説明

アレルギー症状治療用医薬組成物

アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎、副鼻腔炎などの諸症状に対する改善効果が増強された医薬組成物を提供する。本発明は、(a)メキタジンまたはその薬学的に許容される塩と、(b)スプラタストまたはその薬学的に許容される塩とを組み合わせてなる医薬組成物であり、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎、副鼻腔炎などの諸症状に対して優れた改善効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎、副鼻腔炎などの諸症状に対する予防または治療用の医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患などに代表されるアレルギー疾患には、諸症状の改善のために抗ヒスタミン剤、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、Th2サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサンA2受容体拮抗薬、ステロイド剤などが投与されている。具体的な症状としては、アレルギー性鼻炎では鼻水、鼻閉、くしゃみなど、気管支喘息では喘鳴、咳、呼吸困難、かっ痰など、蕁麻疹に代表されるアレルギー性皮膚疾患では掻痒、皮疹、発赤など、アレルギー性眼疾患では掻痒感、結膜充血、流涙などである。
【0003】
アレルギー反応は抗原となる惹起物質が体内に侵入後1時間以内に起こる即時型アレルギー反応と数時間後に起こる遅発型アレルギー反応がある。
即時型アレルギー反応は、肥満細胞や好塩基球などから産生される化学伝達物質により、アレルギー性鼻炎ではくしゃみや鼻汁分泌、気管支喘息では気道収縮、アレルギー性皮膚疾患では掻痒や発赤、アレルギー性眼疾患では掻痒感や結膜充血を引き起こす。この即時型反応については抗ヒスタミン剤が奏効することが知られている。
【0004】
遅発型アレルギー反応は、アレルギー性鼻炎では持続する鼻閉症状、気管支喘息では夜間の喘息発作または気道でのアレルギー性炎症による呼吸機能低下、アレルギー性皮膚疾患では皮疹や持続的な掻痒、アレルギー性眼疾患では掻痒、持続的な結膜充血に関与すると考えられている。これらの症状の改善については、即時型反応に効果の高い抗ヒスタミン剤では一般に効果が期待できないことが知られており、現在、遅発型反応についての治療としてはケミカルメディエーター遊離抑制剤、Th2サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサンA2受容体拮抗薬、ステロイド剤などが使用されている。
しかし、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、トロンボキサンA2受容体拮抗薬は、眠気などの副作用は少ないが効果が充分であるとは言い難く、トシル酸スプラタストに代表されるTh2サイトカイン阻害剤においても同様に、満足できる効果が現れない場合がある。またステロイド剤は、効果は優れているが様々な副作用や、服用を中止した際のリバウンドの危険性があり、服用に抵抗感を覚える人も少なくない。
従って、アレルギーの遅発型反応に対する効果的かつ副作用の少ない治療剤が望まれている。
【0005】
副鼻腔炎とは、副鼻腔の粘膜が細菌や真菌、ウイルスによる感染、あるいはアレルギーが原因で炎症を起こし、膿、粘液が排出されず、副鼻腔にたまることが原因で発症する。鼻閉や鼻閉による頭痛、粘性のある鼻水を主症状とし、治療薬としては抗生物質や充血除去剤などが使用される。しかし、抗生物質は細菌が原因である場合しか効果がなく、また、充血除去剤は一時的には症状が改善されても、長期的に使用するとかえって症状が悪化するという問題がある。
【0006】
急性鼻炎は、ウイルスに感染することによって鼻粘膜に炎症がおこることにより発症する。主症状はくしゃみ、鼻水、鼻閉であり、感冒の一症状としてみられることが多い。
くしゃみ、鼻水については抗ヒスタミン剤が奏効することが知られており、一般に市販されている総合感冒薬にはほぼ全て抗ヒスタミン剤が配合されている。しかし鼻閉については抗ヒスタミン剤では効果は薄いと言われており、鼻閉改善を目的として配合される交感神経興奮薬においても、効果は満足できるものではない。
【0007】
10−[(RS)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクト−3−イルメチル]−10H−フェノチアジン(以下、メキタジンという)は、蕁麻疹や皮膚疾患に伴う掻痒、アレルギー性鼻炎、気管支喘息に適用されている抗ヒスタミン剤である。しかしながら、メキタジンの医療用薬品としての治験(非特許文献1)では、メキタジン1回量3mg、1日2回服用の場合、60%の患者は口渇を訴えていることが確認されており、メキタジンは副作用の面で満足できるものではなかった。
