説明

アンテナ並びにそれを用いたRFIDタグ及び送受信装置

【課題】大きな利得を得るために大きな寸法を有し、整合回路・給電線構造を付加することなく、高周波回路との良好な整合条件を満足するアンテナを実現する。
【解決手段】使用周波数で微小抵抗値を有する導体で形成されたエレメントを備え、給電点からみた前記使用周波数における入力インピーダンスの整合条件が第一共振点に設定され、前記エレメントの平面形状の全長が使用波長の二分の一よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波の送受を司るアンテナ及びそれを用いた送受信装置に係り、特に、大きな指向性利得を有する電力損失機能付きアンテナ並びにそれを用いたRFIDタグ及び送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RF-ID等、対象物に無線による情報伝達機能を付与させる目的で、同対象物にアンテナを装着した場合、このアンテナに隠蔽された部分の形象可視性が損なわれる。そのため、アンテナを透明金属で構成することが知られている。
【0003】
このような透明金属によって形成されているアンテナとして、従来、下記のようなものが知られている。
【0004】
まず、特許文献1には、自動車用ガラスアンテナに関する発明として、アンテナ給電点のインピーダンスが、第2共振点(=反共振点または並列共振点)の近傍に設定され、アンテナ導体を並列共振により受信感度を向上させること、さらに、アンテナ導体を透明導電物質とすることが開示されている。また、特許文献2や特許文献3にも、アンテナの並列共振や、透明導電物質に関する記載がある。さらに、特許文献4には、車両用ガラスアンテナに関し、アンテナ導体は透明導電膜により形成されたアンテナを採用することや、並列共振させることの記載がある。さらに、特許文献5、6にも、アンテナの並列共振や、透明導電物質に関する記載がある。
【0005】
また、特許文献7にはアンテナが、λ/2の近傍またはその整数倍の電気長を有する棒状アンテナ素子の有するインダクタンスと分布容量とで形成された並列共振部を有する構成が開示されている。さらに、特許文献8には、ガラスアンテナの給電点に並列共振回路を備えたマッチング回路が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−126133号公報
【特許文献2】特開平11−68604号公報
【特許文献3】特開平11−88215号公報
【特許文献4】特開平11−103260号公報
【特許文献5】特開平11−168315号公報
【特許文献6】特開2000−78045号公報
【特許文献7】特開平5−7106号公報
【特許文献8】特開平7−46017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アンテナのインピーダンスZは、電波放射に関わる実数分R(Ω)と、関わらない虚数部分リアクタンス分X(Ω)により、次式(1)で示される。
【0008】
Z=R+jX (1)
図13において、使用波長をλとしたとき、横軸はl/λ、縦軸はインピーダンスを示し、第一共振点の位置は1/2であり、通常のアンテナは、給電点において第一共振点に入力インピーダンスが設定されている。通常のアンテナは、その最大寸法(エレメント長さl)を原理上のエレメント長さである1/2波長よりも若干短くして使用される。すなわち、アンテナを調整する際にエレメント長を調整するか、アンテナに取りつけたスタブなどの整合回路でXをゼロに打消して、抵抗分のみになるように整合を取る。
【0009】
また、アンテナはその最大寸法を、用いられるシステムの使用波長の数倍以上の寸法とすることで、特定の方向に電磁波を集中させて放射することかできる。このような目的に対しては通常、単一の電磁波放射の最大方向を有する、1/2波長以下のアンテナを複数並べて、該アンテナが放射する電磁波の位相を調整することにより、該特定の方向に電磁波を集中させる手段を用いる。その理由は、導体上に高周波電流が発生する時に、該導体の寸法が1/2波長を超える場合は、該導体上に位相の反転する該高周波電流が存在する為に、この移送が反転した高周波電流によりアンテナから放射される電磁波の一部が相殺されアンテナの利得が減少してしまう為である。また、このように1/2波長以下のアンテナを複数並べる場合には、該複数のアンテナに電磁波のエネルギを供給するために、一般に給電線と呼ばれる電力の分配回路を具備する必要がある。
【0010】
従来技術の1/2波長を超える寸法を有するアンテナが具備する給電線は、該アンテナを構成する複数アンテナに電磁波のエネルギを供給するために、導体が用いられる。該アンテナを複数並べて、これらアンテナにエネルギを供給するためには、給電線はひとつのアンテナへの電力の供給口である給電点から複数のアンテナ素子への電気的結合を果たすために、一般に直交する2軸に張られた二次元構造を有する。アンテナの目的は電磁波の集中的放射であるから、該アンテナを構成する複数のアンテナは特定の一軸への電磁波の放射方向を有することが望まれる。
【0011】
しかしながら、本質的に該給電線は2軸へ広がった構造を持つために、該アンテナが期待される電磁波の一軸への放射方向とは異なった方向へ、該給電線は電磁波を放射してしまう問題があった。
【0012】
この問題を回避するべく、給電線からの電磁波放射を抑制するために、新たにシールド構造を導入することも考えられるが、アンテナの構造が複雑になり製造コストが上がるのみならず、該シールド構造は電磁波の放射に寄与しないから、アンテナ動作とは無関係な体積が加わり、結果としてアンテナ自体が大型化する問題も生じていた。
【0013】
一方、上記各特許文献によれば、透明性を有する導体物質を膜状に形成し、十分な形象可視性を持つアンテナを実現することが知られている。しかしながら、現在知られている透明性を有する導体物質は、電磁波放射が効率よく行われる周波数領域では、銅・アルミ等の金属に比べて導電率が低く、また十分な可視性を保つために、該導体物質の膜厚を大きくとることができず、銅・アルミ等の金属と比べて大きな抵抗を有する。この、透明性を有する導体物質の抵抗の影響による損失を低減するために、特別なアンテナ設計法が必要となる。
