説明

アルミ系金属品付きゴム部材およびその製法

【課題】アルミ系金属品の表面に形成される化成皮膜が、アルミ系金属品の変形に対する追従性に優れているアルミ系金属品付きゴム部材およびその製法を提供する。
【解決手段】アルミ系の内筒金具2の外周面に、化成皮膜Aが接して形成され、この化成皮膜Aの外周面に、接着剤層Bが接して形成され、この接着剤層Bの外周面に、上記防振ゴム1が接して形成されている。上記化成皮膜Aは、フッ化亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウムが含有され、上記フッ化亜鉛に由来する亜鉛,上記モリブデンおよび上記フッ化アルミニウムに由来するアルミニウムの含有比が、質量基準で亜鉛/モリブデン/アルミニウム=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のブッシュ,エンジンマウント、産業機械用の防振部材等のアルミ系金属品付きゴム部材およびその製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のブッシュ,エンジンマウント、産業機械用の防振部材等は、アルミ系金属品とゴム材とが一体化して形成されたアルミ系金属品付きゴム部材となってきており、フレーム,エンジン等の各種構成品同士の連結部材として用いられている。
【0003】
上記防振部材等のアルミ系金属品付きゴム部材では、アルミ系金属品とゴム材との界面において、アルミ系金属品表面が腐食すると、アルミ系金属品とゴム材との接着剥離が進行し、その機能が発揮されなくなるおそれがある。そこで、通常、防食を目的として、アルミ系金属品の表面に、クロメート処理によりクロメート系化成皮膜を形成することが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−179978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クロメート系化成皮膜は、その皮膜構造内に存在する結晶水がゴム加硫時の熱により容易に脱水するため、皮膜縮合によるひび割れが発生し易く、また密着性も低下し易い。しかも、アルミ系金属品に対して縮径加工等を施すと、その加工による変形に追従することができず、割れが発生することがある。そして、この割れにより、ゴム材とアルミ系金属品との間の接着力が弱くなり、また、アルミ系金属品の防食性も不充分となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、アルミ系金属品の表面に形成される化成皮膜が、アルミ系金属品の変形に対する追従性に優れているアルミ系金属品付きゴム部材およびその製法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品とゴム材とがアルミ系金属品表面の化成皮膜を介して一体に形成されたアルミ系金属品付きゴム部材であって、上記化成皮膜が下記(A)であるアルミ系金属品付きゴム部材を第1の要旨とする。
(A)フッ化亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウムが含有され、上記フッ化亜鉛に由来する亜鉛,上記モリブデンおよび上記フッ化アルミニウムに由来するアルミニウムの含有比が、質量基準で亜鉛/モリブデン/アルミニウム=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5になっている化成皮膜。
【0007】
また、本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品の表面に化成皮膜を形成した後、その化成皮膜を介してアルミ系金属品とゴム材とを一体に形成するアルミ系金属品付きゴム部材の製法であって、上記アルミ系金属品の表面に下記(B)の処理剤を接触させることにより、そのアルミ系金属品の表面に下記(A)の化成皮膜を形成するアルミ系金属品付きゴム部材の製法を第2の要旨とする。
(A)フッ化亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウムが含有され、上記フッ化亜鉛に由来する亜鉛,上記モリブデンおよび上記フッ化アルミニウムに由来するアルミニウムの含有比が、質量基準で亜鉛/モリブデン/アルミニウム=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5になっている化成皮膜。
(B)下記(a)の硫酸亜鉛水溶液と下記(b)のフッ化アンモニウム水溶液と下記(c)のモリブデン酸ナトリウム水溶液とを相互の質量比が5.25〜8.75/2.25〜3.75/1.50〜2.50の割合で混合してなり、硫酸亜鉛7水和物が4.55〜17.85g/リットルの範囲内,フッ化アンモニウムが1.2〜5.4g/リットルの範囲内,およびモリブデン酸ナトリウム2水和物が0.3〜2.1g/リットルの範囲内で含有されている処理剤。
(a)硫酸亜鉛7水和物13〜17重量%含有の水溶液。
(b)フッ化アンモニウム8〜12重量%含有の水溶液。
(c)モリブデン酸ナトリウム2水和物3〜7重量%含有の水溶液。
【0008】
本発明者らは、アルミ系金属品の表面に形成される化成皮膜を、アルミ系金属品に対して縮径加工等を施しても追従性に優れるようにすべく、研究を重ねた。その結果、化成皮膜として、上記(A)の化成皮膜を形成すると、縮径加工等の変形に対して優れた追従性を奏し、しかも、その化成皮膜(A)を介した、ゴム材とアルミ系金属品との間の接着性にも優れることを見出し、本発明に到達した。上記化成皮膜(A)の形成は、アルミ系金属品の表面に上記(B)の処理剤を接触させることにより行われる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアルミ系金属品付きゴム部材は、アルミ系金属品の表面に形成されている化成皮膜が上記(A)の化成皮膜であるため、アルミ系金属品に縮径加工等の変形を加えても、上記化成皮膜(A)は、優れた追従性を奏する。さらに、上記化成皮膜(A)を介した、ゴム材とアルミ系金属品との間の接着性が優れたものとなっている。これらの結果、アルミ系金属品が縮径加工等により変形しても、上記化成皮膜(A)に割れや剥離が生じることがなく、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材は、優れた防食性を奏する。
【0010】
特に、上記化成皮膜(A)が、皮膜質量0.5〜5.0g/m2 の範囲内である場合には、アルミ系金属品の変形に対する化成皮膜(A)の追従性がより優れたものとなる。
【0011】
また、上記化成皮膜(A)が、厚み0.5〜5.5μmの範囲内である場合にも、アルミ系金属品の変形に対する化成皮膜(A)の追従性がより優れたものとなる。
【0012】
そして、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の製法では、上記化成皮膜(A)の形成を、アルミ系金属品の表面に上記(B)の処理剤を接触させることにより行うことができる。
【0013】