メキタジンと他剤とを配合した組成物としては、塩酸フェニルプロパノールアミンまたは塩酸フェニレフリンとメキタジンまたはアステミゾールとを配合する鼻炎治療薬(特許文献1)、抗コリン薬であるトロパンアルカロイド、ヨウ化イソプロパミドとメキタジンとを併用したメキタジン含有製剤(特許文献2)、ブロムヘキシンまたはアンブロキソールとケトチフェンまたはメキタジンとを配合した医薬組成物(特許文献3)、コデインまたはジヒドロコデインとイブプロフェンまたはアセトアミノフェンとケトチフェンまたはメキタジンとを含む医薬組成物(特許文献4)、消炎酵素薬と抗炎症薬とメキタジンなどのフェノチアジン系抗ヒスタミン薬を含有する鼻炎治療用組成物(特許文献5)、ナプロキセンまたはジクロフェナクとカルビノキサミンまたはクロルフェニラミンまたはケトチフェンまたはメキタジンとを配合する医薬組成物(特許文献6)、アセトアミノフェンまたはエフェドリンまたはビタミンBとメキタジンとを配合するメキタジン含有内服固形製剤(特許文献7)、ケトプロフェンまたはイソプロピルアンチピリンとカルビノキサミンまたはクロルフェニラミンまたはメキタジンまたはケトチフェンとを配合する鼻炎用組成物(特許文献8)などが開示されている。
【0008】
以下の式1:
【化1】

で表される[2−[4−(3−エトキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニルカルバモイル]エチル]ジメチルスルホニウム(以下、スプラタストという)またはそのトシル酸塩であるトシル酸スプラタストは、Th2サイトカイン阻害剤に分類されるアレルギー疾患治療薬として、現在、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎に使用されている。スプラタストと他剤とを配合した組成物としては、塩酸フェニルプロパノールまたはメチルエフェドリンまたはフェニレフリンとスプラタストとを配合してなる鼻閉改善剤(特許文献9)が開示されている。
また、特許文献10には鼻炎治療用固形内服医薬組成物に配合されうる成分としてメキタジンとスプラタストが開示されているが、メキタジンとスプラタストの併用に関しては示唆すらされていない。
【特許文献1】特開平07−188002号公報
【特許文献2】特開平08−208483号公報
【特許文献3】特開平10−45591号公報
【特許文献4】特開平10−45595号公報
【特許文献5】特開平10−158193号公報
【特許文献6】特開平11−255641号公報
【特許文献7】特開2000−169367号公報
【特許文献8】特開2001−48782号公報
【特許文献9】特開2001−335473号公報
【特許文献10】特開2000−95675号公報
【非特許文献1】耳鼻咽喉科展望、Vol.27、Supple 5、p.579−586、1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎、副鼻腔炎などの諸症状に対する予防または治療用の、副作用の少ない医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スプラタストに、抗ヒスタミン剤の中でも特にメキタジンを配合すると、アレルギー反応の遅発型反応を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記(1)〜(12)に関する。
(1)有効成分として(a)メキタジンまたはその薬学的に許容される塩と、(b)スプラタストまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせを含有してなる医薬組成物。
(2)遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療用である、(1)に記載の医薬組成物。
(3)アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療用である、(1)に記載の医薬組成物。
(4)鼻閉の予防または治療用である、(1)に記載の医薬組成物。
(5)成分(a)1量部に対する成分(b)の割合が10〜100重量部である、(1)〜(4)のいずれかに1つに記載の医薬組成物。
(6)成分(a)と成分(b)とが同一の製剤、またはそれぞれ別の製剤の形態である、(1)〜(5)のいずれかに1つに記載の医薬組成物。
(7)遅発型アレルギー反応による疾患を有する患者に、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を投与することからなる、遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療方法。
【0011】
(8)アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎または副鼻腔炎を有する患者に、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を投与することからなる、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療方法。
