説明

アンダートレッド用ゴム組成物

【課題】ゴム原材料の増量剤として再生ゴム及び炭酸カルシウムを配合しながら、ゴム組成物の破断強度を実用レベルに維持可能にしたアンダートレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種のジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜30重量部、炭酸カルシウムを1〜24重量部配合したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダートレッド用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、ゴム原材料の増量剤として再生ゴム及び炭酸カルシウムを配合しながら、ゴム組成物の破断強度を実用レベルに維持可能にしたアンダートレッド用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境を保護する観点から、空気入りタイヤのリサイクル率を高くすることが要求されるようになり、使用済みのタイヤやチューブから回収された再生ゴム或いは再生粉末ゴムを新しいゴム原料中に配合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ゴム原材料の使用割合を低減するため、タイヤ用ゴム組成物に上記の再生ゴムのほか、比較的安価に入手できる炭酸カルシウムを配合することが行なわれている。しかしながら、再生ゴム及び炭酸カルシウムは、いずれもゴム組成物の破断強度が低下するためそれぞれゴム原材料の使用割合を低減するための材料(増量剤)として使用するには限界があった。また、炭酸カルシウムは、耐摩耗性に対する寄与が得られないため、ゴム組成物の用途が限定されるという問題があった。
【特許文献1】特平11−335488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ゴム原材料の増量剤として再生ゴム及び炭酸カルシウムを配合しながら、ゴム組成物の破断強度を実用レベルに維持可能にしたアンダートレッド用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成する本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種のジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜30重量部、炭酸カルシウムを1〜24重量部配合したことを特徴とする。
【0005】
より好ましくは、前記炭酸カルシウムは、前記ジエン系ゴム100重量部に対し1〜19重量部配合するようにするとよい。このアンダートレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤのアンダートレッドを構成するのに好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物によれば、天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種のジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜30重量部、炭酸カルシウムを1〜24重量部配合するようにしたものであって、再生ゴムの配合量と炭酸カルシウムの配合量とを上記のように特定することで、再生ゴムの方が炭酸カルシウムに対してゴム組成物の破断強度を低下する作用を支配し、炭酸カルシウムによる強度低下の影響が現れないようにすることができる。また、ゴム組成物をアンダートレッド用とすることで、炭酸カルシウムによる耐摩耗性に対する影響を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムとし、そのジエン系ゴムは、天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種であるようにする。これらジエン系ゴムを配合することにより、汎用性があり、かつ低コストのアンダートレッド用ゴム組成物を得ることができる。上述のジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。好ましくは天然ゴム及びスチレンブタジエンゴムを使用するとよい。
【0008】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、再生ゴムを配合することによりリサイクル率を高くし環境負荷を低減すると共に、ゴム原材料の使用割合を低減するため原材料コストを低減する。再生ゴムは、ゴム組成物の破壊の起点となるため破断強度を低下させる。この破断強度を低下させる作用は、再生ゴムと後述する炭酸カルシウムとを比較すると再生ゴムの方が大きく、再生ゴムの配合量が強度低下を支配するため、再生ゴム及び炭酸カルシウムの配合量をそれぞれ所定の範囲内にすることにより、炭酸カルシウムに起因する強度低下が現れないようにすることができる。
【0009】
再生ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し10〜30重量部、好ましくは10〜20重量部にする。再生ゴムの配合量が10重量部未満では、リサイクル率を高くし環境負荷を低減すると共に、ゴム原材料の使用割合を低減し原材料コストを削減することができない。また、再生ゴムの配合量が30重量部を超える場合には、アンダートレッド用ゴム組成物に求められる破断強度を確保することができない。
【0010】
本発明で使用する再生ゴムとしては、再生粉末ゴム及び/又は再生ゴムを使用することができる。再生粉末ゴムとは、自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを粉砕し粉末状にしたゴムである。再生ゴムとは、JIS K6313に規定された自動車用タイヤ、チューブ及びその他のゴム製品の使用済みのゴムなどを脱硫処理により再生したもの並びにこれと同等の性状を有するものとする。再生ゴムの種類は、チューブ再生ゴム、タイヤ再生ゴム、その他の再生ゴムから選ばれるいずれでもよく、複数の種類を組合わせることもできる。
【0011】
本発明では、炭酸カルシウムを配合することにより、原材料コストを低減する。炭酸カルシウムは、一般に増量剤として使用されており、炭酸カルシウムの配合量を多くするほど原材料コストを削減することができる。また上述したように、再生ゴム及び炭酸カルシウムの配合量をそれぞれ所定の範囲内にすることにより、ゴム組成物における破断強度の低下を再生ゴムに起因するものだけにし、炭酸カルシウムに起因する強度低下の影響が現れないようにすることができる。このため、所定の範囲内において炭酸カルシウムの配合量を多くすることができる。
【0012】
なお、炭酸カルシウムを増量することにより、ゴム組成物の反発弾性が高くなるため、転がり抵抗が小さくなり燃費性能を向上する効果が得られる。このため、再生ゴムの配合による環境負荷の低減と相乗的に地球環境を保全することができる。また、炭酸カルシウムは、耐摩耗性に対する寄与が得られないが、ゴム組成物をアンダートレッド用とすることで、炭酸カルシウムによる耐摩耗性に対する影響を解消することができる。
【0013】
炭酸カルシウムの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し1〜24重量部、好ましくは1〜19重量部にする。炭酸カルシウムの配合量が1重量部未満では、ゴム原材料の使用割合の低減量が不足し原材料コストを低減効果が十分に得られない。また、炭酸カルシウムの配合量が24重量部を超える場合には、ゴム組成物の破断強度が低下する。
【0014】