【0014】
また、上記したように、RF-ID等の分野では、対象物に無線による情報伝達機能を付与させる目的で、透明度を有する導体でアンテナを実現し、アンテナ被装着物の形象可視性を向上させることが要求されている。このようなアンテナに要求される透明性の課題を解決するために、細線束を用いてアンテナを実現する従来技術が知られているが、微視領域での細線の可視性の問題、そして細線束を平面構造に実装するためのコスト高の問題があった。
【0015】
さらに、RF-IDのように狭い範囲内において、複数のアンテナを用いて通信を行う無線システムでは、互いのアンテナ間の干渉を防ぐために、アンテナの指向特性を狭くし、送受信する電波の向きを一方向に制限したいという要求もある。
【0016】
本発明の目的は、寸法が1/2波長を超えるアンテナにおいて、アンテナの性能劣化あるいは製造コストおよび構造的不利益を引き起こす給電線を用いることなく、高い利得を実現することのできるアンテナ及びそれを用いた送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の代表的なものの一例を示せば以下の通りである。即ち、本発明のアンテナは、使用周波数で微小抵抗値を有する導体で形成されたエレメントを備え、給電点からみた前記使用周波数における入力インピーダンスの整合条件が第一共振点に設定され、前記エレメントの平面形状の全長が使用波長の二分の一よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、損失を有する導体をアンテナの構成要素としても、寸法を1/2波長よりも大きくすることで、特定の電波放射方向に対する利得を維持しつつ、アンテナに電力を供給する高周波回路との良好なインピーダンス整合を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
アンテナの利得を最大にする為には、指向性利得を最大にし、且つアンテナに電力を効率良く伝達させる必要がある。前者に関しては一次元あるいは二次元構造において、該構造の表面に発生する高周波電流の位相を同符号に保ちつつ、振幅を同一にすればよい。後者に関してはする給電点でのリタクタンス成分を零にすればよい。課題で説明したように、使用波長の1/2の寸法を持つアンテナは、その構造において、該電流の位相の反転する部分が無く、給電点のインピーダンスの実部が虚部に対して大きくなるので、該目的に適合しているが、単体での最大寸法が使用する電磁波の波長の1/2と制限されてしまうので、より大きな利得を得る為に寸法を大きくすることができない。また、使用波長の1/2の寸法を持つアンテナは、その構造の表面に波の半周期の形状に概略等しい振幅・位相の分布を示す高周波電流を発生させるので、同構造の表面に一様振幅・位相の分布を有するアンテナ構造を想定すれば、該想定したアンテナより利得は小さい。
【0020】
本発明では、使用波長の1/2を越える寸法のアンテナ構造において、同構造の表面に一様に近い高周波電流の振幅分布を実現し、給電点においてインピーダンスの実部が虚部に対して大きくするために、抵抗成分を有する導体を導入する。導体が微小抵抗ρを持つ場合、アンテナの入力インピーダンスZは該微小抵抗ρが存在しない場合の入力インピーダンスZ0を用いて、近似的に次式(2)のように表される。
【0021】
−1=Z0−1+ρZ0−2 (2)
式(2)よりわかるように、アンテナの入力インピーダンスを、該アンテナを構成する導体に微小抵抗成分を持たせる事により小さくすることができる。
【0022】
また、本実施例の線状導体からなるアンテナの導体長(エレメント長さ)lと給電点インピーダンスの関係は図1Bに示されるように、λ/2とλの間に第一共振点をとりリアクタンス成分が零となり、以後該導体長が増加するにつれ、インピーダンスの虚部(X)および実部(R)が増加する特性を示す。
【0023】
図1Bの特性と式(2)よりアンテナを構成する導体に微小な抵抗成分を付加することにより、1/2波長より大きい寸法(l>λ/2)において、等価的に1/2波長と同等の入力インピーダンスを実現することができる。
【0024】
アンテナを構成する導体上に形成される電流分布と給電点の入力インピーダンスには明確に関係があり、波の半波長の分布が使用周波数の半波長の線状アンテナのインピーダンスと一対一に対応している。すなわち、等価的に1/2波長と同等の入力インピーダンスが実現されていることは、アンテナ構造を実現する導体表面に波の半波長の分布が形成されていることに対応し、従来技術である良導体で構成されたアンテナでは、実現不可能であった逆相成分を含まない位相分布を持つ高周波電流を、使用波長の1/2を越える寸法において実現できることを示している。
【0025】
図1Bから明らかなように、寸法(エレメント長さl)の変化に対してアンテナの給電点インピーダンスの変化は線形変化を凌ぐ急激な変化を示している。特にリアクタンス成分は第一共振点である式(3)の変化をする。
【0026】
1−ωLC (3)
ωは角周波数であり、使用波長の逆数である為寸法の変化の2乗でリアクタンスは変化する。
【0027】
一方、式(2)からわかるように、微小損失ρの存在によって、インピーダンスも2乗の変化をするから、該損失による利得低下と寸法lの増大はお互いに相殺する。従って、利得の増加に対して、微小損失ρが式(2)を満足している間は、特定方向への電波の集中度を示す利得に対して、該微小損失ρによる電力の低下は問題とならない。換言すれば、損失を有する導体をアンテナの構成要素としても、寸法lを大きくすることで、特定の電波放射方向に対する利得を維持しつつ、アンテナに電力を供給する高周波回路との良好なインピーダンス整合を実現することができる。
【0028】
