説明

アンテナ整合部とこれを用いた高周波受信部

【課題】アンテナとチューナ部との整合損失を小さくできるアンテナ整合部を実現する。
【解決手段】高周波信号を受信するとともに高周波信号の波長より4分の1以下の長さを有するアンテナ103に接続されるアンテナ整合部105であって、高周波信号が入力される入力端子105aと、この入力端子105aからの高周波信号が供給されるとともに高周波信号を複数に分割した周波数帯域に対応してアンテナ103との整合特性をそれぞれ最適に設定できるアンテナ整合器113と、このアンテナ整合器113の出力信号が供給されるアクティブ素子115と、このアクティブ素子115からの出力信号が供給される出力端子105bと、アンテナ整合器113の整合特性を制御するための制御信号が入力される制御端子105bを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型アンテナにより受信するアンテナ整合部とこれを用いた高周波受信部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の高周波受信部1について図7を用いて説明する。図7において、高周波受信部1は、小型サイズのアンテナ3と、このアンテナ3に接続されるアンテナ整合部5と、このアンテナ整合部5に接続されるチューナ部7と、このチューナ部7の出力に接続されるとともに復調信号を出力する復調部9と、これらチューナ部7と復調部9を制御する制御部11とから構成されている。
【0003】
アンテナ整合部5は、アンテナ3の出力が接続されるとともにアンテナとの整合損失を小さくするアンテナ整合器13と、このアンテナ整合器13の出力に接続されるとともに高周波信号を増幅する増幅器15とから構成されている。
【0004】
また、チューナ部7は、入力から出力に対して順に、妨害信号を除去するフィルタ17、利得制御可能な増幅器19、入力信号の周波数を変換する混合器21、妨害信号を抑圧するフィルタ23と、混合器に入力される発振器25と、この発振器25を制御するPLL回路27から構成されている。
【0005】
このように構成された高周波受信部1の動作について以下説明する。アンテナ3で受信された高周波信号は、アンテナ整合器13を通って整合損失を小さくされ、増幅器15により増幅されたのちアンテナ整合部5から出力される。
【0006】
この出力信号が入力されるチューナ部7では、周波数変換するとともに利得制御し、さらに妨害信号を抑圧した出力信号が出力端子7aから出力される。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−57735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながらこのような従来のアンテナ整合器においては、広帯域の周波数幅を有する高周波信号に対して固定の整合回路としていたので、良好な整合損失を持たせることができなかった。
【0009】
そこで本発明は、このような問題点を解決するもので、広帯域の周波数幅を有する高周波信号を受信する場合において、小型サイズのアンテナとチューナ部との整合損失を小さくできるアンテナ整合部を実現することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明におけるアンテナ整合部は、高周波信号が入力される入力端子と、この入力端子からの前記高周波信号が供給されるとともに前記高周波信号を複数に分割した周波数帯域に対応してアンテナとの整合特性をそれぞれ最適に設定できるアンテナ整合器と、このアンテナ整合器の出力信号が供給されるアクティブ素子と、このアクティブ素子からの出力信号が供給される出力端子と、前記アンテナ整合器の整合特性を制御するための制御信号が入力される制御端子を設ける。
【0011】
これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、高周波信号が入力される入力端子と、この入力端子からの前記高周波信号が供給されるとともに前記高周波信号を複数に分割した周波数帯域に対応してアンテナとの整合特性をそれぞれ最適に設定できるアンテナ整合器と、このアンテナ整合器の出力信号が供給されるアクティブ素子と、このアクティブ素子からの出力信号が供給される出力端子と、前記アンテナ整合器の整合特性を制御するための制御信号が入力される制御端子を設ける。
【0013】
これにより、高周波信号の4分の1波長よりも十分に短い小型サイズのアンテナで受信する場合において、この小型サイズのアンテナとの整合損失を最小にできるアンテナ整合部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態1における例えばUHF帯(470MHz〜770MHz)を用いたデジタル放送信号を受信する高周波受信部101のブロック図である。
【0015】
図1において、高周波受信部101は、小型サイズのアンテナ103と、このアンテナ103に接続されるアンテナ整合部105と、このアンテナ整合部105に接続されるチューナ部107と、このチューナ部107の出力に接続されるとともに復調信号を出力する復調部109と、これらアンテナ整合部105とチューナ部107と復調部109を制御する制御部111と、復調部109から出力されるBER(ビットエラーレート)、PER(パケットエラーレート)、MER(モジュレーションエラーレート)あるいはC/Nあるいは増幅器131を利得制御する利得制御電圧に基づいて受信品質を判定する受信品質判定部112から構成されている。
