説明

アレーアンテナ装置および集積回路、放送受信制御方法

【課題】複数アンテナを備えるFMラジオ受信機において、同一周波数の妨害信号を抑圧すること。
【解決手段】Constant Modulus Algorithmに基づく適応信号処理によって合成出力する通常適応信号処理部4と、Power Inversionに基づく適応信号処理によって合成出力する電力反転処理部5と、前記通常適応信号処理部4による合成出力と前記電力反転処理部5の合成出力それぞれのRDS信号をデコードするRDS復調部6と、前記RDS復調部6の出力である前記通常適応信号処理部のRDS情報から、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調部の出力である前記電力反転処理部のRDS情報と、変化前の前記通常適応信号処理部のRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記電力反転処理部5の出力に切り替える最適出力選択部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いるアレーアンテナ装置、およびその制御方法などに関するもので、例えば、車両などの移動体に搭載されFMラジオ受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両などの移動体に搭載されるFMラジオ受信機では、時々刻々と変化する受信電波状況に対応するため、またマルチパス妨害に対処するために、所定の距離を離した場所に複数のアンテナを設置し、受信状態のよいアンテナを選択するダイバーシティ方式が多く採用されている。
【0003】
また、近年の受信回路のデジタル化に伴い、CMA(CONSTANT MODULUS ALGORITHM)を用いる適応制御処理によって、複数のアンテナ入力を合成して、より良い受信電波を生成し、様々な受信電波環境でも良好に受信できる方式が提案されている。
【0004】
さらに、適応信号処理を用いる方式において、妨害発生時に希望波を抑圧し、妨害波を受信してしまう現象を回避するために、ウェイトベクトルを初期化する手法が開示されている。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−238295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の放送受信機では、妨害波を抑圧できることが原理的に保障されていないため、妨害波を受信する可能性が残る。また、ウェイトベクトルを特定の値に初期化するため、適応信号処理による演算が収束するまでの間は、最適な値ではないため、よりノイズを助長してしまう。さらに、頻繁に希望波と妨害波の電界強度が入れ替わる環境下では、頻繁に初期化が発生し、初期化処理そのものがノイズ源となってしまう。
【0007】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、特に同一周波数妨害発生環境下で、原理的に妨害波を抑圧することを保障し、良好な受信状態を維持し続けることのでききる受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアレーアンテナ装置は、放送局からの電波を受信する複数のアンテナを有し、前記アンテナが受信した各受信信号をConstant Modulus Algorithmに基づく適応信号処理によって合成出力する通常適応信号処理部と、前記アンテナが受信した各受信信号をPower Inversionに基づく適応信号処理によって合成出力する電力反転処理部と、前記通常適応信号処理部による合成出力と前記電力反転処理部の合成出力それぞれのRDS信号をデコードするRDS復調部と、前記RDS復調部の出力である前記通常適応信号処理部のRDS情報から、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調部の出力である前記電力反転処理部のRDS情報と、変化前の前記通常適応信号処理部のRDS情報を比較し、同一の放送
局であると判定したとき、前記電力反転処理部の出力に切り替える最適出力選択部とを備える。
【0009】
この構成により、希望波より妨害波の電界強度が強い同一周波数妨害環境下においても、妨害波を受信することなく、希望波を受信し続けることができる。
【0010】
本発明のアレーアンテナ装置において、前記最適出力選択部は、前記電力反転処理部を選択し出力しているときに、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調部の出力である前記通常適応信号処理部のRDS情報と、変化前の前記電力反転処理部のRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記電力反転処理部の出力に切り替える。この構成により、希望波より妨害波の電界強度が強い状況から、妨害波より希望波の電界強度が強い状況へと変化したときに、希望波を受信し続けることができる。