さらに、式(2)を満足している範囲においては、利得を大きくすることができる大寸法のアンテナを、従来技術で用いていた、給電線なしに実現できるので、該給電線によるアンテナの利得低下および構造増大の問題を回避できると言う、優れた特徴を実現することができる。
【0029】
以上の説明は、線状導体で構成されるアンテナに関してのものであるが、アンテナ構造が平面的なものに対しても同様の考え方が適応できる。線状アンテナは一次元の構造であり、平面状アンテナは二次元の構造である。いずれのアンテナも給電点は一つあるいはアンテナ構造に対してはまばらな有限の少ない個数で設置される。このため、給電点に高周波回路より印加されたエネルギが該給電点よりアンテナ構造全体へと伝播してゆくことになる。線状アンテナを対象にした上記説明を面状アンテナにそのまま適応するためには、該給電点から流れ出す電流の微小損失に対する効果を同一にすればよい。このような目的に対しては、該面状アンテナを構成する導体の密度を該給電点より遠ざかるにつれ密にすることで対応可能である。また、アンテナを構成する導体の損失量自体を調整できる場合には、この損失量を該給電点より遠ざかるにつれ小さくすることで対応可能である。
【0030】
特定方向でない方向に対しての電力放射は、結果として微小損失ρの効果により低下するので、アンテナの全空間に対する放射効率は当然低下する。しかしながら、この全空間に対する放射効率の低下は、複数のアンテナを用いる無線システムでは、互いのアンテナの干渉を低減する効果に通じるので、そのような干渉が特に問題となる無線システムにおいては、優れた特徴を呈することになる。
以下、図を参照しつつ、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明の第一の実施例を図1(図1A、図1B、図1C)及び図2で説明する。図1Aは、本発明の第一の実施例になるアンテナの一実施例の構造を示す平面図、図1Bは第一の実施例になるアンテナの、給電部インピーダンスの周波数特性を示す図である。図1Bの縦軸はインピーダンス、図1Aに示したように、本実施例のアンテナ100は、使用する周波数領域で微小抵抗値を有する矩形状の導体要素1を、一次元的(x方向)に多数配列して得られる線状のエレメントで構成されるダイポールアンテナ構造を呈している。長さlのエレメントを構成する導体要素1は、薄いシート状をなしている。ここで、微小抵抗値とは、一般的な導電材料のシート抵抗すなわち電気抵抗率(10−4Ωcm以下)よりも大きくかつ一般的な絶縁材料の電気抵抗率よりは小さな値である。より好ましくは、シート抵抗が10Ωcm乃至10Ωcmの範囲である。なお、本発明において、矩形状の導体要素(以下、矩形状導体要素)1とは、その平面形状が矩形(長方形)に限られるものではなく、正方形や正三角形、正六角などを含み、規則的に繰り返し配列可能であり設計の容易な定形の形状を含むものとする。
【0032】
本実施例のアンテナ100は、エレメントの全体的な形状が線状である。なお、図1Aでは、分かり易くするために、各導体要素1間に仕切り線を表示しているが、実際には、エレメントは、均一な薄膜、換言すると薄いシート状の抵抗を有する導体層、が給電点2を中心にして左右に連続して伸びることで複数の導体要素が分割されること無く一体的に形成された構成となっていることはいうまでもない。
【0033】
アンテナエレメントを構成する導体要素1の具体的な例としては、x,y方向の各辺の長さが数mmの矩形であり、厚みは、数μm〜数十μmである。また、使用周波数は、300MHz〜3GHz程度である。そして、このアンテナ構造の概略中心部に、給電点2が形成され、この給電点2は当該ダイポールアンテナに関する第一共振点(図1Bで0と表示)に設定されている。すなわち、本実施例のアンテナは、給電点2からみた使用周波数fにおける入力インピーダンスの整合条件が第一共振点に設定され、最大寸法すなわち平面形状の全長が使用波長の二分の一よりも大きい。一例として、最大寸法は5インチ以上である。この第一共振点の位置は、図1Bに示すように、1/2よりも大きく、1よりも小さい位置である。また、アンテナを構成する導体が該アンテナの使用周波数で微小抵抗値を有するので、ダイポールアンテナの共振状態における最大寸法は、使用波長λの1/2より大きくなる。長さの上限は、使用波長λ程度である。
【0034】
本実施例のアンテナ100を構成する数μm〜数十μmの薄膜のエレメントは、成膜や塗布などの方法で形成される。
【0035】
なお、本実施例のアンテナ100は、長さ(λ/2〜λ)に比べて幅が狭くかつ極めて薄い構造であるため、アンテナ単体では本来の線状の形状を維持する機械的な強度が不足している場合がある。そのため、本実施例のアンテナを構成するエレメントは、他の部材や物品、例えば各種機器の表面、機器の収納容器や包装部材あるいは機器の搬送容器等の表面上に貼り付け、印刷あるいは埋め込むなどして機械的な強度を確保し、その本来の形状を維持できる状態で使用されるのが望ましい。
【0036】
図1Cは、図1Aに示した本実施例のアンテナ100の等価回路を示すものである。図1Cにおいて、ELはアンテナの高周波電源、Roは高周波電源回路の給電インピーダンス、rlossは本発明のアンテナを構成する導体の使用周波数で発生する微小抵抗値、Rrはアンテナの放射抵抗、Rlはアンテナを構成する導体以外の損失抵抗とする。
【0037】
本実施例では、マッチング回路を省略するために、給電点において、高周波電源回路とアンテナ側の放射回路との整合をとる。すなわち、次式(4)の関係を満たすように、rloss、Rr、Rlの値を設定する。
【0038】
rloss+Rr+Rl≒Ro (4)
実用上は、微小抵抗値rlossを放射抵抗Rrの2割以下に抑える。例えば、放射抵抗Rrが50オームのとき、微小抵抗値rlossを1〜10オーム程度になるようにする。
【0039】
本実施例では、さらに、式(2)や(4)を満足している範囲においては、利得を大きくすることができる大寸法のアンテナを、従来技術で用いていた、給電線なしに実現できるので、該給電線によるアンテナの利得低下および構造増大の問題を回避できるという優れた特徴を実現することができる。
