説明

アンテナユニット,無線通信構造体及びアンテナ構造

【課題】導電性部材を有する被検出体に装着しても導電性部材による干渉を受けることなくアンテナの通信特性を一定に保持できるアンテナユニット、並びに、被検出体における導電性部材による干渉を防止し得る無線通信構造体及びアンテナ構造を提供する。
【解決手段】本発明に係るアンテナユニットは、非導電性のベースフィルム11と、ベースフィルム11の一面に装着され、中央が開口された無端状の導電性平板部材12と、導電性平板部材11の内周縁との間に間隙を有しつつ導電性平板部材の開口内に位置するように前記ベースフィルム11の一面に装着されたアンテナ13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性部材を有するCD−ROMやDVD−ROM等に被検出体に取り付けて使用されるアンテナユニット、導電性部材を有する被検出体及び該被検出体に装着されたアンテナを備えた無線通信構造体、並びに、導電性部材及び非導電性部材を有する被検出体に適用されるアンテナ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
CD−ROMやDVD−ROM等の円盤状の記録媒体等の被検出体を管理・検索する装置としては、ディスクチェンジャが公知である。しかし、ディスクチェンジャにおいては、記録媒体の配置順等により記録媒体を識別するため、記録媒体の内容を確認しつつ検索することができない。また、収容する記録媒体の枚数が決められており、多数の記録媒体に対応することができない。
【0003】
特に、近年、各種の記録を電子データとして保存することが多くなってきており、また、そのデータ量も膨大なものとなってきている。従って、多数の記録媒体を保管する必要があり、このような多数の記録媒体に対して、在庫管理、収蔵管理、持ち出し管理または管理保管された記録媒体の検索を迅速かつ確実に行うことが要請されている。
【0004】
一方、図書類の蔵書管理等に用いられるICチップとアンテナとを有するRF−ID素子等によりICチップに記憶された情報をアンテナを介して伝送する構成も公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、例えばCD−ROMやDVD−ROM等のように、アルミ等の導電性蒸着膜を有する記録媒体に前記アンテナを取り付けて、該記録媒体の在庫管理等を行う場合には、前記アンテナを介して信号の送受信を行う際に、前記導電性蒸着膜において送信信号に対する干渉が生じる。このような干渉が生じてしまうとアンテナからの送信信号の放射特性に影響を与えてしまい、正確な信号を送受信することができない。
【特許文献1】特開平10−334198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる従来技術に鑑みなされたものであり、導電性部材を有するCD−ROMやDVD−ROM等の被検出体に取り付けて使用しても導電性部材による干渉を受けることなくアンテナの通信特性を一定に保持することができるアンテナユニットの提供を一の目的とする。
又、本発明は、導電性部材を有する被検出体及び前記被検出体に装着されたアンテナを備え、前記アンテナを介して信号を送信し得るように構成された無線通信構造体であって、前記アンテナを介して送信される信号の通信特性を一定に保持し得る無線通信構造体の提供を他の目的とする。
さらに、本発明は、導電性部材及び非導電性部材を有する被検出体に適用されるアンテナ構造であって、アンテナを介して送信される信号の通信特性を一定に保持し得るアンテナ構造の提供をさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記一の目的を達成する為に、非導電性のベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面に装着され、中央が開口された無端状の導電性平板部材と、前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を有しつつ当該導電性平板部材の開口内に位置するように前記ベースフィルムの一面に装着されたアンテナとを備えたアンテナユニットを提供する。
【0008】
前記アンテナユニットにおいては、前記アンテナを前記導電性平板部材によって囲繞することで、前記導電性平板部材を前記アンテナを介して送受信される信号に対して相互作用(干渉)させて、前記導電性平板部材の外部に存在する他の導電性部材によって生じ得る相互作用の影響を実質的に排除させており、これにより、前記アンテナを介して信号を送受信する際の共振周波数を外部環境に影響されずに一義的に定め得るようになっている。
【0009】
従って、本発明の一態様に係る前記アンテナユニットによれば、導電性平板部材の外側に導電性部材が存在するか否かに関わらず、アンテナの通信特性を一定に保持することができる。例えば、前記アンテナユニットをCD−ROM等の導電性部材を有する被検出体に取り付けた場合であっても、該導電性部材による干渉を受け難くすることができる。
【0010】
好ましくは、前記アンテナは、ダイポールアンテナであり、前記導電性平板部材は、平面視円形状の環状部と、前記環状部の中心を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称に配置された平衡部とを有し、前記環状部および前記平衡部は、電気的に接続されているように構成される。
【0011】
斯かる構成によれば、導電性平板部材の環状部が導電性平板部材の外側からの信号干渉を防止しつつ、前記環状部の中心を基準にしてアンテナ(ダイポールアンテナ)と略対称に配置された前記平衡部がバランサとして作用する。したがって、環状部の中心を回転軸として平面内で回転させたときにアンテナユニット全体として動バランスを均等に保持することができる。また、導電性平板部材の平衡部と環状部とが電気的に接続されている為、前記平衡部がアンテナの通信特性に影響を与えることを有効に防止できる。
【0012】
より好ましくは、前記アンテナは、前記環状部の内周縁との間の前記間隙が周方向に沿って略一定であるように構成される。
【0013】
即ち、前記アンテナと導電性平板部材の環状部の内周縁との間の間隙が周方向に沿って略一定となるように、前記アンテナを環状部の周方向に沿って円弧状に形成すれば、環状部の中心を回転軸として平面内で回転させたときのアンテナユニット全体の動バランスをより均等に保持することができる。
【0014】
また、本発明は、前記他の目的を達成する為に、導電性部材を有する被検出体と、前記導電性部材との間に非導電性部材が介挿された状態で前記被検出体に装着された導電性平板部材であって、中央が開口された無端状の導電性平板部材と、前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を有しつつ当該導電性平板部材の開口内に位置するように前記被検出体に装着されたアンテナとを備え、前記導電性平板部材は、該導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の外周縁の少なくとも一部が該導電性平板部材に跨るように、前記被検出体に装着された無線通信構造体を提供する。
【0015】