【0011】
本発明のアレーアンテナ装置において、前記最適出力選択部は、前記電力反転処理部を選択し出力しているときに、前記RDS復調部の出力である前記電力反転処理部のRDS情報が取得できなくなったとき、前記通常適応信号処理部の出力に切り替える。
この構成により、希望波より妨害波の電界強度が強い状況から、妨害波が無くなった状況へと変化したとき、希望波を受信し続けることができる。
【0012】
本発明の集積回路は、前記受信信号の受信周波数を制御するフロントエンド部と、前記フロントエンド部からの出力をAD変換するAD変換部と、前記AD変換部からの出力を音声信号に復調する復調部、前記音声信号をDA変換するDA変換部とを備え、前記通常適応信号処理部、前記電力反転処理部、前記最適出力選択部とともにワンチップ化された構成を有する。この構成により、上記の放送受信装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0013】
本発明の放送受信方法は、放送局からの電波を受信する複数のアンテナを有し、前記アンテナが受信した各受信信号をConstant Modulus Algorithmに基づく適応信号処理によって合成出力する通常適応信号処理ステップと、前記アンテナが受信した各受信信号をPower Inversionに基づく適応信号処理によって合成出力する電力反転処理ステップと、前記通常適応信号処理ステップによる合成出力と前記電力反転処理ステップの出力それぞれのRDS信号をデコードするRDS復調ステップと、前記RDS復調ステップの出力である前記通常適応信号処理ステップのRDS情報から、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調ステップの出力である前記電力反転処理ステップのRDS情報と、変化前の前記通常適応信号処理ステップのRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記通常適応信号処理ステップによる合成出力を、前記電力反転処理ステップによる合成出力に切り替える最適出力選択ステップとを備える。この構成によっても、上記と同様に、希望波より妨害波の電界強度が強い同一周波数妨害環境下においても、妨害波を受信することなく、希望波を受信し続けることができる。
【0014】
本発明の放送受信方法において、前記最適出力選択ステップは、前記電力反転処理ステップを選択し出力しているときに、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調ステップの出力である前記通常適応信号処理ステップのRDS情報と、変化前の前記電力反転処理ステップのRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記電力反転処理ステップの出力に切り替える。この構成によっても、上記と同様に、希望波より妨害波の電界強度が強い状況から、妨害波より希望波の電界強度が強い状況へと変化したときに、希望波を受信し続けることができる。
【0015】
本発明の放送受信方法において、前記最適出力選択ステップは、前記電力反転処理ステップを選択し出力しているときに、前記RDS復調ステップの出力である前記電力反転処理ステップのRDS情報が取得できなくなったとき、前記通常適応信号処理ステップの出力に切り替える。この構成によっても、上記と同様に、希望波より妨害波の電界強度が強い状況から、妨害波が無くなった状況へと変化したとき、希望波を受信し続けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、受信したい放送波の搬送周波数と同じ周波数に、より電界強度が強い妨害波が存在する環境下においても、安定して希望波を受信し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1におけるラジオ受信機の構成を示すブロック図
【図2】通常適応信号処理部4の動作の一例を示す説明図であって、(a)は希望波を受信する状態を説明するための図、(b)は妨害波を受信する状態を説明するための図
【図3】同一周波数妨害の電波環境の一例を示す説明図
【図4】本発明の実施の形態1における電力反転処理部5の動作の一例を示す説明図であって、(a)は 妨害波を受信する状態を説明するための図、(b)は希望波を受信する状態を説明するための図
【図5】本発明の実施の形態1における車載環境下の電界変動に対する通常適応信号処理部4の動作の一例を示す説明図
【図6】本発明の実施の形態1における車載環境下の電界変動に対する電力反転処理部5の動作の一例を示す説明図
【図7】本発明の実施の形態1における車載環境下の電界変動に対する最適出力選択部7の動作の一例を示す説明図
