説明

アンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法

【課題】 屋内で到来波に所定の範囲内での角度的広がりを持たせつつフェージングを発生せしめる電波環境を模擬することを可能としたアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法を提供する。
【解決手段】 本発明のアンテナ特性評価装置本体3は、送信アンテナ1と受信アンテナ2との間に配置された第1の電波散乱体4と、前記送信アンテナ1と前記受信アンテナ2とを結ぶ直線を一辺とし、前記一辺から離れた位置に配置されて、当該位置と前記送信アンテナ1の位置と前記受信アンテナ2の位置との3点を結ぶ直線によって三角形を構成する、第2の電波散乱体7と、前記受信アンテナ2と前記第2の電波散乱体7との間に配置された第3の電波散乱体5と、前記送信アンテナ1と前記第2の電波散乱体7との間に配置された第4の電波散乱体6と、前記送信アンテナ1と前記第3の電波散乱体5とを結ぶ直線と前記受信アンテナ2と前記第4の電波散乱体6とを結ぶ直線との交点の位置に配置された回転散乱体8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話基地局アンテナや中継基地局や移動電話機などにおけるアンテナの送受信特性等の評価に好適なアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナ特性を試験的に評価するためのアンテナ特性評価方法としては、一般に、フィールド試験が行われていた。しかし、フィールド試験は大掛かりで時間を要する傾向にある。そこで、そのような無線通信試験を簡易化して、屋内で試験を行うようにすることが要請されている。
屋内の試験環境としては、現在一般に、電波暗室や、金属の壁面で電波が反射するようにしたシールドルームなどが用いられている(以上、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−227213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような電波暗室内で試験を行う場合、電波暗室内では安定した伝搬経路が形成されることとなるので、フィールド試験の場合とは異なり、そのままでは、フェージングは発生しない。
また、金属の壁面で電波が反射するようにしたシールドルームで試験を行う場合、部屋の各壁面で何回も反射した電波が様々な角度から受信アンテナに入射することになるので、受信アンテナの到来波の角度広がりが、広くなり過ぎて、むしろ全方向に対して一様になってしまう傾向にある。このため、受信アンテナに到来する電波(以降、これを到来波とも呼ぶ)の角度広がりが全方向一様ではなくて所定の狭い範囲内に制限されているような環境を模擬することは、従来の技術では却って困難なものとなっていた。
従って、到来角度分布が全方向一様ではない、例えば典型的な一例として、携帯電話基地局アンテナのように、受信アンテナの到来波の角度広がりが所定の角度領域内に制限されるような電波環境を模擬することは、上記のような従来の方法では困難ないしは不可能であった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、屋内で到来波に所定の範囲内での角度的広がりを持たせつつフェージングを発生せしめる電波環境を模擬することを可能としたアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンテナ特性評価装置は、送信アンテナから電波を出射して、当該電波を受信アンテナで到来波として受信させて、当該電波の送受信特性を評価するために用いられるアンテナ特性評価装置であって、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間に配置された第1の電波散乱体と、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを結ぶ直線を一辺とし、前記一辺から離れた位置に配置されて、当該位置と前記送信アンテナの位置と前記受信アンテナの位置との3点を結ぶ直線によって三角形を構成する、第2の電波散乱体と、前記受信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に配置された第3の電波散乱体と、前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に配置された第4の電波散乱体と、前記送信アン
テナと前記第3の電波散乱体とを結ぶ直線と前記受信アンテナと前記第4の電波散乱体とを結ぶ直線との交点の位置に配置された回転散乱体とを備えたことを特徴としている。