【0040】
以上の説明は、線状導体で構成されるアンテナに関してのものであるが、後の実施例で述べるアンテナ構造が平面的なものに対しても同様の考え方が適応できる。
【0041】
図2でアンテナの特性を説明する。図2の実線は、本実施例によるダイポールアンテナの指向特性の一例を示すものである。特定方向でない方向に対しての電力放射は、結果として微小損失ρの効果により低下する。すなわち、アンテナの全空間に対する放射効率は、実線で示すようにエレメントの微小抵抗成分の存在による熱損失のために電力損失が生じ、破線で示した通常の良導体を用いたダイポールアンテナの放射効率に比べて当然低下する。
【0042】
本実施例によるダイポールアンテナは、通常のダイポールアンテナに比べて、放射効率は低下するものの、指向性が強くなっている。すなわち、本実施例のアンテナの指向特性は、従来例のアンテナの指向特性に比べて、抵抗rlossによる電力損失分だけ幅が狭くなっている。換言すると、本実施例のアンテナは、微小抵抗値rlossを有する電力損失機能付きアンテナと言うことができる。この全空間に対する放射効率の低下は、複数のアンテナを用いる無線システムでは、互いのアンテナの干渉を低減する効果に通じるので、そのような干渉が特に問題となる無線システムにおいては、優れた特徴を呈することになる。従って、エレメントの微小抵抗成分の抵抗値とアンテナの電力損失の関係を利用して、所望の指向性を得るように構成することができる。すなわち、本実施例のアンテナは、エレメントとして微小抵抗値を示す矩形状導体要素を使用することに伴う抵抗rlossの増加を、アンテナエレメントの大きさを増して放射抵抗Rrを増やすことで相殺し、全体の整合をとるものである。このようにして、給電点におけるアンテナと高周波回路の良好なインピーダンス整合状態をとることができる。
【0043】
そのため、アンテナが使用周波数fにおいて抵抗が無視できる微小抵抗値を有する導体で形成されているにもかかわらず、アンテナから発生する電磁波を該アンテナ構造の法線方向(z方向)に電磁波を集中させる効果を、図13に示したような給電点において第一共振点に入力インピーダンスが設定されているアンテナよりも、大きくとることができる。
【0044】
このようにして得られた指向性の強いアンテナは、例えば、RF-IDのように狭い範囲内において複数のアンテナを用いて通信を行う無線システムに適している。
【0045】
また、新たな整合回路および給電線を付加することなく、高利得且つ高周波回路より低損失で電力を供給することの出来るアンテナを実現することが出来る。
【0046】
本実施例のアンテナは、損失を有する導体をアンテナの構成要素としても、寸法を1/2波長よりも大きくすることで、特定の電波放射方向に対する利得を維持しつつ、アンテナに電力を供給する高周波回路との良好なインピーダンス整合を実現することができる。
【実施例2】
【0047】
本発明は、線状導体で構成されるアンテナだけでなく、アンテナ構造が平面的なものに対しても有効である。線状アンテナは一次元の構造であり、平面状アンテナは二次元の構造である。いずれのアンテナも給電点は一つあるいはアンテナ構造に対してはまばらな有限の少ない個数で設置される。このため、給電点に高周波回路より印加されたエネルギが該給電点よりアンテナ構造全体へと伝播してゆくことになる。線状アンテナを対象にした上記説明を面状アンテナにそのまま適応するためには、該給電点から流れ出す電流の微小損失に対する効果を同一にすればよい。このような目的に対しては、該面状アンテナを構成する導体の密度を該給電点より遠ざかるにつれ密にすることで対応可能である。また、アンテナを構成する導体の損失量自体を調整できる場合には、この損失量を該給電点より遠ざかるにつれ小さくすることで対応可能である。
【0048】
本発明により得られるアンテナ構造は、給電点におけるアンテナと高周波回路の良好なインピーダンス整合状態を、使用波長の1/2を超える寸法にて実現できるので、整合回路、給電線等のアンテナ全体としての損失をもたらす構造を導入することなく、特定の方向への利得増大を実現出来るばかりでなく、他方への電磁波の不要放射も抑制できるので、アンテナを複数使用する無線システムの信号対雑音比を向上させるアンテナを簡易で安価に提供する効果がある。
【0049】
本発明の第二の実施例を図3(図3A、図3B)及び図4で説明する。図3Aは、本発明の第二の実施例になるアンテナの構造を示す平面図、図3Bは第二の実施例になるアンテナの、給電部インピーダンスの周波数特性を示す図である。図1の実施例のアンテナと異なる点は、電力損失機能付きアンテナ構造100が長手方向と直角な方向(y方向)に幅を持つことである。本実施例のアンテナは、平面形状が面状となっており、エレメントの長さは使用波長λの1/2より長くλ以下の長さとなっている。すなわち、本実施例のアンテナは、使用する周波数領域において微小抵抗値を示す矩形状導体要素1を多数配列して得られるエレメントすなわち面状ダイポールアンテナ構造を呈している。一例として、アンテナ構造100の最大寸法は長さが5インチ以上10インチ以下、幅は5インチ未満である。厚みは、数μm〜数十μm、使用周波数は、300MHz〜3GHz程度である。第一共振点の位置は、1/2よりも大きく、1よりも小さい位置であるが、図1の実施例の位置よりも若干図13の従来例の位置に近くなる。
【0050】
なお、図3Aでは、分かり易くするために、各導体要素1間に仕切り線を表示しているが、実際には、均一な薄膜、換言すると薄いシート状の、抵抗を含む、導体層が給電点2を中心にして左右に連続して伸びることで複数の導体要素が分割されること無く一体的に形成された構成となっていることはいうまでもない。
【0051】
