説明

アンダカバー構造

【課題】アンダカバー上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができるアンダカバー構造を得る。
【解決手段】アンダカバーは、下側部材としてのカバーロア54と上側部材としてのカバーアッパ56との2部材で構成される。アンダカバー構造10は、パワーユニットが収容されたパワーユニット室を下方から覆うと共にカバーロア54には該パワーユニット室の内外を連通する空気取り入れ口52が形成する。前輪からの入力によってアンダカバーに振動を付与するスタビライザバー30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アンダーカバーに設けた窓部からインタークーラーに冷却風を導く構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−301528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダクトの窓部から雪や泥などの異物が侵入して、該アンダカバー内方の車体内に異物が堆積することが懸念される。
【0005】
本発明は、アンダカバー上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができるアンダカバー構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るアンダカバー構造は、車両下向きに開口する空間を下側から覆い、かつ前記空間の内外を連通する窓部が形成されたアンダカバーと、前記アンダカバーに振動を付与する振動付与手段と、を備えている。
【0007】
請求項1記載のアンダカバー構造では、アンダカバーが振動付与手段により振動されると、該アンダカバー上の堆積物が落下等により排除(解消)される。また、アンダカバーの振動により、該アンダカバー上への異物の堆積自体が生じにくくなる。
【0008】
このように、請求項1記載のアンダカバー構造では、アンダカバー上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係るアンダカバー構造は、請求項1記載のアンダカバー構造において、前記振動付与手段は、左右の車輪のサスペンション装置を車両のロールが抑制されるように連結するスタビライザバーと、前記スタビライザバーの振動が前記アンダカバーに直接的又は間接的に伝達されるように、該スタビライザバーとアンダカバーとを接続する接続手段と、をさらに備えている。
【0010】
請求項2記載のアンダカバー構造では、左右サスペンションを連結するスタビライザが車輪(路面)からの入力により振動すると、接続手段によりスタビライザバーに接続されたアンダカバーが振動する。これにより、専用の加振源を用いることなく、アンダカバー上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係るアンダカバー構造は、請求項1又は請求項2記載のアンダカバー構造において、前記スタビライザバーにおける車幅方向に沿って延在する部分の回転を前記アンダカバーの曲げに変換する曲げ付与手段をさらに備えた。
【0012】
請求項3記載のアンダカバー構造では、車輪の上下動に伴ってスタビライザバーの車幅方向に延在する部分が回転(捩れを含む)すると、この回転が曲げ付与手段によりアンダカバーの曲げに変換される。これにより、アンダカバーは、曲げられる、すなわち厚み方向に往復動される。このアンダカバーの曲げによって、アンダカバーに堆積された異物が効率的に排除される。
【0013】
請求項4記載の発明に係るアンダカバー構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載のアンダカバー構造において、前記曲げ付与手段は、前記アンダカバーが下方に撓んだ場合に、前記スタビライザバーにおける車幅方向に沿って延在する部分の回転が前記アンダカバーの曲げに変換されるように、該アンダカバー側と前記スタビライザバー側とを係合させる係合構造を含んで構成されている。
【0014】
請求項4記載のアンダカバー構造では、アンダカバーが例えば異物の重みで撓むと、係合構造が係合する。この係合状態でスタビライザバーの車幅方向に延在する部分が回転(捩れを含む)すると、この回転が係合構造を介してアンダカバーに伝えられ、該アンダカバーは上記の通り曲げられる(厚み方向に往復動される)。アンダカバーは、異物の重みで撓んでいない状態では、係合構造にてスタビライザバーに拘束されないので、不要な曲げを受けることがない。
【0015】