本発明のアンテナ特性評価方法は、送信アンテナから電波を出射して当該電波を受信アンテナで到来波として受信させて当該電波の送受信特性を評価する、アンテナ特性評価方法であって、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間に第1の電波散乱体を配置し、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを結ぶ直線を一辺とし、当該一辺から離れた位置に第2の電波散乱体を配置して、当該位置と前記送信アンテナの位置と前記受信アンテナの位置との3点を結ぶ直線によって三角形を構成するようにし、前記受信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に第3の電波散乱体を配置し、前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に第4の電波散乱体を配置し、前記送信アンテナと前記第3の電波散乱体とを結ぶ直線と、前記受信アンテナと前記第4の電波散乱体とを結ぶ直線との、交点の位置に回転散乱体を配置して、前記送信アンテナから出射された電波を、前記第1の電波散乱体、前記第2の電波散乱体、前記第3の電波散乱体、前記第4の電波散乱体で散乱および/または反射させて、前記受信アンテナへの到来波の角度広がりを所定の角度領域に制御して前記受信アンテナへと伝搬させる電波環境を形成しつつ前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間での電波の送受信特性を評価することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法において、屋内で到来波に所定の範囲内での角度的広がりを持たせつつフェージングを発生せしめる電波環境を模擬することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置における主要な構成要素の配置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置における主要な構成要素の幾何学的な配置を、XY座標上の各点として示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置における主要な構成要素間における電波の伝搬経路を、模式的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置の一構成要素として用いられる回転散乱体を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る実験で計測された受信波の累積度数分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施の形態に係るアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法について、図面を参照して説明する。
【0010】
このアンテナ特性評価装置は、図1に示したように、送信アンテナ1から電波を出射して、その電波が受信アンテナ2で到来波として受信されたときの、その送信アンテナ1と受信アンテナ2との間での電波の送受信特性を評価する、アンテナ特性評価方法に用いられるアンテナ特性評価装置であって、その本体3(評価対象である電波伝搬システムの主要部である送信アンテナ1および受信アンテナ2を除く、実質的なこのアンテナ特性評価装置としての本体)は、送信アンテナ1と受信アンテナ2との間に配置された第1の電波散乱体4と、送信アンテナ1と受信アンテナ2とを結ぶ直線を一辺とし、その一辺から離れた位置に配置されて、その位置と送信アンテナ1の位置と受信アンテナ2の位置との3点を結ぶ直線によって三角形を構成する第2の電波散乱体7と、受信アンテナ2と第2の電波散乱体7との間に配置された第3の電波散乱体5と、送信アンテナ1と第2の電波散乱体7との間に配置された第4の電波散乱体6と、送信アンテナ1と第3の電波散乱体5とを結ぶ直線と受信アンテナ2と第4の電波散乱体6とを結ぶ直線との交点の位置に配置
された回転散乱体8とを、その主要部の構成要素として備えている。
【0011】
このアンテナ特性評価装置の本体3における、上記の各構成要素の、幾何学的な配置の望ましい一態様としては、図2にX−Y座標系における各点P(座標)として示したようなものとすることが可能である。
【0012】
点A(−a,0)は、送信アンテナ1の位置である。この送信アンテナ1の点Aは、第1の電波散乱体4を点Cとして、それをX−Y座標における原点(0,0)に配置したとき、その点CからX軸上でマイナス方向に距離aの位置に配置されている。また、点B(a,0)は、受信アンテナ2の位置である。この点Bは、第1の電波散乱体4の点Cである原点(0,0)からX座標上でプラス方向に距離aの位置に配置されている。従って、送信アンテナ1の点Aと受信アンテナ2の点Bとの間の距離(絶対値)は、2aとなっている。また、これは換言すれば、第1の電波散乱体4(点C)は、送信アンテナ1(点A)と受信アンテナ2(点B)との間の中点の位置に配置されている、ということである。