【図8】本発明の実施の形態1におけるラジオ受信機全体の動作を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態におけるアレーアンテナ装置について説明する。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る放送受信装置の構成を示すブロック図である。アレーアンテナ装置11は、アンテナ1、フロントエンド(FE)2、AD変換部(ADC)3、通常適応信号処理部4、電力反転処理部5、RDS復調部6、最適出力選択部7、FM復調部8、DA変換部(DAC)9、スピーカ10から構成される。
【0020】
ここで、フロントエンド(FE)2、AD変換部(ADC)3、通常適応信号処理部4、電力反転処理部5、RDS復調部6、最適出力選択部7、FM復調部8、DA変換部(DAC)9は、ワンチップ化されており、1つの集積回路を構成する。これにより、受信装置の小型化・軽量化を図ることができる。
【0021】
アンテナ1は、FM放送局(図示せず)から送信されるFM電波を受信する空中線であり、例えば、ポールアンテナや、窓等のガラスに組み込まれたガラスアンテナが用いられる。
【0022】
ガラスアンテナは、例えば、導電性ペーストをガラスに印刷することで形成することができる。このアンテナ1は、受信したFM電波を高周波電流(高周波信号)に変換して、FE2に出力する。
【0023】
FE2は、アンテナ1からの高周波信号から所望の周波数を選択するとともに、より周波数の低い中間周波数帯のアナログ信号に変換し、ADC3に出力する。
ADC3は、FE2から入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換し、通常適応信号処理部4及び電力反転処理部5に出力する。
【0024】
通常適応信号処理部4は、ADC3から入力される複数のディジタル信号に対して、Constant Modulus Algorithmを適用した信号処理を行うことで合成した結果を、RDS復調部6および最適出力選択部7に出力する。
【0025】
Constant Modulus Algorithmとは、振幅一定規範に基づき、各入力の振幅と位相を独立制御し合成することで、指向性制御を実現している。
この振幅一定という条件は、まさにFM放送波の特徴そのものであるため、FM放送波の妨害除去手法として適している。
【0026】
図2に、マルチパス妨害発生時のConstant Modulus Algorithmによる指向性制御の結果を示す。
マルチパス妨害とは、放送局の電波が山やビルなどの障害物で反射することで、直接波(希望波)と時間的に遅れて入射する反射波(妨害波)とが干渉することで発生する妨害を指す。
【0027】
妨害波よりも希望波の電界強度が強いときは、妨害波にヌル(指向性パターンのゼロ点)を向けるよう指向性制御することで、希望波を受信する(図2(a))。
また、希望波よりも妨害波の電界強度が強いときは、希望波にヌルを向けるよう指向性制御することで、妨害波を受信する(図2(b))。
【0028】
マルチパス妨害においては、希望波も妨害波も元は同じ信号であるため、より電界強度が高く受信状況の良い信号を受信できれば良いため、Constant Modulus
Algorithmはマルチパス妨害による影響を改善することができる。
【0029】
しかし、図3に示すような同一の周波数に異なる放送が存在する状況下(以降、同一周波数妨害と呼称)では、希望波よりも妨害波の電界強度が強いとき、すなわち図3における放送局Aが希望波で放送局Bが妨害波であるとき、妨害波を受信してしまい、同一の放送内容を受信し続けることができない。
【0030】
特に車載環境では、車が移動するに伴い発生するフェージングにより、大きな電界強度の変動が発生し、希望波と妨害波の大小関係が頻繁に入れ替わることが容易に起こりうる(図5)。
【0031】
このような車載環境下では、頻繁に妨害波を受信することに加え、希望波と妨害波の大小関係の頻繁な入れ替わりにより、適応信号処理に発生する急速な制御の変動そのものがノイズ源となってしまう。
【0032】
この同一周波数妨害を改善するために、電力反転処理部5、RDS復調部6、最適出力選択部7を導入する。
【0033】
電力反転処理部5は、ADC3から入力される複数のディジタル信号に対して、Power Inversionを適用した信号処理を行うことで合成した結果を、RDS復調部6および最適出力選択部7に出力する。
【0034】
Power Inversionは、ひとつのウェイトを一定に固定した状態で出力電力を最小化するよう、各入力の振幅と位相を独立制御し合成することで、指向性制御を実現している。
【0035】
図4に、マルチパス妨害発生時のPower Inversionによる指向性制御の結果を示す。妨害波よりも希望波の電界強度が強いときは、希望波にヌルを向けるよう指向性制御することで、妨害波を受信する(図4(a))。
【0036】
また、希望波よりも妨害波の電界強度が強いときは、妨害波にヌルを向けるよう指向性制御することで、希望波を受信する(図4(b))。