前記無線通信構造体においては、前記アンテナを前記導電性平板部材によって囲繞することで、前記導電性平板部材を前記アンテナを介して送受信される信号に対して相互作用(干渉)させて、前記導電性平板部材の外部に存在する他の導電性部材によって生じ得る相互作用の影響を実質的に排除させており、これにより、前記アンテナを介して信号を送受信する際の共振周波数を外部環境に影響されずに一義的に定め得るようになっている。
さらに、前記無線通信構造体においては、前記導電性平板部材は、該導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の外周縁の少なくとも一部が非導電性部材を挟んだ状態で該導電性平板部材に跨るように、前記被検出体に装着されている。斯かる構成によれば、前記導電性平板部材及び前記導電性部材の間に介挿される基板,保護フィルム及び/又は接着層等の前記非導電性部材が誘電体として作用することで、前記導電性平板部材及び前記導電性部材の間に静電容量が生じ、この静電容量の存在により、導電性平板部材と被検出体の導電性部材とは電気的に結合された状態とみなすことができる。
【0016】
したがって、アンテナの送受信波に対して影響を与える(即ち、相互作用する)のは、実際上、アンテナの周囲に予め所定の間隔だけ離れて配置された導電性平板部材のみとなり、被検出体に備えられる導電性部材による送受信波に対する相互作用の影響を低減させることができる。
つまり、アンテナを囲繞するように配置された導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、該導電性平板部材の中央開口内には導電性部材がオーバーラップしない状態で、前記導電性平板部材と前記導電性部材とが誘電体を挟んだ状態でオーバーラップするように構成されており、従って、前記アンテナの通信特性が前記被検出体の導電性部材や他の導電性部材の有無等によって影響を受けることを有効に防止でき、前記アンテナの通信特性を一義的に決定することができる。
【0017】
また、本発明は、前記他の目的を達成する為に、回転軸回りに回転される円盤状の被検出体であって、前記回転軸と同軸上に配置され且つ中央が開口された無端状の導電性部材を有する被検出体と、前記導電性部材との間に非導電性部材が介挿された状態で前記被検出体に装着された導電性平板部材であって、中央が開口された無端状の導電性平板部材と、前記導電性平板部材の内周縁との間に隙間を有しつつ当該導電性平板部材の開口内に位置するように前記被検出体に装着されたアンテナとを備え、前記導電性平板部材は、前記回転軸に沿って視た平面視において、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の内周縁の少なくとも一部が該導電性平板部材に跨るように、前記被検出体に装着された無線通信構造体を提供する。
【0018】
前記無線通信構造体においては、前記アンテナを前記導電性平板部材によって囲繞することで、前記導電性平板部材を前記アンテナを介して送受信される信号に対して相互作用(干渉)させて、前記導電性平板部材の外部に存在する他の導電性部材によって生じ得る相互作用の影響を実質的に排除させており、これにより、前記アンテナを介して信号を送受信する際の共振周波数を外部環境に影響されずに一義的に定め得るようになっている。
さらに、前記無線通信構造体においては、前記導電性平板部材は、前記回転軸に沿って視た平面視において、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の内周縁の少なくとも一部が非導電性部材を挟んだ状態で該導電性平板部材に跨るように、前記被検出体に装着されている。斯かる構成によれば、前記導電性平板部材及び前記導電性部材の間に介挿される基板,保護フィルム及び/又は接着層等の前記非導電性部材が誘電体として作用することで、前記導電性平板部材及び前記導電性部材の間に静電容量が生じ、この静電容量の存在により、導電性平板部材と被検出体の導電性部材とは電気的に結合された状態とみなすことができる。
【0019】
したがって、アンテナの送受信波に対して影響を与える(即ち、相互作用する)のは、実際上、アンテナの周囲に予め所定の間隔だけ離れて配置された導電性平板部材のみとなり、被検出体に備えられる導電性部材による送受信波に対する相互作用の影響を低減させることができる。
つまり、回転軸に沿って視た平面視において、前記アンテナを囲繞する前記導電性平板部材の中央開口内には導電性部材がオーバーラップしない状態で、前記導電性平板部材と前記導電性部材とが誘電体を挟んだ状態でオーバーラップするように構成されており、従って、前記アンテナの通信特性が前記被検出体の導電性部材や他の導電性部材の有無等によって影響を受けることを有効に防止でき、前記アンテナの通信特性を一義的に決定することができる。
【0020】
好ましい一態様においては、前記アンテナはダイポールアンテナとされ、前記導電性平板部材は、前記回転軸と同軸上に配置された環状部と、前記回転軸を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称に配置される平衡部であって、前記環状部に電気的に接続された平衡部とを有するものとされる。
【0021】
前記一態様においては、前記導電性平板部材は、前記導電性部材が該導電性平板部材の囲繞空間とは平面視においてオーバーラップしない状態で、該導電性部材の少なくとも一部が平面視において該導電性部材とオーバーラップするように、配置される。
このように配置された状態において、前記環状部と電気的に接続された前記平衡部が、前記回転軸を基準にして前記ダイポールアンテナとは略対称に配置されている。
したがって、前記アンテナの通信特性が外部環境によって影響されることを防止しつつ、円盤状の被検出体を回転させた際の動バランスを無線通信構造体全体として均等に保持することができる。
【0022】
好ましい他の態様においては、前記アンテナはダイポールアンテナとされ、前記導電性平板部材は、前記回転軸と同軸上に配置された環状部と、前記回転軸を基準とした周方向に関し前記アンテナが位置する領域以外の領域において前記環状部から径方向内方へ延びる幅広部とを有するものとされる。
【0023】
前記他態様においては、前記導電性平板部材は、前記導電性部材が該導電性平板部材の囲繞空間とは平面視においてオーバーラップしない状態で、該導電性部材の少なくとも一部が平面視において該導電性部材とオーバーラップするように、配置される。
さらに、前記導電性平板部材は、前記回転軸を基準とした周方向に関し前記アンテナが位置する領域以外の領域において前記環状部から径方向内方へ延びる幅広部を有している。
したがって、前記アンテナの通信特性が外部環境によって影響されることを防止しつつ、円盤状の被検出体を回転させた際の動バランスを無線通信構造体全体として均等に保持することができる。よって、円盤状の被検出体を高速回転させて記録されたデータの読み出し等を行う際に、回転ぶれが生じ難く、アンテナおよび導電性平板部材を取り付けることによる読み取り不良等の影響を抑制することができる。
より好ましくは、前記幅広部の径方向内周縁は、前記アンテナの径方向内周縁と同一径とされ、且つ、周方向に関し前記幅広部と前記アンテナとの間には、前記アンテナの径方向外周縁と前記環状部の径方向内周縁との間隙幅と同一幅の間隙が設けられる。
【0024】
好ましいさらに他の態様においては、前記アンテナはダイポールアンテナとされ、前記導電性平板部材は、前記回転軸と同軸上に配置された環状部と、前記回転軸を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称な位置において前記環状部から径方向内方へ延びる幅広部とを有するものとされる。