【0016】
アンテナ整合部105は、アンテナ103の出力が接続される入力端子105aと、この入力端子105aに接続されるとともにアンテナとの整合損失を小さくするアンテナ整合器113と、このアンテナ整合器113の出力に接続されるとともに高周波信号を増幅するアクティブ素子115と、このアクティブ素子115の出力が接続される出力端子105bから構成されている。
【0017】
このアンテナ整合器113には、入力端子113aと、入力端子113aに信号ラインで接続されている出力端子113bが設けられている。さらに、このアンテナ整合器113の信号ラインとグランドの間には、インダクタ151と、スイッチ153とインダクタ155との直列接続体と、スイッチ157とインダクタ159との直列接続体が接続されている。
【0018】
また、チューナ部107は、入力端子107aから出力端子107bに対して順に、妨害信号を除去するフィルタ117、利得制御入力119aにより利得制御可能な増幅器119、この増幅器119の出力が一方の入力に接続されるとともに周波数を変換する混合器121、妨害信号を抑圧するフィルタ123が接続されている。
【0019】
さらに、混合器121の他方の入力に接続される発振器125、この発振器125を制御するPLL回路127と、混合器121の出力から増幅器119の利得制御入力119aに向かって接続されるとともに利得制御電圧を出力する利得制御器129が設けられている。
【0020】
さらに、復調部109は、入力端子109aから出力端子109bに向かって順に、利得制御入力131aにより利得制御可能な増幅器131、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ133、妨害信号を抑圧するデジタルフィルタ135、復調信号を出力する復調器137と、復調器137への入力から利得制御入力131aに向かって接続された利得制御器139とから構成されている。
【0021】
そして、制御部111には、制御端子114から入力される制御データが入力され、受信品質判定部112から出力される受信品質の判定信号が入力されている。
【0022】
このように構成された高周波受信部101の動作について以下説明する。アンテナ103で受信された高周波信号は、アンテナ整合器113によりアンテナ103との整合損失が最小とされ、さらにアクティブ素子115により増幅されたのちアンテナ整合部105から高周波信号が出力される。
【0023】
この出力された高周波信号は、入力端子107aを介してチューナ部107に入力される。このチューナ部107において、混合器121と発振器125により周波数変換され、増幅器119により利得制御され、さらにフィルタ117、123により妨害信号が抑圧された出力信号が出力端子107bから出力される。
【0024】
この出力信号は、復調部109に入力される。この復調部109では、増幅器131に利得制御され、A/Dコンバータ133によりアナログ信号がデジタル信号に変換され、デジタルフィルタ135により妨害信号が十分に抑圧され、復調器137によりデジタル復調される。
【0025】
なお、利得制御器139から出力される利得制御電圧により利得制御される増幅器131では、復調器137への入力信号レベルを一定の入力レベルとし最適レベルにできる。
【0026】
また、制御部111は、制御端子114から入力される制御データにより、チューナ部107の発振器125の発振周波数を変えて受信チャンネルを選択でき、あるいは、例えば受信品質判定部112からの受信品質判定信号に基づいて復調部109の動作状態を最適化できる。
【0027】
さらに、制御部111からの制御信号は、アンテナ整合部105の制御端子105cを介してアンテナ整合器113に入力されている。この制御信号により、アンテナ整合器113によりアンテナ103とアクティブ素子115との整合損失を受信する周波数帯域に対応して最小にできる。
【0028】
この整合損失を最小とするのは、受信チャンネルの受信品質が劣化した場合とすればよい。これにより、低消費電力化を可能とできる。
【0029】
この受信品質の劣化は、受信品質判定部112からの受信品質信号により判定することができる。
【0030】
例えば、BER、PER、MERあるいはC/Nを用いた場合には、精度のよい判定となるので例えば、静止状態において用いることができる。
【0031】
また、例えば、利得制御器139から出力される利得制御電圧は、移動中の受信状態であっても瞬時に把握することができるので、移動受信において用いることができる。なお、この利得制御器139から出力される利得制御電圧は、復調部109に入力される入力信号レベルに対応しているので受信品質判定信号として利用することができる。
【0032】
次に、制御部111により制御されるアンテナ整合部105の動作について説明する。
【0033】