請求項5記載の発明に係るアンダカバー構造は、請求項4記載のアンダカバー構造において、前記アンダカバーは、前記スタビライザバーの下側に位置する下側部材と、前記スタビライザバーの上側に位置する上側部材とを含んで構成されており、前記接続手段は、前記上側部材と下側部材との間に前記スタビライザバーを挟み込むことで構成されており、前記係合構造は、前記スタビライザバー側に設けられた凸部と、前記アンダカバーの上側部材に設けられ該上側部材が下方に撓んだ場合に前記凸部に嵌合する凹部又は孔部とを含んで構成されている。
【0016】
請求項5記載のアンダカバー構造では、アンダカバーの上側部材と下側部材との間にスタビライザバーを直接的又は間接的に挟み込むことで接続手段が構成され、スタビライザバーの振動がアンダカバーに伝達される。一方、アンダカバーの上側部材が異物の重みなどにより下方に撓むと、該上側部材の凹部又は孔部にスタビライザバーの凸部が入り込む。これにより、スタビライザバーの回転が凸部、凹部又は孔部を介して効率的に曲げとしてアンダカバーに伝達され、アンダカバー上の異物の堆積が効率的に排除される。特に、回転側であるスタビライザバー側に凸部が設けられているため、該スタビライザバーの回転によるアンダカバーの曲げを大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明に係るアンダカバー構造は、アンダカバー上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るアンダカバー構造の要部を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るアンダカバー構造を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアンダカバー構造を模式的に示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るアンダカバー構造の要部を拡大して示す図であって、(A)はカバーアッパの変形前の状態を示す側断面図、(B)はカバーアッパの変形状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係るアンダカバー構造10について、図1〜図4に基づいて説明する。先ず、アンダカバー構造10が適用された自動車Vのフロントサスペンション構造、冷却ユニット構造を含む概略構成を説明し、次いで、アンダカバー構造10の具体的な構成を説明することとする。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示す。
【0020】
(自動車の概略構造)
図2には、アンダカバー構造10が適用された自動車Vの前部が模式的な平面図にて示されており、図3には、自動車Vの前部が模式的な側面図にて示されている。これらの図に示される如く、自動車Vの車両前後方向の前端側には、パワーユニット12が配設されたパワーユニット用空間としてのパワーユニット室14が配置されている。この実施形態におけるパワーユニット12は、それぞれ車輪としてのフロントホイールWfを駆動するための駆動源として内燃機関であるエンジンと電動モータとを含んで構成されている。したがって、自動車Vは、2つの駆動源を有するハイブリッド自動車とされている。
【0021】
具体的には、パワーユニット12は、車幅方向に沿ったクランクシャフトを有する横置きのエンジンと、該エンジンに動力伝達可能に連結されたトランスアクスルとを主要部として構成されている。トランスアクスルは、電動モータ、図示しないジェネレータ、動力分割機構、無段変速機等である変速機等を含んで構成されている。また、この実施形態では、トランスアクスルには、例えば電動モータ、ジェネレータ、及びバッテリに電気的に接続されたインバータを含んで構成されている。したがって、この実施形態に係るパワーユニットは、パワープラントとして捉えることも可能である。なお、トランスアクスルとしては、例えば、マニュアルトランスミッション(MT)、トルコン式等の自動変速機(AT)、無断変速機(CVT)等の通常のトランスアクスルとしても良い。このパワーユニット12は、図示しない部分で車体(フロントサイドメンバ等の骨格部材)及びサブフレーム(サスペンションメンバ)15に対し、マウント部材を介して支持されている。
【0022】
サブフレーム15は、左右一対のサイドレール16と、左右のサイドレール16の後端間を架け渡すリヤクロスメンバ18と、左右のサイドレール16の前(中間部)間を架け渡すフロントクロスメンバ20とを主要部として構成されている。すなわち、サブフレーム15は、平面視で略矩形枠状を成す井型フレームとされている。
【0023】
(フロントサスペンション構造)
左右のサイドレール16は、それぞれサスペンション装置としてのフロントサスペンション22を構成するロアアーム24の車幅方向内端を前後方向に沿った軸回りに遥動可能に支持している。図示は省略するが、ロアアーム24は、フロントホイールWfのハブを回転可能に支持するアクスルブラケットに連結されている。
【0024】