【0025】
前記他態様においては、前記導電性平板部材は、前記導電性部材が該導電性平板部材の囲繞空間とは平面視においてオーバーラップしない状態で、該導電性部材の少なくとも一部が平面視において該導電性部材とオーバーラップするように、配置される。
さらに、前記導電性部材は、前記回転軸を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称な位置において前記環状部から径方向内方へ延びる幅広部を有している。
したがって、前記アンテナの通信特性が外部環境によって影響されることを防止しつつ、円盤状の被検出体を回転させた際の動バランスを無線通信構造体全体として均等に保持することができる。よって、円盤状の被検出体を高速回転させて記録されたデータの読み出し等を行う際に、回転ぶれが生じ難く、アンテナおよび導電性平板部材を取り付けることによる読み取り不良等の影響を抑制することができる。
より好ましくは、前記幅広部の径方向内周縁は、前記アンテナの径方向内周縁と同一径とされ、且つ、前記幅広部の周方向長さは前記アンテナの周方向長さと略同一とされる。
【0026】
前記種々の態様において、好ましくは、前記導電性平板部材は、回転軸に沿って視た際に、前記導電性部材の内周縁の全周にわたって跨るように前記被検出体に装着される。
【0027】
斯かる構成を備えることにより、前記導電性平板部材及び前記導電性部材が電気的に結合される領域(即ち、両者の間の静電容量)を増やすことができ、前記被検出体における導電性部材や他の外部導電性部材による相互作用の影響をより有効に低減させることができる。
【0028】
なお、アンテナの共振周波数と導電性平板部材の共振周波数とが異なるように構成されることが好ましい。この場合、2つの共振周波数を設けることにより、アンテナとしての帯域を広げることができる。
【0029】
さらに、本発明は、前記さらに他の目的を達成する為に、平板状の導電性部材及び該導電性部材の少なくとも一方側の第1面を覆う非導電性部材を有する被検出体に適用されるアンテナ構造であって、前記非導電性部材における前記導電性部材とは反対側の第1面に装着された無端状の導電性平板部材と、前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を存しつつ該導電性平板部材の中央開口内に位置するように、前記非導電性部材の第1面に装着されたアンテナとを備え、前記環状の導電性平板部材は、該導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が前記中央開口内に位置しない状態で、少なくとも一部が該導電性部材とオーバーラップするように配置されたアンテナ構造を提供する。
【0030】
斯かるアンテナ構造においては、前記アンテナの通信特性に影響を与える部材を実質的に前記導電性平板部材のみとすることができ、これにより、前記被検出体における前記導電性部材や他の外部導電性部材による前記アンテナの通信特性への影響を実質的に排除することができる。従って、前記アンテナの通信特性が外部環境によって変動することを有効に防止できる。
【0031】
好ましくは、前記導電性平板部材及び前記アンテナは非導電性のベースフィルム上に積層されてなるアンテナユニットを形成し、前記導電性平板部材及び前記アンテナは前記ベースフィルムを介して前記非導電性部材の前記第1面に装着される。
斯かる構成においては、前記被検出体への前記導電性平板部材及び前記アンテナの装着作業を効率良く行うことができる。
【0032】
例えば、前記被検出体は前記導電性部材と直交する回転軸回りに回転される平板状の回転記録媒体とされ、前記導電性部材は前記回転軸と同軸上に配置された無端状とされる。
斯かる構成においては、前記導電性平板部材は、好ましくは、前記導電性部材の内周縁が前記回転軸を基準にした径方向位置に関し該導電性平板部材の内周縁及び外周縁の間に位置するように、前記被検出体に装着される。
【0033】
より好ましくは、前記回転軸に沿って視た際の前記導電性平板部材と前記導電性部材とのオーバーラップ量は、前記回転軸を基準にした径方向に関し、該回転軸回り周方向全域に亘って同一とされる。
【0034】
又、より好ましくは、前記アンテナと前記導電性平板部材との間の前記間隙は、前記回転軸回りに同一幅とされる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るアンテナユニットによれば、非導電性部材のベースフィルム上に、アンテナと該アンテナを囲繞する導電性平板部材とを設けたので、前記ベースフィルムを介して前記アンテナ及び前記導電性平板部材を被検出体に装着させることにより、CD−ROM等の導電性部材を有する被検出体に適用した場合であっても、前記導電性部材によって前記アンテナの通信特性が影響されることを有効に防止でき、被検出体における導電性部材及び/又は他の導電性部材の有無に拘わらず、前記アンテナの通信特性を一定に保持することができる。
【0036】
また、本発明に係る無線通信構造体によれば、被検出体における導電性部材との間に非導電性部材が介挿された状態で前記被検出体に装着される無端状の導電性平板部材と、前記導電性平板部材の中央開口内に位置するように前記被検出体に装着されるアンテナとを備え、前記導電性平板部材が、前記導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の少なくとも一部が非導電性部材を挟んだ状態で該導電性平板部材とオーバーラップするように、配置されているので、前記導電性部材によって前記アンテナの通信特性が影響されることを有効に防止でき、前記アンテナの通信特性を一定に保持することができる。
【0037】
又、本発明に係るアンテナ構造によれば、平板状の導電性部材及び該導電性部材の少なくとも一方側の第1面を覆う非導電性部材を有する被検出体に対し、前記非導電性部材における前記導電性部材とは反対側の第1面に装着された無端状の導電性平板部材と、前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を存しつつ該導電性平板部材の中央開口内に位置するように、前記非導電性部材の第1面に装着されたアンテナと設け、前記環状の導電性平板部材を、該導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が前記中央開口内に位置しない状態で、少なくとも一部が該導電性部材とオーバーラップするように配置したので、前記導電性部材によって前記アンテナの通信特性が影響されることを有効に防止でき、前記アンテナの通信特性を一定に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の一実施の形態に係るアンテナユニットを備えた無線通信構造体について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施の形態に係るアンテナユニットを備えた無線通信構造体の概略平面図である。
また、図2は図1におけるII−II線断面図である。
【0039】
本実施形態のアンテナユニット1は、図1および図2に示すように、非導電性のベースフィルム11と、前記ベースフィルム11の第1面に装着され、中央が開口された無端状の導電性平板部材12と、前記導電性平板部材12の内周縁12aとの間に間隙Sを有しつつ該導電性平板部材12の開口内(内周縁内)に位置するように前記ベースフィルム11の前記第1面に装着されたアンテナ13とを備えている。