なお、受信するUHF帯(470MHz〜770MHz)を、例えば、470MHzを含む低い周波数帯域(UHFローバンド)、620MHzを含む中間の周波数帯域(UHFミッドバンド)、770MHzを含む高い周波数帯域(UHFハイバンド)に分割して以下説明する。
【0034】
このアンテナ整合器113では、UHFローバンドを受信する場合には、制御部111からの制御信号により、スイッチ153、157をオフとする。これによりアンテナ整合器113の信号ラインとグランド間には、インダクタ151が接続される。
【0035】
また、UHFミッドバンドを受信する場合には、制御部111からの制御信号により、スイッチ153をオンとし、スイッチ157をオフとする。これにより、アンテナ整合器の信号ラインとグランド間には、インダクタ151とインダクタ155が接続される。
【0036】
さらに、UHFハイバンドを受信する場合には、制御部111からの制御信号により、スイッチ153をオフとし、スイッチ157をオンとする。これにより、アンテナ整合器の信号ラインとグランド間には、インダクタ151とインダクタ159が接続される。
【0037】
このようにして、UHFローバンド、UHFミッドバンド、UHFハイバンドのそれぞれに対応して、信号ラインとグランド間に接続するインダクタンス値をそれぞれ設定できる。
【0038】
図2(a)〜(d)は、スミスチャート上におけるアクティブ素子115とアンテナ103の整合損失を最小とする様子を表している。
【0039】
図2(a)は、アンテナ103の出力インピーダンス201とアクティブ素子115の入力インピーダンス203を表している。なお、定コンダクタンス円208a、208b、208cは、それぞれ異なる値のコンダクタンスを表している。
【0040】
図2(a)において、アンテナ103では、UHFバンドを受信する場合に、携帯用の小型アンテナでは受信信号の4分の1波長の長さを確保することは困難である。
【0041】
このため、アンテナ103の出力インピーダンス201は、UHFローバンドにおける出力インピーダンス201a、UHFミッドバンドにおける出力インピーダンス201b、UHFハイバンドにおける出力インピーダンス201cで表される。このように、アンテナ103が小型サイズになるにつれて、50Ωである中心205から離れて外周円207に近づくことが知られている。
【0042】
一方、アクティブ素子115の入力インピーダンス203は、等価的に容量と抵抗で表すことができ、UHFローバンドのインピーダンス203aと、UHFミッドバンドのインピーダンス203bと、UHFハイバンドのインピーダンス203cで表される。
【0043】
このように、アクティブ素子115の入力インピーダンス203に対して、アンテナ103の出力インピーダンス201は共役複素の関係になっていない。このため、互いに整合損失が大きくなった。
【0044】
なお、アクティブ素子115の入力抵抗とアンテナ103の入力抵抗は、ほぼ同じとしている。
【0045】
図2(b)は、UHFローバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失をアンテナ整合器113により最小にする様子を表す図である。
【0046】
図2(b)において、アンテナ103の出力インピーダンス201aは、インダクタ151により定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0047】
これにより、アンテナ整合器113の出力インピーダンス209は、UHFローバンドのインピーダンス209a、UHFミッドバンドのインピーダンス209b、UHFハイバンドのインピーダンス209cとできる。
【0048】
従って、アンテナ整合器113の出力インピーダンス209aに対してアクティブ素子115の入力インピーダンス203aを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFミッドバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0049】
但し、UHFミッドバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対して、アンテナ整合器113の入力インピーダンス209bとなり、またUHFハイバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203cに対して、アンテナ整合器113の入力インピーダンス209cとなり、ともに共役複素の関係とできない。従って、整合損失は大きくなってしまう。
【0050】
図2(c)は、UHFミッドバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失をアンテナ整合器113により最小にする様子を表す図である。
【0051】
図2(c)において、アンテナ103の出力インピーダンス201は、インダクタ151さらにインダクタ155により定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0052】
これにより、アンテナ整合器113の出力インピーダンス211は、UHFローバンドのインピーダンス211a、UHFミッドバンドのインピーダンス211b、UHFハイバンドのインピーダンス211cとできる。
【0053】
