説明

アルミノホスフェートモレキュラーシーブ、その合成及び使用

大きい孔の(メタロ)アルミノホスフェートモレキュラーシーブが開示される。その物質は表4に列挙された線を含むX線回折パターンを有し、構造誘導剤としての4-ジメチルアミノピリジンの存在下で合成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大きい孔のアルミノホスフェートモレキュラーシーブ、又はその置換誘導体、低フッ化物媒体又は無フッ化物媒体中のその合成方法及び有機変換反応におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性モレキュラーシーブは隅共有〔TO4〕四面体の3次元の、4連結骨格(framework)を有し、この場合、Tはあらゆる四面体配位陽イオンである。モレキュラーシーブの既知の形態の中に、アルミノシリケート(これは〔SiO4〕及び〔AlO4〕隅共有四面体単位の三次元の微小孔の結晶骨格を含む)、アルミノホスフェート(ALPO)(その骨格は〔AlO4〕及び〔PO4〕隅共有四面体単位を含む)及びシリコアルミノホスフェート(SAPO)(その骨格は〔SiO4〕、〔AlO4〕及び〔PO4〕隅共有四面体単位を含む)がある。
モレキュラーシーブはゼオライト命名法のIUPAC委員会の規則に従って国際ゼオライト協会の構造委員会により分類されていた。この分類によれば、骨格型ゼオライト及びゼオライト型モレキュラーシーブ(これらについて、構造が証明されていた)が三文字コードを指定され、Atlas of Zeolite Framework Types, 第5編, Elsevier, London, England (2001)(これが参考として本明細書に完全に含まれる)に記載されている。
モレキュラーシーブは典型的には孔を特定する環のサイズに関して記載され、この場合、そのサイズは環中のT原子の数に基づいている。その他の骨格型特性として、ケージを形成する環の配置、及び存在する場合には、チャンネルの寸法、及びケージ間のスペースが挙げられる。van Bekkumら, Introduction to Zeolite Science and Practice, Second Completely Revised and Expanded Edition, 137巻, 1-67頁, Elsevier Science, B.V., Amsterdam, Netherlands (2001)を参照のこと。
【0003】
一般に、モレキュラーシーブは小さい孔の物質、中間の孔の物質及び大きい孔の物質に分けられる。こうして小さい孔のモレキュラーシーブは典型的には8個以下のT原子の環により特定された孔を有し、かつ約0.5nm(5Å)未満の平均孔サイズを有する。中間の孔のモレキュラーシーブは典型的には10個のT原子の環により特定された孔を有し、かつ約0.5〜0.6nm(5〜6Å)の平均孔サイズを有し、一方、大きい孔の物質は12個以上のT原子の環により特定された孔及び0.6nm(6Å)より大きい孔サイズを有する。
ゼオライト及び(メタロ)アルミノホスフェートにより例示されるような、結晶性モレキュラーシーブは、石油処理及び石油化学用途に重要な市販物質である。夫々の特異な構造型が触媒及び分離における用途に新しい可能性を与えるので、それらの発見のために、工業及び学会の両方で、研究努力が持続していた。
多くのモレキュラーシーブが有機誘導剤(organic directing agent)、例えば、有機窒素化合物の存在下で合成される。例えば、CHA骨格型の結晶性シリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブ(小さい孔の物質)が、テトラエチルアンモニウム陽イオン及びN,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジメチルブタノールアミン、N,N-ジメチルヘプタノールアミン、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルブチレンジアミン、N,N-ジメチルヘプチレンジアミン、N,N-ジメチルヘキシレンジアミン、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルペンチルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン及びN,N-ジメチルヘプチルアミンの一種以上から選ばれた一つ以上のジメチルアミノ部分を含む有機誘導剤混合物の存在下で合成し得ることが、例えば、米国特許第6,680,278号から知られている。CHA骨格型物質の合成に使用されていたその他の有機誘導剤として、イソプロピルアミン又はジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、1-メチルアミダゾール、モルホリン、ピリジン、ピペリジン、ジエチルエタノールアミン、及びN,N,N',N'-テトラエチルエチレンジアミンが挙げられる。
【0004】
また、モレキュラーシーブ合成においてミネラル化剤として、フッ化物含有化合物、例えば、フッ化水素を使用することが知られている。例えば、EP-A-337,479はZSM-5の合成のためにガラス中のシリカをミネラル化するための低pHにおける水中のフッ化水素の使用を開示している。加えて、米国特許出願公開第2003/0231999号(2003年12月18日に公開され、参考として本明細書に含まれる)は、CHA骨格型を有するアルミノホスフェート又はシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブが米国特許第6,680,278号に開示されたジメチルアミノ化合物を誘導剤として使用してフッ化物イオンの存在下で合成し得ることを開示している。しかしながら、フッ化物に基づく合成はそれらがその合成媒体中でフッ化水素を使用し、かつ/又は有機誘導剤をモレキュラーシーブ生成物から除去するための焼成の際にフッ化水素を生じる点で環境上の問題を課している。
