説明

アレイアンテナ

【課題】従来に比べ全体の寸法や重量を小さくでき、また安価にもできる、ディジタルによるビームフォーミング方式を採用したアレイアンテナを提供することである。
【解決手段】この発明に従ったアレイアンテナは、複数のアンテナ素子10と、アンテナ素子からの受信信号をディジタルに変換するアナログ・ディジタル変換回路12と、各アンテナ素子からのディジタル化された受信信号を遅延する遅延回路14と、各アンテナ素子からのディジタル化され遅延された受信信号をシストリックに複素乗算する複素乗算回路16と、を備えており、前記複素乗算回路が、複数のアンテナ素子からのディジタル化され遅延された複数の受信信号に対し、1つの複素乗算器16Aと、スイッチ回路及び遅延回路16Bを含む乗算回路と、を備えている、ことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、搭載用空中線装置の分野においては、レーダシステムの高性能化の要求の高まりから、高機能で高性能なディジタルによるビームフォーミング方式を採用したアレイアンテナ、即ちDBFアンテナ、を採用したいという要望が高まっている。
【0003】
しかしながら、従来のDBFアンテナは、特開平10−209750号公報(特許文献1)及び特開2006−174333号公報(特許文献2)から知られている如く、周波数変換回路やパターン合成を行なう複素乗算回路をアンテナ素子の数だけ必要としていたのでDBFアンテナの全体の寸法や重量が大きく、また非常に高価でもあったので、搭載用空中線装置としては特殊な用途の為にしか採用されていない。
【特許文献1】特開平10−209750号公報
【特許文献2】特開2006−174333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記事情の下でなされ、この発明の目的は、従来に比べ全体の寸法や重量を小さくでき、また安価にもできる、ディジタルによるビームフォーミング方式を採用したアレイアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述したこの発明の目的を達成する為に、この発明に従ったアレイアンテナは、複数のアンテナ素子と、アンテナ素子からの受信信号をディジタルに変換するアナログ・ディジタル変換回路と、各アンテナ素子からのディジタル化された受信信号を遅延する遅延回路と、各アンテナ素子からのディジタル化され遅延された受信信号をシストリックに複素乗算する複素乗算回路と、を備えたアレイアンテナであって、前記複素乗算回路が、複数のアンテナ素子からのディジタル化され遅延された複数の受信信号に対し、1つの複素乗算器と、スイッチ回路及び遅延回路を含む乗算回路と、を備えている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上述した如く構成されたことを特徴とするこの発明に従ったアレイアンテナでは、複数のアンテナ素子の夫々からのディジタル化され遅延された受信信号をシストリックに複素乗算する複素乗算回路が、複数のアンテナ素子からのディジタル化され遅延された複数の受信信号に対し、1つの複素乗算器と、スイッチ回路及び遅延回路を含む乗算回路と、を備えているので、従来に比べ全体の寸法や重量を小さくでき、また安価にもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の一実施の形態に従ったアレイアンテナについて添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1中に図示されている如く、この発明の一実施の形態に従ったアレイアンテナは、複数のアンテナ素子10と、アンテナ素子10からの受信信号をディジタルに変換するアナログ・ディジタル変換回路12と、各アンテナ素子10からのディジタル化された受信信号を遅延する遅延回路14と、各アンテナ素子10からのディジタル化され遅延された受信信号をシストリックに複素乗算する複素乗算回路16と、を備えている。
【0009】
ここにおいて、アンテナ素子10,アナログ・ディジタル変換回路12,そして遅延回路14の夫々の構成は公知である。また、シストリックとは、並列処理をすることである。
【0010】
図2の(A)中には図1中に図示されている複素乗算回路16が拡大して図示されている。複素乗算回路16は、複数のアンテナ素子10からのディジタル化され遅延された複数の受信信号a,b,c,dに対し、1つの複素乗算器16Aとスイッチ回路及び遅延回路16Bを含む乗算回路と、を備えている。
【0011】
スイッチ回路は、複数の複数のアンテナ素子10からのディジタル化され遅延された複数の受信信号a,b,c,dが入力される複数の入力端0,1,2,3を有する第1のスイッチSW1を含む。第1のスイッチSW1の1つの出力端は複素乗算器16Aに接続され、複素乗算器16Aの1つの出力端はスイッチ回路の第3のスイッチSW3の1つの入力端に接続され、第3のスイッチSW3の2つの出力端の一方0は遅延回路16Bを介してスイッチ回路の第4のスイッチSW4の1つの入力端に接続され、第4のスイッチSW4の2つの出力端の一方0は第1のスイッチSW1のもう1つの入力端4に接続され、第4のスイッチSW4の他方の出力端1はスイッチ回路の第2のスイッチSW2の2つの入力端の一方1に接続され、第2のスイッチSW2の1つの出力端は複素乗算器16Aに接続され、第3のスイッチSW3の2つの出力端の他方1はこの複素乗算回路16の出力端となっていて、そして、第2のスイッチSW2の2つの入力端の他方0は、別の複素乗算回路16の出力端と接続可能な入力端となっている。