従って、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対してアンテナ整合器113の出力インピーダンス211bを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFミッドバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0054】
但し、UHFローバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203aに対して、アンテナ整合器113の入力インピーダンス211aとなり、また、UHFハイバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203cに対して、アンテナ整合器113の入力インピーダンス211cとなり、ともに共役複素の関係とできない。従って、整合損失は大きくなってしまう。
【0055】
図2(d)は、UHFハイバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失をアンテナ整合器113により最小とする様子を表す図である。
【0056】
図2(d)において、アンテナ103の出力インピーダンス201は、インダクタ159により定コンダクタンス円上をさらに反時計回りに移動する。なお、インダクタ159のインダクタンス値は、インダクタ155のインダクタンス値より小さくしている。
【0057】
これにより、アンテナ整合器113の出力インピーダンス213は、UHFローバンドのインピーダンス213a、UHFミッドバンドのインピーダンス213b、UHFハイバンドのインピーダンス213cとできる。
【0058】
従って、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対してアンテナ整合器113の出力インピーダンス213bを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFミッドバンドにおいてアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0059】
但し、UHFローバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203aに対してアンテナ整合器113の入力インピーダンス213aとなり、またUHFハイバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203cに対して、アンテナ整合器113の入力インピーダンス213cとなり、ともに共役複素の関係とできない。従って、整合損失は大きくなってしまう。
【0060】
このようにして、制御部111からの制御信号によってアンテナ整合器113のスイッチ153、157を制御することにより、UHFローバンド、UHFミッドバンド、UHFハイバンドのそれぞれに対応させて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失を最小にすることができる。
【0061】
なお、アクティブ素子115として、一般的には、バイポーラトランジスタ、もしくはFETを用いることができる。
【0062】
また、その際には、アンテナ整合器113のインダクタ155あるいは159によるインダクタンスの可変範囲は、UHF帯(470〜770MHz)での対応を考慮した場合、10〜50nH程度とすることが望ましい。
【0063】
図3(a)は、スイッチ153、157をともにオフとした場合の整合損失251を表している。なお、横軸は周波数252を、縦軸は損失253を、損失がない状態を損失253aで表している。この整合損失251ではUHFローバンド付近の挿入損失を最小値とできる。
【0064】
図3(b)は、スイッチ153をオンとし、スイッチ157をオフとした場合の整合損失255を表している。この整合損失255では、UHFミッドバンド付近の挿入損失を最小値とできる。
【0065】
図3(c)は、スイッチ153をオフとし、スイッチ157をオンとした場合の整合損失257を表している。この整合損失257では、UHFハイバンド付近の挿入損失を最小値とできる。
【0066】
なお、スイッチ153、157をともにオンとして用いてもよく、この場合にはインダクタ159のインダクタンス値を小さくできるので、小型化ができる。
【0067】
このようにして、小型のアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小とでき、チューナ部107への受信信号を効率よく伝達できるので、受信感度を良好にできる。
【0068】
以上のように、例えばUHFの周波数帯を例えば3つの周波数帯域とする受信バンドに分割し、この受信バンドに対応させてスイッチ153、157を制御することにより、後段のアクティブ素子115との整合損失を最小とできるものである。
【0069】
なお、UHF帯を2つのバンドに分割した場合には、例えばスイッチ157とインダクタ159を削除できる。
【0070】
また、例えば広帯域の周波数帯を複数の周波数帯域とする受信バンドに分割し、この受信バンドに対応させて複数のスイッチを制御することにより、小型サイズのアンテナ103と後段のアクティブ素子との整合損失を最小にできる。