現在、特異な骨格物質の合成をもたらす完全に合理的なアプローチは、全ての結晶性の微小孔の物質が準安定相であり、それらが動的生成物であるという事実のために利用できない。それ故、それらの発見はしばしば掘り出しものである。
本発明者らの研究は二つの知見をもたらした:4-DMAPyが低フッ化物媒体又は無フッ化物媒体中でコロイドのSAPO-34種の存在下で低シリカSAPO-CHAの合成を誘導でき、かつ、平行実験から、SAPO-34種を用いないで、無フッ化物条件又は低フッ化物条件下の同誘導剤の使用がEMM-8と称される本大孔アルミノホスフェートの生成を予期しないことにもたらした。
2001年10月付けの、Chemical Journal of Chinese Universities, 22巻, 10号, 192-195頁の文献によれば、DMAPyがアルミノホスフェートである、NK-101の合成に鋳型として使用されていた。しかしながら、図1はNK-101のX線回折パターンとEMM-8のそれの比較を示し、この比較から本発明の物質がNK-101とは異なることが明らかである。特に、NK-101のX線回折パターンでは、最も顕著な回折ピークが約17°及び19°の2θ値にあり、一方、これらのピークはEMM-8のX線回折パターンに存在しない。
2004年6月23日に米国化学協会によりWebに公表された、“SSZ-51−新規アルミノホスフェートゼオライト:合成、結晶構造、NMR、及び脱水特性”と題する論文に、Morrisらは彼らが実験式Al4(PO4)4F.C7N2H11・0.5H2Oを有する、新規アルミノホスフェートゼオ型骨格、SSZ-51を合成し、その構造を解明したと報告している。その合成は構造誘導剤として4-ジメチルアミノピリジンを使用し、ミネラル化剤としてのフッ化物イオンの存在を必要とする。SSZ-51の構造はAFR骨格型物質である、SAPO-40のそれに密接に関連しており、8員環及び12員環のウインドーにより特定される交差チャンネルを含むと言われている。SSZ-51はEMM-8と同形であることが明らかである。
2003年12月18日に公開された米国特許出願公開第2003/0232718号は少なくとも一つのジメチルアミノ部分を含む鋳型を使用するシリコアルミノホスフェートモレキュラーシーブの合成を開示している。このような鋳型の使用はCHA骨格型の良好な品質のSAPOモレキュラーシーブをもたらすと言われている。
EP-A-0324082はアルミナボディ又はシリカ-アルミナボディを反応性リン源及び有機鋳型剤を含む液体反応混合物と接触させることによる非ゼオライトモレキュラーシーブの合成を開示している。
【発明の開示】
【0005】
(発明の概要)
一局面において、本発明は、橋かけ原子により連結された四面体配位原子(T)を含み、かつ下記の表3に列挙された配位シーケンス及び頂点記号を有する骨格を有する結晶性モレキュラーシーブにある。
別の局面において、本発明は、その合成されたままの形態で、下記の表4に列挙された線を含むX線回折パターンを有する結晶性モレキュラーシーブにある。その焼成形態で、本発明の結晶性モレキュラーシーブは下記の表5に列挙された線を含むX線回折パターンを有する。本明細書に使用される“線を含む”という表現はピークが表に示された線に、又はその付近に存在すると予想されるが、必ずしも明記された相対強度(これらは後に説明されるように幾つかの因子に応じて変化し得る)ではないことを意味する。
【0006】
更に別の局面において、本発明はその合成されたままの形態で、下記の表4に列挙された線を含むX線回折パターンを有し、かつその合成されたままの形態で、かつ無水の状態に基づいて、実験式: mR:Fa:(MxAlyPz)O2
(式中、Rは少なくとも一つの誘導剤、好ましくは4-ジメチルアミノピリジンを表わし、mは(MxAlyPz)O21モル当りのRのモル数であり、mは0〜1、例えば、0.1〜約0.5、例えば、0.1〜約0.3の値を有し、aは(MxAlyPz)O21モル当りのフッ化物イオン(F)のモル数であり、かつa/yは0.25未満であり、好ましくは0であり、x、y、及びzは四面体酸化物としての、M、Al及びPのモル分率を表わし、かつMは元素の周期律表の1族〜14族及びランタノイドの一種から選ばれた金属であり、好ましくはMはB、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、Mg、Mn、Ni、Si、Sn、Ti、Zn及びZrから選ばれる)により表わされる結晶性物質にある。Mはケイ素であることが最も好ましい。一実施態様において、xが0〜約0.25であり、yが約0.3〜約0.7であり、かつzが約0.25〜約0.7である。別の実施態様において、xが0〜約0.15であり、yが約0.4〜約0.6であり、かつzが約0.3〜約0.6である。更に別の実施態様において、xが約0〜約0.12であり、yが約0.45〜約0.55であり、かつzが約0.35〜約0.55である。ALPOモレキュラーシーブについて、xがゼロである。
更に別の局面において、本発明は本発明の結晶性物質の合成方法にあり、その方法は(a)水、アルミニウム源、リン源、4-ジメチルアミノピリジンを含む少なくとも一種の構造誘導剤、必要により金属M源及び必要によりフッ化物イオン源を含む反応混合物(前記反応混合物のF:Al2O3モル比は好ましくは0.5未満であり、最も好ましくは0である)を生成し、(b)その反応混合物からの前記結晶性物質の結晶化を誘導し、(c)前記結晶性物質を反応混合物から回収することを特徴とする。
更なる局面において、本発明はCHA骨格型を有する結晶性物質の合成方法にあり、その方法は(a)アルミニウム源、リン源、必要により金属M源、4-ジメチルアミノピリジンを含む少なくとも一種の誘導剤及びCHA骨格型物質、例えば、SAPO-34の種を含む反応混合物を生成し、(b)その反応混合物からの前記結晶性物質の結晶化を誘導し、(c)前記結晶性物質を反応混合物から回収することを特徴とする。
更に別の局面において、本発明は吸収剤として、また有機変換反応における触媒としての本発明の前記一局面の結晶性物質の使用にある。
【0007】
