説明

アンテナシート、トランスポンダ及び冊子体

【課題】基材の切断加工を行ってもパターンやICの導通をより安全に維持できるアンテナシート、トランスポンダ及び冊子体を提供すること。
【解決手段】可撓性を有する膜状の基材11と、基材11上に形成され、ICチップ20を実装するための実装端子31Bを有する回路パターン31と、回路パターン31と一体に設けられ、一端32Aが回路パターン31と電気的に接続されているとともに基材11上で渦巻状に形成されたアンテナパターン32と、基材11を厚さ方向に見たときの基材11の外形線となる縁12Aと実装端子31Bとの間に設けられ、基材11における伸びに対する剛性よりも高い剛性を有する補強パターン33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナシート、トランスポンダ及び冊子体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、公共交通機関の乗車券などとして、ICとアンテナと有するトランスポンダが内蔵されたカードが広く利用されている。このようなカードに用いられるトランスポンダの例として、特許文献1には、樹脂材料によって形成された基材上に金属箔を含むパターンが形成されたアンテナ回路構成体(トランスポンダ)が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のトランスポンダは、信号などを伝送する機能パターンと、信号などの伝送用とは異なるダミーパターンとが基材の表面に形成されている。このトランスポンダによれば、ダミーパターンが形成されていることによって、機能パターンを形成するときにパターン間が短絡することを抑制することができ、アンテナ回路の電気抵抗値の不良が発生することを抑えることができる。
【0004】
また、近年、パスポートや預貯金通帳などの冊子体に電子データを記憶させて電子データを読み書きするために、トランスポンダを冊子体に備えることが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−140587号公報
【特許文献2】特開2005−186373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、冊子体にトランスポンダを備える場合には、トランスポンダを例えば紙などのベース部材で挟み込んでベース部材同士を接着することが一般的である。このため、ベース部材同士の接着面積を広く確保するためには、トランスポンダの厚さ方向に貫通孔を形成することが考えられる。また、紙同士の接着面積をさらに広く確保するためには、基材においてパターンが設けられていない領域が少なくなるように、貫通孔以外にも、パターンの輪郭に沿うように基材を切断してトランスポンダを形成することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のトランスポンダにおいてアンテナコイルの内側に貫通孔を形成する場合に、基材の切断部に加わる応力によって基材が伸びることがある。このとき、パターンとICとの接続部分などに基材切断時の応力が伝わると、基材が伸びることによってパターンやICの接続部分が変形し、導通不良や電気抵抗値の不良が発生して所定の通信性能を発揮できないおそれがある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、基材の切断加工を行ってもパターンやICの導通不良を低減できるアンテナシート、トランスポンダ及び冊子体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のアンテナシートは、可撓性を有する膜状の基材と、前記基材上に形成され、ICチップを実装するための実装端子を有する回路パターンと、前記回路パターンと一体に設けられ、一端が前記回路パターンと電気的に接続されているとともに前記基材上で渦巻状に形成されたアンテナパターンと、前記基材を厚さ方向に見たときの前記基材の外形線と前記実装端子との間、あるいは前記外形線と前記アンテナパターンの他端との間の少なくともいずれかに設けられ、前記基材における伸びに対する剛性よりも高い剛性を有する補強部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記外形線は、前記アンテナパターンの径方向内側に位置する部分に前記基材の膜厚方向に貫通して形成された貫通孔の縁であることが好ましい。
【0011】
また、前記補強部が位置する領域は、少なくとも前記アンテナパターンの他端または前記実装端子と前記縁との間が最も狭くなる部分を含むことが好ましい。
【0012】
また、前記補強部は円弧状に形成され、外側に前記基材の前記縁が位置するとともに内側には前記アンテナパターンの他端及び前記実装端子が位置することが好ましい。
【0013】