【0071】
さらに、アンテナ103の出力インピーダンス201は、アンテナ103に近接して設けられている映像等を表示する表示部261(図示せず)との配置により変化することが知られている。
【0072】
例えば、携帯電話器でテレビ受信時には、映像を表示する表示部261(図示せず)を携帯電話器の長手方向に、あるいは横手方向に、あるいは回転させて視聴することができ、あるいは、携帯電話器でテレビ録画時には、表示部261を閉じた状態として受信する場合がある。
【0073】
これらの場合には、アンテナ103と表示部261との関係はそれぞれ異なる配置モードとなり、アンテナ103の出力インピーダンスが変化してしまい、アンテナ整合器113による整合損失が最小とならない場合が発生する。
【0074】
このように、視聴あるいは録画する場合のアンテナ103と周辺の筐体との配置関係に応じて整合損失を最小にすることが求められる。
【0075】
このために、アンテナ103と周辺の筐体との配置に対応させて、広帯域の周波数帯の受信バンドに対応させて整合損失を最小とするためのスイッチ制御のテーブル表を予め用意しておく。このテーブル表に基づいて、アンテナ整合器113を制御することにより、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失を常に最小とできる。
【0076】
(実施の形態2)
図4は、本実施の形態2におけるアンテナ整合部301のブロック図である。なお、図4において図1と同じものについては同じ番号を付しその説明は簡略化する。
【0077】
このアンテナ整合部301には、アンテナ整合器303が設けられている。このアンテナ整合器303は、入力端子303aと、この入力端子303aに信号ラインで接続される出力端子303bと、信号ラインとグランドの間に接続されるインダクタ151と、信号ラインからグランドに向かって順に接続されるスイッチ305とコンデンサ307とインダクタ311と、スイッチ305とコンデンサ307との直列接続体313に対して並列に接続されるスイッチ315とコンデンサ317からなる直列接続体319から構成されている。
【0078】
なお、インダクタ311は、直列接続体313、319の接続点と信号ラインの間に挿入してもよい。
【0079】
このように構成されたアンテナ整合器303の動作について説明する。制御端子301aからの制御信号により、スイッチ305、315のオン・オフが制御される。
【0080】
UHFローバンド受信時は、スイッチ305、315をオフとする。これにより、図2(b)において、アンテナ103の出力インピーダンス201aは、インダクタ151により定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0081】
すなわち、アクティブ素子115の入力インピーダンス203aに対してアンテナ整合器303の出力インピーダンス209aを共役複素の関係にできる。このようにして、UHFローバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0082】
UHFミッドバンド受信時は、スイッチ305をオンとし、スイッチ315をオフとする。なお、コンデンサ307とインダクタ311との直列共振周波数faは、UHF帯より小さい周波数としている。これにより、コンデンサ307とインダクタ311による直列接続回路におけるUHF帯でのインピーダンスをインダクタンスとして用いることができる。
【0083】
これにより、図2(c)において、アンテナ103の出力インピーダンス201は、定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0084】
すなわち、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対してアンテナ整合器113の出力インピーダンス211bを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFミッドバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0085】
UHFハイバンド受信時は、スイッチ305をオフとし、スイッチ315をオンとする。
【0086】
なお、コンデンサ317の容量値は、コンデンサ307の容量値より小さく設定し、かつコンデンサ317とインダクタ311との直列共振周波数fbはUHF帯の周波数より小さくしている。
【0087】
従って、コンデンサ317とインダクタ311による直列接続回路は、UHF帯においてインダクタンスBとなる。また、このインダクタンスBは、直列共振周波数fbを直列共振周波数faより大きくしているので、インダクタンスAより小さくできる。
【0088】
これにより図2(d)において、アンテナ103の出力インピーダンス201は、インダクタンスBがインダクタ151に並列に接続されることにより、定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0089】