本実施例の電力損失機能付きアンテナ100を構成する薄膜も、成膜や塗布などの方法で形成される。また、本実施例のアンテナ100も、実施例1と同様に、エレメントは長さ(λ/2〜λ)に比べて幅が狭くかつ極めて薄い構造であるため、実際の使用に楯は、他の部材や物品との組み合わせで機械的な強度を確保する実装形態が望ましい。例えば、各種機器の表面、機器の収納容器や包装部材あるいは機器の搬送容器等の表面上に本実施例のアンテナを貼り付けもしくは印刷し、あるいは各種機器の表皮部材に埋め込むなどして機械的な強度を確保し、アンテナがその本来の形状を維持できる状態で使用されるのが望ましい。
【0052】
本実施例によれば、アンテナ構造100の中心に設けられた給電点2よりアンテナ構造に沿って流れる電流の経路を、図1の実施例と比べてより多くとることができる。結果として、アンテナが共振する周波数帯域を広げることが出来、アンテナと高周波回路との間のインピーダンス整合帯域を広くすることが可能となる。
【0053】
図4でアンテナの特性を説明する。図4の実線は、本実施例によるダイポールアンテナの指向特性の一例を示すものである。本実施例によるダイポールアンテナも、従来のダイポールアンテナに比べて、指向性がより強くなっている。指向性の向上は、互いのアンテナの干渉を低減する効果に通じるので、そのような干渉が特に問題となる無線システムにおいては、優れた特徴を呈することになる。
【0054】
本実施例のアンテナは、損失を有する導体をアンテナの構成要素としても、寸法を1/2波長よりも大きくすることで、特定の電波放射方向に対する利得を維持しつつ、アンテナに電力を供給する高周波回路との良好なインピーダンス整合を実現することができる。また、大きな表面積を構造の中に有するデバイスあるいは装置の表面、あるいはそれらの収納容器等の表面に、直接貼付あるいは塗布することで、大きな指向性利得を実現することができる。
【0055】
また、本実施例によれば、アンテナの製造寸法誤差による動作のばらつきを吸収することが出来、大量生産時の製品の歩留まり向上に効果がある。
【実施例3】
【0056】
本発明の第三の実施例を図5で説明する。図5は、本発明の第三の実施例になるアンテナ構造を示す図である。図1の実施例のアンテナと異なる点は、電力損失機能付きアンテナ100の構造が二次元(x,y)方向に広がりを持つ平面構造であることと、給電点2から離れるにつれ、使用周波数で微小抵抗値を有する矩形状導体要素1の分布が密になっていることである。換言すると、エレメントの中で、給電点2の近傍には、矩形状導体要素1の存在しない領域30が散在する疎な構造となっており、一方、給電点2から離れるにつれこの矩形状導体要素1の存在しない領域の数が減少した密な構造となり、アンテナ100の外周縁部は矩形状導体要素1が連続して存在している。一例として、平面アンテナ構造の最大寸法は長さ、幅共に5インチ以上の矩形である。その他、アンテナ100の材料、製法や実装形態は、第一、第二の実施例と同様である。
【0057】
本実施例に拠れば、給電点2から該アンテナ構造全体に供給される高周波電流は該アンテナ構造の周辺部に行くほど、該矩形状導体要素の密度が高いので等価的に該高周波電流に損失を与える抵抗値が低くなる。また、給電点から該アンテナ構造の周辺部へと行くにつれ、高周波電流で伝達される高周波エネルギは外部空間に放射され暫時減少する。このため、アンテナ構造全体に分布する高周波電流の振幅分布は、アンテナ構造が一様な矩形状導体要素の密度を有する場合に比べて、該アンテナ構造全体でより一様になり、アンテナの指向性利得を増大させる効果を有する。
【実施例4】
【0058】
本発明の第四の実施例を図6(図6A、図6B)で説明する。図6Aは、本実施例になるアンテナの外観を示す平面図、図6Bは、アンテナを構成する複数の矩形状導体要素1の配列構造を模式的に示す図である。本実施例の電力損失機能付きアンテナ100が図3の実施例のアンテナと異なる点は、アンテナの長手方向で各矩形状導体要素1(1a、1b、−)の抵抗値が異なること、換言すると、給電点2からアンテナ構造の長手方向に沿って離れるにつれ、使用周波数で微小抵抗値を有する矩形状導体要素1の該微小抵抗値が小さくなっていることである。より具体的には、アンテナ構造の面内全体で電流が均一に流れるように、エレメントを構成する矩形状導体要素1の形状は同じで構成材料を変化させて抵抗値を減少させても良く、あるいは、矩形状導体要素の構成材料は同じで厚みを変えることにより抵抗値を減少させても良い。あるいはまた、構成材料と厚みの双方を変えて抵抗値を減少させても良い。
【0059】
なお、図6Bでは、分かり易くするために、各導体要素1間に仕切り線を表示しているが、実際には、エレメントは給電点2から長手方向に同じ距離にある矩形状導体要素毎に均一な薄膜の、抵抗を含む、導体層が幅方向に連続しており、アンテナの面内全体で複数の導体要素が分割されること無く一体的に形成された構成となっていることはいうまでもない。その他、アンテナ100の材料、製法や実装形態は、第一、第二の実施例と同様である。
【0060】
本実施例に拠れば、給電点2から該アンテナ構造全体に供給される高周波電流は該アンテナ構造の長手方向に沿って周辺部に行くほど、該矩形状導体要素の抵抗値が低いので、等価的に該高周波電流に与える損失が低くなる。また、給電点から該アンテナ構造の長手方向に沿って周辺部へと行くにつれ、高周波電流で伝達される高周波エネルギは外部空間に放射され暫時減少する。このため、アンテナ構造全体に分布する高周波電流の振幅分布は、アンテナ構造が一様な矩形状導体要素の密度を有する場合に比べて、該アンテナ構造全体でより一様になり、アンテナの指向性利得を増大させる効果を有する。
【実施例5】
【0061】
本発明の第五の実施例を図7(図7A、図7B)で説明する。図7Aは、本実施例になるアンテナの外観を示す平面図、図7Bは、透明性を有する複数の矩形状導体要素1の配列構造を模式的に示す図である。
【0062】
本実施例の電力損失機能付きアンテナ100が図3あるいは図6の実施例のアンテナと異なる点は、エレメントすなわち使用周波数で微小抵抗値を有する複数の矩形状導体要素1が、透明電極で構成されていることである。各透明電極は、ZnOにアルミニウムあるいはガリウムをドーパントした材料で実現可能である。また、電極の材質をITO(インジウム・錫・オキサイド)あるいはIZO(インジウム・亜鉛・オキサイド)とすることでも実現できる。