また、前記補強部は、前記アンテナパターンの他端あるいは前記実装端子との輪郭形状に沿うとともに、前記縁の輪郭形状に沿って形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明のトランスポンダは、本発明のアンテナシートと、前記実装端子に実装され、前記アンテナパターンを介して無線通信処理を行うICチップと、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の冊子体は、本発明のトランスポンダを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアンテナシート、トランスポンダ及び冊子体によれば、基材を切断するときに基材にかかる応力によるパターンやICの接続部分の伸びを補強部によって抑えることができるので、基材の切断加工を行ってもパターンやICの導通不良を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態のアンテナシート及びトランスポンダを示す平面図、(B)は同アンテナシート及びトランスポンダを示す背面図である。
【図2】(A)及び(B)は同アンテナシート及びトランスポンダを製造する工程を示す工程説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態のアンテナシート及びトランスポンダを示す平面図である。
【図4】本発明の第3実施形態のアンテナシート及びトランスポンダを示す平面図である。
【図5】(A)は本発明の第4実施形態のアンテナシート及びトランスポンダを示す平面図、(B)は、(A)のA−A線における断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態のアンテナシート及びトランスポンダを示す平面図である。
【図7】(A)は本発明の第6実施形態の冊子体を示す斜視図、(B)は同冊子体の一部の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態のアンテナシート及びトランスポンダについて説明する。図1(A)は本発明の第1実施形態のアンテナシート及びトランスポンダを示す平面図、図1(B)は同アンテナシート及びトランスポンダを示す背面図である。また、図2(A)及び図2(B)は同アンテナシート及びトランスポンダを製造する工程を示す工程説明図である。
【0019】
図1(A)に示すように、本実施形態のトランスポンダ1は、外部の通信機器と非接触で通信を行うためのアンテナシート10と、アンテナシート10の四隅のうちの一の隅部に設けられたICチップ20とを備えて構成されている。
【0020】
アンテナシート10は、薄膜状の基材11と、基材11の表面(以下、「表面11A」と称する。)に形成された回路パターン31、アンテナパターン32、及び補強パターン(補強部)33とを備えている。
【0021】
基材11は、絶縁性を有する部材からなっており、基材11は、四隅が円弧状に丸められた略矩形状に形成されている。基材11の材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリイミド(PI)、グリコール変性共重合ポリエチレンテレフタレート(PETG)、及び液晶ポリマー(LCP)などを単体で、あるいは組み合わせて採用することができる。また、基材11の厚さは、5μm以上80μm以下であることが好ましい。また、基材11は可撓性を有していることが好ましい。
【0022】
基材11の中央には、基材11の厚さ方向に貫通して形成された貫通孔12が設けられている。貫通孔12は、基材11の面上で回路パターン31及びアンテナパターン32よりも内側に形成されており、四隅のうち回路パターン31の近くに位置する隅部が凹んだ略矩形状になっている。本実施形態では、基材11を厚さ方向に見たときの外形線は、基材11の四隅と囲う外形線と、貫通孔12の縁12Aに沿う外形線とである。
【0023】
回路パターン31、アンテナパターン32及び補強パターン33は、いずれも基材11の表面11Aの全面に接着された金属薄膜をエッチングすることによって形成されている。
【0024】
回路パターン31は、ICチップ20を実装するための実装端子31A及び実装端子31Bを有している。実装端子31Aは、アンテナパターン32の一端32Aと一体に形成されている。実装端子31Bは、基材11の裏面11Bに設けられたジャンパ線34と導通させるための導通端子31Cを有している。導通端子31Cと、ジャンパ線34の一端34Aとは、基材11を挟んで対向する位置に配置されている。導通端子31Cとジャンパ線34とは、例えばレーザー溶接によって、基材11を貫通する導通部が形成されて互いに接続されている。
【0025】
また、基材11上で実装端子31A、31Bの近傍には、実装端子31A及び31BにICチップ20を実装するときの位置決めとして使用されるアラインメントマーク35A、35Bが形成されている。アラインメントマーク35A、35Bは、回路パターン31の同様に金属薄膜によって形成され、アラインメントマーク35A、35Bの輪郭形状は円形である。なお、アラインメントマーク35A、35Bの形状は円形に限られるものではなく、例えば十字形状にすることができる。