これにより、アンテナ整合器113の出力インピーダンス213は、UHFローバンドのインピーダンス213a、UHFミッドバンドのインピーダンス213b、UHFハイバンドのインピーダンス213cとできる。
【0090】
従って、アクティブ素子115の入力インピーダンス203cに対してアンテナ整合器113の出力インピーダンス213cを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFハイバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0091】
但し、UHFローバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203aに対してアンテナ整合器113の入力インピーダンス213aとなり、またUHFミッドバンドでは、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対して、アンテナ整合器113の入力インピーダンス213bとなり、ともに共役複素の関係とできない。
【0092】
このようにして、制御部111からの制御信号によってアンテナ整合器303のスイッチ305、315を制御することにより、UHFローバンド、UHFミッドバンド、UHFハイバンドのそれぞれに対応させて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失を最小にすることができる。
【0093】
(実施の形態3)
図5は、本実施の形態3におけるアンテナ整合部401のブロック図である。なお、図5において図1と同じものについては同じ番号を付しその説明は簡略化する。
【0094】
このアンテナ整合部401には、アンテナ整合器403が設けられている。このアンテナ整合器403は、入力端子403aと、この入力端子403aに信号ラインで接続される出力端子403bと、この信号ラインとグランドの間に接続されるインダクタ151と、信号ラインからグランド間に接続されるスイッチ405とコンデンサ407の直列接続体409と、スイッチ411とコンデンサ413との直列接続体415と、スイッチ417とコンデンサ419との直列接続体421から構成されている。
【0095】
このように構成されたアンテナ整合部401の動作について説明する。制御端子401aからの制御信号により、スイッチ405、411、417のオン・オフが制御される。
【0096】
UHFローバンド受信時は、スイッチ405をオンとし、スイッチ411、417をともにオフとする。この場合、コンデンサ407とインダクタ151の並列共振周波数fcは、UHF帯より高い周波数に設定しているので、コンデンサ407とインダクタ151による並列回路のインピーダンスは、UHF帯においてインダクタンスCとできる。
【0097】
これにより、図2(b)において、アンテナ103の出力インピーダンス201aは、インダクタ151により定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0098】
すなわち、アクティブ素子115の入力インピーダンス203aに対してアンテナ整合器303の出力インピーダンス209aを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFローバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0099】
UHFハイバンド受信時は、スイッチ405、417をともにオフとし、スイッチ411をオンとする。
【0100】
なお、コンデンサ413の容量値は、コンデンサ407の容量値より小さく設定し、さらにコンデンサ407とインダクタ151との並列共振周波数fdはUHF帯の周波数より大きくしている。
【0101】
従って、コンデンサ407とインダクタ151による並列接続回路は、UHF帯においてインダクタンスDとなる。また、このインダクタンスDは、並列共振周波数fdを並列共振周波数fcより大きくしているので、インダクタンスCより小さくできる。
【0102】
これにより、図2(c)において、アンテナ103の出力インピーダンス201は、定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。
【0103】
従って、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対してアンテナ整合器403の出力インピーダンス211bを共役複素の関係とできる。このようにして、UHFミッドバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0104】
UHFハイバンド受信時は、スイッチ405、411をともにオフとし、スイッチ417をオンとする。
【0105】
なお、コンデンサ419の容量値は、コンデンサ407、413の容量値より小さく設定し、さらにコンデンサ419とインダクタ151との並列共振周波数feはUHF帯の周波数より大きくしている。
【0106】
従って、コンデンサ419とインダクタ151による並列接続回路は、UHF帯においてインダクタンスEとなる。また、このインダクタンスEは、並列共振周波数feを並列共振周波数fdより大きくしているので、インダクタンスDより小さくできる。