【0063】
その他、アンテナ100の製法や実装形態は、第1〜4の実施例と同様である。
【0064】
本実施例によれば、アンテナ100は可視光領域で高い透明性を呈する。したがって、本実施例になるアンテナをある物体に貼付あるいは印刷する際に、該アンテナ下部の模様、文字、識別マーク、あるいは絵図などが容易に認知可能となる。このため、アンテナを設置する際に発生する視覚的妨害を等価的に著しく減少することができ、本発明からなるアンテナの設置に対する条件を大幅に緩和する効果がある。
【実施例6】
【0065】
本発明の第六の実施例を図8(図8A、図8B、図8C)で説明する。図8Aは、本実施例になるアンテナを用いたRFIDタグの外観を示す平面図、図8Bは、透明性を有するアンテナ100の配線構造を模式的に示す図である。本実施例は、図7の可視光領域で高い透明性を有する電力損失機能付きアンテナ100の給電部2に、RFIDチップ3を搭載したものである。アンテナ構造100の最大寸法は長さが5インチ以上、幅は5インチ未満である。
【0066】
図8Cに、RFIDチップ3の回路構成例を示す。アンテナ100により基地局から送信された電磁波のエネルギが取り込まれ整流回路32にて直流電源に変換される。さらにこの直流電源で動作するマイクロプロセッサ33が変調回路34を駆動し、アンテナ100の負荷インピーダンスに変調が施され、受信波の振幅が変調された電磁波がアンテナ100から放射される。
【0067】
その他、RFIDチップを搭載するアンテナの材料、製法や実装形態は、第1〜5の実施例と同様である。
【0068】
本実施例によれば、狭い範囲内において、複数のアンテナを用いて通信を行うRFIDシステムで、互いのアンテナ間の干渉を低減するのに効果的なアンテナを提供することができる。
【0069】
すなわち、本実施例によれば、図7の実施例でも説明したように、使用波長の1/2を超える大きな寸法のアンテナの存在を視覚的に気にすることなく、トレーサビリティを要求する物品にアンテナ利得の高いRFIDタグを設置することが出来る。そのため、該RFIDタグの基地局あるいはリーダとの通信距離を伸張することが可能となり、該物品の管理エリアの拡大あるいは同一エリアで考えれば該物品の検出感度向上を実現することが出来る。
【実施例7】
【0070】
本発明の第七の実施例を図9で説明する。図9は本発明の他の実施例になるアンテナを用いた、窓4を有する移動体に適用するアンテナシステム構造を示す図である。図9には、可視光領域で高い透明性を有する複数の矩形状導体要素1の配列構造と給電部2の関係も併せて示してある。本実施例は、図7の実施例になる電力損失機能付きアンテナの給電部2に同軸ケーブル5の一端を接続し、他端を移動体内の無線機装置6の空中線接続部に結合したものである。(無線機装置6の構成については、図11参照。)無線機装置6は、移動体に搭載された、ラジオ、テレビ、電話システムに接続され、あるいは、その他の車載の通信端末機器を構成している。
【0071】
本実施例は、可視光領域で高い透明性を有するアンテナを、移動体、例えば自動車や電車の窓4に貼付、印刷あるいは埋め込んで使用するものである。
【0072】
一般に、移動体の通信には、空間を伝送媒体とするため、空間減衰の少ない通常300MHzから3GHzの周波数を有する電磁波を用いる。このため、電磁波の入出力を担うデバイスであるアンテナの寸法は使用波長の1/2程度以上の寸法が必要となり、その実現には比較的多くの体積が要求される。
【0073】
本実施例のアンテナシステムの電力損失機能付きアンテナ部は、長さが使用波長の1/2を超えるものの、移動体の窓4に貼付あるいは埋め込まれるので、無線機動作を可能とする必須部品で高周波回路に比べて大きな寸法を有するアンテナ部を等価的に新たな空間を確保せずに実現できる。そのため、移動体に無線機能を小体積で搭載することが可能となる。
【実施例8】
【0074】
本発明の第八の実施例を図10、図11で説明する。図10は本実施例になる可視光領域で高い透明性を有する電力損失機能付きアンテナ100を具備するディスプレイシステムの構造を示す図である。図10には、アンテナ100すなわち可視光領域で高い透明性を有する複数の矩形状導体要素1の配列構造と給電部2の関係も併せて示してある。図11に無線回路7の構成例を示す。
【0075】
本実施例のディスプレイシステム9は、図7の実施例に示した可視光領域で高い透明性を有する電力損失機能付きアンテナ100を、ディスプレイユニット8の前面に重ねて配置したものである。アンテナ100は、ディスプレイユニット8に表示する画像や文字、音声等の情報を基地局との間で送受信する通常の通信機能に加えて、ワイヤレスの電力供給手段としても機能する。電力損失機能付きアンテナ100の給電部2には同軸ケーブル5の一端が接続され、同軸ケーブル5の他端は無線回路7の超高周波回路の入出力点に結合されている。
【0076】
図11に示した無線回路7は、送信回路11、受信回路12、周波数シンセサイザ13、分波器14、及び整流回路16を含んでいる。アンテナ100で受信された受信信号は、分波器14を経て受信回路12に送られて処理され、一方、送信回路11で生成された送信信号は分波器14を経てアンテナ100から送信される。整流回路16は、アンテナ100で受信した基地局からの受信信号すなわち高周波の交流電力を直流電力に変換するものであり、その出力電力が送信回路11、受信回路12、周波数シンセサイザ13等の各直流電源として供給される。周波数シンセサイザ13は、必要な発振周波数の高周波クロックを該送信回路11と該受信回路12に供給する。
【0077】
現在、ディスプレイユニット8は大型化が量産時においても可能となり、対角線距離1m級のディスプレイ装置9も製品として市場に供給されている。このため、可視光領域で高い透明性を有するアンテナ100をディスプレイユニット8の画面前面に設置することにより、新たな体積を該ディスプレイ装置9に要求することなく、高い利得特性を有するアンテナ構造を実現可能となる。
