アンカー金具及び軽量気泡コンクリートパネル並びに軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法及び軽量気泡コンクリートパネルの取付方法。
【課題】 狭小地における仕上げ済みパネルの施工において、その仕上げ面を傷つけることなく吊上げることが可能となり、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットの設置手間を省力ことができ、ＡＬＣパネルの取付コストを劇的に下げることが可能となる手段を提供する
【解決手段】 軽量気泡コンクリートパネル内部に埋設される水平面と垂直面からなる断面Ｌ字型をなし、前記水平面にはそのほぼ中央に貫通孔を有し、該貫通孔に重なりかつ水平面と直交する方向に開口したナットを有し、前記垂直面にはその垂直面と直交する方向に伸びるロングナットを有している吊り下げ用のアンカー金具を採用した。
【解決手段】 軽量気泡コンクリートパネル内部に埋設される水平面と垂直面からなる断面Ｌ字型をなし、前記水平面にはそのほぼ中央に貫通孔を有し、該貫通孔に重なりかつ水平面と直交する方向に開口したナットを有し、前記垂直面にはその垂直面と直交する方向に伸びるロングナットを有している吊り下げ用のアンカー金具を採用した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は軽量気泡コンクリートパネルの取付方法に関するものであり、さらに詳しくは
軽量気泡コンクリートパネルの吊り下げ用アンカー金具、アンカー金具を埋設した軽量気泡コンクリートパネル、並びにこの軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法と固定方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えば軽量気泡コンクリートパネル（以下、「ＡＬＣパネル」という。）の外壁パネルを建築物躯体に取付けて壁を構成する場合、施工現場にて小口面に長孔を設け、該長孔に取付用アンカーを挿入する。次にパネルの室内側表面から前記長孔と直交するボルト挿入孔を設け、取付用アンカーとボルトとをネジ止めし専用金物を用いて構造躯体に取付けている。
また、高耐力が必要とされる場合、若しくは前記小口面における穿孔を省略したい場合には、予め取付用アンカー金具が埋設されたＡＬＣパネルを用意し、施工現場ではパネルの室内側表面から前記アンカー金具に到達するボルト挿入孔を設け、埋設された取付用アンカー金具とボルトをネジ止めし、同様に専用金物を用いて構造躯体に取付けている。
【０００３】
一方、従来からＡＬＣパネルを建物の鉄骨躯体に取付ける際には、図６に示すようにナイロンスリング２０による吊上げ方法があり、このナイロンスリングによる吊上げ方法では、ナイロンスリング２０をＡＬＣパネル５に巻きつける際に、人力でＡＬＣパネルを起こす作業があり労働負荷になっているばかりか、特に狭小地の外壁に使用する仕上げ済みパネルの吊上げにおいては、仕上げ面がナイロンスリングにより傷つけられ、仕上げの性能を損なうという難点がある。
【０００４】
別の方法として図７に示すような取付け用のパイプアンカー２１を利用する吊上げ方法がある（例えば、特許文献１参照。）。図７（ａ）は吊り上げるＡＬＣパネルの外観斜視図であって、図７（ｂ）はＡＬＣパネルを吊り上げる方法を説明する図である。
この方法では、ＡＬＣパネルの内部に予め取付け用のパイプアンカー２１を埋設しておく。すなわち、ＡＬＣパネル本体一方の短辺小口５ａと一方の平面５ｂに、該ＡＬＣパネルの内部で連通する孔を穿設し、前記短辺小口５ａに設けた孔から前述のパイプのほぼ中央部といずれか一方の端部にネジ穴を有するパイプアンカー２１を挿入する。次いで、前記ＡＬＣパネルの一方の平面５ｂに設けた孔からパネル取付用ボルト２２を挿入して、前記パイプアンカー２１の中央部に設けたネジ穴に螺合させ、該パネル取付用ボルト２２を締め付けてパネル取付金具２３を前記ＡＬＣパネル本体５に固定する。
【０００５】
次いで、短辺小口５ａよりアイボルト２４を挿入し、該パイプアンカー２１のネジ穴に螺合させる。次にアイボルト２４に吊り上げワイヤー２６を挿通させたシャックル２５を取り付ける。このようにして吊り上げ準備を整えた上で、ＡＬＣパネル５を吊り上げワイヤー２６により吊り上げる。