【0013】
第2の電波散乱体7は、送信アンテナ1(点A)までの距離と受信アンテナ2(点B)までの距離とが等しい距離になるような位置の点F(0,b)に配置されている。これは換言すれば、点Aと点Bと点Fとで構成される三角形ABFは、辺FAの長さと辺FBの長さとが等しい二等辺三角形になっている、ということである。また、点Cと点Fとを結ぶ直線CFは、点Aと点Bとを結ぶ直線ABの垂直二等分線になっており、その直線CFの長さはbである、ということである。
【0014】
第3の電波散乱体5は、受信アンテナ2の点Bと第2の電波散乱体7の点Fとの間の中点D(a/2,b/2)の位置に配置されている。
【0015】
第4の電波散乱体6は、送信アンテナ1の点Aと第2の電波散乱体7の点Fとの間の中点E(−a/2,b/2)の位置に配置されている。
【0016】
そして、回転散乱体8は、送信アンテナ1の点Aと受信アンテナ2の点Bと第2の電波散乱体7の点Fとで構成される二等辺三角形ABFにおける重心の位置G(0,b/3)に配置されている。
【0017】
次に、このアンテナ特性評価装置の作用について、このアンテナ特性評価装置を用いたアンテナ特性評価方法と併せて説明する。このアンテナ特性評価装置およびそれを用いたアンテナ特性評価方法における、主要な電波の伝搬経路、および受信アンテナ2への到来波の角度広がりの制御作用は、図3に模式的に示したようなものとなっている。
【0018】
第1の電波散乱体4は、送信アンテナ1と受信アンテナ2との間に配置されて、いわゆる見通し経路を遮断している。従って、送信アンテナ1から出射された電波31は、直進的には受信アンテナ2へは届かず、この図3では模式的に電波31a、31bとして示したように、第1の電波散乱体4を回折し、またそれと共に第1の電波散乱体4によって適度に散乱されて、所定の角度的広がりを持たされつつ(例えば見掛けのビーム幅を拡張されつつ;以下同様)、受信アンテナ2へと到達することとなる。
【0019】
また、送信アンテナ1から出射された電波33aは、直進的には第2の電波散乱体7へは届かず、第4の電波散乱体6を回折し、またそれと共に第4の電波散乱体6によって適度に散乱されて、所定の角度的広がりを持たされつつ、第2の電波散乱体7に到る。第2の電波散乱体7では、到来した電波33aを適度に散乱させつつ反射して、電波33bとして受信アンテナ2へと向かわせる。そしてその電波33bは、直進的には受信アンテナ2へは届かず、第3の電波散乱体5を回折し、またそれと共に第3の電波散乱体5によっ
て適度に散乱されて、所定の角度的広がりを持たされつつ、受信アンテナ2へと到り、到来波として受信される。
【0020】
また、アンテナ1から出射された電波32aは、直進的には第3の電波散乱体5へは届かず、回転散乱体8を回折し、またそれと共にその回転散乱体8によって適度に散乱されて、所定の角度的広がりを持たされつつ、第3の電波散乱体5に到る。第3の電波散乱体5では、到来した電波32aを適度に散乱させつつ反射して、電波32bとして第4の電波散乱体6へと向かわせる。第4の電波散乱体6では、到来した電波32bを適度に散乱させつつ反射して、電波32cとして受信アンテナ2へと向かわせる。そしてその電波32cは、直進的には受信アンテナ2へは届かず、回転散乱体8を回折し、またそれと共にその回転散乱体8によって適度に散乱されて、所定の角度的広がりを持たされつつ、受信アンテナ2へと到り、到来波として受信される。
【0021】
ここで、上記のように、送信アンテナ1、第3の電波散乱体5、第4の電波散乱体6、受信アンテナ2の順に、電波32(32a、32b、32c)を伝搬させることができるようにするために、第3の電波散乱体5、第4の電波散乱体6の設置角度が、それぞれ調整されている。また、送信アンテナ1、第2の電波散乱体7、受信アンテナ2の順に、電波33(33a、33b)を反射させて伝搬させることができるように、第2の電波散乱体7の設置角度が調整されている。
【0022】
本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置およびそれを用いた評価方法において形成される電波の伝搬環境では、特に回転散乱体8の付近に複数の伝搬経路が集中している。そこで、この位置に、図4に具体的な構造の一態様を示したように、短冊型の電波散乱体81を支持腕82で支持するようにした部品83を電波散乱体81が断続的にほぼ円筒状に8個並ぶように配列してなる回転散乱体8を、回転軸84を中心として回転可能に配置したことにより、その回転散乱体8の付近を通る複数の伝搬経路を経由する電波32a、32c、あるいは場合によってはさらに電波31b、32bなどの振幅や位相に、さらに確実に変化を与えることができるので、電波環境(電波の伝搬経路の状況)をさらに大幅に変化させることが可能となるのである。