さらに、上記処理剤(B)の温度が50〜60℃の範囲内であり、上記アルミ系金属品の表面と処理剤(B)との接触時間が1〜10分間の範囲内である場合には、上記化成皮膜(A)の皮膜質量を1〜4g/m2 の範囲内、厚みを1〜5μmの範囲内に形成することができ、アルミ系金属品の変形に対して、より一層優れた追従性を奏する化成皮膜(A)を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1に示す縦断面図は、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の一実施の形態を示している。この実施の形態では、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の一例として、自動車用の円筒状ブッシュについて説明する。この円筒状ブッシュは、円筒状の防振ゴム(ゴム材)1の内周面に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、円筒状の内筒金具(アルミ系金属品)2が同軸的に接着一体化されているとともに、上記円筒状の防振ゴム1の外周面に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる、円筒状の外筒金具(アルミ系金属品)3が同軸的に接着一体化されている。
【0016】
そして、上記内筒金具2と防振ゴム1との界面部分は、その拡大図を図2に示すように、内筒金具2の表面全体に、下記に詳述する本発明に係る化成皮膜Aが接して形成され、この化成皮膜Aの外周面に、接着剤層Bが接して形成され、この接着剤層Bの外周面に、上記防振ゴム1が接して形成されている。外筒金具3と防振ゴム1との界面部分についても、上記と同様である。このように、アルミ系金属品付きゴム部材(円筒状ブッシュ等)において、ゴム材(防振ゴム1等)とアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)との界面のアルミ系金属品の表面部分に、特定の上記化成皮膜Aが形成されていることが、本願発明の特徴である。
【0017】
上記化成皮膜Aの形成は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面に、下記に詳述する本発明に係る処理剤を接触させることにより行われる。
【0018】
すなわち、上記処理剤には、硫酸亜鉛7水和物が4.55〜17.85g/リットルの範囲内,フッ化アンモニウムが1.2〜5.4g/リットルの範囲内,およびモリブデン酸ナトリウム2水和物が0.3〜2.1g/リットルの範囲内で含有されている。この処理剤の調製は、例えば、つぎのようにして行われる。すなわち、硫酸亜鉛7水和物13〜17重量%含有の水溶液(a)を35.0〜105.0gの範囲内、フッ化アンモニウム8〜12重量%含有の水溶液(b)を15.0〜45.0gの範囲内、モリブデン酸ナトリウム2水和物3〜7重量%含有の水溶液(c)を10.0〜30.0gの範囲内で用い、質量比で、(a)/(b)/(c)=5.25〜8.75/2.25〜3.75/1.50〜2.50の範囲内の割合で混合した後、適宜希釈して調製される。上記各水溶液(a)〜(c)の量は、化成皮膜Aを効率よく形成する観点から、好ましくは、硫酸亜鉛7水和物13〜17重量%含有の水溶液(a)が52.5〜87.5gの範囲内、フッ化アンモニウム8〜12重量%含有の水溶液(b)が22.5〜37.5g/リットルの範囲内、モリブデン酸ナトリウム2水和物3〜7重量%含有の水溶液(c)が15.0〜25.0g/リットルの範囲内に設定される。
【0019】
このような処理剤を用いることにより、形成される化成皮膜は、フッ化亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウムが含有されたものとなり、そのフッ化亜鉛に由来する亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウム(フッ化アンモニウムがアルミ系金属品のアルミニウムと反応して生成)に由来するアルミニウムの含有比は、質量基準で亜鉛/モリブデン/アルミニウム=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5の範囲内となる。なお、化成皮膜の組成(含有比)は、ICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導プラズマ)発光分析法により確認することができる。
【0020】
このような特定の組成からなる化成皮膜Aは、アモルファス状となっている。また、上記アルミ系金属品の変形に対する化成皮膜Aの追従性をより優れたものにする観点から、化成皮膜Aは、皮膜質量が0.5〜5.0g/m2 の範囲内、厚みが0.5〜5.5μmの範囲内とすることが好ましい。化成皮膜Aの皮膜質量が上記5.0g/m2 (上記範囲の上限値)よりも大きくなり、化成皮膜Aの厚みが5.5μm(上記範囲の上限値)よりも厚くなると、上記組成(含有比)が6/3/1〜7/2/1と変化する(亜鉛の比率が増加し、モリブデンの比率が減少する)とともに、結晶性の皮膜が生成されるようになり、化成皮膜Aの上記追従性が低下する。
【0021】
そして、上記化成皮膜Aを、上記内筒金具2および外筒金具3の変形に対して追従性をより一層優れたものにする観点から、上記化成皮膜Aの皮膜質量は、1〜4g/m2 の範囲内とすることがより好ましく、上記化成皮膜Aの厚みは、1〜5μmの範囲内とすることがより好ましい。
【0022】
また、上記化成皮膜Aの形成において、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面と処理剤との接触は、通常、そのアルミ系金属品を処理剤に浸漬することにより行われるが、アルミ系金属品の表面に処理剤をスプレー等により塗布や噴霧等してもよい。このとき、上記化成皮膜Aを、上記アルミ系金属品の変形に対して追従性をより一層優れたもの(皮膜質量を上記1〜4g/m2 の範囲内、厚みを上記1〜5μmの範囲内)にする観点から、上記処理剤の温度を50〜60℃の範囲内、浸漬等による接触時間を1〜10分間の範囲内に設定することが好ましい。
【0023】
なお、上記化成皮膜Aの形成(処理剤との接触)に先立って、必要に応じて、つぎのような処理を行ってもよい。すなわち、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)を、加温したアルカリ脱脂液中に浸漬することにより、それぞれの表面全体を脱脂する。ついで、上記アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面全体をブラスト処理し粗面化する〔十点平均粗さ(Rz)10〜30μm程度〕。つぎに、上記と同様にして脱脂した後、水洗槽にて水洗する。
【0024】
そして、上記化成皮膜Aが形成された後は、必要に応じて、水洗,湯洗,乾燥等が行われる。
【0025】