フロントサスペンション22は、車体に支持された車体側部材(例えばシリンダ)26Bとアクスルブラケットに連結された車輪側部材(例えばロッド)26Aとが伸縮自在に構成されたショックアブソーバ26を備えている。また、ショックアブソーバ26の車輪側部材26Aと車体側部材26Bとの間には、圧縮コイルスプリング28が圧縮状態で設けられている。
【0025】
さらに、左右のフロントサスペンション22には、スタビライザバー(アンチロールバー)30が架け渡されている。図1にも示される如く、スタビライザバー30は、車幅方向に延在するトーションバー30Tの両端から後向きに延設された左右一対のサス連結バー30Lを有する。このスタビライザバー30は、左右のサス連結バー30Lの後端においてスタビライザリンク32を介して車輪側部材26Aに連結されている。
【0026】
また、図1及び図2に示される如く、トーションバー30Tは、左右の2箇所において、スタビライザブッシュ34によってサイドレール16に回転自在に(捩れを阻害されることなく)支持されている。これらにより、スタビライザバー30は、左右のフロントホイールWfのストローク差でトーションバー30Tが弾性的に捩じられ、その復元力によって自動車Vのロールを抑制するようになっている。
【0027】
(冷却ユニット構造)
上記の通り内燃機関であるエンジンを含んで構成されるパワーユニット12が配設されたパワーユニット室14は、所謂エンジンルームとして捉えることができる。図3に示される如く、パワーユニット室14の車両前後方向の後端部は、車室Cとの間を隔てるダッシュパネル36にて規定されている。ダッシュパネル36は、フロアパネル38の車両前後方向の前端部に接合されている。フロアパネル38における車幅方向の中央部には、正面断面視で車両上下方向に下向きに開口する[コ」字状を成すフロアトンネル40が形成されている。
【0028】
そして、アンダカバー構造10が適用された自動車Vでは、フロアトンネル40の車両前後方向の前側の開口端40Aを塞ぐように、冷却ユニット42が設けられている。したがって、この実施形態では、冷却ユニット42がパワーユニット12に対する車両前後方向の後側に配置されている。冷却ユニット42は、パワーユニット12(のエンジンや電気モータ)との間で冷却水を循環させて該パワーユニット12を冷却する空冷式の熱交換器であるラジエータ、及び図示しない空調装置(の冷凍サイクル)を構成する空冷式の熱交換器であるコンデンサ(凝縮器)の少なくとも一方(この実施形態では双方)を含んで構成されている。
【0029】
また、冷却ユニット42の車両前後方向の後面側には、ファンユニット44が設けられている。このファンユニット44の作動によって、冷却ユニット42には、車両前後方向の前面側から後面側に向けて、冷却水との熱交換を行う冷却風が通過するようになっている。冷却水との熱交換を行った後の冷却風は、フロアトンネル40の下向き開口端40Bを通じてフロア下に排出されるようになっている。
【0030】
この冷却ユニット42に対しては、後述するアンダカバー50に形成された空気取り入れ口52から導入された空気が冷却風として導かれるようになっている。
【0031】
以下、この冷却ユニット42に冷媒(ラジエータを循環する冷却水、エアコン冷媒)との熱交換を行う冷却風を導く機能を有するアンダカバー構造10について詳細に説明することとする。
【0032】
(アンダカバー構造の構成)
図1に示される如く、アンダカバー構造10は、パワーユニット室14を車両上下方向の下側から覆うアンダカバー50を備えている。アンダカバー50には、上記した空気取り入れ口52が路面側を向けて開口されている。この実施形態では、アンダカバー50は、下側部材としてのカバーロア54と上側部材としてのカバーアッパ56との2部材構成とされている。以下、具体的に説明する。
【0033】
カバーロア54は、パワーユニット室14を全体として下方から覆うカバー本体として機能する。カバーロア54は、前後方向の中間部に前方及び下方を向くように傾斜された傾斜壁部54Sを有し、該傾斜壁部54Sには空気取り入れ口52を成す窓部54Wが形成されている。窓部54Wは、車幅方向に長手の矩形状の切り抜き部とされている。
【0034】
カバーロア54における傾斜壁部54Sに対する前側部分である前部54F、傾斜壁部54Sに対する後側部分である後部54Rは、それぞれ水平面に略沿う構成されている。前部54Fと後部54Rとは、これらの間に形成された傾斜壁部54Sによって、前部54Fが上側に位置するように上下方向位置がオフセットされている
【0035】
図示は省略するが、カバーロア54は、その前部54F及び後部54Rの周縁部に沿って配置されたクリップ孔54H(図1参照)に挿通されるクリップ又はボルトによって、車体(サブフレーム15やバンパカバー等)に固定的に取り付けられている。この状態でカバーロア54は、前部54F及び傾斜壁部54Sの前部がサブフレーム15の前方に位置すると共に該サブフレーム15よりも車幅方向外側に張り出しており、傾斜壁部54Sの後部及び後部54Rがサイドレール16間に位置している。後部54Rのさらに後部は、左右のサイドレール16及びリヤクロスメンバ18に対し平面視でオーバラップするように張り出されている。