【0023】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法によれば、第1の電波散乱体4、第2の電波散乱体7、第3の電波散乱体5、第4の電波散乱体6、および回転散乱体8の有する電波散乱・反射機能によって、送信アンテナ1から出射された電波31a、31b、32a、33aに適度な角度的広がりを付加しつつ、それを試験電波として受信アンテナ2へと到来させるようにしたので、電波暗室内のような屋内で、到来波に所定の範囲内での角度的広がりを持たせつつフェージングを発生させる電波環境を模擬することが可能となる。
【0024】
なお、本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置を用いた室内でのアンテナ特性評価試験は、電波暗室内で実施することが、より望ましい。これは、評価試験を電波暗室内で実施することにより、このアンテナ特性評価装置の周囲における電波の反射やそれに起因した到来角度分布の変位等を、実質的に無視することの可能なレベルにまで抑止することができるようになるからである。すなわち、一般に、電波暗室内の壁面には、電波吸収体等が備え付けられている。従って、電波暗室内では、このアンテナ特性評価装置の外側の周囲における電波の反射やそれに起因した到来角度分布の変位等は実質的に無視することができる程度にまで抑えられることとなる。これにより、従来の技術では問題となっていた電波暗室内における電波の到来角度分布が全方向一様になる虞がなくなり、かつその本来の電波暗室内における電波的外乱の混入を回避するという特性を生かして、到来角度分布を本発明の実施の形態に係るアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法によって外乱なく制御することが、さらに確実に可能となるからである。
また、上記の実施の形態では、第1の電波散乱体4、第2の電波散乱体7、第3の電波散乱体5、第4の電波散乱体6は、実質的に固定して配置されるものとしたが、これらは移動可能としてもよい。このようにすることにより、到来角度分布やそのメインビームの志向性など各種の電波環境が時間的に変化する条件下でのアンテナ特性評価を行うことなども可能となる。
また、送信アンテナ1の位置と受信アンテナ2の位置と第2の電波散乱体7の位置との3点を結ぶ直線によって構成される三角形の形状は、図2に示したような二等辺三角形にすることは、望ましい一態様であるが、必ずしもこれのみには限定されないことは言うまでもない。それ以外の鋭角三角形や、場合によっては(上記の実施の形態で説明したようなものと同様の作用・効果を奏することが可能であるならば)、鈍角三角形を成すような配置とすることなども可能である。
【実施例】
【0025】
上記の実施の形態で図2に基づいて説明したような配置の仕方で、本発明の実施例に係るアンテナ特性評価装置を作製し、それを用いたアンテナ特性評価実験を、本発明の実施例に係るアンテナ特性評価方法として行った。
【0026】
本実施例では、電波の中心周波数は2.6GHzとした。また、図2に示した各点間の距離を基本的に規定する距離a、bについては、a=5m、b=5mとした。
【0027】
送信アンテナ1はスリーブアンテナ4本組のものとし、受信アンテナ2はスリーブアンテナ4本組のものとした。それらの各アンテナ間隔は、1〜0.3波長程度とし、送信アンテナ1と受信アンテナ2との間の距離は、2a=10mとした。
【0028】
アンテナ特性評価装置本体3によって実質的に形成される伝搬経路を経由するMIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を行い、その伝搬経路を経て受信アンテナ2へと到来して受け信される電波について評価した。
【0029】
第1の電波散乱体4、第2の電波散乱体7、第3の電波散乱体5、第4の電波散乱体6は、いずれも、外形寸法が概ね1m×1m×0.01mの、板状の電波散乱体からなるものとした。また、回転散乱体8については、短冊型の電波散乱体81の幅および長さを、幅b=80mmとし、長さ(高さ)h=270mmとした。この短冊型の電波散乱体81の配列によって構成される仮想的な円筒の直径(支持腕82の差し渡しの長さ)D=850mmとした。そして、それらを、送信アンテナ1および受信アンテナ2を含めて全体で図2に示したような位置関係となるように配置した。
【0030】
そのような配置で、回転散乱体8を、一定の回転速度で回転させながら、角度5°毎に、送信アンテナ1と受信アンテナ2との間で通信試験を行い、受信波の累積度数分布を求めた。その結果、図5に示したように、レイリー分布に近い分布が得られた。
この実験結果から、回転散乱体8を回転させると、その付近を通る複数の伝搬経路を経由する電波の振幅や位相に明確に変化を与えることができるため、電波環境(伝搬経路の状況)を大幅に変化させることが可能となることが確認された。
【0031】