なお、前記第1面とは前記平板部材12が位置する平面に対して直交する方向に関し一方側を向く面を言い、下記第2面とは前記第1面とは反対側を向く面を言う。
【0040】
即ち、前記アンテナユニット1においては、非導電性のベースフィルム11の前記第1面に、中央が開口された無端状の導電性平板部材12およびアンテナ13が装着されている。前記アンテナ13は、前記導電性平板部材12の内周縁12aとの間に間隙Sを有した状態で、該導電性平板部材12の開口内に位置するようにベースフィルム11に装着されている。
【0041】
本実施の形態においては、前記アンテナユニット1は、円盤状の被検出体2に装着されている。
詳しくは、前記被検出体2は、回転軸Xと略同軸上に配置された導電性部材であるアルミ蒸着層21であって、中央が開口とされた無端状のアルミ蒸着層21を有している。
前記アンテナユニット1は、前記導電性平板部材12の少なくとも一部が、前記回転軸Xに沿った平面視において、前記アルミ蒸着層21の内周縁21aに跨るように、前記被検出体2の第1面にベースフィルム11の第2面が装着されている。
即ち、前記アンテナユニット1は、前記アルミ蒸着層21が平面視において前記導電性平板部材21の中央開口とはオーバーラップしない状態で、該アルミ蒸着層21の少なくとも一部が平面視において前記導電性平板部材12とオーバーラップするように、前記被検出体2に装着されている。
【0042】
前記アンテナユニット1は、例えば、絶縁性を有する種々の樹脂シート等から形成されたベースフィルム11上にアルミ等の導電性の膜を積層し、前記導電性膜を所定の形状にエッチングして導電性平板部材12およびアンテナ13とすることにより、形成される。
前記アンテナ13には、所定の情報(被検出体2の情報、例えば、データフォルダ名、識別番号、記録日時等)が記録される。さらに、前記アンテナ13には、前記情報を送受信可能なICチップ131が取り付けられている。
なお、前記アンテナ13は、常に情報を送受信するように構成されることも可能であるし、若しくは、情報を要求する信号を受信する毎に前記情報を送受信するように構成されることも可能である。
【0043】
一方、円盤状の被検出体2は、CD−ROMやDVD−ROM等の円盤記録媒体とされている。
前記円盤記録媒体は、例えば、ポリカーボネート樹脂層22aと、該樹脂層22aの一部にアルミ等を蒸着することで積層された導電性部材21と、前記導電性部材21を覆うように積層された保護用のポリカーボネート樹脂層22bとを備え、前記導電性部材21が樹脂層22a,22bによって挟み込まれている。
なお、円盤状の被検出体2は、一般的に、導電性部材21の第1面及び第2面のうちの一方がデータ読み取り面とされ、他方はレーベル23が形成(印刷またはシートを貼着)されたレーベル面とされる。
【0044】
本実施形態において、前記アンテナユニット1は、レーベル面側に装着されている。
なお、前記ベースフィルム11と前記被検出体2とを接着剤により接着することも可能であるし、若しくは、前記ベースフィルム11自体を粘着性の接着剤層とし、該ベースフィルム11を被検出体2に直接接着することも可能である。
【0045】
前記無線通信構造体においては、前記アンテナ13は、前記導電性平板部材12の内周縁12aとの間に間隙Sを有した状態で該導電性平板部材12の開口内に位置するように、前記被検出体2に装着されている。つまり、前記アンテナ13は、平面視において、導電性平板部材12に接触することなく取り囲まれた状態で配置されている。
さらに、本実施の形態においては、前記導電性平板部材12は、平面視において、前記回転軸X回りの全周にわたって前記被検出体2の前記導電性部材21の内周縁21aに跨るように、被検出体2に装着されている。つまり、前記アンテナユニット1は、前記被検出体2における前記導電性部材21の内周縁21aが平面視(図1参照)において前記導電性平板部材12の内周縁12aと外周縁12bとの間に位置するように、前記被検出体2に装着されている。
【0046】
前記アンテナユニット1においては、前記導電性平板部材12が前記アンテナ13によって送受信される信号に対して相互作用(干渉)するように、前記アンテナ13が前記導電性平板部材12によって囲繞されている。即ち、前記アンテナ13で送受信される信号に対して相互作用する前記導電性平板部材12によって前記アンテナ13を囲繞することにより、前記導電性平板部材12の外部に存在する導電性部材21や他の導電性部材による相互作用の影響を実質的に排除しており、これにより、前記アンテナ13による信号の送受信の際の共振周波数が、前記アンテナ13及び前記該導電性平板部材12の物性によって一義的に定まるようにしている。
さらに、前記アンテナユニット1においては、前記被検出体2における前記導電性部材21が平面視において前記導電性平板部材12の中央開口とはオーバーラップせず、且つ、前記導電性平板部材12が平面視において前記ベースフィルム11及び樹脂層22を挟んだ状態で前記導電性部材21の内周縁21aに跨るように配置されている。従って、平面視でオーバーラップした部分(被検出体2の導電性部材21の内周縁21aと導電性平板部材12の外周縁12bとで囲まれる領域)が前記絶縁性ベースフィルム11および被検出体2の前記樹脂部材22を誘電体とするコンデンサとして機能する。
【0047】
これにより、前記導電性平板部材12と前記被検出体2における導電性部材21との間で静電容量が生じることとなるため、前記導電性平板部材12と前記導電性部材21とは電気的に結合された状態とみなすことができる。
【0048】
したがって、前記アンテナ13の送受信波に対して影響を与える(相互作用する)のは、実際上、該アンテナ13の周囲に予め所定の間隙Sだけ離れて配置された前記導電性平板部材12のみとなり、前記被検出体2における導電性部材21や他の導電性部材が送受信波に対して相互作用(干渉)することを有効の防止できる。
このように、平面上に形成された前記アンテナ13を無端状の前記導電性平板部材12によって囲繞すると共に、前記被検出体2の前記導電性部材21が平面視において前記導電性平板部材12の中央開口内に位置しない状態で、前記導電性平板部材12と前記導電性部材21とを誘電体を挟んだ状態で平面視においてオーバーラップさせることにより、前記アンテナ13の通信特性が前記被検出体2における前記導電性部材21によって影響されることを有効に防止でき、該アンテナ13の通信特性を一義的に決定することができる。
【0049】
また、本実施の形態においては、導電性平板部材12は、平面視において、被検出体2の導電性部材21の内周縁21aの全周にわたって跨るように装着されているため、平面視における銭導電性平板部材12と前記導電性部材21とのオーバーラップ領域を増やすことができる。斯かる構成によれば、電気的に結合される領域(静電容量)を増やすことができ、前記導電性平板部材12と前記導電性部材21とを電気的に同化させて、前記導電性部材21による相互作用の影響をより有効に低減させることができる。
【0050】
前記導電性平板部材12と前記導電性部材21との間の静電容量が大きい程、前記導電性部材21による相互作用の影響を少なくできるため、前記導電性平板部材12と前記導電性部材21との平面視におけるオーバーラップ領域は、径方向に可及的に大きくとることが好ましい。斯かる構成によれば、互いに対向する前記導電性平板部材12と前記導電性部材21との面積(オーバーラップした領域の面積)を大きくすることができ、当該面積に比例して静電容量も大きくすることができる。