(9)鼻閉を有する患者に、(1)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を投与することからなる、鼻閉の予防または治療方法。
(10)遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療のための請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
(11)アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療のための(1)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
(12)鼻閉の予防または治療のための(1)〜(6)のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、従来の治療剤に比べてアレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎、副鼻腔炎などの諸症状に対する予防または治療効果が増強され、副作用の少ない医薬組成物を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、メキタジンとトシル酸スプラタストとを用いた場合の遅発型アレルギー反応の抑制作用を示すグラフである。
【図2】図2は、塩酸ジフェンヒドラミンとトシル酸スプラタストとを用いた場合の遅発型アレルギー反応の抑制作用を示すグラフである。
【図3】図3は、マレイン酸クロルフェニラミンとトシル酸スプラタストとを用いた場合の遅発型アレルギー反応の抑制作用を示すグラフである。
【図4】図4は、塩酸プロメタジンとトシル酸スプラタストとを用いた場合の遅発型アレルギー反応の抑制作用を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、(a)メキタジンまたはその薬学的に許容される塩としては、メキタジンの遊離体または薬学的に許容できる酸を作用させた酸付加塩が好ましい。該酸付加塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸などの無機酸との塩;シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トシル酸などの有機酸との塩が好ましいが、特にこれに限定されるものではない。その中でも遊離体がより好ましく用いられる。
また、(b)スプラタストまたはその薬学的に許容される塩としては、スプラタストの遊離体または薬学的に許容できる酸を作用させた酸付加塩が好ましい。該酸付加塩としては、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸などの無機酸との塩;シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、酢酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トシル酸などの有機酸との塩が好ましいが、特にこれに限定されるものではない。その中でもトシル酸塩がより好ましく用いられる。
【0015】
本発明はまた、成分(a)と成分(b)とを含む、遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療用の医薬組成物を包含する。本明細書において、「遅発型アレルギー反応」とは、抗原となる惹起物質が体内に侵入後、数時間で起こるアレルギー反応をいう。
このような遅発型アレルギー反応による疾患としては、例えばアレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患などが挙げられる。
【0016】
本発明はまた、成分(a)と成分(b)とを含む、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療用の医薬組成物を包含する。
本明細書において、「アレルギー性鼻炎」とは、抗原抗体反応の結果起こるくしゃみ、鼻水、鼻閉を三主徴とし、他に鼻の掻痒感、鼻血などの症状を有する疾患である。「気管支喘息」とは、気道閉塞と気道の炎症により特徴付けられ、症状として喘鳴、咳、呼吸困難、かっ痰などを有する疾患である。「アレルギー性皮膚疾患」とは、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹などが挙げられ、症状としては掻痒、皮疹、発赤などを有する疾患である。「アレルギー性眼疾患」とはアレルギー性結膜炎あるいはアレルギー性角結膜炎、春季カタルなどが挙げられ、掻痒感、結膜充血、流涙を主症状とする疾患である。「急性鼻炎」とはウイルスが鼻粘膜に付着することにより、鼻粘膜に炎症が起こり、くしゃみ、鼻水や鼻閉を引き起こす病態である。「副鼻腔炎」とは細菌や真菌、ウイルスによる感染によって副鼻腔に膿や粘液が溜まり、鼻閉や粘性のある鼻水や頭痛を引き起こす病態であり、急性鼻炎の後に発症する場合や、アレルギー性鼻炎に併発する場合、アスピリン喘息に併発する場合などがある。