【0026】
アンテナパターン32は、基材11の面上で渦巻形状に形成された渦巻部32Cを有している。本実施形態では、渦巻部は基材11の外周に沿って3周巻き回されており、一端32Aが内側、他端32Bが外側に位置している。アンテナパターン32の他端32Bは渦巻部32Cにおけるアンテナパターン32の一本の幅よりも幅広に形成されている。アンテナパターン32の他端32Bは、導通端子31Cとジャンパ線34との接続方法と同様のレーザー溶接によって、ジャンパ線34の他端34Bに接続されている。
【0027】
このように、ICチップ20が実装される実装端子31Aと実装端子31Bとは、回路パターン31、アンテナパターン32及びジャンパ線34によって、アンテナパターン32の渦巻部を通じて電気的に接続されている。
【0028】
補強パターン33は、貫通孔12の縁12Aと、導通端子31Cの部分を含む実装端子31Bとの間に設けられている。補強パターン33の形状は、実装端子31Bにおける縁12A側の輪郭に沿う形状になっている。本実施形態では、実装端子31Bにおいて補強パターン33に向かう側の輪郭の形状に合わせて屈曲した形状になっている。
【0029】
補強パターン33の材料は、回路パターン31及びアンテナパターン32と同一の金属材料であり、補強パターン33は基材11よりも伸び剛性が高くなっている。
【0030】
以上に説明した構成の本実施形態のアンテナシート10及びトランスポンダ1の作用について説明する。
【0031】
本実施形態のアンテナシート10は、図1及び図2に示すように、まず、回路パターン31、アンテナパターン32及び補強パターン33が基材11の表面11Aに例えばエッチングによって形成される。続いて、アンテナパターン32の他端32Bと導通端子31Cとのそれぞれにジャンパ線34をレーザー溶接して製造される。
なお、ジャンパ線34を接続する方法としては、レーザー溶接以外にも、抵抗溶接、かしめ加工などの物理加工、あるいは超音波接合などを挙げることができる。
【0032】
このとき、アンテナシート10の基材11を厚さ方向に貫通させるため、レーザー溶接を行う部位をあらかじめ加熱して基材11を溶かす。例えば導通端子31Cが加熱された場合には、この熱は実装端子31Aを介してICチップ20に伝わるおそれがある。ここで、補強パターン33は金属材料で形成されており熱伝導性が高いので、導通端子31Cに加えられた熱は基材11を通じて補強パターン33に伝わる。このため、補強パターン33の内部に蓄熱されるとともにその一部はアンテナシート10の外部に拡散する。その結果、ICチップ20への熱の伝わり方が緩やかになり、ICチップ20に障害を与えるような熱衝撃がICチップ20に加わることを抑制することができ、基材11への著しい熱付加も低減されアンテナシート自体の物理耐久性が向上し、基材11のゆがみ(シートゆがみ)等によって回路パターンが損傷する可能性を低減することができる。
【0033】
また、トランスポンダ1は、複数のトランスポンダ1が形成されたシートからトランスポンダ1のそれぞれを切り抜いて製造する。このとき、トランスポンダ1を切り分ける前に、図2(A)に示すように、雄型101と雌型102とによって基材11を切断して貫通孔12を形成する。
【0034】
図2(A)及び図2(B)に示すように、基材11は、雄型101が雌型102との間に基材11が挟み込まれた状態で雄型101が雌型102の内部に挿入されることで剪断される。なお、雌型102は、補強パターン33を基材11に押圧しており、これにより基材11は雌型102からずれないように位置関係が固定されている。
【0035】
このとき、雄型101と雌型102との間には雄型101と雌型102とが摺動できるようにクリアランスが設定されているため、基材11の貫通孔12の縁12Aには、雌型102の内部に縁12Aを引き込むような引張力が生じる。このとき、補強パターン33の引張力に対する剛性が基材11の引張力に対する剛性よりも高いので、補強パターン33が設けられた部分の基材11の伸びは抑制されている。
【0036】
このため、基材11において貫通孔12の縁12Aに生じた歪みの、アンテナパターン32の他端32B、実装端子31A、31Bへの伝播は補強パターン33によって低減されている。その結果、例えば実装端子31A、31BとICチップ20との接続部分や、導通端子31Cとジャンパ線34との接続部分ではこれら接続部分を変形させるような局所的な変形が抑制されている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態のアンテナシート10及びトランスポンダ1によれば、基材11に貫通孔12を形成する場合の引張力が貫通孔12の縁12Aに加わっても、基材11が伸びないように補強パターン33によって補強されている。このため基材11を切断加工しても、基材11が伸びて歪むことを抑制することができる。