上記円筒状ブッシュの作製は、上記のようにして、アルミ系金属品(内筒金具2および外筒金具3)の表面全体に化成皮膜Aが形成された後、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、内筒金具2の外周面および外筒金具3の内周面に、接着剤をスプレー等により塗布し、接着剤層B(厚み5〜20μm程度)を形成する。そして、これら内筒金具2および外筒金具3を成形用金型内に同軸的に配設し、内筒金具2と外筒金具3と金型とで囲まれる成形空間内に、上記防振ゴム1形成用の未加硫ゴムを充填し、その後、加硫する(140〜200℃×5〜60分間程度)。そして、脱型後、外筒金具3の外周面から圧力をかけ、外筒金具3を縮径加工する(外筒金具3の外径の10%程度縮径する)。このようにして、上記円筒状ブッシュを作製することができる。
【0026】
この円筒状ブッシュの作製において、上記のように外筒金具3を縮径加工しても、化成皮膜Aは、その縮径加工による変形に追従することができ、化成皮膜Aに割れや剥離が生じることがない。このため、上記円筒状ブッシュは、内筒金具2および外筒金具3と防振ゴム1との間の接着性が長期間にわたって維持され、これにより、上記円筒状ブッシュの防振機能が長期間にわたって維持されるとともに、優れた防食性を奏する。
【0027】
つぎに、上記製法において用いられる防振ゴム1,内筒金具2および外筒金具3の形成材料、ならびに接着剤層Bの材料等について説明する。
【0028】
上記防振ゴム1の形成材料としては、通常、下記の材料が用いられる。例えば、天然ゴム(NR),ブタジエンゴム(BR),スチレンブタジエンゴム(SBR),イソプレンゴム(IR),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),カルボキシル変性NBR,クロロプレンゴム(CR),エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM),マレイン酸変性EPM,ブチルゴム(IIR),ハロゲン化IIR,クロロスルホン化ポリエチレン(CSM),フッ素ゴム(FKM),アクリルゴム,エピクロロヒドリンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。また、必要性能に応じて、上記材料に、カーボンブラック等の補強剤,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤,可塑剤,老化防止剤等が適宜に添加される。
【0029】
上記内筒金具2および外筒金具3の材料であるアルミニウムまたはアルミニウム合金としては、特に限定されるものではなく、A1000番系〜7000番系,AC系,ADC系等全てのアルミ系金属があげられる。
【0030】
上記接着剤層Bを形成するために用いる接着剤は、特に限定されないが、通常、市販品が用いられる。例えば、ケムロック205(LORD社製),ケムロック6108(LORD社製)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、本発明のアルミ系金属品付きゴム部材として、自動車用の円筒状ブッシュについて説明したが、これに限定されるものではなく、自動車や輸送機器(飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等)等に用いられる、円筒状以外の形状のブッシュ,エンジンマウント,モータマウント等、または産業機械等の様々な機械に用いられる防振部材等があげられる。すなわち、アルミ系金属品の形状は、円筒状に限定されず、平板状,波形状等、各種の形状がある。これらの形状のものでは、上下のアルミ系金属品の間にゴム材を挟んだサンドイッチ形状が常用されるが、上下のいずれかだけにアルミ系金属品が設けられてもよい。
【0032】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。但し、本発明は、実施例に限定されるわけではない。
【実施例1】
【0033】
〔アルミ系金属品〕
アルミニウム合金A6063からなる平板〔25.4mm×60mm×3mm(厚み)〕を準備した。
【0034】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物13重量%含有の水溶液35.0gと、フッ化アンモニウム8重量%含有の水溶液15.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物3重量%含有の水溶液10.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物4.55g/リットル、フッ化アンモニウム1.2g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.3g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0035】
〔化成皮膜の形成〕
まず、上記アルミ系金属品(平板)の表面全体を、60℃に加温にしたアルカリ脱脂液中に浸漬することにより脱脂した。ついで、その脱脂した表面全体をショットブラスト処理し粗面化〔十点平均粗さ(Rz)20μm〕した。つぎに、上記と同様にして脱脂した後、水洗槽にて水洗した。そして、上記化成皮膜形成用の処理剤に浸漬し(45℃×0.5分間)、化成皮膜を形成した。ついで、その処理剤から取り出し、水洗槽にて水洗した後、乾燥させた(80℃×10分間)。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.0/4.5/1.5、皮膜質量が0.5g/m2 、厚みが0.5μm、色が白色であった。なお、上記十点平均粗さ(Rz)は、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコム1400D)を用いて測定した。また、化成皮膜の組成(含有比)は、ICP発光分析装置(OPTIMA 4300DV 、PERKINELMER 社製)を用いて分析した。そして、化成皮膜の皮膜質量は、化成皮膜を形成したアルミ系金属品を10%硝酸に5分間浸漬し、その化成皮膜を剥離した後のアルミ系金属品の質量を測定し、その質量と上記浸漬前の質量と比較することにより算出した。また、化成皮膜の厚みは、電子顕微鏡(SEMEDX TypeN 3000 )を用いて外観観察することにより測定した。さらに、化成皮膜の色は、目視にて確認した。
【実施例2】
【0036】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液52.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液22.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液25.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物7.88g/リットル、フッ化アンモニウム2.25g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1.25g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0037】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を50℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.5/4.2/1.3、皮膜質量が1.0g/m2 、厚みが1.0μm、色が薄黄色であった。