図７（ｂ）は図７（ａ）の断面を示す図で、ＡＬＣパネルを吊り上げる方法を説明する図である。図に示すように、ＡＬＣパネル５の中心部にパイプアンカー２１が埋設されており、ＡＬＣパネル５の一方の平面５ｂにはパネル取付ボルト２２を介してパネル取付金具２３が取り付けられている。また、ＡＬＣパネル５の上部短辺小口５ａからは、アイボルト２４を挿入し、パイプアンカー２１のネジ穴に螺合させる。次にアイボルト２４に吊り上げワイヤー２６を挿通させたシャックル２５を取り付けて、ＡＬＣパネル５を吊り上げワイヤー２６により吊り上げる。
【０００６】
このようにして施工現場の所定位置までＡＬＣパネルを吊り込んでＡＬＣパネルを固定したら、順次シャックル、吊り上げワイヤーを外し、最後にアイボルトを抜き取る。この際、パイプアンカーはＡＬＣパネル本体中に残し、パネルに取付金具を固定しておく。このようにして必要なＡＬＣパネルを順次所定位置に吊り上げ、固定することにより軽量気泡コンクリートパネルを取り付け施工する。
【特許文献１】特開２００６−３２２２０７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかし、この方法にも次のような問題がある。すなわち、パイプアンカーとアイボルトを使用すれば仕上げを傷つけることがなくなる効果はあるが、この場合、取付用アンカーに螺合したボルトにパネル自重が集中的に負荷されるため、ボルトを起点として亀裂が発生し易いという難点がある。
本発明は上記難点を解消し、狭小地における仕上げ済みパネルの施工において、その仕上げ面を傷つけることなく吊上げることが可能となり、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットの設置手間を省くことができ、ＡＬＣパネルの取付コストを劇的に下げることが可能となる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決する為に本発明では、断面が水平面と垂直面からなるＬ字型をなし、前記水平面にはそのほぼ中央に貫通孔を有し、該貫通孔に重なりかつ水平面と直角方向に開口したナットを有し、前記垂直面にはその垂直面と直角方向に伸びるロングナットを有している軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具を採用した。
また、本発明の軽量気泡コンクリートパネルは、内部に補強鉄筋と吊り下げ用のアンカー金具が埋設された軽量気泡コンクリートパネルであって、該補強鉄筋に前記請求項１に記載のアンカー金具の一部が溶接固定されてなり、該アンカー金具のナットとロングナットとがそれぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に垂直となるように埋設されてなることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルとした。
本発明の軽量気泡コンクリートパネルにおいては、前記軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具のナットとロングナットとが、それぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に開口していることが好ましい。
【０００９】
本発明の軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法は、前記に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のナットにアイボルトを螺合させて締め付け、該アイボルトにシャックルを介してワイヤーを掛けて吊り上げる軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法を採用した。
また、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの取付方法は、前記に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のロングナットに、締め付けボルトを使用してパネル取付金具を締め付け、次いで軽量気泡コンクリートパネルを前記の吊り上げ方法で所定の位置まで吊り上げ、前記パネル取付金具をパネル取付用の定規アングルに溶接固定する軽量気泡コンクリートパネルの取付方法である。
【発明の効果】
【００１０】