【0107】
これにより図2(d)において、アンテナ103の出力インピーダンス201は、定コンダクタンス円上を反時計回りに移動する。従って、アクティブ素子115の入力インピーダンス203cに対してアンテナ整合器403の出力インピーダンス213cを共役複素の関係とできる。
【0108】
これにより、UHFハイバンドにおけるアンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0109】
このようにして、制御部111からの制御信号によってアンテナ整合器403のスイッチ405、411、417を制御することにより、UHFローバンド、UHFミッドバンド、UHFハイバンドのそれぞれに対応させて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失を最小にすることができる。
【0110】
なお、スイッチ405、411、417は、いずれかひとつのスイッチをオンとしたが、2つのスイッチをともにオンとして合成されるコンデンサの容量を所定値として用いてもよい。
【0111】
(実施の形態4)
図6は、本実施の形態4におけるアンテナ整合器503が設けられたアンテナ整合部501のブロック図である。なお、図6において図1と同じものについては同じ番号を付しその説明は簡略化する。
【0112】
実施の形態3のアンテナ整合器403では、インピーダンス整合のためのコンデンサが信号ラインとグランド間に接続されている。これに対して、本実施の形態のアンテナ整合器503では、インピーダンス整合のためのコンデンサが入力端子503aと出力端子503bとの間に接続されている点が異なる。
【0113】
また、インダクタ504は、インダクタ155より大きく設定しアンテナ103の出力インピーダンスに対して影響が出ないように設定し、耐サージ電圧に対する保護回路として作用させることができる。
【0114】
図6において、アンテナ整合器503の入力端子503aと出力端子503bとの間には、スイッチ505とコンデンサ507との直列接続体509と、スイッチ511とコンデンサ513との直列接続体515と、スイッチ517とコンデンサ519との直列接続体521がそれぞれ接続されている。
【0115】
このように構成されたアンテナ整合器503の動作について説明する。制御端子501aからの制御信号により、スイッチ505、511、517のオン・オフが制御される。
【0116】
UHFローバンド受信時は、スイッチ505をオンとし、スイッチ511、517をともにオフとする。
【0117】
これにより、図2(b)において、コンデンサ507から見たUHFローバンドにおけるアンテナ103の出力インピーダンス209aが、アクティブ素子115の入力インピーダンス203aに対して、共役複素の関係にすることができる。このようにして、UHFローバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0118】
UHFミッドバンド受信時は、スイッチ511をオンとし、スイッチ505、517をともにオンとする。この場合、コンデンサ513の容量値は、コンデンサ507の容量値より大きく設定している。
【0119】
これにより、図2(c)において、コンデンサ513から見たUHFミッドバンドにおけるアンテナ103の出力インピーダンス211bが、アクティブ素子115の入力インピーダンス203bに対して、共役複素の関係にすることができる。このようにして、UHFミッドバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0120】
UHFハイバンド受信時は、スイッチ517をオンとし、スイッチ505、511をともにオフとする。なお、コンデンサ519の容量値は、コンデンサ507、513の容量値より大きく設定している。
【0121】
これにより、図2(d)において、コンデンサ519から見たUHFハイバンドにおけるアンテナ103の出力インピーダンス213cが、アクティブ素子115の入力インピーダンス203cに対して、共役複素の関係にすることができる。このようにして、UHFハイバンドにおいて、アンテナ103とアクティブ素子115の整合損失を最小値とできる。
【0122】
このようにして、制御部111からの制御信号によってアンテナ整合器503のスイッチ505、511、517を制御することにより、UHFローバンド、UHFミッドバンド、UHFハイバンドのそれぞれに対応させて、アンテナ103とアクティブ素子115との整合損失を最小にすることができる。
【0123】
なお、スイッチ505、511、517は、いずれかひとつのスイッチをオンとしたが、2つのスイッチをともにオンとして合成されるコンデンサの容量を所定値として用いてもよい。
【0124】
また、本実施の形態によれば、アクティブ素子115に必要なDCカットコンデンサをコンデンサ507、513および519で置き換えることが可能で、結果として素子数を低減でき、小型・安価なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明にかかるアンテナ整合部およびこれを用いた高周波受信部は、広帯域の受信信号に対し整合を取れるという効果を有し、特に携帯電話等のテレビ受信装置に用いることが有用である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の実施の形態1における高周波受信部のブロック図