【実施例3】
【0038】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液52.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液22.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液15.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物7.88g/リットル、フッ化アンモニウム2.25g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.75g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0039】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を50℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.4/5.0/0.6、皮膜質量が1.5g/m2 、厚みが1.5μm、色が薄黄色であった。
【実施例4】
【0040】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液20.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0041】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.4/4.9/0.7、皮膜質量が2.7g/m2 、厚みが2.8μm、色が薄黄色であった。
【実施例5】
【0042】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液87.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液37.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液25.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物13.13g/リットル、フッ化アンモニウム3.75g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1.25g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0043】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を60℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.5/4.2/1.3、皮膜質量が3.5g/m2 、厚みが3.5μm、色が黄色であった。
【実施例6】
【0044】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液87.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液37.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液15.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物13.13g/リットル、フッ化アンモニウム3.75g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.75g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0045】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を60℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.5/4.5/1.0、皮膜質量が4.0g/m2 、厚みが4.1μm、色が茶色であった。
【実施例7】
【0046】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液87.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液37.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液15.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物13.13g/リットル、フッ化アンモニウム3.75g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.75g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0047】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を60℃×10分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.7/4.4/0.9、皮膜質量が5.0g/m2 、厚みが5.1μm、色が茶色であった。
【実施例8】
【0048】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物17重量%含有の水溶液105.0gと、フッ化アンモニウム12重量%含有の水溶液45.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物7重量%含有の水溶液30.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物17.85g/リットル、フッ化アンモニウム5.4g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物2.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0049】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を60℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.8/4.3/0.9、皮膜質量が5.0g/m2 、厚みが5.1μm、色が茶色であった。
【実施例9】
【0050】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液25.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1.25g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0051】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を45℃×10分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.0/4.9/1.1、皮膜質量が2.6g/m2 、厚みが2.6μm、色が黄色であった。
