠牲防食効果が得られず、耐食性が劣る結果であった。No..23とNo..24は塗布フラックスのケイフッ化カリウム含有量が本発明の範囲よりも少ないため、生成するAl−Siろう材量が不十分なため、ろう付け性が劣る結果であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Siを3.0〜6.0%(wt%、以下同様)、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドしたアルミニウム合金クラッド材に、ケイフッ化カリウムおよび不可避不純物からなるフラックスを塗布して、不活性ガス中で加熱することを特徴とするアルミニウム合金のろう付け方法。
【請求項2】
Siを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドしたアルミニウム合金クラッド材を、アルミフッ化カリウムを5〜40%含有し、残部がケイフッ化カリウムおよび不可避不純物からなるフラックスを塗布して、不活性ガス中で加熱することを特徴とするアルミニウム合金のろう付け方法。
【請求項3】
Siを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドしたアルミニウム合金クラッド材を、亜鉛フッ化カリウムを10〜40%含有し、残部がケイフッ化カリウムおよび不可避不純物からなるフラックスを塗布して、不活性ガス中で加熱することを特徴とするアルミニウム合金のろう付け方法。
【請求項4】
Siを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドしたアルミニウム合金クラッド材を、アルミフッ化カリウムと、亜鉛フッ化カリウムを合わせて15〜40%含有し、残部がケイフッ化カリウムおよび不可避不純物からなるフラックスを塗布して、不活性ガス中で加熱することを特徴とするアルミニウム合金のろう付け方法。

【請求項5】
Siを3.0〜6.0%、Znを0.5〜6.5%含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる犠牲陽極材を、心材の少なくとも片面にクラッドした、ケイフッ化カリウムを主成分とするフラックスを用いた不活性ガス中ろう付けに用いられるアルミニウム合金クラッド材。
【請求項6】
犠牲陽極材の厚さが25μm以上である請求項5に記載のアルミニウム合金クラッド材。


【公開番号】特開2009−183980(P2009−183980A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26637(P2008−26637)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)