本発明に係るアンカー金具によれば、狭小地における仕上げ済みパネルの施工において、その仕上げ面を傷つけずに吊上げることが可能となり、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットを兼ね備えたアンカー金具とすることで、両者の設置手間を省くことができるため、劇的にコストを下げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
以下、本発明の実施例を図面によって説明する。
先ず、アンカー金具について説明する。
図１は、本発明のアンカー金具の外観斜視図であり、図２は断面図である。本発明のアンカー金具３は、例えば肉厚が２．３ｍｍで断面が５０ｍｍ×８０ｍｍ程度のＬ字型であり、長さが１４０ｍｍ程度の形状を有し、水平面３ａの中心付近には直径１３ｍｍ程度の貫通孔８が設けられており、その水平面３ａの上面には貫通孔８に重なるようにしてＭ１２の吊上げ用のナット７が溶接固定されている。また、垂直面３ｂの略中心には、Ｍ１２程度の取付用ロングナット６が溶接固定されている。したがって、吊上げ用のナット７と取付用ロングナット６は、互いに直角方向に開口していることになる。
ここで、アンカー金具の寸法やナットの大きさは、上記例に限らずＡＬＣパネルの大きさに応じて適宜選択すればよい。
【００１２】
次に、上記アンカー金具を補強鉄筋と共にＡＬＣパネル母材に埋設してＡＬＣパネルを製造する方法について説明する。
図３は、本発明のＡＬＣパネルの構造を示す断面図である。
先ず、複数本の補強鉄筋４をＡＬＣパネルの長手方向及び幅方向に交差するように並べ、交差部を溶接することにより格子状の鉄筋マットを製作し、２枚の鉄筋マットを所定の間隔を置いて対峙させ、図示省略のスペーサーで連結して鉄筋籠を製作する。
【００１３】
次に、アンカー金具３の垂直面３ｂの外側面を室外側補強鉄筋４aに当接させ、その補強鉄筋４ａと接する部位を溶接してアンカー金具３を補強鉄筋４に固定する。この時、アンカー金具３はＡＬＣパネル５の上部幅中心位置に設置する。長さ方向については、例えば、吊上げ用のナット７の上部開口が短辺小口５ａから約１０ｍｍ程度の所に、位置するようにする。また、厚さ方向については、ＡＬＣパネル５の表面５ｃから１０ｍｍ程度の位置に取付用ロングナット６の先端が位置するようにする。
この時、取付用ロングナット６の先端の開口部、及び吊上げ用ナット７の先端の開口部には、円柱状の発泡スチロール栓を挿入しておき、後述するＡＬＣスラリーが取付用ロングナット６，吊上げ用ナット７および貫通口８内へ充填されるのを防止する。
【００１４】
このように、吊上げ用ナット７の先端の開口部、及び取付用ロングナット６の先端の開口部にかけて、円柱状の発泡スチロール栓を挿入することにより、穿孔位置、穿孔範囲が容易に判断することができるため、後の搾孔作業を大幅に軽減することができる。
【００１５】
次に、型枠内にアンカー金具付の鉄筋籠を複数セットすると共に、ＡＬＣスラリーを注入し、ＡＬＣ母材にアンカー金具付の補強鉄筋マットを埋設させて固化させる。その後、ＡＬＣ母材スラリーが半硬化してから、ＡＬＣ母材を所定の厚さに切断し、更にオートクレーブ養生することにより、図３に示す本発明の補強鉄筋とアンカー金具を埋設したＡＬＣパネル１が得られる。
【００１６】
以上のように製造されたＡＬＣパネルは、建物の所定位置まで吊り上げて建物躯体に取り付ける。
図４は本発明で使用する専用取付金物の外観斜視図である。
この専用取付金物１１は、ほぼ上半分が垂直部１２と水平部１３に分割されて断面Ｔ字状に折り曲げられており、下半分の垂直部１２の中央に長穴１５を有するものであって、鋼板を切り抜いて折り曲げ加工して成形されている。中央の長穴１５は取付ボルトを挿入するものであって、スリットとしても良い。
水平部１３には、ＡＬＣパネルを吊り上げるためのアイボルトを貫通させる開口部１４が設けてある。
【００１７】
図５はＡＬＣパネルを吊り上げて建物躯体に取り付ける状態を示す断面図である。
先ず図５のように本発明によるＡＬＣパネル１の室内側表面１ｃよりアンカー金具３の取付用ロングナット６に達するまで取付ボルト挿入孔９を所定の寸法に穿孔する。次に、専用取付金具１１を固定するための取付用ボルト１０を、自重受けを兼ねた専用取付金物１１の垂直面１２に設けた長穴１５を貫通させて、ＡＬＣパネル１中に埋設されている取付用ロングナット６に螺合させて締め付け、専用取付金物１１をＡＬＣパネル１に固定する。
【００１８】
さらに、ＡＬＣパネル１上部の小口面１ａからアンカー金具３の吊上げ用ナット７に達するまで所定寸法のアイボルト挿入孔１６を穿孔する。