ただし、前記導電性平板部材12が、平面視において前記導電性部材21におけるデータ記録領域に到達すると、前記被検出体2の記録媒体としての機能を損なうおそれがある。従って、被検出体2の導電性部材21におけるデータ領域の内周縁21bより内側に導電性平板部材12の外周縁12bが位置することが好ましい。
静電容量は前記導電性平板部材12と前記導電性部材21との距離に反比例するため、前記距離(すなわち、ベースフィルム11および被検出体2の樹脂部材22によって形成される誘電体の厚み)は可及的に小さくするのが好ましい。
【0051】
なお、前記アンテナ13の共振周波数と前記導電性平板部材12の共振周波数とは互いに異なるように構成されることが好ましい。斯かる構成によれば、2つの共振周波数が設けられることになり、前記アンテナユニット1全体で視た場合にアンテナとしての帯域を広げることができる。前記アンテナ13及び前記導電性平板部材12の共振周波数は、前記アンテナ13および/または前記導電性平板部材12の長さ、幅、厚み等を変えることにより適宜定めることができる。
【0052】
本実施形態において、前記アンテナ13は、ダイポールアンテナとされている。
前記導電性平板部材12は、平面視において、前記被検出体2の回転軸Xと略同軸に配置される環状部121と、前記被検出体2の中心(重心)Xを基準にして前記ダイポールアンテナ13と略対称に配置される平衡部122とを有し、前記環状部121および前記平衡部122は接続部123を介して電気的に接続されている。なお、前記環状部121、前記平衡部122および前記接続部123は、上述の通り、アルミ等の導電性の膜をエッチングすることにより形成される。
【0053】
この場合、前記導電性平板部材12の前記環状部122が、前記被検出体2の前記導電性部材21の内周縁21aに跨って配置される。さらに、前記平衡部122は、前記被検出体2の中心Xを基準にして、前記アンテナ(ダイポールアンテナ)13と略対称な位置に配置される。そして、前記環状部121と前記平衡部122とは前記接続部123を介して電気的に接続される。
【0054】
このように、前記導電性平板部材12の前記環状部121を前記被検出体2の回転軸Xと略同軸上に配置するとともに、前記アンテナ13および前記平衡部121を前記被検出体2の回転軸Xを基準にして略対称に配置することにより、円盤状の前記被検出体2を回転させた際の動バランスを無線通信構造体全体として均等に保持することができる。
また、前記平衡部122は前記接続部123を介して前記環状部121に電気的に結合されている。従って、前記平衡部122が前記アンテナ13の通信特性に影響を与えることを防止できる。
なお、本実施の形態においては、前記平衡部122の両端部および中央部が前記接続部123を介して前記環状部121に電気的に接続されているが、本発明は斯かる形態に限定されるものではない。
【0055】
さらに、本実施の形態において、前記アンテナ13は、前記環状部121の内周縁12aとの間の前記間隙Sが周方向に沿って略一定であるように構成される。
【0056】
即ち、本実施の形態においては、前記アンテナ13と前記導電性平板部材12の前記環状部121の内周縁12aとの間の間隙Sが周方向に沿って略一定となるように、前記アンテナ13が前記環状部121の周方向に沿って円弧状に形成されている。斯かる構成を備えることにより、前記環状部121の中心(すなわち前記被検出体2の中心X)を回転軸として前記被検出体2を平面内で回転させたときの前記アンテナユニット1全体(言い換えると無線通信構造体全体)の動バランスをより均等に保持することができる。
【0057】
以下に、本発明に係るアンテナユニット(無線通信構造体)の他の実施の形態について説明する。図3〜図6はそれぞれ本発明に係るアンテナユニットの他の態様を示す平面図である。なお、前記第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、その説明を省略する。図3〜図5のアンテナユニット3〜6は、前記記第1実施形態と同様に、CD−ROM等の円盤状の被検出体2に取り付けられて無線通信構造体を構成可能であるが、前記被検出体2の図示は省略する。
【0058】
図3(a)に示すアンテナユニット3においては、前記導電性平板部材12は、平面視において前記被検出体2と略同軸の環状とされ、且つ、前記ダイポールアンテナ13近傍の一部が幅狭(幅狭部124)とされている。なお、前記アンテナ13はダイポールアンテナとされている。
【0059】
詳しくは、図3(a)に示す形態においては、前記導電性平板部材12は、前記被検出体2の回転軸Xと略同軸上に配置された環状部121を有している。前記環状部121は、平面視において誘電体を挟んだ状態で前記被検出体2の前記導電性部材21の内周縁21aに跨るように配置されている。さらに、前記導電性平板部材12は、回転軸Xを基準とした周方向に関し前記アンテナ(ダイポールアンテナ)13が位置する領域以外の部分において、前記環状部121から径方向内方へ延びる幅広部125を有している。
即ち、図3(a)に示す前記アンテナユニット3においては、前記アンテナ13は、前記アンテナ13の外周縁13bと前記導電性平板部材12における幅狭部124の内周縁124aとの間に前記Sを存する状態で該幅狭部124によってよって画されるスペース内に配置されている。
斯かる構成を備えることにより、円盤状の前記被検出体2を回転させた際の動バランスを前記アンテナユニット3全体として均等に保持することができる。従って、円盤状の前記被検出体2を高速回転させて記録されたデータの読み出し等を行う際に、回転ぶれが生じ難く、アンテナユニット3を取り付けることによる読み取り不良等の影響を抑制することができる。
【0060】
好ましくは、前記導電性平板部材12における前記幅広部125の周方向終端部125cと該周方向終端部125cと対向する前記アンテナ13の周方向終端部13cとは、前記間隙Sと同一又はそれより大きい間隙を存しつつ、可及的に近接される。
斯かる構成を備えることにより、前記アンテナ13の通信特性を悪化させることなく、前記アンテナユニット3全体の回転軸回りの重量バランスをより向上させることができる。
又、好ましくは、前記導電性平板部材12における前記幅広部125の内周縁125aは前記アンテナ13の内周縁13aと同一径とされる。
斯かる構成を備えることにより、前記アンテナユニット3全体の回転軸回りの重量バランスをより向上させることができる。
【0061】
図3(b)に示すアンテナユニット4においては、前記導電性平板部材12は、前記被検出体2の回転軸Xと略同軸の平面視環状とされており、且つ、前記被検出体2の回転軸Xを基準にして前記ダイポールアンテナ13と略対称な位置近傍の一部が幅広(幅広部125)とされている。なお、前記アンテナ13はダイポールアンテナとされている。
【0062】
詳しくは、図3(b)に示す形態においては、前記導電性平板部材12は、前記被検出体2の回転軸Xと略同軸上に配置された環状部121を有している。前記環状部121は、平面視において誘電体を挟んだ状態で前記被検出体2の前記導電性部材21の内周縁21aに跨るように配置されている。さらに、前記導電性平板部材12は、前記被検出体2の回転軸Xを基準にして前記ダイポールアンテナ13と略対称な位置において前記環状部121から径方向内方へ延びる幅広部125を有している。