(本発明の態様の詳細な説明)
一実施態様において、本発明は多孔性結晶性物質、EMM-8、及び有機誘導剤、4-ジメチルアミノピリジンを用いる低フッ化物媒体又は無フッ化物媒体中のその合成に関する。結晶性構造は誘導剤を除去するための焼成後に無傷で残り、吸着データは得られる物質が大きい孔を有することを示す。特に、焼成された物質はかなりの量のメシチレンだけでなく、2,2-ジメチルブタン、n-ヘキサン、及びメタノールを吸着する。また、本発明は吸収剤として、また有機変換反応における触媒としての使用にあり、有機誘導剤、4-ジメチルアミノピリジンによるCHA骨格物質の合成にある。
本発明のEMM-8は橋かけ原子により連結された四面体原子の骨格を有する多孔性結晶性物質であり、その四面体原子骨格はその骨格中の四面体配位原子間の相互連結により特定される。多孔性結晶性物質について、EMM-8の構造はその骨格中の四面体配位原子間の相互連結により特定し得る。特に、EMM-8は橋かけ原子により連結された四面体(T)原子の骨格を有し、その四面体原子骨格は下記の表1に示される様式で最も近い四面体(T)原子を連結することにより特定される。


【0008】
表1

【0009】
EMM-8の構造を上記表1中のように四面体原子の相互連結により記載することに加えて、それはその単位胞により特定されてもよく、それは物質の全ての構造元素を含む最小の反復単位である。EMM-8の孔構造が12員環チャンネルの方向の下に図9に示される(これは四面体原子のみを示す)。図9中に四つの単位胞単位があり、その制限が四つのボックスにより特定される。表2は単位胞中の夫々の四面体原子の典型的な位置(Åの単位)を列挙する。夫々の四面体原子が橋かけ原子(これらはまた隣接四面体原子に結合される)に結合される。四面体原子は四面体配位を有することができるものであり、リチウム、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、インジウム、スズ、及びアンチモンの一種以上を含むが、これらに限定されない。橋かけ原子は二つの四面体原子を連結することができるものであり、これらの例として、酸素原子、窒素原子、フッ素原子、硫黄原子、セレン原子、及び炭素原子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
酸素の場合、橋かけ酸素がまた水素原子に連結されてヒドロキシル基(-OH-)を形成することがまた可能である。炭素の場合、炭素がまた二つの水素原子に連結されてメチレン基(-CH2-)を形成することがまた可能である。例えば、橋かけメチレン基がジルコニウムジホスホネート、MIL-57中に見られた。C. Serre, G. Ferey, J. Mater. Chem. 12, 2367頁(2002)を参照のこと。橋かけ硫黄原子及びセレン原子が微小孔の物質のUCR-20-23ファミリー中に見られた。N. Zheng, X. Bu, B. Wang, P. Feng, Science 298, 2366頁(2002)を参照のこと。橋かけフッ素原子がリチウムヒドラジニウムフルオロベリレート(これはABW構造型を有する)中に見られた。M.R. Anderson, I.D. Brown, S. Vilminot, Acta Cryst. B29, 2626頁(1973)を参照のこと。四面体原子はその他の結晶力(例えば、無機又は有機種の存在)のために、又は四面体原子及び橋かけ原子の選択により移動し得るので、±0.1nm(±1Å)の範囲がx座標位置及びy座標位置について暗示され、また±0.05nm(±0.5Å)の範囲が表2中のz座標位置について暗示される。



































【0011】
表2:Tがケイ素であり且つ橋かけ原子が酸素である場合のEMM-8構造に関する四面体(T)原子の位置

【0012】
EMM-8の完全構造は完全に連結された三次元骨格中で先に特定された多くの単位胞を連結することによりつくられる。一つの単位胞中の四面体原子がその隣接単位胞の全て中の或る四面体原子に連結される。表1はEMM-8の所定の単位胞についての全ての四面体原子の連結を列挙するが、連結は同じ単位胞中の特別な原子に対してではなくてもよいが、隣接単位胞に対してであってもよい。表1に列挙された連結の全ては、それらが同じ単位胞又は隣接単位胞中にあるか否かにかかわらず、それらが最も近い四面体(T)原子に対してであるようなものである。
上記表2に示されたデカルト座標が理想構造中の四面体原子の位置を正確に反映し得るが、真の構造は上記表1に示されるような骨格原子間の連結性により一層正確に記載し得る。この連結性を記載する別の方法はJournal of Solid State Chemistry 27, 349頁(1979)にW.M. Meier及びH.J. Moeckにより微小孔の骨格に適用されたような配位シーケンスの使用による。微小孔の骨格では、夫々の四面体原子、N0, (T-原子)が橋かけ原子(典型的には酸素)によりN1=4隣接T原子に連結される。次いでこれらの隣接T原子が次のシェル中のN2T原子に連結される。第二のシェル中のN2原子が第三のシェル中のN3T原子に連結され、以下同様である。夫々のT原子のみが一度にカウントされ、その結果、例えば、T原子が4員環中にある場合、第四のシェルでN0原子が2回目にカウントされず、以下同様である。この方法を使用して、配位シーケンスがT原子の4連結ネットの夫々の特異なT原子について決められる。下記の線が夫々のシェルについてT原子の最大数を列挙する。
N0=1 N1<4 N2<12 N3<36 Nk<4・3k-1
【0013】