次いで、ＡＬＣパネル吊上げ用のアイボルト２４を、専用取付金物１１の水平面１３の開口部１４を貫通させて、吊上げ用ナット７に螺合させて締め付ける。この状態から、アイボルト２４にシャックルを介してワイヤーを掛け、所定の位置まで吊上げる。専用取付金物１１を構造躯体１７に設けたＡＬＣパネル取付け用の下地アングル１８に当接させた後、両者を溶接して固定する。取付後は吊上げ用のアイボルト２４は取り除かれる。アンカー金具３はＡＬＣパネル内に残っている。
このようにして順次所定のＡＬＣパネルを吊り上げて下地アングル１８に固定することにより、建物の壁構造を施工構築する。
【００１９】
このようにして本発明のアンカー金具を使用してＡＬＣパネルを吊り上げ、所定位置に固定していけば、狭小地における施工においてパネルの仕上げ面を傷つけることなく吊上げることができ、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットを兼ね備えたアンカー金具を使用することで、両者の設置手間を省力することができるため、劇的にコストを下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明に係る実施形態のアンカー金具の斜視図である。
【図２】本発明に係る実施形態のアンカー金具の断面図である。
【図３】本発明の補強鉄筋とアンカー金具を埋設したＡＬＣパネルの断面図である。
【図４】本発明で使用する専用取付金物の外観斜視図である。
【図５】本発明のＡＬＣパネルを吊り上げて建物躯体に取り付ける状態を示す断面図である。
【図６】従来のＡＬＣパネルの吊上げ方法の一例を示す図である。
【図７】従来のＡＬＣパネルの吊上げ方法の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【００２１】
１ 補強鉄筋及びアンカー金具を埋設したＡＬＣパネル
３ アンカー金具
４ 補強鉄筋
５ 軽量気泡コンクリートパネル
６ 取付用ロングナット
７ 吊上げ用ナット
８ 貫通口
９ 取付ボルト挿入孔
１０ 取付用ボルト
１１ 専用取付金物
１２ 垂直面
１３ 水平面
１４ 開口部
１５ 長穴
１６ アイボルト挿入孔
１７ 構造躯体
１８ 下地アングル
２０ ナイロンスリング
２１ パイプアンカー
２２ パネル取付用ボルト
２３ パネル取付金具
２４ 吊上げ用アイボルト
２５ シャックル
２６ ワイヤー
【技術分野】
【０００１】
本発明は軽量気泡コンクリートパネルの取付方法に関するものであり、さらに詳しくは
軽量気泡コンクリートパネルの吊り下げ用アンカー金具、アンカー金具を埋設した軽量気泡コンクリートパネル、並びにこの軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法と固定方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えば軽量気泡コンクリートパネル（以下、「ＡＬＣパネル」という。）の外壁パネルを建築物躯体に取付けて壁を構成する場合、施工現場にて小口面に長孔を設け、該長孔に取付用アンカーを挿入する。次にパネルの室内側表面から前記長孔と直交するボルト挿入孔を設け、取付用アンカーとボルトとをネジ止めし専用金物を用いて構造躯体に取付けている。
また、高耐力が必要とされる場合、若しくは前記小口面における穿孔を省略したい場合には、予め取付用アンカー金具が埋設されたＡＬＣパネルを用意し、施工現場ではパネルの室内側表面から前記アンカー金具に到達するボルト挿入孔を設け、埋設された取付用アンカー金具とボルトをネジ止めし、同様に専用金物を用いて構造躯体に取付けている。
【０００３】
一方、従来からＡＬＣパネルを建物の鉄骨躯体に取付ける際には、図６に示すようにナイロンスリング２０による吊上げ方法があり、このナイロンスリングによる吊上げ方法では、ナイロンスリング２０をＡＬＣパネル５に巻きつける際に、人力でＡＬＣパネルを起こす作業があり労働負荷になっているばかりか、特に狭小地の外壁に使用する仕上げ済みパネルの吊上げにおいては、仕上げ面がナイロンスリングにより傷つけられ、仕上げの性能を損なうという難点がある。
【０００４】
別の方法として図７に示すような取付け用のパイプアンカー２１を利用する吊上げ方法がある（例えば、特許文献１参照。）。図７（ａ）は吊り上げるＡＬＣパネルの外観斜視図であって、図７（ｂ）はＡＬＣパネルを吊り上げる方法を説明する図である。