また、各構成要素の配置位置に関する基本的な数値設定を規定する距離をa=5m、b=5mとしたことから、送信アンテナ1と受信アンテナ2とを結ぶ直線ABと送信アンテナ1と第2の電波散乱体7とを結ぶ直線AFとの成す角(∠BAF)は45°となった。
【0032】
そして、送信側の電波(送信波)の角度広がり、受信側の電波(到来波)の角度広がりを、それぞれ求めたところ、どちらも約15°であった。従って、受信側の(到来波の)角度広がり=∠BAF×1/3が実現されていることが確認できた。なお、距離a、bを
適宜に変化させることにより、受信側の角度広がりを適宜に変化させることも可能である。
【0033】
以上のような本実施例で得られた結果から、広いスペースが利用できる屋外でなくとも、電波暗室内のような限られたスペースの屋内で、到来波の角度広がりおよびフェージングを模擬することが可能なアンテナ特性評価装置およびアンテナ特性評価方法を実現することができることが確認された。
【0034】
なお、第1の電波散乱体4、第2の電波散乱体7、第3の電波散乱体5、第4の電波散乱体6の外形寸法は、電波を必要十分に反射・散乱することが可能な大きさであれば、上記の実施例で採用した値とは異なったものとしても構わないことは勿論である。定性的には、各電波散乱体の外形寸法は、評価対象の電波の波長の数倍程度以上あることが望ましい。
【0035】
その各電波散乱体の外形寸法の具体的な数値的態様については、縦横共に1000mm±500mmの範囲内の値とすることが可能である。これは、上記の実施例では、各電波散乱体の外形寸法を縦横共に1m(つまり丁度1000mm)としたが、計測における不確からしさ(あるいは誤差)や、実際に使用される電波の周波数帯域(波長)との兼ね合い等を考慮すれば、1000mmを中心値として±500mmの範囲内の適切な値に設定することで、そのときの計測状況や各種条件等に対応して、より的確なアンテナ特性評価を行うことが可能となるからである。
また、回転散乱体8の外形寸法についても、同様の理由から、その具体的な外形寸法の数値的態様については、全体の直径を850mm±425mmとし、短冊型の金属板からなる電波散乱体81の幅を80mm±40mm、長さを270mm±135mmとすることが可能である。
また、回転散乱体8は、電波を反射する材質からなるもの以外にも、電波吸収体からなるものとすることも可能である。
【0036】
また、上記の実施の形態および実施例では詳細な説明は省略したが、実際には、送信アンテナ1には図示しない送信機が接続され、受信アンテナ2には図示しない受信機が接続されることは言うまでもない。これらの送信機および受信機は、別個の機器を用いてもよく、あるいは送信機と受信機とが一体となった態様の装置を用いてもよい。例えば、ネットワークアナライザを用いることなども可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 送信アンテナ
2 受信アンテナ
3 アンテナ特性評価装置本体
4 第1の電波散乱体
5 第3の電波散乱体
6 第4の電波散乱体
7 第2の電波散乱体
8 回転散乱体
31 電波
32 電波
33 電波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナから電波を出射し、当該電波を受信アンテナで到来波として受信させて、当該電波の送受信特性を評価するために用いられるアンテナ特性評価装置であって、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間に配置された第1の電波散乱体と、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとを結ぶ直線を一辺とし、前記一辺から離れた位置に配置されて、当該位置および前記送信アンテナの位置ならびに前記受信アンテナの位置の3点を結ぶ直線によって三角形を構成する、第2の電波散乱体と、
前記受信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に配置された第3の電波散乱体と、
前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に配置された第4の電波散乱体と、
前記送信アンテナと前記第3の電波散乱体とを結ぶ直線と前記受信アンテナと前記第4の電波散乱体とを結ぶ直線との交点の位置に配置された回転散乱体と
を備えたことを特徴とするアンテナ特性評価装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ特性評価装置において、
前記第1の電波散乱体を、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の中点の位置に配置し、
前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体との間の距離と、前記受信アンテナと前記第2の電波散乱体との間の距離とが等距離になるような位置に、前記第2電波散乱体を配置し、