【0012】
スイッチ回路のスイッチSW1,SW2,SW3,SW4は、図2の(B)中に示されている如く機能し、複数の受信信号a,b,c,dを順次乗算して合成データGを作成し、最後にこの合成データGを複素乗算回路16の出力端(第3のスイッチSW3の2つの出力端の他方1)から出力する。そしてこの際に、この複素乗算回路16の入力端(第2のスイッチSW2の2つの入力端の他方0)に別の複素乗算回路16の出力端からの合成データGが入力していれば、この複素乗算回路16の合成データGに別の複素乗算回路16の出力端からの合成データGが乗算されてこの複素乗算回路16の出力端(第3のスイッチSW3の2つの出力端の他方1)から出力される。
【0013】
この一実施の形態に従ったアレイアンテナでは、図1中に図示されている如く複数のアンテナ素子10が複数のグループに分けられ、各グループに所属する複数のアンテナ素子10が1つの複素乗算回路16に接続されて1つの複素乗算回路16が各グループに所属する複数のアンテナ素子10から複数の受信信号a,b,c,dを順次乗算して合成データGを作成して出力する。図3中に図示されている如く、各グループに所属する複数のアンテナ素子10の複数の受信信号a,b,c,dからの合成データGの作成は、各グループにおいて相互に並行に実行され、そして各グループにおいて作成された合成データGも順次乗算されて、最後にこの一実施の形態に従ったアレイアンテナの複数のアンテナ素子10の全体からの受信信号に基づいたこの一実施の形態に従ったアレイアンテナの全体の合成ビームが作成される。
【0014】
この実施の形態のアレイアンテナでは、複数のアンテナ素子10の夫々に対応して複数の複素乗算回路が接続されていて複数の複素乗算回路の1つ1つからの出力が順次合成されてアレイアンテナの全体の合成ビームが作成される従来のアレイアンテナに比べて、複数のアンテナ素子10よりも遥かに少ない数の複素乗算回路しか必要としないので全体の寸法や重量を小さくでき、安価である。しかも、これら従来よりも遥かに少ない数の複素乗算回路が相互に並行して夫々が対応する複数のアンテナ素子10の受信信号から合成データを作成、さらにこれら少ない数の複素乗算回路が作成した複数の合成データを順次乗算してアレイアンテナの全体の合成ビームを作成しているので、合成ビームの作成に要する時間も短い。
【0015】
なお、アナログ・ディジタル変換回路12の前に複数のアンテナ素子10からの受信信号をアナログで合成するアナログ合成回路を備えることも出来る。この場合には、複数のアンテナ素子10の夫々に対応してアナログ・ディジタル変換回路12及び遅延回路14を設ける必要がなくなり、この実施の形態のアレイアンテナの全体の寸法や重量をさらに小さくでき、当然さらに安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施の形態に従ったアレイアンテナの構成を概略的に示す図である。
【図2】(A)は図1中の複素演算回路の構成を拡大して示す図であり、 (B)は(A)の複素演算回路の複数のスイッチの動作を説明するための図である。
【図3】図1のアレイアンテナにおける複数の複素乗算回路からデータの出力タイミングを概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0017】
10…アンテナ素子、12…アナログ・ディジタル変換回路、14…遅延回路、16…複素乗算回路、16A…複素乗算器、SW1,SW2,SW3,SW4…スイッチ(スイッチ回路)、16B遅延回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子と、アンテナ素子からの受信信号をディジタルに変換するアナログ・ディジタル変換回路と、各アンテナ素子からのディジタル化された受信信号を遅延する遅延回路と、各アンテナ素子からのディジタル化され遅延された受信信号をシストリックに複素乗算する複素乗算回路と、を備えたアレイアンテナであって、
前記複素乗算回路が、複数のアンテナ素子からのディジタル化され遅延された複数の受信信号に対し、1つの複素乗算器と、スイッチ回路及び遅延回路を含む乗算回路と、を備えている、
ことを特徴とするアレイアンテナ。
【請求項2】
前記アナログ・ディジタル変換回路の前に複数のアンテナ素子からの受信信号をアナログで合成するアナログ合成回路を備えている、ことを特徴とする請求項1に従っているアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−246547(P2009−246547A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88662(P2008−88662)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】