この方法では、ＡＬＣパネルの内部に予め取付け用のパイプアンカー２１を埋設しておく。すなわち、ＡＬＣパネル本体一方の短辺小口５ａと一方の平面５ｂに、該ＡＬＣパネルの内部で連通する孔を穿設し、前記短辺小口５ａに設けた孔から前述のパイプのほぼ中央部といずれか一方の端部にネジ穴を有するパイプアンカー２１を挿入する。次いで、前記ＡＬＣパネルの一方の平面５ｂに設けた孔からパネル取付用ボルト２２を挿入して、前記パイプアンカー２１の中央部に設けたネジ穴に螺合させ、該パネル取付用ボルト２２を締め付けてパネル取付金具２３を前記ＡＬＣパネル本体５に固定する。
【０００５】
次いで、短辺小口５ａよりアイボルト２４を挿入し、該パイプアンカー２１のネジ穴に螺合させる。次にアイボルト２４に吊り上げワイヤー２６を挿通させたシャックル２５を取り付ける。このようにして吊り上げ準備を整えた上で、ＡＬＣパネル５を吊り上げワイヤー２６により吊り上げる。
図７（ｂ）は図７（ａ）の断面を示す図で、ＡＬＣパネルを吊り上げる方法を説明する図である。図に示すように、ＡＬＣパネル５の中心部にパイプアンカー２１が埋設されており、ＡＬＣパネル５の一方の平面５ｂにはパネル取付ボルト２２を介してパネル取付金具２３が取り付けられている。また、ＡＬＣパネル５の上部短辺小口５ａからは、アイボルト２４を挿入し、パイプアンカー２１のネジ穴に螺合させる。次にアイボルト２４に吊り上げワイヤー２６を挿通させたシャックル２５を取り付けて、ＡＬＣパネル５を吊り上げワイヤー２６により吊り上げる。
【０００６】
このようにして施工現場の所定位置までＡＬＣパネルを吊り込んでＡＬＣパネルを固定したら、順次シャックル、吊り上げワイヤーを外し、最後にアイボルトを抜き取る。この際、パイプアンカーはＡＬＣパネル本体中に残し、パネルに取付金具を固定しておく。このようにして必要なＡＬＣパネルを順次所定位置に吊り上げ、固定することにより軽量気泡コンクリートパネルを取り付け施工する。
【特許文献１】特開２００６−３２２２０７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
しかし、この方法にも次のような問題がある。すなわち、パイプアンカーとアイボルトを使用すれば仕上げを傷つけることがなくなる効果はあるが、この場合、取付用アンカーに螺合したボルトにパネル自重が集中的に負荷されるため、ボルトを起点として亀裂が発生し易いという難点がある。
本発明は上記難点を解消し、狭小地における仕上げ済みパネルの施工において、その仕上げ面を傷つけることなく吊上げることが可能となり、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットの設置手間を省くことができ、ＡＬＣパネルの取付コストを劇的に下げることが可能となる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を解決する為に本発明では、断面が水平面と垂直面からなるＬ字型をなし、前記水平面にはそのほぼ中央に貫通孔を有し、該貫通孔に重なりかつ水平面と直角方向に開口したナットを有し、前記垂直面にはその垂直面と直角方向に伸びるロングナットを有している軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具を採用した。
また、本発明の軽量気泡コンクリートパネルは、内部に補強鉄筋と吊り下げ用のアンカー金具が埋設された軽量気泡コンクリートパネルであって、該補強鉄筋に前記請求項１に記載のアンカー金具の一部が溶接固定されてなり、該アンカー金具のナットとロングナットとがそれぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に垂直となるように埋設されてなることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルとした。
本発明の軽量気泡コンクリートパネルにおいては、前記軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具のナットとロングナットとが、それぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に開口していることが好ましい。
【０００９】
本発明の軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法は、前記に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のナットにアイボルトを螺合させて締め付け、該アイボルトにシャックルを介してワイヤーを掛けて吊り上げる軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法を採用した。