つまり、マルチパス妨害環境下で、より受信状況の悪い到来波を受信してしまう(電力反転効果)。
【0037】
また、妨害波が無く希望波のみの良好な受信環境下では、電力反転効果が働いた結果、希望波を抑圧してしまい、全く放送波が受信できなくなってしまう。
【0038】
このようにFM放送波の特徴を全く加味せずに単純に電力を反転させるという特徴から、Power Inversionは一般的にFM放送での単独使用には適さない方式である。
【0039】
このPower Inversion方式の車載電波環境下における動作例を図6に示す。車が移動するに伴い発生するフェージングにより、大きな電界強度の変動が発生し、希望波と妨害波の大小関係が頻繁に入れ替わることが容易に起こりうる。
【0040】
このとき、希望波と妨害波の大小関係が入れ替わるたびに、より受信状況の悪い放送波を受信するよう受信放送局が交互に入れ替わる。
【0041】
Constant Modulus AlgorithmおよびPower Inversionという二つの適応アルゴリズムを使用しているが、それらの出力からだけでは、それが希望波なのか妨害波なのかが見分けがつかない。
【0042】
双方とも前述の基準に基づき自律的に出力を生成するが、その出力は前述基準に対して最適であることはアルゴリズムにより保障されるが、それが希望波であることは保障されない。そのため、希望波を出力し続けることを保障するため、最適出力選択部7を導入する。
【0043】
RDS復調部6は、通常適応信号処理部4および電力反転処理部5から入力される合成後の信号それそれについて、RDS情報を復調し、その結果を最適出力選択部7に出力する。
【0044】
最適出力選択部7は、RDS復調部6から入力される信号に基づき、通常適応信号処理部4または電力反転処理部5のいずれかからの入力を選択し、そのままFM復調部8へ出力する。
【0045】
最適出力選択部7は、同一周波数妨害が発生していない良好な受信電波環境であるときは、通常適応信号処理部4の出力を選択し、FM復調部8へ出力する。
受信電波環境が良好な状況から、同一周波数妨害が発生する環境へと変化したとき、通常適応信号処理部4はマルチパス妨害発生時の環境下同様、希望波と妨害波の入力電界の大小により出力が変化する。
【0046】
つまり、希望波の電界強度が妨害波より大きいときは、妨害波にヌルを向けることで希望波を受信し続けることができるが、妨害波の電界強度が希望波より大きくなってしまったときは、希望波にヌルを向けて妨害波を受信してしまい(図2)、受信局の変化に伴い、RDS復調部6で得られる情報も変化する。
【0047】
このとき、RDS復調部6の出力であるRDS情報を常時監視し、通常適応信号処理部4により受信している放送局が変化したと判断したとき、変化前の通常適応信号処理部4のRDS情報と現在受信している電力反転処理部5のRDS情報を比較し、同一の放送局と判定したときに、電力反転処理部5の出力を選択し、FM復調部8へ出力するように切り替える。
【0048】
このとき、同一の放送局であるかどうかの判定は、RDS情報に含まれる放送局識別コード(PIコード)を参照することで行う。PIコードの全桁が一致するときは同一の放送局であると判定し、いずれかの桁が不一致であるときは異なる放送局であると判定する。
【0049】
このように切り替えることで、同一周波数妨害が受信途中で発生し、その影響度合いが希望波よりも大きくなるような環境下においても、安定して希望波を受信し続けることができる。
【0050】
また、最適出力選択部7が電力反転処理部5の出力を選択しているときに、同一周波数妨害の影響が小さくなり、妨害波の電界強度が希望波よりも小さくなったときは、電力反転処理部5の出力が希望波から妨害波へと変化することに伴い、RDS復調部6で得られる情報も変化する。
【0051】
このとき、変化前の電力反転処理部5のRDS情報と現在受信している通常適応信号処理部4のRDS情報を比較し、同一の放送局と判定したときに、通常適応信号処理部4の出力を選択し、FM復調部8へ出力するように切り替える。
【0052】
同一の放送局であるかどうかは、前述同様、RDS情報に含まれるPIコードの全桁一致にて判定する。このように切り替えることで、同一周波数妨害の影響が途中で小さくなったときも、安定して希望波を受信し続けることができる。
【0053】
さらに、最適出力選択部7が電力反転処理部5の出力を選択しているときに、同一周波数妨害の影響が急激に小さくなり、RDS情報が取得できなくなったとき、通常適応信号処理部4の出力を選択し、FM復調部8へ出力するように切り替える。
【0054】
このような切替方式を導入することにより、前述のとおり単独ではその特性からFM放送受信に適さないPower Inversion方式を実現し、その特性を利用することで、同一周波数妨害環境下においても希望波を受信し続けることができる。
【0055】