斯かるアンテナユニット4においても、円盤状の被検出体2を回転させた際の動バランスをアンテナユニット4全体として均等に保持することができる。従って、円盤状の被検出体2を高速回転させて記録されたデータの読み出し等を行う際に、回転ぶれが生じ難く、アンテナユニット4を取り付けることによる読み取り不良等の影響を抑制することができる。
【0063】
図4に示すアンテナユニット5においては、前記導電性平板部材12は、前記被検出体2の回転軸Xと略同軸の環状とされ、且つ、アンテナ13’は、前記導電性平板部材12の開口内に同軸上に配置された,中央が開口された無端状のループアンテナとされている。
詳しくは、図4に示す形態においては、前記導電性平板部材12は、前記被検出体2の回転軸Xと略同軸上に配置された環状部121を有している。前記環状部121は、平面視において誘電体を挟んだ状態で導電性部材21の内周縁21aに跨るように配置されている。
そして、前記アンテナ13’は、前記環状部121の中央開口内において該環状部121と同軸上に配置された環状のループアンテナとされている。
【0064】
即ち、図4に示す形態においては、前記アンテナ13’は、前記導電性部材21の内周縁21aに跨るように前記被検出体2の回転軸Xと同軸上に配置された前記導電性平板部材12の環状部121の中央開口内に、該導電性平板部材12の内周縁12aと周方向全域に亘って間隙Sが存するように、配置されている。
斯かるアンテナユニット5においても、円盤状の前記被検出体2を回転させた際の動バランスを前記アンテナユニット5全体として均等に保持することができる。従って、円盤状の前記被検出体2を高速回転させて記録されたデータの読み出し等を行う際に、回転ぶれが生じ難く、アンテナユニット5を取り付けることによる読み取り不良等の影響を抑制することができる。
【0065】
なお、前記各実施形態においては、前記導電性平板部材12は、平面視において、前記被検出体2における前記導電性部材21の内周縁21aの全周にわたって跨るように装着されているが、これに限られず、前記導電性平板部材12が前記内周縁21aの少なくとも一部に跨るように装着されてもよい。
【0066】
例えば、図5に示すアンテナユニット6のように、前記導電性平板部材12の平衡部122およびアンテナ13が配置された位置に略直交する導電性平板部材12の環状部121の位置に、環状部121から外向きに延出した耳部126が設けられ、平面視において、導電性平板部材12は、耳部126において被検出体2の導電性部材21の内周縁21aに跨るように装着されることとしてもよい。
即ち、図5に示すアンテナユニット6においては、前記導電性平板部材12は、前記導電性部材21の内周縁21aより被検出体2の回転軸Xを基準にして径方向内方に位置する外周縁121bを有する環状部121と、前記回転軸Xを基準にしてダイポール型のアンテナ13と略対称配置されるように前記環状部121から前記接続部123を介して径方向内方へ延びる前記平衡部122と、平面視において誘電体を挟んだ状態で前記導電性部材21の内周縁21aを跨ぐように前記環状部121から径方向外方へ延びる耳部126とを有している。
【0067】
図5に示す形態においては、前記導電性平板部材12は一対の前記耳部126を有している。斯かる形態においては、前記一対の耳部126は、好ましくは、前記回転軸Xを基準にした周方向位置に関し前記アンテナ13及び前記平衡部122の間に位置し、且つ、前記回転軸Xを基準にして互いに対称に配置されている。
即ち、前記一対の耳部126は、前記アンテナ13の周方向端部13cと前記平衡部122の周方向端部122cとの間において両者の周方向間隔と略同一長さに亘って延びている。
斯かる形態においても、円盤状の前記被検出体2を回転させた際の動バランスを前記アンテナユニット6全体として均等に保持することができる。従って、円盤状の前記被検出体2を高速回転させて記録されたデータの読み出し等を行う際に、回転ぶれが生じ難く、前記アンテナユニット6を取り付けることによる読み取り不良等の影響を抑制することができる。
【0068】
また、本発明に係るアンテナユニットは、円盤状の前記被検出体2に装着させるものに限られず、角板状の被検出体2’に装着させることも可能である。例えば、図6に示すアンテナユニット7は、導電性部材21を有する平面視矩形状の被検出体2’に装着されている。
詳しくは、前記アンテナユニット7は、中央が開口された無端状の導電性平板部材12’と、前記導電性平板部材12’の内周縁12’aとの間に間隙を有しつつ当該導電性平板部材12’の開口内に配置されたアンテナ13’’とを具備しており、該アンテナユニット7は、前記導電性平板部材12’の少なくとも一部が、平面視において、誘電体を挟んだ状態で前記導電性部材21の外周縁21cに跨るように、前記被検出体2’に装着されている。
【0069】
即ち、前記アンテナユニット7を備えた無線通信構造体は、前記被検出体2’における前記導電性部材21の外周縁21cの一部が、平面視において導電性平板部材12’の環状部とオーバーラップし、且つ、平面視において前記導電性部材21が該導電性平板部材12’の中央開口内には位置しないように、構成されている。
【0070】
斯かる構成においても、前記導電性平板部材12’の環状部が、平面視において誘電体を挟んだ状態で前記被検出体2’の導電性部材21とオーバーラップすることになり、従って、前記アンテナ13’’の通信特性が外部環境によって変化することを有効に防止でき、前記アンテナ13’’の通信特性を一義的に決定することができる。
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0071】
例えば、図7に示すように、前記導電性部材21及び該導電性部材の少なくとも一方側の第1面を覆う非導電性部材22bを有する被検出体2に、前記アンテナ13及び前記導電性性平板部材12を直接装着することも可能である。
【0072】
即ち、図7に示す無線通信構造体は、平板状の前記導電性部材21及び該導電性部材21の少なくとも一方側の第1面を覆う非導電性部材22bを有する被検出体と、前記非導電性部材22bにおける前記導電性部材21とは反対側の第1面に装着された無端状の前記導電性平板部材12と、前記導電性平板部材12の内周縁12aとの間に間隙Sを存しつつ該導電性平板部材12の中央開口内に位置するように、前記非導電性部材22bの第1面に装着された前記アンテナ13とを備えている。
前記環状の導電性平板部材12は、該導電性平板部材12と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材21が前記中央開口内に位置しない状態で、少なくとも一部が該導電性部材21とオーバーラップするように配置されている。
【0073】
斯かる構成の無線通信構造体においても、平面視において前記導電性部材21は前記アンテナ13を囲繞する前記導電性平板部材12の中央開口とはオーバーラップせず、且つ、前記導電性部材21は誘電体として作用する前記非導電性部材22bを挟んで状態で前記導電性平板部材12とオーバーラップしている。従って、前記導電性部材21及び前記導電性平板部材12を電気的に単一の部材とみなすことができ、前記アンテナ13によって送受信される信号に対して相互作用する導電性部材を前記導電性平板部材12のみとみなすことができ、前記アンテナ13の通信特性を外部環境に影響されずに一義的に定めることができる。