【0078】
この高い利得のアンテナ特性を用いて、ディスプレイ装置9に伝送する高周波エネルギの増大あるいは、該伝送の伝達距離伸張を実現することができ、例えば、リモコン動作のサービスエリアの拡大、外部から該ディスプレイ装置9への画像データの無線伝送、該ディスプレイ装置への電力の無線伝送等の機能を実現することができる。
【実施例9】
【0079】
本発明の第九の実施例を図12で説明する。図12は本発明の第九の実施例になるアンテナを用いたRFIDタグの構造を示す図である。本実施例では、図6の電力損失機能付きアンテナを両面誘電体基板10の片面に形成し、該両面誘電体基板10の他の面20に送信回路11、受信回路12、周波数シンセサイザ13、分波器14が形成され、バイヤホール15によって電力損失機能付きアンテナの給電部2と分波器14が結合し、該分波器14に該送信回路11と該受信回路12が結合し、該周波数シンセサイザ13が必要な発振周波数の高周波クロックを該送信回路11と該受信回路12に供給する。なお、本実施例でも、図11に示した無線回路7の整流回路16と同じ電力供給手段としての機能を有する整流回路を備えているが、ここでは、説明を省略する。
【0080】
本実施例によれば、図8のRFIDチップが具備する回路をディスクリート部品で実現可能であるので、RFIDシステムが用いるRFIDタグが小量の場合、あるいはRFIDタグが開発段階である場合、高価な半導体チップ試作プロセスを用いることなく、RFIDタグの開発・性能試験を実施することができる。そのため、RFIDシステムの開発コスト低減および開発TAT(turn around time)の減少に効果がある。
【実施例10】
【0081】
以上述べた各実施例は、ダイポールアンテナを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。アンテナ構造100が、導体要素1が使用波長λの1/2より長くλ以下の長さに配列された線状または面状に形成され、一端に給電点2を有するポールアンテナであっても良い。導体要素の形状、材料、製法、実装方法は、実施例1〜9で述べたもののいずれかと同じで良い。
【0082】
本実施例でも、大きな利得を得るために大きな寸法を有するアンテナ構造ではあるものの、整合回路・給電線構造を付加することなく、高周波回路との良好な整合条件を満足するアンテナやそれを用いた無線通信システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1A】本発明の第一の実施例になるアンテナの一実施例の構造を示す平面図である。
【図1B】第一の実施例になるアンテナの、給電部インピーダンスの周波数特性を示す図である。
【図1C】第一の実施例になるアンテナの等価回路を示す図である。
【図2】本実施例によるダイポールアンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図3A】本発明の第二の実施例になるアンテナの他の実施例の構造を示す平面図である。
【図3B】第二の実施例になるアンテナの、給電部インピーダンスの周波数特性を示す図である。
【図4】本実施例によるダイポールアンテナの指向特性の一例を示す図である。
【図5】本発明の第三の実施例になるアンテナ構造を示す図である。
【図6A】本発明の第四の実施例になるアンテナの外観を示す平面図である。
【図6B】本実施例のアンテナを構成する、複数の矩形状導体要素の配列構造を模式的に示す図である。
【図7A】本発明の第五の実施例になる可視光領域で高い透明性を有するアンテナの外観を示す平面図である。
【図7B】本実施例のアンテナを構成する、透明性を有する複数の矩形状導体要素の配列構造を模式的に示す図である。
【図8A】本発明の第六の実施例になる可視光領域で高い透明性を有するアンテナを用いたRFIDタグの外観を示す平面図である。
【図8B】本実施例のアンテナの配線構造を模式的に示す図である。
【図8C】本実施例のRFIDチップ3の回路構成例を示す図である。
【図9】本発明の第七の実施例になるアンテナの構成図である。
【図10】本発明の第八の実施例になるディスプレイシステムの構造を示す図である。
【図11】本実施例の無線回路の構成例を示す図である。
【図12】本発明の第九の実施例になるアンテナを用いたRFIDタグの構造を示す図である。
【図13】従来例における線状アンテナの寸法と給電点インピーダンスの関係を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1…有抵抗矩形状導体要素、2…給電点、3…RFIDチップ、4…窓、5…高周波ケーブル、6…無線機、7…超高周波回路、8…ディスプレイユニット、9…ディスプレイ装置、10…両面誘電体基板、11…送信回路、12…受信回路、13…周波数シンセサイザ、14…分波器、15…バイヤホール、20…誘電体基板裏面層、30…矩形状導体要素1の存在しない領域、整流回路32、マイクロプロセッサ33、変調回路34、100…電力損失機能付きアンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用周波数で微小抵抗値を有する導体で形成されたエレメントを備え、
給電点からみた前記使用周波数における入力インピーダンスの整合条件が第一共振点に設定され、
前記エレメントの平面形状の全長が使用波長の二分の一よりも大きい
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
請求項1において、
前記エレメントのシート抵抗が10Ωcm乃至10Ωcmの範囲である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
請求項1において、
前記アンテナは前記エレメントの平面形状が線状もしくは面状のダイポールアンテナであり、アンテナ長と使用する波長をそれぞれLとλとし共振点を2πL/λとするとき、