【実施例10】
【0052】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液37.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液15.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム3.75g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.75g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0053】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=5.5/3.3/1.2、皮膜質量が2.0g/m2 、厚みが2.0μm、色が黄色であった。
【実施例11】
【0054】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液87.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液15.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物13.13g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.75g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0055】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=5.4/3.0/1.6、皮膜質量が1.9g/m2 、厚みが1.9μm、色が黄色であった。
【実施例12】
【0056】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液52.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液22.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液15.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物7.88g/リットル、フッ化アンモニウム2.25g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.75g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0057】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を45℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.5/5.0/0.5、皮膜質量が0.5g/m2 、厚みが0.5μm、色が薄黄色であった。
【実施例13】
【0058】
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液87.5gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液37.5gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液20.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物13.13g/リットル、フッ化アンモニウム3.75g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0059】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を45℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.3/4.2/1.5、皮膜質量が0.9g/m2 、厚みが0.9μm、色が薄黄色であった。
【0060】
〔比較例1〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液35.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液15.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液25.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物5.25g/リットル、フッ化アンモニウム1.5g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1.25g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0061】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を45℃×0.5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=3.0/1.1/5.9、皮膜質量が0.3g/m2 、厚みが0.3μm、色が白色であった。
【0062】
〔比較例2〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液175.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液10.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物26.25g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.5g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0063】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=6.0/3.0/1.0、皮膜質量が6.0g/m2 、厚みが6.1μm、色が茶色であった。
【0064】
〔比較例3〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液60.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液20.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム6g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0065】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=7.7/1.5/0.8、皮膜質量が8.0g/m2 、厚みが8.2μm、色が黒色であった。
【0066】