3次元骨格中の所定のT原子について、その4個の隣接T原子への連結と関連する六つの角度がある。頂点記号と称される、これらの六つの角度の夫々と関連する最小の環のサイズを示す方法が、Zeolites 19, 370頁(1997)にM.O'Keeffe及びS.T. Hydeにより開発された。そのオーダー(order)は向かい合う対の角度が一緒に組分けされるようなものである。例えば、頂点記号4.4.6.6.62.8は、対角の第一の対が4環を含み、第二の対が6環を含み、第三の対が二つの6環及び8環を含むことを示す。国際ゼオライト協会の構造委員会は、配位シーケンス及び頂点記号の組み合わせが一緒になって特別な骨格トポロジーについて特異であることが明らかであり、その結果、それらが異なる型の微小孔の骨格を明瞭に区別するのに使用し得ることを認めている(“ゼオライト骨格型の図表集”, Ch. Baerlocher, W.M. Meier, D.H. Olson, Elsevier, Amsterdam (2001)を参照のこと)。所定の構造について配位シーケンス及び頂点記号を決める一つの方法はコンピュータプログラムzeoTsitesを使用して骨格原子の原子座標からである(G. Sastre, J.D. Gale, 微小孔の物質及び中間孔の物質 43, 27頁(2001)を参照のこと)。
EMM-8についての配位シーケンス及び頂点記号が表3に示される。表3に列挙されたT原子連結性はT原子のみについてのものである。橋かけ原子、例えば、酸素がT原子を通常連結する。T原子の殆どが橋かけ原子によりその他のT原子に連結されるが、骨格を有する物質の特別な結晶では、幾つかのT原子が互いに連結されなくてもよいことが可能であることが認められる。非連結性の理由として、結晶の端部に位置されたT原子によること及び、例えば、結晶中の空孔により生じた欠陥部位によることが挙げられるが、これらに限定されない。表3に列挙された骨格はその組成、単位胞寸法又は空間群シンメトリーにより何ら制限されない。
【0014】
表3

【0015】
理想構造は4配位T原子のみを含むが、骨格原子の幾つかが5配位又は6配位であってもよいことが或る条件下で可能である。これは、例えば、その物質の組成が主としてリンT原子及びアルミニウムT原子を含む場合に水和の条件下で起こり得る。これが起こる場合、T原子はまた水分子(-OH2)、又はヒドロキシル基(-OH)の1個又は2個の酸素原子に配位されてもよいことがわかる。例えば、モレキュラーシーブAlPO4-34はA. TuelらによりJ. Phys. Chem. B104, 5697頁(2000)に記載されたように水和後に4配位から5配位及び6配位へと幾つかのアルミニウムT原子の配位を可逆的に変化することが知られている。また、幾つかの骨格T原子はH. KollerによりJ. Am. Chem. Soc. 121, 3368頁(1999)に記載されたように物質が5配位T原子を含む物質をつくるためにフッ化物の存在下で調製される場合にフッ化物原子(-F)に配位し得ることが可能である。
幾つかの特別な組成では、T原子の特別な配列のために、実際の単位胞がサイズで2倍になって特別な配列が生じることを可能にし得ることが起こり得る。これは交互のアルミニウムT原子及びリンT原子がある場合のEMM-8のアルミノホスフェート組成及びメタロアルミノ-ホスフェート組成の場合である。例えば、EMM-8のAlPO形態の単位胞は表2に示されるようにz軸に沿って実際に2倍の長さであり、その結果、単位胞中に64のT原子がある。
その合成されたままの形態で、EMM-8は典型的には下記の表4に列挙された線を含むX線回折パターンを有する。
【0016】
表4

【0017】
その焼成されたままの無水形態で、EMM-8は多孔性であり、かつ下記の表5に列挙された線を含むX線回折パターンを有する。
【0018】
表5

【0019】
本明細書に言及されるこれらの、そして全てのその他のX線回折データが、銅標的(λ=0.154nm)及び湾曲グラファイトモノクロメーターを使用して40kVの電圧及び30mAの電流でシーメンスD500ディフラクトメーターで集められた。回折データが2θ(θ(シータ)はブラッグ角である)の0.02度で、かつ夫々の段階につき1秒のカウンティング時間で段階スキャニングにより記録された。格子面間隔、d'sがナノメーター(nm)で計算され、線の相対強度、I/I0(I0はバックグラウンドより上の、最強の線の強度の1/100である)が、プロフィールフィッティングルーチン(又は第二微分アルゴリズム)の使用により誘導された。強度はローレンツ効果及び偏光効果について修正されない。相対強度が記号vs=非常に強い(75-100)、s=強い(50-74)、m=中間(25-49)及びw=弱い(0-24)に関して示される。単一線としてこのサンプルについて列挙された回折データは或る条件下、例えば、結晶サイズの相違又は非常に高い実験分解能もしくは結晶学的変化のもとに、分解された線又は部分分解された線として現れ得る多くの重なり線からなってもよいことが理解されるべきである。典型的には、結晶学的変化は構造のトポロジーの変化ではなく、単位胞パラメーターの最小の変化及び/又は結晶シンメトリーの変化を含み得る。相対強度の変化を含む、これらの最小の効果がまた陽イオン含量、骨格組成、孔充填の性質及び程度、並びに熱履歴及び/又は水熱履歴の相違の結果として生じ得る。それ故、実際には、本発明の結晶性物質のX線パターン中の線の少なくとも一部が表4及び表5に示された値からの相対強度の有意な変化を示し得る。
【0020】
表5に列挙された焼成されたままのX線データを生じるために、乾燥された、合成されたままの結晶性物質約0.5グラムが窒素の流れの下で10℃/分の速度で室温から400℃までオーブン中で加熱され、窒素流を保持しながら、サンプルが30分間にわたって400℃に保たれる。次いで窒素流が停止され、空気がサンプルの上に通され、その間にオーブンの温度が10℃/分の速度で600℃まで上昇される。次いでサンプルが空気の下で2時間にわたって600℃に保持され、その後にオーブンが室温に冷却されてXRDパターンが記録されることを可能にする。
表4及び表5のXRDパターンが下記の単位胞寸法(nm)を有する空間群C2/c(#15)中で、単斜晶単位胞に指数化し得る:
合成されたまま: a=2.069, b=1.389, c=0.708, β=99.2°;
焼成されたまま: a=2.255, b=1.374, c=0.719, β=98.61°
好ましい実施態様において、EMM-8は少なくとも〔AlO4〕及び〔PO4〕隅共有四面体単位を含み、その合成されたままの、無水形態で、実験式:
mR:Fa:(MxAlyPz)O2
(式中、Rは少なくとも一つの誘導剤、好ましくは有機誘導剤、最も好ましくは4-ジメチルアミノピリジンを表わし、mは(MxAlyPz)O21モル当りのRのモル数であり、mは0〜1、例えば、0.1〜約0.5、好ましくは0.1〜約0.3の値を有し、Fは合成混合物中に存在し得るフッ化物イオンを表わし、aは(MxAlyPz)O21モル当りのFのモル数であり、かつa/yは0.25未満、好ましくは0であり、x、y、及びzは四面体酸化物としてのM、Al及びPのモル分率を表わし、かつMは元素の周期律表の1族〜14族及びランタノイドの一種から選ばれた金属である)
により表わされる。MはB、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、Mg、Mn、Ni、Si、Sn、Ti、Zn及びZrから選ばれることが好ましい。Mはケイ素であることが最も好ましい。
【0021】
一実施態様において、xが0〜約0.25であり、yが約0.3〜約0.7であり、かつzが約0.25〜約0.7である。別の実施態様において、xが約0〜約0.15であり、yが約0.4〜約0.6であり、かつzが約0.3〜約0.6である。更に別の実施態様において、xが約0〜約0.12であり、yが約0.45〜約0.55であり、かつzが約0.35〜約0.55である。ALPOモレキュラーシーブについて、xがゼロである。
その焼成された形態で、本発明の大きい孔の(メタロ)アルミノホスフェートは典型的には少なくとも0.1、更に好ましくは少なくとも0.5のアルファ値を有し、その物質が有機変換反応、特に炭化水素変換反応における酸触媒として有益であることを示す。アルファ値試験は触媒のクラッキング活性の目安であり、米国特許第3,354,078号並びにJournal of Catalyst, 4巻, 527頁(1965)、6巻, 278頁(1966)、及び61巻, 395頁(1980)(夫々がその記載について参考として本明細書に含まれる)に記載されている。ここで使用される試験の実験条件として、538℃の一定温度及びJournal of Catalyst, 61巻, 395頁に詳しく記載されたような可変流量が挙げられる。
本発明の結晶性(メタロ)アルミノホスフェート物質は水、リン源、アルミニウム源、必要により金属M、例えば、ケイ素源、必要によりフッ化物イオン源及び4-ジメチルアミノピリジン(R)を含む合成混合物から生成し得る。合成混合物は典型的には以下のように、酸化物のモル比に関して表わされる、組成を有する。
【0022】

【0023】
上記混合物中のリンの好適な源はリン酸である。好適なアルミニウム源の例として、水和アルミニウム酸化物、例えば、ベーマイト及びプソイドベーマイトが挙げられる。ケイ素の好適な源として、シリケート、例えば、ヒュームドシリカ、例えば、エアロシル及びカボシル、テトラアルキルオルトシリケート、及びシリカの水性コロイド懸濁液、例えば、商品名ルドックスとしてデュポン社により販売されるものが挙げられる。
存在する場合、フッ化物イオン源は合成混合物中でフッ化物イオンを放出することができるあらゆる化合物であってもよい。フッ化物イオンのこのような源の非限定例として、一種又は数種のフッ化物イオンを含む塩、例えば、金属フッ化物、好ましくは、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化アンモニウム、フッ化テトラアルキルアンモニウム、例えば、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化水素、及びこれらの混合物が挙げられる。フッ化物の好ましい源はフッ化水素であるが、その合成は添加されるフッ化物の不在下(即ち、F:Al2O3モル比がゼロである)で行なわれることが更に好ましい。
結晶化は撹拌条件下又は静止条件下で、好ましくは撹拌条件下で、約100℃〜約250℃、典型的には約150℃〜約200℃、好ましくは約155℃〜約180℃の温度で行なわれる。好ましくは、結晶化は約2時間〜約150時間、好ましくは約20時間〜約100時間にわたって行なわれ、その後に得られる結晶性物質が母液から分離され、例えば、遠心分離又は濾過により、回収される。分離された生成物はまた洗浄され、遠心分離又は濾過により回収され、乾燥し得る。結晶性生成物は典型的には1μm未満のd50(結晶の50体積%がd50値より小さい)粒子サイズを有する板状体の形態である。
【0024】
本発明の大きい孔の(メタロ)アルミノホスフェート物質の合成はその反応混合物の合計重量を基準として少なくとも0.1ppm、例えば、少なくとも10ppm、例えば、少なくとも100ppm、都合良くは少なくとも500ppmの先の合成からの種結晶の存在により促進し得る。しかしながら、CHA骨格型モレキュラーシーブ、例えば、SAPO-34の種結晶が、その合成混合物に添加される場合には、得られる生成物が本発明の大きい孔の(メタロ)アルミノホスフェート物質ではなくCHA骨格型モレキュラーシーブであることがわかる。
結晶化プロセスの結果として、回収された結晶性生成物はその孔内に合成に使用された有機誘導剤の少なくとも一部を含む。好ましい実施態様において、活性化は有機誘導剤がモレキュラーシーブから除去されて、活性触媒部位をモレキュラーシーブの微小孔のチャンネル内に供給原料との接触のために開けて残すような様式で行なわれる。その活性化プロセスは典型的には鋳型を含むモレキュラーシーブを、典型的には酸素含有ガスの存在下で約200℃〜約800℃の温度で焼成、又は実質的に加熱することにより達成される。この型のプロセスは結晶内孔系からの有機誘導剤の部分又は完全除去に使用し得る。
本発明の結晶性物質が一旦合成されると、それは付加的な硬度又は触媒活性を完成触媒に与えるその他の物質、例えば、バインダー及び/又はマトリックス物質との組み合わせにより触媒組成物に配合し得る。
【0025】