また本発明の医薬組成物は、上記の疾患で生じる症状である、くしゃみ、鼻水、鼻閉、喘鳴、咳、呼吸困難、かっ痰、掻痒、皮疹、発赤、目の掻痒感、結膜充血、流涙、鼻閉による頭痛にも有効である。
本発明はまた、成分(a)と成分(b)とを含む、鼻閉の予防または治療用の医薬組成物を包含する。
本明細書において、「鼻閉」とは、鼻腔粘膜の腫脹や鼻汁の蓄積、または鼻茸などにより呼気吸気に障害を自覚する症状全般を指し、特にアレルギー性鼻炎、急性鼻炎、副鼻腔炎に起因するものが挙げられる。
【0017】
本発明のメキタジンとスプラタストとを有効成分として組み合わせてなる医薬組成物には、必要に応じて他の生理活性成分を加えることができる。そのような他の生理活性成分としては、解熱鎮痛消炎剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳去痰剤または気管支拡張剤、喀痰溶解剤、中枢興奮剤、抗コリン剤、ケミカルメディエーター遊離抑制剤、Th2サイトカイン阻害剤、ロイコトリエン受容体拮抗剤、トロンボキサンA2受容体拮抗剤、ビタミン剤、制酸剤、生薬、漢方処方などがあげられるが、これらに制限されるものではない。また、これら生理活性成分と配合した感冒薬として使用することもできる。
【0018】
本発明の医薬組成物は、通常、1日当たり1〜数回に分けて投与され、投与量は患者の年齢、体重、症状や投与形態により適宜増減される。成人1日当たりの服用量は、通常、メキタジンでは0.5〜24mg、好ましくは1.0〜12mg、スプラタストは30〜600mg、好ましくは50〜300mgである。
本発明において、メキタジンとスプラタストとの配合比は、メキタジン1重量部に対して、スプラタスト3〜300重量部が好ましく、5〜150重量部がより好ましく、10〜100重量部が特に好ましい。
メキタジン1重量部に対してスプラタストが3重量部未満であると、本発明の効果が充分に現れず、300重量部を超えると、スプラタストの配合量に見合う効果が得られない。
【0019】
本発明の医薬組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、チュアブル剤、発泡剤、ドロップ剤、口中溶解剤、ドライシロップ剤、分散剤、ゼリー剤、内服液剤などの経口用の形態、点鼻剤、点眼剤、外用剤、注射剤などいずれの製剤としても用いることができる。これらの製剤は、常法により製造することができ、添加剤も通常の医薬品製造に使用されるものであれば、いずれも使用することができる。以下に具体例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0020】
固体製剤の調製に使用できる成分としては、白糖造粒物、白糖・コーンスターチ混合造粒物、結晶セルロース造粒物、乳糖・結晶セルロース混合造粒物などの芯物質;乳糖、デンプン、ショ糖、マンニトール、結晶セルロースなどの賦形剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴムなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドンまたはその架橋体、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどの崩壊剤;ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ジメチルポリシロキサン、タルク、コーンスターチ、ポリエチレングリコール、硬化油などの滑沢剤が挙げられ、その他必要に応じて着色剤、甘味剤などを使用することもできる。
また、固体製剤には、必要に応じてコーティングを施すこともできる。コーティング剤としては、エチルセルロース、オイドラギット、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース・アセテート・サクシネート、メタアクリル酸、メタアクリル酸メチルコポリマー、セルロース・アセテート・フタレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セラック、メチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどが挙げられる。固体製剤には、ショ糖、アラビアゴム、炭酸カルシウム、タルク、ゼラチンなどを主成分とした糖衣を施すこともできる。
【0021】
液体製剤の調剤に使用できる成分としては、精製水、エタノール、グリセリン、ショ糖、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、メタ水酸化アルミニウム、寒天、トラガントガムなどが挙げられる。また、その他必要に応じて溶解補助剤、緩衝剤、保存剤、香料、着色剤、矯味剤などを使用することができる。
【0022】