〔比較例4〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液35.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液45.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液30.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物5.25g/リットル、フッ化アンモニウム4.5g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1.5g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0067】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を60℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=3.8/5.5/0.7、皮膜質量が1.0g/m2 、厚みが1.0μm、色が薄黄色であった。
【0068】
〔比較例5〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液90.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液10.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム9g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.5g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0069】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=8.2/1.5/0.3、皮膜質量が9.0g/m2 、厚みが9.2μm、色が黒色であった。
【0070】
〔比較例6〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液105.0gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液45.0gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液20.0gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物15.75g/リットル、フッ化アンモニウム4.5g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0071】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を45℃×1分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.2/4.0/1.8、皮膜質量が1.5g/m2 、厚みが1.5μm、色が薄黄色であった。
【0072】
〔比較例7〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液26.7gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液20gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物4g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0073】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.5/5.1/0.4、皮膜質量が3.2g/m2 、厚みが3.2μm、色が茶色であった。
【0074】
〔比較例8〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液10gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液20gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム1g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0075】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=4.0/5.2/0.8、皮膜質量が1.5g/m2 、厚みが1.5μm、色が白色であった。
【0076】
〔比較例9〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液2gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物0.1g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0077】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=6.0/3.0/1.0、皮膜質量が4.5g/m2 、厚みが4.5μm、色が灰色であった。
【0078】
〔比較例10〕
〔化成皮膜形成用の処理剤〕
硫酸亜鉛7水和物15重量%含有の水溶液70gと、フッ化アンモニウム10重量%含有の水溶液30gと、モリブデン酸ナトリウム2水和物5重量%含有の水溶液50gとを混合し、硫酸亜鉛7水和物10.5g/リットル、フッ化アンモニウム3g/リットル、モリブデン酸ナトリウム2水和物2.5g/リットルとなるように、得られた混合液を希釈することにより、化成皮膜形成用の処理剤を調製した。
【0079】
〔化成皮膜の形成〕
上記実施例1において、上記化成皮膜形成用の処理剤への浸漬を55℃×5分間とし、化成皮膜を形成した。それ以外は、上記実施例1と同様とした。形成された上記化成皮膜は、質量基準の組成(含有比)がZn/Mo/Al=3.5/5.5/1.0、皮膜質量が2.2g/m2 、厚みが2.2μm、色が黄金色であった。
【0080】
〔試験サンプルの作製〕
まず、上記実施例1〜13および比較例1〜10で得られた、化成皮膜が形成された各アルミ系金属品(平板)の片面の中央部分(2.54cm×2.54cm)を残してマスキングし、その中央部分に接着剤ケムロック205(LORD社製)をスプレーにより塗布した後、さらに、接着剤ケムロック6108(LORD社製)をスプレーにより塗布した。その後、乾燥させ(60℃×10分間)、上記マスキングを剥がし、接着剤層〔2.54cm×2.54cm×20μm(厚み)〕を形成した。そして、成形用金型を用い、各アルミ系金属品(平板)の接着剤層の表面に、下記の未加硫ゴムを充填し、プレスにて加硫した(150℃×20分間)。これにより、板状のゴム材(厚み5mm)を、各アルミ系金属品(平板)と一体形成し、試験サンプルを得た。
【0081】
〔未加硫ゴム〕
天然ゴム100重量部と、HAFカーボンブラック(東海カーボン社製、シースト3)35重量部と、酸化亜鉛(堺化学工業社製、酸化亜鉛1種)5重量部と、ステアリン酸(花王社製、ルーナックS−30)2重量部と、加硫促進剤(住友化学社製、ソクシノールCZ)0.7重量部と、硫黄(鶴見化学工業社製、サルファックス200S)2重量部とをニーダーおよび練りロール機を用いて混練することにより、未加硫ゴムを調製した。