また、本発明の軽量気泡コンクリートパネルの取付方法は、前記に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のロングナットに、締め付けボルトを使用してパネル取付金具を締め付け、次いで軽量気泡コンクリートパネルを前記の吊り上げ方法で所定の位置まで吊り上げ、前記パネル取付金具をパネル取付用の定規アングルに溶接固定する軽量気泡コンクリートパネルの取付方法である。
【発明の効果】
【００１０】
本発明に係るアンカー金具によれば、狭小地における仕上げ済みパネルの施工において、その仕上げ面を傷つけずに吊上げることが可能となり、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットを兼ね備えたアンカー金具とすることで、両者の設置手間を省くことができるため、劇的にコストを下げることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
以下、本発明の実施例を図面によって説明する。
先ず、アンカー金具について説明する。
図１は、本発明のアンカー金具の外観斜視図であり、図２は断面図である。本発明のアンカー金具３は、例えば肉厚が２．３ｍｍで断面が５０ｍｍ×８０ｍｍ程度のＬ字型であり、長さが１４０ｍｍ程度の形状を有し、水平面３ａの中心付近には直径１３ｍｍ程度の貫通孔８が設けられており、その水平面３ａの上面には貫通孔８に重なるようにしてＭ１２の吊上げ用のナット７が溶接固定されている。また、垂直面３ｂの略中心には、Ｍ１２程度の取付用ロングナット６が溶接固定されている。したがって、吊上げ用のナット７と取付用ロングナット６は、互いに直角方向に開口していることになる。
ここで、アンカー金具の寸法やナットの大きさは、上記例に限らずＡＬＣパネルの大きさに応じて適宜選択すればよい。
【００１２】
次に、上記アンカー金具を補強鉄筋と共にＡＬＣパネル母材に埋設してＡＬＣパネルを製造する方法について説明する。
図３は、本発明のＡＬＣパネルの構造を示す断面図である。
先ず、複数本の補強鉄筋４をＡＬＣパネルの長手方向及び幅方向に交差するように並べ、交差部を溶接することにより格子状の鉄筋マットを製作し、２枚の鉄筋マットを所定の間隔を置いて対峙させ、図示省略のスペーサーで連結して鉄筋籠を製作する。
【００１３】
次に、アンカー金具３の垂直面３ｂの外側面を室外側補強鉄筋４aに当接させ、その補強鉄筋４ａと接する部位を溶接してアンカー金具３を補強鉄筋４に固定する。この時、アンカー金具３はＡＬＣパネル５の上部幅中心位置に設置する。長さ方向については、例えば、吊上げ用のナット７の上部開口が短辺小口５ａから約１０ｍｍ程度の所に、位置するようにする。また、厚さ方向については、ＡＬＣパネル５の表面５ｃから１０ｍｍ程度の位置に取付用ロングナット６の先端が位置するようにする。
この時、取付用ロングナット６の先端の開口部、及び吊上げ用ナット７の先端の開口部には、円柱状の発泡スチロール栓を挿入しておき、後述するＡＬＣスラリーが取付用ロングナット６，吊上げ用ナット７および貫通口８内へ充填されるのを防止する。
【００１４】
このように、吊上げ用ナット７の先端の開口部、及び取付用ロングナット６の先端の開口部にかけて、円柱状の発泡スチロール栓を挿入することにより、穿孔位置、穿孔範囲が容易に判断することができるため、後の搾孔作業を大幅に軽減することができる。
【００１５】
次に、型枠内にアンカー金具付の鉄筋籠を複数セットすると共に、ＡＬＣスラリーを注入し、ＡＬＣ母材にアンカー金具付の補強鉄筋マットを埋設させて固化させる。その後、ＡＬＣ母材スラリーが半硬化してから、ＡＬＣ母材を所定の厚さに切断し、更にオートクレーブ養生することにより、図３に示す本発明の補強鉄筋とアンカー金具を埋設したＡＬＣパネル１が得られる。
【００１６】
以上のように製造されたＡＬＣパネルは、建物の所定位置まで吊り上げて建物躯体に取り付ける。
図４は本発明で使用する専用取付金物の外観斜視図である。
この専用取付金物１１は、ほぼ上半分が垂直部１２と水平部１３に分割されて断面Ｔ字状に折り曲げられており、下半分の垂直部１２の中央に長穴１５を有するものであって、鋼板を切り抜いて折り曲げ加工して成形されている。中央の長穴１５は取付ボルトを挿入するものであって、スリットとしても良い。