【図2】(a)同、アンテナの出力インピーダンスとアクティブ素子の入力インピーダンスのスミスチャート図、(b)同、アンテナ整合器の出力インピーダンスとアクティブ素子の入力インピーダンスのスミスチャート図、(c)同、アンテナ整合器の出力インピーダンスとアクティブ素子の入力インピーダンスのスミスチャート図、(d)同、アンテナ整合器の出力インピーダンスとアクティブ素子の入力インピーダンスのスミスチャート図
【図3】(a)同、UHFローバンドにおける整合損失の特性図、(b)同、UHFミッドバンドにおける整合損失の特性図、(c)同、UHFハイバンドにおける整合損失の特性図
【図4】本発明の実施の形態2におけるアンテナ整合器の回路図
【図5】本発明の実施の形態3におけるアンテナ整合器の回路図
【図6】本発明の実施の形態4におけるアンテナ整合器の回路図
【図7】従来例における高周波受信部のブロック図
【符号の説明】
【0127】
103 アンテナ
105 アンテナ整合部
105a 入力端子
105b 出力端子
105c 制御端子
115 アクティブ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を受信するとともに前記高周波信号の波長より4分の1以下の長さを有するアンテナに接続されるアンテナ整合部であって、前記高周波信号が入力される入力端子と、この入力端子からの前記高周波信号が供給されるとともに前記高周波信号を複数に分割した周波数帯域に対応してアンテナとの整合特性をそれぞれ最適に設定できるアンテナ整合器と、このアンテナ整合器の出力信号が供給されるアクティブ素子と、このアクティブ素子からの出力信号が供給される出力端子と、前記アンテナ整合器の整合特性を制御するための制御信号が入力される制御端子を設けたアンテナ整合部。
【請求項2】
前記アンテナ整合器は、このアンテナ整合器の入力端子と出力端子間に設けられた信号ラインと、この信号ラインとグランド間に接続される第1のインダクタと、前記信号ラインとグランド間に接続されるとともに第2のインダクタとスイッチからなる直列接続体を設け、前記制御信号により前記スイッチを制御して前記第2のインダクタを選択する請求項1に記載のアンテナ整合部。
【請求項3】
前記アンテナ整合器は、このアンテナ整合器の入力端子と出力端子間に設けられた信号ラインと、この信号ラインに一方が接続されるコンデンサとスイッチからなる複数の直列接続体と、この直列接続体の他方とグランド間に接続されるインダクタを設け、前記複数の直列接続体の直列共振周波数を前記高周波信号の周波数より低くし、前記制御信号により前記スイッチを制御して前記信号ラインとグランド間に接続される前記コンデンサを選択する請求項1に記載のアンテナ整合部。
【請求項4】
前記アンテナ整合器は、このアンテナ整合器の入力端子と出力端子と、前記入力端子とグランド間に接続されるインダクタと、前記入力端子と出力端子間に接続されるコンデンサとスイッチからなる複数の直列接続体を設け、前記インダクタと前記コンデンサの並列共振周波数を前記高周波信号の周波数より高くし、前記制御信号により前記スイッチを制御して前記コンデンサを選択する請求項1に記載のアンテナ整合部。
【請求項5】
前記アンテナとこのアンテナ周辺の筐体との配置モードに応じてアンテナ整合器を制御する請求項1に記載のアンテナ整合部。
【請求項6】
請求項1に記載のアンテナ整合部の出力が接続されるとともに前記高周波信号を周波数変換し利得制御するチューナ部と、このチューナ部からの出力信号が接続されるとともに復調信号が出力される復調部と、前記アンテナ整合部と前記チューナ部と前記復調部とを制御するシステム制御部を備え、前記システム制御部からの制御信号により前記チューナ部の受信チャンネルの選局を行うとともにこの受信チャンネルの前記周波数帯域に応じて前記アンテナ整合器を制御する高周波受信部。
【請求項7】
前記復調部からのBER(ビットエラーレート)、PER(パケットエラーレート)、MER(モジュレーションエラーレート)あるいはC/Nの検出信号に基づいて、前記アンテナ整合器を制御する請求項6に記載の高周波受信部。
【請求項8】
前記復調部は、入力から出力に向かって順に接続された利得制御可能な増幅器、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ、妨害信号を抑圧するデジタルフィルタ、復調信号を出力する復調器と、前記復調器の入力と前記増幅器を利得制御するための利得制御入力との間に接続された利得制御器を有し、前記利得制御器から出力される利得制御電圧の判定信号に基づいて前記アンテナ整合器を制御する請求項6に記載の高周波受信部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−253945(P2009−253945A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103324(P2008−103324)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】