前記第一共振点の位置は、πよりも大きく、2πよりも小さい位置である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項4】
請求項2において、
前記アンテナは前記エレメントの平面形状が線状もしくは面状のモノポールアンテナであり、アンテナ長と使用する波長をそれぞれLとλとし共振点を2πL/λとするとき、
前記第一共振点の位置は、πよりも大きく、2πよりも小さい位置である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項5】
請求項1において、
前記エレメントは、単位の矩形状導体要素が分布し配列された複数個の矩形状導体要素を一体化して形成されており、
前記各矩形状導体要素は、平面形状が矩形または正方形である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項6】
請求項5において、
前記エレメントの厚みは、数μm〜数十μmであり、
該エレメントは成膜もしくは塗布により形成されたものである
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項7】
請求項1において、
前記使用周波数が300MHz〜3GHzである
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項8】
請求項1において、
前記エレメントの密度が前記給電点から離れるにつれ密になっている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項9】
請求項1において、
前記エレメントの有する抵抗値が前記給電点より離れるにつれて小さくなっている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項10】
請求項1において、
前記エレメントが透明電極である
ことを特徴とする導体アンテナ。
【請求項11】
請求項10において、
前記透明電極の材質がZnOおよび同材質にAlあるいはGaをドープしたものである
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項12】
請求項10において、
前記透明電極の材質がITO(インジウム・錫・オキサイド)あるいはIZO(インジウム・亜鉛・オキサイド)である
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項13】
請求項1において、
前記エレメントの微小抵抗成分による電力損失の増加を、前記エレメントの厚みや大きさを増して放射抵抗を減らすことで相殺し、所望の指向性を得るように構成されている
ことを特徴とするアンテナ。
【請求項14】
平面形状が線状もしくは面状のアンテナと、
該アンテナの給電部に搭載されたRFIDチップとを備えて成り、
前記アンテナは、
使用周波数で微小抵抗値を有する導体で形成されたエレメントを備え、
前記給電部からみた前記使用周波数における入力インピーダンスの整合条件が第一共振点に設定され、
前記エレメントの平面形状の全長が使用波長の二分の一よりも大きい
ことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項15】
請求項14において、
前記エレメントが透明電極であり、
該透明電極の材質がZnOおよび同材質にAlあるいはGaをドープしたものである
ことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項16】
請求項14において、
前記アンテナは前記エレメントの平面形状が線状もしくは面状のダイポールアンテナであり、
前記エレメントが透明電極であり、
該透明電極のシート抵抗が10Ωcm乃至10Ωcmの範囲であり、
アンテナ長と使用する波長をそれぞれLとλとし共振点を2πL/λとするとき、
前記第一共振点の位置は、πよりも大きく、2πよりも小さい
位置である
ことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項17】
請求項14において、
前記透明電極の厚みは、数μm〜数十μmであり、
該透明電極は成膜もしくは塗布により形成されており、
前記アンテナの長さが5インチ以上10インチ以下、幅は5インチ未満である
ことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項18】
平面形状が線状もしくは面状のアンテナと、
該アンテナの給電部に接続された無線機装置とを備えて成り、
前記アンテナは、
使用周波数で微小抵抗値を有する導体で形成された透明電極を備え、
前記給電部からみた前記使用周波数における入力インピーダンスの整合条件が第一共振点に設定され、
前記透明電極の平面形状の全長が使用波長の二分の一よりも大きい
ことを特徴とする送受信装置。
【請求項19】
請求項18において、
前記透明電極のシート抵抗が10Ωcm乃至10Ωcmの範囲であり、
前記透明電極が窓ガラスあるいは有機材料で実現された窓に貼付あるいは埋め込まれている
ことを特徴とする送受信装置。
【請求項20】
請求項18において、
前記送受信装置がディスプレイユニットを備えたディスプレイ装置であり、
前記透明電極が前記ディスプレイユニットの前面に貼付あるいは埋め込んで形成されており、
前記アンテナを介して前記ディスプレイユニットに表示する情報を基地局との間で送受信する通信機能、及び、
前記アンテナを介して前記ディスプレイユニットを駆動する電力を前記基地局との間で送受する電力供給手段を備えている
ことを特徴とする送受信装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−74746(P2010−74746A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242759(P2008−242759)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】