本発明の結晶性物質とブレンドし得る物質は種々の不活性物質又は触媒活性物質であってもよい。これらの物質として、カオリン及びその他のクレーの如き組成物、種々の形態の希土類金属、その他の非ゼオライト触媒成分、ゼオライト触媒成分、アルミナ又はアルミナゾル、チタニア、ジルコニア、石英、シリカ又はシリカゾル、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの成分はまた総合の触媒コストを低減し、熱吸込みとして作用して再生中に触媒を熱遮蔽することを助け、触媒を稠密にし、触媒強度を増大するのに有効である。このような成分とブレンドされる場合、最終触媒製品中に含まれる結晶性物質の量は全触媒の10〜90重量%、好ましくは全触媒の20〜80重量%の範囲である。
本明細書に記載された大きい孔の結晶性物質はガス及び液体を乾燥させるのに;サイズ及び極性特性に基づく選択的分子分離に;イオン交換体として;有機変換反応、例えば、クラッキング、ハイドロクラッキング、不均化、アルキル化、異性化、酸化並びにモノアルキルアミン及びジアルキルアミンの合成における触媒として;化学担体として;ガスクロマトグラフィーに;及びノルマルパラフィンを留出物から除去するために石油工業で使用し得る。本発明の合成方法がCHA骨格型モレキュラーシーブを生成する場合、このような生成物は同様の用途を有し、特にオキシジェネート(oxygenate)、例えば、メタノールからオレフィン、例えば、エチレン及びプロピレンへの変換における触媒として有益であろう。
本発明の性質及び本発明を実施する様式を更に充分に説明するために、下記の実施例が示される。
【実施例1】
【0026】
下記の成分をマイクロホモジナイザー(ティシュー・ティアラー・モデル98730、バイオスペック・プロダクツ社、USAから入手)を使用して、次から次へと、混合し、一様なゲルにブレンドした:85重量%のH3PO4(アルドリッチ・ケミカル社から得た)、脱イオンH2O、カタパールTMA(73.9重量%のAl2O3、CONDEAビスタ社、テキサス、USAから入手)、次いで4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAPy)(アルドリッチ・ケミカル社、USAから得た)。成分のモル比は以下のとおりであった。
2.0 DMAPy:1.0 Al2O3:1.0 P2O5:40 H2O
次いでそのゲルをテフロン(登録商標)ライナーを備えたパールボンベに入れ、2〜4日間にわたって170℃に加熱し、その間にボンベを40rpmで混転した。固体生成物を遠心分離し、脱イオン水で5回洗浄し、次いで60℃の真空オーブン中で一夜乾燥させた。生成物のX線粉末パターンは、図2で、結晶性生成物が2日間の結晶化後に得られることを示した(サンプルA)。4日間の結晶化後に、未同定不純物に相当する付加的な回折ピークが出現した。
サンプルAの固体生成物収率は出発ゲルの合計重量を基準として13.2%であった。元素分析は下記の結果を示した:Al、16.0%;P、17.9%。これらの結果は組成でAl1.0P0.975及び計算全酸化物について71.2%に相当する。残留重量をTGA(熱重量分析)で別々に測定して72.6%であった。サンプルAは図4に示された走査電子顕微鏡写真を生じ、下記の表6に列挙されるピークを含むXRDパターンを有していた。



【0027】
表6

【0028】
サンプルAの粉末パターンを空間群C2/c(#15)で単斜晶単位胞で成功裏に指数化した。単位胞寸法(nm)はa=2.069、b=1.389、c=0.708、β=99.2°である。
【実施例2】
【0029】
フッ化水素酸を最後の成分として添加し、成分比が下記のとおりであった以外は、操作が実施例1と同じであった。
0.5HF:2.0DMAPy:1.0Al2O3:1.0P2O5:40H2O
結晶化を3日間にわたって180℃で静的に行なった。生成物収率は12.9重量%であった。生成物(サンプルB)のXRDパターンをサンプルAのそれとともに図3に示す。前者はサンプルAのそれとほぼ同じであるが、ピーク幅及び相対強度が若干異なる。相対ピーク強度の相違はサンプルB中のFの存在により予想される。サンプルBの一層広いピークはおそらく走査電子顕微鏡写真(図4を参照のこと)により示されるように結晶の小さい板状(<0.1μm)の形態のためである。
同じ結晶性生成物が異なる出発合成組成物(実施例1及び2)で得られ、生成物のXRDパターンが指数化し得るという事実は純粋な相物質が合成されたことを証明する。合成されたままの物質は特異なXRDパターンを有する。
【実施例3】
【0030】
カボシルTMシリカをカタパールTMアルミナの後かつ4-ジメチルアミノピリジンの前に夫々の合成混合物に添加した以外は、実施例1の操作を繰り返して2種の付加的なサンプル、サンプルC及びDを生成した。成分モル比は以下のとおりであった。
2.0DMAPy:1.0Al2O3:(0.1&0.3)SiO2:1.0P2O5:40H2O
その合成ゲルに0.15重量%のサンプルBを種として添加した。結晶化を40rpmにおける混転により170℃で2日間行なった。生成物収率は夫々0.1SiO2及び0.3SiO2について18.9重量%及び19.6重量%であった。生成物(夫々0.1SiO2及び0.3SiO2についてサンプルC及びD)のXRDパターンをサンプルAのそれとともに図5に示す。この図は、下記の元素分析結果とともに、ケイ素原子がサンプルAの骨格に組み込まれることを示す。
元素分析結果は以下のとおりであった。
サンプルC:Al=16.1%;P=16.9%;Si=2.38% これは組成でAl1.0Si0.058P0.914及び計算全酸化物について71.2%に相当する。
サンプルD:Al=14.8%;P=15.7%;Si=2.38% これは組成でAl1.0Si0.154P0.924及び計算全酸化物について69.1%に相当する。
サンプルCの粉末パターンを空間群C2/c(#15)でサンプルAと同じ単斜晶単位胞で成功裏に指数化した。単位胞寸法(nm)はa=2.169、b=1.386、c=0.705、β=98.9°である。単位胞体積は2.0983nm3である。これらの単位胞パラメーターはサンプルAのそれらと同様である。
【実施例4】
【0031】