【0074】
なお、図7においては、図1及び図2に示す前記アンテナ13及び前記導電性平板部材12を前記導電性部材21及び前記非導電性部材22bを有する被検出体2に直接装着させた態様を示したが、当然ながら、図3〜図5に示す種々のアンテナ及び導電性平板部材を、前記導電性部材21及び前記非導電性部材22bを有する被検出体に直接装着させることも可能である。
【0075】
実施例
ここで、本発明に係る無線通信構造体の実施例を示す。
本実施例においては、図1に示す前記アンテナユニット1をアルミ蒸着層である前記導電性部材21を有する円盤状の前記被検出体2に装着した無線通信構造体と、前記アンテナユニット1を導電性部材21を有しない円盤状の被検出体に装着した無線通信構造体とに対して、前記アンテナ13による通信特性(周波数に対するレジスタンス、リアクタンス特性)を計算機上で解析した。
【0076】
図8に、本実施例における解析に使用した無線通信構造体であって、前記アンテナユニット1と前記導電性部材21を有する前記被検出体2とを備えた無線通信構造体を示す。なお、図8(a)及び図8(b)は、それぞれ、前記無線通信構造体の平面図及び側面図である。
前記アンテナユニット1および前記被検出体2における前記導電性部材21はアルミであり、前記アンテナユニット1と前記導電性部材21との間にはポリカーボネート樹脂層(比誘電率29、上記実施形態の樹脂部材22に相当)が介挿されているものとした。各寸法は、図8に示す通りである。
なお、本実施例で用いた前記無線通信構造体の前記被検出体2において、前記導電性部材21におけるアンテナユニット1の装着面側とは反対側の面上には樹脂層が形成されていない。これは、前記アンテナユニット1が装着される側の面とは反対側に位置する樹脂層(図2における符号22a)は該アンテナユニット1の通信特性に影響を与えないことを考慮して、解析の簡略化を図ったものである。
前記導電性部材21を有さない無線通信構造体は、前記導電性部材21を取り除いた他は、図8の構成と同一とした。
【0077】
図9に、本実施例における解析結果を示す。図9(a)は周波数−レジスタンス成分特性を示し、図9(b)は周波数−リアクタンス成分特性を示している。
図9(a)に示すように、レジスタンス成分に関しては、前記導電性部材21を有さない無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は約2.40GHzとなり、前記導電性部材21を有する無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は約2.45GHzとなった。従って、両者のシフト量は0.05GHz(本実施例においては、0.05GHzごとに測定している。以下同様)となった。
また、図9(b)に示すように、リアクタンス成分に関しては、前記導電性部材21を有さない無線通信構造体のピークの(共振)周波数は約2.35GHzとなり、前記導電性部材21を有する無線通信構造体のピークの(共振)周波数は約2.40GHzとなった。従って、両者のシフト量は0.05GHzとなった。
【0078】
比較例
比較例として、前記アンテナ13を有し且つ前記導電性平板部材12を有さない構成の無線通信構造体について、前記実施例と同様の解析を行った。
まず、前記アンテナ13がダイポールアンテナである無線通信構造体(図8において前記導電性平板部材12を取り除いた構成)について解析を行った。
図10に比較例における解析結果を示す。図10(a)は周波数−レジスタンス成分特性を示し、図10(b)は周波数−リアクタンス成分特性を示している。
図10(a)に示すように、レジスタンス成分に関しては、前記導電性部材21を有さない無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は約2.35GHzとなり、前記導電性部材21を有する無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は約1.90GHzとなった。従って、両者のシフト量は0.45GHzとなった。
また、図10(b)に示すように、リアクタンス成分に関しては、前記導電性部材21を有さない無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は約2.25GHzとなり、前記導電性部材21を有する無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は約1.85GHzとなった。従って、両者のシフト量は0.40GHzとなった。
【0079】
さらに、前記アンテナ13がダイポールアンテナの代わりにループアンテナである無線通信構造体(図4のアンテナユニット5から導電性平板部材12を取り除いた構成)について同様の解析を行った。
図11にこの比較例の解析結果を示す。図11(a)は周波数−レジスタンス成分特性を示し、図11(b)は周波数−リアクタンス成分特性を示している。
図11(a)に示すように、レジスタンス成分に関しては、前記導電性部材21を有さない無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は測定範囲内にはほとんど現れず、前記導電性部材21を有する無線通信構造体においては約2.75GHzの周波数に明らかなピークが現れた。
また、図11(b)に示すように、リアクタンス成分に関しては、前記導電性部材21を有さない無線通信構造体においてはピークの(共振)周波数は測定範囲内にはほとんど現れず、前記導電性部材21を有する無線通信構造体においては約2.70GHzの周波数に明らかなピークが現れた。
【0080】
以上のように、比較例においては、前記導電性部材21の有無により、共振周波数を示す周波数ピークのシフト量がより大きく変化することが確認された。従って、比較例においては、前記導電性部材21の有無によって前記アンテナの通信特性が大きく変化することが明らかである。
一方、実施例においては、前記導電性部材21の有無に関わらず、共振周波数を示す周波数ピークのシフト量の変化が微小であることが確認された。即ち、実施例の構成においては、前記導電性部材21の有無によって前記アンテナの通信特性がほとんど変化しないことが確認された。従って、平面上に形成されたアンテナ13を導電性平板部材12によって囲繞し、且つ、平面視において被検出体2の導電性部材21が前記導電性平板部材12の中央開口とはオーバーラップしない状態で前記導電性部材21が平面視において前記導電性平板部材12と誘電体を挟んだ状態でオーバーラップするように構成することにより、前記アンテナ13の通信特性を前記被検出体2における前記導電性部材21の有無や他の外部導電性部材によって影響させることなく一義的に決定することができることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナユニットを備えた無線通信構造体の概略平面図である。
【図2】図2は、図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施の形態に係るアンテナユニットを示す平面図である。
【図4】図4は、本発明のさらに他の実施の形態に係るアンテナユニットを示す平面図である。
【図5】図5は、本発明のさらに他の実施の形態に係るアンテナユニットを示す平面図である。
【図6】図6は、本発明のさらに他の実施の形態に係るアンテナユニットを示す平面図である。