水平部１３には、ＡＬＣパネルを吊り上げるためのアイボルトを貫通させる開口部１４が設けてある。
【００１７】
図５はＡＬＣパネルを吊り上げて建物躯体に取り付ける状態を示す断面図である。
先ず図５のように本発明によるＡＬＣパネル１の室内側表面１ｃよりアンカー金具３の取付用ロングナット６に達するまで取付ボルト挿入孔９を所定の寸法に穿孔する。次に、専用取付金具１１を固定するための取付用ボルト１０を、自重受けを兼ねた専用取付金物１１の垂直面１２に設けた長穴１５を貫通させて、ＡＬＣパネル１中に埋設されている取付用ロングナット６に螺合させて締め付け、専用取付金物１１をＡＬＣパネル１に固定する。
【００１８】
さらに、ＡＬＣパネル１上部の小口面１ａからアンカー金具３の吊上げ用ナット７に達するまで所定寸法のアイボルト挿入孔１６を穿孔する。
次いで、ＡＬＣパネル吊上げ用のアイボルト２４を、専用取付金物１１の水平面１３の開口部１４を貫通させて、吊上げ用ナット７に螺合させて締め付ける。この状態から、アイボルト２４にシャックルを介してワイヤーを掛け、所定の位置まで吊上げる。専用取付金物１１を構造躯体１７に設けたＡＬＣパネル取付け用の下地アングル１８に当接させた後、両者を溶接して固定する。取付後は吊上げ用のアイボルト２４は取り除かれる。アンカー金具３はＡＬＣパネル内に残っている。
このようにして順次所定のＡＬＣパネルを吊り上げて下地アングル１８に固定することにより、建物の壁構造を施工構築する。
【００１９】
このようにして本発明のアンカー金具を使用してＡＬＣパネルを吊り上げ、所定位置に固定していけば、狭小地における施工においてパネルの仕上げ面を傷つけることなく吊上げることができ、且つ取付用ボルトへの集中荷重による亀裂を防止できるばかりでなく、取付用ナットと吊上げ用ナットを兼ね備えたアンカー金具を使用することで、両者の設置手間を省力することができるため、劇的にコストを下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【００２０】
【図１】本発明に係る実施形態のアンカー金具の斜視図である。
【図２】本発明に係る実施形態のアンカー金具の断面図である。
【図３】本発明の補強鉄筋とアンカー金具を埋設したＡＬＣパネルの断面図である。
【図４】本発明で使用する専用取付金物の外観斜視図である。
【図５】本発明のＡＬＣパネルを吊り上げて建物躯体に取り付ける状態を示す断面図である。
【図６】従来のＡＬＣパネルの吊上げ方法の一例を示す図である。
【図７】従来のＡＬＣパネルの吊上げ方法の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【００２１】
１ 補強鉄筋及びアンカー金具を埋設したＡＬＣパネル
３ アンカー金具
４ 補強鉄筋
５ 軽量気泡コンクリートパネル
６ 取付用ロングナット
７ 吊上げ用ナット
８ 貫通口
９ 取付ボルト挿入孔
１０ 取付用ボルト
１１ 専用取付金物
１２ 垂直面
１３ 水平面
１４ 開口部
１５ 長穴
１６ アイボルト挿入孔
１７ 構造躯体
１８ 下地アングル
２０ ナイロンスリング
２１ パイプアンカー
２２ パネル取付用ボルト
２３ パネル取付金具
２４ 吊上げ用アイボルト
２５ シャックル
２６ ワイヤー
【特許請求の範囲】
【請求項１】
軽量気泡コンクリートパネル内部に埋設されるアンカー金具であって、断面が水平面と垂直面からなるＬ字型をなし、前記水平面にはそのほぼ中央に貫通孔を有し、該貫通孔に重なりかつ水平面と直角方向に開口したナットを有し、前記垂直面にはその垂直面と直角方向に伸びるロングナットを有していることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具。
【請求項２】
内部に補強鉄筋と吊り下げ用のアンカー金具が埋設された軽量気泡コンクリートパネルであって、該補強鉄筋に前記請求項１に記載のアンカー金具の一部が溶接固定されてなり、該アンカー金具のナットとロングナットとがそれぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に垂直となるように埋設されてなることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項３】