サンプルA、C及びDの焼成(窒素中で10℃/分で400℃まで、次いで窒素中で30時間保持、その後に空気中で10℃/分で600℃まで傾斜、最後に空気中で2時間にわたって600℃で保持)が有機誘導剤が除去された白色の結晶性生成物をもたらした。そこで周囲空気中で撮られた、焼成サンプルのXRDサンプルは若干の程度で再水和していることがあり、合成されたままのサンプルAのそれとともに、図6に示される。
全ての三つのサンプルがそれらの合成されたままの相当品とは異なるXRDパターンを示した。AlPO4である、焼成サンプルAは、焼成サンプルC及びDのそれらとは異なるパターンを示す。両方ともSAPOである、後者の二つは、同様のXRDパターンを有する。同様の現象がCHA骨格型を有するAlPO4及びSAPOで見られた。例えば、AlPO4-34は水分に暴露された時に三斜晶単位胞を採り、一方、充分に高いSiレベルを有するSAPO-34sは再水和後にそれらの菱面体晶シンメトリーを保持する。
焼成サンプルCのXRDパターンを合成されたままのサンプルについてのそれと同様の単斜晶単位胞で指数化した。単位胞定数(nm)はa=2.233、b=1.336、c=0.716、β=99.88°である。単位胞体積は2.1050nm3である。これらの単位胞パラメーターは焼成後の単位胞体積のわずかに約0.3%の増大でもって、合成されたままのサンプルCのそれらと非常に似ている。
【実施例5】
【0032】
サンプルCの焼成を行ない、XRDを不活性ガス及び反応性ガスの異なる源を備えたチャンバー中に密閉された白金サンプルステージの上で撮った。白金サンプルステージはまたXRDサンプルホルダーとして利用でき、その結果、XRDパターンを異なる温度だけでなく、異なる雰囲気下で撮ることができた。最初にパターンを合成されたままのサンプルCについて撮った。次いで、600℃まで10℃/分の温度の傾斜及び乾燥空気(15ppmの水分)の流れの下の2時間にわたるその温度での保持、及び200℃に冷却後に、第二のXRDパターンを撮った。流れているガスをN2に切換え、サンプルを室温に冷却し、その後に第三のXRDパターンをN2中で撮った。その後にチャンバーを16時間にわたって周囲空気(これは82%(22℃)の相対湿度を有していた)に開放して、サンプルが充分に水和されることを確実にした。次いで第四のXRDパターンを撮った。最後に、チャンバーを再度閉じ、温度をN2の下で200℃に上昇してサンプルを脱水した。最後の第五のXRDパターンをN2中で200℃で撮った。
結果が図7に示され、焼成がXRDパターンの若干の変化だけでなく、総合の回折強度の増大をもたらすことを示す。水分への暴露が回折強度を焼成前のレベルに低下し、XRDパターンが再度わずかに変化される。次いで水和サンプルの脱水が焼成後のサンプルのそれと同じXRDパターンをもたらし、水和プロセスが少なくとも部分的に可逆的であることを示す。
【実施例6】
【0033】
焼成(600℃で2時間)され、脱気(500℃で)されたサンプルAを熱重量分析(TGA)ユニット中で下記の表7に列挙された特定条件下で異なる吸着質分子に暴露した。全ての場合に完全吸着が達成された。表7に示された拡散係数D/r2を吸着吸収曲線の初期の部分を分析することにより得た。全ての場合、吸着が拡散係数の正確な測定にはあまりにも速すぎることがわかった。それ故、報告された数は最良の推定値である。表7はまた、比較目的のために、10x10x9環物質ITQ-13についての幾つかの吸着データを示す。
【0034】
表7

【0035】
有意な量のメシチレン吸着は新規物質が0.7nm(7Å)(12環)以上の孔開口部を有することを示し、その大きい吸着能は骨格が非常に開いていることを示唆する。
【実施例7】
【0036】
夫々0.058及び0.154のSi/Al比を有する、サンプルC及びDを600℃で2時間焼成し、その後にn-ヘキサンクラッキング試験を行なった。標準α-試験条件(538℃)を使用した。これらの二つのサンプルについてのα-数を測定して夫々9.1及び23.3であった。これらの値は新規物質が炭化水素変換適用に潜在性を有することを示す。
【実施例8】
【0037】
カボシルTMをカタパールTMの後かつ4-ジメチルアミノピリジンの前に添加し、100ppmのコロイドSAPO-34種を最後の成分として添加した以外は、合成操作が実施例1と同じであった。成分比は以下のとおりであった。
2.0DMAPy:1.0Al2O3:0.3SiO2:1.0P2O5:40H2O
結晶化を40rpmでの混転で170℃で2日間及び4日間行なった。2日間及び4日間の結晶化についての固体収率は夫々17.85%及び21.07%であった。
XRDパターンが図8に示され、これは不純物が存在したが、SAPO-34がつくられていたことを示す。2間日の結晶化の生成物は痕跡量のAFI(AlPO4-5)及びAWO(AlPO4-21)であることが明らかであるものを有し、一方、4日間の結晶化のそれはAFIを有さず、増加された量のAWOを有していた。
本発明が特別な実施態様についての言及により記載され、説明されたが、当業者は本発明が本明細書に必ずしも説明されていない変化に適合することを認めるであろう。この理由のために、特許請求の範囲は本発明の真の範囲を決める目的のためにのみ参考にされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例4におけるような焼成後のNK-101のX線回折パターンと実施例1のサンプルAのX線回折パターンの比較である。二つのパターンについての座標は同じスケールについてであり、強度カウントを反映する。
【図2】2日間及び4日間にわたる結晶化後の実施例1の合成されたままの生成物のX線回折パターンを示す。
【図3】実施例1のサンプルAのX線回折パターンを実施例2のサンプルBのそれと比較する。
【図4】実施例1のサンプルA及び実施例2のサンプルBの走査電子顕微鏡写真を示す。
【図5】実施例1のサンプルA並びに実施例3のサンプルC及びDのX線回折パターンの比較である。
【図6】合成されたままの、サンプルAのX線回折パターンと実施例4におけるような焼成後のサンプルA、C及びDのX線回折パターンの比較である。