本発明の医薬組成物は、遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療に使用することができる。また、本発明の医薬組成物は、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎、副鼻腔炎などの疾患の予防または治療に使用することができる。またさらに、本発明の医薬組成物は、鼻閉の予防または治療に使用することもできる。
【0023】
なお、本発明の医薬組成物は、メキタジンまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む製剤と、スプラタストまたはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む製剤とをそれぞれ調製し、両製剤を組み合わせて用いることもできる。本発明の医薬組成物がこのように使用される場合、両製剤の剤形は同一であっても異なっていてもよく、また両製剤の投与は同時であってもよく、所定時間の間隔があってもよい。
【0024】
上記のように、成分(a)と成分(b)とをそれぞれ別の製剤の形態とする場合、例えば成分(a)を含む錠剤と、成分(b)を含むカプセル剤とを製造して、これらを組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0025】
以下に試験例および実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
製剤例1 錠剤
【表1】

上記配合割合で、常法に従い錠剤を調製した。
【0026】
製剤例2 カプセル剤
【表2】

上記配合割合で、常法に従いカプセル剤を調製した。
【0027】
製剤例3 シロップ剤
【表3】

上記配合割合で、常法に従いシロップ剤を調製した。
【0028】
製剤例4 注射剤
【表4】

【0029】
製剤例5 ドライシロップ剤
【表5】

上記配合割合で、常法に従いドライシロップ剤を調製した。このドライシロップ剤は、用時に水に懸濁して用いることができる。
【0030】
製剤例6 キット
【表6】

上記配合割合で、常法に従いカプセル剤を調製した。
【0031】
【表7】

上記配合割合で、常法に従い錠剤を調製した。
各々作成したトシル酸スプラタストカプセル剤とメキタジン錠剤とを、同一の包装とした。
【0032】
試験例1:遅発型アレルギー反応の抑制作用
本試験は、Sawadaらの方法(Clin.Exp.Allergy、27巻、225〜231頁、1996年)に従って行った。雄性BALB/cマウスを、卵白アルブミン5μgおよび水酸化アルミニウムゲル2mgを腹腔内投与して能動感作した。免疫14〜15日後に、マウス耳朶に1μgの卵白アルブミンを皮内注射することで耳浮腫反応を惹起した。惹起前と惹起24時間後とに耳の厚さをdial thickness gage(Peacok)で測定することで、遅発型アレルギー反応としての耳浮腫(×10−2mm)を算出した。
被験薬は、0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)溶液に溶解または懸濁させ、反応惹起1時間前に経口投与した。試験は、抗ヒスタミン剤の代表としてメキタジン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸プロメタジンを選択し、各薬物単独投与群とトシル酸スプラタスト配合群の遅発型アレルギー反応に対する作用から統計学的手法(インターセクション−ユニオン検定)を用いることで遅発型アレルギー反応の抑制作用を検定した。P=0.05未満を有意差ありとした。各群8匹で試験を行った。
【0033】
今回用いた抗ヒスタミン剤とトシル酸スプラタスト配合による遅発型耳浮腫反応に対する併用効果を図1〜4に示す。図1〜4において、正常群とは、耳浮腫反応を惹起させなかった群であり、対照群とは耳浮腫反応を惹起させた後、被験薬の代わりに溶媒(0.5% HPMC)を投与した場合である。
その結果、メキタジンとの併用による場合のみが単剤投与時と比較して併用効果に有意差(P<0.05)があり、メキタジンとトシル酸スプラタストとを配合することによって最も優れた併用効果があることが証明された。
【0034】
さらに、耳浮腫を50%減少させるのに有効な薬剤量であるED50値を算出したところ、メキタジン単剤投与時のED50値は16.9mg/kgであり、メキタジンとトシル酸スプラタストとの併用投与時のメキタジンのED50値は11.4mg/kgであった。この結果から、メキタジンとトシル酸スプラタストとを併用することによって遅発型アレルギー反応抑制効果が増強されたことが判明した。このことより、トシル酸スプラタストと併用することによってメキタジンの投与量を減らすことが可能となり、副作用を低減することが期待できる。
【0035】
試験例2:モルモット抗原誘発遅発型鼻腔抵抗上昇に対する検討