【0036】
カバーアッパ56は、平面視で略矩形状に形成され、カバーロア54における前部54Fの後部から後部54Rの前部までを上側から覆っている。このカバーアッパ56は、カバーロア54の前部54Fに重ね合わされる前側固定部56Fと、後部54Rに重ね合わされる後側固定部56Rと、傾斜壁部54Sに重ね合わされる傾斜壁部56Sと、カバーロア54との間にスタビライザバー30のトーションバー30Tを挟み込む挟み込み部56Pとを有する。
【0037】
前側固定部56F、後側固定部56Rには、それぞれカバーロア54に形成されたクリップ孔54Oと一致される複数のクリップ孔56Oが形成されている。カバーアッパ56は、クリップ孔54O、56Oに挿通された図示しないクリップ、ボルト又は溶着等によって、前側固定部56F、後側固定部56Rにおいてカバーロア54に固定されている。
【0038】
傾斜壁部56Sには、カバーロア54の窓部54Wとで空気取り入れ口52を成す窓部56Wが形成されている。この実施形態では、複数(図示例では3つ)の窓部56Wが車幅方向に並んで形成されている。各窓部56Wは、窓部54W内に配置されており、実質的に空気取り入れ口52の流路断面(周縁)を規定している。
【0039】
挟み込み部56Pは、カバーロア54における傾斜壁部54Sと後部54Rとの境界近傍部分との間に、スタビライザバー30のトーションバー30Tに装着されたアンダカバー取付ブッシュ58を挟み込んでいる。アンダカバー取付ブッシュ58は、例えば合成ゴム等によりリング状に形成され、トーションバー30Tにおけるカバーロア54上を通過する部分で該トーションバー30Tに嵌合等により装着されている。この実施形態では、アンダカバー取付ブッシュ58とカバーアッパ56又はカバーロア54との間に上下方向の隙間(遊び)が形成されるように、該アンダカバー取付ブッシュ58がカバーロア54とカバーアッパ56との間に挟み込まれている。
【0040】
そして、アンダカバー取付ブッシュ58は、フロントホイールWfからの入力によりスタビライザバー30が上下方向に振動すると、カバーロア54(傾斜壁部54Sと後部54Rとの境界近傍部分)、カバーアッパ56(挟み込み部56P)に当たるようになっている。これにより、スタビライザバー30の上下方向の振動がアンダカバー取付ブッシュ58を介してカバーロア54、カバーアッパ56に伝えられ、これらカバーロア54、カバーアッパ56が上下に振動される構成とされている。したがって、この実施形態では、アンダカバー取付ブッシュ58及びカバーアッパ56(アンダカバー50の2部材構成)が本発明の接続手段に相当し、該接続手段及びスタビライザバー30が振動付与手段に相当する。
【0041】
また、アンダカバー取付ブッシュ58は、スタビライザバー30のトーションバー30Tにおける嵌合部分と一体的に回転するように、該トーションバー30Tに固着又はキー等の周り止め構造により結合されている。このアンダカバー取付ブッシュ58の上端からは、凸部としての嵌合突起58Tが上向きに突出されており、挟み込み部56Pには嵌合突起58Tが進退可能な凹部又は孔部としての嵌合孔56Hが形成されている。カバーアッパ56は、上方からの所定値以上の荷重によって図4(B)に示される如く下方に撓んだ場合に嵌合孔56Hに嵌合突起58Tを嵌合させ、通常は図4(A)に示される如く嵌合孔56Hに嵌合突起58Tが嵌合しない構成とされている。所定値以上の荷重は、カバーアッパ56上に雪や泥などの異物が堆積した場合の該異物の質量による荷重として設計(設定)されている。
【0042】
そして、嵌合突起58Tが嵌合孔56Hに嵌合した状態で図4(B)に示される如くスタビライザバー30のトーションバー30Tが回転したり又は捩れたりすると、嵌合突起58Tがカバーアッパ56における嵌合孔56Hの孔縁部に係合しつつ、側面視でカバーアッパ56を曲げる(撓ませる)構成とされている。すなわち、嵌合突起58Tを有するアンダカバー取付ブッシュ58及び嵌合孔56Hが形成されたカバーアッパ56は、スタビライザバー30の回転又は捩れをカバーアッパ56の曲げに変換する曲げ付与手段に相当する。また、この実施形態では、嵌合突起58T及び嵌合孔56Hが係合構造に相当する。
【0043】
次に、実施形態の作用を説明する。
【0044】
上記構成のアンダカバー構造10が適用された自動車Vでは、その走行の際に、パワーユニット12と冷却ユニット42とを冷却水が循環する。この冷却水は、冷却ユニット42において空気との熱交換により冷却される。また、空調装置を作動時には、冷媒が冷却ユニット42、膨張弁、エバポレータ、コンプレッサの順で循環して冷凍サイクルが形成される。冷却ユニット42は、空気との熱交換により冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサとして機能する。