以上のように最適出力選択部7が、通常適応信号処理部4と電力反転処理部5の出力を切り替える方式において、車の移動に伴う大きな電界強度の変動に対する動作例を図7に示す。
【0056】
前述の切替手法の結果、希望波が妨害波よりも大きいときは通常適応信号処理部4の出力が選択され、妨害波が希望波よりも大きいときは電力反転処理部5の出力が選択される。つまり、車載環境で発生しやすい、希望波と妨害波の大小関係が時間変動するような環境下においても、常に安定して希望波を受信し続けることが可能となる。
【0057】
FM復調部8は、最適出力選択部7の出力信号を音声信号に復調し、DAC9に出力する。
【0058】
DAC9は、FM復調部8からのディジタル音声信号をアナログ音声信号に変換し、スピーカ10に出力する。スピーカ10は、DAC9からの入力されるアナログ音声を再生する。
【0059】
次に、受信機全体の動作を図8のフローチャートを用いて説明する。FE2は、アンテナ1で受信した電波情報を中間周波数帯に変換した後(ステップS01)、ADC3でデジタル信号に変換し(ステップS02)、通常適応信号処理部4および電力反転処理部5へ出力する。
【0060】
通常適応信号処理部4では、Constant Modulus Algorithmに基づき合成出力を計算し(ステップS03)、電力反転処理部5では、Power Inversionに基づき構成出力を計算し(ステップS04)、RDS復調部6および最適出力選択部7へ出力する。
【0061】
RDS復調部6では、通常適応信号処理部4および電力反転処理部5のそれぞれの合成出力信号に対して、RDS信号を復調し、最適出力選択部7へ出力する。
【0062】
最適出力選択部7は、現在の選択状態を確認し(ステップS06)、Constant
Modulus Algorithm出力を選択していれば、Power Inversion出力へ切り替える必要があるかどうかを判定する(ステップS07)。
【0063】
具体的には、RDS復調部6から取得したConstant Modulus Algorithm出力のPI情報が時間変化し、かつ変化前のConstant Modulus Algorithm出力と現在のPower Inversion出力のPI情報が一致すれば、Power Inversion出力を選択する(ステップS08)。
【0064】
上記以外の場合は、継続してConstant Modulus Algorithm出力を選択する(ステップS09)。
【0065】
最適出力選択部7は、現在の選択状態を確認し(ステップS06)、Power Inversion出力を選択していれば、まずPower Inversion出力がRDS復調可能かどうかを判定する(S10)。
【0066】
復調不可能時は、急激にPower Inversion出力のノイズが増大している状況、つまりは同一周波数妨害の妨害波の影響が急激に小さくなり、受信状況が急激に回復している状況を指すため、Constant Modulus Algorithm出力を選択する(ステップS13)。
【0067】
復調可能時は、Constant Modulus Algorithm出力へ切り替える必要があるかどうかを判定する(ステップS11)。具体的には、RDS復調部6から取得したPower Inversion出力のPI情報が時間変化し、かつ変化前のPower Inversion出力と現在のConstant Modulus Algorithm出力のPI情報が一致すれば、Constant Modulus Algorithm出力を選択する(ステップS13)。
【0068】
上記以外の場合は、継続してPower Inversion出力を選択する(ステップS12)。
【0069】
上記いずれかの判定処理でConstant Modulus Algorithm出力またはPower Inversion出力のどちらかの選択するかが決定され(ステップS08、S09、S12、S13)、その出力が、FM復調部8へ出力される。
【0070】
FM復調部8は、入力された合成後の信号を音声信号へ復調し(ステップS14)、DAC9へ出力する。
【0071】
DAC9は、入力された音声信号をアナログ信号へ変換し(S15)、スピーカ10へ出力する。
【0072】
スピーカ10は、アナログ信号から音声を再生する(S16)。以上にて全体の処理が一通り終了する。
【0073】
このような処理を行うことによって、単独ではFM放送信号処理には使用できないPower Inversion方式を利用できるような構成を実現することができ、同一周波数妨害環境下で妨害波の影響が大きい状況においても、安定して希望波を受信し続けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の放送受信装置は、同一周波数妨害による影響が大きい受信電波環境下においても、妨害波を抑圧し、希望波を受信し続けることができるため、特に車両などの移動体に搭載されるFMラジオ受信機に有用である。
【符号の説明】
【0075】
1 アンテナ
2 FE
3 ADC