5週齢雄性Std:Hartley系モルモットに1mg/mLの卵白アルブミン生理食塩溶液1mL/bodyを背部皮下注射して能動感作した(初回感作)。初回感作1週間後および2週間後、マイクロピペットを用いて10mg/mL卵白アルブミン生理食塩溶液を20μLずつ両側の鼻腔内に投与した(点鼻感作)。初回感作3週間後、マイクロピペットを用いて20mg/mL卵白アルブミン生理食塩溶液を10μLずつ両側の鼻腔内に投与して鼻炎反応を惹起した。総合呼吸機能測定システム(Pulmos−I,M.I.P.S.社)を用い、卵白アルブミン点鼻前、10分後、2、3、4、5、6および7時間後に1回、それぞれ100呼吸分の鼻腔抵抗(nasal airway resistance,nRaw)を測定し、その平均値を各測定時間におけるnRawとした。nRawの増加率を算出する計算式を以下に示す。
各測定時間のnRawの増加率(%)=
(各測定時間のnRaw − 誘発前のnRaw)÷誘発前のnRaw×100
【0036】
評価は、遅発性アレルギー反応として誘発3〜7時間後におけるnRawの増加率の曲線下面積(AUC3−7hr)を測定することにより行った。なお、I3−7hrは誘発3〜7時間後におけるnRawの増加率を示す。
AUC3−7hr=1/2(I3hr+2×I4hr+2×I5hr+2×I6hr+I7hr
【0037】
薬物は、初回感作1週間後の点鼻感作より初回感作3週間後の誘発日まで、1日1回で15日間、反復経口投与した。なお、点鼻感作日(初回感作1週間後および2週間後)と誘発日には、卵白アルブミン鼻腔内投与1時間前に薬物を経口投与した。
被験薬としてはメキタジンとトシル酸スプラタストを用い、陽性対照物質としては重度の遅発性アレルギー疾患に繁用されるプレドニゾロンを用いた。
【0038】
その結果を以下の表に示す。トシル酸スプラタスト100mg/kgとメキタジン5mg/kg併用投与群において、遅発型鼻腔抵抗は78.8%抑制された。これは、トシル酸スプラタスト100mg/kg単独群の41.9%、メキタジン5mg/kg単独群の54.4%よりも顕著に高い抑制効果であり、陽性対照物質として用いたプレドニゾロンの62.5%よりも強い効果であることがわかった。
【0039】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として(a)メキタジンまたはその薬学的に許容される塩と、(b)スプラタストまたはその薬学的に許容される塩との組み合わせを含有してなる医薬組成物。
【請求項2】
遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
鼻閉の予防または治療用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
成分(a)1量部に対する成分(b)の割合が10〜100重量部である、請求項1〜4のいずれかに1つに記載の医薬組成物。
【請求項6】
成分(a)と成分(b)とが同一の製剤、またはそれぞれ別の製剤の形態である、請求項1〜5のいずれかに1つに記載の医薬組成物。
【請求項7】
遅発型アレルギー反応による疾患を有する患者に、請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を投与することからなる、遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療方法。
【請求項8】
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎または副鼻腔炎を有する患者に、請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を投与することからなる、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療方法。
【請求項9】
鼻閉を有する患者に、請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の有効量を投与することからなる、鼻閉の予防または治療方法。
【請求項10】
遅発型アレルギー反応による疾患の予防または治療のための請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【請求項11】
アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アレルギー性皮膚疾患、アレルギー性眼疾患、急性鼻炎もしくは副鼻腔炎の予防または治療のための請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
鼻閉の予防または治療のための請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/063253
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516607(P2005−516607)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019227
【国際出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000207827)大鵬薬品工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】