【0045】
この冷却ユニット42での熱交換は、自動車Vの走行風、又はファンユニット44の作動により生じる空気流(冷却風)が冷却ユニット42の空気側流路を流れることで行われる。例えば、図示しない冷却ECUによって、自動車Vの車速が所定の車速以下でかつ冷却水温が所定の温度以上であると判断された場合には、該冷却ECUによってファンユニット44が作動される。すると、ファンユニット44の吸引力によって床下の空気が空気取り入れ口52を通じて冷却ユニット42に導かれる。
【0046】
また例えば、冷却ECUによって自動車Vの車速が所定の車速を超えたと判断された場合には、該冷却ECUによってファンユニット44が停止される。すると、自動車Vの走行風が空気取り入れ口52を通じて冷却ユニット42に導かれ、冷却ユニット42を通過する。
【0047】
ところで、床下に形成された空気取り入れ口52から冷却風を取り込む本構成においては、空気取り入れ口52を通じて雪や泥等の異物が進入し、該異物がアンダカバー50上に堆積することが懸念される。この異物の過剰な堆積は、クリップによる車体に対するアンダカバー50の結合外れや、アンダカバー50の下方への撓み(垂れ下がり)による路面(縁石)等との干渉の原因となる。特に、アンダカバー50は、カバーロア54の周縁部に形成したクリップ孔54Hにおいて車体に結合される構造であるため、アンダカバー50の中央部で撓みが大きくなりやすい。
【0048】
ここで、アンダカバー構造10では、アンダカバー50がスタビライザバー30に接続されているので、フロントホイールWfからの入力によりスタビライザバー30が上下に振動(図4(A)の矢印UD参照)すると、該振動がアンダカバー50に伝達される。これにより、アンダカバー50上への異物Eの堆積(付着)が振動により抑制されたり、アンダカバー50上に堆積した異物Eが振動により落下されたりする。また、アンダカバー50は、カバーロア54とカバーアッパ56とでトーションバー30Tを上下から挟み込んでいるため、下方への撓みがスタビライザバー30によって抑制される。
【0049】
さらに、アンダカバー構造10では、カバーアッパ56上に雪や泥等の異物が堆積すると、該カバーアッパ56の挟み込み部56Pを含む部分が下方に撓む。すると、図4(B)に示される如く、該カバーアッパ56に形成された嵌合孔56Hにアンダカバー取付ブッシュ58の嵌合突起58Tが入り込む。この状態で、左右のフロントホイールWfが上下に変位すると、スタビライザバー30のトーションバー30Tが回転したり、捩れたりする(図4(B)の矢印R参照)。このトーションバー30Tの捩れや回転が、嵌合突起58Tとカバーアッパ56における嵌合孔56Hの孔縁との係合によって、図4(B)に想像線にて示されるカバーアッパ56の曲げに変換される。
【0050】
すなわち、フロントホイールWfの上下動に伴ってカバーアッパ56には上下の曲げが繰り返し与えられ(図4(B)の矢印BD参照)、これによってカバーアッパ56上に堆積された異物Eが分解され又は分解されずに、効率的に落下される。また、カバーアッパ56の曲げはカバーロア54にも伝えられ、該カバーロア54上に堆積された異物Eが分解され又は分解されずに、効率的に落下される。これらにより、アンダカバー50上から異物が排除される。
【0051】
このように、本実施形態に係るアンダカバー構造10では、アンダカバー50上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができる。これにより、アンダカバー50の撓みに起因する不具合が防止又は効果的に抑制される。
【0052】
また、アンダカバー構造10では、自動車Vのロールを抑制するためのスタビライザバー30を利用してアンダカバー50に振動を付与する構成である。このため、アンダカバー50に振動を付与するための専用の加振源を用いることなく、上記の通りアンダカバー50上に異物が堆積すること又は該堆積状態が維持されることを抑制することができる。
【0053】
さらに、アンダカバー構造10では、スタビライザバー30の振動を利用するだけでなく、捩れや回転をカバーアッパ56の曲げ(撓み)に変換する構成であるため、上記の通りアンダカバー50上に異物が堆積した場合でも、該異物を効率的にアンダカバー50上から排除することができる。しかも、スタビライザバー30の捩れや回転によるカバーアッパ56の曲げは、該カバーアッパ56上に異物が堆積された場合に嵌合孔56Hに嵌合突起58Tが嵌合して生じる構成であるため、アンダカバー50に異物が堆積していない場合や異物の堆積量が少ない場合にはカバーアッパ56に不要な曲げ(負荷)を与えることがない。さらに、アンダカバー取付ブッシュ58から突出された嵌合突起58Tがカバーアッパ56嵌合孔56Hに嵌合する構成であるため、トーションバー30Tの回転軸線からカバーアッパ56への荷重入力点までの距離が長い。このため、スタビライザバー30の回転角あたりのカバーアッパ56の曲げ量が大きく、異物の排除効果が高い。