前記受信アンテナと前記第2の電波散乱体との間の中点の位置に、前記第3の電波散乱体を配置し、
前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体との間の中点の位置に、前記第4の電波散乱体を配置し、
前記送信アンテナの位置と前記受信アンテナの位置と前記第2の電波散乱体の位置とで構成される三角形における重心の位置に、前記回転散乱体を配置してなる
ことを特徴とするアンテナ特性評価装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のアンテナ特性評価装置において、
前記第1ないし第4の電波散乱体は、いずれも、縦横が略1000mm(ミリメートル)±500mmの金属板からなるものであり、
前記回転散乱体は、直径が850mm±425mm、高さが270mm±135mmの円筒状を連続的または断続的に成すように配置された、幅が80mm±40mmで長さが270mm±135mmの短冊型の金属板を8枚備えてなるものである
ことを特徴とするアンテナ特性評価装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のアンテナ特性評価装置において、
前記第1ないし第4の電波散乱体は、いずれも、縦横が略1000mm(ミリメートル)の金属板からなるものであり、
前記回転散乱体は、直径が略850mm、高さが略270mmの円筒状を連続的または断続的に成すように配置された、幅が略80mmで長さが略270mmの短冊型の金属板を8枚備えてなるものである
ことを特徴とするアンテナ特性評価装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のうちいずれか1つの項に記載のアンテナ特性評価装置において、
前記受信アンテナへの到来波の角度広がりが、前記送信アンテナと前記受信アンテナとを結ぶ直線と前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体とを結ぶ直線との成す角の、略1/3である
ことを特徴とするアンテナ特性評価装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のうちいずれか1つの項に記載のアンテナ特性評価装置において、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間の距離が、略10m(メートル)であり、
前記第1の電波散乱体と前記第2の電波散乱体との間の距離が、略5mであり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとを結ぶ直線と前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体とを結ぶ直線との成す角が、略45°であり、
前記受信アンテナへの到来波の角度広がりが、略15°である
ことを特徴とするアンテナ特性評価装置。
【請求項7】
送信アンテナから電波を出射して当該電波を受信アンテナで到来波として受信させて当該電波の送受信特性を評価するために用いられるアンテナ特性評価装置であって、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間に第1の電波散乱体を配置し、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとを結ぶ直線を一辺とし、当該一辺から離れた位置に第2の電波散乱体を配置して、当該位置と前記送信アンテナの位置と前記受信アンテナの位置との3点を結ぶ直線によって三角形を構成するようにし、
前記受信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に第3の電波散乱体を配置し、
前記送信アンテナと前記第2の電波散乱体との間に第4の電波散乱体を配置し、
前記送信アンテナと前記第3の電波散乱体とを結ぶ直線と、前記受信アンテナと前記第4の電波散乱体とを結ぶ直線との、交点の位置に回転散乱体を配置して、
前記送信アンテナから出射された電波を、前記第1の電波散乱体、前記第2の電波散乱体、前記第3の電波散乱体、前記第4の電波散乱体で散乱および/または反射させて、前記受信アンテナへの到来波の角度広がりを所定の角度領域に制御して前記受信アンテナへと伝搬させる電波環境を形成しつつ前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間での電波の送受信特性を評価する
ことを特徴とするアンテナ特性評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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