【0038】
その結果、実装端子31A、31BとICチップ20との接続部分や、導通端子31Cとジャンパ線34との接続部分の変形が抑制され、回路パターン31やアンテナパターン32などのパターンとICチップ20の導通不良を低減することができる。
【0039】
また、実装端子31Bから縁12Aに向かう方向に交差する方向に延びるL字形状に補強パターン33が形成されているので、貫通孔12を形成するために基材11を切断するときに貫通孔12の縁12Aにかかる引張力を、貫通孔12の縁12Aと実装端子31Bとの間の補強パターン33において緩衝することができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態のアンテナシート及びトランスポンダについて図3を参照して説明する。図3は、本実施形態のトランスポンダ2を示す正面図である。なお、以下に説明する各実施形態において、上述した第1実施形態のアンテナシート10及びトランスポンダ1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
本実施形態のトランスポンダ2は、補強パターン33に代えて設けられた補強パターン233を備えている点で上述の第1実施形態のトランスポンダ1と構成が異なっている。
【0041】
補強パターン233は、第1実施形態で説明した補強パターン33と異なる形状に形成されている。補強パターン233の形状は円弧状であり、径方向内側に実装端子31Bが位置し、径方向外側に貫通孔12の縁12Aが位置するようになっている。すなわち、補強パターン233は、実装端子31Bと縁12Aとの間を遮るように、実装端子31Bの外周の一部を囲繞するような形状に形成されている。
【0042】
また、補強パターン233が位置する領域は、実装端子31Bと貫通孔12の縁12Aとの間が最も狭くなる部分を含んでいる。すなわち、補強パターン233は、実装端子31Bと縁12Aとの間を最短距離で結ぶ線分Xを横断して形成されている。
【0043】
このような構成であっても、基材11が伸びないように補強パターン233によって基材11が補強されているので、上述の第1実施形態のアンテナシート10及びトランスポンダ1と同様に、基材11に貫通孔12を形成する場合の引張力が貫通孔12の縁12Aに加わっても、基材11が伸びて歪むことを抑制することができる。
【0044】
また、補強パターン33が位置する領域は、実装端子31Bと貫通孔12の縁12Aとの間が最も狭くなる部分を含んでいるので、実装端子31Bに近い位置で貫通孔12を形成しても実装端子31B部分の基材11の伸びを抑制することができる。
【0045】
さらに、基材11を切断するときに基材11に伝わる歪みは、補強パターン233に蓄積されるので、補強パターン233よりも実装端子31B側へは歪みの伝播が低減されている。このため、実装端子31A、31BとICチップ20との接続部分や、導通端子31Cとジャンパ線34との接続部分の変形が抑制され、回路パターン31やアンテナパターン32などのパターンとICチップ20の導通を、基材11の切断加工を行っても維持することができる。
【0046】
また、実装端子31Bと縁12Aとの間を遮るように、実装端子31Bの外周の一部を囲繞する円弧状に補強パターン233が形成されている。このため、貫通孔12の縁12Aと実装端子31Bとの間で補強パターン233に引張力が加わっても、補強パターン233から実装端子31B側へは局所的な引張力がかかることを抑制することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態のアンテナシート及びトランスポンダについて図4を参照して説明する。図4は、本実施形態のトランスポンダ3を示す平面図である。
本実施形態のトランスポンダ3は、補強パターン33に代えて設けられた補強パターン333を備えている点で上述の第1実施形態のトランスポンダ1と構成が異なっている。
図3に示すように、補強パターン333は、貫通孔12の縁12Aと実装端子31Bとの間、及び貫通孔12の縁12Aと導通端子31Cとの間に位置している。補強パターン333の輪郭形状は、実装端子31B及び導通端子31Cと、貫通孔12の縁12Aとの形状に沿って形成されている。
【0048】
本実施形態では、基材11の厚さ方向に見たときの補強パターン333の面積は、上述の第2実施形態で説明した補強パターン233を基材11の厚さ方向に見たときの面積よりも大きい。また、貫通孔12の縁12Aと実装端子31B及び導通端子31Cとの間で基材11が露出する部分が補強パターン233を備えた場合よりも少なくなっている。
このため、本実施形態のトランスポンダ3によれば基材11が伸びて歪むことをさらに抑制することができる。