前記軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具のナットとロングナットとが、それぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に開口していることを特徴とする請求項２に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項４】
前記請求項２又は３に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のナットにアイボルトを螺合させて締め付け、該アイボルトにシャックルを介してワイヤーを掛けて吊り上げることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法。
【請求項５】
前記請求項２又は３に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のロングナットに、締め付けボルトを使用してパネル取付金具を締め付け、次いで軽量気泡コンクリートパネルを前記請求項４に記載の吊り上げ方法で所定の位置まで吊り上げ、前記パネル取付金具をパネル取付用の定規アングルに溶接固定することを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの取付方法。
【請求項１】
軽量気泡コンクリートパネル内部に埋設されるアンカー金具であって、断面が水平面と垂直面からなるＬ字型をなし、前記水平面にはそのほぼ中央に貫通孔を有し、該貫通孔に重なりかつ水平面と直角方向に開口したナットを有し、前記垂直面にはその垂直面と直角方向に伸びるロングナットを有していることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具。
【請求項２】
内部に補強鉄筋と吊り下げ用のアンカー金具が埋設された軽量気泡コンクリートパネルであって、該補強鉄筋に前記請求項１に記載のアンカー金具の一部が溶接固定されてなり、該アンカー金具のナットとロングナットとがそれぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に垂直となるように埋設されてなることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項３】
前記軽量気泡コンクリートパネル吊り下げ用のアンカー金具のナットとロングナットとが、それぞれ軽量気泡コンクリートパネルのいずれか一方の端面小口及び平面に開口していることを特徴とする請求項２に記載の軽量気泡コンクリートパネル。
【請求項４】
前記請求項２又は３に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のナットにアイボルトを螺合させて締め付け、該アイボルトにシャックルを介してワイヤーを掛けて吊り上げることを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの吊り上げ方法。
【請求項５】
前記請求項２又は３に記載の軽量気泡コンクリートパネルに埋設されたアンカー金具のロングナットに、締め付けボルトを使用してパネル取付金具を締め付け、次いで軽量気泡コンクリートパネルを前記請求項４に記載の吊り上げ方法で所定の位置まで吊り上げ、前記パネル取付金具をパネル取付用の定規アングルに溶接固定することを特徴とする軽量気泡コンクリートパネルの取付方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【公開番号】特開２００８−２８５８３２（Ｐ２００８−２８５８３２Ａ）
【公開日】平成２０年１１月２７日（２００８．１１．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１２９７７０（Ｐ２００７−１２９７７０）
【出願日】平成１９年５月１５日（２００７．５．１５）
【出願人】（３９９１１７７３０）住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１１月２７日（２００８．１１．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年５月１５日（２００７．５．１５）
【出願人】（３９９１１７７３０）住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Ｆターム（参考）】
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