本発明において、炭酸カルシウムの種類は特に限定されるものではなく、タイヤ用ゴム組成物に通常使用されるものを用いることができる。炭酸カルシウムとしては例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム等を例示することができる。なかでも重質炭酸カルシウムが好ましい。
【0015】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合することにより破断強度を高くする。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し30〜90重量部、好ましくは50〜80重量部にする。カーボンブラックの配合量が30重量部未満の場合には破断強度や弾性率を十分に高くすることができない。また、カーボンブラックの配合量が90重量部を超える場合には、タイヤ耐久性が低下すると共に、転がり抵抗が悪化する。
【0016】
本発明において使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が100m/g以下、好ましくは70〜89m/gのものを使用する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が100m/gを超える場合には、タイヤ耐久性が低下すると共に、転がり抵抗が悪化する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217−2に準拠して求められるものとする。
【0017】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物には、炭酸カルシウム及びカーボンブラック以外の充填剤を配合してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ、タルク等を例示することができる。
【0018】
また、アンダートレッド用ゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、オイルなどのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。アンダートレッド用ゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0019】
本発明のアンダートレッド用ゴム組成物は、再生ゴムを配合してリサイクル率を高くし、かつ再生ゴム及び炭酸カルシウムをゴム原材料の使用割合の低減する増量剤として配合し原料コストを低減するときに、炭酸カルシウムに起因した破断強度の低下を可及的に小さくすることができる。このアンダートレッド用ゴム組成物は、空気入りタイヤのアンダートレッド部に適用することが好ましく、このゴム組成物から構成されたアンダートレッド部を有する空気入りタイヤは、生産コストの削減を可能にすると共に、かつタイヤ耐久性を確保するものである。
【0020】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
表1〜3に示す配合からなる19種類のゴム組成物(実施例1〜9、比較例1〜10)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7L密閉式バンバリーミキサーで4分間混練し、温度160℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.7L密閉式バンバリーミキサーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、アンダートレッド用ゴム組成物を調製した。なお、各ゴム組成物の配合は、ゴム硬度がほぼ同等になるように炭酸カルシウムの配合量に応じて、カーボンブラックの配合量を増減させた。また、ジエン系ゴム、再生ゴム又は粉末ゴム、カーボンブラック、炭酸カルシウムを除く配合剤は、ジエン系ゴムと再生ゴム又は粉末ゴム中のゴム成分との合計に対する配合比が、比較例1の配合比に一致するように調整した。
【0022】
得られた19種類のゴム組成物(実施例1〜9、比較例1〜10)をそれぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作成し、破断強度及び反発弾性を下記に示す方法により測定した。また、実施例1,2、比較例1〜6については、ゴム硬度を下記に示す方法により測定した。
【0023】
ゴム硬度
JIS K6253に準拠し、デュロメータのタイプAにより温度20℃でゴム硬度を測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表1に示した。この指数が大きいほどゴム硬度が高いことを意味する。
【0024】
反発弾性
JIS K6255に準拠して温度60℃で反発弾性を測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100とし、表2では比較例7を100とし、表3では比較例9を100とする指数として表1〜3に示した。この指数が大きいほど反発弾性が高いことを示す。なお、反発弾性は動的発熱の指標であり、反発弾性が高いほど低発熱であることを意味する。
【0025】
破断強度
JIS K6251に準拠し、3号型ダンベル試験片、20℃、引張り速度500mm/分の条件で引張り破断強度を測定した。得られた結果は、表1では比較例1を100とし、表2では比較例7を100とし、表3では比較例9を100とする指数として表1〜3に示した。この指数が大きいほど破断強度が高いことを意味する。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
なお、表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
NR:天然ゴム、RSS#3
SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1712、ゴム成分100重量部に対し37.5重量部の油展品
再生ゴム:村岡ゴム社製タイヤリク紫線、再生ゴム中のゴム成分の含有量は約50重量%であった。
粉末ゴム:GUJARAT RECLAIM & RUBBER PRODUCTS LTD.社製GR444
カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN339(窒素吸着比表面積88m/g)
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製重質炭酸カルシウム
酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
オイル:富士興産社製アロマオイル
硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1種のジエン系ゴム100重量部に対し、再生ゴムを10〜30重量部、炭酸カルシウムを1〜24重量部配合したアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムを、前記ジエン系ゴム100重量部に対し1〜19重量部配合した請求項1に記載のアンダートレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアンダートレッド用ゴム組成物によりアンダートレッドを構成した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−65137(P2010−65137A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232673(P2008−232673)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】