【0049】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態のアンテナシート及びトランスポンダについて図5を参照して説明する。図5は、本実施形態のトランスポンダ4を示す図で、(A)は平面図、(B)は(A)のA−A線における断面図である。
本実施形態のトランスポンダ4は、補強パターン33に代えて設けられた補強パターン433を備えている点で上述の第1実施形態のトランスポンダ1と構成が異なっている。
【0050】
補強パターン433は、貫通孔12の縁12Aと実装端子31Bとの間、及び貫通孔12の縁12Aと導通端子31Cとの間に位置している点は上述の第3実施形態で説明した補強パターン333と同様である。本実施形態では、補強パターン433は実装端子31A側に延びて設けられており、ICチップ20を実装端子31A、31Bに実装するときの位置決めの基準となるアラインメントマーク435A、435Bが設けられている。
【0051】
図5(B)に示すように、アラインメントマーク435A、435Bは、補強パターン433において厚さ方向にくりぬかれて形成されている。
このような構成であっても、上述の各実施形態のアンテナシート及びトランスポンダと同様に、基材11が延びて歪むことを補強パターン433によって抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態では、補強パターン433に、貫通孔形状のアラインメントマーク435A、435Bが形成されているので、ICチップ20の実装端子31A、31Bの近くに補強パターン433とアラインメントマーク435A、435Bを共に配置することができる。このため、ICチップ20を実装端子31A、31Bに実装するときの位置精度を低下させることなく基材11の伸びを抑制することができる。
【0053】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態のアンテナシート及びトランスポンダについて図6を参照して説明する。図6は、本実施形態のトランスポンダ5を示す平面図である。
本実施形態では、ICチップ20がアンテナパターンの外側に配置されている点で上述の各実施形態のトランスポンダと構成が異なっており、このため、アンテナシートの構成も上述の各実施形態のアンテナシートの構成と異なっている。
図6に示すように、トランスポンダ5は、アンテナシート10に代えてアンテナシート510を備えている。
【0054】
アンテナシート510は、上述の第1実施形態の基材11と同様の材料で膜状に形成された基材511を有し、基材511の中間部には、基材511の厚さ方向に貫通した貫通孔512が形成されている。貫通孔512は、上述の第1実施形態で説明したのと同様に、雄型101と雌型102とによって基材511が剪断されて形成されている。
【0055】
また、アンテナシート510は、回路パターン31に代えて設けられた回路パターン531と、アンテナパターン32に代えて設けられたアンテナパターン532と、補強パターン33に代えて設けられた補強パターン(補強部)533と、を備えている。
【0056】
回路パターン531は、アンテナパターン532の外側に位置している。回路パターン531の実装端子531Aは、アンテナパターン532の一端532Aと一体に形成されている。また、回路パターン531の実装端子531Bは第1実施形態で説明した導通端子31Cと同様にジャンパ線34と導通させるための導通端子531Cを有している。
【0057】
アンテナパターン532は、一端532Aが外側になり、他端532Bが内側になるような渦巻状に形成された渦巻部532Cを有している。アンテナパターン532の他端532Bはジャンパ線34に、例えばレーザー溶接によって接続されている。
【0058】
補強パターン533は、貫通孔512の縁512Aとアンテナパターン532の他端532Bとの間に設けられている。補強パターン533の形状は、アンテナパターン532の他端532Bとジャンパ線34との接続部Pを中心とした円弧状になっている。
【0059】
本実施形態では、補強パターン533は、貫通孔512の縁512Aとアンテナパターン532の他端532Bとの間で基材511が延びて歪むことを抑制することができる。
【0060】
また、補強パターン533が、アンテナパターン532の他端532Bとジャンパ線34との接続部Pを中心とした円弧状になっているので、接続部Pにおいてアンテナパターン532の他端532Bとジャンパ線34との接続が外れることを抑制することができる。
【0061】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態の冊子体について図7(A)及び図7(B)を参照して説明する。図7(A)は、本実施形態の冊子体6を示す斜視図である。また、図7(B)は、冊子体6の一部の構成を示す分解斜視図である。
本実施形態の冊子体6は、例えば電子パスポートや預貯金通帳などに使用される冊子体である。このような冊子体は、例えば個人情報などを電子的に記憶させて適宜読み出して必要な処理を行うことができるものである。