4 通常適応信号処理部
5 電力反転処理部
6 RDS復調部
7 最適出力選択部
8 FM復調部
9 DAC
10 スピーカ
11 アレーアンテナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送局からの電波を受信する複数のアンテナを有し、前記アンテナが受信した各受信信号をConstant Modulus Algorithmに基づく適応信号処理によって合成出力する通常適応信号処理部を備えるアレーアンテナ装置において、
前記アンテナが受信した各受信信号をPower Inversionに基づく適応信号処理によって合成出力する電力反転処理部と、
前記通常適応信号処理部による合成出力と前記電力反転処理部の合成出力それぞれのRDS信号をデコードするRDS復調部と、
前記RDS復調部の出力である前記通常適応信号処理部のRDS情報から、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調部の出力である前記電力反転処理部のRDS情報と、変化前の前記通常適応信号処理部のRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記電力反転処理部の出力に切り替える最適出力選択部とを備えたアレーアンテナ装置。
【請求項2】
前記最適出力選択部は、前記電力反転処理部を選択し出力しているときに、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調部の出力である前記通常適応信号処理部のRDS情報と、変化前の前記電力反転処理部のRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記電力反転処理部の出力に切り替えることを特徴とする、請求項1記載のアレーアンテナ装置。
【請求項3】
前記最適出力選択部は、前記電力反転処理部を選択し出力しているときに、前記RDS復調部の出力である前記電力反転処理部のRDS情報が取得できなくなったとき、前記通常適応信号処理部の出力に切り替えることを特徴とする、請求項2記載のアレーアンテナ装置。
【請求項4】
前記受信信号の受信周波数を制御するフロントエンド部と、前記フロントエンド部からの出力をAD変換するAD変換部と、前記AD変換部からの出力を音声信号に復調する復調部、前記音声信号をDA変換するDA変換部とを備え、
請求項1記載の前記通常適応信号処理部、前記電力反転処理部、前記最適出力選択部とともにワンチップ化された集積回路。
【請求項5】
放送局からの電波を受信する複数のアンテナを有し、前記アンテナが受信した各受信信号をConstant Modulus Algorithmに基づく適応信号処理によって合成出力する通常適応信号処理ステップを備えるアレーアンテナ装置において、
前記アンテナが受信した各受信信号をPower Inversionに基づく適応信号処理によって合成出力する電力反転処理ステップと、
前記通常適応信号処理ステップによる合成出力と前記電力反転処理ステップの合成出力それぞれのRDS信号をデコードするRDS復調ステップと、
前記RDS復調ステップの出力である前記通常適応信号処理ステップのRDS情報から、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調ステップの出力である前記電力反転処理ステップのRDS情報と、変化前の前記通常適応信号処理ステップのRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記通常適応信号処理ステップによる合成出力を、前記電力反転処理ステップによる合成出力に切り替える最適出力選択ステップとを備えた放送受信制御方法。
【請求項6】
前記最適出力選択ステップは、前記電力反転処理ステップを選択し出力しているときに、受信する放送局の変化の有無を判定し、変化有りと判定した場合は、前記RDS復調ステップの出力である前記通常適応信号処理ステップのRDS情報と、変化前の前記電力反転処理ステップのRDS情報を比較し、同一の放送局であると判定したとき、前記電力反
転処理ステップの出力に切り替えることを特徴とする、請求項5記載の放送受信制御方法。
【請求項7】
前記最適出力選択ステップは、前記電力反転処理ステップを選択し出力しているときに、前記RDS復調ステップの出力である前記電力反転処理ステップのRDS情報が取得できなくなったとき、前記通常適応信号処理ステップの出力に切り替えることを特徴とする、請求項6記載の放送受信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110504(P2013−110504A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252558(P2011−252558)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】