【0082】
〔初期接着性〕
このようにして得られた実施例1〜13および比較例1〜10の各試験サンプルのアルミ系金属品(平板)とゴム材の各先端部を引張試験機(オリエンテック社製)の各チャックに挟み、引張速度50mm/分の条件で、90°剥離試験を行った。これにより、破断した時の荷重〔2.54cm(=1インチ)当たりの荷重:N/2.54cm〕を測定するとともに、破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜3に併せて示した。なお、表1〜4において、例えば、「R100」とは、破断面の100%がゴム材部分であったことを意味し、「R95M5」とは、破断面の95%がゴム材部分であり、残りの5%がゴム材とアルミ系金属品(平板)との間の部分(界面)であったことを意味する。
【0083】
〔加熱後の接着性〕
上記各試験サンプルをオーブン内(100℃)に1000時間放置した後、上記と同様にして90°剥離試験を行い、破断した時の荷重を測定するとともに、破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜4に併せて示した。
【0084】
〔塩水噴霧後の接着性〕
上記各試験サンプルのゴム材をアルミ系金属品(平板)から離れる方向に引っ張ることにより、そのゴム材を25%伸長させ、その状態で、各試験サンプルに対して、35℃の塩化ナトリウム水溶液(濃度5%)を連続して1000時間噴霧した後、上記と同様にして90°剥離試験を行い、破断した時の荷重を測定するとともに、破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜4に併せて示した。
【0085】
〔化成皮膜の追従性〕
上記各試験サンプルを、ゴム材側を内側にして、90°曲げた後、ゴム材をニッパーで剥がし、そのときの破断面の破断状態を目視にて評価した。そして、その結果を下記の表1〜4に併せて示した。この破断状態の評価では、ゴム材部分での破断割合が多いほど、化成皮膜の密着性が高く、変形に対する追従性が高いと判定できる。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
上記表1〜4の結果から、実施例1〜13では、いずれの破断面もゴム材部分であることから、アルミ系金属品とゴム材との間の接着性が優れ、かつ、化成皮膜の追従性も優れていることがわかる。特に、腐食環境下(塩水噴霧)であっても、接着性に優れることから、ゴム材一体形成側のアルミ系金属品の表面が腐蝕していないことがわかる。これに対し、比較例1〜10では、化成皮膜の組成(含有比)が本発明の範囲(Zn/Mo/Al=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5)を外れるため、接着性(初期接着性,加熱後の接着性,塩水噴霧後の接着性および追従性のいずれか)が劣っていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のアルミ系金属品付きゴム部材の一実施の形態である円筒状ブッシュを示す縦断面図である。
【図2】上記円筒状ブッシュの要部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 防振ゴム
2 内筒金具
A 化成皮膜
B 接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品とゴム材とがアルミ系金属品表面の化成皮膜を介して一体に形成されたアルミ系金属品付きゴム部材であって、上記化成皮膜が下記(A)であることを特徴とするアルミ系金属品付きゴム部材。
(A)フッ化亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウムが含有され、上記フッ化亜鉛に由来する亜鉛,上記モリブデンおよび上記フッ化アルミニウムに由来するアルミニウムの含有比が、質量基準で亜鉛/モリブデン/アルミニウム=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5になっている化成皮膜。
【請求項2】
上記化成皮膜(A)が、皮膜質量0.5〜5.0g/m2 の範囲内である請求項1記載のアルミ系金属品付きゴム部材。
【請求項3】
上記化成皮膜(A)が、厚み0.5〜5.5μmの範囲内である請求項1または2記載のアルミ系金属品付きゴム部材。
【請求項4】
上記アルミ系金属品が円筒状に形成され、上記化成皮膜(A)が形成された円筒状アルミ系金属品が縮径されてなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のアルミ系金属品付きゴム部材。
【請求項5】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるアルミ系金属品の表面に化成皮膜を形成した後、その化成皮膜を介してアルミ系金属品とゴム材とを一体に形成するアルミ系金属品付きゴム部材の製法であって、上記アルミ系金属品の表面に下記(B)の処理剤を接触させることにより、そのアルミ系金属品の表面に下記(A)の化成皮膜を形成することを特徴とするアルミ系金属品付きゴム部材の製法。
(A)フッ化亜鉛,モリブデンおよびフッ化アルミニウムが含有され、上記フッ化亜鉛に由来する亜鉛,上記モリブデンおよび上記フッ化アルミニウムに由来するアルミニウムの含有比が、質量基準で亜鉛/モリブデン/アルミニウム=4.0〜5.5/3.0〜5.0/0.5〜1.5になっている化成皮膜。
(B)下記(a)の硫酸亜鉛水溶液と下記(b)のフッ化アンモニウム水溶液と下記(c)のモリブデン酸ナトリウム水溶液とを相互の質量比が5.25〜8.75/2.25〜3.75/1.50〜2.50の割合で混合してなり、硫酸亜鉛7水和物が4.55〜17.85g/リットルの範囲内,フッ化アンモニウムが1.2〜5.4g/リットルの範囲内,およびモリブデン酸ナトリウム2水和物が0.3〜2.1g/リットルの範囲内で含有されている処理剤。
(a)硫酸亜鉛7水和物13〜17重量%含有の水溶液。
(b)フッ化アンモニウム8〜12重量%含有の水溶液。
(c)モリブデン酸ナトリウム2水和物3〜7重量%含有の水溶液。
【請求項6】
上記処理剤(B)の温度が50〜60℃の範囲内であり、上記アルミ系金属品の表面と処理剤(B)との接触時間が1〜10分間の範囲内である請求項5記載のアルミ系金属品付きゴム部材の製法。
【請求項7】
上記アルミ系金属品が円筒状に形成され、その円筒状アルミ系金属品表面に上記化成皮膜(A)を形成した後、その円筒状アルミ系金属品を縮径させる請求項5または6記載のアルミ系金属品付きゴム部材の製法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−314872(P2007−314872A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108167(P2007−108167)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】