【図7】合成されたままのサンプルC並びに実施例5に記載された一連の焼成、水和及び脱水処理を行なった後のサンプルCのX線回折パターンを示す。
【図8】2日間及び4日間にわたる結晶化後の実施例8の合成されたままの生成物のX線回折パターンを示す。
【図9】四面体原子のみを示すEMM-8の骨格の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成されたままの形態では表4に列挙された線を含むX線回折パターンを有し、また合成されたままの形態では、無水の状態に基づいて、実験式:
mR:Fa:(MxAlyPz)O2
(式中、Rは少なくとも一つの誘導剤を表わし、mは(MxAlyPz)O2 1モル当りのRのモル数であり、aは(MxAlyPz)O2 1モル当りのフッ化物イオン(F)のモル数であり、かつa/yは0.25未満であり、x、y、及びzは四面体酸化物としての、M、Al及びPのモル分率を表わし、かつMは元素の周期律表の1族〜14族及びランタノイドの一種から選ばれた金属である)
により表わされる結晶性物質。
【請求項2】
mが0〜約1の値を有する、請求項1記載の結晶性物質。
【請求項3】
mが0.1〜0.5の値を有する、請求項1又は2記載の結晶性物質。
【請求項4】
Rが4-ジメチルアミノピリジンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性物質。
【請求項5】
a/yが0である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性物質。
【請求項6】
MがB、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、Ge、Mg、Mn、Ni、Si、Sn、Ti、Zn及びZrからなる群の一種から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性物質。
【請求項7】
Mがケイ素である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性物質。
【請求項8】
xが0〜約0.25であり、yが約0.3〜約0.7であり、かつzが約0.25〜約0.7である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の結晶性物質。
【請求項9】
xが0〜0.15であり、yが0.4〜0.6であり、かつzが0.3〜0.6である、請求項8記載の結晶性物質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶性物質を焼成することにより製造され、かつ表5に列挙された線を含むX線回折パターンを有する、多孔性の結晶性物質。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の結晶性物質の合成方法であって、
(a)水、アルミニウム源、リン源、必要によりアルミニウム以外の金属源、必要によりフッ化物イオン源、及び4-ジメチルアミノピリジンを含む少なくとも一種の誘導剤(R)を含む反応混合物を生成し、(b)その反応混合物からの前記結晶性物質の結晶化を誘導し、(c)前記結晶性物質を反応混合物から回収することを含む前記方法。
【請求項12】
反応混合物が、モル比に関して、下記の範囲内の組成
P2O5:Al2O3=0.7〜1.3
SiO2:Al2O3=0〜0.9
H2O:Al2O3=10〜100
R:Al2O3=0.5〜5.0
F:Al2O3=0〜<0.75又は0〜0.5
を有する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
反応混合物が、モル比に関して、下記の範囲内の組成:
P2O5:Al2O3=0.9〜1.1
SiO2:Al2O3=0.05〜0.5
H2O:Al2O3=20〜50
R:Al2O3=1.0〜4.0
F:Al2O3=0〜0.5又は0
を有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
反応混合物がフッ化物イオン源の添加を含まない、請求項11、12又は13記載の方法。
【請求項15】
結晶性物質の結晶化を約100℃〜約250℃の温度で行なう、請求項11〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
結晶性物質の結晶化を130℃〜200℃の温度で行なう、請求項15記載の方法。
【請求項17】
CHA骨格型を有する結晶性物質の合成方法であって、
(a)アルミニウム源、アルミニウム以外の金属源、リン源、4-ジメチルアミノピリジンを含む少なくとも一種の誘導剤及びCHA骨格型物質の種を含む反応混合物を生成し、(b)その反応混合物からの前記結晶性物質の結晶化を誘導し、(c)前記結晶性物質を反応混合物から回収することを含む、前記方法。
【請求項18】
CHA骨格型物質がSAPO-34である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
炭化水素供給原料を、請求項1〜10のいずれか1項記載の結晶性物質、又は請求項11〜16のいずれか1項記載の方法又は請求項17若しくは18記載の方法により生成された結晶性物質を含む触媒と接触させることを含む、炭化水素変換方法。
【請求項20】
オキシジェネート含有供給原料をオレフィンに変換する、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−514538(P2008−514538A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533898(P2007−533898)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009878
【国際公開番号】WO2006/037436
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】