【0054】
またさらに、アンダカバー50をカバーロア54とカバーアッパ56との2部材構成とすることで、カバーアッパ56によってアンダカバー50の下方への撓みを抑制する効果と、カバーアッパ56が異物の堆積により撓んだ場合にだけカバーアッパ56がトーションバー30Tの捩れや回転により曲げを生じる効果とを共に得る構成が実現された。
【0055】
なお、上記した実施形態では、スタビライザバー30が本発明の振動付与手段の加振源である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、フロントサスペンション22(を構成するショックアブソーバ26やロアアーム24等)が本発明の振動付与手段の加振源である構成としても良く、専用の加振源を備えた構成としても良い。
【0056】
また、上記した各実施形態では、アンダカバー50がカバーロア54とカバーアッパ56との2部材構成である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、単一部材であるアンダカバーを備えた構成を採用しても良い。この場合、例えば、トーションバー30Tをアンダカバーに回転(捩れ)可能に結合した構成としても良く、固着した構成としても良い。
【0057】
さらに、上記した各実施形態では、内燃機関及びモータを含むパワーユニット12が車室Cの前方に位置するパワーユニット室14に配置された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、パワーユニット12がモータを含まない構成(一般的なFF車、FR車、4WD車等のエンジン車)としても良く、内燃機関を含むパワーユニット12が車室Cの後方に位置するパワーユニット室に配置される構成としても良く、パワーユニットが内燃機関を含まない構成としても良い。
【0058】
その他、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10 アンダカバー構造
14 パワーユニット室(空間)
22 フロントサスペンション(サスペンション装置)
30 スタビライザバー
30T トーションバー(車幅方向に延在する部分)
50 アンダカバー
52 空気取り入れ口(窓部)
54 カバーロア(下側部材)
54W・56W 窓部
56 カバーアッパ(上側部材、曲げ付与手段)
56H 嵌合孔(凹部又は孔部、係合構造)
58 アンダカバー取付ブッシュ(曲げ付与手段)
58T 嵌合突起(凸部、係合構造)
V 自動車(車両)
Wf フロントホイール(車輪)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両下向きに開口する空間を下側から覆い、かつ前記空間の内外を連通する窓部が形成されたアンダカバーと、
前記アンダカバーに振動を付与する振動付与手段と、
を備えたアンダカバー構造。
【請求項2】
前記振動付与手段は、
左右の車輪のサスペンション装置を車両のロールが抑制されるように連結するスタビライザバーと、
前記スタビライザバーの振動が前記アンダカバーに直接的又は間接的に伝達されるように、該スタビライザバーとアンダカバーとを接続する接続手段と、
を含んで構成されている請求項1記載のアンダカバー構造。
【請求項3】
前記スタビライザバーにおける車幅方向に沿って延在する部分の回転を前記アンダカバーの曲げに変換する曲げ付与手段をさらに備えた請求項1又は請求項2記載のアンダカバー構造。
【請求項4】
前記曲げ付与手段は、前記アンダカバーが下方に撓んだ場合に、前記スタビライザバーにおける車幅方向に沿って延在する部分の回転が前記アンダカバーの曲げに変換されるように、該アンダカバー側と前記スタビライザバー側とを係合させる係合構造を含んで構成されている請求項1〜請求項3の何れか1項記載のアンダカバー構造。
【請求項5】
前記アンダカバーは、前記スタビライザバーの下側に位置する下側部材と、前記スタビライザバーの上側に位置する上側部材とを含んで構成されており、
前記接続手段は、前記上側部材と下側部材との間に前記スタビライザバーを挟み込むことで構成されており、
前記係合構造は、前記スタビライザバー側に設けられた凸部と、前記アンダカバーの上側部材に設けられ該上側部材が下方に撓んだ場合に前記凸部に嵌合する凹部又は孔部とを含んで構成されている請求項4記載のアンダカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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