【0062】
図7(A)に示すように、冊子体6は、上述の第1実施形態で説明したトランスポンダ1が内部に収容されたトランスポンダ収容部61を有している。
【0063】
図7(B)に示すように、トランスポンダ収容部61は、例えば紙によって形成された下側部材62および上側部材63を有しており、下側部材62と上側部材63との間にトランスポンダ1が配置されている。
【0064】
下側部材62と上側部材63とは、接着剤によって貼り付けられている。より詳しくは、トランスポンダ1貫通孔12の内側に位置する内側部分62A、63Aと、トランスポンダ1の外側の外側部分62B、63Bとにおいて、下側部材62と上側部材63とが接着されている。
【0065】
なお、下側部材62及び上側部材63とトランスポンダ1との間を配置することもできるが、材質が異なる部材同士が接着されることになるため、下側部材62とトランスポンダ1との接着強度及び上側部材63とトランスポンダ1との接着強度は、下側部材62と上側部材63とを接着する場合の接着強度より弱い場合がある。
本実施形態では、トランスポンダ1の基材11に貫通孔12が形成されているので、下側部材62と上側部材63とを接着するための面積が広く、下側部材62と上側部材63とを確実に接着することができる。
【0066】
本実施形態の冊子体6によれば、ICチップ20に例えば個人情報を記憶させ、アンテナパターン32を介して冊子体6の外部の通信機器へと無線通信により個人情報を送信することができる。また、外部の通信機器から冊子体6のICチップ20へアンテナパターン32を介して各種情報を無線通信によって送信することもできる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の各実施形態において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、2、3、4、5 トランスポンダ
10、510 アンテナシート
11、511 基材
12、512 貫通孔
12A、512A 縁
20 ICチップ
31、531 回路パターン
31A、31B、531A、531B 実装端子
32、532 アンテナパターン
32B、532B 他端
33、233、333、433、533 補強パターン(補強部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する膜状の基材と、
前記基材上に形成され、ICチップを実装するための実装端子を有する回路パターンと、
前記回路パターンと一体に設けられ、一端が前記回路パターンと電気的に接続されているとともに前記基材上で渦巻状に形成されたアンテナパターンと、
前記基材を厚さ方向に見たときの前記基材の外形線と前記実装端子との間、あるいは前記外形線と前記アンテナパターンの他端との間の少なくともいずれかに設けられ、前記基材における伸びに対する剛性よりも高い剛性を有する補強部と、
を備えることを特徴とするアンテナシート。
【請求項2】
前記外形線は、前記アンテナパターンの径方向内側に位置する部分に前記基材の膜厚方向に貫通して形成された貫通孔の縁であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナシート。
【請求項3】
前記補強部が位置する領域は、少なくとも前記アンテナパターンの他端または前記実装端子と前記縁との間が最も狭くなる部分を含むことを特徴とする請求項2に記載のアンテナシート。
【請求項4】
前記補強部は円弧状に形成され、外側に前記基材の前記縁が位置するとともに内側には前記アンテナパターンの他端及び前記実装端子が位置することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナシート。
【請求項5】
前記補強部は、前記アンテナパターンの他端あるいは前記実装端子との輪郭形状に沿うとともに、前記縁の輪郭形状に沿って形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナシート。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナシートと、
前記実装端子に実装され、前記アンテナパターンを介して無線通信処理を行うICチップと、
を備えることを特徴とするトランスポンダ。
【請求項7】
請求項6に記載のトランスポンダを備えることを特徴とする冊子体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−96055(P2011−96055A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250320(P2009−250320)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】