【図7】図7は、本発明のさらに他の実施の形態に係る無線通信構造体の縦断側面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、それぞれ、本発明の一実施例に係る無線通信構造体の平面図及び側面図である。
【図9】図9は、本発明の前記実施例における解析結果を示すグラフである。
【図10】図10は、比較例における解析結果を示すグラフである。
【図11】図11は、他の比較例における解析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0082】
1,3,4,5,6,7 アンテナユニット
2,2’ 被検出体
11 ベースフィルム(誘電体)
12 導電性平板部材
12a 導電性平板部材の内周縁
12b 導電性平板部材の外周縁
13,13’,13’’ アンテナ
21 被検出体の導電性部材
21a 被検出体の導電性部材の内周縁
21c 被検出体の導電性部材の外周縁
22 樹脂層(誘電体)
23 被検出体の中心
121 環状部
122 平衡部
124 幅狭部
125 幅広部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性のベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面に装着され、中央が開口された無端状の導電性平板部材と、
前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を有しつつ当該導電性平板部材の開口内に位置するように前記ベースフィルムの一面に装着されたアンテナとを具備することを特徴とするアンテナユニット。
【請求項2】
前記アンテナは、ダイポールアンテナであり、
前記導電性平板部材は、平面視円形状の環状部と、前記環状部の中心を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称に配置された平衡部とを有し、
前記環状部および前記平衡部は、電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナユニット。
【請求項3】
前記アンテナは、前記環状部の内周縁との間の前記間隙が周方向に沿って略一定であることを特徴とする請求項2記載のアンテナユニット。
【請求項4】
導電性部材を有する被検出体と、
前記導電性部材との間に非導電性部材が介挿された状態で前記被検出体に装着された導電性平板部材であって、中央が開口された無端状の導電性平板部材と、
前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を有しつつ当該導電性平板部材の開口内に位置するように前記被検出体に装着されたアンテナとを具備し、
前記導電性平板部材は、該導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の外周縁の少なくとも一部が該導電性平板部材に跨るように、前記被検出体に装着されることを特徴とする無線通信構造体。
【請求項5】
回転軸回りに回転される円盤状の被検出体であって、前記回転軸と同軸上に配置され且つ中央が開口された無端状の導電性部材を有する被検出体と、
前記導電性部材との間に非導電性部材が介挿された状態で前記被検出体に装着された導電性平板部材であって、中央が開口された無端状の導電性平板部材と、
前記導電性平板部材の内周縁との間に隙間を有しつつ当該導電性平板部材の開口内に位置するように前記被検出体に装着されたアンテナとを具備し、
前記導電性平板部材は、前記回転軸に沿って視た平面視において、前記導電性部材が該導電性平板部材の前記中央開口内に位置せず、且つ、前記導電性部材の内周縁の少なくとも一部が該導電性平板部材に跨るように、前記被検出体に装着されることを特徴とする無線通信構造体。
【請求項6】
前記アンテナは、ダイポールアンテナであり、
前記導電性平板部材は、前記回転軸と同軸上に配置された環状部と、前記回転軸を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称に配置される平衡部とを有し、
前記環状部および前記平衡部は、電気的に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の無線通信構造体。
【請求項7】
前記アンテナは、ダイポールアンテナであり、
前記導電性平板部材は、前記回転軸と同軸上に配置された環状部と、前記回転軸を基準とした周方向に関し前記アンテナが位置する領域以外の領域において前記環状部から径方向内方へ延びる幅広部とを有していることを特徴とする請求項5に記載の無線通信構造体。
【請求項8】
前記アンテナは、ダイポールアンテナであり、
前記導電性平板部材は、前記回転軸と同軸上に配置された環状部と、前記回転軸を基準にして前記ダイポールアンテナと略対称な位置において前記環状部から径方向内方へ延びる幅広部とを有していることを特徴とする請求項5に記載の無線通信構造体。
【請求項9】
前記導電性平板部材は、回転軸に沿って視た際に、前記導電性部材の内周縁の全周にわたって跨るように前記被検出体に装着されることを特徴とする請求項5から8の何れかに記載の無線通信構造体。
【請求項10】
平板状の導電性部材及び該導電性部材の少なくとも一方側の第1面を覆う非導電性部材を有する被検出体に適用されるアンテナ構造であって、
前記非導電性部材における前記導電性部材とは反対側の第1面に装着された無端状の導電性平板部材と、
前記導電性平板部材の内周縁との間に間隙を存しつつ該導電性平板部材の中央開口内に位置するように、前記非導電性部材の第1面に装着されたアンテナとを備え、
前記環状の導電性平板部材は、該導電性平板部材と直交する方向に沿って視た際に、前記導電性部材が前記中央開口内に位置しない状態で、少なくとも一部が該導電性部材とオーバーラップするように配置されていることを特徴とするアンテナ構造。
【請求項11】
前記導電性平板部材及び前記アンテナは非導電性のベースフィルム上に積層されてなるアンテナユニットを形成しており、
前記導電性平板部材及び前記アンテナは前記ベースフィルムを介して前記非導電性部材の前記第1面に装着されていることを特徴とする請求項10に記載のアンテナ構造。
【請求項12】
前記被検出体は前記導電性部材と直交する回転軸回りに回転される平板状の回転記録媒体とされ、前記導電性部材は前記回転軸と同軸上に配置された無端状とされており、
前記導電性平板部材は、前記導電性部材の内周縁が前記回転軸を基準にした径方向位置に関し該導電性平板部材の内周縁及び外周縁の間に位置するように、配置されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のアンテナ構造。
【請求項13】
前記回転軸に沿って視た際の前記導電性平板部材と前記導電性部材とのオーバーラップ量は、前記回転軸を基準にした径方向に関し、該回転軸回り周方向全域に亘って同一とされていることを特徴とする請求項12に記載のアンテナ構造。
【請求項14】
前記アンテナと前記導電性平板部材との間の前記間隙は、前記回転軸回りに同一幅とされていることを特徴とする請求項12又は13に記載のアンテナ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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